説明

熱線遮断フィルムとその製造方法

【課題】高効率の熱遮断性と、熱割れ防止性を両立させ、さらには、製造コストが安く、大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ低ヘイズで可視光透過率が高い熱線遮断フィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであって、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする熱線遮断フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線反射性、可視光透過性、耐傷性及び熱割れ防止性に優れた熱線遮断フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を減らす観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する熱線遮断フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
太陽から放射される光は、紫外領域から赤外光領域まで幅広いスペクトルを持っている。可視光は、紫色から黄色を経て赤色光にいたる波長380〜780nmまでの範囲であり、太陽光の約45%を占めている。赤外光については、可視光に近いものは近赤外線(波長780〜2500nm)と呼ばれ、それ以上を中赤外線と称し、太陽光の約50%を占めている。この領域の光エネルギーは、紫外線と比較するとその強さは約10分の1以下と小さいが、熱的作用は大きく、物質に吸収されると熱として放出され温度上昇をもたらす。このことから熱線とも呼ばれ、これらの光線を遮蔽することにより、室内の温度上昇を抑制することができる。また、寒冷地の冬季の暖房熱を室外に逸散することを抑制することもできる。
【0004】
熱線遮断フィルムとしては、熱線を反射するタイプ(例えば、特許文献1及び2参照)と、熱線を吸収するタイプ(例えば、特許文献3及び4参照)が知られている。
【0005】
熱線を吸収するタイプは、主には樹脂に金属酸化物や色素等の赤外吸収剤を添加してコーティングするタイプで、日射を吸収する部分と吸収しない部分ができると、ガラス内の温度差が大きくなることから、ガラス板の熱割れを誘引する可能性が高いという問題があった。
【0006】
一方、熱線を反射させるタイプは、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて形成する方法や、屈折率の異なる樹脂層を多層構成にする多層フィルムが提案されている。
【0007】
しかし、熱線を反射させるタイプは、熱割れ等の問題はないものの、ドライ製膜法や多層フィルム製膜法は、積層膜形成に用いる真空装置等が大型になったり、製膜装置が複雑になったり、製造コストが高く、大面積化が困難、柔軟性がない等の問題を抱えている。
【0008】
さらに、近年では、省エネルギー対策への関心の高まりから、更なる熱線遮断性向上の要望が高くなり、熱線の反射と吸収を併用するタイプも提案されている(例えば特許文献5)。しかし、熱線の反射と吸収を併用するタイプを併用しても、熱線吸収タイプの根幹的問題である熱割れは解決しておらず、熱割れをせず高効率の熱線遮断性を有する熱線遮断フィルムが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−331296号公報
【特許文献2】特開2000−117871号公報
【特許文献3】特開2000−927号公報
【特許文献4】特開平08−281860号公報
【特許文献5】特表2008−528313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、高効率の熱遮断性と、熱割れ防止性を両立させ、さらには、製造コストが安く、大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ低ヘイズで可視光透過率が高い熱線遮断フィルムとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであって、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする熱線遮断フィルム。
【0013】
2.前記熱線吸収層の表面粗さは、算術平均表面粗さ(Ra)が5〜10nmの範囲内であり、かつ最大断面高さ(Rt)が100〜500nmの範囲内であることを特徴とする前記第1項に記載の熱線遮断フィルム。
【0014】
3.前記熱伝導性フィラーは、シリカ又はアルミナを含有し、かつ平均粒径が0.15〜1.0μmの範囲内であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の熱線遮断フィルム。
【0015】
4.屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子を含有することを特徴とする前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の熱線遮断フィルム。
【0016】
5.前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の熱線遮断フィルムを製造する熱線遮断フィルムの製造方法であって、当該熱線遮断フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有することを特徴とする熱線遮断フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、高効率の熱遮断性と、熱割れ防止性を両立させ、さらには、製造コストが安く、大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ低ヘイズで可視光透過率が高い熱線遮断フィルムとその製造方法を提供することができる。
【0018】
すなわち、本発明においては、熱線反射層と熱線吸収層の両方を有し、かつ熱線吸収層に特定の熱伝導性フィラーを含有させたり、又はフィルム表面に適切な凹凸形状を形成することにより、熱線吸収層の放熱現象を向上させることができる。その結果、熱割れを抑制し、高効率の熱線遮断性を有する熱線遮断フィルムを得ることができる。さらに、構成層の形成において、水系塗布液を用いることにより、製造コストが安く、大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ低ヘイズで可視光透過率が高い熱線遮断フィルムを得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の熱線遮断フィルムは、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであって、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0020】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記熱線吸収層の表面粗さは、算術平均表面粗さ(Ra)が5〜10nmの範囲内であり、かつ最大断面高さ(Rt)が100〜500nmの範囲内であること好ましい。さらに、前記熱伝導性フィラーは、シリカ又はアルミナを含有し、かつ平均粒径が0.15〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子を含有することが好ましい。
