熱間圧延ミルのクラウン制御装置および方法
【課題】鋼板の長手方向に均一なクラウンを実現する。
【解決手段】鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算でベンダーの設定値を算出するセットアップ手段102と、クラウン計171から検出したクラウン量から特徴量を抽出し、この値にしたがった演算でベンダーの先後端を、先後端の過渡領域を最小化する方向に補正する。このため次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正仕様調整手段104と、算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段105と、ベンダーの設定値とベンダーの補正値とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段130を備えた。この結果、鋼板長手方向の定常クラウンの領域を最大化し、長手方向のクラウンの均一度が高まる。
【解決手段】鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算でベンダーの設定値を算出するセットアップ手段102と、クラウン計171から検出したクラウン量から特徴量を抽出し、この値にしたがった演算でベンダーの先後端を、先後端の過渡領域を最小化する方向に補正する。このため次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正仕様調整手段104と、算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段105と、ベンダーの設定値とベンダーの補正値とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段130を備えた。この結果、鋼板長手方向の定常クラウンの領域を最大化し、長手方向のクラウンの均一度が高まる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ミルのクラウン制御装置および方法に係り、クラウンを鋼板の長手方向に均一化するのに好適な制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクラウンを鋼板の長手方向に均一化する手法には特許文献1、2がある。特許文献1には、圧延中に得られた検出クラウンを適当なタイミングでロックオンし、ロックオン値を目標値として鋼板長手方向にFF/FB制御することで、クラウンを鋼板の長手方向に均一化する手法が示されている。
【0003】
特許文献2には、上記でロックオンするタイミングを、クラウン偏差、圧延荷重、圧延速度等の変化に着目して最適化し、クラウンの長手方向均一化の度合いを高める手法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−021243号公報
【特許文献2】特開2006−231387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法は、圧延中のクラウン検出性が良いほど有効であり、ステッケルミルで、各パスもしくは奇パスのクラウンが十分な精度で測定できる場合や、タンデムミルでスタンド間にクラウン計を設置し、その測定結果を利用できる場合には有効な手法である。しかしながら、タンデムミルで最終スタンド出側にしかクラウン計が設置されておらず、このため最終的な圧延結果としてのクラウンしか計測できない場合や、圧延中のクラウンが計測できても精度が十分確保できない場合には、有効性が低下する問題があった。
【0006】
