熱量計およびそれを用いる方法ならびにそのための制御システム
制御システムおよびそれを用いる熱量計が提供される。ある例において、薄膜サンプルセンサと、薄膜基準センサと、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラとを備える熱量計が説明される。制御システムおよび熱量計を用いる方法がまた説明される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願
この出願は、2008年6月6日に出願された米国仮出願番号61/059,321の優先権を主張し、その出願の全体の開示は、すべての目的のために参照によってここに援用される。
【0002】
技術分野
ここに記述される技術のある特定の例は、熱量計に向けられている。より特定的には、ある特定の実施の形態において、高い加熱レートおよび冷却レートで走査するように構成された示差走査熱量計が記述される。
【背景技術】
【0003】
熱量計は、化学または物理プロセスの間に必要とされ、あるいは放出される熱の定量的測定を行なう装置である。熱量計は、たとえば、熱容量、生成(発熱)または消費(吸熱)され得る反応熱を測定するために用いられ得る。熱量計は、また、相変化、結晶化過程等を含むがこれらに限定されない物理的遷移を測定するために用いられ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
1つの局面において、熱量計が提供される。ある特定の例において、熱量計は、薄膜サンプルセンサと、薄膜基準センサと、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラとを備える。
【0005】
ある特定の実施形態において、第1のコントローラは、比例積分微分コントローラである。いくつかの例において、第2のコントローラは、アナログ比例コントローラであり、または、ある例では、比例積分微分コントローラである。いくつかの例において、第1および第2のコントローラは、同じコントローラであり得る。たとえば、コントローラは基準センサから(たとえば基準センサのみから)温度信号を受信するように構成された第1の制御ループを含み得る。コントローラは、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与え得る。コントローラはまた、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信するように構成された第2の制御ループを含み得る。コントローラは、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサに差分パワーを与える(たとえばサンプルセンサのみに差分パワーを与える)。他の例において、熱量計は、さらに、選択された加熱レートおよび/または冷却レートを有する温度プログラムを用いて設定された記憶媒体を備え得る。ある特定の実施形態において、温度プログラムの加熱レートは、少なくとも10ケルビン/秒であり得る。ある例において、薄膜サンプルセンサおよび薄膜基準センサの各々は、XI−296,XI−270,XI−272またはXI−292センサであり得る。ある特定の例において、比例コントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートでの温度変化を検出するように構成されてもよい。
【0006】
さらなる局面において、熱量計のための制御システムが開示され、熱量計は、サンプルセンサおよび基準センサを備え、制御システムは、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサにパワーを与えるように構成された第1のコントローラと、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるために第2の制御信号を生成するように構成された第2のコントローラとを備える。
【0007】
ある特定の実施形態において、第1のコントローラは、比例積分微分コントローラであってもよく、第2のコントローラはアナログ比例コントローラである。ある特定の例において、第1のコントローラおよび第2のコントローラは、各々薄膜サンプルセンサおよび薄膜基準センサにパワーを与えるように構成され得る。いくつかの例において、第2のコントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートでの温度変化を検出するように構成され得る。
【0008】
他の局面において、基準センサおよびサンプルセンサを含む熱量計の制御方法が開示される。ある特定の例において、方法は、第1のコントローラを用いて第1の制御信号を生成するステップを備え、第1の制御信号は、第1のコントローラによる熱量計の基準センサのみからの温度信号の受信に基づく。いくつかの例において、方法は、さらに、生成された第1の制御信号に基づいて、基準センサおよびサンプルセンサにパワーを与えて基準センサおよびサンプルセンサの平均温度を制御するステップを備える。他の例において、方法は、さらに、第2のコントローラを用いて第2の制御信号を生成するステップを含み得る。第2の制御信号は、基準センサとサンプルセンサとの間の温度差を与えるために基準センサおよびサンプルセンサの各々からの温度信号の受信に基づく。さらなる例において、方法は、さらに、生成された第2の制御信号に基づいて、サンプルセンサのみに差分パワーを与えてサンプルセンサの温度を基準センサと実質的に同じ温度にするために加熱または冷却するステップを備え得る。
【0009】
ある特定の実施形態において、方法は、第1のコントローラを比例積分微分コントローラに構成するステップを含み得る。他の実施形態において、方法は、第2のコントローラをアナログ比例コントローラに構成するステップを含み得る。さらなる例において、方法は、10ケルビン/秒以上の加熱レートでサンプルセンサおよび基準センサを加熱するステップを含み得る。
【0010】
他の局面において、熱量計制御を促進する方法が提供され、方法は、制御モジュールを提供するステップを備える。制御モジュールは、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラを備える。ある特定の例において、制御モジュールは、また、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラを含み得る。
【0011】
さらなる特徴、局面、実施例および実施形態が、より詳細に以下に記述される。
ある特定の実施形態が、添付の図面を参照して以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ある特定の例に従う熱量計のブロック図である。
【図2】パワー補償示差走査熱量計に用いられる従来の制御システムの概略図である。
【図3】ある特定の例に従う、高い加熱レートでの使用に適した制御システムの概略図である。
【図4】ある特定の例に従う、薄膜センサ(XI-296、Xensor Integration、オランダ[1])の写真である。
【図5A】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図5B】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図5C】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図5D】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図6】ある特定の例に従う、高い加熱レートでの使用に適した制御システムのブロック図である。
【図7A】金属およびポリマーの試験のために組立てられた熱量計の概略図である。
【図7B】金属およびポリマーの試験のために組立てられた熱量計の概略図である。
【図7C】ある特定の例に従う、2つのセンサを含むサーモスタットの写真である。
【図8A】ある特定の例に従う、金属粒子の試験の結果を示す図である。
【図8B】ある特定の例に従う、金属粒子の試験の結果を示す図である。
【図9A】ある特定の例に従う、異なる加熱レートでの金属粒子の溶融の結果を示す図である。
【図9B】ある特定の例に従う、異なる加熱レートでの金属粒子の溶融の結果を示す図である。
【図10A】ある特定の例に従う、異なるゲイン設定でのサンプルセンサおよび基準センサの温度差を示す図である。
【図10B】ある特定の例に従う、異なるゲイン設定でのサンプルセンサおよび基準センサの温度差を示す図である。
【図11A】ある特定の例に従う、ポリマーの溶融および冷却を示す図である。
【図11B】ある特定の例に従う、ポリマーの溶融および冷却を示す図である。
【図12】ある特定の例に従う、等温結晶化実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
ここに開示されるある特定の実施の形態は、熱量計に向けられており、その熱量計は、従来の熱量測定装置を用いた測定のために、高い加熱および冷却レートで走査して、たとえば時間スケールでとても速く起こる、急速に生じる化学および物理プロセスを測定するように構成される。たとえば、ここで開示される装置のある特定の例は、速い時間スケールでの化学および/または物理プロセスを受ける有機材料および無機材料と同様に、ポリマー、繊維、薄膜、熱硬化性樹脂、エラストマー、複合材料、調合薬、食品、化粧品を特徴付けるために用いられ得る。装置は、ガラス転移温度(Tg)、溶融温度(Tm)、結晶化時間および温度、溶融および結晶化の熱、結晶度%、酸化安定度、組成分析、熱容量、キュア(cure)の熱、キュアの完全性、キュア%、純度、熱安定性、多形性(polymorphism)、リサイクルまたはリグラインドの熱設定温度を含むがこれに限定されないさまざまな特性を決定するために用いられ得る。これらおよび他の材料ならびにプロセスは、ここに開示される装置および方法を用いて分析され得る。ここに開示される制御システムおよび装置のある特定の実施形態の応答時間は、5ミリ秒未満であり得る。その時間は、分析される材料および装置の正確な構成に依存する。
【0014】
ある特定の実施の形態において、示差走査熱量測定(DSC)のために構成された熱量計が提供される。DSCにおいて、サンプルおよび基準物質が用いられる。サンプルおよび基準物質の温度を増大させるために必要とされる熱量における差分は熱入力(温度)の関数として測定される。サンプルおよび基準物質は、分析の間、実質的に同じ温度に維持される。サンプルホルダ温度が時間の関数として増大するように、温度プログラムが実現され得る。望ましい温度範囲にわたり明確に定義され、あるいは既知の熱容量を有するように基準物質が選択される。これまでに存在する熱量計と異なり、ここに開示される熱量計のいくつかの実施例はアナログパワー補償技術を実現する。そのようなパワー補償を実現する図示された装置は、任意選択的には制御およびデータ処理アルゴリズムおよび測定に従ってそのようなパワー補償を実現するが、より詳細に以下に説明される。
【0015】
DSCの特定の種類において、パワー補償が用いられ得る。パワー補償は、サンプルおよび基準物質を実質的に同じ温度に維持するために用いられる。動作の間、サンプルが受けるまさにそのプロセスに依存して、サンプルまたは基準物質のいずれか一方においてパワーが与えられ(または取除かれ)得る。たとえば、サンプルが吸熱プロセスを受ける場合には、基準物質に与えられたパワーが減少して、基準物質をサンプルと実質的に同じ温度に維持し得る。代替的には、サンプルに与えられるパワーが増大し得る。サンプルが発熱プロセスを受ける場合には、基準物質に与えられるパワーは増大して基準物質をサンプルと実質的に同じ温度に維持し得る。代替的には、サンプルに与えられたパワーが減少して、サンプルと基準物質とが実質的に同じ温度に維持され得る。
【0016】
ある特定のシステムにおいて、従来のDSCシステムは、ミリ秒未満の時間スケールで起こる化学および物理変化を研究するためには十分な正確性を与えないかもしれない。たとえば、ポリマー、調合薬、(アモルファス)金属合金準安定は、例外よりもむしろ標準であり、そのようなシステムの反応速度の研究は、重要な事項となってきた。準安定に関連する、さまざまな温度および時間に依存するプロセスの反応速度の完全な理解にとって、新しい技術に対する緊急の必要性が存在する。同じように、高い加熱レートを用いることを可能にする装置に対する大きな必要性が存在する。加えて、高い冷却レートでの処理を含む、製品寿命の間に起こるような現実の条件を模倣できることが重要である。
【0017】
ある特定の実施の形態において、パワー補償DSCのブロック図が、図1に示される。装置100は、サンプルホルダ110と基準物質ホルダ120とを含む。サンプルホルダ110と基準物質ホルダ120の各々は、各々が有する加熱素子(図示せず)を含む。サンプルにおいて、発熱(熱生成)または吸熱(熱吸収)変化が起こる場合、パワーまたはエネルギが、サンプルおよび基準物質の一方または両方に与えられるかまたは取除かれて、サンプルにおいて生じるエネルギの変化が補償される。コントローラ130は、パワーが与えられるべきか、または取除かれるべきかを決定するとともに、どの要素にそのようなパワーが与えられまたは取除かれるべきであるかを決定するために用いられる。実際、このパワー補償は、すべての時間において「熱ヌル(thermal null)」状態を維持する。システムを平衡状態に保つために必要とされるパワーの量は、サンプルにおいて生じるエネルギの変化に直接的に比例する。
【0018】
DSCのための典型的な制御システム200が図2に示される。制御システムは、2つの別個の制御ループを含む:第1の制御ループ210は、標準ホルダおよび基準ホルダの平均温度を制御するように構成され、第2の制御ループ220は、サンプルホルダおよび基準物質ホルダの間の温度差を制御するように構成される。平均制御ループ210は、サンプル温度および基準温度の数値平均を、温度プログラム205と比較する。平均パワーは、基準センサとプログラムされた温度との間の差分によって定義される。平均制御ループ210は、配線または電気的コネクション214および216をそれぞれ介してサンプルセンサ211および基準センサ221に電気的に結合されるコントローラ212を含む。コントローラ212は、また、電気的コネクション213および215を介して基準センサ221に電気的に結合される。いくつかの例において、コントローラ212は、他の装置にパワーを提供し、または信号を送り、216および215としてそれぞれ示される電気的コネクションを介してサンプル211および基準物質221の両方のヒータにパワーを与える。図2においては、パワーを与えるとともに温度を検出するための別々の接続を有するように示されているが、コントローラは、サンプルホルダ211への単一の電気的コネクションと、基準物質ホルダ221への単一の電気的コネクションとを有していてもよい。サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との間の温度に偏差があるならば、平均制御ループは、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との両方に同じ電気的出力を提供するように構成される。フィードバックにより、測定された平均温度とプログラムされた温度との間の差分が最小化される。もし温度プログラムにおいて望まれる温度がサンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との平均温度よりも大きいならば、より多くのパワーがヒータの各々に与えられるであろう、そしてヒータは、温度計のように、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに組込まれて、システムのための短い応答時間を与える。
【0019】
図2に示されたDSCの差分温度制御ループ220は、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との両方の間の温度差を測定するように構成される。差分温度制御ループ220は、配線224および223をそれぞれ介してサンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに電気的に結合されるコントローラ222を含む。コントローラ222は、また、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに与えられる差分パワー増分を調整するために、コネクション226および225をそれぞれ介してサンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに結合され得る。たとえば、サンプル温度および基準温度を表わす信号は、たとえばホルダの白金温度計によって測定されるが、差分温度増幅器に与えられる。差分温度増幅器出力は、次に基準ヒータおよびサンプルヒータに与えられる差分パワー増分を、それらの間の任意の温度差を補正するために、必要な方向および大きさで調整するであろう。たとえば吸熱遷移のために、サンプルホルダがより低い温度の場合、追加のパワーがサンプルホルダに与えられ得る。差分を最も効果的に最小化するとともに測定システムの厳密な対称性を維持するために、同じ量のパワーが、基準側から差引かれ得る。このパワーが記録され、平均温度プロファイルと一緒に、それはサンプルへの熱の流れについての完全な情報を提供する。この方式は、たとえば、ミリグラムのサンプルで8K/s走査レートで動作するパーキンエルマー(PerkinElmer)DSC熱量計で実現される。この制御は、サンプルカップと基準カップとの間の残りの温度差からの差分の熱流を比較的簡単に決定することを可能にする。パーキンエルマー差分パワー補償DSCにおいて、サンプルにおける吸熱(発熱)の事象の間に必要とされる(または放出される)追加の熱は、最終的には、平均コントローラによって与えられるが、それは、差分コントローラがその対称的動作により、システムから熱を与えたり奪ったりしないためである。この構成において、両方の制御ループのコントローラは、プログラムされた温度からの偏差を避けるために十分早く反応しなければならない。したがって、第1の制御ループ210と第2の制御ループ220との両方のコントローラに比例コントローラを使用することは一般的な方法である。
