説明

熱線反射フィルム、その製造方法、及び熱線反射体

【課題】生産において問題となる乾燥時のひび割れ、ムラ、ヘイズ、更に、乾燥後の膜のもろさを改善させることによって、高生産、かつ柔軟性と透明性に優れた熱線反射フィルムとその製造方法を提供する。また、当該熱線反射フィルムが具備された熱線反射体を提供する。
【解決手段】基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを有する熱線反射フィルムであって、当該屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなる複合高分子微粒子を含有することを特徴とする熱線反射フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コスト、かつ柔軟性に優れた熱線反射フィルム、その製造方法、及び当該熱線反射フィルムが具備された熱線反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を減らすために、建物や車両の窓ガラスから太陽光の熱線の透過を遮断する熱線反射フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
太陽から放射される光は、紫外領域から赤外光領域まで幅広いスペクトルを持っている。可視光は、紫色から黄色を経て赤色光に至る波長380〜780nmまでの範囲であり、太陽光の約45%を占めている。赤外光については、可視光に近いものは近赤外線(波長780〜2500nm)と呼ばれ、それ以上を中赤外線と称し、太陽光の約50%を占めている。この領域の光エネルギーは、紫外線と比較するとその強さは約10分の1以下と小さいが、熱的作用は大きく、物質に吸収されると熱として放出され温度上昇をもたらす。このことから熱線とも呼ばれ、これらの光線を遮蔽することにより、室内の温度上昇を抑制することができる。また、寒冷地の冬季の暖房熱を室外に逸散することを抑制することもできる。
【0004】
従来、熱線反射フィルムとして、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた積層膜を蒸着法、スパッタなどのドライ製膜法で作製する提案がされている。しかし、ドライ製膜法は製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、耐熱性素材に限定される等の問題がある。
【0005】
そこで、上記問題を有しない塗布法で作製する方法として、複素環系窒素化合物で表面処理したルチル型酸化チタン粒子とUV硬化樹脂を用いて高屈折率層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これらの方法では、低屈折率層及び高屈折率層を交互に塗布乾燥硬化を繰り返して積層するため、改善されたとはいえ、なお生産性が低い。
【0006】
さらに、球状ルチル型酸化チタン粒子のメタノール分散スラリーと、メタノールシリカゾルを用いて交互積層する方法で高屈折率層及び低屈折率層を形成する方法も開示されているが(特許文献3参照)、この方法では粒子同士の結着による膜形成を行っているため膜がもろく、さらに、ルチル型酸化チタン粒子の結着により形成した高屈折率層では、粒子界面に生じる空隙によりヘイズが高いという問題があった。さらに、有機溶剤を多量に使うため、安全性、環境上の問題がある。
【0007】
また、水系のスラリーを用いた場合、低温増粘を利用した同時塗布で積層体を作ることが容易に考えられる。しかしながら、この手法により生産性は飛躍的に高められるが、水の高い表面張力による乾燥時のひび割れ、ムラが大きく問題があった。さらに、乾燥後の膜物性ももろく、部分剥離などの問題が大きい。
【0008】
このような膜物性の改良のために無機微粒子と乳化重合して形成した高分子からなる複合高分子微粒子を含有させることも提案されている(例えば特許文献4参照)。しかしながら、高屈折率微粒子を用いた場合は、含有させた膜のヘイズが上がってしまい問題が大きいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−123766号公報
【特許文献2】特開2004−125822号公報
【特許文献3】特開2003−266577号公報
【特許文献4】特開平9−124877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、生産において問題となる乾燥時のひび割れ、ムラ、ヘイズ、更に、乾燥後の膜のもろさを改善させることによって、高生産、かつ柔軟性と透明性に優れた熱線反射フィルムとその製造方法を提供することである。また、当該熱線反射フィルムが具備された熱線反射体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、コラーゲンペプチド又はゼラチン、金属酸化物微粒子、乳化重合して形成した高分子からなる複合高分子微粒子を従来の無機酸化物微粒子の代わりに用いることで、水系高屈折率層塗布液の乾燥時のひび割れ、更に乾燥後の膜の柔軟性を向上することができることを見出し本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
1.基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを有する熱線反射フィルムであって、当該屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなる複合高分子微粒子を含有することを特徴とする熱線反射フィルム。
【0014】
2.前記屈折率が相互に異なる二層以上の層において、相互に隣接する層のうち、屈折率が0.1以上高い層が、前記複合高分子微粒子を含有することを特徴とする前記第1項に記載の熱線反射フィルム。
【0015】
3.前記無機微粒子が、金属酸化物微粒子であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の熱線反射フィルム。
【0016】
4.前記無機微粒子が、ルチル型酸化チタンであることを特徴とする前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルム。
【0017】
5.前記ゼラチン又はコラーゲンペプチドの重量平均分子量が、3万以下であることを特徴とする前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルム。
【0018】
6.前記高分子を形成する単量体の少なくとも一種は、ビニルエステル類であることを特徴とする前記第1項から第5項までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルム。
