説明

熱転写シート用ボビンおよび熱転写シートボビン組合体

【課題】コアの両端部に容易にフランジを嵌合することができ、かつコアの両端部からフランジが抜けにくく、さらにコアの両端部とフランジの位置決めを容易に行なうことができる。
【解決手段】熱転写シート用ボビン2、3は円筒状コア20と、コア20の両端部20a、20b内周面に嵌合される一対のフランジ10とを備えている。コア20の端部20a、20b内周面にノッチ21が設けられ、フランジ10の嵌合部13外周面にノッチ21に係合する突起15と、コア20の端部20a、20b内周面に当接するリブ16とが設けられている。突起15は先端15に向って先細状となるテーパ形状を有し、リブ16はコア20の端部20a、20b内周面に当接する大径部16aと、先端16cに向って高さが徐々に小さくなる傾斜部16bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンタに用いられる長尺の熱転写シートを巻き上げる熱転写シート用ボビンおよび熱転写シート用ボビン組合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写方法が知られているが、この方法は基材上に着色転写層を形成した熱転写シートを用い、その背面からサーマルヘッド等により、文字や図形あるいは模様等の画像を、イエロー、マゼンタ、シアン等の色毎に、その画像状に加熱して、上記の着色転写層を被転写材の表面に熱転写するものである。
【0003】
この熱転写方法は、その着色転写層の構成によって、昇華転写型と熱溶融転写型の2方式に大別される。昇華転写型は、熱によって昇華または移行する染料を適当なバインダーにより、基材上に着色転写層として担持させた熱転写シートを用いて、その背面からの加熱によって、着色転写層中の染料を被転写材表面に熱移行させるものである。被転写材表面には、染料の染着しやすい受容層が設けられている。
【0004】
これに対し、熱溶融転写型は、基材上に加熱により容易に軟化、溶融して転写可能な着色転写層を形成した熱転写シートを用いて、その背面からの加熱によって、被転写材表面に着色転写層を転写するものである。
【0005】
両方式ともに、モノカラーおよび多色カラー画像の形成が可能であり、多色カラー画像の場合には、例えば、イエロー、マゼンタ、シアンさらに必要に応じてブラックの三色ないし四色の熱転写インクリボンを用意し、同一の被転写材の表面に各色(各種)を熱転写して、カラー画像を形成できる。
【0006】
このような熱転写方法において、使用する熱転写シートは一対の熱転写シート用ボビン間に掛け渡され、熱転写プリンタ内で供給側の熱転写シート用ボビンから巻取側の熱転写シート用ボビン側へ送られ、被転写体に熱転写記録を行なう。
【0007】
ところで、供給側の熱転写シート用ボビンおよび巻取側の熱転写シート用ボビンは、いずれも同様の構造をもち、いずれも熱転写シートが巻付けられる円筒状のコアと、コア両端部に嵌合される一対のフランジとを備えている。
【0008】
このような熱転写シート用ボビンを構成する部材のうち、熱転写シートが巻付けられるコアとしては汎用品のコアが用いられるが、フランジは熱転写プリンタの駆動部の形状に対応した形状のものが用いられる。このため供給側および巻取側熱転写シート用ボビンを熱転写プリンタにセットする際熱転写シートが巻付けられるコアの両端部には、使用される熱転写プリンタの駆動部の形状に対応した一対のフランジを嵌合する必要がある。
【0009】
この場合、コア両端部の内周面にノッチが設けられ、各フランジ外周面に突起が設けられ、各フランジの突起をコア両端部のノッチに係合させることにより、コアと各フランジとの位置合せを行なっている。
【0010】
上述のように、供給側および巻取側の熱転写シート用ボビンを熱転写プリンタにセットする際、熱転写シートが巻付けられるコアの両端部に、熱転写プリンタの駆動部の形状に対応した一対のフランジを嵌合しているが、このような場合、コアの両端部に容易にフランジを嵌合することができ、かつ一度嵌合したら抜けにくいフランジが求められている。
【0011】
また、各フランジの突起をコア両端部のノッチに係合させることにより、コアと各フランジとの位置合せを行なっているが、各フランジの突起をコア両端部のノッチに容易に係合することができる構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−211764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、コアの両端部に容易にフランジを嵌合することができ、かつ一度嵌合した場合はフランジが抜けにくくなっており、さらに各フランジの突起をコア両端部のノッチに容易に係合してコアに対するフランジの位置決めを確実に行なうことができる熱転写シート用ボビンおよび