【0020】
ここに開示されるある特定の実施形態において、図2に示された制御ループ(および、より特定的には、平均コントローラ212)は、適切な測定を提供するために、十分に高い加熱レート、たとえば10K/秒を超えるレートのような高い加熱レートで正確に応答しなくてもよい。たとえば、もし、より高い加熱レートおよび、より高い感度が望まれるならば、平均信号は、もし図2の制御システムを用いて生成されるならば、図2に示された従来の制御システムを用いては検出されないであろう、ナノグラム量のサンプルからの小さくて素早い事象を含んでもよい。そのような問題を克服するために、図3に示されるような制御システムが用いられ得る。図2の制御システムと同様に、制御システム300は、2つの制御ループ310および320を備えるが、各制御ループの構成および/または機能は、図2に示されたそれらの制御ループと異なる。制御ループ310および320の間の任意のクロストークを避けるために、平均制御と差分制御とを分離することが有益であり得る。たとえば、制御基準温度は、サンプルホルダの平均温度を測定することなく測定され得る。すなわち、第1の制御ループ310のサンプル温度リード312は、図3において「X」を用いて概略的に示されるように、省略され得る。そして、基準コントローラ311は、サンプルホルダ316の平均温度を測定しない。平均温度制御ループ310において、コントローラ311は、サンプルホルダ326の温度を監視するためのいかなる直接的な電気的接続を有することなく、リード313を介して基準物質ホルダ316にのみ電気的に結合され得る。この構成は、基準温度制御のために、比較的遅いが正確なPIDコントローラの使用を可能にする。たとえば、基準温度の制御のための時間分解能は、差分コントローラ321に比較して数桁(orders of magnitude)遅くてもよい。さらに、基準コントローラ311の出力パワー範囲(ダイナミックス)は、差分コントローラ321よりも数桁大きい。たとえば、差分温度制御ループ320は、約3msの時定数を有してもよく、一方、平均温度制御ループ310は、約20msの時定数を有する。基準コントローラ311の積分部は、プログラム温度と基準温度との間の差分を実際的に0に確定する。基準センサとサンプルセンサとの間の高い対称性を仮定すると、基準センサにおける温度プロファイルと同様の、サンプルセンサにおける温度プロファイルは、基準コントローラ311の実質的に同じ出力電圧を、サンプルセンサ326および基準センサ316のヒータに、たとえばコネクション314および315を介して印加することによって、予想外に達成され得る。
【0021】
差分制御ループである第2の制御ループ320において、コントローラ321は、コネクション322および323をそれぞれ介してサンプルセンサ326および基準センサ316に電気的に結合されるとともに、基準センサ温度とサンプルセンサ温度との間の任意の差分を検出するように構成される。コントローラ321は、次にその出力電圧を、単にサンプルセンサ326に加える、またはサンプルセンサ326から減ずることができる。すなわち、基準物質ホルダ316への差分パワーは、基準物質ホルダ316への差分パワー接続に対して「X」で示されるように、コントローラ321を用いて監視され、検出され、使用され、または変更されない。この構成をコントローラ311および321の両方の間での全体の分離を与えるために用いることにより、高い精度に従う高い加熱レートの予期しない結果が達成され得る。さらに、この構成は、基準温度の制御のための正確な(しかし遅い)PIDコントローラおよび差分コントローラのための高感度で速い比例コントローラの使用を可能にする。
【0022】
ある特定の例において、図3に示された制御システムは、1K/秒以上、より特定的には、約10K/秒以上、たとえば約1〜10,000K/秒、より特定的には10〜1000K/秒、たとえば10〜500K/秒、10〜100K/秒またはこれらに示した範囲内での任意の値の加熱レート(または冷却レート)を用いたサンプルの化学的プロセスまたは物理的プロセスを監視するために用いられ得る。そのような高い加熱レートおよびここに開示される熱量計は、従来の熱量計を用いた研究では時間スケールにおいてあまりにも速く起こる化学的および物理的遷移の研究を可能にする。いくつかの例において、加熱レートが時間の関数としての温度勾配になる、開始温度と最終温度との間の直線的増加が実現されるように、加熱が直線的であってもよい。同様に、一旦、最終温度に到達すれば、冷却レートは、加熱レートと同じまたは同様であってもよいが、サンプルホルダおよび基準物質ホルダの冷却の間のプロセスを研究するために用いられてもよい。他の例において、加熱および/または冷却は、段階的、非線形でもよく、または、研究される材料およびそこからの望まれる情報に依存する、他の形式をとってもよい。
【0023】
ある特定の実施形態において、ここに記述される制御システムは、所望の加熱レート(または冷却レート)に依存して、従来の熱量測定坩堝または薄膜サンプルホルダとともに用いられ得る。たとえば、高い加熱レートは、測定セルの質量によって制限され得る。ヘイガー(Hager)、アレン(Allen)および共同者、ならびにロピーンディア(Lopeandia)らによって記述されるような薄膜を用いることにより、ここに開示される制御システムに従って、微少量のサンプルが高い加熱および冷却レートを用いて研究され得る。さらに、8...102K/sの間の範囲に及ぶDSCと高速走査熱量測定技術との間における走査レートでの隔たりは、多くの材料処理ステップによる対象の領域がこの冷却レート範囲内にあるが、埋められ得る。実例となる薄膜センサは、Xensor Integration(オランダ)から商業的に入手可能なXI−296,XI−270,XI−272およびXI−292を含む薄膜センサ、および、たとえば、ここに記述されたvan Herwaarden A. W.の論文に記載されたセンサを含むがこれらに限定されるものではない。
【0024】
薄膜センサのある特定の実施形態において、薄膜の大きさおよび寸法は、その薄膜が熱量測定において用いられる従来の坩堝またはカップと比較して低い熱容量を有するように選択され得る。たとえば、約1グラムの質量を有するカップを用いることに代えて、ここに開示された装置は、単一センサ高速走査熱量計に用いられるような、たとえばXI−296センサのような、2つの高感度かつ低い転移(addenda)熱容量薄膜センサを含み得る。ある特定の実施形態において、測定セルは、たとえばTO−5ハウジングのような標準的な集積回路ハウジングに固定された約2.5x5mm2の大きさを有するシリコンフレームを含み得る。薄膜を有する熱量計はまた、たとえば図4A〜4Dに示されるように独立して立っているSiNメンブレン(たとえば0.5μmの厚み)の中央に取付けられたヒータおよびサーモパイルを含み得る。図4Aは、TO−5ハウジングに実装されたチップ(暗色)を示す。図4Bにおいて、シリコンフレームを伴う厚いチップ(暗色)および独立して立っているSiNメンブレン(チップ中央の明るい領域)が示される。チップのより詳細な外観が図4Cに示され、図4Cでは、中央における測定領域への配線が見られる。メンブレンの中央におけるヒータ(厚い縞)とサーモパイル(薄い縞)との配置が図4Dに示される。加熱領域の大きさは、約8ミクロンから約100ミクロンまで変化し得るものであり、たとえば約8ミクロンから10ミクロンまたは約60ミクロンから80ミクロンまで変化し得る。所望の数のサーモパイルは加熱領域に配置されて高速で正確な温度測定を可能にし得る。サーモパイルは、適切なリソグラフィ技術およびp型ドープおよびn型ドープされたシリコンを用いて生成され得るとともに、温接合は、まさに2つのヒータ縞の間に配置される一方で、冷接合はシリコンフレームの上に配置される(図4Cにおける、独立して立っているメンブレンの左および右)。サーモパイルは、典型的には薄膜の温度を測定することができる、および/または薄膜にまたはその近くに熱を与え/奪う一連の熱電対を含む。用いられるサーモパイルの的確な種類は、さまざまであり得るとともに、サーモパイルの種類の実例は、半導体サーモパイルおよび1以上の知られている種類の熱電対を含むサーモパイルを含むがこれに限定されるものではない。たとえば、実例的な熱電対の種類は、たとえばANSI C96.1−1964に記載されるものであるが、タイプB(白金/30%ロジウム(+)対白金/6%ロジウム(−))、タイプE(ニッケル/10%クロム(+)対コンスタンタン(−))、タイプJ(鉄(+)対コンスタンタン(−))、タイプK(ニッケル/10%クロム(+)対ニッケル/5%アルミニウム−シリコン(−))、タイプR(白金/13%ロジウム(+)対白金(−))およびタイプS(白金/10%ロジウム(+)対白金(−))を含むがこれらに限定されない。さらなる熱電対は、たとえば純粋な白金、白金パラジウム、白金イリジウム、白金タングステンおよびタングステンレニウム熱電対のような熱電対であるが、それらは、この開示の恩恵により、当業者によって選択されるであろう。ここに詳細に説明されるように、多くの異なる種類の適切な薄膜センサが、数多くのサプライヤから商業的に入手可能である。
【0025】
いくつかの例において、薄膜は、中央における「温」接合およびセンサのフレーム上の「冷」接合を有する加熱領域の中に配置された5または6の半導体サーモパイルで構成され得る(図4Cおよび4Dを参照)。約10K/秒以上の加熱レートが用いられるような高速の走査実験のために、サンプルは加熱される薄膜領域の頂上に配置され、したがって薄膜サンプルのサンプル温度についての信頼できる情報が得られることができる。そうでない場合、加熱領域の外部の強い温度勾配が測定に不利に影響するかもしれない。
【0026】
薄膜センサを実現するある特定の実施の形態において、1以上の適切なアルゴリズムが、生成されるかあるいは失われる熱の量を決定するために用いられ得る。たとえば、ここに開示された装置における制御ループの分離は、パワー補償DSCにおいて一般的に用いられるような対称パワー補償方式に比較して、サンプルの熱容量の計算をより難しくするが、より高い加熱レートを信頼性のある平均温度制御で可能にする。一般的に、ヒータと薄膜サンプルとの間の熱接触は、接着力および任意の残余熱損失を無視できるために十分によい。薄膜ヒータおよびサーモパイルの熱容量および熱抵抗は、また、無視できるほどに小さい。セルの主な熱容量は、メンブレンの加熱された部分の効果的熱容量であり、それは室温において約2×10-7J/Kである。システムは、次のパラメータによって記述され得る:セルの中央部分の有効熱容量C0、サンプルの熱容量C、およびセルの中央部分と環境との間の熱交換係数ξ。約1kOhm抵抗の抵抗薄膜ヒータは、熱流量P0(t)を与え、その熱流量は薄膜/サンプルインターフェイスに供給されて、サンプル、メンブレンおよび周囲の気体に伝わる。これらの変数を用いて、熱平衡の式は、次のように表わされることができる。
【0027】
【数1】
【0028】
T(t)およびT0は、それぞれ加熱領域および環境の温度であり、P0は、システムに与えられるパワーであり、CおよびC0は、それぞれサンプルおよび薄膜センサの熱容量である。完全に対称な差分システム(両方のセンサが常に実質的に同じ温度である)を仮定すると、環境への熱損失(式の右辺の第2項)および両辺の転移熱容量C0が補償される。したがって、サンプルセンサおよび基準センサに対する式1の差分は次の式を与える。
【0029】
【数2】
【0030】
Pdifferenceは、サンプルセンサおよび基準センサに供給されるパワーの差分を示す。Pdifferenceは、両方のセンサの間の残りの温度差および、たとえば図7Bのように、ここに開示された熱量計を用いて測定される他の量から得られることができる。
【0031】
ある特定の実施の形態において、ここに開示される熱量計は、熱測定以外の測定がサンプルにおいて実現され得るように他の分析装置に活用され(conjugated)あるいは結合(hyphenated)されてもよい。いくつかの例において、1以上の他の分析装置が、分析される材料の追加の分析のため、あるいは熱量測定分析の間に発生するガスの分析のために、熱量計に活用されうる。実例としての分析装置は、質量分析器(MS)、赤外(IR)分光計、ガスクロマトグラフ(GC)およびこれらの技術の組合せを含むが、これに限定されるものではない。いくつかのハイフェネーティッド装置を示すブロック図が図5A〜5Dに示される。そのようなハイフェネーティッド装置は、特に、発生したガスの分析にとって有益であり得、その分析においては、1以上のガスが熱量測定の間にサンプルから発生する。そのようなガスは、たとえば、真空ポンプ、ファン、ヘッドスペースサンプリング等のような適切な装置を用いて、別の計測器または装置へと導かれあるいは引寄せられ得る。いくつかの例において、加熱されたチューブが、熱分析装置においてガスとして発生する種が、MSに転送される間はガスとして維持され得るように、熱量計とMSとの間の流体結合を提供する。熱分析装置からMSへの種の転送のための追加の適した装置および方法は、この開示の恩恵により、当業者にとって直ちに選択されるであろう。
【0032】
図5Aを参照して、システム500は、熱量計510を備え、熱量計510は図においてCALと示され、質量分析計515に結合される。熱量計510は、ここに開示されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。質量分析計515は、たとえば、PerkinElmer Life and Analytical Sciences, Inc. (Waltham, MA)から商業的に入手可能な質量分析計のように、化学分析において一般的に用いられる任意の質量分析計であってもよい。実例としての質量分析計は、磁場偏向型質量分析器、四重極型質量分析器、イオントラップ型分析器、飛行時間型分析器を用いる、あるいは実現するように構成されたもの、脱離エレクトロスプレーを実現するもの、および異なる質量対電荷比を用いて種を分離し得る他の適切な質量分析器を含むがこれに限定されるものではない。熱量計510と質量分析計515との間の圧力差を補償するために1以上のバルブ、継手あるいは装置を含むことが望ましいかもしれない。そのような圧力補償は、この開示の恩恵によって当業者にとって達成されるであろう。
【0033】
図5Bを参照して、システム520は、赤外(IR)分光計530に結合された熱量計525を備える。熱量計525は、ここに記述されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。赤外分光計は、たとえば、連続波赤外分光計、単一または二光束赤外分光計、またはフーリエ変換赤外分光計のような干渉分光計といったような、一般的に用いられる赤外分光計であり得る。熱量計をIR装置に結合するための適切な他の赤外分光計および適切な方法が、この開示の恩恵によって、当業者には理解されるであろう。
【0034】
図5Cを参照して、システム540は、ガスクロマトグラフィシステム(GC)550に結合された熱量計545を備える。熱量計545は、ここに記述されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。GC550は、熱量計515から発生したガスを受けるとともに、その発生したガスの中から種を分離する。たとえば、熱量分析の間に発生したガス性の反応生成物を分離するが望ましいかもしれない。ここに開示された熱量計とともに用いるための適切なGC装置を選択することは、この開示の恩恵を受けた当業者の能力の範囲内であるだろう。
【0035】
図5Dを参照して、システム560は、ガスクロマトグラフ570と結合された熱量計565を備え、ガスクロマトグラフ570自身は、質量分析計575に結合される。熱量計565は、ここに記述されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。GC570とMS575とは、各々が、たとえば、図5Aおよび5Cを参照して議論される実例としてのGCおよびMS装置または他の適切なGCおよびMS装置の各々であり得る。図5A〜5Dに示された実例としてのシステムは、また、たとえば、オートサンプラ、フィルタ、分析システムおよびソフトウェア、ならびにコンピュータインターフェイス等のような、追加の要素を含み得る。
