説明

熱転写受容シート

【課題】印画時の走行性が良好で、画像の耐久性に優れ、かつ印画濃度が高く、写真用途などに利用可能な熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】シート状支持体の少なくとも一面上に、画像受容層を設けた熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、少なくとも染着性熱可塑性樹脂とポリシロキサングラフトアクリル樹脂とを含む水性塗工液を用いて形成され、染着性熱可塑性樹脂100質量部に対して、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂を0.1〜20質量部含む熱転写受容シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の熱転写受容シートは、印画時の走行性が良好で、印画濃度が高く、かつ画像の耐久性に優れた、写真用途などに利用可能な熱転写受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料熱転写方式は、染料層を有する染料熱転写シート(以下単に、「インクリボン」という)と、この染料を受容する染料受容層(以下単に、「受容層」という。)を有する熱転写受容シート(以下単に、「受容シート」という)を用い、染料層と受容層を重ね合わせ、加熱により染料を受容層上に転写して画像を形成する。加熱はサーマルヘッドで行われ、多色の色ドットによりフルカラー画像を形成する。染料を用いているため画像は鮮明で透明性が高く、写真用途に利用可能な高品質画像が得られる。
【0003】
受容層を形成する樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂が提案されている。例えば塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等の染着性熱可塑性樹脂が開示されている(例えば、特許文献1−3参照。)。一般には、このような熱可塑性樹脂を、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解して受容層塗工液を作成し、これをシート状支持体に塗布、乾燥して受容シートを形成する方法により、製品化が行なわれている。
ところが、近年、有機溶剤使用による環境負荷が社会問題となっており、受容シートの製造においても脱溶剤化が望まれている社会背景がある。
【0004】
そこで、受容層樹脂を水溶性・水分散性樹脂とする方法については、例えば、ポリエステル樹脂の水分散体が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、係るポリエステル樹脂は一般に、親油性の熱可塑性樹脂と比較して、染料染着性が劣る傾向がある。この欠点を補うためには、受容層中の樹脂組成を変更してガラス転移点を下げるか、あるいはガラス転移点の低い熱可塑性樹脂を併用する等の対応が必要となる。しかしガラス転移点を下げると、受容層の耐熱性が低下し、印画時にインクリボンと受容層の貼り付きが起こり易くなり、剥離音・融着などの走行トラブルが発生し易い問題がある。
【0005】
水系樹脂受容層の走行トラブルを回避するために、離型剤を添加する提案がされている。例えば、受容層は水分散性樹脂であり、離型剤として水溶性または水分散性のシリコーンオイルを添加する方法が開示されている(例えば、特許文献5、6参照。)。シリコーンオイルは離型性に優れるが、水系受容層の剥離音・融着を抑えるためには多量の添加が必要である。シリコーンオイルは塗工層界面に局在化する性質があり、受容層表面、および受容層/基材界面に局在化する。十分に効果を得るために多量に添加すると、受容層と基材の密着性が損なわれて、印画時に、受容層が基材から剥がれインクリボンに貼り付く等の現象、いわゆる受容層剥がれ等が発生し易くなる。
また、受容層表面に離型層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、離型層が受容層への染料染着を阻害し、鮮明な画像が得られないことがある。
【0006】
さらに、シリコーンオイル以外にも、離型剤の提案がなされている。例えば、シリコーン変性樹脂(例えば、特許文献7参照。)、ポリシロキサンを側鎖に含むグラフトポリマー(例えば、特許文献8、9参照。)、ポリシロキサンを側鎖に含むグラフトアクリルポリマー(例えば、特許文献10〜12参照。)が挙げられる。これらの提案は、受容層が、実質的に溶剤溶解型であり、主に有機溶剤を用いて形成されている。
【0007】
上記のようなグラフトポリマー構造を有する離型剤については、水性塗工液として使用された例は示されておらず、例えば、このような離型剤を受容層中に必要以上に含有させると、支持体の種類によっては、受容層の接着性が不足するおそれがあり、また、水性塗工液中での分散性や、染着性熱可塑性樹脂との相溶性等が不十分な場合には、画像濃度や画質等の低下が懸念される。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−224844号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭61−199997号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平3−65391号公報(第1頁)
【特許文献4】特開平6−234269号公報(第2頁)
【特許文献5】特開平6−24156号公報(第2頁)
【特許文献6】特開平6−135170号公報(第2頁)
【特許文献7】特開平6−64354号公報(第2頁)
【特許文献8】特開平1−4654号公報(第1頁)
【特許文献9】特開平3−23990号公報(第1頁)
【特許文献10】特開昭62−222895号公報(第1頁)
【特許文献11】特開昭63−178085号公報(第1頁)
【特許文献12】特開平1−202494号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の欠点を改良し、印画時の走行性が良好で、画像の耐久性に優れた、写真用途などに利用可能な受容シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の離型剤を添加した水性受容層により形成された受容シートにより達成できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、以下の各発明を包含する。
【0011】
