説明

熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ、及び逆止弁により熱輸送方向の自動切替が可能なヒートパイプ

【課題】 バルブを開閉操作するだけでトップヒートとボトムヒートを簡単に切り替えることができ、また熱輸送性にも優れ、地熱を利用した冷暖房システムにも問題なく使用でき、しかも、イニシャル・ランニングコストの低減も図れる熱輸送方向を切替可能なヒートパイプを提供すること。
【解決手段】 熱媒液Lとの熱交換が可能な部位として、第一熱交換部1と;高位タンク2と;第二熱交換部3とを備える一方、これらの部位を繋ぐ配管として、第一の液上昇管4と;第一の液下降管5と;第二の液上昇管6と;第二の液下降管7とを配設し、
更に、前記第一熱交換部1と第二熱交換部3には、受熱に応じて第一の液上昇管4または第二の液上昇管6中に気泡Bを供給する気泡供給手段を設けると共に、少なくとも第一の液上昇管4と第一の液下降管5の何れか一方にバルブVを配設して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプの改良、詳しくは、トップヒートとボトムヒートの切り替えが可能で、また切り替えを自動的に行うこともでき、しかも、地熱利用の用途にも問題なく使用でき、イニシャル・ランニングコストの低減も図れる熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ、及び逆止弁により熱輸送方向の自動切替が可能なヒートパイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ヒートパイプは実用性に優れた熱輸送手段として、装置の加熱・冷却機構や冷暖房システム、熱回収システムなどの多くの分野で利用されている。また、ヒートパイプにおける上下方向の熱輸送方式としては、下側の受熱部から上方に熱を運ぶボトムヒートと、上側の受熱部から下方に熱を運ぶトップヒートがある。
【0003】
一方、地熱を利用した冷暖房システムは、冬は暖かい地中から室内に熱を運んで暖房とし、また夏は室内の熱を冷たい地中に逃がして冷房とするため、ボトムヒートとトップヒートの両方を用いる必要があるが、各方式専用のヒートパイプを使用すると少なくとも2本分以上の埋設スペースを確保しなければならなくなる。
【0004】
そこで、ボトムヒートでもトップヒートでも使用できるモード切替型のヒートパイプを使用して、上記ヒートパイプの埋設スペースを1本分に抑えることも考えられたが、従来開発されたモード切替型のヒートパイプは、性能面やコスト面に課題があったため、実用化には至らなかった。
【0005】
具体的に説明すると、まず特許文献1にあるような、メインの蒸気流路とは別に熱媒液を環流させるための迂回路を備えたヒートパイプでは、トップヒートで使用する際、迂回路の下部において気泡を発生させる必要があったため、迂回路をヒータ装置で常時加熱しなければならなくなり、ランニングコストが高く付き易かった。
【0006】
また、特許文献2にあるような、上下の中間位置にある受熱部で加熱された熱媒液を気泡と共に最上部の放熱タンクに移動させ、その後、熱媒液のみを最下部の放熱部に移動させるヒートパイプでは、中間位置の受熱部から上下の放熱部に熱輸送が可能であったものの、最下部を受熱部とすることができなかったため、地熱利用には向かなかった。
【0007】
他方また、特許文献3にあるような、トップヒート時に下側の放熱部で凝縮した熱媒液を内圧差により最上部のタンクに一旦押し上げ、そのタンクから受熱部に熱媒液を補給するヒートパイプでは、最上部のタンクから受熱部に熱媒液が断続的にしか補給されなかったため、充分な熱輸送量を得られなかった。
【0008】
しかも、上記文献3に係るヒートパイプは、トップヒート時において受熱部の液量をセンサで感知しながらバルブを開閉する複雑な制御プログラムが必要なだけでなく、モード切替時に操作するバルブの数も多かったため、ヒートパイプの製造やメンテナンスに多くの手間がかかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−247595号公報(第1−9頁、第1〜7図)
【特許文献2】特開2005−195226号公報(第1−18頁、第1〜20図)
【特許文献3】特開平9−178376号公報(第1−9頁、第1〜4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、トップヒートとボトムヒートの切り替えが可能で、また切り替えを自動的に行うこともでき、熱輸送性にも優れ、しかも、地熱を利用した冷暖房システムにも問題なく使用でき、イニシャル・ランニングコストも低減できる熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ、及び逆止弁により熱輸送方向の自動切替が可能なヒートパイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、受熱部Hと放熱部Cの間で熱媒液Lを循環させて熱輸送を行うヒートパイプにおいて、