【0019】
7.前記第1項から第6項までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルムを製造する熱線反射フィルムの製造方法であって、当該熱線反射フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有することを特徴とする熱線反射フィルムの製造方法。
【0020】
8.前記第1項から第6項までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルムが具備されていることを特徴とする熱線反射体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記手段により、生産において問題となる乾燥時のひび割れ、ムラ、ヘイズ、更に、乾燥後の膜のもろさを改善させることによって、高生産、かつ柔軟性と透明性に優れた熱線反射フィルムとその製造方法を提供することができる。また、当該熱線反射フィルムが具備された熱線反射体を提供することができる。
【0022】
本発明において、乾燥時のひび割れ、更に乾燥後の膜の柔軟性を改善することが可能となる理由はいまだ明確ではないが、コラーゲンペプチド又はゼラチンにより無機微粒子(例えば金属酸化物微粒子)が高分散状態を保持したまま、乳化重合できることにより複合高分子微粒子の粒子径が均一に形成されたことによると考えられる。また、乳化重合させることにより無機微粒子の周りに高分子を偏在させることができることによると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の熱線反射フィルムは、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを有する熱線反射フィルムであって、当該屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなる複合高分子微粒子を含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項8までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0024】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記屈折率が相互に異なる二層以上の層において、相互に隣接する層のうち、屈折率が0.1以上高い層が、前記複合高分子微粒子を含有することが好ましい。さらに、前記無機微粒子が、金属酸化物微粒子であることが好ましい。この場合、当該無機微粒子が、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。
【0025】
本発明においては、前記ゼラチン又はコラーゲンペプチドの重量平均分子量が、3万以下であることが好ましい。また、前記高分子を形成する単量体の少なくとも一種は、ビニルエステル類であることが好ましい。
【0026】
本発明の熱線反射フィルムを製造する熱線反射フィルムの製造方法としては、当該熱線反射フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0027】
本発明の熱線反射フィルムは、種々の態様の熱線反射体に好適に用いることができる。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0029】
(熱線反射フィルムの概要)
本発明の熱線反射フィルムは、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを有する熱線反射フィルムであることを特徴とする。また、当該屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなる複合高分子微粒子を含有することを特徴とする。
【0030】
本発明の熱線反射フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも一つ積層し、隣接する当該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上である態様であることが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の熱線反射フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であり、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0032】
一般に、熱線反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも一つにおいて、隣接する当該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、更に好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
【0033】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、20層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0034】
次いで、本発明の熱線反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
【0035】
本発明の熱線反射フィルムにおいては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも一つ積層した構成であればよいが、好ましい高屈折率層と低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0036】
また、本発明の熱線反射フィルムにおいては、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましいが、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全ての屈折率層が本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、本発明で規定する要件外の構成であっても良い。
【0037】
また、本発明の熱線反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては、1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては、1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0038】
