説明

熱線遮蔽フィルム、該フィルムを用いた熱線遮蔽体及び熱線遮蔽フィルム用材料

【課題】高い熱線反射率が得られ、さらに高い湿度環境に曝されても、安定した熱線反射率、透明性を保った熱線遮蔽フィルムを提供し、且つ、該熱線遮蔽フィルムを有する熱線遮蔽媒体を提供する。
【解決手段】基材の上に、低屈折率層及び高屈折率層を積層したユニットを熱線反射層として少なくとも1層有する熱線遮蔽フィルムにおいて、該高屈折率層が金属酸化物とトリアジンユニットを有するポリマーを含有することを特徴とする熱線遮蔽フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に屈折率が異なる層を積層した熱線反射層を少なくとも1ユニット持ち、屈折率が高い側の層に無機酸化物とトリアジンユニットを有するポリマーを含有することを特徴とした熱線遮蔽フィルムであり、またその熱線遮蔽フィルムを適応した熱線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の窓ガラス面に貼合するウインドウフィルムが多く利用されている。その中の一つには熱線の侵入を抑え、建物室内温度が過剰に上昇するのを防ぐ機能を有するフィルムがあり、冷房の使用を低減し省エネルギー化を達成している。
【0003】
熱線を反射するフィルムとして、塗布液を基材上にコーティングし積層する塗布法により屈折率の異なる層を交互積層する方法が開示されている。効率的に熱線反射率を高めるためには、層間の屈折率の差が大きい方が良い。高屈折率層のさらなる高屈折率化を実現するために、酸化チタン、酸化亜鉛物等を含有する構成が有効な手段である。
【0004】
例えば、酸化チタン、酸化亜鉛の微粒子とポリマーバインダーを加えることで分散塗布液化し、基材にコーティングすることで高屈折率層を形成する手法が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、高屈折率層に屈折率の高い金属酸化物を含有しても、それを塗膜状にするために添加されるバインダー屈折率が通常1.45〜1.55程度と低いため、高屈折率層の屈折率は金属酸化物の屈折率から大きく低下してしまう。
【0006】
そのため熱線反射率を高めるためには積層ユニット数を多くする必要があり、例えば、透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、高屈折率層と低屈折率層とが交合に積層され、且つ、該高屈折率層には有機分が含有されている透明積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
この場合、多くの層数をかさねるため、製造ラインタクトがかかることによるコストアップ、また積層層間の界面数が増えることにより、塗膜の透明性が失われてしまうという問題がある。
【0008】
またウインドウフィルムはいったん施工されると数年間は使用されるのが前提で、長期外気湿度に曝されることで、外気中の水分が塗膜に混入し、膜白化が起こる等、実用面からみて多くの問題が指摘されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2007−331296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い熱線反射率が得られ、さらに高い湿度環境に曝されても、安定した熱線反射率、透明性を保った熱線遮蔽フィルム、該熱線遮蔽フィルムを有する熱線遮蔽媒体を提供し、且つ、前記熱線遮蔽フィルムに有用な熱線遮蔽フィルム用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0012】
1.基材の上に、低屈折率層及び高屈折率層を積層したユニットを熱線反射層として少なくとも1層有する熱線遮蔽フィルムにおいて、
該高屈折率層が金属酸化物とトリアジンユニットを有するポリマーを含有することを特徴とする熱線遮蔽フィルム。
【0013】
2.前記金属酸化物が酸化チタン粒子であることを特徴とする前記1に記載の熱線遮蔽フィルム。
【0014】
3.前記トリアジンユニットが、チオール基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有することを特徴とする前記1または2に記載の熱線遮蔽フィルム。
【0015】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルムが基体の少なくとも一方の面に設けられたことを特徴とする熱線遮蔽体。
【0016】
5.トリアジンユニットを有するポリマーを含有することを特徴とする熱線遮蔽フィルム用材料。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、高い熱線反射率が得られ、さらに高い湿度環境に曝されても、安定した熱線反射率、透明性を保った熱線遮蔽フィルムを提供し、且つ、該熱線遮蔽フィルムを有する熱線遮蔽媒体を提供することができた。また、該熱線遮蔽フィルムに有用な熱線遮蔽フィルム用材料を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の熱線遮蔽フィルムにおいては、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成を有することにより、高い熱線反射率が得られ、さらに高い湿度環境に曝されても、安定した熱線反射率、透明性を保った熱線遮蔽フィルムを提供することができた。
【0019】
また、該熱線遮蔽フィルムを有する熱線遮蔽体や、熱線遮蔽フィルムの作製に有用な熱線遮蔽フィルム用材料を提供することができた。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
《熱線遮蔽フィルム》
本発明の熱線遮蔽フィルムについて説明する。
【0022】
本発明の熱線遮蔽フィルムは、基材の上に、低屈折率層(低屈折率材料を有する層)及び高屈折率層(高屈折率材料を有する層)を積層したユニットを熱線反射層として少なくとも1層有することを特徴とする。
【0023】
本発明の熱線遮蔽フィルムの基本光学特性としては、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては40%以上で、60%以上が更に好ましい。また波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%、好ましくは70%を超える領域を有し、且つ、波長900nm〜1400nmの領域の透過率が30%以下であることが好ましい。
【0024】
《熱線反射層》
本発明に係る熱線反射層について説明する。
【0025】
本発明に係る熱線反射層とは、低屈折率層(低屈折率材料を有する層)と、高屈折率層(高屈折率材料を有する層)が積層したユニット(層ともいう)を少なくとも1ユニット有する層のことをいう。
【0026】
熱線反射層としては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ないスタック数で熱線反射率を高くすることができる観点で好ましい。屈折率差が大きくなると、スタック数が少なくできるため、熱線遮蔽フィルムのヘイズが低下する傾向にある。
【0027】
本発明に係る熱線反射層としては、高屈折率層及び低屈折率層を積層したユニットを少なくとも1層有し、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.2以上であることが好ましく、更に好ましくは、0.3以上であり、特に好ましくは、0.4以上である。
【0028】
(ユニットの数)
スタックするユニット数としては、ユニットを構成する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差によるが、ヘイズを低下させる観点から、30ユニット以下であることが好ましく、更に好ましくは20ユニット以下であり、特に好ましくは10ユニット以下である。
【0029】
(高屈折率層の屈折率、低屈折率層の屈折率)
本発明に係る高屈折率層の好ましい屈折率としては1.70〜2.50であり、より好ましくは1.80〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0030】
(本発明に係る屈折率の測定方法)
ちなみに本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求める。
【0031】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。
【0032】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0033】
《金属酸化物》
本発明に係る高屈折率層が含有する金属酸化物について説明する。
【0034】
本発明の熱線反射層に使用できる金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができ、低屈折率層、高屈折率層いずれも屈折率を調整するために適宜併用しても構わない。
【0035】
上記の中で高屈折率層に適しているのは酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等であるが、特に好ましいのは酸化チタンである。酸化チタンとして具体的には、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、チタン酸ストロンチウムおよびこれらチタン系酸化物に、錫、バリウム、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、アンチモン、インジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニオブ、ジルコニウム、マグネシウム、イットリウム、ランタン、ユーロピウム、亜鉛、鉛、クロム、鉄、銅、銀、金、白金、タングステン、セリウム等の異種金属原子をドーピングした化合物が挙げられる。ドーピング量としては0.001質量%〜30質量%が好ましい。
【0036】
また、酸化チタンとしては、屈折率が高く、かつ光触媒能力が低いルチル型酸化チタンが好ましい。
【0037】
また、本発明で好ましい酸化チタンの態様としては、微粒子の酸化チタンが水または有機溶媒に分散された、酸化チタンゾルであることが好ましい。酸化チタンゾルであることで、ポリマー等と混合し塗布液にすることが容易である等、熱線反射層を製造する観点で好ましい。
【0038】
本発明で用いることのできる酸化チタンの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0039】
また、その他の酸化チタンの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0040】
酸化チタン微粒子の体積平均粒径として好ましい一次粒子径は、4nm〜50nmであり、より好ましくは4nm〜30nmである。
【0041】
酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd、d・・・d・・・dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n・・・n・・・n個存在するチタン系酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をvとした場合に、体積平均粒径m={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0042】
本発明に係る高屈折率層においては、酸化チタンと前述の金属酸化物が混合されていても構わなく、または複数種の酸化チタンを混合しても構わない。いずれかの層に含有する金属酸化物の内、好ましい酸化チタンの含有量としては30質量%〜95質量%であり、好ましくは70質量%〜90質量%である。酸化チタンが高い含有量になるほど、層の屈折率を高められる観点で好ましい。
【0043】
《熱線遮蔽フィルム用材料》
本発明の熱線遮蔽フィルム用材料としては、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーが有用である。以下、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーについて説明する。
【0044】
《トリアジンユニットを有するポリマー》
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーは、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される単位構造を有するポリマーであり、これらが複数種導入されたポリマーでも構わない。
【0045】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーは、一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるトリアジンユニットを有することにより、詳細は不明であるが、ポリマー自身の屈折率が高める効果が得られる。
【0046】
【化1】