また特許文献2では、ロックオンタイミングを最適化する手法は示されているが、ロックオンタイミングを早めることで、鋼板長手方向で、クラウンをさらに均一化する方法については、示されていなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、クラウン制御の操作端であるベンダーを、鋼板の先端と後端で適切に補正して制御することで、先後端でクラウンが非定常な領域を最小化し、鋼板長手方向の広い範囲で、クラウンを均一化することにある。この結果、ロックオンタイミングを早めることにある。さらに次鋼板以降のベンダーの補正量や補正タイミングを、最終的な圧延結果として計測されたクラウンデータのみを用いて算定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本願発明では、鋼板先後端のクラウン補正の操作量を、先端補正量、先端補正距離、後端補正量、後端補正距離の4つに分解して算出することとし、圧延終了時に検出された鋼板長手方向のクラウンを蓄積するクラウンデータ蓄積手段と、クラウンのチャートデータから、特徴抽出を行うベンダー調整指針抽出手段と、4つのクラウン補正の操作量を記憶する調整量格納手段と、抽出された調整指針と記憶されている操作量から、先端補正量、先端補正距離、後端補正量、後端補正距離をそれぞれ算出する、先端補正量算出手段、先端補正距離算出手段、後端補正量算出手段及び後端補正距離算出手段を設けた。さらにこれら4つの算出手段の出力から、鋼板長手方向のベンダー補正量を算出して出力する先後端補正量手段、プリセット制御で決定されたベンダー値と合わせて、鋼板長手方向の各部位に対応したベンダー操作量を最終的に算出する操作量算出手段を備えた。
【0009】
本発明の作用を説明する。クラウンデータ蓄積手段には、製品として巻き取られた鋼板のクラウンが、鋼板先端からの距離に紐付いて蓄積されている。ベンダー調整指針抽出手段は、クラウンのチャートデータから、先端クラウンのアンダーシュート量、先端クラウンが定常状態になるまでの鋼板先端からの距離、後端クラウンのアンダーシュート量、定常状態終了部から鋼板後端までの距離の4つの特徴量を、ベンダー調整指針として抽出する。先端補正量算出手段、先端補正距離算出手段、後端補正量算出手段、後端補正距離算出手段は、調整量格納手段から各算出手段が出力した前回値を取り込み、抽出した特徴量を用いた所定の演算で、次回の鋼板へ適用する4つのクラウン補正の操作量を算出する。
さらに先後端補正手段はこれらを総合し、鋼板長手方向の各部位に対応したベンダー補正量を算出し、操作量算出手段はセットアップで決定されたベンダーの操作量と、先後端補正手段の出力を合成して、鋼板長手方向の各部位に対応したベンダー操作量を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋼板先後端のクラウン非定常部(過渡状態部)においても、適切な補正により相対的に目標値に近いクラウンが得られるとともに、鋼板先端部のより早いタイミングで定常クラウンが得られるため、ロックオンタイミングを早めることができる。
【0011】
さらにベンダー補正量を、圧延中のクラウン情報を使用せず、圧延後の最終的なクラウンデータにしたがって行うため、最終的な圧延結果としてのクラウンしか計測できない場合や、圧延中のクラウンが計測できても、種々の理由で精度が十分確保できない場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1によるクラウン制御装置を示す構成図。
【図2】クラウンの定義を示した説明図。
【図3】鋼板長手方向の検出クラウンを示す模式図。
【図4】クラウンデータ蓄積手段の蓄積例を示す説明図。
【図5】鋼板長手方向の検出クラウンに対して、調整のための特徴量を示す模式図。
【図6】ベンダー調整指針抽出手段の処理を示すフロー図。
【図7】調整量格納手段の格納例を示す説明図。
【図8】鋼板長手方向のベンダー補正量を示す模式図。
【図9】先後端補正手段の処理を示すフロー図。
【図10】実施例2の荷重補正手段を備えたクラウン制御装置の構成図。
【図11】荷重補正手段の処理を示すフロー図。
【図12】実施例3の温度補正手段を備えたクラウン制御装置の構成図。
【図13】温度補正手段の処理を示すフロー図。
【図14】実施例4の調整指針格納手段を備えたクラウン制御装置の構成図。
【図15】調整指針格納手段の格納例を示す説明図。
【図16】実施例5のクラウン制御装置で、ロックオン値を目標値として鋼板長手方向にFF/FB制御する方式と実施例1を組み合せた構成図。