熱転写シート用ボビン組合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、熱転写シート用ボビンにおいて、熱転写シートが巻付けられる円筒状コアと、コア両端部の内周面に嵌合される一対のフランジとを備え、コア両端部の内周面に、ノッチが設けられ、各フランジはフランジ部と、対応するコア端部の内周面に嵌合する嵌合部とを有し、嵌合部外周面に対応するコア端部のノッチに係合する突起が設けられ、突起はコア側先端に向って先細状となるテーパ形状を有し、各フランジの嵌合部外周面に、対応するコア端部の内周面に当接するとともに外方へ突出する複数のリブが円周方向に沿って設けられ、各リブはコア端部の内周面に当接する大径部と、先端に向って高さが徐々に小さくなる傾斜部を有することを特徴とする熱転写シート用ボビンである。
【0015】
本発明は、各フランジは、フランジ部と嵌合部との間に設けられ、対応するコア端面に当接する段部を有することを特徴とする熱転写シート用ボビンである。
【0016】
本発明は、各フランジにおいて、各リブの軸線方向の基端位置および突起の軸線方向基端位置は、段部先端に一致することを特徴とする熱転写シート用ボビンである。
【0017】
本発明は、各フランジにおいて、各リブの大径部の軸線方向先端位置は、突起の軸線方向先端位置に一致することを特徴とする熱転写シート用ボビンである。
【0018】
本発明は、各フランジに、複数のリブが円周方向に沿って等間隔で設けられていることを特徴とする熱転写シート用ボビンである。
【0019】
本発明は、一対の熱転写シート用ボビンと、各転写シート用ボビンに掛け渡された熱転写シートとを備え、各転写シート用ボビンは、熱転写シートが巻付けられる円筒状コアと、コア両端部の内周面に嵌合される一対のフランジとを備え、コア両端部の内周面に、ノッチが設けられ、各フランジはフランジ部と、対応するコア端部の内周面に嵌合する嵌合部とを有し、嵌合部外周面に対応するコア端部のノッチに係合する突起が設けられ、突起はコア側先端に向って先細状となるテーパ形状を有し、各フランジの嵌合部外周面に、対応するコア端部の内周面に当接するとともに外方へ突出する複数のリブが円周方向に沿って設けられ、各リブはコア端部の内周面に当接する大径部と、先端に向って高さが徐々に小さくなる傾斜部を有することを特徴とする熱転写シート用ボビン組合体である。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、コアの両端部にフランジを容易に嵌合することができ、かつ一度嵌合した場合、コアからフランジを抜けにくくすることができる。また各フランジの突起をコア両端部のノッチに容易に係合することができ、このことによりコアに対するフランジの位置決めを確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明による熱転写シート用ボビンのフランジを示す側面図。
【図2】図2は本発明による熱転写シート用ボビンのフランジを示す正面図。
【図3】図3は図2のIII−III線断面図。
【図4】図4は本発明による熱転写シート用ボビンのフランジを示す正面拡大図。
【図5】図5は熱転写シート用ボビンのフランジに設けられた突起およびリブを示す概略図。
【図6】図6は熱転写シート用ボビンのフランジを示す斜視図。
【図7】図7(a)は熱転写シート用ボビンのコアを示す断面図、図7(b)は図7(a)のB線方向矢視図、図7(c)は図7(a)のC線方向矢視図である。
【図8】図8は本発明による熱転写シート用ボビン組合体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
ここで図1乃至図8は、本発明による熱転写シート用ボビンおよび熱転写シート用ボビン組合体を示す図である。
【0024】
まず図8により熱転写シート用ボビン組合体について説明する。
【0025】
熱転写シート用ボビン組合体1は、図8に示すように一対の熱転写シート用ボビン2、3と、各熱転写シート用ボビン2、3に掛け渡された熱転写シート5とを備えている。
【0026】
この場合、熱転写シート5は、基材と、基材上に形成された着色転写層とを有し、熱転写プリンタ内で用いられる。すなわち熱転写シート5は、その背面からサーマルヘッドにより文字、図形あるいは模様等の画像を、イエロー、マゼンタ、シアン等の色毎に加熱して、着色転写層を被転写材表面に熱転写するようになっている。
【0027】
なお、一対の熱転写シート用ボビン2、3のうち、一方の熱転写シート用ボビン2は供給側の熱転写シート用ボビン2となり、他方の熱転写シート用ボビン3は巻取側の熱転写シート用ボビン3となる。
【0028】
この場合、供給側の熱転写シート用ボビン2および巻取側の熱転写シート用ボビン3は、いずれも同様の構成をもっている。
【0029】