【0036】
ある特定の例に従うと、ここに記述される計測器の構成が、少なくとも一部において、コンピュータシステムで制御されあるいは用いられ得る。コンピュータシステムは、たとえば、ユニックス(Unix(登録商標))、インテルのペンティアム(登録商標)タイププロセッサ、モトローラのパワーPC(PowerPC)、サン(Sun)のウルトラスパーク(UltraSPARC)、ヒューレットパッカードのPA−RISCプロセッサ、あるいは任意の他の種類のプロセッサに基づくような汎用コンピュータであり得る。1以上の任意の種類のコンピュータシステムが、この技術のさまざまな実施の形態に従って用いられてもよいことが理解されるべきである。さらに、システムは、単一のコンピュータに存在してもよく、あるいは通信ネットワークによって接続された複数のコンピュータの間に分散されていてもよい。1つの実施の形態に従う汎用コンピュータシステムは、データ取得、熱量測定制御、データ分析等を含むがこれに限定されない任意の記述された機能を実行するように構成され得る。システムは、ネットワーク通信を含む他の機能を実行してもよく、本技術は任意の特定の機能または一連の機能を有するものと限定されないことは理解されるべきである。
【0037】
たとえば、さまざまな局面が、汎用コンピュータシステムにおいて実行される専用のソフトウェアとして実現され得る。コンピュータシステムは、ディスクドライブ、メモリ、またはデータを保存するための他の装置のような、1以上の記憶装置に接続されるプロセッサを含み得る。メモリは、典型的には、プログラムおよびコンピュータシステムの動作中のデータを保存するために用いられる。コンピュータシステムの構成要素は、1以上のバス(たとえば、同じマシン内に集約された要素間)および/またはネットワーク(たとえば別個の離散的なマシンに存在する要素の間)を含み得る接続機構によって結合され得る。接続機構は、通信(たとえばデータ、指令)が、システム要素間で交換されることを可能にする。コンピュータシステムは、典型的には、記憶および/または処理のためにシステムからコンピュータシステムに電気信号が与えられ得るように、システムでのインターフェイスに電気的に結合される。
【0038】
コンピュータシステムは、また、1以上の入力装置、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、マイクロフォン、タッチスクリーン、アナログデジタル変換器(ADC,DAQボード)および、1以上の出力装置、たとえば、印刷装置、ステータスまたは他のLED、表示スクリーン、スピーカ、デジタルアナログ変換器(DACボード)等を含み得る。さらに、コンピュータシステムは、当該コンピュータシステムを通信ネットワーク(さらに、あるいは代替的に、接続機構)へと接続する1以上のインターフェイスを含み得る。コンピュータの記憶システムは、典型的には、コンピュータが読取および書込可能な、信号が記憶される不揮発性の記録媒体を含み、その記録媒体は、プロセッサによって実行されるためのプログラム、またはプログラムによって実行されるために媒体上または媒体中に記憶される情報を定義する。たとえば、加熱プロファイル、加熱レート、冷却レート等が、媒体中に記憶され得る。媒体は、たとえば、ディスクまたはフラッシュメモリであってもよい。典型的には、動作中において、プロセッサはデータを不揮発性記録媒体から別のメモリへと読出させるが、当該メモリは、不揮発性記録媒体よりも、プロセッサによる情報へのアクセスを速くすることができる。このメモリは、典型的には、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)またはスタティックメモリ(SRAM)のような揮発性のランダムアクセスメモリである。それは、記憶システムまたはメモリシステムの中に配置され得る。プロセッサは、一般的に集積回路メモリ内でデータを操作するとともに、処理が完了した後にそのデータを媒体にコピーする。媒体と集積回路メモリ素子との間のデータ移動を管理するためのさまざまな機構が知られており、その技術はこのように制限されるものではない。本技術は、特定のメモリシステムまたは記憶システムに限定されるものではない。
【0039】
コンピュータシステムは、また、たとえばアプリケーション専用集積回路(ASIC)のような、専用にプログラムされた、専用の目的のハードウェアを含み得る。本技術の局面は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアまたはそれらの任意の組合せにおいて実現され得る。さらに、そのような方法、動作、システム、システム要素およびそれらの構成要素は、上記のコンピュータシステムの一部として、または独立の要素として実現され得る。
【0040】
いくつかの例において、コンピュータシステムは、高級コンピュータプログラミング言語を用いてプログラム可能な汎用コンピュータシステムであってもよい。コンピュータシステムは、また、専用にプログラムされた、専用の目的のハードウェアを用いて実現されてもよい。コンピュータシステムにおいて、プロセッサは、典型的には、インテル社から入手可能な周知のペンティアム(登録商標)級のプロセッサのような商業的に入手可能なプロセッサである。他の多くのプロセッサが利用可能である。そのようなプロセッサは、通常、たとえばマイクロソフトから入手可能な、ウィンドウズ(登録商標)95、ウィンドウズ(登録商標)98、ウィンドウズ(登録商標)NT、ウィンドウズ(登録商標)2000(ウィンドウズ(登録商標)ME)、ウィンドウズ(登録商標)XPまたはウィンドウズ(登録商標)ビスタオペレーションシステム、アップルコンピュータから入手可能なマック(Mac)OSシステムX、サンマイクロシステムズから入手可能なソラリス(Solaris)オペレーティングシステム、またはさまざまなソースより入手可能なUNIX(登録商標)またはLinux(登録商標)オペレーティングシステムでもよいオペレーティングシステムを実行する。多くの他のオペレーティングシステムが用いられ得る。プロセッサに加えてあるいはプロセッサに代わり、コンピュータシステムは、たとえば8ビットまたは16ビットコントローラのようなコントローラを含んでいてもよい。32ビットまたはそれ以上のコントローラのような他のコントローラは、また、そのコンピュータシステムのプロセッサの代わりにまたは当該プロセッサに加えて用いられ得る。
【0041】
プロセッサおよびオペレーティングシステムは、ともに高級プログラミング言語が記述可能なアプリケーションプログラムのためのコンピュータプラットフォームを定義する。本技術が、特定のコンピュータシステムプラットフォーム、プロセッサ、オペレーティングシステムまたはネットワークに限定されるものではないことが理解されるべきである。また、本技術が、特定のプログラミング言語またはコンピュータシステムに限定されるものではないことが当業者にとって明らかであるべきである。さらに、他の適切なプログラミング言語および他の適切なコンピュータシステムもまた用いられることが可能であることは理解されるべきである。
【0042】
ある特定の例において、ハードウェアまたはソフトウェアは、認知アーキテクチャ、ニューラルネットワークまたは他の適切な実現手段を実現するように構成される。コンピュータシステムの1以上の部分は、通信ネットワークに結合された1以上のコンピュータシステムにわたり分散され得る。これらのコンピュータシステムは、また、汎用コンピュータシステムであり得る。たとえば、さまざまな局面が、サービス(たとえばサーバ)を1以上のクライアントコンピュータに提供し、あるいは分散システムの部分としての全体のタスクを実行するように構成された1以上のコンピュータシステムの間で分散し得る。さまざまな局面が、クライアント−サーバまたは、さまざまな実施の形態に従うさまざまな機能を実行する1以上のサーバシステムの間で分散された要素を含む多段(multi-tier)システムにおいて実行され得る。これらの要素は、通信プロトコル(たとえばTCP/IP)を用いた通信ネットワーク(たとえばインターネット)での通信を行なう、実行可能な、中間(たとえばIL)または解釈(たとえばジャバ(Java(登録商標)))コードであり得る。本技術は、特定のシステムまたはシステム群において実行されるものと限定されるものではないことはまた理解されるべきである。また、本技術は、いかなる特定の分散アーキテクチャ、ネットワークまたは通信プロトコルに限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0043】
さまざまな実施の形態が、オブジェクト指向プログラミング言語を用いてプログラム可能であり、オブジェクト指向プログラミング言語は、たとえば、スモールトーク(SmallTalk)、ベーシック(Basic)、ジャバ(Java(登録商標))、C++、エイダ(Ada)、LabView(ナショナルインスツルメンツ)またはC♯(Cシャープ)である。他のオブジェクト指向プログラム言語がまた用いられ得る。代替的には、機能、スクリプト、および/または論理プログラミング言語が用いられ得る。さまざまな局面が、非プログラム環境(たとえばブラウザプログラムのウィンドウにおいて表示されたときに、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)の外観を表示、あるいは他の機能を実行する、HTML、XMLまたは他のフォーマットで作成された文書)において実現され得る。他のいくつかの例において、所望の加熱レート、冷却レート、サンプリングレート等が、グラフィカルユーザインターフェイスの1以上のプルダウンメニューから選択され得る。他の局面は、プログラムされた、またはプログラムされていない要素、またはそれらの任意の組合せとして実現され得る。ある特定の例において、ユーザインターフェイスは、ユーザがたとえば、加熱レート、冷却レート、サンプルサイズ、初期パワー等のような所望のパラメータを入力できるように与えられ得る。ユーザインターフェイスに含まれる他の特徴は、この開示の恩恵によって、当業者に直ちに選択されるであろう。
【0044】
ある特定の実施形態において、熱量計のサンプルセンサおよび基準センサの温度を制御するように構成された制御システムが提供される。システムは、図6においてブロック図で示される。ある特定の例において、制御システム600は、第1のコントローラ610と第2のコントローラ620とを備え、各々のコントローラは、少なくとも1つの電気的コネクションを介してサンプルセンサ630と基準センサ640とに電気的に結合される。第1のコントローラ610は、コネクション612を介して基準センサ640から温度信号を受信するように構成され得る。第1のコントローラ610は、基準センサ640からの温度信号に基づいて、たとえば、単に基準センサ640からの温度信号に基づいて、第1の制御信号を生成し、その生成された第1の制御信号に基づいて、コネクション616および614をそれぞれ介して、サンプルセンサ630と基準センサ640との両方にパワーを与え得る。いくつかの例において、第2のコントローラ620は、コネクション626および628をそれぞれ介してサンプルセンサ630および基準センサ640から温度信号を受信するように構成され得る。ある特定の例において、第2のコントローラ620は、第2の制御信号を生成して、電気的コネクション624を介してその生成された第2の制御信号に基づき、サンプルセンサ630にのみ差分パワーを与え得る。ある特定の例において、サンプルセンサおよび基準センサは、各々、高い加熱レートの間に、それらの温度を急速に変化させるように反応し得る薄膜センサであってもよい。サンプルセンサおよび基準センサの各々は、典型的にはサンプルホルダ、加熱素子(たとえば、抵抗加熱素子)および温度検出素子(たとえば、熱電対、温度計等)を含む。サンプルセンサ630および基準センサ640に与えられる信号は、特定のセンサの加熱素子によって与えられる熱を増大(または減少)するために適切な信号であり、したがってサンプルセンサ620と基準センサ640とは、分析の間は、実質的に同じ温度に保たれる。いくつかの例において、第1のコントローラ610は、PIDコントローラであってもよく、第2のコントローラ620は、高い加熱レートによって起こり得る急速な熱の変化を検出可能な比例コントローラまたは他の適切なコントローラであってもよい。
【0045】
いくつかの例において、ここに開示されたシステムは、たとえばオートローダのような追加の要素を含んでもよい。オートローダは、システムがユーザの介入またはモニタなしで測定を実行できるように、サンプル(またはサンプルを含むセンサ)を順次システムに入れたり出したりするように構成され得る。オートローダは、確実にサンプル/センサを掴むことが可能なたとえばロボットアームおよび/またはモータを備え、それらをシステムにおける所望の位置へと運ぶ。システムは、演算増幅器、ゲイン制御装置等といった他の電子部品を含んでいてもよい。システムは、バーコードリーダを含んでいてもよく、それによって各サンプルがバーコードでコード化されて、各サンプルの測定がそれぞれのバーコードと関連付けられることができる。ここに開示された装置およびシステムにおいて含まれる追加の要素および特徴は、この開示の恩恵によって当業者により直ちに選択されるであろう。いくつかの例において、オートローダは、サンプルのみを運ぶように構成され得る一方で、他の例においては、オートローダは、サンプリングスペースへとセンサおよびサンプルを運んでもよい。
【0046】
いくつかの例において、熱量計を用いて物理的変化または化学的変化を測定するための方法が開示される。ある特定の例において、方法は第1のコントローラを用いて第1の制御信号を生成することによりサンプルセンサおよび基準センサを制御するステップを備え、第1の制御信号は、第1のコントローラによる、熱量計の基準センサのみからの温度信号の受信に基づく。いくつかの例において、方法はまた、生成された第1の制御信号に基づいて、基準センサおよびサンプルセンサにパワーを与えて、基準センサおよびサンプルセンサの平均温度を、たとえばサンプルセンサの温度を検出することなく制御するステップを備え得る。他の例において、方法は、また、第2のコントローラを用いて第2の制御信号を生成するステップを備え、第2の制御信号は、基準センサとサンプルセンサとの間の温度差を与えるために、基準センサおよびサンプルセンサの各々からの温度信号を受信することに基づく。ある特定の実施形態において、方法は、さらに生成された第2の制御信号に基づいて、サンプルセンサのみにパワーを与えて、サンプルセンサの温度を実質的に基準センサと同じ温度に加熱または冷却するステップを備え得る。ある実施例において、方法は、第1のコントローラを比例積分微分コントローラに構成するステップを含み得る。他の実施例において、方法は、第2のコントローラをアナログ比例コントローラに構成するステップを含み得る。ある実施の形態において、方法は、サンプルセンサおよび基準センサを10ケルビン/秒以上、たとえば、20,30,40,50,60,70,80,90または100ケルビン/秒以上の加熱レートで加熱するステップを含み得る。
【0047】
ある特定の実施形態において、熱量計制御を促進する方法が提供される。そのような方法は、たとえば、制御モジュールの形態でここに記述されたコントローラ(または制御ループ)構成を与えることによって実行され得る。ある特定の例において、方法は制御モジュールを与えるステップを含み、制御モジュールは、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラおよび、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラを備える。モジュールは、既存の熱量測定装置と接続可能であるかまたはそれ自身がここに記述されたようなモジュールのコントローラと結合可能なサンプルセンサおよび基準センサのためのスペースを含み得る。
【0048】
ある特定の実施例が、ここに開示される技術のよりよい理解を促進するために以下に詳細に記述される。
【0049】
実施例1−熱量計構造