【図17】ベンダーの先後端補正量の調整を遠隔サービスするシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態では、先後端を含む長手方向に、目標値に近い値のクラウンが均一に分布する鋼板を生産する。さらにクラウンを高精度化したことで、鋼板の形状(幅方向の伸び率のばらつき)の均一化も実現でき、結果として高品質な製品が生産できる。以下、本発明の実施例1〜実施例6を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1によるクラウン制御装置の構成図を示す。クラウン制御装置100は制御対象150から種々の信号を受信し、制御信号を制御対象150に出力する。まず制御対象150の構成を説明する。
【0015】
本実施例の制御対象150は熱間圧延のステッケルミルであり、前工程である粗圧延機で生産された厚さ30mm程度の粗材152をミル151で3回〜7回程度往復圧延し、2mm〜10mm程度の鋼板153を生産する。以下、各圧延をパスと呼ぶ。圧延中の鋼板は入側コイラ162と出側コイラ163に巻き取られつつ往復圧延されることで、粗板の状態から徐々に薄くされる。本実施例ではミル151の出側に、鋼板のクラウン量を測定するクラウン計171が備えられている。
【0016】
図2はクラウンの定義を示した説明図である。クラウンCとは板の中央の厚みhcと、エッジから一定距離部の厚みhe1、he2との差であり、数1で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
he1、he2の測定点であるエッジからの距離は40mmで定義されることが多いが、25mmや70mmの場合もある。クラウン計171は、図2のように板幅方向に複数の測定ポイント201を有しており、板幅方向の板厚分布を検出した上で、クラウン量を算出する。本実施例で板幅方向の厚み分布は、主としてワークロール160に与えられる鋼板幅方向の曲げ力で制御される場合を例に説明するが、上下のロールをクロスさせ、クロス角で制御する場合にも、本発明を同様に適用できる。以下曲げ力をベンディング力と称する。
【0019】
制御装置100からミル151に出力される操作量はベンディング力の設定値である。またクラウン計171は制御の結果得られたクラウンを検出し、計測値としてクラウン制御装置100に出力する。実際には多くの信号がやり取りされるが、必要なものに限って説明する。
【0020】
次にクラウン制御装置100の構成を説明する。クラウン制御装置100は、目標の鋼板クラウンが生産されるように往復圧延の各パス毎の目標クラウンを決定し、制御モデル103を参照して目標クラウンを実現するベンダー指令B0を算出するセットアップ手段102を持つ。また、クラウン計171の計測結果を受信するクラウン受信手段110、受信したクラウンデータを鋼板先端からの距離に紐付けて蓄積するクラウンデータ蓄積手段111、蓄積されたクラウンデータから以後に圧延される鋼板に対して、鋼板先後端に適用するベンダー補正仕様を算出して出力する先後端補正調整手段104を持つ。さらに、先後端補正調整手段104の出力であるベンダー補正仕様にしたがって先後端の補正量を鋼板先端からの距離にしたがって具体的に算出し、ΔB1として出力する先後端補正手段105を持つ。そして、セットアップ手段102と先後端補正手段105の出力を合成してワークロール160に出力するベンダー設定値Brefを出力する操作量算出手段130とから構成される。
【0021】
さらに先後端補正手段104は、クラウンデータ蓄積手段111に蓄えられている鋼板一本分のクラウンデータから、ベンダーの先後端補正仕様を決定するための特徴量を抽出するベンダー調整指針抽出手段112、現在の先後端補正の調整量を蓄積している調整量格納手段113を持つ。また、ベンダー調整指針抽出手段112が抽出した特徴量と調整量格納手段113の内容から、鋼板先端のベンダーの補正量を算出する先端補正量算出手段114、先端補正を施す範囲を鋼板先端からの距離として算出する先端補正距離算出手段115、鋼板後端のベンダーの補正量を算出する後端補正量算出手段116、後端補正を施す範囲を鋼板後端からの距離として算出する後端補正距離算出手段117を持つ。
【0022】
以下、各部の処理を詳細に説明する。制御モデル103は圧延後のクラウン量(鋼板出側クラウン量)を推定するための数式である。クラウンは主として、ベンディング力に加え、圧延前のクラウン量(鋼板入側クラウン量)、圧延荷重、ワークロールの幅方向のロール径プロファイル形状(ワークロールクラウン)により決定され、一例として数2〜数4のような代数式となる。クラウンを板厚で除した値をクラウン比率と言い、代数式中でεHは圧延前のクラウン比率、εhは圧延後のクラウン比率を示している。