(1)シート状支持体の少なくとも一面上に、画像受容層を設けた熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、少なくとも染着性熱可塑性樹脂とポリシロキサングラフトアクリル樹脂とを含む水性塗工液を用いて形成され、染着性熱可塑性樹脂100質量部に対して、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂を0.1〜20質量部含むことを特徴とする熱転写受容シート。
(2)前記染着性熱可塑性樹脂として、水溶性または水分散性の、ポリエステル樹脂および/または塩化ビニル共重合体樹脂が含まれる(1)項に記載の熱転写受容シート。
(3)前記ポリシロキサングラフトアクリル樹脂が、水溶性または水分散性のポリシロキサングラフトアクリル樹脂である(1)項または(2)項に記載の熱転写受容シート。
【0012】
(4)前記水性塗工液が、さらにポリアクリル酸系増粘剤を含有し、かつ水性塗工液の20℃における粘度が50〜300mPa・sである(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
(5)前記シート状支持体がセルロースパルプを主成分とし、かつシート状支持体と画像受容層の間に、中空粒子を含有する中間層が設けられた(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
(6)前記中間層と画像受容の間に、さらに膨潤性無機層状化合物を含有するバリア層が設けられた(5)項に記載の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明の受容シートは、印画時のリボンの離型性がよく走行性が良好で、受容層はがれがなく、印画濃度が高く、かつ画像の耐久性に優れており、写真用途などに利用可能な受容シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、シート状支持体の少なくとも一面上に受容層を設けた受容シートにおいて、受容層が、少なくとも染着性熱可塑性樹脂と一定量のポリシロキサングラフトアクリル樹脂とを含む水性塗工液を用いて形成されたものであることを特徴とするものである。
以下に本発明について、詳細に説明する。
【0015】
(受容層)
本発明では、受容層用塗工液は水性であることが特徴である。染着性熱可塑性樹脂は水に溶解した状態で存在してもよいし、水に分散された状態で存在してもよい。染着性熱可塑性樹脂を水溶化するには、ポリマー骨格または側鎖に親水基を導入する方法がある。
親水基は、カルボキシル基、リン酸エステル基、スルホン基、アミノ基、イミノ基、第三アミン基、水酸基、エーテル基、アミド基等が挙げられる。親水基を導入した後、対イオンで中和し、親水性の石鹸またはイオン性基を形成させ水に溶解させる手法が一般的である。また水分散化する場合も、乳化重合法等の公知の技術を使うことが可能である。
【0016】
受容層の塗工量は、1g/m以上10g/m未満が好ましい。1g/m未満では、染料染着性が不十分なことがあり、10g/m以上ではコストが増大する割に得られる効果が小さい。本発明で受容層を形成する染着性熱可塑性樹脂としては、染料染着性が良好なポリエステル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂が好ましい。
【0017】
(染着性熱可塑性樹脂)
受容層を形成する樹脂としては、染料に対する親和性が高く、染料染着性の良好な熱可塑性樹脂を使用する。このような樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。この中でも、染料染着性に優れたポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合体樹脂が好ましく用いられる。これらの染着性熱可塑性樹脂は単独で使用してもよいし、また二種以上を併用して使用してもよい。
【0018】
本発明で受容層を形成する染着性熱可塑性樹脂としては、上記の中でも、染料染着性が良好なポリエステル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂が特に好ましい。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分の重縮合により合成される。耐熱性の点で、分岐構造を有するポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0019】
(多価カルボン酸成分)
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分中に、イソフタル酸成分を50モル%以上含むことが好ましい。50%未満では得られるポリエステル樹脂の耐光性が低下することがある。多価カルボン酸成分中には、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸を用いることも可能である。
【0020】
脂環族ジカルボン酸類としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジエチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジプロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びそのアルキル誘導体。
【0021】
また、2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸等の2,6−デカリンジカルボン酸及びそのアルキル誘導体、
【0022】
また、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、ジメチルアダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、4,4’−カルボキシメチルシクロヘキサン、4,4’−カルボキシエチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0023】
イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸類としては、テレフタル酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、P−キシリレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
上記多価カルボン酸と同様に用いられる同カルボン酸の誘導体類としては、上記ジカルボン酸のエステル化合物、酸無水物、酸ハロゲン化物などが挙げられる。
【0025】