【0022】
本発明の熱線遮断フィルムを製造する方法としては、当該熱線遮断フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0023】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0024】
《熱線遮断フィルムの概要》
本発明の熱線遮断フィルムは、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであることを特徴とする。また、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする。
【0025】
本発明においては、本発明の効果発現の観点から、前記熱線吸収層の表面粗さは、算術平均表面粗さ(Ra)が5〜10nmの範囲内であり、かつ最大断面高さ(Rt)が100〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0026】
本発明の熱線遮断フィルムは、上記のように、熱線反射層と熱線吸収層の両方を有し、かつ熱線吸収層に特定の熱伝導性フィラーを含有したり、又はフィルム表面に適切な凹凸形状を形成することにより、熱線吸収層の放熱現象を向上させ、その結果、熱割れを抑制し、高効率の熱線遮断性を有する熱線遮断フィルムを得ることができる。
【0027】
また、本発明の熱線遮断フィルムを製造する方法としては、当該熱線遮断フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有する態様の製造方法を採用することで、製造コストが安く、大面積化が可能であり、柔軟性があり、かつ低ヘイズで可視光透過率が高い熱線遮断フィルムを製造することができる。
【0028】
本発明の熱線遮断フィルムの基本光学特性としては、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては50%以上で、かつ、波長900〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有し、かつ波長900〜1400nmの領域の透過率が10%以下であることが好ましい。
【0029】
《基材》
本発明に係る基材(「支持体」ともいう。)としては、透明の有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0031】
支持体の厚さは、5〜200μm程度が好ましく、更に好ましくは15〜150μmである。
【0032】
また、本発明に係る支持体は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上で、特に90%以上であることが好ましい。支持体が上記透過率以上でことにより、熱線遮断フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上にすることに有利であり、好ましい。
【0033】
また、上記樹脂等を用いた支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、又は支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられる支持体は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された支持体は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
【0036】
本発明に係る支持体は、製膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0037】
《熱線吸収層》
本発明の熱線遮断フィルムは、熱線反射ユニットを有する基材面とは反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有し、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする。
【0038】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、当該熱線吸収層の表面粗さは、算術平均表面粗さ(Ra)が5〜10nmの範囲内であり、かつ最大断面高さ(Rt)が100〜500nmの範囲内であること好ましい。さらに、前記熱伝導性フィラーは、シリカ又はアルミナを含有し、かつ平均粒径が0.15〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
〈紫外線硬化樹脂〉
本発明に係る熱線吸収層は、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有することを特徴とする。
【0040】
本発明において、紫外線硬化樹脂は、他の樹脂より硬度、平滑性、更にはITO、ATOや熱伝導性の金属酸化物の分散性の点でも有利である。
【0041】
紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。特に好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル系樹脂を用いることができる。
【0042】
アクリル系樹脂組成物としては、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させたもの等が挙げられる。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0043】
光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、一種又は二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0044】
本発明に係るアクリル系樹脂は、硬度、平滑性、透明性の観点から、国際公開第2008/035669号に記載されているような表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むことが好ましい。ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また、感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、透明性、平滑性、硬度をバランスよく満たすことができる。
【0045】