2つの制御ループを有する制御システムを有する熱量計が次のように構築された:サンプルを有する1つの熱量センサとサンプルを有さないもう1つの熱量センサとの2つの熱量センサが、図7Cの写真に示されるようにサーモスタット内に配置され、図7Bに示されるように、制御された温度(たとえば35℃)で、選択された環境ガス(たとえば50kPaまたは100kPaのヘリウムまたは窒素)をともなった。センサは、サーモスタットと良好な熱接触の状態に置かれ、サーモパイルの冷接合温度がサーモスタットの温度に等しくされた。センサは、図7Aにおいて概略的に示されるとともに図7Bにおいて詳細に示されるように、2つの制御ループに接続された。増幅器X1(低出力ノイズ、1MHz帯域幅の電圧増幅器SIM910)が、基準センサ710からのサーモパイル出力を増幅し、それを、図3を参照して記述されるような、平均温度制御ループ310のための基準コントローラとして機能するPIDコントローラ730(アナログPIDであるSIM960)に与えた。PIDは、測定された基準センサの温度を、予め定められた温度プログラム750と比較する。PIDの出力は、基準センサ710のヒータに与えられ、そのヒータは、図7Bにおいて箱によって示される、直列のいくつかの線抵抗であり、ヒータを介して電流の測定が可能な1.5KOhmの定抵抗であった。式(2)において必要とされるように、パワーおよび最終的な差分パワーを再計算するために必要なすべての電圧は、Meilhaus ElectricからのDAQボードME4680isによって測定された。ボードは、また、温度プログラム(Uprog)を提供した。定抵抗と同様にヒータ間の電圧は、線抵抗に対する補償を行なうための4つ(3つ)の配線接続において測定された。増幅器X2(SIM910)は、直列に接続された基準センサ710のサーモパイルおよびサンプルセンサ720のサーモパイルに由来する温度差分信号を増幅した。増幅器X4(SIM911)は、X2からの出力を、PIDの出力に加えるために用いられた。X2およびX4は、図3を参照して記述される差分コントローラとして機能した。X4の出力は、サンプルセンサ720のヒータに与えられた。再度、パワーおよび差分パワーを再計算するための電圧および電流が、図7Bに示される構成を用いて測定された。X4の入力範囲は、1ボルトに制限された。したがって、PIDの出力(0−10V)は、抵抗R6を用いて10で割られ、X4を過負荷にしないようにした。R6の調整は、さらに、2つのセンサの間の小さな差分を補償することを可能にした。X3(SIM911)は、さらに温度差分信号を増幅し、差分パワーの計算に用いられた。すべての増幅器およびPIDは、スタンフォードリサーチシステムズ社(Stanford Research Systems, Inc.)によって製造され、これもスタンフォードリサーチシステム社からのメインフレームであるスモールインスツルメンテーションモジュール(Small Instrumentation Module)SIM900に配置された。後者は、GPIBインターフェイスを介してコンピュータからのすべての機能の完全な制御を可能にした。
【0050】
図7Aおよび7Bに示された装置の動作において、アナログ素子が、応答時間を短くして、それゆえに高いレートでの温度処理を可能にするために用いられた。上記のように、アナログPIDコントローラは、基準センサ温度を制御するとともに、両方のセンサに平均パワーを与えるために用いられた。時間の関数としてのプログラムされた温度は、ユーザにより定義された温度プロファイルに従って、コンピュータまたはコントローラからPIDに供給された。サンプル側のセンサの温度(サーモパイル電圧)が基準センサ温度と異なるとすぐに、その差分が増幅されて、サンプル側のヒータに与えられた電圧に加えられた。差分制御ループは、高周波アナログ増幅器からなり、それによって、1または数マイクロ秒のオーダでの非常に」高速の応答時間を有する。測定のために必要な差分パワーおよびすべての電圧は、たとえばADC/DACボードを用いて、コンピュータによって収集された。用いられたSRSのスモールインスツルメンテーションモジュールアナログデバイスフレームは、コンピュータからの分析のパラメータを制御することを可能にした。実験の管理およびデータ取得のためのプログラムは、Labview(商標)を用いて開発された。
【0051】
実施例2−金属テスト
実施例1に記述された装置をテストするため、小さな(ミクロンの直径)球状の金属粒子の溶融および結晶化が研究された。そのような一次遷移のために、熱容量および結果的な熱流曲線が知られている。粒子がたとえ小さくても、溶融の熱は、センサの転移熱容量に比較して大きい。したがって、プログラムされた温度プロファイルの強い偏差が、以下に記述されるように、低い差分ゲイン設定において検出された。計測器は、そのような遷移を検出するとともに熱量計を制御するために差分パワーを与えることが可能であった。
【0052】
実施例1の装置で測定された500K/sの加熱−冷却レートでの単一のスズ粒子(約350ナノグラム)の加熱の結果が図8Aおよび8Bに示され、以下に記述されるすべての測定において空のセンサである基準センサとともに示される。図8Aは、温度プログラムおよびサンプルセンサと基準センサとの間の残存する温度差を示す。図8Bは、図8Aに示されたデータからの熱容量を示す。加熱において、ピーク形状は、センサから比較的重いサンプルへの熱の移動によって決定される。周知のピークの直線的先端が図8Aに示される。ピークの幅から、溶融(熱移動)のための時間が29ミリ秒と見積もられた。冷却での結晶化が、約100Kの過冷却のためにより速くなった。結晶化は、ほぼデルタ関数として推定することが可能である。その計測器の応答時間は、3ミリ秒と見積もられた。結晶化ピークは、高速のプロセスを扱う際において装置のパワーを好適に示した。
【0053】
図9Aを参照して、以下に挙げたMinakov(Rev. Sci. Instr. 2007)の論文に記述されるような単一のセンサ素子、および実施例1の装置を用いた、単一の球状スズ粒子(約35ナノグラム)を加熱した結果が示される。図9Aにおいて、微少なスズのサンプルに対する溶融曲線が、能動的制御のない単一のセンサチップ熱量計と、異なる加熱レートでパワー補償された差分チップ熱量計とで比較された。単一のセンサ装置は、非常に丸い曲線を生成したが、実施例1の差分装置は、パワー補償DSCから知られるような溶融曲線のような、予想される三角形を与えた。差分設定は、計測器によって、より歪みのない、より現実的なデータを与えた。図9Bは、センサでのサンプルの配置を示す。
【0054】
実施例1の装置を用いた差分ゲイン設定の効果が、基準コントローラのための設定が一定に維持された状態で。約350マイクログラムのスズのサンプルを用いて決定された。単一の球状の粒子は1,000K/sの加熱レートおよび異なる差分ゲイン設定を用いて溶融した。図10Aは、異なるゲインでの残存する温度差を示す。図10Bは、図10Aに示されたデータから算出されたパワーの差分を示す。図10Bの挿入部は、ゲイン設定の関数としてのピーク領域を示す。低ゲイン設定において、溶融ピークは、高ゲイン設定に比較してかなり広くなっていた。十分でない熱がサンプルセンサ、およびその結果のサンプルに与えられていたため、サンプルが、センサとサンプルとの間の熱移動(熱抵抗)によって制限される限りにおいて速く溶解した。高ゲイン設定においてのみ限界に達し、ピークの限界での形状が図10Aにおいて観測された。低ゲイン設定において、基準センサおよびサンプルセンサの温度を等しくするようなパワーの決定のための必須条件は、溶融の間には満たされない。したがって、領域(図10Bの挿入部参照)は、より小さくなり、10より大きいゲイン設定に対してのみ真の値に達する。
【0055】
実施例3−ポリマー試験
ポリマーは、高いレートでの結晶化および溶融において強い運動効果(kinetic effect)を示すことが知られている。ポリマー溶融曲線の例が図11Aに示される。20ナノグラムのイソタクチックポリプロピレン(iPP)が、図11Bにおけるセンサに配置して示されるが、さまざまなレートで溶融および/または冷却された。図11Aの挿入部は、温度プロファイルを示す。200K/秒未満のレートでは、結晶化は、冷却時に観測された。結晶化ピークは、冷却レートの増加時に、より低い温度へとシフトして、200K/sより大きいレートで消滅した。加熱時には、10,000K/sの加熱レートにおいてさえ低温結晶化が観測された。低温結晶化と同様に約270Kでのガラス転移が、加熱レートの増加に伴い、より高い温度へとシフトした。加熱時のポリマー結晶の非常に高速な再組織化のため、溶融ピークの位置のみが、多少レートに独立であった。溶融ピークのレートに独立な位置は、システムにおける大きな温度のラグ(lag);その結果のパワー補償がないことを示した。図11Aに見られるように、たとえばガラス転移未満であり溶融以上である、遷移外の熱容量値は、基本的にレートに独立である。すなわち、この実施例は、装置が意図したように動作することを確定するものであった。
【0056】
冷却での結晶化がないために、イソタクチックポリプロピレンに対する等温結晶化実験は、任意の温度において実行され得る。この種の測定の例が図12に示される。323Kでの1000K/秒のクエンチの後に、サンプルセンサと基準センサとの間の温度差が約5ミリ秒内に釣り合った。その時間の後、図12の挿入部に示されるようなサンプルセンサの温度における増加に従って、発熱結晶化プロセスがそれ自身現われた。温度上昇があったとしても、その増加は約0.5K以下にしか過ぎないので、その測定は、等温であると推定し得る。
【0057】
以下の論文は、すべての目的のため、参照によってここに援用される。
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15.Minakov AA, Mordvintsev DA, Schick C. Melting and Reorganization of Poly(ethylene Terephthalate) on Fast Heating(1,000K/s). Polymer 2004:45(11):3755-3763.
16.Minakov AA, Mordvintsev DA, Schick C. Isothermal reorganization of poly(ethylene terephthalate) revealed by fast calorimetry(1000 K s-1;5 ms). Faraday Discuss 2005:128:261-270.
ここに開示された例の要素の導入において、冠詞「a」、「an」、および「the」は、1以上の要素があることを意味する。「comprising」、「including」、「having」は、オープンエンドであることを意図するとともに挙げられた要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。当業者は、この開示の恩恵によって、例のさまざまな構成要素が、他の例のさまざまな構成要素と交換あるいは代用可能であることを理解するであろう。
【0058】
ある特定の特徴、局面、例および形態が上記のように記述されたが、開示された実例としての特徴、局面、例および形態の追加、代替、変更および調整が、この開示の恩恵によって、当業者によって直ちに理解されるであろう。参照によってここに援用される出版物の任意の用語の意味が、まさにその開示において用いられるものと対立する範囲において、例示的開示における用語の意味は、制御することを意図する。
【技術分野】
【0001】
優先権出願
この出願は、2008年6月6日に出願された米国仮出願番号61/059,321の優先権を主張し、その出願の全体の開示は、すべての目的のために参照によってここに援用される。
【0002】
技術分野
ここに記述される技術のある特定の例は、熱量計に向けられている。より特定的には、ある特定の実施の形態において、高い加熱レートおよび冷却レートで走査するように構成された示差走査熱量計が記述される。
【背景技術】
【0003】
熱量計は、化学または物理プロセスの間に必要とされ、あるいは放出される熱の定量的測定を行なう装置である。熱量計は、たとえば、熱容量、生成(発熱)または消費(吸熱)され得る反応熱を測定するために用いられ得る。熱量計は、また、相変化、結晶化過程等を含むがこれらに限定されない物理的遷移を測定するために用いられ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
1つの局面において、熱量計が提供される。ある特定の例において、熱量計は、薄膜サンプルセンサと、薄膜基準センサと、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラとを備える。
【0005】
ある特定の実施形態において、第1のコントローラは、比例積分微分コントローラである。いくつかの例において、第2のコントローラは、アナログ比例コントローラであり、または、ある例では、比例積分微分コントローラである。いくつかの例において、第1および第2のコントローラは、同じコントローラであり得る。たとえば、コントローラは基準センサから(たとえば基準センサのみから)温度信号を受信するように構成された第1の制御ループを含み得る。コントローラは、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与え得る。コントローラはまた、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信するように構成された第2の制御ループを含み得る。コントローラは、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサに差分パワーを与える(たとえばサンプルセンサのみに差分パワーを与える)。他の例において、熱量計は、さらに、選択された加熱レートおよび/または冷却レートを有する温度プログラムを用いて設定された記憶媒体を備え得る。ある特定の実施形態において、温度プログラムの加熱レートは、少なくとも10ケルビン/秒であり得る。ある例において、薄膜サンプルセンサおよび薄膜基準センサの各々は、XI−296,XI−270,XI−272またはXI−292センサであり得る。ある特定の例において、比例コントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートでの温度変化を検出するように構成されてもよい。
【0006】
さらなる局面において、熱量計のための制御システムが開示され、熱量計は、サンプルセンサおよび基準センサを備え、制御システムは、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサにパワーを与えるように構成された第1のコントローラと、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるために第2の制御信号を生成するように構成された第2のコントローラとを備える。
【0007】
ある特定の実施形態において、第1のコントローラは、比例積分微分コントローラであってもよく、第2のコントローラはアナログ比例コントローラである。ある特定の例において、第1のコントローラおよび第2のコントローラは、各々薄膜サンプルセンサおよび薄膜基準センサにパワーを与えるように構成され得る。いくつかの例において、第2のコントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートでの温度変化を検出するように構成され得る。
【0008】
他の局面において、基準センサおよびサンプルセンサを含む熱量計の制御方法が開示される。ある特定の例において、方法は、第1のコントローラを用いて第1の制御信号を生成するステップを備え、第1の制御信号は、第1のコントローラによる熱量計の基準センサのみからの温度信号の受信に基づく。いくつかの例において、方法は、さらに、生成された第1の制御信号に基づいて、基準センサおよびサンプルセンサにパワーを与えて基準センサおよびサンプルセンサの平均温度を制御するステップを備える。他の例において、方法は、さらに、第2のコントローラを用いて第2の制御信号を生成するステップを含み得る。第2の制御信号は、基準センサとサンプルセンサとの間の温度差を与えるために基準センサおよびサンプルセンサの各々からの温度信号の受信に基づく。さらなる例において、方法は、さらに、生成された第2の制御信号に基づいて、サンプルセンサのみに差分パワーを与えてサンプルセンサの温度を基準センサと実質的に同じ温度にするために加熱または冷却するステップを備え得る。
【0009】
ある特定の実施形態において、方法は、第1のコントローラを比例積分微分コントローラに構成するステップを含み得る。他の実施形態において、方法は、第2のコントローラをアナログ比例コントローラに構成するステップを含み得る。さらなる例において、方法は、10ケルビン/秒以上の加熱レートでサンプルセンサおよび基準センサを加熱するステップを含み得る。
【0010】
他の局面において、熱量計制御を促進する方法が提供され、方法は、制御モジュールを提供するステップを備える。制御モジュールは、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラを備える。ある特定の例において、制御モジュールは、また、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラを含み得る。
【0011】
さらなる特徴、局面、実施例および実施形態が、より詳細に以下に記述される。
ある特定の実施形態が、添付の図面を参照して以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ある特定の例に従う熱量計のブロック図である。
【図2】パワー補償示差走査熱量計に用いられる従来の制御システムの概略図である。
【図3】ある特定の例に従う、高い加熱レートでの使用に適した制御システムの概略図である。
【図4】ある特定の例に従う、薄膜センサ(XI-296、Xensor Integration、オランダ[1])の写真である。
【図5A】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図5B】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図5C】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図5D】ある特定の例に従う、ハイフェネーティッド装置のブロック図である。