脂肪族ジカルボン酸類としては、直鎖状又は分岐状の脂肪族ジカルボン酸及びそれらのエステル化合物、酸ハロゲン化物、酸無水物等の誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソセバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、ポリアルケニルコハク酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、重合脂肪酸のダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、セバシン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0026】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度上昇や、分岐構造形成のために、多価カルボン酸成分として、3価以上のカルボン酸を含有させることができる。3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、トリカルバリル酸、カンホロン酸、トリメシン酸、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸、1,4,8−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、重合脂肪酸のトリマー酸などの3価以上のカルボン酸やこれらのエステル化合物及び酸無水物などが挙げられる。該化合物の含有量は、全カルボン酸成分のうち0.5〜10モル%が好ましく、より好ましくは1〜7モル%である。
【0027】
(多価アルコール成分)
本発明のポリエステル樹脂は、多価アルコール成分として脂環族グリコール類及び又は脂肪族グリコール類を使用することが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、または2種以上を適宜に組み合わせて使用してもよい。
【0028】
脂環族グリコール類としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添BIS−A(水素化ビスフェノールA)、1,2−シクロペンタンジオール、1,4−シクロオクタンジオール、2,5−ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添BIS−A等が好ましく使用される。
【0029】
脂肪族グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が好ましく使用される。
【0030】
上記グリコール成分に加えて3価以上の多価アルコールを添加して縮重合することも可能である。3価以上のアルコール化合物の具体例としては、グリセリン、ジグリセロール、ポリグリセロール等のグリセロール化合物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のメチロール化合物が挙げられる。
【0031】
(塩化ビニル共重合体樹脂)
本発明の塩化ビニル共重合体は、塩化ビニルをモノマー単位として50質量%以上の割合で含有する塩化ビニルと他のコモノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0032】
(コモノマー)
コモノマーとしては、脂肪酸ビニルエステル類として酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、やし酸ビニルなど。アクリル酸もしくはメタクリル酸およびそのエステル類としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等。マレイン酸およびそのエステル類としては、マレイン酸、マレイン酸ジエチルなど。アルキルビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、などのアルキルビニルエーテル等。さらにエチレン、プロピレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレンなどを挙げることができる。なお塩化ビニル共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
【0033】
これらの共重合体のうち、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、塩化ビニルとアクリルとの共重合体は、染料との親和性が良好であり、特に好ましい。また塩化ビニル共重合体樹脂は、水酸基あるいはカルボキシル基を導入したものが好ましく使用される。
【0034】
塩化ビニル系樹脂の水酸基は、塩化ビニルと例えば酢酸ビニルとを共重合させた後、一部を加水分解することにより導入する方法がある。また、カルボキシル基は、重合時にマレイン酸を添加して導入する方法がある。
【0035】
上記、ポリエステル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂は、ガラス転移温度が30℃以上80℃未満であることが好ましく、40℃以上70℃未満がより好ましい。30℃未満では耐熱性が不足して、印画時にインクリボンと受容層が貼り付くことがある。80℃以上では染料染着性が劣ることがあり、鮮明な画像を形成できない場合がある。なお、ガラス転移とは、高分子物質を加熱したときにガラス状の硬い状態からゴム状に変わる現象をいい、剛性や粘度が低下する。ガラス転移が起きる温度をガラス転移温度という。示差走査熱量形(DSC)にて、試験片を一定速度で昇温したときの吸熱量を測定することで得られ、JIS C 6481で規定されている。
【0036】
上記、ポリエステル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂は、数平均分子量が、1,000以上50,000未満が好ましい。1,000未満では、形成した皮膜の柔軟性が不足しヒビ割れを生じることがある。50,000以上では、染料染着性が不足し、鮮明な画像が得られないことがある。
なお数平均分子量とは、分子1個当たりの平均の分子量である。合成高分子は通常、分子量が異なる分子の混合物であり、それぞれの分子量の総和を分子の数で除したものが数平均分子量となる。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いる。ゲル状粒子を充填したカラムに試験材料の希薄溶液を流し、流出するまでの時間を測定する。分子の大きさによって流出時間が異なることを利用して、分子量を算出できる。
【0037】