熱媒液Lとの熱交換が可能な部位として、受熱部Hおよび放熱部Cに兼用でき、かつ、上部に蒸気の滞留スペースSを有する第一熱交換部1と;この第一熱交換部1よりも上側に配置され、かつ、上部に蒸気の滞留スペースSを有する高位タンク2と;前記第一熱交換部1よりも下側に配置され、かつ、受熱部Hとしても放熱部Cとしても使用できる第二熱交換部3とを備える一方、
これらの部位を繋ぐ配管として、前記第一熱交換部1と高位タンク2とを連結する第一の液上昇管4と;高位タンク2と第二熱交換部3とを連結する第一の液下降管5と;第二熱交換部3と第一熱交換部1とを連結する第二の液上昇管6と;第一熱交換部1と第二熱交換部3とを連結する第二の液下降管7とを配設し、
更に、前記第一熱交換部1と第二熱交換部3には、受熱に応じて第一の液上昇管4または第二の液上昇管6中に気泡Bを供給する気泡供給手段を設けると共に、少なくとも第一の液上昇管4と第一の液下降管5の何れか一方にバルブVを配設して構成したことにより、
前記第一熱交換部1を受熱部Hとするトップヒートや第二熱交換部3を受熱部Hとするボトムヒートの使用モードに応じて前記バルブVを開または閉の状態として熱媒液Lの循環路を選択可能とした点に特徴がある。
【0013】
また、上記第一の液上昇管4にバルブVを備えたヒートパイプにおいて、第一の液下降管5と第二の液下降管7とを中間部位で統合すると共に、第二の液下降管7における前記統合された合流部位よりも第一熱交換部1に近い位置にバルブVを配設して構成することにより、液下降管を一本に纏めることができる。
【0014】
また同様に、第一の液下降管5にバルブVを備えたヒートパイプにおいても、第一の液下降管5と第二の液下降管7とを中間部位で統合すると共に、第二の液下降管7における前記統合された合流部位よりも第一熱交換部1に近い位置にバルブVを配設し、更に第一の液下降管5のバルブVについても、前記合流部位よりも高位タンク2に近い位置に配置して構成することにより、液下降管を一本に纏めることができる。
【0015】
一方、本発明では、制御するバルブの数を減らすために、第二の液下降管7に配設するバルブVに、熱媒液Lの第一熱交換部1から第二熱交換部3への移動のみが可能な逆止弁V2を使用することもできる。
【0016】
また本発明では、上記液上昇管への気泡供給手段として、第一熱交換部1或いは第二熱交換部3の上壁または側壁に、内部に蒸気が収容される上向きに突き出た窪みであって、出口幅が1mm以上の気泡生成部Pを設け、更にこの気泡生成部Pから発生した気泡Bを導入できるように液上昇管の端部を配置して構成することができる。
【0017】
また他にも、本発明では、上記液上昇管への気泡供給手段として、第一熱交換部1或いは第二熱交換部3の上部に蒸気の滞留スペースSを形成し、更に液上昇管の端部を、前記第一熱交換部1または第二熱交換部3の上側から蒸気の滞留スペースSを通して熱媒液L中に差し込んで構成することができる。
【0018】
そしてまた、本発明では、上記第二の液上昇管6に、第一の液上昇管4と熱交換が行えるように迂回させたバイパス路61を設けると共に、このバイパス路61とこのバイパス路61の分岐・合流部位に挟まれた本流路62とにバルブV・Vを設けて、
トップヒート時にはバイパス路61のバルブVのみを開の状態として、バイパス路61を流れる熱媒液Lで第一の液上昇管4を冷却可能とする一方、ボトムヒート時には本流路62のバルブVのみを開の状態として、第二熱交換部3で発生した気泡Bを第一熱交換部1へと移送可能とすることもできる。なお、トップヒート時に第一の液上昇管4を冷却すれば、管中を流れる気泡が縮小・消滅するためヒートパイプの熱輸送性が向上する。
【0019】
他方、本発明では、外部の温度環境の変化によってヒートパイプの熱輸送方向が自動的に切り替わるように、上記第一の液上昇管4に、第一熱交換部1から高位タンク2にのみ熱媒液Lが移動可能な逆止弁V4を、また第二の液下降管7には、第一熱交換部1から第二熱交換部3にのみ熱媒液Lが移動可能な逆止弁V2を配設して、第二の液下降管7の逆止弁V2の最小開弁圧力差を、第一の液上昇管4の逆止弁V4よりも小さく設定することができる。
【0020】
これにより、第一熱交換部1が受熱部Hとなるトップヒートの温度環境や第二熱交換部3が受熱部Hとなるボトムヒートの温度環境に応じて、対応する逆止弁V4・V2が開の状態となるため熱媒液Lの循環路が自動的に切り替わる。なお、上記「最小開弁圧力差」とは、逆止弁が開くために最低限必要な圧力差を意味する。
【0021】
また、上記のように第一の液上昇管4に逆止弁V4を設ける場合には、第一の液下降管5と第二の液下降管7にそれぞれ独立した配管を使用すれば、第二の液下降管7に逆止弁を設けなくても自動的な熱輸送方向の切り替えが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、気泡発生手段を備えた上下の熱交換部と蒸気を溜める最上部のタンクと、それらを繋ぐ配管とからヒートパイプを構成したことにより、上側の熱交換部と最上部のタンクとを繋ぐ配管、或いは最上部のタンクと下側の熱交換部を繋ぐ配管に設けたバルブを開閉するだけで、トップヒートとボトムヒートのモード切替を極めて容易に行うことができる。また、逆止弁を用いることで、自動的な切り替えも可能となる。
