説明

熱転写記録装置、動作制御方法及びプログラム

【課題】 ヒーターや裁断部を用いることなくインクフィルムに残された記録跡を判読不可能とすることができる熱転写記録装置を得る。
【解決手段】 本発明による熱転写記録装置は、導電性のインクフィルム6と、インクフィルム6が使い終わったか否かを検出するインクフィルム検出部2と、インクフィルム検出部2によりインクフィルム6が使い終わったことが検出されると、インクフィルム6に電圧を印加せしめてインクフィルム6のインクを溶融させる制御部3とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写記録装置、動作制御方法及びプログラムに関し、特にインクフィルムを用いた熱転写記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクフィルムを用いた熱転写記録装置において、印刷後の記録跡がインクフィルムにそのまま残ってしまう。このため、ユーザが自らインクフィルムを裁断または焼却するなどの方法を取らないと、個人情報などの漏洩の恐れがある。
【0003】
これに対し、特許文献1〜3には、インクフィルムを判読不可能とするためにヒーターや裁断部を備えた熱転写記録装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−058888号公報
【特許文献2】特開平05−338227号公報
【特許文献3】実開平01−036163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3では、インクフィルムを判読不可能とするために、ヒーターや裁断部といった機構を熱転写記録装置に追加して設けなければならない。
【0006】
本発明の目的は、ヒーターや裁断部を用いることなくインクフィルムに残された記録跡を判読不可能とすることができる熱転写記録装置、動作制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による熱転写記録装置は、導電性のインクフィルムと、前記インクフィルムが使い終わったか否かを検出する検出手段と、前記検出手段により前記インクフィルムが使い終わったことが検出されると、前記インクフィルムに電圧を印加せしめて前記インクフィルムのインクを溶融させる制御手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明による動作制御方法は、導電性のインクフィルムを用いた熱転写記録装置の動作制御方法であって、前記インクフィルムが使い終わったか否かを検出する検出ステップと、前記検出ステップにより前記インクフィルムが使い終わったことが検出されると、前記インクフィルムに電圧を印加せしめて前記インクフィルムのインクを溶融させる制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によるプログラムは、導電性のインクフィルムを用いた熱転写記録装置の動作制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記インクフィルムが使い終わったか否かを検出する処理と、前記処理により前記インクフィルムが使い終わったことが検出されると、前記インクフィルムに電圧を印加せしめて前記インクフィルムのインクを溶融させる処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒーターや裁断部を用いることなくインクフィルムに残された記録跡を判読不可能とすることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例による熱転写記録装置の概略構成を示す図である。図1を参照すると、本発明の実施例による熱転写記録装置1の中にインクフィルム6がセットされ、インクフィルム6の巻き取り側にインクフィルム6に電圧を印加するための電極51及び52が接触される。電極51及び52は装置電源4に接続される。なお、71はインクフィルム6の巻き取り側の芯であり、72はインクフィルム6の引き出し側の芯である。
【0013】
図2は図1のインクフィルム6の断面図である。通常、インクフィルムはベースフィルムの一方の面上にインクを塗布してあるが、本発明の実施例では、図2に示すように、このベースフィルムとして導電性材料を使用した導電性フィルム62が用いられ、導電性フィルム62の一方の面上にインク61が塗布されている。
【0014】
図3は図1の熱転写記録装置の構成を示すブロック図である。図3を参照すると、本発明の実施例による熱転写記録装置1は、図1に示した電源4、インクフィルム6及び電極51及び52に加えて、インクフィルム6が使い終わったか否かを検出するインクフィルム検出部2と、インクフィルム6への電圧印加を制御する制御部3とを有する。
【0015】
図4は図3のインクフィルム検出部2について説明するための図であり、(a)はインクフィルム6が使用中の場合を示す図であり、(b)はインクフィルム6が使い終わった場合を示す図である。
【0016】
図4(a)及び(b)において、インクフィルム検出部2としてアクチュエイタセンサ(SW)が用いられる。図4(a)及び(b)に示すように、アクチュエイタセンサ2はインクフィルム6を監視しており、インクフィルム6が使用中である場合、アクチュエイタセンサ2がインクフィルム6によってオンされ、インクフィルム6が使い終わった場合、インクフィルム6が全て巻き取り側の芯71に巻き取られることによってアクチュエイタセンサ2がオフされることにより、インクフィルム6が使い終わったか否かを検出する。このアクチュエイタセンサ2のオン/オフ情報は図3の制御部3に入力される。
【0017】
次に、本発明の実施例による熱転写記録装置1の動作について図1〜図5を参照して説明する。図5は本発明の実施例による熱転写記録装置1の動作を示すフローチャートである。
【0018】
図5において、インクフィルム検出部2は熱転写記録装置1の中にセットされたインクフィルム6を使い切ったか否かを監視しており、制御部3は、インクフィルム検出部2によりインクフィルム6が使い終わったことが検出されると(ステップS1)、電源4より電極5(51,52)に対し電圧を出力するよう制御する(ステップS2)。
【0019】
電極5よりインクフィルム6に電圧が印加されることにより、インクフィルム6に電流が流れジュール熱が発生し、インクフィルム6が発熱する。そして、インクフィルム6のインク61の融点に達したところでインク61が溶融する。
【0020】
制御部3は、図示せぬタイマを有しており、インクフィルム6に対する電圧の印加を開始してからインク61が完全に溶融したであろう所定時間経過すると(ステップS3)、電源4の電圧出力を止める制御を行う(ステップS4)。
【0021】