受容層には、耐熱性向上のために架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、有機金属化合物等他が挙げられる。架橋剤は、熱可塑性樹脂の官能基と反応して三次元架橋させることができる。官能基は例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等である。
また受容層には、画像保存性を向上する目的で、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。
【0038】
(ポリシロキサングラフトアクリル樹脂)
本発明では、受容層に離型剤としてポリシロキサングラフトアクリル樹脂を含有する。ポリシロキサングラフトアクリル樹脂は、アクリル系ポリマーを主鎖とし、ポリシロキサンが側鎖としてグラフト結合しているグラフトポリマーである。従来公知のシリコーンオイルを離型剤として使用すると、受容層と基材との密着性が低下することがある。ポリシロキサングラフトアクリル樹脂は、主鎖のアクリルポリマーが基材との密着性を維持し、側鎖のポリシロキサンが離型性を付与する。
【0039】
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂の合成方法には、下記の方法等が示される。
(1)アクリル系重合体にポリシロキサンを反応させる方法、
(2)アクリル系モノマーを重合反応させる際に同時にポリシロキサンを反応させる方法。
具体例を挙げると、ヒドロキシル基含有ポリシロキサンと、重合性シラン化合物と、不飽和有機酸と、重合性アクリルモノマーとを有機溶剤中で重合する。得られた重合体の溶液に塩基性化合物を添加して、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂が得られる。
【0040】
上記のようなヒドロキシル基含有ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等。重合性シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等。
【0041】
また不飽和有機酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等。重合性アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等。
【0042】
さらに塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノメチロールジメチルアミン等。なおアクリルモノマー以外にもスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等のモノマーも適宜添加することができる。
【0043】
重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等のラジカル重合開始剤を使用することができる。また、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂は水溶性または水分散性が好ましい。上記組成中、不飽和有機酸の量を調整することにより、水分散性の樹脂又は水溶性の樹脂に仕上げることができる。
【0044】
本発明において、受容層中のポリシロキサングラフトアクリル樹脂の含有量は、受容層中の染着性熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であり、0.2〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。0.1質量部未満では、離型効果が十分でなく、20質量部を超えると、基材との密着性が悪化することや、染料染着性を阻害して鮮明な画像が得られないことがある。ポリシロキサングラフトアクリル樹脂のガラス転移温度は、40℃以上120℃未満が好ましく、より好ましくは60℃以上120℃未満である。40℃未満では耐熱性が不足して印画時にリボンとの離型性が不十分となり、融着することがある。一方120℃以上では、基材との密着性が低下し、印画時に受容層が基材から剥がれることがある。
【0045】
本発明において、受容層用塗工液の調製の際、20℃における塗工液粘度は、一般には5〜300mPa・sの範囲が好ましく、より好ましくは50〜300mPa・sの範囲である。粘度が5mPa・s未満では、受容層塗工液がバリア層などに浸み込んで、印画濃度や画質が低下することがあり、一方300mPa・sを超えると、塗工液に泡が発生した場合に脱泡し難いことや、また塗工時に泡を巻き込んで塗工欠陥を生じることがある。
【0046】
増粘剤として、公知の増粘剤が使用可能であり、例えば、デンプン、ペクチン、アルギン酸、トラガントガム、キサンタンガム、デキストラン、ゼラチン、カゼイン等の天然高分子系化合物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルデンプン等の半合成高分子系化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体などの合成高分子化合物が挙げられる。中でも、ポリアクリル酸系増粘剤が好ましく使用される。その理由は、少量で増粘効果が大きく、受容シートとした場合の品質への影響がほとんど無いこと、および塗料に添加することで塗料の安定性が良好になることである。
【0047】
ポリアクリル酸系増粘剤はカルボキシル基を多数有し、親水性が高い。そのため水に容易に溶解する。水溶液はアニオン性で粘性を有し、高分子量のものでは少量で高い増粘効果を発揮する。増粘剤として受容層に添加した場合、少量で充分に増粘するため、染着性や耐熱性への悪影響がほとんど無い。またポリアクリル酸系増粘剤は、分子内に親水基と親油基を共有するので、界面活性剤としての役割も期待できる。受容層塗料に添加した場合、塗料中の染着性熱可塑性樹脂や各種添加剤を安定化する。このため、ポリアクリル酸系増粘剤を添加した受容層塗料は、長期保存後も凝集や沈降などの異常が発生しにくい。
【0048】
ポリアクリル酸系増粘剤としては、ポリアクリル酸やポリアクリル酸ナトリウム等を含む。ポリアクリル酸やポリアクリル酸ナトリウムは、直鎖状および架橋型がある。直鎖状では、水溶液は粘稠で粘着力のある曵糸性を有する。架橋型では、水溶液は、チキソトロピック性を有し、曵糸性がない。直鎖状および架橋型を、必要に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0049】