(複合高分子微粒子)
本発明の熱線反射フィルムにおいては、屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなる複合高分子微粒子を含有することを特徴とする。
【0039】
すなわち、本発明に係る「複合高分子微粒子」は、分散剤として、あるいは保護・安定化剤としても機能し得るコラーゲンペプチド又はゼラチンと、無機微粒子と、乳化重合により形成された高分子とからなるものである。
【0040】
分散剤としても機能するコラーゲンペプチド又はゼラチンにより無機微粒子(例えば金属酸化物微粒子)が高分散状態を保持したまま、乳化重合できることにより複合高分子微粒子の粒子径が均一に形成することができる。また、乳化重合させることにより無機微粒子の周りに高分子を偏在させることができる。
【0041】
なお、必要に応じて、乳化重合反応を開始・促進するために、後述する重合開始剤を添加することが好ましい。
【0042】
本発明に係る複合高分子微粒子は、当該微粒子の表面に乳化重合により形成された高分子が偏在している構成が好ましく、更に好ましくは、実質的に当該高分子で被覆している状態が好ましい。
【0043】
複合高分子微粒子は、当該微粒子が含有される層の厚さの半分以下の体積平均粒径を持たせることが好ましい。具体的には100nm以下、更には50nm以下の平均粒径が好ましい。
【0044】
本発明に係る無機微粒子としては、熱線反射フィルムにおいて従来用いられている種々の無機微粒子を用いることができるが、金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。
【0045】
〔金属酸化物粒子〕
本発明に係る金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
【0046】
金属酸化物粒子の含有量は、50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。金属酸化物粒子の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物粒子の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、熱線反射フィルムを形成することの容易となる。
【0047】
また、各屈折率層において、金属酸化物粒子(F)とその他構成成分(B)の質量比(F/B)としては、0.5〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10である。
【0048】
本発明に係る高屈折率層で用いる金属酸化物粒子としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiOがより好ましい。TiOとしては、ゾルの形態で塗布液に添加するのが好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、更に屈折率が高いことから好ましい。
【0049】
本発明の高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0以上で体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子を用いることが好ましく、例えば酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン等を用いることができる。
【0050】
本発明の熱線反射フィルムにおいては、金属酸化物微粒子として、特に、体積平均粒径100nm以下のルチル型酸化チタンを、高屈折率層に添加することが好ましく、金属酸化物を高屈折率層と低屈折率層の両層に添加することがより好ましい。
【0051】
本発明において、高屈折率層中における金属酸化物の含有量としては、高屈折率層全質量の15質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、20質量%以上、40質量%以下である。
【0052】
《ルチル型酸化チタン》
一般的に、酸化チタン粒子は、粒子表面の光触媒活性の抑制や、溶媒等への分散性を向上する目的で表面処理を施された状態で使用されることが多く、例えば、酸化チタン粒子表面をシリカからなる被服層で覆われた粒子表面が負電荷を帯びたものや、アルミニウム酸化物からなる被覆層が形成されたpH8〜10(25℃におけるpH)で表面が正電荷を帯びたものが知られている。
【0053】
本発明で用いられる酸化チタン粒子は、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)の酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0054】
ここでいう「体積平均粒径」とは、媒体中に分散された1次粒子又は2次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
【0055】
本発明に係るルチル型酸化チタン粒子の体積平均粒径は、100nm以下であることを特徴とするが、4〜50nmであることが好ましく、より好ましくは4〜30nmである。体積平均粒径が100nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0056】
本発明に係るルチル型酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd、d・・・d・・・dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n・・・n・・・n個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの表面積をa、体積をvとした場合に、体積平均粒径m={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0057】
さらに、本発明に係る酸化チタン粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0058】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
〈二酸化チタンゾルの製造方法〉
本発明においては、熱線反射フィルムを製造する方法として、水系高屈折率層塗布液を調製する際に、ルチル型の酸化チタンとして、25℃におけるpHが1.0以上、3.0以下で、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルを用いることが好ましい。
【0059】