【0023】
しかも、本発明のヒートパイプは、使用時において受熱部と放熱部の間で熱媒液を継続的に循環させることができるため、熱輸送効率も向上できる。また、ヒートパイプの最下部の熱交換部を受熱部として使用できるため、地熱を利用する冷暖房システム等にも問題なく使用できる。
【0024】
また更に、本発明のヒートパイプは、複雑なバルブ制御を行うためのセンサやプログラム等も不要で、操作するバルブの数も1、2個でよいため、ヒートパイプの構造を単純化して製造コストの低減、メンテナンスの容易化も図れる。また、受熱部以外でヒータ装置を稼働させる必要もないため、ラニングコストも低減できる。
【0025】
したがって、本発明により、トップヒートとボトムヒートのモード切替が可能なだけでなく、性能面およびコスト面にも優れ、特に地熱利用の用途に適したヒートパイプを提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図2】本発明の実施例1におけるヒートパイプの気泡生成手段を表わす概略図である。
【図3】本発明の実施例1におけるヒートパイプの使用状態を表わす状態説明図である。
【図4】本発明の効果の実証試験(I)に用いたヒートパイプを表わす全体正面図である。
【図5】本発明の効果の実証試験(I)に用いたヒートパイプの受熱部および放熱部の構造を表わす断面図である。
【図6】本発明の効果の実証試験(I)で得られたデータを示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図8】本発明の実施例3におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図9】本発明の実施例3におけるヒートパイプの使用状態を表わす状態説明図である。
【図10】本発明の効果の実証試験(II)に用いたヒートパイプの熱交換部の構造を表わす断面図である。
【図11】本発明の効果の実証試験(II)で得られたデータを示すグラフである。
【図12】本発明の実施例4におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図13】本発明の実施例5におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図14】本発明の実施例6におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図15】本発明の実施例6におけるヒートパイプの使用状態を表わす状態説明図である。
【図16】本発明の実施例7におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【図17】本発明の実施例7におけるヒートパイプの使用状態を表わす状態説明図である。
【図18】本発明の効果の実証試験(III)で得られたデータを示すグラフである。
【図19】本発明の実施例8におけるヒートパイプを表わす概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
『実施例1』
本発明の実施例1について、図1から図6に基いて説明する。同図において、符号1で指示するものは、第一熱交換部であり、符号2で指示するものは、高位タンクである。また符号3で指示するものは、第二熱交換部であり、符号4で指示するものは、第一の液上昇管である。また符号5で指示するものは、第一の液下降管であり、符号6で指示するものは、第二の液上昇管である。また符号7で指示するものは、第二の液下降管である。
【0028】
[ヒートパイプの構成]
この実施例1では、ヒートパイプに収容された熱媒液Lの熱交換を行う部位として、受熱部Hにも放熱部Cにもなる第一熱交換部1を上下方向の中間位置に設けると共に、この第一熱交換部1の上側には高位タンク2を、下側には第一熱交換部1と同じく受熱部Hにも放熱部Cにもなる第二熱交換部3を設けている(図1参照)。
【0029】
また本実施例では、上記第一熱交換部1、高位タンク2および第二熱交換部3に、伝熱性を有する金属容器を使用して、容器内の熱媒液L(或いは熱媒液Lの蒸気)に対し外部から加熱や冷却を行えるようにしている。
【0030】
一方、上記部位を繋ぐ配管としては、上記第一熱交換部1の上部と高位タンク2の下部を連結する第一の液上昇管4、高位タンク2の下部と第二熱交換部3の下部とを連結する第一の液下降管5、第二熱交換部3の上部と第一熱交換部1の下部を連結する第二の液上昇管6、第一熱交換部1の下部と第二熱交換部3の下部を連結する第二の液下降管7を配設している。
【0031】
また本実施例では、上記第一の液下降管5と第二の液下降管7とを中間部位でT型ジョイントを用いて統合しており、これによって第二熱交換部3の下部に一本に纏めた液下降管を接続するだけよいため、第二熱交換部3を地中に設置する際に都合が良い。
【0032】