ポリアクリル酸系増粘剤の市販品としては、例えば、サンノプコ製SNシックナー924、926、929S(ポリアクリル酸)、東亞合成製アロンA−20P、A−20L(ポリアクリル酸ナトリウム)、日本触媒製アクアリックHシリーズAS(ポリアクリル酸)、IH、FH、MH(ポリアクリル酸ナトリウム)、日本触媒製ジュンロンPW-110、PW-111(架橋型ポリアクリル酸)、レオジック250H、252L(架橋型ポリアクリル酸ナトリウム)、アロンビスS、SS(ポリアクリル酸ナトリウム)、EM−125、EM-312(ポリアクリル酸アルキルエステルエマルジョン)等が挙げられる。
【0050】
ポリアクリル酸系増粘剤は、分子量が10万以上1000万未満であることが好ましい。分子量が10万未満では、増粘効果が不充分となる場合がある。一方、分子量が1000万以上では、水への溶解性が低下して固形分濃度が下がり、塗料に添加した場合に、塗料の固形分濃度を維持できない場合がある。
【0051】
本発明においてポリアクリル酸系増粘剤の受容層への添加量は、固形で0.1%以上10.0%未満が好ましく、0.3%以上5.0%未満がより好ましい。添加量が0.1%未満では、増粘効果が充分でない場合がある。一方、添加量が10.0%以上では、受容層の染料染着性が低下したり、耐水性が悪化したりする場合がある。
【0052】
(シート状支持体)
本発明における受容シートの支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂シート類が使用される。例えば、紙類としては上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙などが挙げられる。合成樹脂を主成分としたシート類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。また多孔質延伸シート類としてはポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とした、例えば合成紙、多孔質ポリエステルシートなど。積層体類としては、多孔質延伸シート同士、多孔質延伸シートと他のシート及び/又は紙等とを積層貼着させたシートなどが挙げられる。
【0053】
シート状支持体の受容層面側の平滑度は、50秒以上が好ましい。50秒未満では、得られた受容シートの平滑性が不足し、画像均一性が損なわれる場合がある。なお平滑度は、シート表面の平滑性の指標である。一定条件下で基準面と試験片表面との間を流れる空気の流量を測定することで得られ、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.5(王研式平滑度)に規定されている。
【0054】
本発明においては、上記シート状支持体の中でも、セルロースパルプを主成分とする紙類が好ましい。得られる受容シートの風合いが印画紙に近いものとなり、コスト的にも有利である。
(中間層)
【0055】
紙支持体をシート状支持体として使用する場合には、支持体上の受容層が形成される側に中空粒子を含有する中間層を設けることが好ましい。中間層は、断熱性とクッション性を付与できるので、画像鮮明性や画像均一性を向上できる。中間層で使用される中空粒子の材質、製造方法は特に限定されないが、具体的には、中空粒子の壁を形成する材料としてアクリルニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステルの重合体等が挙げられる。それら中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガスを封入し、加熱発泡させる方式や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。
【0056】
中間層の塗工量は、1g/m以上30g/m未満が好ましい。1g/m未満では、断熱性やクッション性が不足することがあり、30g/m以上ではコストが増大する割に得られる効果が不十分なことがある。
中空粒子の粒径は、0.1μm以上10μm未満が好ましい。0.1μm未満では、中空粒子の壁が薄くなって耐熱性が不足し、塗工乾燥工程で壊れやすいことがある。一方、10μm以上では得られた受容シートの表面凹凸が大きくなり、画像均一性が劣ることがある。中空粒子の体積中空率は、50%以上90%未満が好ましい。50%未満では断熱性とクッション性を付与する効果が不十分な場合がある。一方、90%以上では、中空粒子の壁が薄くなり、耐久性が低下することがある。
【0057】
(バリア層)
紙支持体上に中空粒子を含有する中間層を設ける場合、中間層と受容層の間に、さらにバリア層を設けることが好ましい。受容層に染着した染料が、中間層や紙支持体に移動しないようにすることが可能になり、画像のにじみを防止できる。バリア層に使用される樹脂は、フィルム形成能に優れ、弾力性、柔軟性のある樹脂が使用される。
【0058】
例えば、水溶性樹脂類では、デンプン、変性デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂など。
【0059】
水分散性樹脂類としては、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル樹脂系ラテックス、メタアクリル酸エステル系共重合樹脂ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス、ポリエステルエマルジョン、ポリエステルポリウレタンアイオノマー、ポリエーテルポリウレタンアイオノマーなど。
【0060】
バリア層に使用する樹脂は、軟化点が30℃以上150℃未満のものが好ましい。30℃未満では、画像のにじみ防止効果が不足する場合があり、150℃以上では、塗工乾燥工程での成膜性が劣り、塗工層にクラックが発生することがある。
【0061】
さらに、バリア層には、画像のにじみ防止のため、膨潤性無機層状化合物の含有が好ましい。膨潤性無機層状化合物類としては、フッ素金雲母、カリウム四珪素雲母、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトなどの合成マイカ、あるいはナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイトなどの合成スメクタイトが挙げられる。
【0062】
本発明の膨潤性無機層状化合物のアスペクト比は、10以上5,000未満が好ましい。10未満では、バリア効果によるにじみ防止が不足する。一方、5,000以上では、層状化合物が薄くなり、分散性が不安定になる場合がある。
なお、アスペクト比とは、層状化合物の短軸と長軸の比率である。無機層状化合物は通常、扁平な形状を持つので、形状を回転楕円体で近似できる。この回転楕円体の短軸と長軸の比率をアスペクト比と呼ぶ。アスペクト比が高いとは、層状化合物がより薄く、より多数存在していることを意味する。昇華染料が層状化合物の間を通過するために、より迂回回数が増大することとなり、道程が長くなる。ゆえにアスペクト比が高いと、バリア性が高くなる。アスペクト比は、層状化合物の短軸、長軸をレーザー式粒度分布計や電子顕微鏡で測定して算出できる。
