説明

熱転写プリンタ

【課題】インクリボンを記録紙に熱転写するとともに、インクリボンに残った記録跡を、処理液を含浸したスポンジローラを用いて消去する熱転写プリンタにおいて、処理液を一定量塗布することが可能な、処理液の消費効率の高い定量供給装置を備えた熱転写プリンタがなかった。
【解決手段】処理液を貯留する貯留容器とスポンジローラとの間に定量供給装置を設け、定量供給装置が一定量の処理液を貯留容器からスポンジローラに間欠的な供給を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンのインクを記録紙に熱転写するとともに、処理液を含浸したスポンジローラをインクリボンに接触させて、インクリボンに残った記録跡を判読不良にする熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、記録紙と熱転写インクリボンを重ね合わせて搬送し、サーマルヘッドの圧接による情報記録によって、インクリボンのインクを記録紙に転写する構成の熱転写プリンタが普及している。しかしこの熱転写プリンタでは、熱転写が行われた使用済みのインクリボンは、巻き取り装置に巻き取られ、1本分のインクリボンがすべて巻き取られると、使用済みのインクリボンの回収と、新しいインクリボンの取り付けが行われる。
【0003】
しかしこのとき、使用済みのインクリボンには転写された記録情報と同じ内容の情報がネガ情報(反転情報)の状態で残っており、これを他人に見られる事は重大な情報漏洩となり、問題である。
【0004】
この情報漏洩の問題を解決する方法がいろいろ提案されており、以下に従来の熱転写プリンタの構成、及び、インクリボンに残った記録跡の消去装置(消去ユニット)を説明する。
【0005】
図6は、従来の消去機能付き熱転写プリンタの内部構成を示す概略図であり、細かい構成は図示及び説明を省略している。図6において、熱転写プリンタ100のプリンタケース50の内部には、ロール紙取り付け軸5に印画用ロール紙6(以後ロール紙6と略記する)が取り付けられており、またリボンカセット(図示は省略)の両端にはインクリボン取り付け軸11、インクリボン巻き取り軸12が設けられ、インクリボン取り付け軸11には未使用のインクリボン13aが取り付けられ、またインクリボン巻き取り軸12には使用済のインクリボン13bが巻き取られている。
【0006】
熱転写ヘッド20とプラテン21との間には図示を省略したロール紙送り機構によって送りこまれたロール紙6と、インクリボン取り付け軸11からインクリボン巻き取り軸12に巻き取られる途中のインクリボン13が重ね合わせて搬送され、この重ね合わせ部分に熱転写ヘッド20から印刷情報に従った加熱が行われることによって、印刷情報に対応したインクリボン13のインクがロール紙6aに記録される。
【0007】
そして、この記録されたロール紙6aはロール紙送り機構によってプリンタケース50の印画出力口51より出力される。また熱転写ヘッド20とプラテン21の間を通過したインクリボン13には記録されたロール紙6aの情報と同じ情報がネガ情報(反転情報)として記録跡が残る。
【0008】
そこで、このインクリボン13に残存した記録跡を判読不能にする目的で設けられたのが消去ユニット30である。この消去ユニット30による消去方法としてはいろいろな提案があるが、今回は本発明が改良しようとしている、処理液を含浸した接触手段を前記インクリボンに接触させて消去する従来技術を記載する。
【0009】
図6において消去ユニット30は特許文献1に記載された構成であり、容器内の処理液を含浸したスポンジローラを使用し、消去ユニット30に設けた接触手段としてのスポンジローラ31を、インクリボン巻き取り軸12に巻き取られた使用済のインクリボン13
bの外周面に押しつけることによって使用済みインクリボン13bのインク面を溶かして記録残りの判読を不能にしている。
【0010】
なお、特許文献1に記載されたスポンジローラの構成としては、特許文献1の図1に示す如く、容器の中に満たされた処理液を直接スポンジローラに接触させ、そのスポンジローラを使用済インクリボンの外周面に押しつける構成としている。
【0011】
図7は、特許文献2に示された消去ユニット40を備えた消去機能付き熱転写プリンタ101の概略を示す概略図であり、消去ユニット40の部分以外はすべて図6の消去機能付き熱転写プリンタと同じ構成であり、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。すなわち図7に示す消去ユニット40が図6に示す消去ユニット30と異なるところは、接触手段としてのスポンジローラ31の代わりにフエルト材のスキージー41を用いていることである。