以下、熱転写シート用ボビン2、3の一例として、供給側の熱転写シート用ボビン2の構造を説明する。
【0030】
図1乃至図7に示すように、熱転写シート用ボビン2は、熱転写シートが巻付けられるプラスチック製の円筒状コア20と、コア20の両端部20a、20bの内周面に嵌合されるプラスチック製の一対のフランジ10、10とを備えている(図1および図7(a)−(c)参照)。
【0031】
このうちコア20の両端部20a、20bの内周面に、各々複数、例えば4個のノッチ21が設けられ、この4個のノッチはコア20の両端部20a、20bの内周面の円周方向に等間隔をおいて設けられている。
【0032】
一方、各フランジ10は、熱転写プリンタ(図示せず)側の駆動部に係合するフランジ部11と、対応するコア端部20a、20bの内周面に嵌合する嵌合部13と、フランジ部11と嵌合部13との間に位置しコア20の端面20A、20Bに当接する段部12とを有している。
【0033】
また、フランジ10の嵌合部13の先端(コア側先端)には、嵌合部13より小径となる案内部14が設けられ、フランジ10をコア20の両端部20a、20b内へ挿入する際、この案内部14がフランジ10をコア20の両端部20a、20b内へ導くよう機能する。
【0034】
またフランジ10の嵌合部13外周面に、対応するコア20の端部20a、20b内周面に設けられたノッチ21に係合する少なくとも1つの突起15が設けられている。突起15はコア20側先端15aに向って先細状となるテーパ形状を有している(図5参照)。
【0035】
また各フランジ10の嵌合部13外周面に、対応するコア20の端部20a、20bの内周面に当接するとともに外方へ突出する複数のリブ16が設けられている。
【0036】
ところで各フランジ10の嵌合部13外周面に設けられたリブ16は、円周方向に等間隔をおいて複数(例えば12個)設けられている。
【0037】
またフランジ10の嵌合部13外周面に設けられた各リブ16は、対応するコア20の端部20a、20b内周面に当接する大径部16aと、この大径部16aから先端(コア側先端)16cに向って高さが徐々に小さくなる傾斜部16bとを有している。
【0038】
次に各フランジ10の嵌合部13に設けられた突起15と、各リブ16の軸線方向の位置関係について述べる。
【0039】
各フランジ10の嵌合部13において、各リブ16の軸線方向の基端位置および突起15の軸線方向の基端位置は、段部12の先端に一致している。また各リブ16の大径部16aの軸線方向先端位置は、突起15の軸線方向先端15aの位置に一致している(図1および図5参照)。
【0040】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0041】
まず、供給側のコア20と巻取側のコア20に熱転写シート5が掛け渡され、密封袋により密封された組合体が準備される。次に密封袋から組合体が取外され、供給側のコア20の両端部20a、20bと巻取側のコア20の両端部20a、20bに、使用される熱転写プリンタの駆動部形状に対応するフランジ10が嵌合される。
【0042】
以下、熱転写シート5が巻付けられたコア20の対応する端部、例えば端部20aにフランジ10を嵌合する作用について説明する。
【0043】
まずコア20の端部20aのノッチ21の円周方向位置にフランジ10の突起15の円周方向位置が概略合わされ、コア20の端部20a内にフランジ10の案内部14が挿入される。このとき案内部14はコア20の端部20a内にフランジ10を導く機能を果す。
【0044】
次にコア20の端部20a内に、更にフランジ10を押し込まれる。このときリブ16の傾斜部16bは先端16cに向ってその高さが徐々に小さくなるため、フランジ10をコア20の端部20a内にスムースに押し込むことができる。
【0045】
この場合、リブ16はその傾斜部16bにおいてコア20の端部20a内面と当接することになり、傾斜面16bとコア20の端部20a内面との間にわずかに隙間が形成されるため、コア20の端部20aに対してフランジ10を円周方向にわずかに回動することができる。このためコア20の端部20内周面に設けられたノッチ21に対してフランジ10の突起15の円周方向位置がわずかにずれていても、コア20の端部20aに対してフランジ10を円周方向にわずかに回動させながら突起15をコア側先端15aに向って押し込むことにより、突起15をテーパ形状の先端15aからスムースにコア20の端部20a側のノッチ21内に挿入することができる。
【0046】
更にフランジ10をコア20の端部20a内に押し込むことにより、コア20の端面20Aがフランジ10の段部12に当接する。このことによりコア20の端部20a内にフランジ10を確実に嵌合することができる。
【0047】