【0047】
式中、R、R、Rは各々独立してC1〜20のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等)、C2〜7のアシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等、尚、これらの基は、更にフェニル基で任意に置換されていてもよい)、C2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、モルホリル基、カルバゾリル基等)を表すが、R、Rが一緒になって形成するアルキレン基(例えば、トリメチレン基、ペンタメチレン基等)を形成してもよい。
【0048】
中でも、R、R、Rとして好ましいのは、ヒドロキシ基が置換したアルキル基、チオール基が置換したアルキル基、モルホリル基、カルバゾリル基、ナフチル基、カルボキシ基が置換したアルキル基であり、特に、本発明の熱線遮蔽フィルムの高湿下での耐久性向上(耐湿性向上)の観点及び、高屈折率層塗布液の調製時、トリアジンユニットを有するポリマーの溶解性の向上または分散性向上の観点から、少なくとも一つのヒドロキシ基が置換したアルキル基、少なくとも一つのチオール基が置換したアルキル基、少なくとも一つのカルボキシ基が置換したアルキル基が好ましい。
【0049】
nはそれぞれ独立して0または1を表す。
【0050】
は2価の連結基を表し、2価の連結基としては、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等)が挙げられる。
【0051】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーは、上記一般式(1)〜(3)のいずれか一つで表されるトリアジンユニットが含まれていれば、ホモポリマーでも共重合体でもよいが、共重合体の場合には、その共重合体成分としては、従来公知のビニル系重合体、アクリル系重合体、メタクリル系重合体、アリル系重合体、マレイン酸系重合体等を挙げることができる。
【0052】
ビニル系重合体の形成に用いられる単量体の具体例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン等の芳香族系ビニル化合物;酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルケトン類、;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類;末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン、末端にビニル基を有するポリジフェニルシロキサン、末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン−ポリジフェニルシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリジフェニルシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン−ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。
【0053】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーには、これらの単量体の、単独、および複数種から形成されるビニル系重合体が重合体成分として含まれていてもよい。
【0054】
アクリル系重合体の形成に用いられる単量体の具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸およびそのエステル類;ビスフェノール系エポキシ樹脂にアクリル酸を結合させたビスフェノールエポキシアクリレート、フェノールノボラックエポキシ樹脂にアクリル酸を結合させたフェノールノボラックエポキシアクリレート、クレゾールノボラックエポキシ樹脂にアクリル酸を反応させたクレゾールノボラックエポキシアクリレート等のエポキシアクリレート類;ポリエチレンフタレートやポリブチレンフタレート等のポリエステルにアクリル酸を結合させたポリエステルアクリレート類;イソホロンジイソシアネート系ポリウレタンやヘキサメチレンジイソシアネート系ポリウレタンにアクリル酸を結合させたウレタンアクリレート類等が挙げられる。
【0055】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーには、これらの単量体の、単独、および複数種から形成されるアクリル系共重合体が重合体成分として含まれていてもよい。
【0056】
メタクリル系重合体の形成に用いられる単量体の具体例としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸およびそのエステル類;ビスフェノール系エポキシ樹脂にメタクリル酸を結合させたビスフェノールエポキシメタクリレート、フェノールノボラックエポキシ樹脂にメタクリル酸を結合させたフェノールノボラックエポキシメタクリレート、クレゾールノボラックエポキシ樹脂にメタクリル酸を反応させたクレゾールノボラックエポキシメタクリレート等のエポキシメタクリレート類;ポリエチレンフタレートやポリブチレンフタレート等のポリエステルにメタクリル酸を結合させたポリエステルメタクリレート類;イソホロンジイソシアネート系ポリウレタンやヘキサメチレンジイソシアネート系ポリウレタンにメタクリル酸を結合させたウレタンメタクリレート類等が挙げられる。
【0057】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーには、これらの単量体の、単独、および複数種から形成されるメタクリル系重合体が重合体成分として含まれていてもよい。
【0058】
アリル系重合体の形成に用いられる単量体の具体例としては、ジアリルフタレート等の芳香族アリルエステル類;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のヘテロ環含有アリル化合物等が挙げられる。
【0059】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーには、これらの単量体の、単独、および複数種から形成されるアクリル系重合体が重合体成分として含まれていてもよい。
【0060】
マレイン酸系重合体の形成に用いられる単量体の具体例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸およびそのエステル類;無水マレイン酸とエチレングリコールやネオペンチルグリコール等のポリオール類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;無水マレイン酸とモノアミンとを反応させてできるフェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のモノマレイミド類;無水マレイン酸とジアミンとを反応させてできるジフェニルエーテルビスマレイミド等のビスマレイミド類等が挙げられる。
【0061】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーには、これらの単量体の、単独、および複数種から形成されるマレイン酸系重合体が重合体成分として含まれていてもよい。
【0062】
(トリアジンユニットを有するポリマー中のトリアジンユニット導入量)
本発明に係る高屈折率層を高屈折率に調整し、且つ、層のひび割れ耐性を向上させる観点から、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマー中のトリアジンユニットの導入量は、ポリマーの分子量に対して、一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるトリアジンユニットから形成される単位構造が占める分子量が20%〜100%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、50%〜95%である。
【0063】
(トリアジンユニットを有するポリマーの重量平均分子量(Mw))
本発明に係るトリアジンユニットを含有するポリマーの重量平均分子量は、熱線遮蔽フィルムのひび割れ耐性向上及びポリマーの溶媒に対する溶解性向上の観点から、2,000〜200,000であり、より好ましくは10,000〜150,000である。
【0064】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
上記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるトリアジンユニットを有するポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定について説明する。
【0065】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定は、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて分子量測定を行うことができる。
【0066】
具体的には、測定試料を1mgに対してTHF(脱気処理を行ったものを用いる)を1ml加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45μm〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)装置に注入する。
【0067】
GPC測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。
【0068】
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard column等の組合せ等が好ましい。
【0069】
検出器としては、屈折率検出器(RI検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
【0070】
本発明では、下記の測定条件にて分子量測定を行った。
【0071】
(測定条件)
装置:東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC
カラム:TOSOH TSKgel Super HM−M
検出器:RI及び/またはUV
溶出液流速:0.6ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルを用いて検量線(校正曲線ともいう)を作成、分子量の算出に使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
【0072】
(高屈折率層中のトリアジンユニットを含有するポリマーの含有量)
高屈折率層中のトリアジンユニットを含有するポリマーの含有量は、熱線遮蔽フィルムの耐湿性向上及び形成された高屈折率層のひび割れ耐性向上の観点から、10質量%〜95質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、30質量%〜70質量%の範囲である。
【0073】
以下、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーが含有するトリアジンユニットの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0074】
【化2】