【0023】
【数2】
【0024】
【数3】
【0025】
【数4】
【0026】
ただし,CH:鋼板入側クラウン量(圧延前クラウン量)、Ch:鋼板出側クラウン量(圧延後クラウン量)、Hc:入側板厚、hc:出側板厚、B:ベンディング量、P:圧延荷重、CRW:ワークロールクラウン、A1〜A5:板厚、板幅、鋼種等により決定される係数。
【0027】
セットアップ手段102は、目標板厚を得るために決定された各パスの圧延荷重、板の温度等から、最終パスで目標クラウンが得られるような各パスの目標クラウンを決定する。
その後、入側クラウン、入側板厚、出側板厚、圧延荷重、およびワークロールクラウン量の推定値を入力値とし、数2〜数4で与えられる入力値と鋼板出側クラウン量の関係から、各パスの目標クラウンを実現するベンディング力B0を各パス毎に算出し、出力する。また、ワークロールクラウンの推定は、圧延中の熱膨張量、ワークロール160交換後の磨耗によるロール径の減衰効果、ワークロール160の鋼板幅方向のシフト量を考慮した演算で、決定される。
【0028】
図3に鋼板先端から後端までの一般的なクラウン分布を、模式的に示す。鋼板先端301から後端302までの検出クラウンC(l)が、鋼板長(l)に対して描かれている。ステッケルミルで圧延された鋼板におけるクラウンは、温度低下のため、鋼板先後端で図のように大きな値となる。
【0029】
したがって鋼板全体のクラウン分布は大きく、先端過渡状態部303、定常部304、後端過渡状態部305の分けられる。鋼板長手方向に良好なクラウン制御結果を得るためには、定常部304のクラウンを目標値に近づけることに加えて、先端過渡状態部303と後端過渡状態部305の範囲をできるだけ狭め、定常部304を鋼板長手方向のより広い範囲で確保することが必要となる。一般に定常部304のクラウン精度はセットアップ手段102の計算結果の良好性で決定される。一方、本願で提供するベンダーの先後端補正方法は、定常部の範囲を広げることを目的としている。
【0030】
図4にクラウンデータ蓄積手段111の構成を示す。クラウンデータ蓄積手段111はクラウン受信手段110が受信した測定クラウンを取り込み、鋼板先端からの距離に紐付けて蓄積する。図4では鋼板先端から後端まで100mm単位で、クラウンの測定値が格納された例を示している。
【0031】
以下、先後端補正仕様調整手段104の構成を示す。図5にベンダー調整指針抽出手段112が抽出する特徴量を模式的に示す。ベンダー調整指針抽出手段112はクラウンの波形から、先後端の補正仕様を調整するための特徴量として、先端過渡状態部303の長さLt、先端過渡状態部303におけるクラウンのアンダーシュート量Ut、後端過渡状態部305の長さLb、後端過渡状態部305におけるクラウンのアンダーシュート量Ubを抽出する。ここでUt、Ubは、アンダーシュートしている場合に負の値をとるものとする。検出クラウン401のうち、Lt、Utは鋼板先端部クラウン404と定常部クラウン405を用いて、またLb、Ubは定常部クラウン405と鋼板後端部クラウン406を用いて、以下のように算出する。
【0032】
図6にLt、Ut、Lb、Ubの4つの特徴量を抽出するためのアルゴリズムを示す。まずS6−1で100mm毎の検出クラウンC(l)について、移動平均Ca(l)を算出する。移動平均Ca(l)は、数5で算出できる。
【0033】
【数5】
【0034】
nはクラウンデータのバラツキ具合に依存して決める値であるが、実際には2〜5程度の値が選択される場合が多い。次に各lに対応した移動分散を算出する。移動分散Cv(l)は数6で算出できる。
【0035】
【数6】
【0036】
次に定常部クラウンの平均値に相当する値を算出する。鋼板長をLとし、MからL−Mの間のC(l)の平均値CAを算出する。平均値CAは数7で算出される。
【0037】
【数7】
【0038】
Mは定常クラウンが十分に実現されている範囲を特定するためのパラメータで、例えばLの1/3に設定すれば良い。この場合、鋼板の中央1/3のクラウンデータで平均値を算出したことになる。
【0039】
次に、S6−2でCa(l)とCAとの差が一定値以下、かつCv(l)が一定値以下を満足するlの最小値lminを抽出する。lminは、鋼板先端から、クラウンが定常部の値に漸