【0012】
すなわち、処理液を含浸したスキージー41を使用し、消去ユニット40に設けた接触手段としてのスキージー41を、インクリボン巻き取り軸12に巻き取られた使用済のインクリボン13bの外周面に押しつけることによってインクリボン13bのインク面を溶かして記録跡の判読を不能にしている。
【0013】
なお、特許文献2に記載されたスキージーの構成としては、特許文献2の図3に示す如く、容器の中に満たされて処理液に直接スキージーの一端を接触させ、そのスキージーの他端を使用済インクリボンの外周面に押しつける構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開昭62−58655号公報(第1図)
【特許文献2】特開昭59−103778号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に示した従来技術は、スポンジローラやスキージーを容器内の処理液に浸漬し、そのまま使用済みのインクリボンに処理液を塗布する構成であって、塗布する処理液の量をコントロールするためのなんの対応も提案されていない。
【0016】
従って、初め、処理液が容器に充満しているうちは、過分な処理液がスポンジローラから使用済みのインクリボンに塗布されて処理液を無駄に消費し、そして、容器内の処理液が残り少なくなると、使用済みのインクリボンへの塗布量が大幅に不足し、インクリボンの記録跡が残り情報が漏洩する問題があった。
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、一定の量の処理液を容器からスポンジローラに安定的に供給する定量供給装置を備え、そして、スポンジローラから使用済みインクリボンに処理液を塗布して、インクリボンの記録跡を判読不能にする熱転写プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、インクリボンのインクを記録紙に熱転写するとともに、処理液を含浸したスポンジローラを用いてインクリボンに残った記録跡を消去する熱転写プリンタにおいて、処理液が貯留された貯留容器とスポンジローラとの間に、一定量の処理液を貯留容器からスポンジローラに間欠的に供給する定量供給装置を備えていることを特徴とする。
【0019】
また、定量供給装置は所定量の処理液を内部に貯留した状態で回転可能に構成された回転タンクを備え、該回転タンクは、その回転運動に応じて一定量の処理液を間欠的に排出してスポンジローラに供給してもよい。
【0020】
また、回転タンクは、1回の排出で内部に貯留されたすべての処理液を排出してもよい。
【0021】
また、回転タンクは、処理液を貯留する複数の貯蔵部を備え、回転運動に応じて貯蔵部から処理液を等ピッチで順に排出してもよい。
【0022】
また、定量供給装置は、カムの回転に応じて動作するカムフォロアに連結した栓により貯留容器の排出口を開閉してもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、処理液を貯留する貯留容器とスポンジローラとの間に処理液の定量供給装置を設け、定量供給装置が一定量の処理液を貯留容器からスポンジローラに間欠的に供給するから、スポンジローラが使用済みのインクリボンに安定した一定量の処理液を塗布して、インクリボンの記録跡を確実に判読不能にすることが可能となり、そして、適量の一定量の処理液の使用によって、処理液の消費効率の高い熱転写プリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の定量供給装置を備えた熱転写プリンタの実施例1の概略を示す概略図である。
【図2】上記の実施例1の定量供給装置の動作を説明するための部分断面図である。
【図3】本発明の定量供給装置を備えた熱転写プリンタの実施例2の概略を示す概略図である。
【図4】上記の実施例2の定量供給装置の動作を説明するための部分断面拡大図である。
【図5】本発明の定量供給装置を備えた熱転写プリンタの実施例3の定量供給装置の動作を説明するための部分断面図である。
【図6】特許文献1に示した従来技術を説明するための熱転写プリンタの概略を示す概略図である。
【図7】特許文献2に示した従来技術を説明するための熱転写プリンタの概略を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施例1]