【0075】
【化3】

【0076】
【化4】

【0077】
【化5】

【0078】
次いで、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーの合成に用いられるトリアジンモノマーの合成例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
《トリアジンモノマー1の合成》
【0080】
【化6】

【0081】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、アセトン 0.58g(10ミリモル:東京化成)、THF 70gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して65℃、15時間還流し反応させた。
【0082】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン80g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率45%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0083】
《トリアジンモノマー2の合成》
【0084】
【化7】

【0085】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、グルタルアルデヒド 1.0g(10ミリモル:東京化成)、トルエン 80gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して120℃、24時間還流し反応させた。
【0086】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン80g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率38%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0087】
《トリアジンモノマー3の合成》
【0088】
【化8】

【0089】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.98g(10ミリモル:東京化成)、アセトン 0.29g(5ミリモル:東京化成)、トルエン 120gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して120℃、18時間還流し反応させた。
【0090】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率41%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0091】
《トリアジンモノマー4の合成》
【0092】
【化9】

【0093】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、3−メルカプト−2−ペンタノン 1.18g(10ミリモル:東京化成)、THF 60g、エタノール60gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して70℃、30時間還流し反応させた。
【0094】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率47%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0095】
《トリアジンモノマー5の合成》
【0096】
【化10】

【0097】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、3−メルカプト−2−ペンタノン 0.59g(5ミリモル:東京化成)、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン 0.51g(5ミリモル:東京化成)、THF 120gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して65℃、30時間還流し反応させた。
【0098】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率34%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0099】
《トリアジンモノマー6の合成》
【0100】
【化11】

【0101】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.98g(10ミリモル:東京化成)、3−メルカプト−2−ペンタノン 0.59g(5ミリモル:東京化成)、トルエン 100gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して120℃、12時間還流し反応させた。
【0102】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率40%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0103】
《トリアジンモノマー7の合成》
【0104】
【化12】

【0105】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、3−メルカプト−2−ペンタノン 0.59g(5ミリモル:東京化成)、グルタルアルデヒド 0.5g(5ミリモル:東京化成)、トルエン 120gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して120℃、20時間還流し反応させた。
【0106】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率35%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0107】
《トリアジンモノマー8の合成》
【0108】
【化13】

【0109】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン 1.02g(10ミリモル:東京化成)、トルエン 100gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して120℃、20時間還流し反応させた。
【0110】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率46%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0111】
《トリアジンモノマー9の合成》
【0112】
【化14】

