説明

熱転写媒体、熱転写媒体の製造方法、画像形成方法および記録物

【課題】優れた画像転写性を有する熱転写媒体、このような熱転写媒体を容易に製造可能な熱転写媒体の製造方法、このような熱転写媒体を用いた画像形成方法、また、このような熱転写媒体を用いて画像を記録した記録物を提供すること。
【解決手段】本発明の熱転写媒体は、インク受理層としての空隙層を有する転写シートと、前記転写シートの前記空隙層が設けられた面に、色材が分散したインクをインクジェット方式により付与することにより形成された画像層と、前記画像層の前記転写シートとは反対の面側に設けられ、接着性を有する化合物を含む材料で形成された接着層とを有し、前記転写シートは、前記空隙層が設けられた面にシリコン樹脂を付与してなるものであることを特徴とする。前記インクは、色材として光輝性顔料が分散した光輝性インクおよび/または色材として着色剤が分散したカラーインクであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写媒体、熱転写媒体の製造方法、画像形成方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙やプラスチックフィルム等のシート上に熱的に転写可能な画像層を設けた構成を有する熱転写シート(熱転写媒体)が知られている。熱転写シートにより文字、記号等の画像層は、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷あるいはオフセット印刷等でシート上に形成されるのが一般的である。熱転写シートは、画像層を記録媒体(被転写媒体)に熱転写することで、記録媒体に画像を記録することができる。
【0003】
ところで、このような画像層を形成する方法として、インクジェット方式によりインクをシートに吐出して画像を形成し、熱転写シートを製造する試みが行われている。インクジェット方式を用いることで、種々の画像に対応した熱転写シートを容易に製造することができる。
しかしながら、従来のインクジェット方式によって製造された熱転写シートでは、インク中の着色剤を分散するための樹脂の影響で、画像層とシートとの密着性が高くなってしまい、画像層の剥離性が低下するといった問題があった。このため、記録媒体へ画像が十分に転写されないといった問題があった。特に、インク受理層としての空隙層を有する転写シートを用いた場合、このような傾向が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−168250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた画像転写性を有する熱転写媒体、このような熱転写媒体を容易に製造可能な熱転写媒体の製造方法、このような熱転写媒体を用いた画像形成方法、また、このような熱転写媒体を用いて画像を記録した記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の熱転写媒体は、インク受理層としての空隙層を有し、前記空隙層にシリコン樹脂層が付与された転写シートと、
前記転写シートの前記空隙層が設けられた面に、色材が分散したインクがインクジェット方式により付与されたことによって形成された画像層を有することを特徴とする。
これにより、優れた画像転写性を有する熱転写媒体を提供することができる。
【0007】
本発明の熱転写媒体では、前記インクは、色材として着色剤が分散したカラーインク、色材として光輝性顔料が分散した光輝性インクから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
これにより、優れた画像転写性を有するとともに、発色性の優れた画像を形成可能な画像層を備えた熱転写媒体を提供することができる。
【0008】
本発明の熱転写媒体では、前記カラーインク中における樹脂成分の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
これにより、転写シートからの画像層の不本意な剥がれを防止しつつ、熱転写媒体の画像層の転写時には、転写シートから画像層をより容易に剥離することができる。
本発明の熱転写媒体では、前記着色剤は樹脂を用いて分散されていることが好ましい。
これにより、着色剤の分散性を優れたものとすることができる。また、これにより、熱転写媒体の画像層の転写時には、転写シートから画像層をより容易に剥離することができるとともに、保存時には転写シートから画像層が不本意に剥がれるのを防止することができる。
【0009】
本発明の熱転写媒体では、前記画像層は、前記シリコン樹脂層に対して前記カラーインクを付与した着色層と、前記着色層に対して前記光輝性インクを付与した光輝性層とを有することが好ましい。
これにより、画像転写性をより優れたものとすることができる。
本発明の熱転写媒体では、前記画像層に対して、接着性を有する化合物を含む材料により接着層が付与されたことが好ましい。
これにより、画像転写性をより優れたものとすることができる。
【0010】
本発明の画像形成方法は、本発明の熱転写媒体の前記画像層を、前記転写シートとは異なる記録媒体へ転写する転写工程と、を有することを特徴とする。
これにより、発色性に優れた画像を形成することができる。
本発明の記録物は、本発明の画像形成方法によって形成され、
前記記録媒体と、前記接着層と、前記画像層とを有することを特徴とする。
これにより、発色性に優れた画像を備えた記録物を提供することができる。
【0011】
本発明の熱転写媒体の製造方法は、インク受理層としての空隙層を有し、前記空隙層にシリコン樹脂層が付与された転写シートを用いる熱転写媒体の製造方法であって、
前記シリコン樹脂層に対して形成された、色材が分散したインクがインクジェット方式により付与された画像層を、備えることを特徴とする。
これにより、優れた画像転写性を有する熱転写媒体を容易に製造可能な熱転写媒体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の熱転写媒体の一例を示す断面図である。