また更に、上記第一熱交換部1と第二熱交換部3には、受熱に応じて第一の液上昇管4または第二の液上昇管6中に気泡Bを供給する気泡供給手段を設けており、この気泡供給手段から供給した気泡Bを液上昇管中で浮上させることによってヒートパイプ内での熱媒液Lの循環が開始される。
【0033】
ちなみに本実施例では、上記第一熱交換部1の気泡供給手段として、第一熱交換部1の上部に蒸気の滞留スペースSを形成し、更に第一の液上昇管4の端部を第一熱交換部1の上側から蒸気の滞留スペースSを通して熱媒液L中に差し込んで固定している。
【0034】
そしてこれにより、図2(a)に示すように、第一熱交換部1を加熱した際、滞留スペースS内の蒸気の膨張及び熱媒液Lの蒸発による蒸気量の増加によって液面レベルを押し下げ、第一の液上昇管4の端部に蒸気を導入することができ、また、蒸気を導入した後は液面レベルが一時的に上昇し、導入が断続的となるため、結果的に液上昇管中に気泡Bを連続的に供給することが可能となる。
【0035】
また、上記第二熱交換部3の気泡供給手段としては、第二熱交換部3の上壁に、内部に蒸気を収容可能な上向きに突き出た窪みであって出口幅が1mm以上の気泡生成部Pを設けており、これによって、図2(b)に示すように、受熱時に気泡生成部Pから発生した気泡Bを近くに配置した第二の液上昇管6の端部に供給することができる。
【0036】
もちろん、図示しないが上記第一熱交換部1の気泡供給手段を第二熱交換部3に採用することもでき、また、上記第二熱交換部3の気泡供給手段を第一熱交換部1に採用することもできる。
【0037】
そして、上記気泡供給手段から供給された気泡Bは、第一の液上昇管4または第二の液上昇管6中を移動した後、最終的に高位タンク2や第一熱交換部1の上部に形成された蒸気の滞留スペースSに到達して、スペース内の蒸気に取り込まれ消滅する。
【0038】
また更に、本実施例においては、上記第一の液上昇管4と第二の液下降管7にバルブVを配設している。なお、第二の液下降管7には、第一の液下降管5との合流部位よりも第一熱交換部1に近い位置にバルブVを設けており、また、バルブVには手動で操作できる開閉弁V1を使用している。
【0039】
[ヒートパイプの使用方法]
次に、上記ヒートパイプの使用方法について簡単に説明する。まず、第一熱交換部1を受熱部Hとし、第二熱交換部3を放熱部Cとしてトップヒートで使用する場合には、使用前に第二の液下降管7のバルブVを閉じて、第一の液上昇管4のバルブVのみが開いた状態とする。
【0040】
そして、その状態で第一熱交換部1を加熱すれば、図3(a)に示すように、熱媒液Lが第一の液上昇管4を通って高位タンク2に移動し、更に第一の液下降管5を通って第二熱交換部3に移動した後、第二の液上昇管6を通って第一熱交換部1に環流するため、受熱部Hと放熱部Cの間で熱媒液Lを継続的に循環させることができる。
【0041】
一方、第二熱交換部3を受熱部Hとし、第一熱交換部1を放熱部Cとしてボトムヒートで使用する場合には、使用前に第一の液上昇管4のバルブVを閉じ、第二の液下降管7のバルブVを開いてバルブVの開閉状態をトップヒートと逆の状態にする。
【0042】
そして、その状態で第二熱交換部3を加熱すれば、図3(b)に示すように、熱媒液Lが第二の液上昇管6を通って第一熱交換部1に移動した後、第二の液下降管7を通って第二熱交換部2に環流するため、こちらも受熱部Hと放熱部Cの間で熱媒液Lを継続的に循環させることができる。
【0043】
このように、使用前の準備段階において二つのバルブVを開閉操作するだけで、熱媒液Lの循環路を選択してトップヒートやボトムヒートの使用モードを切り替えることができる。また、使用中は熱媒液Lを常時循環させることができるため、単純な構造で熱輸送性の向上も図れる。
【0044】
[効果の実証試験(I)]
次に、上記ヒートパイプを用いて行った効果の実証試験(I)について説明する。まずこの実証試験(I)では、図4に示すように第一熱交換部1、高位タンク2、第二熱交換部3をラック上に配置してヒートパイプを組み立てた。
【0045】
また、液上昇管や液下降管の配管の一部には透明な窓部Wを設けて管内を流れる熱媒液L及び気泡Bを確認できるようにし、また高位タンク2には液面計Eを設けて液面レベルの確認を行えるようにした。
【0046】
そして、熱媒液Lには、エタノール(70%)・水(30%)の混合液を使用し、この熱媒液Lを高位タンク2の給液口Sからヒートパイプ内に充填した後、ヒートパイプ内に残った不凝縮気体(空気等)をできる限り排除するために真空引きを行った。また、使用後は第二熱交換部3に設けた排液口Dから熱媒液Lを排出できるようにした。
【0047】
また更に、第一熱交換部1と第二熱交換部3は、図5(a)及び(b)に示す形状・サイズ(図面の寸法はmm単位で記載)で作製し、それをジャケットJで覆って構成した。そして、受熱部HのジャケットJ内に高温水を入れ、放熱部CのジャケットJ内に冷水を入れて冷水の温度変化を調べることにより、熱媒液Lの熱輸送量を測定した。
【0048】