【0113】
容量200mlの三口フラスコに、メラミン 1.89g(15ミリモル:東京化成)、5−ヘキセン−2−オン 0.49g(5ミリモル:東京化成)、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン 0.51g(5ミリモル:東京化成)、アセトン 0.29g(5ミリモル:東京化成)、THF 100gおよび、ZSM−5担持5%Pd(NEケムキャット社製)を250mg加え、系内を窒素ガスで十分に置換した後、昇温して65℃、30時間還流し反応させた。
【0114】
反応終了後、内容物をエバポレーターで濃縮し、トルエン100g、純水80gを加えて撹拌した。これを分液ロートに移し、純水160gを加えて水洗する操作を3回繰り返した後、有機層を取り出して乾燥した。得られた粗結晶をトルエンとヘキサンの混合溶媒で3度洗浄し、吸引濾過にて回収後、90℃8時間真空乾燥することで白色結晶を得た。(収率37%)NMR、IR、液体クロマトグラフィーにより目的生成物が得られたことを確認した。
【0115】
《本発明の熱線遮蔽用フィルム用材料の合成例》
続いて、本発明の熱線遮蔽用フィルム材料である、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーの合成例の一例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0116】
(トリアジンユニットを有するポリマー1の合成)
撹拌翼、温度計、窒素流入管および冷却水を備えた1リットルのセパラブルフラスコを使用した。フラスコを十分乾燥し、プロピレングリコールモノメチルエーテル 600gを仕込みトリアジンモノマー1 29.2g(0.1モル)添加し、完全に溶解するまで撹拌した。
【0117】
次いで酢酸ビニル 8.6g(0.1モル)を3分割して、約5分おきに添加した。更に触媒としてジブチル錫ジラウリレート 0.3gを加え、100℃に加熱し12時間反応させた。
【0118】
その後冷却し、20℃に保った状態で1時間熟成した。得られた溶液をジエチルエーテルに加えることにより、白色の重合体が得られ、これを濾過、乾燥することで白色重合体粉体を得た。
【0119】
得られた重合体粉体をビーカーに入れ、メタノール 1000gを加え撹拌することで溶解した。これに、別途調製した0.5M NaOH水溶液 200mlを加え50℃に保温したまま2時間撹拌した。その後メタノールを200g加え得られた白色浮遊物を濾過し、メタノールで洗浄した後、乾燥することで、下記式に示す本発明のポリマー1を得た。
【0120】
得られたポリマーは、重合体成分として、トリアジンモノマー1が重合した繰り返し単位を有するトリアジンユニットと、ビニルアルコールユニットを共重合成分として有する共重合体であり、上記のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)測定により得られたスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は800,000であった。
【0121】
(トリアジンユニットを有するポリマー2〜9の合成)
トリアジンユニットを有するポリマー1の合成において、トリアジンモノマー1をトリアジンモノマー2〜9に代え、それぞれの添加量を0.1モルにすることいがいは同様の方法で、本発明の熱線遮蔽用フィルム材料である、ポリマー2(Mw=600,000)、ポリマー3(Mw=600,000)、ポリマー4(Mw=800,000)、ポリマー5(Mw=400,000)、ポリマー6(Mw=550,000)、ポリマー7(Mw=700,000)、ポリマー8(Mw=450,000)、ポリマー9(Mw=700,000)を各々合成した。
【0122】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーの合成方法については、公知の有機合成反応を用いて製造することが出来る。例えば、塩化シアヌル等のハロゲン化シアヌルと、所望のアミン、アルコールとを適切な有機溶媒の存在下で反応させてトリアジン化合物を得ることが出来る。
【0123】
また、ビニル基を有するアミン、またはビニル基を有するアルコールを使用することで、ビニル基を有するトリアジン化合物を合成し、上記の単量体と共重合させることで、目的のトリアジンユニットを有するポリマーを得ることが出来る。
【0124】
このときビニル基の付加量を制御することにより、最終的に得られるポリマー構造、一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるトリアジンユニットの構造に制御することが可能である。
【0125】
本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマー製造を行う際の活性種としては特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の開始剤が適切である。
【0126】
このような重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド/ナフテン酸コバルト等のレドックス系開始剤などの、一般的に使用されるラジカル重合開始剤であればよい。重合開始剤の使用量は、重合性モノマー100質量部に対して、0.1質量部〜15質量部、好ましくは0.5質量部〜5質量部である。
【0127】
また、本発明の熱線遮蔽フィルムの製造方法については、後述するが、塗布方法により熱線反射層(高屈折率層、低屈折率層)の層形成(膜形成ともいう)を行うことが好ましい。
【0128】
塗布を用いて熱線反射層の塗膜を作製する場合、本発明に係るトリアジンユニットを有するポリマーは、水や水系溶媒にポリマーを溶解または分散する観点からは、ユニットが、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基等に置換されていることが好ましい。
【0129】
一方、一般的に工業使用されている有機溶剤(メチルエチルケトン、アセトン、アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン等)には可溶であり、それら溶媒でポリマーを解かした後、溶解液を水に添加し、高速ホモジナイザーで乳化させることにより、水分散液とすることも出来る。
【0130】
分散の安定化のために分散剤を加えることも出来る。例えばアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子タイプの分散剤が挙げられる。水分散液にすることで、高屈折率層用塗布液を水溶媒で調製することが可能になる。
【0131】
(低屈折率層)
本発明に係る低屈折率層について説明する。
【0132】
本発明に係る低屈折率層は、高屈折率層が含有する金属酸化物を含有することもできるが、金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素粒子を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
【0133】
本発明に用いられる二酸化ケイ素粒子は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0134】
低屈折率層の金属酸化物の含有量は、30質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。金属酸化物の含有量を30質量%以上になると、低屈折率にすることが出来、金属酸化物の含有量を95質量%以下にすることが出来、膜の柔軟性が得られ、熱線遮蔽フィルムを形成することが容易となる。
【0135】
本発明の熱線反射層においては、基材に隣接する最下層が、低屈折率層で、最表層も低屈折率層である層構成が好ましい。
【0136】
《水溶性樹脂》
本発明における熱線遮蔽フィルムを構成する熱線反射層には水溶性樹脂を含有することが好ましい。
【0137】
これらの水溶性樹脂としてはゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド等の合成樹脂、無機ポリマー、増粘多糖類等が挙げられ、本発明においてはポリビニルアルコール、ゼラチンが特に好ましい。これら水溶性樹脂の1種類または複数種類の混合でもよい。
【0138】
本発明に用いられる水溶性樹脂とは、水または温水媒体に対し1質量%以上溶解する高分子化合物であり、好ましくは3質量%以上である。
【0139】
本発明に係る高屈折層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液における水溶性高分子の濃度としては、0.5〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0140】
特に高屈折層形成用塗布液に添加する際は、上記トリアジンユニットを含有するポリマーと併用することになるが、好ましくはトリアジンユニットを有するポリマーの含有量に対し、1質量%以上、90質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上、50質量%以下である。水溶性ポリマーが多くなると塗膜のひび割れ等、膜物性が良好になる傾向にあり、逆に水溶性ポリマーが少なくなると、長期間の保存性が良好になる傾向にある。
【0141】
以下、各水溶性樹脂の詳細について説明する。
【0142】
《ゼラチン》
本発明に係る水溶性樹脂は、ゼラチンが特に好ましい。
【0143】
本発明に係るゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。
【0144】
《合成樹脂》
本発明に適用可能な水溶性樹脂としては、いわゆる合成樹脂、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アルキレンオキサイド類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0145】
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
【0146】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0147】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70%〜100%のものが好ましく、80%〜99.5%のものが特に好ましい。
【0148】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0149】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1モル%〜10モル%、好ましくは0.2モル%〜5モル%である。
【0150】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0151】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0152】
本発明においては、これらのポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。例えばポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0153】
《無機ポリマー》
本発明に係る水溶性高分子の1つとしては、ジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることが好ましい。
【0154】
本発明に適用可能なジルコニウム原子を含む化合物は、酸化ジルコニウムを除くものであるが、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0155】
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
【0156】
上記ジルコニル原子を含む無機ポリマーの内の代表的な化合物の構造式を下記に示す。
【0157】
【化15】