一般的に酸化チタン粒子は、粒子表面の光触媒活性の抑制や、溶媒等への分散性を向上する目的で表面処理を施された状態で使用されることが多く、例えば酸化チタン粒子表面をシリカからなる被服層で覆われた粒子表面が負電荷を帯びたものや、アルミニウム酸化物からなる被覆層が形成されたpH8〜10で表面が正電荷を帯びたものが知られているが、本発明においては、このような表面処理が施されていない、25℃℃におけるpHが1.0〜3.0で、かつゼータ電位が正である酸化チタンの水系ゾルが用いることが好ましい。
【0060】
本発明で用いることのできるルチル型酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0061】
また、本発明に係るルチル型の酸化チタンのその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、あるいは国際公開第2007/039953号、段落番号0011〜0023の記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
【0062】
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物又はアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物及び無機酸で処理する工程(2)からなる。本発明では工程(2)により得られた、無機酸により、25℃においてpH1〜3に調整されたルチル型酸化チタンの水系ゾルを用いることができる。
【0063】
〔無機微粒子の分散剤〕
〈ゼラチン、コラーゲンペプチド〉
本発明に係る複合高分子微粒子は、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなることを特徴とする。
【0064】
本発明に係る無機微粒子の分散剤としてのゼラチンはいずれの品種も用いることができるが、好ましくは重量平均分子量が3万以下の高分子量成分を含有しない低分子量ゼラチン又はコラーゲンペプチドを用いることが好ましい。
【0065】
一般に、ゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンや、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したもの等がある。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。
【0066】
本発明に係る低分子量ゼラチン又はコラーゲンペプチドとは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチンを、ゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸又はアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下又は加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用して、低分子化することにより得たものをいう。本発明においては、特に酸処理ゼラチン又はアルカリ処理ゼラチンを加水分解して10万以上の高分子量成分を除去した低分子量ゼラチン、及びゼラチン分解酵素を用いて作製したコラーゲンペプチドを好ましく使用することができ、特にアルカリ処理ゼラチンを加水分解した低分子量ゼラチンが好ましい。
【0067】
当該低分子量及びコラーゲンペプチドの分子量としては、重量平均分子量として1000以上、3万以下のものが好ましく、より好ましくは5000以上、3万以下である。ゼラチンの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミットクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0068】
〔単量体〕
本発明において前記高分子を形成する単量体としては、乳化重合可能なものであり、実質的に水溶液に溶解しないものが好ましい。また、単独で重合しても、複数の単量体を共重合してもよい。
【0069】
本発明において用いることができる単量体を以下に例示する。なお、本発明においては、前記高分子を形成する単量体の少なくとも一種は、ビニルエステル類であることが好ましい。
【0070】
ビニルエステル類:ビバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、オクチル酸ビニルアクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等、メタクリル酸エステル類:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等、アクリルアミド類:アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミドなど。また、アルキルオキシアクリルアミドとして、メトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド等、
メタクリルアミド類:メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド、メトキシメチルメタアクリルアミド、ブトキシメチルメタアクリルアミド等、
アリル化合物:アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなど、
ビニルエーテル類:アルキルビニルエーテル(例えばヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなど)、
ビニルエステル類:ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレートなど、
イタコン酸ジアルキル類:イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなど。フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類:ジブチルフマレートなどその他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレンなどが挙げられる。
【0071】
〔重合開始剤〕