以下、本発明の具体的実施形態について、図面に基づき説明する。図1と図2は本発明の熱転写プリンタの実施例1の構成を説明するための図面であり、図1は、本発明の定量供給装置を備えた熱転写プリンタの本実施例の概略を説明するための概略図であり、図2は、本実施例の定量供給装置の動作を説明するための部分断面図である。
【0026】
[実施例1の全体構成の説明:図1]
図1において、熱転写プリンタの構成を説明し、特に、インクリボンに残った記録跡を判読不良にする処理液を一定量供給する定量供給装置の構成部を断面で説明する。なお、図1において、細かい構成の図示及び説明を省略している。
【0027】
図1において、熱転写プリンタ1のプリンタケース50の内部には、ロール紙取り付け
軸5にロール紙6が取り付けられている。またリボンカセット(図示は省略)の両端にはインクリボン取り付け軸11、インクリボン巻き取り軸12が設けられ、インクリボン取り付け軸11には未使用のインクリボン13aが取り付けられ、またインクリボン巻き取り軸12には使用済のインクリボン13bが巻き取られている。
【0028】
熱転写ヘッド20とプラテン21との間には図示を省略したロール紙送り機構によって送りこまれたロール紙6aと、インクリボン取り付け軸11からインクリボン巻き取り軸12に巻き取られる途中のインクリボン13が重ね合わせて搬送され、この重ね合わせ部分に熱転写ヘッド20から印刷情報に従った加熱が行われることによって、印刷情報に対応したインクリボン13のインクがロール紙6aに記録される。
【0029】
そして、この記録されたロール紙6aはロール紙送り機構によってプリンタケース50の印画出力口51より出力される。また熱転写ヘッド20とプラテン21の間を通過したインクリボン13には、記録されたロール紙6aの情報と同じ情報がネガ情報(反転情報)として記録跡が残る。
そこで、このインクリボン13に残存した記録跡を判読不能にする目的で設けられたのが消去ユニット60である。
【0030】
消去ユニット60は、定量供給装置600とスポンジローラ61と貯留容器62からなり、貯留容器62に貯蔵されていた処理液が、定量供給装置600を通り、一定量の処理液がスポンジローラ61に供給され、そして、スポンジローラ61から使用済みインクリボン13bに一定量の処理液が塗布され、インクリボン13に残存した記録跡を判読不能にするように構成されている。
【0031】
なお、処理液は、溶媒性と接着性の2種類があり、溶媒性処理液としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ひまし油などを使用できるが、とりわけプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ひまし油は他に比べ揮発性が低いためより好ましい。接着性処理液としては、液体状に貯留されている状態では固化されず、インクリボンに塗布されて薄膜上になることによって固化され、インクリボンを接着するものが挙げられる。また、これらの処理液に限定されるものではない。
【0032】
周知のように、インクリボンは、インク層、ベース層、バック層で構成されている。
本実施例においては、図1に示すように、スポンジローラ61が使用済みインクリボン13bと接触するインクリボンの面はバック層である。従って、スポンジローラ61がインク層と直接接触しないから、汚れることもなく耐久性が保たれる。
【0033】
そして、バック層に塗布された溶媒性処理液は、インクリボン巻き取り軸12の回転によってインク層に達して、インク層を溶かして記録跡を判読不能にすることが可能となる。また、接着性処理液をインクリボンに塗布した場合は、インクリボンどうしが接着されるので、無理にはがすと破れるため記録跡を判読不能にすることが可能となる。
【0034】
定量供給装置600は、ケース63と回転タンク64からなり、回転タンク64の軸中心部には処理液の貯蔵部65が形成されている。ケース63に内蔵されている回転タンク64は、インクリボン巻き取り軸12のインクリボンを巻き取る回転に応じて回転し、貯蔵部65に処理液を貯蔵したり排出したりし、いわゆるポンプの役割を担っている。
【0035】
[実施例1の定量供給装置の動作の説明:図2]
図2において、定量供給装置の構成と動作を更に詳細に説明するため、定量供給装置を断面図で示し、他は、概略図で示す。図2(a)は、定量供給装置が処理液の受給状態に
ある動作を説明するための図であり、図2(b)は、定量供給装置が待機状態にある動作を説明するための図であり、図2(c)は、定量供給装置が処理液の排出状態にある動作を説明するための図である。また、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