【0063】
また、本発明で使用される膨潤性無機層状化合物の粒子平均長径は、0.1〜100μmの範囲が好ましく、2〜20μmの範囲がより好ましい。粒子平均長径が0.1μm未満になると、アスペクト比が小さくなると共に、中間層上に平行に敷き詰めることが困難になり、画像のニジミを完全には防止できないことがある。一方、粒子平均長径が100μmを超えて大きくなると、バリア層から膨潤性無機層状化合物が突きでてしまい、バリア層の表面に凹凸が発生し、受容層表面の平滑度が低下して画質が悪化することがある。
【0064】
(裏面層)
本発明の受容シートにおいて、受容層が設けられていない側の面(裏面)上には、適宜、裏面層が設けられる。裏面層の目的は、走行性向上、静電気防止、受容シート相互の擦れによる受容層の傷つき防止、受容シートを重ね置きしたときの裏面への染料移行防止などである。裏面層は、接着成分としての樹脂と、必要に応じて顔料や添加剤を含有する。
【0065】
本発明において、特に中空粒子を含有する中間層を設けた支持体を使用する場合には、受容シートにカレンダー処理を施してもよい。得られた受容シート表面の凹凸を減少させ、均一な画像を得るためである。カレンダー処理は、中間層、バリア層、受容層塗工後のいずれの段階で行ってもよい。カレンダー処理に使用されるカレンダー装置は、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、クリアランスカレンダー等の一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。
【0066】
上記各塗工層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。
本発明の受容シートの受容層や、その他の塗工層は、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、及びスライドビードコーター等の公知のコーターを使用して、所定の塗工液を塗工、乾燥して形成することができる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。特に断らない限り、実施例中の「部」および「%」は、すべて「質量部」および「質量%」を示し、溶剤に関するものを除き固形分量である。Tgはガラス転移温度を示す。
【0068】
実施例1
(シート状支持体Aの作成)
厚さ100μmの上質紙両面に、ポリプロピレンの多層構造フィルム(商品名:ユポFPG50、ユポ・コーポレーション製)をドライラミネート方式で積層して、シート状支持体Aとした。
上記シート状支持体Aに、下記組成の受容層用塗工液Aを、固形分塗工量が5g/mになるように塗工、乾燥して受容層を形成し、受容シートを作成した。
受容層用塗工液A
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、Tg67℃、
分子量15000、40%水分散液) 82部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS450、
東亜合成製、Tg70℃、30%水分散液) 18部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Aを調製した。
【0069】
実施例2
受容層用塗工液Aの代わりに、下記組成の受容層用塗工液Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、受容シートを作成した。
受容層用塗工液B
ポリウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー#1700、日華化学製、
Tg20℃、32%水分散液) 97部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:X22−8053、
信越シリコーン製、Tg110℃、40%イソプロピルアルコール溶液) 3部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Bを調製した。
【0070】
実施例3
受容層用塗工液Aの代わりに、下記組成の受容層用塗工液Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、受容シートを作成した。
受容層用塗工液C
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:ビニブラン603、
日信化学製、Tg64℃、50%水分散液) 90部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS413、
東亜合成製、Tg0℃、35%水/ブチルセロソルブ分散液) 10部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Cを調製した。
【0071】
実施例4
受容層用塗工液Aの代わりに、下記組成の受容層用塗工液Dを使用した以外は、実施例1と同様にして、受容シートを作成した。
受容層用塗工液D
ポリエステル樹脂(商品名:スカイボンEW312、SKケミカルス製、
Tg64℃、50%水溶液) 90部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS413、
東亜合成製、Tg0℃、35%水/ブチルセロソルブ分散液) 10部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Dを調製した。
【0072】
実施例5
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、王子製紙製、坪量174.4g/m)を使用し、その片面に下記組成の中間層用塗工液Aを、固形分塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥して中間層を形成した。
さらに、上記中間層上に、下記組成の受容層用塗工液Eを、固形分塗工量が5g/mになるように塗工、乾燥して受容層を形成し、受容シートを作成した。
中間層用塗工液A
スチレンアクリル系中空粒子エマルジョン(商品名:Nipol MH5055、
日本ゼオン製、30%水分散液、平均粒径0.5μm、体積中空率55%) 70部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製) 10部
スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:PT1004、日本ゼオン製、