また、本発明に係るアクリル系樹脂には、屈折率を調整するできる点で、含フッ素ビニルモノマーを用いることもできる。含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やR−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0046】
〈熱線吸収剤〉
本発明に係る熱線吸収層は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有することを特徴とする。
【0047】
本発明においては、無機熱線吸収剤として、可視光線透過率、熱線吸収性、樹脂中への分散適性等の点から、錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を用いることを要する。
【0048】
平均粒径としては、分散性や熱線吸収性の観点から、5〜100nmが好ましく、特に10〜50nmが好ましい。
【0049】
本発明における平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、例えば50個のITO又はATO粒子を抽出して該粒径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
【0050】
上記ITO、ATO粒子の熱線吸収層における含有量は、上記層全体含有量によるが、層全体の含有%で表した場合、1〜80%、特に5〜50%の範囲であることが好ましい。含有量が1%以上であれば、十分な熱線吸収効果が現れ、80%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0051】
本発明においては、本発明の効果を奏する範囲内で、ITO、ATO以外の金属酸化物や、有機系、金属錯体等の他熱線吸収剤を併用することもできる。例えば、ジイモニウム系化合物、アルミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物等を併用することもできる。
【0052】
〈熱伝導性フィラー〉
本発明の熱線遮断フィルムは、熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする。
【0053】
本発明に用いることができる熱伝導性フィラーは、ITO又はATO粒子で赤外吸収された熱を効率的に放熱することができれば、特に限定はなく、例えば、銅、アルミニウム、銀、ステンレス等の金属、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ケイ素、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウム等の金属窒化物、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化鉄、炭化ホウ素等の金属炭化物等の微粒子が挙げられる。特に樹脂の分散性や、可視光透過率等への影響が少ないことから、金属酸化物が好ましい。更に好ましくは、熱伝導性=放熱効率が高く、光触媒性等を有しないことから、酸化アルミニウム(アルミナ)と酸化珪素(シリカ)が好ましく、更に好ましくは酸化アルミニウムである。
【0054】
形状としては、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、など種々の形状を例示することができる。放熱効率の点から有利なのは、粒子状と針状である。
【0055】
熱伝導性フィラーは、樹脂との界面の接着性を高めたり、分散性を向上させるために、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。
【0056】
平均粒径としては、0.01〜2.0μmが好ましく、特に0.05〜1.5μmが好ましく、更に好ましくは0.15〜1.0μmである。平均粒径が当該範囲にあると、放熱効率及び可視光線透過率が高くなるため好ましい。
【0057】
なお、本願においては、形状が球状でない熱伝導性フィラーの粒径は、当該熱伝導性フィラーの体積と同等の体積の球の粒径と同等とした換算値を採用することとした。
【0058】
上記熱伝導性フィラーにおける含有量は、上記層全体含有量によるが、層全体の含有%で表した場合、1〜50%、特に5〜30%の範囲であることが好ましい。含有量が1%以上であれば、十分な放熱効果が現れ、50%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0059】
本発明において、熱線吸収層の表面粗さは、JIS B 0601 (2001)に準じた測定において、算術平均表面粗さ(Ra)が5〜10nmの範囲内であり、かつ最大断面高さ(Rt)が100〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
上記表面粗さにすることによって、表面からの放熱効率が上がり、熱割れを抑制することができる。特に表面に熱導電性フィラーが配置して、上記表面粗さをすることによって、放熱する効率、表面積を稼げるので、特に有効であり、その場合の熱伝導性フィラーの粒径は、150〜1000nmの範囲が好ましい。熱線吸収層の表面粗さは、以下の方法で測定することができる。
【0061】
〈原子間力顕微鏡による表面粗さの測定〉
本発明に係る上記熱線吸収層の表面粗さは、JIS B 0601 (2001)に準じて、下記の方法・条件に従って、原子間力顕微鏡により得られる画像に基づいて測定することができる。
【0062】
測定試料を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。
【0063】
原子間力顕微鏡で得られた凹凸画像について、凹部及び/又は凸部が連なる方向に対して直角方向に任意に2本の直線を引き、この直線上の部分について、輪郭曲線(断面曲線)をそれぞれ求める。
【0064】
次に、これらの直線上についての輪郭曲線(断面曲線)から粗さを求める。場所を変えて20箇所測定して、その算術平均をRaとする。また、評価長さにおける輪郭曲線(断面曲線)の山高さの最大値と他に深さの最大値との和を最大断面高さとする。
【0065】
なお、本発明において用いた測定条件は下記の通りである。
装置:Nanoscope IIIa AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード:タッピングモード
走査速度:0.5Hz
測定視野:125μm
Zレンジ:断面曲線から得られたRaの7〜15倍
フラッテンフィルター
モード :フラッテンオート
オーダー:3
バネ定数K:11N/m
共振周波数F:127kHz
《熱線反射層ユニットの構成》
本発明の熱線遮断フィルムは、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有することを特徴とする。
【0066】
なお、以下においては、屈折率が相互に異なる二層以上の層のうち、相対的に屈折率が高い層を「高屈折率層」と呼び、相対的に屈折率が低いい層を「低屈折率層」と呼ぶことにする。