【図6】ある特定の例に従う、高い加熱レートでの使用に適した制御システムのブロック図である。
【図7A】金属およびポリマーの試験のために組立てられた熱量計の概略図である。
【図7B】金属およびポリマーの試験のために組立てられた熱量計の概略図である。
【図7C】ある特定の例に従う、2つのセンサを含むサーモスタットの写真である。
【図8A】ある特定の例に従う、金属粒子の試験の結果を示す図である。
【図8B】ある特定の例に従う、金属粒子の試験の結果を示す図である。
【図9A】ある特定の例に従う、異なる加熱レートでの金属粒子の溶融の結果を示す図である。
【図9B】ある特定の例に従う、異なる加熱レートでの金属粒子の溶融の結果を示す図である。
【図10A】ある特定の例に従う、異なるゲイン設定でのサンプルセンサおよび基準センサの温度差を示す図である。
【図10B】ある特定の例に従う、異なるゲイン設定でのサンプルセンサおよび基準センサの温度差を示す図である。
【図11A】ある特定の例に従う、ポリマーの溶融および冷却を示す図である。
【図11B】ある特定の例に従う、ポリマーの溶融および冷却を示す図である。
【図12】ある特定の例に従う、等温結晶化実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
ここに開示されるある特定の実施の形態は、熱量計に向けられており、その熱量計は、従来の熱量測定装置を用いた測定のために、高い加熱および冷却レートで走査して、たとえば時間スケールでとても速く起こる、急速に生じる化学および物理プロセスを測定するように構成される。たとえば、ここで開示される装置のある特定の例は、速い時間スケールでの化学および/または物理プロセスを受ける有機材料および無機材料と同様に、ポリマー、繊維、薄膜、熱硬化性樹脂、エラストマー、複合材料、調合薬、食品、化粧品を特徴付けるために用いられ得る。装置は、ガラス転移温度(Tg)、溶融温度(Tm)、結晶化時間および温度、溶融および結晶化の熱、結晶度%、酸化安定度、組成分析、熱容量、キュア(cure)の熱、キュアの完全性、キュア%、純度、熱安定性、多形性(polymorphism)、リサイクルまたはリグラインドの熱設定温度を含むがこれに限定されないさまざまな特性を決定するために用いられ得る。これらおよび他の材料ならびにプロセスは、ここに開示される装置および方法を用いて分析され得る。ここに開示される制御システムおよび装置のある特定の実施形態の応答時間は、5ミリ秒未満であり得る。その時間は、分析される材料および装置の正確な構成に依存する。
【0014】
ある特定の実施の形態において、示差走査熱量測定(DSC)のために構成された熱量計が提供される。DSCにおいて、サンプルおよび基準物質が用いられる。サンプルおよび基準物質の温度を増大させるために必要とされる熱量における差分は熱入力(温度)の関数として測定される。サンプルおよび基準物質は、分析の間、実質的に同じ温度に維持される。サンプルホルダ温度が時間の関数として増大するように、温度プログラムが実現され得る。望ましい温度範囲にわたり明確に定義され、あるいは既知の熱容量を有するように基準物質が選択される。これまでに存在する熱量計と異なり、ここに開示される熱量計のいくつかの実施例はアナログパワー補償技術を実現する。そのようなパワー補償を実現する図示された装置は、任意選択的には制御およびデータ処理アルゴリズムおよび測定に従ってそのようなパワー補償を実現するが、より詳細に以下に説明される。
【0015】
DSCの特定の種類において、パワー補償が用いられ得る。パワー補償は、サンプルおよび基準物質を実質的に同じ温度に維持するために用いられる。動作の間、サンプルが受けるまさにそのプロセスに依存して、サンプルまたは基準物質のいずれか一方においてパワーが与えられ(または取除かれ)得る。たとえば、サンプルが吸熱プロセスを受ける場合には、基準物質に与えられたパワーが減少して、基準物質をサンプルと実質的に同じ温度に維持し得る。代替的には、サンプルに与えられるパワーが増大し得る。サンプルが発熱プロセスを受ける場合には、基準物質に与えられるパワーは増大して基準物質をサンプルと実質的に同じ温度に維持し得る。代替的には、サンプルに与えられたパワーが減少して、サンプルと基準物質とが実質的に同じ温度に維持され得る。
【0016】
ある特定のシステムにおいて、従来のDSCシステムは、ミリ秒未満の時間スケールで起こる化学および物理変化を研究するためには十分な正確性を与えないかもしれない。たとえば、ポリマー、調合薬、(アモルファス)金属合金準安定は、例外よりもむしろ標準であり、そのようなシステムの反応速度の研究は、重要な事項となってきた。準安定に関連する、さまざまな温度および時間に依存するプロセスの反応速度の完全な理解にとって、新しい技術に対する緊急の必要性が存在する。同じように、高い加熱レートを用いることを可能にする装置に対する大きな必要性が存在する。加えて、高い冷却レートでの処理を含む、製品寿命の間に起こるような現実の条件を模倣できることが重要である。
【0017】
ある特定の実施の形態において、パワー補償DSCのブロック図が、図1に示される。装置100は、サンプルホルダ110と基準物質ホルダ120とを含む。サンプルホルダ110と基準物質ホルダ120の各々は、各々が有する加熱素子(図示せず)を含む。サンプルにおいて、発熱(熱生成)または吸熱(熱吸収)変化が起こる場合、パワーまたはエネルギが、サンプルおよび基準物質の一方または両方に与えられるかまたは取除かれて、サンプルにおいて生じるエネルギの変化が補償される。コントローラ130は、パワーが与えられるべきか、または取除かれるべきかを決定するとともに、どの要素にそのようなパワーが与えられまたは取除かれるべきであるかを決定するために用いられる。実際、このパワー補償は、すべての時間において「熱ヌル(thermal null)」状態を維持する。システムを平衡状態に保つために必要とされるパワーの量は、サンプルにおいて生じるエネルギの変化に直接的に比例する。
【0018】
DSCのための典型的な制御システム200が図2に示される。制御システムは、2つの別個の制御ループを含む:第1の制御ループ210は、標準ホルダおよび基準ホルダの平均温度を制御するように構成され、第2の制御ループ220は、サンプルホルダおよび基準物質ホルダの間の温度差を制御するように構成される。平均制御ループ210は、サンプル温度および基準温度の数値平均を、温度プログラム205と比較する。平均パワーは、基準センサとプログラムされた温度との間の差分によって定義される。平均制御ループ210は、配線または電気的コネクション214および216をそれぞれ介してサンプルセンサ211および基準センサ221に電気的に結合されるコントローラ212を含む。コントローラ212は、また、電気的コネクション213および215を介して基準センサ221に電気的に結合される。いくつかの例において、コントローラ212は、他の装置にパワーを提供し、または信号を送り、216および215としてそれぞれ示される電気的コネクションを介してサンプル211および基準物質221の両方のヒータにパワーを与える。図2においては、パワーを与えるとともに温度を検出するための別々の接続を有するように示されているが、コントローラは、サンプルホルダ211への単一の電気的コネクションと、基準物質ホルダ221への単一の電気的コネクションとを有していてもよい。サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との間の温度に偏差があるならば、平均制御ループは、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との両方に同じ電気的出力を提供するように構成される。フィードバックにより、測定された平均温度とプログラムされた温度との間の差分が最小化される。もし温度プログラムにおいて望まれる温度がサンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との平均温度よりも大きいならば、より多くのパワーがヒータの各々に与えられるであろう、そしてヒータは、温度計のように、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに組込まれて、システムのための短い応答時間を与える。
【0019】
図2に示されたDSCの差分温度制御ループ220は、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221との両方の間の温度差を測定するように構成される。差分温度制御ループ220は、配線224および223をそれぞれ介してサンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに電気的に結合されるコントローラ222を含む。コントローラ222は、また、サンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに与えられる差分パワー増分を調整するために、コネクション226および225をそれぞれ介してサンプルホルダ211と基準物質ホルダ221とに結合され得る。たとえば、サンプル温度および基準温度を表わす信号は、たとえばホルダの白金温度計によって測定されるが、差分温度増幅器に与えられる。差分温度増幅器出力は、次に基準ヒータおよびサンプルヒータに与えられる差分パワー増分を、それらの間の任意の温度差を補正するために、必要な方向および大きさで調整するであろう。たとえば吸熱遷移のために、サンプルホルダがより低い温度の場合、追加のパワーがサンプルホルダに与えられ得る。差分を最も効果的に最小化するとともに測定システムの厳密な対称性を維持するために、同じ量のパワーが、基準側から差引かれ得る。このパワーが記録され、平均温度プロファイルと一緒に、それはサンプルへの熱の流れについての完全な情報を提供する。この方式は、たとえば、ミリグラムのサンプルで8K/s走査レートで動作するパーキンエルマー(PerkinElmer)DSC熱量計で実現される。この制御は、サンプルカップと基準カップとの間の残りの温度差からの差分の熱流を比較的簡単に決定することを可能にする。パーキンエルマー差分パワー補償DSCにおいて、サンプルにおける吸熱(発熱)の事象の間に必要とされる(または放出される)追加の熱は、最終的には、平均コントローラによって与えられるが、それは、差分コントローラがその対称的動作により、システムから熱を与えたり奪ったりしないためである。この構成において、両方の制御ループのコントローラは、プログラムされた温度からの偏差を避けるために十分早く反応しなければならない。したがって、第1の制御ループ210と第2の制御ループ220との両方のコントローラに比例コントローラを使用することは一般的な方法である。
【0020】
ここに開示されるある特定の実施形態において、図2に示された制御ループ(および、より特定的には、平均コントローラ212)は、適切な測定を提供するために、十分に高い加熱レート、たとえば10K/秒を超えるレートのような高い加熱レートで正確に応答しなくてもよい。たとえば、もし、より高い加熱レートおよび、より高い感度が望まれるならば、平均信号は、もし図2の制御システムを用いて生成されるならば、図2に示された従来の制御システムを用いては検出されないであろう、ナノグラム量のサンプルからの小さくて素早い事象を含んでもよい。そのような問題を克服するために、図3に示されるような制御システムが用いられ得る。図2の制御システムと同様に、制御システム300は、2つの制御ループ310および320を備えるが、各制御ループの構成および/または機能は、図2に示されたそれらの制御ループと異なる。制御ループ310および320の間の任意のクロストークを避けるために、平均制御と差分制御とを分離することが有益であり得る。たとえば、制御基準温度は、サンプルホルダの平均温度を測定することなく測定され得る。すなわち、第1の制御ループ310のサンプル温度リード312は、図3において「X」を用いて概略的に示されるように、省略され得る。そして、基準コントローラ311は、サンプルホルダ316の平均温度を測定しない。平均温度制御ループ310において、コントローラ311は、サンプルホルダ326の温度を監視するためのいかなる直接的な電気的接続を有することなく、リード313を介して基準物質ホルダ316にのみ電気的に結合され得る。この構成は、基準温度制御のために、比較的遅いが正確なPIDコントローラの使用を可能にする。たとえば、基準温度の制御のための時間分解能は、差分コントローラ321に比較して数桁(orders of magnitude)遅くてもよい。さらに、基準コントローラ311の出力パワー範囲(ダイナミックス)は、差分コントローラ321よりも数桁大きい。たとえば、差分温度制御ループ320は、約3msの時定数を有してもよく、一方、平均温度制御ループ310は、約20msの時定数を有する。基準コントローラ311の積分部は、プログラム温度と基準温度との間の差分を実際的に0に確定する。基準センサとサンプルセンサとの間の高い対称性を仮定すると、基準センサにおける温度プロファイルと同様の、サンプルセンサにおける温度プロファイルは、基準コントローラ311の実質的に同じ出力電圧を、サンプルセンサ326および基準センサ316のヒータに、たとえばコネクション314および315を介して印加することによって、予想外に達成され得る。
【0021】
差分制御ループである第2の制御ループ320において、コントローラ321は、コネクション322および323をそれぞれ介してサンプルセンサ326および基準センサ316に電気的に結合されるとともに、基準センサ温度とサンプルセンサ温度との間の任意の差分を検出するように構成される。コントローラ321は、次にその出力電圧を、単にサンプルセンサ326に加える、またはサンプルセンサ326から減ずることができる。すなわち、基準物質ホルダ316への差分パワーは、基準物質ホルダ316への差分パワー接続に対して「X」で示されるように、コントローラ321を用いて監視され、検出され、使用され、または変更されない。この構成をコントローラ311および321の両方の間での全体の分離を与えるために用いることにより、高い精度に従う高い加熱レートの予期しない結果が達成され得る。さらに、この構成は、基準温度の制御のための正確な(しかし遅い)PIDコントローラおよび差分コントローラのための高感度で速い比例コントローラの使用を可能にする。
【0022】
ある特定の例において、図3に示された制御システムは、1K/秒以上、より特定的には、約10K/秒以上、たとえば約1〜10,000K/秒、より特定的には10〜1000K/秒、たとえば10〜500K/秒、10〜100K/秒またはこれらに示した範囲内での任意の値の加熱レート(または冷却レート)を用いたサンプルの化学的プロセスまたは物理的プロセスを監視するために用いられ得る。そのような高い加熱レートおよびここに開示される熱量計は、従来の熱量計を用いた研究では時間スケールにおいてあまりにも速く起こる化学的および物理的遷移の研究を可能にする。いくつかの例において、加熱レートが時間の関数としての温度勾配になる、開始温度と最終温度との間の直線的増加が実現されるように、加熱が直線的であってもよい。同様に、一旦、最終温度に到達すれば、冷却レートは、加熱レートと同じまたは同様であってもよいが、サンプルホルダおよび基準物質ホルダの冷却の間のプロセスを研究するために用いられてもよい。他の例において、加熱および/または冷却は、段階的、非線形でもよく、または、研究される材料およびそこからの望まれる情報に依存する、他の形式をとってもよい。
【0023】
ある特定の実施形態において、ここに記述される制御システムは、所望の加熱レート(または冷却レート)に依存して、従来の熱量測定坩堝または薄膜サンプルホルダとともに用いられ得る。たとえば、高い加熱レートは、測定セルの質量によって制限され得る。ヘイガー(Hager)、アレン(Allen)および共同者、ならびにロピーンディア(Lopeandia)らによって記述されるような薄膜を用いることにより、ここに開示される制御システムに従って、微少量のサンプルが高い加熱および冷却レートを用いて研究され得る。さらに、8...102K/sの間の範囲に及ぶDSCと高速走査熱量測定技術との間における走査レートでの隔たりは、多くの材料処理ステップによる対象の領域がこの冷却レート範囲内にあるが、埋められ得る。実例となる薄膜センサは、Xensor Integration(オランダ)から商業的に入手可能なXI−296,XI−270,XI−272およびXI−292を含む薄膜センサ、および、たとえば、ここに記述されたvan Herwaarden A. W.の論文に記載されたセンサを含むがこれらに限定されるものではない。
【0024】