その結果、図6に示すように、トップヒートにおいてもボトムヒートにおいても充分な熱輸送量の数値が得られた。ちなみに、ボトムヒートがトップヒートよりも熱輸送量が大きいのは、トップヒートが完全な顕熱輸送なのに対し、ボトムヒートが顕熱輸送と同時に気泡による潜熱輸送が行われるためだと考えられる。
【0049】
『実施例2』
次に、本発明の実施例2について、図7に基いて説明する。この実施例2では、実施例1のヒートパイプにおけるバルブVの配置を、第一の液上昇管4から第一の液下降管5に変更している。また第一の液下降管5のバルブVは、第一の液下降管5と第二の液下降管7の合流部位よりも第一熱交換部1に近い位置に配置している。
【0050】
また本実施例では、第二の液下降管7に配設するバルブVに、熱媒液Lの第一熱交換部1から第二熱交換部3への移動のみが可能な逆止弁V2を使用しており、これによって開閉制御するバルブVの数を減らすことができる。
【0051】
また、上記のようにバルブVの配置を変更した場合でも、実施例1と同様、バルブVの開閉を行うことで熱媒液Lの循環路を選択することができるため、トップヒートとボトムヒートの切り替えを容易に行うことができる。
【0052】
『実施例3』
次に、本発明の実施例3について、図8から図11に基いて説明する。この実施例3では、第一の液下降管5と第二の液下降管7を統合せずに配設している(図8参照)。具体的には、高位タンク2の下部と第二熱交換部3の下部を第一の液下降管5で連結し、第一熱交換部1の下部と第二熱交換部3の上部を第二の液下降管7で連結している。
【0053】
また、上記第二の液下降管7については、第二熱交換部3の気泡生成部Pから気泡Bが入り込まないように端部を熱媒液L中に深く差し込んでいる。そしてまた、バルブVについては第一の液上昇管4に手動の開閉弁V1を設けている。
【0054】
[ヒートパイプの使用方法]
次に、上記ヒートパイプの使用方法について簡単に説明する。まず、トップヒートで使用する場合には、使用前に第一の液上昇管4に設けたバルブVを開いた状態とする。これにより、図9(a)に示すように、第一熱交換部1内の熱媒液Lを高位タンク2や第二熱交換部3を経由して循環させることができる。
【0055】
また本実施例では、上記第二の液下降管7の端部を第二熱交換部3の上側から差込んで構成したことにより、トップヒートで使用する際、第二の液上昇管6だけでなく第二の液下降管7も熱媒液Lの液上昇管として使用することができる。
【0056】
また、上記ヒートパイプをボトムヒートで使用する場合には、使用前に第一の液上昇管4に設けたバルブVを閉じた状態とする。これにより、図9(b)に示すように、第一熱交換部1内の熱媒液Lを、第二の液下降管7、第二熱交換部3、第二の液上昇管6を経由して循環させることができる。
【0057】
[効果の実証試験(II)]
次に、上記ヒートパイプを用いて行った効果の実証試験(II)について説明する。この実証試験(II)では、実証試験(I)と同じく第一熱交換部1、高位タンク2、第二熱交換部3をラック上に配置してヒートパイプを組み立て、配管には内部を流動する熱媒液L及び気泡を確認するための窓部を設けた(図示せず)。
【0058】
また、熱媒液Lには、エタノール(70%)・水(30%)の混合液を使用し、この熱媒液Lのヒートパイプに充填した。また、第一熱交換部1は実施例1と同じものを使用し、第二熱交換部3については、図10に示す形状・サイズで作製した。そして、受熱部HのジャケットJ内に高温水を入れ、放熱部CのジャケットJ内には冷水を入れて冷水の温度変化を調べることにより、冷水が得た熱量を計測した。
【0059】
その結果、図11に示すように、トップヒートにおいてもボトムヒートにおいても実証試験(I)と同じく充分な熱輸送量の数値が得られた。これにより、本実施例の形態であっても実施例1と同様の効果が得られることが確認できた。
【0060】
『実施例4』
次に、本発明の実施例4について、図12に基いて説明する。この実施例4では、実施例3のヒートパイプにおけるバルブVの配置を、第一の液上昇管4から第一の液下降管5に変更して構成している。そして、このようにバルブVの配置を変更した場合でも、実施例3と同様、バルブVの開閉によってトップヒートとボトムヒートの切り替えを容易に行うことができる。
【0061】
『実施例5』
次に、本発明の実施例5について、図13に基いて説明する。この実施例5では、第一の液上昇管4と第二の液下降管7とを第一熱交換部1に連結した一本の配管を分岐させて構成し、更にこの分岐点に三方弁V3を配設することによって、第一の液上昇管4と第二の液下降管7のバルブを一つに纏めた。
【0062】
これにより、バルブの数を減らすことができるため部品コストを削減でき、また第一熱交換部1の熱媒液Lの送出し口も一箇所で済むため、本実施例のような水平管状のコンパクトな容器を第一熱交換部1に使用することも可能となる。なお、第一熱交換部1にはU字管等も使用できる。
【0063】
なお、本実施例では、第一熱交換部1の気泡生成手段として、水平管の上壁部に上側に突き出た突起状の気泡生成部Pを設けている。そして、トップヒートの起動時には、この気泡生成部P中の蒸気が膨張して水平管内の液面を押し下げることにより、第一の液上昇管4に気泡が供給される。