【0067】
熱線遮断フィルムの反射タイプにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で熱線(赤外)反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも二つ以上で、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましい。特に好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.4以上である。
【0068】
ユニット数としては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差によるが、好ましくは40ユニット以下、より好ましくは20ユニット以下であり、さらに好ましくは10ユニット)以下である。
【0069】
ちなみに、本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0070】
基材上に、屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0071】
本発明における高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0072】
本発明の熱線遮断フィルムにおいては、基材に隣接する層が、酸化珪素を含む低屈折率層で、最表層も酸化珪素を含む低屈折率層である層構成が好ましい。
【0073】
本発明における高屈折層及び低屈折率層は、いずれも金属酸化物粒子と水溶性樹脂を含有することが好ましい態様である。
【0074】
〔金属酸化物粒子〕
本発明に係る金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
【0075】
金属酸化物粒子の含有量は、50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。金属酸化物粒子の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物粒子の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、熱線遮断フィルムを形成することの容易となる。
【0076】
また、各屈折率層において、金属酸化物粒子(F)と各層を構成するバインダーである水溶性高分子(B)との質量比(F/B)としては、0.5〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10である。
【0077】
本発明に係る高屈折率層で用いる金属酸化物粒子としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiO(二酸化チタンゾル)がより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
【0078】
本発明で用いることのできる二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0079】
また、その他の二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0080】
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、4〜50nmであり、より好ましくは4〜30nmである。
【0081】
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素粒子を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
【0082】
本発明に係る二酸化ケイ素粒子は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0083】
本発明に係る酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径(一次粒子径)を測定し、それぞれd、d・・・d・・・dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n・・・n・・・n個存在する酸化チタン粒子の集団において、粒子1個当りの体積をvとした場合に、体積平均粒径m={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0084】
〔水溶性高分子〕
本発明においては、屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子を含有することが好ましい。
【0085】
本発明において用いることができる水溶性高分子としては、特に反応性官能基を有するポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0086】
本発明に係る「水溶性高分子」の「水溶性」とは、25℃の水媒体に対し1質量%以上溶解する溶解性をいう。
【0087】
本発明に係る高屈折層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液における水溶性高分子の濃度としては、0.3〜3.0質量%であることが好ましく、0.35〜2.0質量%の範囲であることがより好ましい。
【0088】
以下、各水溶性高分子の詳細について説明する。
【0089】
(反応性官能基を有するポリマー)
本発明において用いることができる水溶性高分子の一つとしては、反応性官能基を有するポリマーを用いることが好ましい。
【0090】
本発明に適用可能な水溶性高分子としては反応性官能基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0091】
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
【0092】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0093】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0094】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0095】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0096】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報及び同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0097】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0098】