【0158】
ただし、s、tは1以上の整数を表す。
【0159】
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いても良いし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0160】
ジルコニウム原子を含む化合物は、単独で用いても良いし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0161】
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0162】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手することができる。
【0163】
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
【0164】
【化16】

【0165】
ただし、s、t、uは1以上の整数を表す。
【0166】
前記無機ポリマーの添加量は、無機酸化物粒子100質量部に対して1質量部〜100質量部が好ましく、2質量部〜50質量部が更に好ましい。
【0167】
《増粘多糖類》
本発明においては、水溶性樹脂として、増粘多糖類を用いることも好ましい。
【0168】
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0169】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物微粒子を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0170】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。
【0171】
その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類が好ましい。
【0172】
具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0173】
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0174】
増粘多糖類の含有量としては、5質量%以上、50質量%以下が好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。但し、その他の水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0175】
《界面活性剤》
本発明の高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層に、界面活性剤を添加しても良い。活性剤種としてはアニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの種類を使用することができる。特にアセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤及びフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0176】
また本発明に係る界面活性剤の添加量としては、それぞれの塗布液を100質量%としたとき、固形分として0.005質量%〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、更には0.01質量%〜0.10質量%であることが好ましい。
【0177】
《添加剤》
次いで、金属酸化物の分散安定化、塗膜のひび割れ防止等の観点から、熱線反射層に適用可能なその他の添加剤について説明する。
【0178】
《アミノ酸》
本発明においては、更に、アミノ酸を添加することができる。
【0179】
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシ基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、等電点が6.5以下のいずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0180】
本発明に適用可能なアミノ酸に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0181】
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物粒子が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、ヒドロキシ基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
【0182】
《リチウム化合物》
本発明においては、高屈折層及び低屈折率層の少なくとも1層が、金属酸化物粒子及び水溶性高分子と共に、リチウム化合物を含有することができる。
【0183】
本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられ、その中でも水酸化リチウムが、本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
【0184】
本発明において、リチウム化合物の添加量としては、屈折率層に存在する金属酸化物粒子1g当たり、0.005g〜0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01g〜0.03gである。
【0185】
《エマルジョン樹脂》
本発明においては、本発明に係る高屈折率層または低屈折率層には、エマルジョン樹脂を含有することができる。
【0186】
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を用いて乳化重合させた樹脂微粒子である。
【0187】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
【0188】
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面にヒドロキシ基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0189】
ヒドロキシ基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端にヒドロキシ基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0190】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシ基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70モル%〜100モル%のものが好ましく、80モル%〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0191】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0192】
《その他の添加剤》
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0193】
《粘着剤よび粘着層》
本発明の熱線遮蔽フィルムのいずれかの最表層面に粘着層を設けることが出来る。
【0194】
本発明の粘着層を構成する粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示できる。
【0195】
本発明の熱線遮蔽フィルムは、窓ガラスに貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面に本熱線遮蔽フィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が張り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0196】
本発明で使用するアクリル系粘着剤は、溶剤系およびエマルジョン系どちらでも良いが、粘着力等を高め易いことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。このようなアクリル溶剤系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクリルアクリレート等のアクリル酸エステル、凝集力を向上させるためのコモノマーとして、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等、さらに架橋を促進し、安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。該積層フィルムの粘着剤層には、主ポリマーとして、特に高タック性を要するため、ブチルアクリレート等のような低いガラス転移温度(Tg)を有するものが特に有用である。
【0197】
この粘着層には、添加剤として、例えば安定剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を含有させることもできる。特に、本発明のように窓貼用として使用する場合は、紫外線による熱線遮蔽フィルムの劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。
【0198】
粘着層の厚みは、粘着性向上及び熱線遮蔽フィルムに十分な透明性を付与し、更に、フィルムを窓ガラスに貼り付けた後、剥がしたときに粘着材層間で凝集破壊が起こらず、ガラス面への粘着材のこりが無くなる等の観点から、1μm〜100μmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは3μm〜50μmの範囲である。
【0199】
《熱線吸収層》
本発明における熱線反射フィルムは、任意の位置に熱線吸収層を有することができる。
【0200】