この場合、フランジ10のリブ16の大径部16aがコア20の端部20a内周面に当接する。このことにより、コア20の端部20a内周面にフランジ10が堅固に嵌合される。
【0048】
本実施の形態によれば、コア20の端部20a内にフランジ10を嵌合した場合、コア20の端部20a内周面に、フランジ10のリブ16の大径部16aが当接する。この場合、リブ16の大径部16aはコア20の端部20a内周面にその頂部において線接触状態で当接する。
【0049】
このためフランジ10にリブ16を設けることなく、フランジ10の嵌合部13においてコア20の端部20a内周面と面接触状態で当接する場合に比較して、コア20の端部20a内周面にフランジ10を容易に嵌合することができる。またフランジ10をコア20の端部20a内周面に嵌合した後も、リブ16の大径部16aはコア20の端部20a内周面に線接触状態で当接するため、フランジ10をコア20の端部20a内周面から容易に取外すことができる。
【0050】
さらにコア20の端部20aに対してフランジ10を円周方向にわずかに回動させながら、コア20の端部20a側のノッチ21内に突起15をテーパ形状の先端15aから挿入することができるため、コア20側のノッチ21内にフランジ10側の突起15を容易に係合させることができる。このためコア20の端部20aとフランジ10との間で円周方向に沿う位置決めを確実に行なうことができる。
【0051】
さらにフランジ10側に設けられたリブ16は、先端16c側に向ってその高さが徐々に小さくなる傾斜部16bを有するため、コア20の端部20a内にフランジ10を押し込む際、フランジ10をスムースに押し込むことができ、フランジ10の嵌合作用をスムースに行なうことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 熱転写シート用ボビン組合体
2 供給側熱転写シート用ボビン
3 巻取側熱転写シート用ボビン
5 熱転写シート
10 フランジ
11 フランジ部
12 段部
13 嵌合部
14 案内部
15 突起
15a 先端
16 リブ
16a 大径部
16b 傾斜部
16c 先端
20 コア
20a、20b 両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写シート用ボビンにおいて、
熱転写シートが巻付けられる円筒状コアと、
コア両端部の内周面に嵌合される一対のフランジとを備え、
コア両端部の内周面に、ノッチが設けられ、
各フランジはフランジ部と、対応するコア端部の内周面に嵌合する嵌合部とを有し、嵌合部外周面に対応するコア端部のノッチに係合する突起が設けられ、
突起はコア側先端に向って先細状となるテーパ形状を有し、
各フランジの嵌合部外周面に、対応するコア端部の内周面に当接するとともに外方へ突出する複数のリブが円周方向に沿って設けられ、各リブはコア端部の内周面に当接する大径部と、先端に向って高さが徐々に小さくなる傾斜部を有することを特徴とする熱転写シート用ボビン。
【請求項2】
各フランジは、フランジ部と嵌合部との間に設けられ、対応するコア端面に当接する段部を有することを特徴とする請求項1記載の熱転写シート用ボビン。
【請求項3】
各フランジにおいて、各リブの軸線方向の基端位置および突起の軸線方向基端位置は、段部先端に一致することを特徴とする請求項2記載の熱転写シート用ボビン。
【請求項4】
各フランジにおいて、各リブの大径部の軸線方向先端位置は、突起の軸線方向先端位置に一致することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の熱転写シート用ボビン。
【請求項5】
各フランジに、複数のリブが円周方向に沿って等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の熱転写シート用ボビン。
【請求項6】
一対の熱転写シート用ボビンと、
各転写シート用ボビンに掛け渡された熱転写シートとを備え、
各転写シート用ボビンは、熱転写シートが巻付けられる円筒状コアと、
コア両端部の内周面に嵌合される一対のフランジとを備え、
コア両端部の内周面に、ノッチが設けられ、
各フランジはフランジ部と、対応するコア端部の内周面に嵌合する嵌合部とを有し、嵌合部外周面に対応するコア端部のノッチに係合する突起が設けられ、
突起はコア側先端に向って先細状となるテーパ形状を有し、
各フランジの嵌合部外周面に、対応するコア端部の内周面に当接するとともに外方へ突出する複数のリブが円周方向に沿って設けられ、各リブはコア端部の内周面に当接する大径部と、先端に向って高さが徐々に小さくなる傾斜部を有することを特徴とする熱転写シート用ボビン組合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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