本発明においては、反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0099】
(無機ポリマー)
本発明において用いることができる水溶性高分子の一つとしては、ジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることが好ましい。
【0100】
本発明に適用可能なジルコニウム原子を含む化合物は、酸化ジルコニウムを除くものであるが、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0101】
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
【0102】
上記ジルコニル原子を含む無機ポリマーの内の代表的な化合物の構造式を下記に示す。
【0103】
【化1】

【0104】
ただし、s、tは1以上の整数を表す。
【0105】
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いても良いし、異なる二種類以上の化合物を併用してもよい。
【0106】
ジルコニウム原子を含む化合物は、単独で用いても良いし、異なる二種類以上の化合物を併用してもよい。
【0107】
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0108】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手することができる。
【0109】
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
【0110】
【化2】

【0111】
ただし、s、t、uは1以上の整数を表す。
【0112】
前記無機ポリマーの添加量は、無機酸化物粒子100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部が更に好ましい。
【0113】
(増粘多糖類)
本発明においては、水溶性高分子として、増粘多糖類を用いることが好ましい。
【0114】
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0115】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物微粒子を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0116】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0117】
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0118】
増粘多糖類の含有量としては、5質量%以上、50質量%以下が好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。但し、その他の水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0119】
〈ゼラチン〉
本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率が相互に異なる二層以上の層においては、ゼラチンを含有することもできる。
【0120】
本発明に係るゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。
【0121】
(硬化剤)
本発明においては、バインダーである水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用することが好ましい。
【0122】
本発明に適用可能なる硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、水溶性高分子がポリビニルアルコールである場合には、ホウ酸及びその塩が好ましい。その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0123】
ホウ酸又はその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
【0124】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、二種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0125】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
【0126】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性高分子1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0127】
〔界面活性剤〕
本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層に、界面活性剤を添加しても良い。活性剤種としてはアニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの種類を使用することができる。特にアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤及びフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0128】
また本発明に係る界面活性剤の添加量としては、それぞれの塗布液を100質量%としたとき、固形分として0.005〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、更には0.01〜0.10質量%であることが好ましい。
【0129】
〔その他の添加剤〕
次いで、本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率が相互に異なる各層に適用可能なその他の添加剤について説明する。
【0130】
(アミノ酸)
本発明においては、更に、アミノ酸を添加することができる。
【0131】
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、等電点が6.5以下のいずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0132】
本発明に適用可能なアミノ酸に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0133】
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物粒子が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、水酸基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