本発明においては、重合開始剤は、重合溶剤に可溶ならば任意に採用でき、過酸化カリウム、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)−ハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシ−ブチル)]プロピオンアミド}等のアミン基、イミダゾール基、アミジノ基、ピリミジン基等を有するカチオン性の水溶性アゾ化合物、及びこれらの塩;4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等のカルボキシル基、スルホン酸基等を有するアニオン性の水溶性アゾ化合物、及びこれらの塩;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2′−アゾビス[N−(2−カルボキシルエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]等の両性の水溶性アゾ化合物等が挙げられる。
【0072】
[複合高分子微粒子の作製方法]
本発明における複合高分子微粒子の作製は、以下の操作による。無機酸化物微粒子をゼラチン、又はコラーゲンペプチド、0.1〜20質量%を用いて分散安定化させた水溶液を調製する。この水溶液に対して、無機酸化物微粒子の質量%に対して1〜50質量%の単量体と、単量体に対して0.05〜5質量%の重合開始剤、0.1〜20質量%の分散剤を用い、約30〜100℃、好ましくは60〜90度で3〜8時間、撹拌下で重合することによって得られる。膜物性の向上のために複合高分子微粒子は膜中に好ましくは5〜50%含有することが好ましく、より好ましくは10〜30%含有することが好ましい。
【0073】
(基材)
本発明に係る基材(「支持体」ともいう。)としては、透明の有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0074】
例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を二層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0075】
支持体の厚さは、5〜200μm程度が好ましく、更に好ましくは15〜150μmである。
【0076】
また、本発明に係る支持体は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上で、特に90%以上であることが好ましい。支持体が上記透過率以上でことにより、熱線反射フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上にすることに有利であり、好ましい。
【0077】
また、上記樹脂等を用いた支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0078】
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、又は支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0079】
また、本発明に用いられる支持体は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された支持体は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
【0080】
本発明に係る支持体は、製膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0081】
(屈折率層のその他の添加剤)
本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率が相互に異なる各層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0082】
〔熱線反射フィルムの製造方法〕
本発明の熱線反射フィルムの製造方法としては、種々の方法を採用し得る。本発明においては、特に、当該熱線反射フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。すなわち、本発明の熱線反射フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されユニットを積層して構成されるが、具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0083】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0084】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0085】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、更に好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0086】
塗布及び乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0087】
一方、熱線吸収層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0088】
紫外線照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0089】
UVカット性層の形成では、上述の樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、マット剤、熱可塑性樹脂等の添加剤を加えることができる。また樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を用いて平滑層を形成する際に使用する溶媒としては、公知のものを使用することができる。
【0090】
〔熱線反射フィルムの応用〕
本発明の熱線反射フィルムは、幅広い分野において、種々の態様の熱線反射体に好適に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0091】
特に、本発明に係る熱線反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0092】
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、熱線反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また熱線反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の熱線反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0093】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0094】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0095】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0097】