図2(a)において、処理液を貯蔵する貯留容器62は、供給管62aを通して、処理液を定量供給装置600へ供給する。定量供給装置600のケース63は、円筒形をなし、上部には貯留容器62の供給管62aと連通する供給口63aが形成され、下部には円筒形をなすスポンジローラ61に対向して、長手方向(紙面に直角方向)に均等に処理液を供給するように複数個の排出口63bが形成されている。
【0037】
回転タンク64は、円筒形をなし、ケース63に内蔵されかつ回転自在に嵌合し、インクリボン巻き取り軸12(図1参照)の回転に応じて回転するように形成されている。
そして、軸心に沿って内部に円柱形状をした穴の貯蔵部65を形成し、複数個の流出入口65aが長手方向に、ケース63の複数個の排出口63bと一致した位置に形成されている。
【0038】
従って、回転タンク64の流出入口65aは、回転タンク64の回転に応じて、貯留容器62の供給管62aと、ケースの供給口63a及びケースの排出口63bと合致して、処理液を回転タンクの貯蔵部65へ供給したり、貯蔵部65から排出したりする弁の役割を果たしている。
【0039】
なお、一つの貯蔵部65に対して、流出入口65aの数が多過ぎると、処理液の排出のバラツキが発生するので、貯蔵部65を長手方向に区切り複数の貯蔵部65を形成して、貯蔵部一部屋当たりの流出入口65aの数を少なくすることが望ましい。
以下、定量供給装置の動作の説明にあっては、長手方向に複数個並んで等ピッチで形成されている流出入口65aと供給口63aおよび排出口63bを1個ずつの対応で説明する。
【0040】
図2(a)に示すように、処理液の受給状態にある定量供給装置は、インクリボン巻き取り軸12(図1参照)の回転に応じて回転タンク64が回転して、回転タンクの流出入口65aがケース63の供給口63aに一致している。貯留容器62に貯蔵されていた処理液が、供給管62aからケース63の供給口63aを通り、回転タンク64の流出入口65aから貯蔵部65に流入し、回転タンクの貯蔵部65が処理液で満たされる。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、待機状態にある定量供給装置は、インクリボン巻き取り軸12の回転に応じて回転タンク64が反時計回りに回転し、回転タンクの流出入口65aがケースの供給口63aを通過し、貯留容器62からの処理液の供給が断たれ、かつ、排出も行われない状態で、回転タンクの貯蔵部65には処理液が満たされたままにある。
【0042】
次に、図2(c)に示すように、処理液の排出状態にある定量供給装置は、インクリボン巻き取り軸12の回転に応じて回転タンク64がさらに反時計回りに回転し、回転タンクの流出入口65aがケースの排出口63bに一致すると、回転タンクの貯蔵部65に満たされていた処理液がケースの排出口63bから排出して、スポンジローラ61に流出する。すなわち、スポンジローラ61は、長手方向にケースの排出口63bの数に応じて等ピッチで、しかも、貯蔵部65の容量に応じて、一定量の処理液を含浸することが可能となる。
【0043】
従って、定量供給装置が上記動作を繰り返し、貯留容器からスポンジローラへ間欠的に
一定量の処理液を供給することにより、スポンジローラから使用済みインクリボンへ一定量の処理液を均等に塗布し、インクリボンに残存した記録跡を判読不能にすることが可能となり、さらに、処理液を無駄に消費することなく消費効率も高めることが可能となる。
【0044】
[実施例2]
図3と図4は本発明の熱転写プリンタの実施例2の構成を説明するための図面であり、図3は、本発明の定量供給装置を備えた熱転写プリンタの本実施例の概略を説明するための概略図であり、図4は、本実施例の定量供給装置を詳細に説明するための消去ユニットの部分断面拡大図である。
【0045】
[実施例2の全体構成の説明:図3]
図3において、熱転写プリンタの構成を説明し、特に、処理液を一定量供給する定量供給装置の構成を断面で説明する。なお、図3において、細かい構成の図示及び説明を省略している。
【0046】
図3に示すように、消去ユニット70の部分以外はすべて図1の熱転写プリンタ1と同じ構成であり、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。すなわち図3に示す消去ユニット70が図1に示す消去ユニット60と大きく異なるところは、定量供給装置の構成が異なる点である。スポンジローラ71は、円周上に歯を持ち、実施例1とは形状が多少異なるが機能は同様である。
【0047】