【0134】
〔リチウム化合物〕
本発明においては、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子と共に、リチウム化合物を含有することができる。
【0135】
本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられ、その中でも水酸化リチウムが、本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
【0136】
本発明において、リチウム化合物の添加量としては、屈折率層に存在する金属酸化物粒子1g当たり、0.005〜0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03gである。
【0137】
(エマルジョン樹脂)
本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率が相互に異なる各層には、エマルジョン樹脂を含有することができる。
【0138】
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
【0139】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
【0140】
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0141】
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0142】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0143】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体又は共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0144】
(屈折率層のその他の添加剤)
本発明に係る熱線反射ユニットを構成する屈折率が相互に異なる各層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0145】
〔熱線遮断フィルムの製造方法〕
本発明の熱線遮断フィルムの製造方法としては、種々の方法を採用し得る。本発明においては、特に、当該熱線遮断フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。すなわち、本発明の熱線遮断フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されユニットを積層して構成されるが、具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0146】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0147】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0148】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0149】
塗布及び乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0150】
一方、熱線吸収層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0151】
紫外線照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0152】
UVカット性層の形成では、上述の樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、マット剤、熱可塑性樹脂等の添加剤を加えることができる。また樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を用いて平滑層を形成する際に使用する溶媒としては、公知のものを使用することができる。
【0153】
〔熱線遮断フィルムの応用〕
本発明の熱線遮断フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0154】
特に、本発明に係る熱線遮断フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0155】
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、熱線遮断フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また熱線遮断フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の熱線遮断フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0156】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0157】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0158】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0159】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
《熱線遮断フィルムの作製》
(高屈折率層用塗布液1の調製)
純水の10.3部に、増粘多糖類として1.0%の酸処理ゼラチン(等電点:9.5、平均分子量:2万)を140.3部、14.8%のピコリン酸水溶液を17.3部と、ホウ酸の5.5%水溶液の2.58部とを、それぞれ添加、混合した。その後、下記酸化チタン分散液1の38.2部を添加、混合して、さらに、フッ素系カチオン性界面活性剤として、サーフロンS221(AGCセイミケミカル社製)を0.067部添加した。最後に純水で223部に仕上げて、高屈折率層用塗布液1を調製した。なお、高屈折率層用塗布液1における界面活性剤であるサーフロンS221の含有量は、0.03%である。
【0160】
〈酸化チタン分散液1の調製〉
体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0%酸化チタンゾルの28.9部と、14.8%のピコリン酸水溶液を5.41部と、水酸化リチウムの2.1%水溶液の3.92部とを、混合、分散して酸化チタン分散液を調製した。
【0161】
(低屈折率層用塗布液1の調製)
ポリ塩化アルミニウム(多木化学製、タキバイン#1500)の23.5%水溶液を9.18部と、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOS)の10%水溶液を510部と、ホウ酸の5.5%水溶液の103.4部と、水酸化リチウムの2.1%水溶液の4.75部とを、混合、分散し、純水で1000部に仕上げて、酸化ケイ素分散液1を調製した。