熱線吸収層の一例としては、紫外線硬化樹脂、光重合開始剤、熱線吸収剤を含有する層である。
【0201】
紫外線硬化樹脂は、他の樹脂より硬度、平滑性、更にはITO、ATOや熱伝導性の金属酸化物の分散性の点でも有利である。紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。特に好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル系樹脂を用いることができる。
【0202】
本発明のおけるアクリル系樹脂は、硬度、平滑性、透明性の観点から、WO2008/035669号に記載されているような表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むことが好ましい。ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、透明性、平滑性、硬度をバランスよく満たすことができる。
【0203】
また本発明のアクリル系樹脂には、屈折率を調整するできる点で、含フッ素ビニルモノマーを用いることもできる。含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やR−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0204】
また光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0205】
本発明においては無機熱線吸収剤として、可視光線透過率、熱線吸収性、樹脂中への分散適性等の点から、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモン酸亜鉛、6硼化ランタン(LaB)、酸化タングステンセシウム(Cs0.33WO)等が好ましく、これらを単独、あるいは併用しても構わない。平均粒径としては、樹脂中の分散性向上、熱線吸収性向上、可視光線透過率向上の観点から、5nm〜100nmが好ましく、特に10nm〜50nmが好ましい。
【0206】
本発明における平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、例えば50個の粒子を抽出して該粒径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
【0207】
上記無機熱線吸収材料の熱線吸収層における含有量は、上記層全体含有量によるが、層全体の含有%で表した場合、1%〜80%、特に5%〜50%の範囲であることが好ましい。
【0208】
含有量が1%以上であれば、十分な熱線吸収効果が現れ、80%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0209】
本発明においては、本発明の効果を奏する範囲内で、上記以外の金属酸化物や、有機系、金属錯体等の他熱線吸収剤を併用することもできる。例えば、ジイモニウム系化合物、アルミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物等を併用することもできる。
【0210】
熱線吸収層の厚みは0.1μm〜50μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜20μmである。0.1μmより厚くなると熱線吸収能力が向上する傾向にあり、逆に50μmより薄くなると塗膜の耐クラック性が向上する。
【0211】
《ハードコート層》
本発明の熱線遮蔽フィルムは、耐擦過性を高めるための表面保護層として、基材と熱線反射層を介して粘着層と逆側の最上層に熱や紫外線などで硬化する樹脂からなるハードコート層を積層することが好ましい。
【0212】
ハードコート層で使用する硬化型の樹脂としては、熱や紫外線で硬化するものであり、成形が容易なことから、紫外線硬化型樹脂、特にその中でも鉛筆硬度が少なくとも2Hのものが好ましい。
【0213】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールを有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、並びに、ジイソシアネートおよび多価アルコールを有するアクリル酸やメタクリル酸から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらにアクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂またはポリチオールポリエン樹脂等も好適に使用することができる。
【0214】
また、これらの樹脂の反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ夕)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマーやオリゴマー、並びに、N−ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、及ビそのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、α−メチルスチレンまたはアクリル酸等の単官能モノマーが挙げられ、これらは1種に限らず、2種以上を併用しても良い。
【0215】
さらにまた、これらの樹脂の光増感剤(ラジカル重合開始剤)としては、ペンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。
【0216】
これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0217】
これらの有機過酸化物や光重合開始剤の使用量は、前記樹脂組成物の重合性成分100質量部に対して0.5質量部〜20質量部の範囲が好ましく、更に好ましくは1質量部〜15質量部の範囲である。
【0218】
尚、上記の硬化型樹脂は、必要に応じて公知の一般的な塗料添加剤を配合しても良い。
【0219】
例えば、レベリングや表面スリップ性等を付与するシリコーン系やフッソ系の添加剤は硬化膜表面の傷つき防止性に効果があることに加えて、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合は前記添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができ、低照射強度条件下に於いても有効な硬化度合を得ることができる。
【0220】
また、ハードコート層には無機微粒子を含有することが好ましい。好ましい無機粒子としては、チタン、シリカ、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛または錫などを含む無機化合物の微粒子が挙げられる。
【0221】
この無機微粒子の粒径は、可視光線の透過性を確保することから、高々1000nm、特に10nm〜500nmの範囲にあるものが好ましい。また、無機微粒子は、ハードコート層を形成する硬化型の樹脂との結合カが高いほうがハードコート層からの脱落を抑制できることから、単官能または多官能のアクリレートなどの光重合反応性を有する感光性基を、表面に導入していることが好ましい。
【0222】
ハードコート層の厚みとしては、ハードコート性向上及び熱線遮蔽フィルムの透明性向上の観点から、0.1μm〜50μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、1μm〜20μmの範囲である。尚、ハードコート層は、上述の熱線吸収層を兼ねてもよい。
【0223】
《熱線遮蔽フィルムの製造方法》
本発明の熱線遮蔽フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されたユニットを積層して構成され熱線反射層を形成する。
【0224】
具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0225】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0226】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5mPa・s〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10mPa・s〜50mPa・sの範囲である。
【0227】
また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5mPa・s〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25mPa・s〜500mPa・sの範囲である。
【0228】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、更にこのましくは、100mPa・s〜30,000mPa・sの範囲であり、特に好ましくは3,000mPa・s〜30,000mPa・sであり、最も好ましくは、10,000mPa・s〜30,000mPa・sの範囲に調整することである。
【0229】
塗布および乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1℃〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5℃〜50℃、膜面温度10℃〜50℃の範囲の条件で行うことである。
【0230】
また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0231】
粘着剤の塗工方法としては、任意の公知の方法が使用でき、例えばダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、転写法等が好ましく挙げられ、単独または組合せて用いることができる。
【0232】
これらは適宜、粘着剤を溶解できる溶媒にて溶液にする、または分散させた塗布液を用いて塗工することが出来、溶媒としては公知の物を使用することが出来る。