従って、実施例2において、熱転写プリンタ2の構成の説明は省略し、消去ユニット70について説明を行う。消去ユニット70は、実施例1の消去ユニット60と同様に、インクリボン13に残存した記録跡を判読不能にする目的で設けられている。
【0048】
消去ユニット70は、定量供給装置700とタイミングベルトのプーリに似た外形形状のスポンジローラ71からなり、処理液は矢印A方向から供給される。この処理液が、定量供給装置700を通り、一定量の処理液がスポンジローラ71に形成された歯の上に供給され、そして、スポンジローラ71の歯から使用済みインクリボン13bに一定量の処理液が塗布され、インクリボン13に残存した記録跡を判読不能にするように構成されている。
【0049】
定量供給装置700において、ケース73は、回転タンク74を回転可能に内蔵し、処理液の供給口73aと、スポンジローラ71に対向する排出口73bを備えている。回転タンク74は、複数の貯蔵部が回転軸を中心として円周方向に等ピッチで形成され、インクリボン巻き取り軸12の回転に合わせて回転し、一定量の処理液をスポンジローラ71に供給するように形成されている。
【0050】
次に、図4に示すように、消去ユニット70を拡大図面で更に詳細に説明する。
回転タンク74は、軸中心から放射状に複数の隔壁74aが設けられ、この隔壁により複数の貯蔵部75が形成されている。すなわち、この貯蔵部75は、回転タンク74の軸を中心として、円周方向に等ピッチで同一形状、同一容量で形成されている。
【0051】
矢印A方向から供給された処理液は、供給口73aを通り、回転タンク74の貯蔵部75−1の位置にある貯蔵部に貯蔵される。インクリボン巻き取り軸12(図3参照)の回転に合わせて回転タンク74が反時計方向に回転すると、貯蔵部75−2の位置にある貯蔵部が貯蔵部75−1の位置に配置され、処理液が供給口73aから貯蔵部に充填される。更に回転が進むと、貯蔵部75−3の位置に到達した貯蔵部から、処理液が排出口73bを通りスポンジローラ71の歯71aに貯蔵部の容量分の一定量の処理液が排出される。
【0052】
回転タンク74の回転とスポンジローラ71の回転が同期することで、処理液が排出されるタイミングにスポンジローラ71の歯71aが排出口に一致し、一定量の処理液を常にスポンジローラ71の歯71aに供給することが可能となる。
【0053】
従って、図3に示すように、スポンジローラ71に設けた歯71aに、一定量の処理液を集中して供給することで、使用済みのインクリボン13bとスポンジローラ71の歯71aの接触により、確実に一定量の処理液をインクリボンに塗布することが可能でインクリボン13に残存した記録跡を判読不能にすることが可能となる。
すなわち、実施例1と同様に、使用済みインクリボン13bに一定量の処理液を均等に塗布し、インクリボンに残存した記録跡を判読不能にすることが可能となり、さらに、処理液の消費効率も高めることが可能となる。
【0054】
[実施例3]
図5は、定量供給装置を備えた熱転写プリンタの実施例3の定量供給装置の動作を説明するための部分断面図であって、本実施例の定量供給装置を備える消去ユニット80の部分以外は全て実施例2の図3の熱転写プリンタと同じ構成である。従って、本実施例においては、図5に示すような消去ユニットと使用済みインクリボンの構成で説明し、プリンタの他の部分は省略する。そして、図5に示す消去ユニット80が図3に示す消去ユニット70と大きく異なるところは、定量供給装置の構成が異なる点であって、実施例2の消去ユニット70と同様に、インクリボン13に残存した記録跡を判読不能にする目的で設けられている。
【0055】
[実施例3の構成と動作の説明:図5(a)、図5(b)]
図5(a)は、スポンジローラに処理液を供給する前の待機状態を説明するための概略図であり、図5(b)は、スポンジローラに処理液を供給する状態を説明するための概略図である。また、同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
図5(a)に示すように、消去ユニット80は、スポンジローラ81と貯留容器82と定量供給装置としてそれぞれに組み込まれたカム機構からなる。カム83は、スポンジローラ81の回転軸と同軸に形成され、カムフォロア84は、貯留容器82の底に設けられた複数の排出口(図示は省略)に対応した栓(図示は省略)に連結して、カムフォロア84の上下動作に連動して排出口を開閉するように形成されている。
【0057】
図5(a)において、カムフォロア84は、カム83の下死点83aに位置し、カムフォロア84に連結している複数の栓が、貯留容器82の複数の排出口を閉じて、処理液85の滴下が止められている。