【0064】
『実施例6』
次に、本発明の実施例6について、図14及び図15に基いて説明する。この実施例6では、図14に示すように、第二の液上昇管6に第一の液上昇管4と熱交換が行えるように迂回させたバイパス路61を設け、更にこのバイパス路61とこのバイパス路61の分岐・合流部位に挟まれた本流路62の両方にバルブV・Vを設けた。
【0065】
これにより、図15(a)に示すように、トップヒート時においてバイパス路61のバルブVのみを開けば、バイパス路61を流れる熱媒液Lで第一の液上昇管4を冷却することが可能となる。また、ボトムヒート時には、図15(b)に示すように本流路62のバルブVのみを開くことで、第二熱交換部3で発生した気泡Bをバイパス路61を経由させずに第一熱交換部1に直接移送できる。
【0066】
そして、上記のようにトップヒート時に第一の液上昇管4を冷却することで、第一熱交換部1で発生した気泡を第一の液上昇管4中で縮小・消滅させることができるため、熱媒液の流動がよりスムーズになってヒートパイプの熱輸送性が向上する。
【0067】
『実施例7』
次に、本発明の実施例7について、図16及び図17に基いて説明する。この実施例7では、図16に示すように、第一の液上昇管4に第一熱交換部1から高位タンク2への熱媒液Lの移動が可能な逆止弁V4を配設すると共に、第二の液下降管7に第一熱交換部1から第二熱交換部3への熱媒液Lの移動が可能な逆止弁V2を配設した。そして、第二の液下降管7の逆止弁V2よりも第一の液上昇管4の逆止弁V4の方が、最小開弁圧力差が小さくなるようにした。
【0068】
これにより、第一熱交換部1の周囲が、第二熱交換部2の周囲よりも温度が高い場合には、図17(a)に示すように第一の液上昇管4の逆止弁V4及び第二の液下降管7の逆止弁V2の両方が開の状態となるため、ヒートパイプは第一熱交換部1を受熱部H、第二熱交換部3を放熱部Cとするトップヒートとして機能する。
【0069】
一方、第一熱交換部1の周囲が、第二熱交換部2の周囲よりも温度が低い場合には、図17(b)に示すように第二の液下降管7の逆止弁V4のみが開の状態となるため、ヒートパイプは第二熱交換部3を受熱部H、第一熱交換部1を放熱部Cとするボトムヒートとして機能する。
【0070】
このように、ヒートパイプ周囲の温度環境によって熱輸送方向が変わるようにしたことにより、地熱を利用した住宅の冷暖房にヒートパイプを用いた際に、夏(室温>地中温度)と冬(室温<地中温度)とでトップヒートとボトムヒートを自動的に切り替えることが可能となるため、熱輸送方向の切り替えにバルブの開閉操作や温度センサを用いた制御装置等が不要となる。
【0071】
[効果の実証試験(III)]
次に、実施例7のヒートパイプを使用して行った効果の実証試験(III)について説明する。この実証試験(III)では、実証試験(I)(II)と同様にラック上にヒートパイプを組み立て(図示せず)、熱媒液Lにエタノール(70%)・水(30%)の混合液を使用した。
【0072】
また、第一の液上昇管4の逆止弁V4には、最小開弁圧力差が2kPaのものを使用し、第二の液下降管7の逆止弁V2には、最小開弁圧力差が1kPaのものを使用した。そして、受熱部Hのジャケット内に高温水を入れ、放熱部Cのジャケット内に冷水を入れて冷水の温度変化を調べることにより、冷水が得た熱量を計測した。
【0073】
その結果、図18に示すように、実施例2のヒートパイプ(第一の液上昇管4に開閉弁を設け、第二の液下降管7に逆止弁を設けたもの)と同程度の熱輸送量が得られた。またこれにより、実施例7のヒートパイプは実用化できるレベルの熱輸送性能を発揮することが確認できた。
【0074】
『実施例8』
次に、本発明の実施例8について、図19に基いて説明する。この実施例8では、実施例7と同じく第一の液上昇管4に逆止弁V4を設ける一方、第一の液下降管5と第二の液下降管7にそれぞれ独立した配管を使用した。これにより、第二の液下降管7に逆止弁を設けなくても自動的な熱輸送方向の切り替えが可能となった。
【0075】
また本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明のヒートパイプは図示の実施形態に限定されるものではなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、受熱部Hや放熱部Cに使用する第一熱交換部1や第二熱交換部3は、容積の大きい容器を使用せずとも配管と同じ径の管材から構成することもできる。また、バルブVの開閉弁V1に、遠隔操作が可能な電磁弁を用いることもできる。
【0076】
また更に、第一熱交換部1や第二熱交換部3の気泡供給手段に関しても、上向きに突き出た気泡生成部Pを第一熱交換部1や第二熱交換部3の側壁に設けたり、第一熱交換部1や第二熱交換部3の内壁や空間に気泡発生を促進する仕組み(例えば、リエントラント型キャビティ等)を設けることもできる。
【0077】