45%水分散液) 20部
固形分濃度が30%となるように調製水を加え、中間層用塗工液Aを調製した。
受容層用塗工液E
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、Tg67℃、
分子量15000、40%水分散液) 83部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS450、
東亜合成製、Tg70℃、30%水分散液) 16部
ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンA−20P、東亞合成製) 1部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Eを調製した。
【0073】
実施例6
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、王子製紙製、坪量174.4g/m)を使用し、その片面に下記組成の中間層用塗工液Bを、固形分塗工量が15g/mとなるように塗工、乾燥して中間層を形成し、この中間層上に、下記組成のバリア層用塗工液Aを、固形分塗工量が5g/mとなるように塗工、乾燥してバリア層を形成した。
さらに、上記バリア層上に、下記組成の受容層用塗工液Fを、固形分塗工量が5g/mになるように塗工、乾燥して受容層を形成し、受容シートを作成した。
中間層用塗工液B
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分とする共重合体からなる既発泡中空粒子(平均粒子径3.2μm、体積中空率76%) 50部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製) 20部
スチレンブタジエンラテックス(商品名:PT1004、日本ゼオン製、
45%水分散液) 30部
固形分濃度が30%となるように調製水を加え、中間層用塗工液Bを調製した。
【0074】
バリア層用塗工液A
膨潤性無機層状化合物(ナトリウム4珪素雲母、粒子平均長径6.3μm、
アスペクト比2700) 30部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、クラレ製) 50部
スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:L−1537、旭化成製、
50%水分散液) 20部
固形分濃度が15%となるように調製水を加え、バリア層用塗工液Aを調製した。
受容層用塗工液F
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、
Tg67℃、分子量15000、40%水分散液) 81部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS450、
東亜合成製、Tg70℃、30%水分散液) 16部
ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンA−20L、東亞合成製) 3部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Fを調製した。
【0075】
実施例7
受容層用塗工液Fの代わりに、下記組成の受容層用塗工液Gを使用した以外は、実施例6と同様にして、受容シートを作成した。
受容層用塗工液G
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、
Tg67℃、分子量15000、40%水分散液) 89.1部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS480、
東亜合成製、Tg70℃、25%水分散液) 0.4部
ポリアクリル酸(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ製) 0.5部
ポリイソシアネート(商品名:IS−100N、
日華化学製、固形分100%) 10部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Gを調製した。
【0076】
実施例8
受容層用塗工液Fの代わりに、下記組成の受容層用塗工液Hを使用した以外は、実施例6と同様にして、受容シートを作成した。
受容層用塗工液H
塩化ビニル−アクリル共重合体樹脂(商品名:ビニブラン690、
日信化学製、Tg46℃、54%水分散液) 83部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:X24−798A、
信越シリコーン製、Tg50℃、50%イソプロピルアルコール溶液) 5部
ポリアクリル酸(商品名:SNシックナー926、サンノプコ製) 2部
オキサゾリン系架橋剤(商品名:WS700、大日本インキ製、
25%水溶液) 12部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Hを調製した。
【0077】
比較例1
受容層用塗工液Aの代りに下記組成の受容層用塗工液Iを使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液I
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、
Tg67℃、分子量15000、40%水分散液) 99.95部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS450、
東亜合成製、Tg70℃、30%水分散液) 0.05部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Iを調製した。
【0078】
比較例2
受容層用塗工液Aの代りに下記組成の受容層用塗工液Jを使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液J
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、
Tg67℃、分子量15000、40%水分散液) 77部
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂(商品名:サイマックUS450、
東亜合成製、Tg70℃、30%水分散液) 23部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Jを調製した。
【0079】
比較例3