【0058】
図5(b)において、印刷が行われ、インクリボン巻き取り軸12の回転で、スポンジローラ81が回転して、カム83の上死点83bにカムフォロア84が押し上げられる。従って、カムフォロア84に連結している複数の栓が、貯留容器82の複数の排出口を開けて、処理液85がスポンジローラ81の歯に滴下し供給される。
【0059】
さらにインクリボン巻き取り軸12が回転して、スポンジローラ81が回転すると、図5(a)のように、カム82の下死点82aにカムフォロア83が下降する。従って、カムフォロア84に連結している複数の栓が、貯留容器82の複数の排出口を閉じて、処理液85のスポンジローラ81の歯の上への滴下が停止する。
【0060】
以上のように、定量供給装置としてカムとカムフォロアにより、貯留容器82の排出口を開閉するから、処理液85を間欠的に一定量の処理液をスポンジローラの歯に滴下する
ことが可能で、実施例2と同様に、スポンジローラ81の歯と接触する使用済みインクリボン13bに一定量の処理液を均等に塗布し、インクリボンに残存した記録跡を判読不能にすることが可能となり、そして、処理液の消費効率も高めることが可能となる。
【0061】
なお、一定量の処理液をスポンジローラに滴下するために、カムフォロアが常にカムの下死点で止まるように、すなわち、貯留容器の排出口を閉じるように、制御することが必要である。従って、カムとスポンジローラ81の回転を、インクリボン巻き取り軸の回転と切り離した機構にしてもよいし、更に、カムは、スポンジローラと同軸にすることなく、別に設けてカムフォロアを動作させても排出口の開閉は可能であることは言うまでもない。
【0062】
また、上述した実施例に限定されることはなく、それらの全てを行う必要もなく、特許請求の範囲の各請求項に記載した内容の範囲で種々に変更や省略をすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1、2 熱転写プリンタ
5 ロール紙取り付け軸
6、6a ロール紙
11 インクリボン取り付け軸
12 インクリボン巻き取り軸
13 インクリボン
13a 未使用のインクリボン
13b 使用済みのインクリボン
20 熱転写ヘッド
21 プラテン
50 プリンタケース
51 印画出力口
60、70、80 消去ユニット
61、71、81 スポンジローラ
62、82 貯留容器
63、73 ケース
63a、73a 供給口
63b、73b 排出口
64、74 回転タンク
65、75 貯蔵部
83 カム
84 カムフォロア
600、700 定量供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンのインクを記録紙に熱転写するとともに、処理液を含浸したスポンジローラを用いて前記インクリボンに残った記録跡を消去する熱転写プリンタにおいて、
前記処理液が貯留された貯留容器と前記スポンジローラとの間に、一定量の前記処理液を前記貯留容器からスポンジローラに間欠的に供給する定量供給装置を備えていることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記定量供給装置は、所定量の前記処理液を内部に貯留した状態で回転可能に構成された回転タンクを備え、該回転タンクは、その回転運動に応じて一定量の前記処理液を間欠的に排出して前記スポンジローラに供給することを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記回転タンクは、1回の排出で内部に貯留されたすべての前記処理液を排出することを特徴とする請求項2記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
前記回転タンクは、前記処理液を貯留する複数の貯蔵部を備え、前記回転運動に応じて前記貯蔵部から前記処理液を等ピッチで順に排出することを特徴とする請求項2記載の熱転写プリンタ。
【請求項5】
前記定量供給装置は、カムの回転に応じて動作するカムフォロアに連結した栓により前記貯留容器の排出口を開閉することを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−201246(P2011−201246A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72731(P2010−72731)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】