【0162】
次いで、17.6部の純水に、1.0%のタマリンドシードガム水溶液の26.2部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0%溶液の3.43部と、2.1%のピコリン酸水溶液を0.06部とを添加、混合した後、上記酸化ケイ素分散液1の96.5部を添加、混合した。さらに、フッ素系カチオン性界面活性剤として、サーフロンS221(AGCセイミケミカル社製)を0.045部添加した。最後に純水で150部に仕上げて、低屈折率層用塗布液1を調製した。なお、低屈折率層用塗布液1における界面活性剤であるサーフロンS221の含有量は、0.03%である。
【0163】
(最表層用塗布液の調製)
前記低屈折率層用塗布液1の調製において、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤であるオルフィンE1004(日信化学社製)の塗布液全質量に対する添加量(0.03%)を、0.06%に変更した以外は同様にして、最表層用塗布液を調製した。
【0164】
(熱線反射積層体の形成方法)
15層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、層構成として上記調製した低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1をそれぞれ交互に7層ずつ計14層積層し、その上に上記最表層用塗布液を積層した計15層を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、同時重層塗布を行った後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、15層からなる熱線反射積層体フィルム1を作製した。
【0165】
(熱線吸収層用塗布液1の調製)
日本合成化学株式会社製 UV−7600B(UV硬化型ハードコート材)100部に、光重合開始剤イルガキュア184(BASFジャパン製)5部、ITO粉末(住友金属鉱山製 超微粒子ITO)100部を添加して、溶剤としてメチルエチルケトンで希釈して、固形分30%の熱線吸収層塗布液1を作製した。
【0166】
(熱線吸収層の形成方法及び熱線遮断フィルム1作製)
熱線吸収層用塗布液1を、熱線反射積層体フィルム1に塗布した。乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるように上記支持体にワイヤーバーで塗布した後、空気雰囲気下で、アイグラフィックス社製のUV硬化装置(高圧水銀ランプ使用)にて、硬化条件;400mJ/cmで硬化を行い、その後乾燥条件;80℃、3分で乾燥して熱線吸収層付きの熱線遮断フィルム1を作製した。
【0167】
(熱線遮断フィルム2の作製)
熱線吸収層用塗布液1にPMMA(1)(MP5500(粒径0.4μm))を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム2を作製した。
【0168】
(熱線遮断フィルム3の作製)
低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1をそれぞれ1層ずつ、その上に上記最表層用塗布液を積層した計3層を熱線反射積層体フィルム1同様にして、熱線反射積層体フィルム3を作製した。さらに熱線吸収層用塗布液1にシリカ(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム3を作製した。
【0169】
(熱線遮断フィルム4の作製)
熱線吸収層用塗布液1のITO粉末の代わりにジイモニウム色素(日本カートリット製CIR−RL)を10質量部添加し、更にシリカ(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム4を作製した。
【0170】
(熱線遮断フィルム5の作製)
熱線吸収層用塗布液1のITO粉末の代わりにセシウム含有酸化タングステン(平均粒径44nm、住友金属鉱山YMF−1)を添加し、さらに、シリカ(1)(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル5を作製した。
【0171】
(熱線遮断フィルム6の作製)
熱線吸収層用塗布液1のUV−7600B(UV硬化型ハードコート材)の代わりにアクリル樹脂:三菱レイヨン製LR−360を添加し、UV照射以外は熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム6を作製した。
【0172】
(熱線遮断フィルム7の作製)
熱線吸収層用塗布液1にAg:銀ナノ粒子 DOWAエレクトロニクス製(粒径0.02μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム7を作製した。
【0173】
(熱線遮断フィルム8の作製)
熱線吸収層用塗布液1にTiO:酸化チタン粒子FTR−700 堺化学製(粒径0.2μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム8を作製した。
【0174】
(熱線遮断フィルム9の作製)
熱線吸収層用塗布液1にシリカ(2)(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径2.0μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル9を作製した。
【0175】
(熱線遮断フィルム10の作製)
熱線吸収層用塗布液1にシリカ(1)(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル10を作製した。
【0176】
(熱線遮断フィルム11の作製)
熱線吸収層用塗布液1にアルミナ(1)(ビックケミー製NANOBYK−3600アルミナ分散液 粒径0.04μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル11を作製した。
【0177】
(熱線遮断フィルム12の作製)
熱線吸収層用塗布液1にアルミナ(2)(大明化学製TM−5D 粒径0.2μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル12を作製した。
【0178】
(熱線遮断フィルム13の作製)
熱線吸収層用塗布液1にアルミナ(3)(アドマテックス製AO−802 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル13を作製した。
【0179】
(熱線遮断フィルム14の作製)