【図2】インクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の熱転写媒体の製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の画像形成方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《熱転写媒体》
まず、本発明の熱転写媒体の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の熱転写媒体の一例を示す断面図である。
図1に示すように、熱転写媒体100は、転写シート11と、画像層12と、接着層13とを順に積層した積層体で構成されている。
【0014】
転写シート11は、画像層12、接着層13を支持する機能を有し、画像形成の際には除去されるものである。
転写シート11は、インク受理層としての空隙層を有する基材シートの空隙層が設けられている面(画像層12と接する面)に、シリコン樹脂を付与させてなるものである。
ところで、従来のインクジェット方式によって製造された熱転写シートでは、インク中の着色剤を分散するための樹脂の影響で、画像層と転写シートとの密着性が高くなってしまい、画像層の剥離性が低下するといった問題があった。このため、記録媒体へ画像が十分に転写されないといった問題があった。特に、インク受理層としての空隙層を有する転写シートを用いた場合、このような傾向が顕著であった。
【0015】
これに対して、本発明の熱転写媒体では、転写シートが、インク受理層としての空隙層を有する基材シートの空隙層が形成されている面にシリコン樹脂を付与させてなるものである点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、画像層中に含まれるインク由来の樹脂による画像層と転写シートとが過度に密着することを防止することができ、転写シートからの画像層の剥離性を優れたものとすることができる。その結果、優れた画像転写性を備えた熱転写媒体を提供することができる。
【0016】
本発明で用いるシリコン樹脂としては、ポリフローKL−401、ポリフローKL−402(以上、共栄社化学株式会社の商品名)、BYK−322(ビックケミー・ジャパン株式会社の商品名)、BYK−331(ビックケミー・ジャパン株式会社の商品名)等を挙げることができる。シリコン樹脂は、より好ましくは常温で液体のシリコンオイルであるのが好ましい。
【0017】
なお、シリコン樹脂を付与する範囲は、転写シート11全面であってもよいし、画像層を形成する部分のみであってもよい。また、シリコン樹脂は、転写シート11の厚さ方向全てに付与させてもよいし、表面付近の一部に付与させてもよい。
転写シート11を構成する基材シートの材質としては、インク受理層としての空隙層を備えたものであれば、特に限定されず、例えば、インクが付与される表面を含む領域に空隙層を備えた、各種プラスチック、セラミックス、ガラス、金属や、これらの複合材料で構成された基材等が挙げられる。なお、「空隙層」とは、層を構成する成分のうち、樹脂の割合が3割未満であり、無機粒子で主に構成され無機粒子間または無機粒子に設けられた孔の空隙に液体が浸透するよう構成された層のことをいう。このような空隙層を有するシートを用いた場合、発色性の優れた画像を形成することが可能であるが、このような空隙層を有するシートにインクジェット方式によりインクを付与して画像を形成した場合、インクに含まれる樹脂によって画像層12の剥離性の低下が顕著となるといった問題があった。しかしながら、シリコン樹脂を付与させた転写シート11を用いることにより、画像層12の剥離性を優れたものとすることができる。なお、無機粒子としては例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリンの他に、タルクなどの精製した天然鉱物顔料、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、有機顔料などが挙げられる。
【0018】
画像層12は、転写シート11上に形成された層であり、後述するようなインクの分散媒の少なくとも一部を蒸発させることにより形成される層である。画像層12は、転写シート11の全面に形成されてもよいし、転写シート11の一部に形成されてもよい。画像層12は、熱転写媒体100から転写先の記録媒体へ転写されたときに、転写先の記録媒体上における画像となる。画像層は後述のカラーインク、光輝性インクのいずれか一方で形成されたものであっても良い。好ましくは、前記画像層は、シリコン樹脂層に対してカラーインクを付与した着色層と、着色層に対して光輝性インクを付与した光輝性層とを有する場合である。このような画像層であれば空隙層を有する熱転写媒体を用いた場合であっても、転写先の記録媒体に着色された光輝性画像を得ることが出来る。
【0019】
インクについては、後に詳述する。
接着層13は、少なくとも画像層12に対して形成され、画像層12を熱転写媒体100から転写先の記録媒体へ転写されたときに、画像層12と記録媒体とを接着する機能を有している。なお、接着層13は、画像層12上以外の領域に対して形成されてもよい。さらに、接着層13は、転写先の記録媒体に形成され、記録媒体を画像層12に対向するよう配置して画像層12に形成されたものでもよい。
【0020】
接着層13の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2μm以上10μm以下とすることができる。接着層13の厚みは、画像層12の転写先である記録媒体の性質に応じて適宜設定することができる。例えば、転写先の記録媒体の表面の凹凸が大きい場合には、その凹凸の影響が画像層12の表面(転写前に転写シート11に接していた面)に生じないように接着層13の厚みを適宜設定することができる。また、転写先の記録媒体が浸透性を有する場合には、その浸透性を考慮した厚みとすることができる。