薄膜センサのある特定の実施形態において、薄膜の大きさおよび寸法は、その薄膜が熱量測定において用いられる従来の坩堝またはカップと比較して低い熱容量を有するように選択され得る。たとえば、約1グラムの質量を有するカップを用いることに代えて、ここに開示された装置は、単一センサ高速走査熱量計に用いられるような、たとえばXI−296センサのような、2つの高感度かつ低い転移(addenda)熱容量薄膜センサを含み得る。ある特定の実施形態において、測定セルは、たとえばTO−5ハウジングのような標準的な集積回路ハウジングに固定された約2.5x5mm2の大きさを有するシリコンフレームを含み得る。薄膜を有する熱量計はまた、たとえば図4A〜4Dに示されるように独立して立っているSiNメンブレン(たとえば0.5μmの厚み)の中央に取付けられたヒータおよびサーモパイルを含み得る。図4Aは、TO−5ハウジングに実装されたチップ(暗色)を示す。図4Bにおいて、シリコンフレームを伴う厚いチップ(暗色)および独立して立っているSiNメンブレン(チップ中央の明るい領域)が示される。チップのより詳細な外観が図4Cに示され、図4Cでは、中央における測定領域への配線が見られる。メンブレンの中央におけるヒータ(厚い縞)とサーモパイル(薄い縞)との配置が図4Dに示される。加熱領域の大きさは、約8ミクロンから約100ミクロンまで変化し得るものであり、たとえば約8ミクロンから10ミクロンまたは約60ミクロンから80ミクロンまで変化し得る。所望の数のサーモパイルは加熱領域に配置されて高速で正確な温度測定を可能にし得る。サーモパイルは、適切なリソグラフィ技術およびp型ドープおよびn型ドープされたシリコンを用いて生成され得るとともに、温接合は、まさに2つのヒータ縞の間に配置される一方で、冷接合はシリコンフレームの上に配置される(図4Cにおける、独立して立っているメンブレンの左および右)。サーモパイルは、典型的には薄膜の温度を測定することができる、および/または薄膜にまたはその近くに熱を与え/奪う一連の熱電対を含む。用いられるサーモパイルの的確な種類は、さまざまであり得るとともに、サーモパイルの種類の実例は、半導体サーモパイルおよび1以上の知られている種類の熱電対を含むサーモパイルを含むがこれに限定されるものではない。たとえば、実例的な熱電対の種類は、たとえばANSI C96.1−1964に記載されるものであるが、タイプB(白金/30%ロジウム(+)対白金/6%ロジウム(−))、タイプE(ニッケル/10%クロム(+)対コンスタンタン(−))、タイプJ(鉄(+)対コンスタンタン(−))、タイプK(ニッケル/10%クロム(+)対ニッケル/5%アルミニウム−シリコン(−))、タイプR(白金/13%ロジウム(+)対白金(−))およびタイプS(白金/10%ロジウム(+)対白金(−))を含むがこれらに限定されない。さらなる熱電対は、たとえば純粋な白金、白金パラジウム、白金イリジウム、白金タングステンおよびタングステンレニウム熱電対のような熱電対であるが、それらは、この開示の恩恵により、当業者によって選択されるであろう。ここに詳細に説明されるように、多くの異なる種類の適切な薄膜センサが、数多くのサプライヤから商業的に入手可能である。
【0025】
いくつかの例において、薄膜は、中央における「温」接合およびセンサのフレーム上の「冷」接合を有する加熱領域の中に配置された5または6の半導体サーモパイルで構成され得る(図4Cおよび4Dを参照)。約10K/秒以上の加熱レートが用いられるような高速の走査実験のために、サンプルは加熱される薄膜領域の頂上に配置され、したがって薄膜サンプルのサンプル温度についての信頼できる情報が得られることができる。そうでない場合、加熱領域の外部の強い温度勾配が測定に不利に影響するかもしれない。
【0026】
薄膜センサを実現するある特定の実施の形態において、1以上の適切なアルゴリズムが、生成されるかあるいは失われる熱の量を決定するために用いられ得る。たとえば、ここに開示された装置における制御ループの分離は、パワー補償DSCにおいて一般的に用いられるような対称パワー補償方式に比較して、サンプルの熱容量の計算をより難しくするが、より高い加熱レートを信頼性のある平均温度制御で可能にする。一般的に、ヒータと薄膜サンプルとの間の熱接触は、接着力および任意の残余熱損失を無視できるために十分によい。薄膜ヒータおよびサーモパイルの熱容量および熱抵抗は、また、無視できるほどに小さい。セルの主な熱容量は、メンブレンの加熱された部分の効果的熱容量であり、それは室温において約2×10-7J/Kである。システムは、次のパラメータによって記述され得る:セルの中央部分の有効熱容量C0、サンプルの熱容量C、およびセルの中央部分と環境との間の熱交換係数ξ。約1kOhm抵抗の抵抗薄膜ヒータは、熱流量P0(t)を与え、その熱流量は薄膜/サンプルインターフェイスに供給されて、サンプル、メンブレンおよび周囲の気体に伝わる。これらの変数を用いて、熱平衡の式は、次のように表わされることができる。
【0027】
【数1】
【0028】
T(t)およびT0は、それぞれ加熱領域および環境の温度であり、P0は、システムに与えられるパワーであり、CおよびC0は、それぞれサンプルおよび薄膜センサの熱容量である。完全に対称な差分システム(両方のセンサが常に実質的に同じ温度である)を仮定すると、環境への熱損失(式の右辺の第2項)および両辺の転移熱容量C0が補償される。したがって、サンプルセンサおよび基準センサに対する式1の差分は次の式を与える。
【0029】
【数2】
【0030】
Pdifferenceは、サンプルセンサおよび基準センサに供給されるパワーの差分を示す。Pdifferenceは、両方のセンサの間の残りの温度差および、たとえば図7Bのように、ここに開示された熱量計を用いて測定される他の量から得られることができる。
【0031】
ある特定の実施の形態において、ここに開示される熱量計は、熱測定以外の測定がサンプルにおいて実現され得るように他の分析装置に活用され(conjugated)あるいは結合(hyphenated)されてもよい。いくつかの例において、1以上の他の分析装置が、分析される材料の追加の分析のため、あるいは熱量測定分析の間に発生するガスの分析のために、熱量計に活用されうる。実例としての分析装置は、質量分析器(MS)、赤外(IR)分光計、ガスクロマトグラフ(GC)およびこれらの技術の組合せを含むが、これに限定されるものではない。いくつかのハイフェネーティッド装置を示すブロック図が図5A〜5Dに示される。そのようなハイフェネーティッド装置は、特に、発生したガスの分析にとって有益であり得、その分析においては、1以上のガスが熱量測定の間にサンプルから発生する。そのようなガスは、たとえば、真空ポンプ、ファン、ヘッドスペースサンプリング等のような適切な装置を用いて、別の計測器または装置へと導かれあるいは引寄せられ得る。いくつかの例において、加熱されたチューブが、熱分析装置においてガスとして発生する種が、MSに転送される間はガスとして維持され得るように、熱量計とMSとの間の流体結合を提供する。熱分析装置からMSへの種の転送のための追加の適した装置および方法は、この開示の恩恵により、当業者にとって直ちに選択されるであろう。
【0032】
図5Aを参照して、システム500は、熱量計510を備え、熱量計510は図においてCALと示され、質量分析計515に結合される。熱量計510は、ここに開示されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。質量分析計515は、たとえば、PerkinElmer Life and Analytical Sciences, Inc. (Waltham, MA)から商業的に入手可能な質量分析計のように、化学分析において一般的に用いられる任意の質量分析計であってもよい。実例としての質量分析計は、磁場偏向型質量分析器、四重極型質量分析器、イオントラップ型分析器、飛行時間型分析器を用いる、あるいは実現するように構成されたもの、脱離エレクトロスプレーを実現するもの、および異なる質量対電荷比を用いて種を分離し得る他の適切な質量分析器を含むがこれに限定されるものではない。熱量計510と質量分析計515との間の圧力差を補償するために1以上のバルブ、継手あるいは装置を含むことが望ましいかもしれない。そのような圧力補償は、この開示の恩恵によって当業者にとって達成されるであろう。
【0033】
図5Bを参照して、システム520は、赤外(IR)分光計530に結合された熱量計525を備える。熱量計525は、ここに記述されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。赤外分光計は、たとえば、連続波赤外分光計、単一または二光束赤外分光計、またはフーリエ変換赤外分光計のような干渉分光計といったような、一般的に用いられる赤外分光計であり得る。熱量計をIR装置に結合するための適切な他の赤外分光計および適切な方法が、この開示の恩恵によって、当業者には理解されるであろう。
【0034】
図5Cを参照して、システム540は、ガスクロマトグラフィシステム(GC)550に結合された熱量計545を備える。熱量計545は、ここに記述されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。GC550は、熱量計515から発生したガスを受けるとともに、その発生したガスの中から種を分離する。たとえば、熱量分析の間に発生したガス性の反応生成物を分離するが望ましいかもしれない。ここに開示された熱量計とともに用いるための適切なGC装置を選択することは、この開示の恩恵を受けた当業者の能力の範囲内であるだろう。
【0035】
図5Dを参照して、システム560は、ガスクロマトグラフ570と結合された熱量計565を備え、ガスクロマトグラフ570自身は、質量分析計575に結合される。熱量計565は、ここに記述されるように、たとえば別個の制御ループを有するように構成され得る。GC570とMS575とは、各々が、たとえば、図5Aおよび5Cを参照して議論される実例としてのGCおよびMS装置または他の適切なGCおよびMS装置の各々であり得る。図5A〜5Dに示された実例としてのシステムは、また、たとえば、オートサンプラ、フィルタ、分析システムおよびソフトウェア、ならびにコンピュータインターフェイス等のような、追加の要素を含み得る。
【0036】
ある特定の例に従うと、ここに記述される計測器の構成が、少なくとも一部において、コンピュータシステムで制御されあるいは用いられ得る。コンピュータシステムは、たとえば、ユニックス(Unix(登録商標))、インテルのペンティアム(登録商標)タイププロセッサ、モトローラのパワーPC(PowerPC)、サン(Sun)のウルトラスパーク(UltraSPARC)、ヒューレットパッカードのPA−RISCプロセッサ、あるいは任意の他の種類のプロセッサに基づくような汎用コンピュータであり得る。1以上の任意の種類のコンピュータシステムが、この技術のさまざまな実施の形態に従って用いられてもよいことが理解されるべきである。さらに、システムは、単一のコンピュータに存在してもよく、あるいは通信ネットワークによって接続された複数のコンピュータの間に分散されていてもよい。1つの実施の形態に従う汎用コンピュータシステムは、データ取得、熱量測定制御、データ分析等を含むがこれに限定されない任意の記述された機能を実行するように構成され得る。システムは、ネットワーク通信を含む他の機能を実行してもよく、本技術は任意の特定の機能または一連の機能を有するものと限定されないことは理解されるべきである。
【0037】
たとえば、さまざまな局面が、汎用コンピュータシステムにおいて実行される専用のソフトウェアとして実現され得る。コンピュータシステムは、ディスクドライブ、メモリ、またはデータを保存するための他の装置のような、1以上の記憶装置に接続されるプロセッサを含み得る。メモリは、典型的には、プログラムおよびコンピュータシステムの動作中のデータを保存するために用いられる。コンピュータシステムの構成要素は、1以上のバス(たとえば、同じマシン内に集約された要素間)および/またはネットワーク(たとえば別個の離散的なマシンに存在する要素の間)を含み得る接続機構によって結合され得る。接続機構は、通信(たとえばデータ、指令)が、システム要素間で交換されることを可能にする。コンピュータシステムは、典型的には、記憶および/または処理のためにシステムからコンピュータシステムに電気信号が与えられ得るように、システムでのインターフェイスに電気的に結合される。
【0038】
コンピュータシステムは、また、1以上の入力装置、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、マイクロフォン、タッチスクリーン、アナログデジタル変換器(ADC,DAQボード)および、1以上の出力装置、たとえば、印刷装置、ステータスまたは他のLED、表示スクリーン、スピーカ、デジタルアナログ変換器(DACボード)等を含み得る。さらに、コンピュータシステムは、当該コンピュータシステムを通信ネットワーク(さらに、あるいは代替的に、接続機構)へと接続する1以上のインターフェイスを含み得る。コンピュータの記憶システムは、典型的には、コンピュータが読取および書込可能な、信号が記憶される不揮発性の記録媒体を含み、その記録媒体は、プロセッサによって実行されるためのプログラム、またはプログラムによって実行されるために媒体上または媒体中に記憶される情報を定義する。たとえば、加熱プロファイル、加熱レート、冷却レート等が、媒体中に記憶され得る。媒体は、たとえば、ディスクまたはフラッシュメモリであってもよい。典型的には、動作中において、プロセッサはデータを不揮発性記録媒体から別のメモリへと読出させるが、当該メモリは、不揮発性記録媒体よりも、プロセッサによる情報へのアクセスを速くすることができる。このメモリは、典型的には、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)またはスタティックメモリ(SRAM)のような揮発性のランダムアクセスメモリである。それは、記憶システムまたはメモリシステムの中に配置され得る。プロセッサは、一般的に集積回路メモリ内でデータを操作するとともに、処理が完了した後にそのデータを媒体にコピーする。媒体と集積回路メモリ素子との間のデータ移動を管理するためのさまざまな機構が知られており、その技術はこのように制限されるものではない。本技術は、特定のメモリシステムまたは記憶システムに限定されるものではない。
【0039】
コンピュータシステムは、また、たとえばアプリケーション専用集積回路(ASIC)のような、専用にプログラムされた、専用の目的のハードウェアを含み得る。本技術の局面は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアまたはそれらの任意の組合せにおいて実現され得る。さらに、そのような方法、動作、システム、システム要素およびそれらの構成要素は、上記のコンピュータシステムの一部として、または独立の要素として実現され得る。
【0040】
いくつかの例において、コンピュータシステムは、高級コンピュータプログラミング言語を用いてプログラム可能な汎用コンピュータシステムであってもよい。コンピュータシステムは、また、専用にプログラムされた、専用の目的のハードウェアを用いて実現されてもよい。コンピュータシステムにおいて、プロセッサは、典型的には、インテル社から入手可能な周知のペンティアム(登録商標)級のプロセッサのような商業的に入手可能なプロセッサである。他の多くのプロセッサが利用可能である。そのようなプロセッサは、通常、たとえばマイクロソフトから入手可能な、ウィンドウズ(登録商標)95、ウィンドウズ(登録商標)98、ウィンドウズ(登録商標)NT、ウィンドウズ(登録商標)2000(ウィンドウズ(登録商標)ME)、ウィンドウズ(登録商標)XPまたはウィンドウズ(登録商標)ビスタオペレーションシステム、アップルコンピュータから入手可能なマック(Mac)OSシステムX、サンマイクロシステムズから入手可能なソラリス(Solaris)オペレーティングシステム、またはさまざまなソースより入手可能なUNIX(登録商標)またはLinux(登録商標)オペレーティングシステムでもよいオペレーティングシステムを実行する。多くの他のオペレーティングシステムが用いられ得る。プロセッサに加えてあるいはプロセッサに代わり、コンピュータシステムは、たとえば8ビットまたは16ビットコントローラのようなコントローラを含んでいてもよい。32ビットまたはそれ以上のコントローラのような他のコントローラは、また、そのコンピュータシステムのプロセッサの代わりにまたは当該プロセッサに加えて用いられ得る。
【0041】
プロセッサおよびオペレーティングシステムは、ともに高級プログラミング言語が記述可能なアプリケーションプログラムのためのコンピュータプラットフォームを定義する。本技術が、特定のコンピュータシステムプラットフォーム、プロセッサ、オペレーティングシステムまたはネットワークに限定されるものではないことが理解されるべきである。また、本技術が、特定のプログラミング言語またはコンピュータシステムに限定されるものではないことが当業者にとって明らかであるべきである。さらに、他の適切なプログラミング言語および他の適切なコンピュータシステムもまた用いられることが可能であることは理解されるべきである。
【0042】
ある特定の例において、ハードウェアまたはソフトウェアは、認知アーキテクチャ、ニューラルネットワークまたは他の適切な実現手段を実現するように構成される。コンピュータシステムの1以上の部分は、通信ネットワークに結合された1以上のコンピュータシステムにわたり分散され得る。これらのコンピュータシステムは、また、汎用コンピュータシステムであり得る。たとえば、さまざまな局面が、サービス(たとえばサーバ)を1以上のクライアントコンピュータに提供し、あるいは分散システムの部分としての全体のタスクを実行するように構成された1以上のコンピュータシステムの間で分散し得る。さまざまな局面が、クライアント−サーバまたは、さまざまな実施の形態に従うさまざまな機能を実行する1以上のサーバシステムの間で分散された要素を含む多段(multi-tier)システムにおいて実行され得る。これらの要素は、通信プロトコル(たとえばTCP/IP)を用いた通信ネットワーク(たとえばインターネット)での通信を行なう、実行可能な、中間(たとえばIL)または解釈(たとえばジャバ(Java(登録商標)))コードであり得る。本技術は、特定のシステムまたはシステム群において実行されるものと限定されるものではないことはまた理解されるべきである。また、本技術は、いかなる特定の分散アーキテクチャ、ネットワークまたは通信プロトコルに限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0043】
さまざまな実施の形態が、オブジェクト指向プログラミング言語を用いてプログラム可能であり、オブジェクト指向プログラミング言語は、たとえば、スモールトーク(SmallTalk)、ベーシック(Basic)、ジャバ(Java(登録商標))、C++、エイダ(Ada)、LabView(ナショナルインスツルメンツ)またはC♯(Cシャープ)である。他のオブジェクト指向プログラム言語がまた用いられ得る。代替的には、機能、スクリプト、および/または論理プログラミング言語が用いられ得る。さまざまな局面が、非プログラム環境(たとえばブラウザプログラムのウィンドウにおいて表示されたときに、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)の外観を表示、あるいは他の機能を実行する、HTML、XMLまたは他のフォーマットで作成された文書)において実現され得る。他のいくつかの例において、所望の加熱レート、冷却レート、サンプリングレート等が、グラフィカルユーザインターフェイスの1以上のプルダウンメニューから選択され得る。他の局面は、プログラムされた、またはプログラムされていない要素、またはそれらの任意の組合せとして実現され得る。ある特定の例において、ユーザインターフェイスは、ユーザがたとえば、加熱レート、冷却レート、サンプルサイズ、初期パワー等のような所望のパラメータを入力できるように与えられ得る。ユーザインターフェイスに含まれる他の特徴は、この開示の恩恵によって、当業者に直ちに選択されるであろう。
【0044】
ある特定の実施形態において、熱量計のサンプルセンサおよび基準センサの温度を制御するように構成された制御システムが提供される。システムは、図6においてブロック図で示される。ある特定の例において、制御システム600は、第1のコントローラ610と第2のコントローラ620とを備え、各々のコントローラは、少なくとも1つの電気的コネクションを介してサンプルセンサ630と基準センサ640とに電気的に結合される。第1のコントローラ610は、コネクション612を介して基準センサ640から温度信号を受信するように構成され得る。第1のコントローラ610は、基準センサ640からの温度信号に基づいて、たとえば、単に基準センサ640からの温度信号に基づいて、第1の制御信号を生成し、その生成された第1の制御信号に基づいて、コネクション616および614をそれぞれ介して、サンプルセンサ630と基準センサ640との両方にパワーを与え得る。いくつかの例において、第2のコントローラ620は、コネクション626および628をそれぞれ介してサンプルセンサ630および基準センサ640から温度信号を受信するように構成され得る。ある特定の例において、第2のコントローラ620は、第2の制御信号を生成して、電気的コネクション624を介してその生成された第2の制御信号に基づき、サンプルセンサ630にのみ差分パワーを与え得る。ある特定の例において、サンプルセンサおよび基準センサは、各々、高い加熱レートの間に、それらの温度を急速に変化させるように反応し得る薄膜センサであってもよい。サンプルセンサおよび基準センサの各々は、典型的にはサンプルホルダ、加熱素子(たとえば、抵抗加熱素子)および温度検出素子(たとえば、熱電対、温度計等)を含む。サンプルセンサ630および基準センサ640に与えられる信号は、特定のセンサの加熱素子によって与えられる熱を増大(または減少)するために適切な信号であり、したがってサンプルセンサ620と基準センサ640とは、分析の間は、実質的に同じ温度に保たれる。いくつかの例において、第1のコントローラ610は、PIDコントローラであってもよく、第2のコントローラ620は、高い加熱レートによって起こり得る急速な熱の変化を検出可能な比例コントローラまたは他の適切なコントローラであってもよい。
【0045】
いくつかの例において、ここに開示されたシステムは、たとえばオートローダのような追加の要素を含んでもよい。オートローダは、システムがユーザの介入またはモニタなしで測定を実行できるように、サンプル(またはサンプルを含むセンサ)を順次システムに入れたり出したりするように構成され得る。オートローダは、確実にサンプル/センサを掴むことが可能なたとえばロボットアームおよび/またはモータを備え、それらをシステムにおける所望の位置へと運ぶ。システムは、演算増幅器、ゲイン制御装置等といった他の電子部品を含んでいてもよい。システムは、バーコードリーダを含んでいてもよく、それによって各サンプルがバーコードでコード化されて、各サンプルの測定がそれぞれのバーコードと関連付けられることができる。ここに開示された装置およびシステムにおいて含まれる追加の要素および特徴は、この開示の恩恵によって当業者により直ちに選択されるであろう。いくつかの例において、オートローダは、サンプルのみを運ぶように構成され得る一方で、他の例においては、オートローダは、サンプリングスペースへとセンサおよびサンプルを運んでもよい。
【0046】
いくつかの例において、熱量計を用いて物理的変化または化学的変化を測定するための方法が開示される。ある特定の例において、方法は第1のコントローラを用いて第1の制御信号を生成することによりサンプルセンサおよび基準センサを制御するステップを備え、第1の制御信号は、第1のコントローラによる、熱量計の基準センサのみからの温度信号の受信に基づく。いくつかの例において、方法はまた、生成された第1の制御信号に基づいて、基準センサおよびサンプルセンサにパワーを与えて、基準センサおよびサンプルセンサの平均温度を、たとえばサンプルセンサの温度を検出することなく制御するステップを備え得る。他の例において、方法は、また、第2のコントローラを用いて第2の制御信号を生成するステップを備え、第2の制御信号は、基準センサとサンプルセンサとの間の温度差を与えるために、基準センサおよびサンプルセンサの各々からの温度信号を受信することに基づく。ある特定の実施形態において、方法は、さらに生成された第2の制御信号に基づいて、サンプルセンサのみにパワーを与えて、サンプルセンサの温度を実質的に基準センサと同じ温度に加熱または冷却するステップを備え得る。ある実施例において、方法は、第1のコントローラを比例積分微分コントローラに構成するステップを含み得る。他の実施例において、方法は、第2のコントローラをアナログ比例コントローラに構成するステップを含み得る。ある実施の形態において、方法は、サンプルセンサおよび基準センサを10ケルビン/秒以上、たとえば、20,30,40,50,60,70,80,90または100ケルビン/秒以上の加熱レートで加熱するステップを含み得る。
【0047】
ある特定の実施形態において、熱量計制御を促進する方法が提供される。そのような方法は、たとえば、制御モジュールの形態でここに記述されたコントローラ(または制御ループ)構成を与えることによって実行され得る。ある特定の例において、方法は制御モジュールを与えるステップを含み、制御モジュールは、基準センサのみから温度信号を受信して、受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラおよび、サンプルセンサおよび基準センサの両方から温度信号を受信して、サンプルセンサおよび基準センサの両方から受信した温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラを備える。モジュールは、既存の熱量測定装置と接続可能であるかまたはそれ自身がここに記述されたようなモジュールのコントローラと結合可能なサンプルセンサおよび基準センサのためのスペースを含み得る。
【0048】
ある特定の実施例が、ここに開示される技術のよりよい理解を促進するために以下に詳細に記述される。
【0049】
実施例1−熱量計構造
2つの制御ループを有する制御システムを有する熱量計が次のように構築された:サンプルを有する1つの熱量センサとサンプルを有さないもう1つの熱量センサとの2つの熱量センサが、図7Cの写真に示されるようにサーモスタット内に配置され、図7Bに示されるように、制御された温度(たとえば35℃)で、選択された環境ガス(たとえば50kPaまたは100kPaのヘリウムまたは窒素)をともなった。センサは、サーモスタットと良好な熱接触の状態に置かれ、サーモパイルの冷接合温度がサーモスタットの温度に等しくされた。センサは、図7Aにおいて概略的に示されるとともに図7Bにおいて詳細に示されるように、2つの制御ループに接続された。増幅器X1(低出力ノイズ、1MHz帯域幅の電圧増幅器SIM910)が、基準センサ710からのサーモパイル出力を増幅し、それを、図3を参照して記述されるような、平均温度制御ループ310のための基準コントローラとして機能するPIDコントローラ730(アナログPIDであるSIM960)に与えた。PIDは、測定された基準センサの温度を、予め定められた温度プログラム750と比較する。PIDの出力は、基準センサ710のヒータに与えられ、そのヒータは、図7Bにおいて箱によって示される、直列のいくつかの線抵抗であり、ヒータを介して電流の測定が可能な1.5KOhmの定抵抗であった。式(2)において必要とされるように、パワーおよび最終的な差分パワーを再計算するために必要なすべての電圧は、Meilhaus ElectricからのDAQボードME4680isによって測定された。ボードは、また、温度プログラム(Uprog)を提供した。定抵抗と同様にヒータ間の電圧は、線抵抗に対する補償を行なうための4つ(3つ)の配線接続において測定された。増幅器X2(SIM910)は、直列に接続された基準センサ710のサーモパイルおよびサンプルセンサ720のサーモパイルに由来する温度差分信号を増幅した。増幅器X4(SIM911)は、X2からの出力を、PIDの出力に加えるために用いられた。X2およびX4は、図3を参照して記述される差分コントローラとして機能した。X4の出力は、サンプルセンサ720のヒータに与えられた。再度、パワーおよび差分パワーを再計算するための電圧および電流が、図7Bに示される構成を用いて測定された。X4の入力範囲は、1ボルトに制限された。したがって、PIDの出力(0−10V)は、抵抗R6を用いて10で割られ、X4を過負荷にしないようにした。R6の調整は、さらに、2つのセンサの間の小さな差分を補償することを可能にした。X3(SIM911)は、さらに温度差分信号を増幅し、差分パワーの計算に用いられた。すべての増幅器およびPIDは、スタンフォードリサーチシステムズ社(Stanford Research Systems, Inc.)によって製造され、これもスタンフォードリサーチシステム社からのメインフレームであるスモールインスツルメンテーションモジュール(Small Instrumentation Module)SIM900に配置された。後者は、GPIBインターフェイスを介してコンピュータからのすべての機能の完全な制御を可能にした。
【0050】
図7Aおよび7Bに示された装置の動作において、アナログ素子が、応答時間を短くして、それゆえに高いレートでの温度処理を可能にするために用いられた。上記のように、アナログPIDコントローラは、基準センサ温度を制御するとともに、両方のセンサに平均パワーを与えるために用いられた。時間の関数としてのプログラムされた温度は、ユーザにより定義された温度プロファイルに従って、コンピュータまたはコントローラからPIDに供給された。サンプル側のセンサの温度(サーモパイル電圧)が基準センサ温度と異なるとすぐに、その差分が増幅されて、サンプル側のヒータに与えられた電圧に加えられた。差分制御ループは、高周波アナログ増幅器からなり、それによって、1または数マイクロ秒のオーダでの非常に」高速の応答時間を有する。測定のために必要な差分パワーおよびすべての電圧は、たとえばADC/DACボードを用いて、コンピュータによって収集された。用いられたSRSのスモールインスツルメンテーションモジュールアナログデバイスフレームは、コンピュータからの分析のパラメータを制御することを可能にした。実験の管理およびデータ取得のためのプログラムは、Labview(商標)を用いて開発された。
【0051】
実施例2−金属テスト
実施例1に記述された装置をテストするため、小さな(ミクロンの直径)球状の金属粒子の溶融および結晶化が研究された。そのような一次遷移のために、熱容量および結果的な熱流曲線が知られている。粒子がたとえ小さくても、溶融の熱は、センサの転移熱容量に比較して大きい。したがって、プログラムされた温度プロファイルの強い偏差が、以下に記述されるように、低い差分ゲイン設定において検出された。計測器は、そのような遷移を検出するとともに熱量計を制御するために差分パワーを与えることが可能であった。
【0052】
実施例1の装置で測定された500K/sの加熱−冷却レートでの単一のスズ粒子(約350ナノグラム)の加熱の結果が図8Aおよび8Bに示され、以下に記述されるすべての測定において空のセンサである基準センサとともに示される。図8Aは、温度プログラムおよびサンプルセンサと基準センサとの間の残存する温度差を示す。図8Bは、図8Aに示されたデータからの熱容量を示す。加熱において、ピーク形状は、センサから比較的重いサンプルへの熱の移動によって決定される。周知のピークの直線的先端が図8Aに示される。ピークの幅から、溶融(熱移動)のための時間が29ミリ秒と見積もられた。冷却での結晶化が、約100Kの過冷却のためにより速くなった。結晶化は、ほぼデルタ関数として推定することが可能である。その計測器の応答時間は、3ミリ秒と見積もられた。結晶化ピークは、高速のプロセスを扱う際において装置のパワーを好適に示した。
【0053】
図9Aを参照して、以下に挙げたMinakov(Rev. Sci. Instr. 2007)の論文に記述されるような単一のセンサ素子、および実施例1の装置を用いた、単一の球状スズ粒子(約35ナノグラム)を加熱した結果が示される。図9Aにおいて、微少なスズのサンプルに対する溶融曲線が、能動的制御のない単一のセンサチップ熱量計と、異なる加熱レートでパワー補償された差分チップ熱量計とで比較された。単一のセンサ装置は、非常に丸い曲線を生成したが、実施例1の差分装置は、パワー補償DSCから知られるような溶融曲線のような、予想される三角形を与えた。差分設定は、計測器によって、より歪みのない、より現実的なデータを与えた。図9Bは、センサでのサンプルの配置を示す。
【0054】
実施例1の装置を用いた差分ゲイン設定の効果が、基準コントローラのための設定が一定に維持された状態で。約350マイクログラムのスズのサンプルを用いて決定された。単一の球状の粒子は1,000K/sの加熱レートおよび異なる差分ゲイン設定を用いて溶融した。図10Aは、異なるゲインでの残存する温度差を示す。図10Bは、図10Aに示されたデータから算出されたパワーの差分を示す。図10Bの挿入部は、ゲイン設定の関数としてのピーク領域を示す。低ゲイン設定において、溶融ピークは、高ゲイン設定に比較してかなり広くなっていた。十分でない熱がサンプルセンサ、およびその結果のサンプルに与えられていたため、サンプルが、センサとサンプルとの間の熱移動(熱抵抗)によって制限される限りにおいて速く溶解した。高ゲイン設定においてのみ限界に達し、ピークの限界での形状が図10Aにおいて観測された。低ゲイン設定において、基準センサおよびサンプルセンサの温度を等しくするようなパワーの決定のための必須条件は、溶融の間には満たされない。したがって、領域(図10Bの挿入部参照)は、より小さくなり、10より大きいゲイン設定に対してのみ真の値に達する。
【0055】
実施例3−ポリマー試験
ポリマーは、高いレートでの結晶化および溶融において強い運動効果(kinetic effect)を示すことが知られている。ポリマー溶融曲線の例が図11Aに示される。20ナノグラムのイソタクチックポリプロピレン(iPP)が、図11Bにおけるセンサに配置して示されるが、さまざまなレートで溶融および/または冷却された。図11Aの挿入部は、温度プロファイルを示す。200K/秒未満のレートでは、結晶化は、冷却時に観測された。結晶化ピークは、冷却レートの増加時に、より低い温度へとシフトして、200K/sより大きいレートで消滅した。加熱時には、10,000K/sの加熱レートにおいてさえ低温結晶化が観測された。低温結晶化と同様に約270Kでのガラス転移が、加熱レートの増加に伴い、より高い温度へとシフトした。加熱時のポリマー結晶の非常に高速な再組織化のため、溶融ピークの位置のみが、多少レートに独立であった。溶融ピークのレートに独立な位置は、システムにおける大きな温度のラグ(lag);その結果のパワー補償がないことを示した。図11Aに見られるように、たとえばガラス転移未満であり溶融以上である、遷移外の熱容量値は、基本的にレートに独立である。すなわち、この実施例は、装置が意図したように動作することを確定するものであった。
【0056】
冷却での結晶化がないために、イソタクチックポリプロピレンに対する等温結晶化実験は、任意の温度において実行され得る。この種の測定の例が図12に示される。323Kでの1000K/秒のクエンチの後に、サンプルセンサと基準センサとの間の温度差が約5ミリ秒内に釣り合った。その時間の後、図12の挿入部に示されるようなサンプルセンサの温度における増加に従って、発熱結晶化プロセスがそれ自身現われた。温度上昇があったとしても、その増加は約0.5K以下にしか過ぎないので、その測定は、等温であると推定し得る。
【0057】
以下の論文は、すべての目的のため、参照によってここに援用される。
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12.De Santis F, Adamovsky S, Titomanlio G, Schick C. Scanning nanocalorimetry at high cooling rate of isotactic polypropylene. Macromolecules 2006:39:2562-2567.
13.Minakov A, Wurm A, Schick C. Superheating in linear polymers studied by ultrafast nanocalorimetry. Eur Phys J E Soft Matter 2007:23(1):43-53.
14.Tol RT, Minakov AA, Adamovsky SA, Mathot VBF, Schick C. Metastability of polymer crystallites formed at low temperature studied by Ultra fast calorimetry* polyamide 6 confined in sub-micrometer droplets vs bulk PA6. Polymer 2006:47(6):2172-2178.
15.Minakov AA, Mordvintsev DA, Schick C. Melting and Reorganization of Poly(ethylene Terephthalate) on Fast Heating(1,000K/s). Polymer 2004:45(11):3755-3763.
16.Minakov AA, Mordvintsev DA, Schick C. Isothermal reorganization of poly(ethylene terephthalate) revealed by fast calorimetry(1000 K s-1;5 ms). Faraday Discuss 2005:128:261-270.
ここに開示された例の要素の導入において、冠詞「a」、「an」、および「the」は、1以上の要素があることを意味する。「comprising」、「including」、「having」は、オープンエンドであることを意図するとともに挙げられた要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。当業者は、この開示の恩恵によって、例のさまざまな構成要素が、他の例のさまざまな構成要素と交換あるいは代用可能であることを理解するであろう。
【0058】
ある特定の特徴、局面、例および形態が上記のように記述されたが、開示された実例としての特徴、局面、例および形態の追加、代替、変更および調整が、この開示の恩恵によって、当業者によって直ちに理解されるであろう。参照によってここに援用される出版物の任意の用語の意味が、まさにその開示において用いられるものと対立する範囲において、例示的開示における用語の意味は、制御することを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱量計であって、
薄膜サンプルセンサと、
薄膜基準センサと、
前記基準センサのみから温度信号を受信して、前記受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、
前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から温度信号を受信して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から受信した前記温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラとを備える、熱量計。
【請求項2】
前記第1のコントローラは、比例積分微分コントローラである、請求項1に記載の熱量計。
【請求項3】
前記第2のコントローラは、アナログ比例コントローラである、請求項2に記載の熱量計。
【請求項4】
選択された加熱レートを有する温度プログラムを用いて設定された記憶媒体をさらに備える、請求項3に記載の熱量計。
【請求項5】
前記温度プログラムの前記加熱レートは、少なくとも10ケルビン/秒である、請求項4に記載の熱量計。
【請求項6】
前記薄膜サンプルセンサおよび前記薄膜基準センサの各々は、XI−296センサ、XI−270センサ、XI−272センサ、またはXI−292センサである、請求項1に記載の熱量計。
【請求項7】
前記比例コントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートにおける温度変化を検出するように構成される、請求項2に記載の熱量計。
【請求項8】
サンプルセンサおよび基準センサを備える熱量計のための制御システムであって、前記制御システムは、
前記基準センサのみから温度信号を受信して、前記受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサにパワーを与えるように構成された第1のコントローラと、
前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から温度信号を受信して、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えるために第2の制御信号を生成するように構成された第2のコントローラとを備える、制御システム。
【請求項9】
前記第1のコントローラは比例積分微分コントローラであり、前記第2のコントローラはアナログ比例コントローラである、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記第1のコントローラおよび前記第2のコントローラは、薄膜サンプルセンサおよび薄膜基準センサにパワーを与えるように構成される、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記第2のコントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートでの温度変化を検出するように構成される、請求項8に記載の制御システム。
【請求項12】
前記第2のコントローラは、比例積分微分コントローラである、請求項8に記載の制御システム。
【請求項13】
基準センサおよびサンプルセンサを含む熱量計を制御する方法であって、前記方法は、
第1のコントローラを用いて第1の制御信号を生成するステップであって、前記第1の制御信号は、前記第1のコントローラによる、前記熱量計の前記基準センサのみからの温度信号の受信に基づいている、前記第1の制御信号を生成するステップと、
前記生成された第1の制御信号に基づいて、前記基準センサおよび前記サンプルセンサにパワーを与えて、前記基準センサおよび前記サンプルセンサの平均温度を制御するステップと、
第2のコントローラを用いて第2の制御信号を生成するステップであって、前記第2の制御信号は、前記基準センサと前記サンプルセンサとの間の差分温度を与えるために、前記基準センサおよび前記サンプルセンサの各々からの温度信号の受信に基づいている、前記第2の制御信号を生成するステップと、
前記生成された第2の制御信号に基づいて、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えて、前記サンプルセンサの前記温度を前記基準センサと実質的に同じ温度へと、加熱または冷却するステップとを備える、方法。
【請求項14】
前記第1のコントローラを、比例積分微分コントローラに構成するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のコントローラを、比例積分微分コントローラに構成するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
10ケルビン/秒以上の加熱レートで前記サンプルセンサおよび前記基準センサを加熱するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のコントローラは、アナログ比例コントローラである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
熱量計制御を促進する方法であって、前記方法は、制御モジュールを提供するステップを備え、前記制御モジュールは、基準センサのみから温度信号を受信して前記受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび前記基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から温度信号を受信して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から受信した前記温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えるよう構成された第2のコントローラとを備える、方法。
【請求項1】
熱量計であって、
薄膜サンプルセンサと、
薄膜基準センサと、
前記基準センサのみから温度信号を受信して、前記受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、
前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から温度信号を受信して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から受信した前記温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えるように構成された第2のコントローラとを備える、熱量計。
【請求項2】
前記第1のコントローラは、比例積分微分コントローラである、請求項1に記載の熱量計。
【請求項3】
前記第2のコントローラは、アナログ比例コントローラである、請求項2に記載の熱量計。
【請求項4】
選択された加熱レートを有する温度プログラムを用いて設定された記憶媒体をさらに備える、請求項3に記載の熱量計。
【請求項5】
前記温度プログラムの前記加熱レートは、少なくとも10ケルビン/秒である、請求項4に記載の熱量計。
【請求項6】
前記薄膜サンプルセンサおよび前記薄膜基準センサの各々は、XI−296センサ、XI−270センサ、XI−272センサ、またはXI−292センサである、請求項1に記載の熱量計。
【請求項7】
前記比例コントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートにおける温度変化を検出するように構成される、請求項2に記載の熱量計。
【請求項8】
サンプルセンサおよび基準センサを備える熱量計のための制御システムであって、前記制御システムは、
前記基準センサのみから温度信号を受信して、前記受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサにパワーを与えるように構成された第1のコントローラと、
前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から温度信号を受信して、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えるために第2の制御信号を生成するように構成された第2のコントローラとを備える、制御システム。
【請求項9】
前記第1のコントローラは比例積分微分コントローラであり、前記第2のコントローラはアナログ比例コントローラである、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記第1のコントローラおよび前記第2のコントローラは、薄膜サンプルセンサおよび薄膜基準センサにパワーを与えるように構成される、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記第2のコントローラは、10ケルビン/秒以上の加熱レートでの温度変化を検出するように構成される、請求項8に記載の制御システム。
【請求項12】
前記第2のコントローラは、比例積分微分コントローラである、請求項8に記載の制御システム。
【請求項13】
基準センサおよびサンプルセンサを含む熱量計を制御する方法であって、前記方法は、
第1のコントローラを用いて第1の制御信号を生成するステップであって、前記第1の制御信号は、前記第1のコントローラによる、前記熱量計の前記基準センサのみからの温度信号の受信に基づいている、前記第1の制御信号を生成するステップと、
前記生成された第1の制御信号に基づいて、前記基準センサおよび前記サンプルセンサにパワーを与えて、前記基準センサおよび前記サンプルセンサの平均温度を制御するステップと、
第2のコントローラを用いて第2の制御信号を生成するステップであって、前記第2の制御信号は、前記基準センサと前記サンプルセンサとの間の差分温度を与えるために、前記基準センサおよび前記サンプルセンサの各々からの温度信号の受信に基づいている、前記第2の制御信号を生成するステップと、
前記生成された第2の制御信号に基づいて、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えて、前記サンプルセンサの前記温度を前記基準センサと実質的に同じ温度へと、加熱または冷却するステップとを備える、方法。
【請求項14】
前記第1のコントローラを、比例積分微分コントローラに構成するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のコントローラを、比例積分微分コントローラに構成するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
10ケルビン/秒以上の加熱レートで前記サンプルセンサおよび前記基準センサを加熱するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のコントローラは、アナログ比例コントローラである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
熱量計制御を促進する方法であって、前記方法は、制御モジュールを提供するステップを備え、前記制御モジュールは、基準センサのみから温度信号を受信して前記受信した温度信号に基づいて第1の制御信号を生成して、サンプルセンサおよび前記基準センサに平均パワーを与えるように構成された第1のコントローラと、前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から温度信号を受信して、前記サンプルセンサおよび前記基準センサの両方から受信した前記温度信号に基づいて第2の制御信号を生成して、前記サンプルセンサのみに差分パワーを与えるよう構成された第2のコントローラとを備える、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11B】
【図4】
【図7A】
【図7B】
【図11A】
【図12】
【図2】
【図3】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11B】
【図4】
【図7A】
【図7B】
【図11A】
【図12】
【公表番号】特表2011−523060(P2011−523060A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512679(P2011−512679)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046385
【国際公開番号】WO2009/149333
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046385
【国際公開番号】WO2009/149333
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】
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