実施例1
[無機酸化物微粒子の作製]
〈コロイダルシリカゾル〉
日本化学工業製シリカドール20Pを用いた。
【0098】
〈酸化ジルコニウム粒子ゾル〉
日産化学製 ナノユースZR30−ALを使用した。
【0099】
〈酸化チタン粒子ゾルの調製〉
二酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液(TiO濃度100g/L)10L(リットル)に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)を30L撹拌下で添加し、90℃に昇温し、5時間熟成した後、塩酸で中和、濾過、水洗した。なお、上記反応(処理)において、二酸化チタン水和物は公知の手法に従い、硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られたものを用いた。
【0100】
塩基処理チタン化合物をTiO濃度20g/Lになるよう純水に懸濁させ、撹拌下クエン酸をTiO量に対し0.4モル%加え昇温した。液温が95℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lになるように加え、液温を維持しつつ3時間撹拌して、酸化チタン粒子が20質量%となるようにして、酸化チタン粒子ゾル溶液を調製した。
【0101】
得られた酸化チタンゾル液のpH及びゼータ電位を測定したところ、25℃におけるpHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。さらに、マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。また、酸化チタンゾル液を105℃で3時間乾燥させて粒子紛体を得て、日本電子データム社製JDX−3530型)を用いてX線回折の測定を行い、ルチル型酸化チタン粒子であることを確認した。
【0102】
《複合高分子微粒子分散液1〜9の合成》
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却機を取りつけ窒素ガスを導入し、脱酸素を行いつつ、上記酸化チタンゾル溶液120g、豚皮酸処理分子量3万(5%水溶液)240gを加え、更に開始剤として過流酸アンモニウム0.03gを添加し、80℃まで加熱した。次いで単量体酢酸ビニル10gを添加して4時間反応させた。その後、冷却し複合高分子微粒子分散液を得た。
【0103】
分散剤(ゼラチン又はコラーゲンぺプチド)、単量体、無機粒子分散液を表1に示したように選択し、複合高分子微粒子1〜9を得た。
【0104】
上記複合高分子微粒子1〜7及び9の体積平均粒径は39nmであった。また複合高分子微粒子8の体積平均粒径は44nmであった。
【0105】
《分散液10〜13の合成》
酸化チタンゾル120gに対し、純水を250g加え、分散液10とした。
【0106】
酸化チタンゾル120に対して、純水240gを加え、さらに、開始剤として過流酸アンモニウム0.03gを添加し、80℃まで加熱した。次いで酢酸ビニル10gを添加して4時間反応させた。これを分散液11とした。
【0107】
酸化チタンゾル120gに対して、低分子ゼラチン(豚皮酸処理分子量3万 9%溶液)240g、純水10gを加え、分散液12とした。
【0108】
酸化チタンゾル120gに対してコラーゲンペプチド((9%溶液))240g、純水10gを加え分散液13とした。
【0109】
上記分散液10の酸化チタンゾルの体積平均粒径は35nm、分散液11における酸化チタン含有微粒子の体積平均粒径は37nmであった。また分散液12及び13の酸化チタン含有微粒子の体積平均粒径は39nmであった。
【0110】
上記方法により調製した各種複合高分子微粒子分散液及び分散液の内容(成分)について表1にまとめて示す。
【0111】
【表1】

【0112】
(高屈折率層塗布液の調製)
上記複合高分子微粒子分散液1〜8及び分散液10〜13を用いて、下記順序で添加、混合して、高屈折率層塗布液1〜12を調製した。
【0113】
はじめに1)各複合高分子微粒子分散液を攪拌しながら50℃まで昇温した後、2)高分子ゼラチン(豚皮酸処理ゼラチン平均分子量13万)と3)純水を添加し、90分間攪拌した後、4)界面活性剤を添加して、高屈折率層塗布液を調製した。
【0114】
複合高分子微粒子分散液又は分散液 180g
5.0質量%高分子量ゼラチン水溶液 100g
純水 150g
5.0質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、花王社製) 0.45g
(低屈折率層塗布液の調製)
コロイダルシリカ又は複合高分子微粒子分散液9を攪拌しながら40℃まで昇温した後、2)低分子量ゼラチン(GelL1)を添加して10分間攪拌した。次いで、3)高分子ゼラチン(GelH1)と4)純水を添加し、10分間攪拌した後、5)界面活性剤を添加する調製パターンで、低屈折率層塗布液1及び2を調製した。
【0115】
低屈折率層塗布液1
20質量%コロイダルシリカ 68g
5.0質量%低分子量ゼラチン(GelL1)水溶液 180g
5.0質量%高分子量ゼラチン(GelH1)水溶液 100g
純水 240g
5.0質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P、4級アンモニウム塩系カチオン性
界面活性剤、花王社製) 0.64g
GelL1はアルカリ処理により加水分解を施した平均分子量が2万の低分子量ゼラチンであり、GelH1は平均分子量が13万の酸処理ゼラチン(高分子量ゼラチン)である。
【0116】
低屈折率層塗布液2
複合高分子微粒子分散液9 88g
5.0質量%低分子量ゼラチン(GelL1)水溶液 180g
5.0質量%高分子量ゼラチン(GelH1)水溶液 80g
純水 240g
5.0質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P、4級アンモニウム塩系カチオン性
界面活性剤、花王社製) 0.64g
GelL1はアルカリ処理により加水分解を施した平均分子量が2万の低分子量ゼラチンであり、GelH1は平均分子量が13万の酸処理ゼラチン(高分子量ゼラチン)である。
【0117】
上記方法により調製した各種高屈折率層塗布液及び低屈折率層塗布液と分散液との対比を表2にまとめて示す。
【0118】
【表2】

【0119】
〈高屈折率層の形成〉
上記調製した高屈折率層用塗布液を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥膜厚が135nmとなる条件で、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、高屈折率層を形成した。