【0233】
粘着層の形成は、先の塗工方式にて、直接熱線遮蔽フィルムに塗工しても良く、また、一度剥離フィルムに塗工して乾燥させた後、熱線遮蔽フィルムを貼り合せて粘着剤を転写させても良い。
【0234】
この時の乾燥温度は、残留溶剤ができるだけ少なくなることが好ましく、そのためには乾燥温度や時間は特定されないが、好ましくは50℃〜150℃の温度で、10秒〜5分の乾燥時間を設けることが好ましい。
【0235】
また、粘着剤は流動性があるため、加熱乾燥直後はまだ反応が完結しておらず、その反応を完了させ、安定した粘着力を得るためにも養生が必要である。一般的には、室温で約1週間以上、加熱した場合、例えば50℃位であると3日以上が好ましい。加熱の場合、基材の平面性向上の観点から、100℃以下であることが好ましい。
【0236】
熱線吸収層、ハードコート層の形成方法は特に制限はないが、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、エアーナイフコート法、ディップコート法、転写法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0237】
紫外線照射により硬化する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100nm〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0238】
《基材》
本発明に係る基材について説明する。
【0239】
本発明に係る基材(支持体ともいう。)としては、透明の有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0240】
例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0241】
支持体の厚さは5μm〜200μm程度が好ましく、更に好ましくは15μm〜150μmである。
【0242】
また、本発明に係る基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上で、特に90%以上であることが好ましい。支持体が上記透過率以上でことにより、熱線遮蔽フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上にすることに有利であり、好ましい。
【0243】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0244】
本発明に係る基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。
【0245】
また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、又は支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。
【0246】
この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍が好ましい。
【0247】
更にまた、本発明に係る基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。
【0248】
弛緩処理は処理温度が80℃〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100℃〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1%〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2%〜6%で処理されることである。弛緩処理された支持体は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、更に寸法安定性が良好になる。
【0249】
本発明に係る基材(支持体ともいう)は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。
【0250】
これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01g/m〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0251】
《熱線遮蔽体》
本発明の熱線遮蔽体について説明する。
【0252】
本発明の熱線遮蔽体とは、本発明の熱線遮蔽フィルムを基体の少なくとも一方の面に設けられた態様を表す。
【0253】
基体として好ましいのは、プラスチック基体、金属基体、セラミック基体、布状基体等が好ましく、フィルム状、板状、球状、立方体状、直方体状等様々な形態の基体に本発明の熱線遮蔽フィルムを設けた状態を言う。
【0254】
その中でも好ましいのは板状のセラミック基体で、ガラス板に本発明の熱線遮蔽フィルムを設けた、熱線遮蔽体が好ましい。ガラス板の例としては、例えばJIS R 3202に記されたフロート板ガラス、および磨き板ガラスが好ましく、ガラス厚みとしては0.01mm〜20mmが好ましい。
【0255】
基体に、本発明の熱線遮蔽フィルムを設ける方法としては、上述のように熱線遮蔽フィルムに粘着層を塗設し、粘着層を介して基体に貼り付ける方法が好適に用いられる。
【0256】
貼合方法としては、そのまま基体にフィルムを貼る乾式貼合、上述のように水貼り貼合する方法が適応できるが、基体と熱線遮蔽フィルムの間に空気が入らないようにするため、また基体上での熱線遮蔽フィルムの位置決め等、施工のしやすさの観点で水貼り法により貼合することがより好ましい。
【0257】
本発明の熱線遮蔽体とは、本発明の熱線反射フィルムを基体の少なくとも一方の面に設けられた態様を言うが、基体の複数面に設けた状態、本発明の熱線遮蔽フィルムに複数の基体を設けた状態でも構わない。例えば上述の板ガラスの両面に本発明の熱線遮蔽フィルムを設けた態様、本発明の熱線遮蔽フィルムの両面に粘着層を塗設し、熱線遮蔽フィルムの両面に上述の板ガラスを貼り合わせた、合わせガラス状の態様でも構わない。
【0258】
《熱線遮蔽フィルムの応用》
本発明の熱線遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等太陽光に晒らされる窓ガラスに貼り合せ、室内温度の過上昇を抑える熱線反射効果を付与する窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主としてハウス内温度の過上昇を抑える熱線遮蔽効果を付与した農業用フィルムの目的で用いられる。
【0259】
また、自動車用の合わせガラスのように、本発明の熱線遮蔽フィルムをガラスとガラスの間に挟み、自動車用熱線遮蔽フィルムとして用いられ、この場合外気ガスから熱線反射フィルムを封止できるため、耐久性の観点から好ましい。
【実施例】
【0260】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0261】
なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0262】
実施例1
本願発明の熱線遮蔽フィルム、比較の熱線遮蔽フィルムを作製するにあたり、まず、以下に記載のように、低屈折率層用塗布液の調製、高屈折率層用塗布液の調製、ハードコート層塗布液の調製、粘着層塗布液の調製を行った。
【0263】
(ハードコート層塗布液の調製)
メチルエチルケトン溶媒90質量部にUV硬化型ハードコート材(UV−7600B:日本合成化学社製)7.5質量部を添加し、次いで光重合開始剤(イルガキュア184:BASFジャパン製)0.5質量部を添加し撹拌混合した。次いでITO粉末(超微粒子ITO:住友金属鉱山社製)を2質量部添加し、ホモジナイザーで高速撹拌することで、ハードコート層塗布液を調製した。
【0264】
(粘着層塗布液の調製)
酢酸エチル60質量部とトルエン20質量部を混合し、更にアクリル系粘着剤(アロンタックM−300:東亞合成社製)を20g添加し撹拌混合することで粘着剤塗布液を調製した。
【0265】
《低屈折率層用塗布液の調製》
純水68.5質量部に、水溶性樹脂としてPVA210(クラレ社製、ケン化度88%、重合度1000) 1.5質量部を添加し、撹拌混合しながら70℃に昇温しPVAを溶解することで、PVA水溶液を得た。
【0266】
次いで平均粒径が5nmのシリカ微粒子を含む10質量%酸性シリカゾル(スノーテックスOXS:日産化学社製)を30質量部中に、上記PVA水溶液を撹拌しながら徐々に添加し、混合した。更にフッ素系カチオン活性剤として、サーフロンS221(AGCケミカル社製)を0.02質量部添加することで低屈折率層用塗布液を調製した。
【0267】
尚、低屈折率層の屈折率は上記の方法により計測したところ、1.44であった。
【0268】
《高屈折率層用塗布液の調製》
(高屈折率層用塗布液1の調製)
純水68.5質量部に、上記で合成した、トリアジンユニットを有するポリマー1 1.5gを添加し、撹拌混合しながら90℃に昇温し溶解することで、ポリマー水溶液を得た。
【0269】
次いで、平均粒径20nmの酸化亜鉛微粒子を含む20.0質量%酸化亜鉛ゾル30質量部中に、ポリマー水溶液を攪拌しながら徐々に添加し、混合した。
【0270】
更に、フッ素系カチオン活性剤として、サーフロンS221(AGCケミカル社製)を0.07質量部添加することで高屈折率層用塗布液1を調製した。
【0271】
(高屈折率層用塗布液2〜22の調製)
高屈折率層用塗布液1の調製において、金属酸化物、ポリマー、その他添加剤等を表1に記載のように変化した以外は同様にして、高屈折率層用塗布液2〜22を調製した。
【0272】
尚、金属酸化物として酸化チタンを使う場合は、平均粒径が5nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル30質量部中に、ポリマー水溶液を撹拌しながら徐々に添加し、混合したものを用いた。
【0273】
尚、高屈折率層の屈折率は表1に示す。
【0274】
【表1】