熱線反射積層体を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、厚さ10nmのZnO−2.0%Ga層(誘電体層:第1層)−厚さ12nmの銀薄膜層(金属薄膜層:第2層)−厚さ10nmのZnO−2.0%Ga層(誘電体層:第3層)−厚さ12nmの銀薄膜層(金属薄膜層:第4層)を6.65×10−3Pa(5×10−5torr)の真空下でのスパッタリング法で積層し、熱線反射積層体フィルム14を作製した。さらに熱線吸収層用塗布液1にシリカ(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム14を作製した。
【0180】
(熱線遮断フィルム15の作製)
低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1をそれぞれ10層ずつ、その上に上記最表層用塗布液を積層した計21層を熱線反射積層体フィルム1同様にして、熱線反射積層体フィルム15を作製した。さらに熱線吸収層用塗布液1にシリカ(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィルム15を作製した。
【0181】
(熱線遮断フィルム16の作製)
熱線吸収層用塗布液1のITO粉末の代わりにATO粉末(住友金属鉱山製 超微粒子ATO)を添加し、更にシリカ(1)(宇部日東化学製ハイプレシカFQ 粒径0.5μm)を全体固形分の10%にあたる量を添加し、熱線遮断フィルム1と同様にして熱線遮断フィル16を作製した。
【0182】
以上で作製した熱線遮断フィルムである試料1〜16の主要構成を表1に示す。
【0183】
《熱線遮断フィルムの評価》
上記作製した各熱線遮断フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0184】
(熱線反射率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各熱線遮断フィルムの800〜1400nmの領域における反射率を測定し、その平均値を求め、これを熱線反射率とした。
【0185】
(熱線透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各熱線遮断フィルムの800〜1400nmの領域における透過率を測定し、その平均値を求め、これを熱線透過率とした。
【0186】
〈ヘイズ値の測定〉
ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により測定し、透明性の目安とした。
【0187】
(熱割れ防止性の評価)
巾200mm、長さ300mm、厚さ1.5mmのガラス板の上に実施例及び比較例で得られた熱線遮断フィルムをアクリル接着剤で貼り付けて、熱割れ防止性評価用試料を得た。そして、厚さ30mmの発泡ポリスチレンで作製した上面、底面が開口した箱(高さ150mm、巾240mm、長さ340mm)を準備し、各箱の開口部に、これらの試料を載置し、箱内部のガラス試料表面(フィルム表面側)の温度を熱電対で測定しつつ、8月の晴天の日に太陽光に暴露した。その後、試料表面の温度を観測し、MAX温度をそれぞれ測定した。同様にしてガラス板のみ時の表面温度も測定し、試料の表面温度との差を熱割れ性の目安とした。温度差が小さいほど熱割れ防止性が優れている。判定は、次の基準に従った。△までは、実害はなく許容できるレベルである。
【0188】
○:〜0.5℃
△:0.5〜1.0℃
×:1.0℃〜
(耐傷性試験)
膜表面をスチールウール#0000を用いて、200gの荷重下で10回擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。△まで実害性OKレベル。
【0189】
○ :全くつかない
○△:1〜2本かすかに傷が見られる
△ :1〜2本、僅かに傷が見られる
△×:3本以上の傷が見られる
× :10本以上の傷がみられる。
【0190】
(表面粗さ測定の方法;AFM測定)
測定試料を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。
【0191】
原子間力顕微鏡で得られた凹凸画像について、凹部及び/又は凸部が連なる方向に対して直角方向に任意に2本の直線を引き、この直線上の部分について、輪郭曲線(断面曲線)をそれぞれ求めた。
【0192】
次に、これらの直線上についての輪郭曲線(断面曲線)から粗さを求めた。場所を変えて20箇所測定して、その算術平均をRaとした。また、評価長さにおける輪郭曲線(断面曲線)の山高さの最大値と他に深さの最大値との和を最大断面高さとした。
【0193】
なお、本発明において用いた測定条件は下記の通りである。
装置:Nanoscope IIIa AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード:タッピングモード
走査速度:0.5Hz
測定視野:125μm
Zレンジ:断面曲線から得られたRaの7〜15倍
フラッテンフィルター
モード :フラッテンオート
オーダー:3
バネ定数K:11N/m
共振周波数F:127kHz
以上の測定・評価結果等を表1に示す。
【0194】
【表1】

【0195】
表1に示す結果から明らかなように、上記測定・評価性能において、本発明の熱線遮断フィルムに係る試料は、比較試料に比べ優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであって、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする熱線遮断フィルム。
【請求項2】
前記熱線吸収層の表面粗さは、算術平均表面粗さ(Ra)が5〜10nmの範囲内であり、かつ最大断面高さ(Rt)が100〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮断フィルム。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーは、シリカ又はアルミナを含有し、かつ平均粒径が0.15〜1.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱線遮断フィルム。
【請求項4】
屈折率が相互に異なる二層以上の層のうちの少なくとも一層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の熱線遮断フィルム。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の熱線遮断フィルムを製造する熱線遮断フィルムの製造方法であって、当該熱線遮断フィルムを構成する層を、水系塗布液を用いて形成する工程を有することを特徴とする熱線遮断フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−126037(P2012−126037A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280246(P2010−280246)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】