【0021】
接着層13は、接着性を有する。ここで、接着性とは、画像層12と転写先の記録媒体とを、接着する性質のことをいう。本発明において、接着性は、接着層13に、温度(熱)の刺激が印加されたときに発現するものである。
接着層13が有する接着性の程度は、転写シート11と保護層との間の接着力(密着力)よりも、接着層13を介した画像層12と転写先の記録媒体との間の接着力(密着力)のほうが大きければ十分である。なお、保護層を設けていない場合は、転写シート11と画像層12との間の接着力(密着力)よりも、接着層13を介した画像層12と転写先の記録媒体との間の接着力(密着力)のほうが大きければ十分である。なお、画像は画像層12を構成する光輝性顔料の全てが転写される必要は無く、部分的に転写されるような接着力を有する接着層13を形成しても良い。
接着層13は、接着性を有する化合物を含む材料で構成されている。
【0022】
このような接着性を有する化合物としては、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、などの接着剤に汎用されるモノマー、オリゴマーや、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂等の樹脂類を例示できる。この場合、必要に応じて重合開始剤、反応助剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着性を有する化合物の例としては、ポリオレフィン類、ポリアミド類、およびその変性体などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。この場合、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着性を有する化合物としては、ロジン、糊化デンプン、ニカワ、各種の糖類等の天然樹脂またはその変性体などの粘着性を有する物質を例示することができる。
【0023】
《インク》
次に、本発明の熱転写媒体の画像層の形成に用いるインクについて説明する。
本発明で用いるインクとしては、色材として着色剤が分散したカラーインク、色材として光輝性顔料が分散した光輝性インクを用いることができる。これらのようなインクを用いることにより、発色性の優れた画像を形成可能な画像層12を容易に形成することができる。
【0024】
[カラーインク]
カラーインクは、単独で、または、後述する光輝性インクとともに画像層12を形成するのに用いるインクである。
カラーインクには、着色剤が含まれており、カラーインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のインク、ブラックインク、ライトブラックインク等が挙げられる。
【0025】
着色剤としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することができる色材を特に制限なく使用することができる。
本実施形態に使用可能な顔料としては、特に制限されないが、各種公知の顔料が挙げられる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213等が挙げられる。好ましくは、ピグメントイエロー74、155、213である。
【0026】
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。好ましくは、ピグメントレッド122、レッド202、ピグメントバイオレット19である。
【0027】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。好ましくはピグメントブルー15:3、15:4である。
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
【0028】
顔料は、平均粒径が10nm以上200nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上150nm以下程度のものが好ましい。本実施形態における顔料の添加量は、1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の範囲である。
本実施形態において使用可能な染料としては、例えば、アクリジン染料、アニリン染料、アントラキノン染料、アジン染料、アゾメチン染料、ベンゾー及びナフトキノン染料、インジゴイド染料、インドフェノール染料、インドアニリン染料、インダミン染料、ロイコ染料、ナフタールイミド染料、ニグロシン染料、インジュリン染料、ニトロ及びニトロソ染料、オキサジン及びジオキサジン染料、酸化染料、フタロシアニン染料、ポリメチン染料、キノフタロン染料、硫化染料、トリ及びジアクリルメタン染料、チアジン染料、チアゾール染料、キサンテン染料、シアニン染料等が挙げられる。
【0029】
具体的なイエロー系染料としては、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109等が挙げられる。
【0030】
具体的なマゼンタ系の染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14等が挙げられる。
【0031】
具体的なシアン系の染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー4、29、60、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44等が挙げられる。
【0032】
その他の色系統の具体的な染料としては、例えば、C.I.アシッドグリーン7、12、25、27、35、36、40、43、44、65、79、C.I.ダイレクトグリーン1、6、8、26、28、30、31、37、59、63、64、C.I.リアクティブグリーン6、7、C.I.アシッドバイオレット15、43、66、78、106、C.I.ダイレクトバイオレット2、48、63、90、C.I.リアクティブバイオレット1、5、9、10等が挙げられる。
【0033】
これらの染料は、前記した各色の系の染料の群内および各群間から複数選択して使用することができる。
本実施形態における染料の添加量は、1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下の範囲である。
また、カラーインクには、樹脂成分が含まれているのが好ましい。これにより、着色剤の分散性を優れたものとすることができる。また、これにより、熱転写媒体100の画像層12の転写時には、転写シート11から画像層12をより容易に剥離することができるとともに、保存時には転写シート11から画像層12が不本意に剥がれるのを防止することができる。
【0034】
樹脂成分としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0035】
上述した中でも、樹脂成分として、特に、スチレン−アクリル樹脂、および、ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
カラーインク中における前記樹脂成分の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、転写シート11からの画像層12の不本意な剥がれを防止しつつ、熱転写媒体100の画像層12の転写時には、転写シート11から画像層12をより容易に剥離することができる。
【0036】
[光輝性インク]
光輝性インクは、単独で、または、上記カラーインクとともに画像層12を形成するのに用いるインクである。このような光輝性インクは、上記カラーインクとともに用いる場合、カラーインクを転写シート11に付与した後、カラーインクで形成された層の上に付与されるものである。これにより、優れた画像転写性を優れたものとすることができるとともに、形成される画像に色彩性、光輝性を付与することができる。
【0037】
光輝性インクに含有される光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インクの液滴を吐出できる範囲内で、任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、光輝性インクが樹脂インクの層の上に付着したときに、光輝性を付与する機能を有し、また、付着物に光輝性を付与することもできる。このような光輝性顔料としては、パール顔料や金属粒子があげられる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。一方、金属粒子としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の粒子を挙げることができ、これらの単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さの観点から、銀粒子を用いることが好ましい。以下、光輝性インクの具体例として銀インクを用いて説明する。
【0038】
(1)銀粒子
上述したように、本実施形態に係る銀インクは、銀粒子を含むものである。このように、銀インクが、銀粒子を含むものであることにより、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0039】
銀粒子の平均粒径は、3nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上65nm以下であるのがより好ましい。これにより、銀インクを用いて形成される画像の光沢感(光輝性)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインクの吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。平均粒径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0040】
銀インク中における銀粒子の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、インクのインクジェット方式による吐出安定性、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、記録物とされたときの記録媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元ずることにより、好適に形成することができる。
【0041】
(2)樹脂
本発明に係る光輝性インクは、樹脂を含有していても良く、これを含有することで定着性や耐擦性が向上する。樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
(3)水
本発明にかかる光輝性インクは、水を50質量%以上含む水系インクであっても、水の含有量が50質量%未満である非水系インクであってもよい。
インク中において、水を含有させる場合には、主に銀粒子を分散させる分散媒として機能する。インクが水を含むことにより、銀粒子等の分散安定性等を優れたものとすることができる。また、後述するような液滴吐出装置のノズル付近でのインクの不本意な乾燥(分散媒の蒸発)を防止しつつ、インクが付与される転写シート上での乾燥を速やかに行うことができるため、所望の画像の高速記録を、長期間にわたって好適に行うことができる。また、優れた画像転写性を有するとともに、光輝性に特に優れた画像を形成することができる。インク中に水を含有させる場合には、その水の含有率は、特に限定されないが、20質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、25質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。
【0043】
(4)多価アルコール
本発明に係る光輝性インクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本実施形態に係るインクをインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクによる目詰まりを防止することができる。
【0044】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数が4〜8アルカンジオールが好ましく、炭素数が6〜8のアルカンジオールがより好ましい。これにより、記録媒体への浸透性を特に高いものとすることができる。インク中における多価アルコールの含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
上記の多価アルコールの中でも、インクは、1,2−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンを含むものであるのが好ましい。これにより、インク中における銀粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0045】
(5)グリコールエーテル
本発明に係る光輝性インクは、グリコールエーテルを含有することが好ましい。グリコールエーテルを含有することにより、転写シートなどの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。インク中におけるグリコールエーテルの含有率は、特に限定されないが、0.2質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0046】
(6)界面活性剤
本発明に係る光輝性インクは、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、転写シートなどの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0047】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0048】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
さらに、本発明に係るインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
光輝性インク中における上記界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0049】
(7)その他の成分
本発明に係る光輝性インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物、アルカノールアミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、チオ尿素等が挙げられる。
【0050】
《インクジェット装置》
次に、インクジェット装置(液滴吐出装置)の好適な実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係るインクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンタ1(以下、プリンタ1という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、媒体送りモーター4の駆動により媒体Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
【0051】
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
キャリッジ6には、ヘッド9が設けられるとともに、ヘッド9に液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ10内のインクは、ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ10からヘッド9へと供給され、ヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された媒体Pに対して吐出されるようになっている。これにより画像(画像層)を形成することが可能となる。
吐出方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(登録商標))方式でもよい。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
【0052】
《熱転写媒体の製造方法》
次に、上述したようなインクを用いた熱転写媒体の製造方法について、詳細に説明する。
図3は、本発明の熱転写媒体の製造方法の一例を示す模式図である。
本実施形態の熱転写媒体の製造方法は、基材シートの一方の面にシリコン樹脂を付与させ、転写シート11を形成する転写シート形成工程と、転写シート11にインクジェット法により、上述したようなインクを付与し、画像層12を形成する画像層形成工程と、形成した画像層12を乾燥させる乾燥工程と、画像層12に、接着性を有する化合物を含む材料を付与し、接着層13を形成する接着層形成工程と、を有している。
【0053】
以下、各工程について詳細に説明する。
まず、図3(a)に示すように、転写シート11を用意する。
転写シート11は、基材シートの一方の面にシリコン樹脂を付与させることにより形成することができる。
基材シートおよびシリコン樹脂としては、上述したようなものを用いる。
【0054】
次に、図3(b)に示すように、転写シート11に、上述したようなインクジェット装置を用いて、上述したようなインクを付与し、画像層12を形成する(画像層形成工程)。
次に、形成した画像層12を乾燥する(乾燥工程)。
乾燥工程では、形成直後の画像層12中に含まれる水の少なくとも一部を除去する。
【0055】
次に、図3(c)に示すように、画像層12上に、接着性を有する化合物を含む材料を付与し、接着層13を形成する(接着層形成工程)。これにより、熱転写媒体100(本発明の熱転写媒体)を得ることができる。
接着性を有する化合物を含む材料を付与する方法としては、特に限定されず、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などが挙げられる。これらの方法のうち、インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも画像層12上に選択的に付与することができるため、接着性を有する化合物を含む材料の無駄を抑えることができる点でより好ましい。
なお、接着性を有する化合物を含む材料を付与した後、必要に応じて、接着層13を乾燥する乾燥工程を設けてもよい。
【0056】
《画像形成方法》
次に、上述したような熱転写媒体100を用いた画像形成方法について説明する。
図4は、本発明の画像形成方法の一例を示す模式図である。
まず、図4(a)に示すように、記録媒体15を用意し、当該記録媒体15と、熱転写媒体100の接着層13とを対向するように配置し、画像層12と記録媒体15とを接着層13を介して接着する(接着工程)。
【0057】
記録媒体15としては、特に限定されず、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。より具体的には、日本工業規格JIS−P0001に記載されている紙類、JIS−L0206に記載されている織物類、JIS−L0222に記載されている不織布類、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、木材、金属、セラミックス、ガラスなどの材質のフィルム類、シート類が挙げられる。また記録媒体15としては、コート紙やアート紙等の塗工紙であってもよい。
【0058】
なお、画像層12と記録媒体15との接着は、加熱により行われる。これにより、画像層12(接着層13)と記録媒体15との密着性(接着性)をより高いものとすることができる。
次に、図4(b)に示すように、転写シート11と画像層12とを剥離して、画像層12を記録媒体15へ転写する(転写工程)。これにより、画像層12と、接着層13と、記録媒体15とを備えた記録物200(本発明の記録物)を得ることができる。
以上のような画像形成方法によれば、発色性に優れた画像を備えた記録物を容易に形成することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インク
(1)カラーインク
カラーインクとして、イエローインク(ICY37、セイコーエプソン株式会社製)、マゼンダインク(ICM37、セイコーエプソン株式会社製)を用意した。
【0060】
(2)光輝性インク
10N−NaOH水溶液を3mL添加してアルカリ性にした水50mLに、クエン酸3ナトリウム2水和物17g、タンニン酸0.36gを溶解した。得られた溶液に対して3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌を行い銀コロイド液を得た。
得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、3000rpm、10分の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。なお、平均粒径は20nmであった。なお、本実施例において、銀粒子の平均粒径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。
上記によって製造された銀コロイド液:10質量部に、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010):1質量部と、トリメチロールプロパン:10質量部と、1,2−ヘキサンジオール:5質量部と、イオン交換水:74質量部とを添加し、光輝性インクを得た。
【0061】
[2]接着性を有する化合物を含む材料(接着層形成用インク)の調製
塩化ビニル系エマルジョン(塩化ビニル系接着剤、日信化学工業社製):10質量部と、非イオン性界面活性剤(日信化学工業株式会社製オルフィン(R)E1010):1質量部と、プロピレングリコール:11質量部と、1,2−ヘキサンジオール:5質量部と、2−ピロリドン:2質量部、イオン交換水:71質量部とを混合し、接着層形成用インクを得た。
【0062】
[3]熱転写媒体の製造
(実施例1)
空隙層を有する基材シート(セイコーエプソン社製、商品名「エプソン写真用紙<光沢>」)を用意し、当該基材シートの空隙層が形成されている面にシリコン樹脂(ポリフローKL−401、共栄社化学株式会社製)を♯2バーコーターにより膜厚が約4.5μmとになるように塗布し、転写シートを形成した。
【0063】
得られた転写シート上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、イエローインクを50%dutyで付与し、画像層を形成した。
その後、形成した画像層を乾燥した。
次に、画像層上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、接着層形成用インクを50%dutyで付与し、乾燥させ、接着層を形成した。
【0064】
(実施例2)
インクとして、マゼンダインクを用いた以外は、上記実施例1と同様にして熱転写媒体を製造した。
(実施例3)
インクとして、光輝性インクを用いた以外は、上記実施例1と同様にして熱転写媒体を製造した。
【0065】
(実施例4)
空隙層を有する基材シート(セイコーエプソン社製、商品名「エプソン写真用紙」<光沢>)を用意し、当該基材シートの空隙層が形成されている面にシリコン樹脂(ポリフローKL−401、共栄社化学株式会社製)を♯2バーコーターにより膜厚が約4.5μmとになるように塗布し、転写シートを形成した。
【0066】
得られた転写シート上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、イエローインクを50%dutyで付与した後、イエローインクの層の上に光輝性インクを50%dutyで付与して画像層を形成した。
その後、形成した画像層を乾燥した。
次に、画像層上に、PX−G930(セイコーエプソン社製)により、接着層形成用インクを50%dutyで付与し、乾燥させ、接着層を形成した。
(実施例5〜12)
シリコン樹脂として、表1に示すものを用い、表1に示すインクを付与した以外は、インクを1種類用いる場合には上記実施例1と同様に、また、2種類用いる場合には上記実施例4と同様にして熱転写媒体を製造した。
【0067】
(比較例1〜20)
シリコン樹脂の代わりに、表1に示す材料を用い、表1に示すインクを付与した以外は、インクを1種類用いる場合には上記実施例1と同様に、また、2種類用いる場合には上記実施例4と同様にして熱転写媒体を製造した。
(比較例21〜24)
基材シートにシリコン樹脂を付与せずに、基材シートをそのまま転写シートとして用い、表1に示すインクを付与した以外は、インクを1種類用いる場合には上記実施例1と同様に、また、2種類用いる場合には上記実施例4と同様にして熱転写媒体を製造した。
【0068】
なお、表1中、ポリフローKL−401(共栄社化学株式会社製)をK401、ポリフローKL−402(共栄社化学株式会社製)をK402、BYK−322(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をBYK、シリコンエマルジョン(SM7001EX、東レダウコーニング株式会社製)をSM、フッ素樹脂(AGE060、AGC旭硝子株式会社製)をAGE060、フッ素エマルジョン(AGE400、AGC旭硝子株式会社製)をAGE400、ポリエチレンワックス(AQUACER515、ビックケミー・ジャパン株式会社製)をA515、パラフィンワックス(AQUACER539、ビックケミー・ジャパン株式会社製)をA539と示した。また、イエローインクをY、マゼンダインクをM、光輝性インクをMeと示した。
なお、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印刷ドット数」は単位面積当たりの実印刷ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0069】
【表1】

【0070】
[5]画像転写性の評価
紙メディア(スーパーファイン紙:セイコーエプソン社製)の記録媒体を用意し、各実施例および各比較例の熱転写媒体を用いて、各記録媒体に画像の転写処理を行い、記録物を得、下記の基準に従い、画像転写性を評価した。
◎ :転写面は平滑で剥離ムラが見られない
○ :5%以下の剥離ムラが見られる。
△ :5%超20%以下の剥離ムラが見られる。
× :20%超の剥離ムラが見られる。
これらの結果を表1に合わせて示した。
表1から明らかなように、各実施例の熱転写媒体は、画像転写性に優れていた。これに対して、各比較例の熱転写媒体は、満足行く結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェット式プリンタ(プリンタ) 2…フレーム 3…プラテン 4…媒体送りモーター 5…ガイド部材 6…キャリッジ 7…タイミングベルト 8…キャリッジモーター 9…ヘッド 10…インクカートリッジ P…媒体 11…転写シート 12…画像層 13…接着層 15…記録媒体 100…熱転写媒体 200…記録物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受理層としての空隙層を有し、前記空隙層にシリコン樹脂層が付与された転写シートと、
前記転写シートの前記空隙層が設けられた面に、色材が分散したインクがインクジェット方式により付与されたことによって形成された画像層を有することを特徴とする熱転写媒体。
【請求項2】
前記インクは、色材として着色剤が分散したカラーインク、色材として光輝性顔料が分散した光輝性インクから選択される少なくとも一種である請求項1に記載の熱転写媒体。
【請求項3】
前記カラーインク中における樹脂成分の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下である請求項2に記載の熱転写媒体。
【請求項4】
前記着色剤は樹脂を用いて分散されている請求項2または3に記載の熱転写媒体。
【請求項5】
前記画像層は、前記シリコン樹脂層に対して前記カラーインクを付与した着色層と、前記着色層に対して前記光輝性インクを付与した光輝性層とを有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱転写媒体。
【請求項6】
前記画像層に対して、接着性を有する化合物を含む材料により接着層が付与されたものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱転写媒体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱転写媒体の前記画像層を、前記転写シートとは異なる記録媒体へ転写する転写工程と、を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成方法によって形成され、
前記記録媒体と、前記接着層と、前記画像層とを有することを特徴とする記録物。
【請求項9】
インク受理層としての空隙層を有し、前記空隙層にシリコン樹脂層が付与された転写シートを用いる熱転写媒体の製造方法であって、
前記シリコン樹脂層に対して形成された、色材が分散したインクがインクジェット方式により付与された画像層を、備えることを特徴とする熱転写媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−166455(P2012−166455A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29492(P2011−29492)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】