また、第一の液下降管5や第二の液下降管7については、端部を第一熱交換部1や第二熱交換部3の上側から差し込んで固定することもできる。但し、気泡生成手段として、滞留スペースS内の蒸気膨張を利用する場合には、気泡Bが入らないように液上昇管の端部よりも深く差し込む必要がある。
【0078】
そしてまた、ヒートパイプに使用する熱媒液Lについても、単一成分の液体あるいは複数成分が混合した液体であって、ヒートパイプの使用温度範囲内で凝固せずに、蒸発・凝縮が可能な液体(例えば、ハイドロフルオロカーボンやアンモニア等)を使用することができ、上記何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0079】
近年、石油資源の枯渇や地球温暖化やの問題により、地熱や太陽熱等の自然エネルギーを利用する取り組みが進められている。また自然エネルギーを利用した冷暖房システムを実用化するためには、高性能で施工性にも優れたヒートパイプが必要となる。
【0080】
そのような中で、本発明の熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ及び逆止弁により熱輸送方向の自動切替が可能なヒートパイプは、基本性能の向上を図れるだけでなく、設置・運用コストの低減して使用者の経済的負担も軽減できる有用な技術であるため、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0081】
1 第一熱交換部
2 高位タンク
3 第二熱交換部
4 第一の液上昇管
5 第一の液下降管
6 第二の液上昇管
61 バイパス路
62 本流路
7 第二の液下降管
L 熱媒液
H 受熱部
C 放熱部
P 気泡生成部
V バルブ
1 開閉弁
2・V4 逆止弁
3 三方弁
B 気泡
W 窓部
E 液面計
J ジャケット
S 給液口
D 排液口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受熱部(H)と放熱部(C)の間で熱媒液(L)を循環させて熱輸送を行うヒートパイプであって、
熱媒液(L)との熱交換が可能な部位として、受熱部(H)としても放熱部(C)としても使用でき、かつ、上部に蒸気の滞留スペース(S)を有する第一熱交換部(1)と;この第一熱交換部(1)よりも上側に配置され、かつ、上部に蒸気の滞留スペース(S)を有する高位タンク(2)と;前記第一熱交換部(1)よりも下側に配置され、かつ、受熱部(H)および放熱部(C)に兼用できる第二熱交換部(3)とを備える一方、
これらの部位を繋ぐ配管として、前記第一熱交換部(1)と高位タンク(2)とを連結する第一の液上昇管(4)と;高位タンク(2)と第二熱交換部(3)とを連結する第一の液下降管(5)と;第二熱交換部(3)と第一熱交換部(1)とを連結する第二の液上昇管(6)と;第一熱交換部(1)と第二熱交換部(3)とを連結する第二の液下降管(7)とを配設し、
更に、前記第一熱交換部(1)と第二熱交換部(3)には、受熱に応じて第一の液上昇管(4)または第二の液上昇管(6)中に気泡(B)を供給する気泡供給手段を設けると共に、少なくとも第一の液上昇管(4)と第一の液下降管(5)の何れか一方にバルブ(V)を配設して構成したことにより、
前記第一熱交換部(1)を受熱部(H)とするトップヒートや第二熱交換部(3)を受熱部(H)とするボトムヒートの使用モードに応じて前記バルブ(V)を開または閉の状態として熱媒液(L)の循環路を選択可能としたことを特徴とする熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項2】
第一の液上昇管(4)にバルブ(V)を備えた請求項1記載のヒートパイプにおいて、第一の液下降管(5)と第二の液下降管(7)とを中間部位で統合すると共に、第二の液下降管(7)における前記統合された合流部位よりも第一熱交換部(1)に近い位置にバルブ(V)を配設して構成したことを特徴とする熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項3】
第一の液下降管(5)にバルブ(V)を備えた請求項1記載のヒートパイプにおいて、第一の液下降管(5)と第二の液下降管(7)とを中間部位で統合すると共に、第二の液下降管(7)における前記統合された合流部位よりも第一熱交換部(1)に近い位置にバルブ(V)を配設し、更に第一の液下降管(5)のバルブ(V)についても、前記合流部位よりも高位タンク(2)に近い位置に配置したことを特徴とする熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項4】
第二の液下降管(7)に配設するバルブ(V)に、熱媒液(L)の第一熱交換部(1)から第二熱交換部(3)への移動のみが可能な逆止弁(V2)を用いたことを特徴とする請求項2または3に記載の熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項5】
液上昇管への気泡供給手段として、第一熱交換部(1)或いは第二熱交換部(3)の上壁または側壁に、内部に蒸気が収容される上向きに突き出た窪みであって、出口幅が1mm以上の気泡生成部(P)を設け、更にこの気泡生成部(P)から発生した気泡(B)を導入できるように液上昇管の端部を配置したことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項6】