【0275】
続いて、以下のようにして熱線遮蔽フィルムを作製した。
【0276】
《熱線遮蔽フィルム1の作製》
30cm×30cmサイズで50μm厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、21層同時塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、層構成として上記調製した低屈折率層用塗布液及び高屈折率層用塗布液を、フィルム表面側に低屈折率層とし、それぞれ交互に低屈折率層は11層、高屈折率層は10層、計21層積層を45℃に保温しながら、フィルム上に同時重層塗布を行った。
【0277】
その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、21層からなる熱線反射層を形成した。
【0278】
更に、熱線反射層とは逆側の、PETフィルム表面にハードコート層用塗布液をワイヤーバーにより塗布し、70℃3分熱風乾燥した。
【0279】
その後大気下で、アイグラフィックス社製のUV硬化装置(高圧水銀ランプ使用)にて、硬化条件:400mJ/cmで硬化を行うことで、ハードコート層を形成した。
【0280】
粘着層は、セパレータフィルムに粘着層を塗設し、その後上記のフィルムと貼り合わせる方法にした。
【0281】
セパレータフィルムとしては25μm厚のポリエステルフィルム(セラピール:東洋メタライジング社製)を用いた。セパレータフィルムの上に、粘着剤塗布液をワイヤーバーにより塗布し、80℃、2分間乾燥することで粘着層付きフィルムを作製した。
【0282】
上記より得られた熱線反射層表面と、粘着層付きフィルムの粘着層表面を貼合機により貼合した。
【0283】
このとき熱線反射層フィルム側の貼合時張力を10kg/m、粘着層付きフィルムの貼合時張力を30kg/mとした。
【0284】
最後に得られたフィルムを25cm×25cmにカットすることで熱線遮蔽フィルム1を得た。
【0285】
なお、SEMにより塗布膜の断面を観察したところ、低屈折率層の膜厚は170nm、高屈折率層の膜厚は130nmであった。またハードコート層は3μm、粘着層は20μmであった。
【0286】
《熱線遮蔽フィルム2〜22の作製》
熱線遮蔽フィルム1の作製において、高屈折率層用塗布液1を高屈折率層用塗布液2〜22にした以外は同様にして、熱線遮蔽フィルム2〜22を得た。
【0287】
《熱線遮蔽フィルム1〜22の評価》
得られた熱線遮蔽フィルム1〜22について、得られた熱線遮蔽フィルムを200mm×200mmにカットしセパレータを剥がした後、厚さ3mmで250mm×250mmのフロート板ガラスにJIS Z 0237に規定する圧着ローラーを使用して毎分約300mmの早さで一往復させて圧着した。
【0288】
上記の様にガラスに貼ったサンプルについて、50℃、90%RH環境下に10日間晒し、高湿環境下にさらす前後の熱線反射率、ヘイズ値を測定し、高湿環境下での耐久性を評価した。
【0289】
《熱線反射率の評価》
ガラスに貼り付けた熱線遮蔽フィルムを、分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、800nm〜1400nmの領域における反射率を測定した。
【0290】
測定時光の侵入はガラス面からになるように、試料を設置した。測定は3回行い、その平均値を求め、熱線反射率とした。
【0291】
高湿環境にさらす前後での熱線反射率の|劣化幅|(差分(Δ反射率))が小さい方が、耐久性の高い熱線遮蔽フィルムであり、|劣化幅|は11以下が実用可能であるが、好ましくは、10以下である。
【0292】
《ヘイズ値の評価》
ヘイズ値(%)の評価は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、HM−150)を用いて、JIS K−7136に従って測定した。ヘイズ値は絶対値が低く、更に高湿環境に曝した後でも2%を下回るフィルムが実用可である。
【0293】
得られた結果を表2に示す。
【0294】
【表2】

【0295】
表2から、比較に比べて、本発明の熱線遮蔽フィルムは、高い熱線反射率が得られ、さらに高い湿度環境に曝されても、安定した熱線反射率、ヘイズの変化がない(透明性を保った)ことが明らかである。
【0296】
特にトリアジンユニットにチオール基を有するポリマーと金属酸化物として酸化チタンを含有している本発明の熱線遮蔽フィルム8〜16については、本発明の効果が顕著に表れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に、低屈折率層及び高屈折率層を積層したユニットを熱線反射層として少なくとも1層有する熱線遮蔽フィルムにおいて、
該高屈折率層が金属酸化物とトリアジンユニットを有するポリマーを含有することを特徴とする熱線遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記金属酸化物が酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽フィルム。
【請求項3】
前記トリアジンユニットが、チオール基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルムが基体の少なくとも一方の面に設けられたことを特徴とする熱線遮蔽体。
【請求項5】
トリアジンユニットを有するポリマーを含有することを特徴とする熱線遮蔽フィルム用材料。