以上説明したように、本発明の実施例では、インクフィルムを用いた熱転写記録装置において導電性のインクフィルム6を使用し、インクフィルム検出部2によりインクフィルム6が全て使い終わったことが検出されると、制御部3の制御によりインクフィルム6に電圧が印加され、ジュール熱によりインク61が溶融されるので、インクフィルム6を判読不可能として、記録内容の秘密漏洩を防止することができる。
【0022】
本発明の実施例では、図2に示すように、インクフィルム6のベースフィルムに導電性フィルム62が用いられるが、図6に示すように、ベースフィルムには導電性を持たないフィルム64を使用し、フィルム64の一方の面上に塗布されるインクに導電性材料を混入させた導電性インク63を用いるようにしてもよい。
【0023】
また、図7に示すように、ベースフィルム及びその一方の面上に塗布されるインクにそれぞれ導電性を持たないフィルム66及びインク65を使用し、フィルム66の他方の面上に導電性材料を含有する層(導電性の膜)67を形成するようにしてもよい。この層67はフィルム66の他方の面上に印刷される網目状または格子状の導電パターンであってもよい。
【0024】
また、本発明の実施例では、制御部3は、図示せぬタイマを有しており、インクフィルム6に対する電圧の印加を開始してからインク61が完全に溶融したであろう所定時間経過すると、電圧印加を終了せしめるようにしているが、インク61を溶融させるだけでなく、フィルム62の融点まで発熱温度を上げることでフィルム62ごと溶融させるようにしてもよい。この場合、タイマのタイマ値である上記所定時間を変更する、あるいはインクフィルム6に印加される電圧値を変更すればよい。インク61だけでなくフィルム62まで溶融させることで、溶融したフィルム同士が粘着し、これにより、インクフィルム6に残された記録内容の漏洩防止効果が更に高められる。
【0025】
なお、図5に示したフローチャートに従った熱転写記録装置1の処理動作は、該装置において、予めROM等の記憶媒体に格納されたプログラムを、CPU(制御部)となるコンピュータに読み取らせて実行せしめることにより、実現できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例による熱転写記録装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のインクフィルム6の断面図である。
【図3】図1の熱転写記録装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3のインクフィルム検出部2について説明するための図であり、(a)はインクフィルム6が使用中の場合を示す図であり、(b)はインクフィルム6が使い終わった場合を示す図である。
【図5】本発明の実施例による熱転写記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1のインクフィルム6の別の例を示す断面図である。
【図7】図1のインクフィルム6の更に別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 熱転写記録装置
2 インクフィルム検出部
3 制御部
4 電源
5,51,52 電極
6 インクフィルム
61,63,65 インク
62,64,66 ベースフィルム
67 導電パターン
71,72 芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のインクフィルムと、
前記インクフィルムが使い終わったか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記インクフィルムが使い終わったことが検出されると、前記インクフィルムに電圧を印加せしめて前記インクフィルムのインクを溶融させる制御手段とを含むことを特徴とする熱転写記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記インクフィルムに対する電圧の印加を開始してから所定時間経過後に前記電圧の印加を終了せしめることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録装置。
【請求項3】
前記インクフィルムは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一方の面上に形成されたインク層とを有し、前記ベースフィルムが導電性を有することを特徴とする請求項1または2記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
前記インクフィルムは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一方の面上に形成されたインク層とを有し、前記インク層が導電性を有することを特徴とする請求項1または2記載の熱転写記録装置。
【請求項5】
前記インクフィルムは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一方の面上に形成されたインク層とを有し、前記ベースフィルムの他方の面上に導電性の膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の熱転写記録装置。
【請求項6】
導電性のインクフィルムを用いた熱転写記録装置の動作制御方法であって、
前記インクフィルムが使い終わったか否かを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより前記インクフィルムが使い終わったことが検出されると、前記インクフィルムに電圧を印加せしめて前記インクフィルムのインクを溶融させる制御ステップとを含むことを特徴とする動作制御方法。
【請求項7】
前記制御ステップは、前記インクフィルムに対する電圧の印加を開始してから所定時間経過後に前記電圧の印加を終了せしめることを特徴とする請求項6記載の動作制御方法。
【請求項8】
導電性のインクフィルムを用いた熱転写記録装置の動作制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記インクフィルムが使い終わったか否かを検出する処理と、
前記処理により前記インクフィルムが使い終わったことが検出されると、前記インクフィルムに電圧を印加せしめて前記インクフィルムのインクを溶融させる処理とを含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302531(P2008−302531A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149849(P2007−149849)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】