【0120】
〈低屈折率層の形成〉
次いで、低屈折率層用塗布液を45℃に保温しながら、45℃に加温した上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの高屈折率層1上に、乾燥膜厚が175nmとなる条件で、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、低屈折率層を形成した。
【0121】
〈熱線反射フィルムの作製〉
上記の操作で表3に記入の高屈折率層塗布液、及び低屈折率層塗布液を用いて作製した高屈折率層/低屈折率層から構成されるユニットを更に5ユニット積層し、それぞれ6層の高屈折率層及び低屈折率層(合計12層)から構成された熱線反射フィルム1〜14を得た。
【0122】
《熱線反射フィルムの評価》
上記作製した各熱線反射フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0123】
(可視光透過率及び熱線透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各熱線反射フィルムの300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、熱線(赤外光)透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。
【0124】
(柔軟性の評価)
〈熱線透過率の変化幅の測定〉
上記の熱線透過率を測定した各熱線反射フィルムについて、JIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(井元製作所社製、型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm)を用いて、30回の屈曲試験を行った。
【0125】
30回の屈曲試験を行った後の熱線反射フィルムについて、上記と同様の方法で、1200nmにおける熱線透過率を測定し、屈曲試験前後での熱線透過率の変化幅(屈曲試験後の熱線透過率(%)−屈曲試験前の熱線透過率(%))を求めた。熱線透過率の上昇幅が小さいほど、柔軟性に優れていることを表す。
【0126】
〈屈折率層の目視観察〉
作製した各熱線反射フィルムについてJIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(井元製作所社製、型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm)を用いて、1000回の屈曲試験を行った後、熱線反射フィルム表面を、目視観察し、下記の基準に従って柔軟性を評価した。
【0127】
◎:熱線反射フィルム表面に、折り曲げ跡やひび割れは観察されない
○:熱線反射フィルム表面に、僅かに折り曲げ跡が観察される
△:熱線反射フィルム表面に、微小なひび割れが僅かに観察される
×:熱線反射フィルム表面に、明らかなひび割れが多数発生している
以上により得られた測定・評価結果を、表3に示す。
【0128】
【表3】

【0129】
表3に示した結果から、本発明の熱線反射フィルムは乾燥後も微小なひび割れがなく、高い可視光透過率と低い熱線透過率を示していることがわかる。
【0130】
さらに、柔軟性試験の結果から、乾燥後の膜に柔軟性が付加されていることがわかる。
【0131】
実施例2
〔熱線反射体の作製〕
実施例1で作製した近赤外反射フィルム1〜5を用いて近赤外反射体1〜5を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、試料1〜5の近赤外反射フィルムをそれぞれアクリル接着剤で接着して、近赤外反射体1〜5を作製した。
【0132】
〔評価〕
上記作製した近赤外反射体1〜5について、分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近熱線反射フィルムの800〜1400nmの領域における反射率を測定し、その平均値を求め、これを近赤外反射率とした。その結果、熱線反射体1〜5は、近赤外反射体のサイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の近赤外反射フィルムを利用することで、優れた熱線反射性を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを有する熱線反射フィルムであって、当該屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、少なくともコラーゲンペプチド又はゼラチンと無機微粒子と乳化重合により形成された高分子とからなる複合高分子微粒子を含有することを特徴とする熱線反射フィルム。
【請求項2】
前記屈折率が相互に異なる二層以上の層において、相互に隣接する層のうち、屈折率が0.1以上高い層が、前記複合高分子微粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱線反射フィルム。
【請求項3】
前記無機微粒子が、金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱線反射フィルム。
【請求項4】
前記無機微粒子が、ルチル型酸化チタンであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルム。
【請求項5】
前記ゼラチン又はコラーゲンペプチドの重量平均分子量が、3万以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルム。
【請求項6】
前記高分子を形成する単量体の少なくとも一種は、ビニルエステル類であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルムを製造する熱線反射フィルムの製造方法であって、当該熱線反射フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有することを特徴とする熱線反射フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の熱線反射フィルムが具備されていることを特徴とする熱線反射体。

【公開番号】特開2012−176511(P2012−176511A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39646(P2011−39646)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】