受容層用塗工液Aの代りに下記組成の受容層用塗工液Kを使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液K
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、
Tg67℃、分子量15000、40%水分散液) 98部
アルコール変性シリコーンオイル(商品名:FZ2162、
東レダウコーニング製、固形分100%) 2部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Kを調製した。
【0080】
比較例4
受容層用塗工液Aの代りに下記組成の受容層用塗工液Lを使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液L
ポリエステル樹脂(商品名:PMD1200、東洋紡製、
Tg67℃、分子量15000、40%水分散液) 90部
アクリル樹脂(商品名:アロンA104、東亜合成製、
Tg45℃、40%水分散物) 10部
固形分濃度が20%となるように調製水を加え、受容層用塗工液Lを調製した。
【0081】
評価
上記各実施例および比較例で調製した塗工液、および得られた受容シートについて、下記試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0082】
〔受容層用塗工液粘度試験〕
市販B型粘度形を用いて、20℃環境における受容層用塗工液の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
〔リボン剥離性試験〕
昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用いた。50℃環境下で、受容シートに、黒ベタ画像を10枚連続で印画した。受容シートのリボン剥離性を以下の基準で評価し、表1に示した。
◎:受容シート表面とインクリボンとの融着が全くなく、10枚連続して正常に排紙され、実用には全く問題がない。
○:受容シート表面とインクリボンとの軽い融着により若干騒音は生じるが、10枚とも排紙され、実用可能である。
×:受容シート表面とインクリボンとが融着を生じ、正常に排紙されないものがあり、実用には適さない。
【0084】
〔基材密着性試験〕
昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用いた。50℃環境下で、受容シートに、黒ベタ画像を10枚連続で印画した。印画時の受容層剥がれを目視にて評価した。さらに、印画面側に、市販の粘着テープ(ニチバン社製、テープ巾18mm)を接着させ、粘着テープを180度剥離して、受容層剥がれを目視で評価した。受容シートの受容層と基材との密着性を以下の基準で評価し、表1に示した。
◎:10枚とも印画時の受容層剥がれは発生せず、粘着テープ試験でも剥がれは全く発生しない。実用には全く問題ない。
○:10枚とも印画時の受容層剥がれは発生しなかった。粘着テープ試験でわずかに剥がれが発生するが、実用可能である。
×:10枚のうち、1枚以上で受容層剥がれが発生した。実用には適さない。
【0085】
〔画像耐久性試験〕
昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温にてグレーベタ印画を行った。印画面に指を強く押し付け、40℃24時間環境に置いた。指紋の跡を目視にて評価した。
◎:指紋の跡は全くついておらず、実用には全く問題ない。
○:指紋のあとがわずかについているが、実用可能である。
×:指紋の跡がはっきり残り、実用には適さない。
【0086】
〔印画濃度試験〕
市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:DPP−SV55、ソニー社製)を用いて、サーマルヘッドでコントロールされた加熱を施すことにより、黒ベタ画像を作成した。得られた黒ベタ画像について、マクベス反射濃度計(商品名:RD−914、Kollmorgen社製)を用いて、その反射濃度を測定し、印画濃度を評価した。結果を表1に示す。
◎:印画濃度が1.9以上であり、実用には全く問題ない。
○:印画濃度が1.7以上1.9未満であり、実用可能である。
×:印画濃度が1.7未満であり、実用には適さない。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の受容シートは、印画時の走行性が良好で、画像の耐久性に優れ、かつ印画濃度が高く、昇華熱転写方式を初めとする各種の熱転写方式のフルカラープリンターに有用なものであって、産業界に寄与するところは大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体の少なくとも一面上に、画像受容層を設けた熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、少なくとも染着性熱可塑性樹脂とポリシロキサングラフトアクリル樹脂とを含む水性塗工液を用いて形成され、染着性熱可塑性樹脂100質量部に対して、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂を0.1〜20質量部含むことを特徴とする熱転写受容シート。
【請求項2】
前記染着性熱可塑性樹脂として、水溶性または水分散性の、ポリエステル樹脂および/または塩化ビニル共重合体樹脂が含まれる請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記ポリシロキサングラフトアクリル樹脂が、水溶性または水分散性のポリシロキサングラフトアクリル樹脂である請求項1または2に記載の熱転写受容シート。
【請求項4】
前記水性塗工液が、さらにポリアクリル酸系増粘剤を含有し、かつ水性塗工液の20℃における粘度が50〜300mPa・sである請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受容シート。
【請求項5】
前記シート状支持体がセルロースパルプを主成分とし、かつシート状支持体と画像受容層の間に、中空粒子を含有する中間層が設けられた請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受容シート。
【請求項6】
前記中間層と画像受容の間に、さらに膨潤性無機層状化合物を含有するバリア層が設けられた請求項5に記載の熱転写受容シート。

【公開番号】特開2008−284787(P2008−284787A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132250(P2007−132250)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】