液上昇管への気泡供給手段として、第一熱交換部(1)或いは第二熱交換部(3)の上部に蒸気の滞留スペース(S)を形成し、更に液上昇管の端部を、前記第一熱交換部(1)または第二熱交換部(3)の上側から蒸気の滞留スペース(S)を通して熱媒液(L)中に差し込んで構成したことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項7】
第二の液上昇管(6)に、第一の液上昇管(4)と熱交換が行えるように迂回させたバイパス路(61)を設けると共に、このバイパス路(61)とバイパス路(61)の分岐・合流部位に挟まれた本流路(62)とにバルブ(V)(V)を設けて構成したことにより、
トップヒート時にはバイパス路(61)のバルブ(V)のみを開の状態として、バイパス路(61)を流れる熱媒液(L)で第一の液上昇管(4)を冷却可能とする一方、ボトムヒート時には本流路(62)のバルブ(V)のみを開の状態として、第二熱交換部(3)で発生した気泡(B)を第一熱交換部(1)へと移送可能としたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の熱輸送方向を切替可能なヒートパイプ。
【請求項8】
受熱部(H)と放熱部(C)の間で熱媒液(L)を循環させて熱輸送を行うヒートパイプであって、
熱媒液(L)との熱交換が可能な部位として、受熱部(H)としても放熱部(C)としても使用でき、かつ、上部に蒸気の滞留スペース(S)を有する第一熱交換部(1)と;この第一熱交換部(1)よりも上側に配置され、かつ、上部に蒸気の滞留スペース(S)を有する高位タンク(2)と;前記第一熱交換部(1)よりも下側に配置され、かつ、受熱部(H)および放熱部(C)に兼用できる第二熱交換部(3)とを備える一方、
これらの部位を繋ぐ配管として、前記第一熱交換部(1)と高位タンク(2)とを連結する第一の液上昇管(4)と;高位タンク(2)と第二熱交換部(3)とを連結する第一の液下降管(5)と;第二熱交換部(3)と第一熱交換部(1)とを連結する第二の液上昇管(6)と;第一熱交換部(1)と第二熱交換部(3)とを連結する第二の液下降管(7)とを配設し、
更に、前記第一熱交換部(1)と第二熱交換部(3)に、受熱に応じて第一の液上昇管(4)または第二の液上昇管(6)中に気泡(B)を供給する気泡供給手段を設けると共に、
第一の液上昇管(4)に、第一熱交換部(1)から高位タンク(2)にのみ熱媒液(L)が移動可能な逆止弁(V4)を、また第二の液下降管(7)に、第一熱交換部(1)から第二熱交換部(3)にのみ熱媒液(L)が移動可能な逆止弁(V2)を配設して、第二の液下降管(7)の逆止弁(V2)の最小開弁圧力差を、第一の液上昇管(4)の逆止弁(V4)よりも小さく設定したことにより、
前記第一熱交換部(1)が受熱部(H)となるトップヒートの温度環境や第二熱交換部(3)が受熱部(H)となるボトムヒートの温度環境に応じて、対応する逆止弁(V4)(V2)が開いて熱媒液(L)の循環路が自動的に切り替わることを特徴とする逆止弁により熱輸送方向の自動切替が可能なヒートパイプ。
【請求項9】
受熱部(H)と放熱部(C)の間で熱媒液(L)を循環させて熱輸送を行うヒートパイプであって、
熱媒液(L)との熱交換が可能な部位として、受熱部(H)としても放熱部(C)としても使用でき、かつ、上部に蒸気の滞留スペース(S)を有する第一熱交換部(1)と;この第一熱交換部(1)よりも上側に配置され、かつ、上部に蒸気の滞留スペース(S)を有する高位タンク(2)と;前記第一熱交換部(1)よりも下側に配置され、かつ、受熱部(H)および放熱部(C)に兼用できる第二熱交換部(3)とを備える一方、
これらの部位を繋ぐ配管として、前記第一熱交換部(1)と高位タンク(2)とを連結する第一の液上昇管(4)と;高位タンク(2)と第二熱交換部(3)とを連結する第一の液下降管(5)と;第二熱交換部(3)と第一熱交換部(1)とを連結する第二の液上昇管(6)と;第一熱交換部(1)と第二熱交換部(3)とを連結する第二の液下降管(7)とを配設し、
更に、前記第一熱交換部(1)と第二熱交換部(3)に、受熱に応じて第一の液上昇管(4)または第二の液上昇管(6)中に気泡(B)を供給する気泡供給手段を設けると共に、
第一の液下降管(5)と第二の液下降管(7)にそれぞれ独立した配管を使用して、第一の液上昇管(4)に、高位タンク(2)から第二熱交換部(3)にのみ熱媒液(L)が移動可能な逆止弁(V4)を配設したことにより、
前記第一熱交換部(1)が受熱部(H)となるトップヒートの温度環境や第二熱交換部(3)が受熱部(H)となるボトムヒートの温度環境に応じて、逆止弁(V4)が開閉して熱媒液(L)の循環路が自動的に切り替わることを特徴とする逆止弁により熱輸送方向の自動切替が可能なヒートパイプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate