説明

熱転写プリンター

【課題】プラテンローラの表面に凹版状のパターンを組み込むことによって、セキュリティ性を高めたパスポートやIDカードの印刷を可能とした熱転写プリンターを提供する。
【解決手段】パスポートやIDカードに図形や文字を印刷する際に、熱転写リボンの転写層を中間転写フィルムに転写した後、パスポートやIDカードに熱転写して図形や文字を印刷する熱転写プリンターであって、少なくとも表面に凹版状のパターンを有するプラテンローラと、熱転写リボンの転写層を前記プラテンローラに押圧するサーマルヘッドと、を備え、更に前記凹版状のパターンを図形や文字に重ねて印刷することを特徴とする熱転写プリンター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐偽造や耐変造が必要なパスポートやIDカードなどを印刷する際に用いられる熱転写プリンターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、官公庁、銀行、会社、医療機関、及び学校などのサービス産業分野では、パスポートや身分証明書、外国人登録証、図書館利用カード、キャッシュカード、クレジットカード、自動車運転免許証、従業員証、社員証、会員証、医療カード及び学生証などのIDカードが普及している。この種のパスポートやIDカードには、本人認識用の顔画像、及び所有者に関する文字や記号などの文字情報が印刷されている。
【0003】
上記パスポートやIDカードにはセキュリティの高い信頼性が求められる。以下、IDカードを印刷する場合を例として説明する。
【0004】
図1は従来から行われているIDカードを印刷する印刷方式の一例を示したものである。印刷方式はインクジェット印刷機構や熱転写印刷機構が代表例として挙げられるが、図1は熱転写印刷機構を示した図である。熱転写印刷機構による印刷方式は、直接転写方式と中間転写方式がある。図1は中間転写方式の熱転写印刷機構の概略を示す図で、熱転写リボン21はリボン巻き出しローラ22から供給され、ローラ23を介した後、サーマルヘッド24によって熱転写リボン21のリボン基材面から押圧される。中間転写フィルム31は中間転写フィルム巻き出しローラ32から供給され、ローラ33を介した後、プラテンローラ27上で押圧された熱転写リボン21の熱転写層に接し転写層が転写される。カード基材25はカード基材供給ローラ26から供給される。カード基材25はローラ37を介して移送される。中間転写フィルムに転写された転写層が二次転写部34のローラ35及びローラ36によってカード基材25に転写された後、カード基材25は矢印61で示される方向に搬送される。転写された後の中間転写フィルム39はローラ38を介した後、中間転写フィルム巻取りローラ40に巻き取られる。また、プラテンローラ27上で転写された後の熱転写リボン29は、ローラ28を介した後、熱転写リボン巻取りローラ30に巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3632444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記中間転写方式の熱転写印刷機構によって、セキュリティ性を高めたパスポートやIDカードの印刷を可能とした熱転写プリンターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、パスポートやIDカードに図形や文字を印刷する際に、熱転写リボンの転写層を中間転写フィルムに転写した後、パスポートやIDカードに熱転写して図形や文字を印刷する熱転写プリンターであって、少なくとも
表面に凹版状のパターンを有するプラテンローラと、
熱転写リボンの転写層を前記プラテンローラに押圧するサーマルヘッドと、を備え、更に前記凹版状のパターンを図形や文字と重ねて印刷することを特徴とする熱転写プリンタ
ーである。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、前記凹版状のパターンはプラテンローラに直接レーザを用いて製作されることを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンターである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凹版状の文字や模様のパターンを備えたプラテンローラを用いることによって、パスポートやIDカードに微細な文字や模様を顔写真や氏名等の図形や文字中に埋め込むことが出来るため、偽造しにくいセキュリティ性の高いパスポートやIDカードを印刷することが出来、偽造や変造防止に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来から行われているIDカードを印刷する印刷方式の一例を示す図。
【図2】本発明に係る熱転写プリンターの概略構成図。
【図3】本発明に係る熱転写プリンターのプラテンローラを詳細に説明するための図。
【図4】本発明に係る熱転写プリンターのプラテンローラの凹版状のパターンを示した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態を図を用いて説明する。
【0012】
図2は本発明に係る熱転写プリンターの概略構成図であって、例えばIDカードに画像を形成する場合を示す図である。熱転写リボン1はリボン巻き出しローラ2から供給され、ローラ3を介した後、サーマルヘッド4によって熱転写リボン1のリボン基材面から押圧される。中間転写フィルム11は中間転写フィルム巻き出しローラ12から供給され、ローラ13を介した後、プラテンローラ7上で押圧された熱転写リボン1の熱転写層に接し転写層が転写される。カード基材5はカード基材供給ローラ6から供給される。中間転写フィルムに転写された転写層が二次転写部14のローラ15及びローラ16によってカード基材5に転写され、ローラ17を介して移送されたカード基材5に画像が形成され、矢印51で示される方向に搬送される。転写された後の中間転写フィルム19はローラ18を介した後、中間転写フィルム巻取りローラ20に巻き取られる。また、プラテンローラ7上で転写された後の熱転写リボン9は、ローラ8を介した後、熱転写リボン巻取りローラ10に巻き取られる。
【0013】
図3は本発明に係る熱転写プリンターのプラテンローラ7を詳細に説明するための図で、プラテンローラ7の表面には凹版状のパターン7−1や7−2が備えられている。
【0014】
図4は図3に示される凹版状のパターン7−1や7−2を示した図で、凹版状のパターン7−1には例えばTOPの模様が凹版状を成して設けられており、また凹版状のパターン7−2は顔画像に重なって設けられる。凹版状のパターン7−1や7−2はプラテンローラ7の断面に対して凹状であるために、1次転写時のプラテンローラの凹版状のパターンの部分はサーマルヘッドからの熱伝達が他の部分に比べ効率が悪く、その結果、凹版状のパターン7−1や7−2の部分は転写されないため、拡大図101に示すように、凹版状の模様を、印刷画像内に埋め込むことが出来る。
【0015】
即ち、凹版状のパターン7−1や7−2の文字や模様は、目視では判別できないほどの微細なパターンとすることが出来、拡大図101のように凹版状のパターン7−1はサーマルヘッドのドット102の中に埋め込むことが出来るためセキュリティ性を高めることが出来る。また、凹版状のパターン7−2は顔画像103に重ねたり、複雑なパターンにすることによって、セキュリティ性を高めることが出来る。
【0016】
プラテンローラ7の表面に設けられる凹版状のパターンは、プラテンローラに直接レーザを用いて製作されるが、これに限定されず他のパターニング技術を採用しても良い。
【0017】
リボン基材はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を含む色リボンが用いられるが、本発明に係る熱転写プリンターにおいてもドットオンドットにより各色のドットを重ね合わせてカラー表現することによって、更にセキュリティ性を高めることが出来る。
【0018】
ドットオンドットとは、1色目のドットに対して、2色目、3色目のドットを重ねることを指し、プラテンローラ7の回転位置は、例えば、ロータリーエンコーダをプラテンローラの回転軸に設け、ロータリーエンコーダのパルス数をカウントすることによって回転角度を制御して達成することが出来る。
【0019】
このように本発明の熱転写プリンターによれば、凹版状の文字や模様を備えたプラテンローラを用いることによって、パスポートやIDカードに微細な文字や模様を顔写真や氏名といった図形や文字の中に埋め込むことが出来るため、セキュリティ性の高いパスポートやIDカードを印刷することが出来る。
【符号の説明】
【0020】
1・・・熱転写リボン
2・・・リボン巻き出しローラ
3・・・ローラ
4・・・サーマルヘッド
5・・・カード基材
6・・・カード基材供給ローラ
7・・・プラテンローラ
7−1、7−2・・・凹版状のパターン
8・・・ローラ
9・・・転写された後の熱転写リボン
10・・・熱転写リボン巻取りローラ
11・・・中間転写フィルム
12・・・中間転写フィルム巻き出しローラ
13・・・ローラ
14・・・二次転写部
15・・・ローラ
16・・・ローラ
17・・・ローラ
18・・・ローラ
19・・・転写された後の中間転写フィルム
20・・・中間転写フィルム巻取りローラ
21・・・熱転写リボン
22・・・リボン巻き出しローラ
23・・・ローラ
24・・・サーマルヘッド
25・・・カード基材
26・・・カード基材供給ローラ
27・・・プラテンローラ
28・・・ローラ
29・・・転写された後の熱転写リボン
30・・・熱転写リボン巻取りローラ
31・・・中間転写フィルム
32・・・中間転写フィルム巻き出しローラ
33・・・ローラ
34・・・二次転写部
35・・・ローラ
36・・・ローラ
37・・・ローラ
38・・・ローラ
39・・・転写された後の中間転写フィルム
40・・・中間転写フィルム巻取りローラ
51・・・カード基材5が搬送される方向を示す矢印
61・・・カード基材25が搬送される方向を示す矢印
101・・・拡大図
102・・・ドット
103・・・顔画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスポートやIDカードに図形や文字を印刷する際に、熱転写リボンの転写層を中間転写フィルムに転写した後、パスポートやIDカードに熱転写して図形や文字を印刷する熱転写プリンターであって、少なくとも
表面に凹版状のパターンを有するプラテンローラと、
熱転写リボンの転写層を前記プラテンローラに押圧するサーマルヘッドと、を備え、更に
前記凹版状のパターンを図形や文字と重ねて印刷することを特徴とする熱転写プリンター。
【請求項2】
前記凹版状のパターンはプラテンローラに直接レーザを用いて製作されることを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251490(P2011−251490A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127704(P2010−127704)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】