近し、かつ、ばらつきが一定値以下に落ち着くまでの長さを示している。すなわち先端過渡状態部の長さを定量化したことになる。
【0040】
S6−3では、鋼板先端からの距離lがlminより小さい範囲で、Ca(l)−CAの最小
値Ctminを抽出する。Ctminが負のときクラウンが鋼板先端近傍でアンダーシュート
したことを示しており、Ctminが大きいほどアンダーシュート量が大きいことと対応し
ている。
【0041】
S6−4では、Ca(l)とCAとの差が一定値以下、かつCv(l)が一定値以下を満足するlの最大値lmaxを抽出する。lmaxは、鋼板後端から先端に向けて遡ったときに、ク
ラウンが定常部の値に漸近し、かつばらつきが一定値以下に落ち着くまでの長さを示している。すなわち後端過渡状態部の長さを定量化したことになる。
【0042】
S6−5では、鋼板後端からの距離lがlmaxより大きい範囲で、Ca(l)−CAの最小
値Cbminを抽出する。Cbminが負のときクラウンが鋼板後端近傍でアンダーシュート
したことを示しており、Cbminが大きいほどアンダーシュート量が大きいことと対応し
ている。
【0043】
S6−6では、lminを代入することでLtを、Ctminを代入することでUt、L−lm
axを代入することでLbを、Cbminを代入することでUbをそれぞれ算出する。
【0044】
以上で、図5に示した、4つの特徴量がすべて算出されたことになる。以下、鋼板先後端のアンダーシュート量と過渡状態の範囲を小さくすることを目的に、鋼板先後端でベンダーを適切に補正する方法を示す。
【0045】
図7に調整量格納手段113の構成を、図8に鋼板長手方向に対して施されるベンダー補正量の模式図を示す。ベンダー補正は鋼板の先後端に対して施され、図8に示すように、鋼板先端の補正範囲(鋼板先端からの補正長さ)をA、鋼板先端の補正量をB、鋼板後端の補正範囲(鋼板後端までの補正長さ)をC、鋼板後端の補正量をDとする。ここで先後端ベンダーの補正仕様の調整は、A、B、C、Dを適切な値に調整していくことに他ならない。
【0046】
本実施例で調整量格納手段113は、図7に示すように鋼種、板厚、板幅、パス番号で層別されており、それぞれの層別に対応して、ベンダー補正のための調整量A、B、C、Dが格納されている。A、B、C、Dの初期値は、経験的な値等に従って適切な値を入力する。図7では鋼種がステンレスのSUS304、板厚が2.0〜3.0、板幅が900mm、1パス目のとき、鋼板先端からベンダー補正を施す長さAが24m、ベンダー補正量Bが150ton、鋼板後端からのベンダー補正範囲Cが14m、補正量Dが120tonであることを示している。
【0047】
ステンレス圧延を対象にした通常のステッケルミルに習って、パス回数の最大値を7としたが、高強度材を対象としたミルでは、パス回数の最大値としてもっと大きな値が必要になる場合がある。このときには、調整量格納手段113のパス回数の層別を、必要なだけ確保すればよい。
【0048】
先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、先端補正量算出手段116、先端補正距離算出手段117は、調整量格納手段113の内容と、直近の圧延で得られたクラウン波形から抽出した特徴量Lt、Ut、Lb、Ubから、次回の圧延に使用する各パスのA'、B'、C'、D'をパス毎に、それぞれ算出する。
【0049】
基本的な算出方策は先後端とも同様で、クラウンのアンダーシュート量に着目して、アンダーシュート量が大きいときはベンダー補正量を小さくし、アンダーシュートしてないときは、クラウン過渡状態の範囲を小さくする方向に、ベンダーの補正範囲を調整する。
A'〜D'を算出するために、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、先端補正量算出手段116、先端補正距離算出手段117が実行する計算式を、数8〜数11に定量的に示す。
【0050】
【数8】
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
A'〜D'が求められたことで、鋼板長手方向の部位lに対するベンダー補正量ΔB1(l)が一意に決定できる。
【0055】
図9に先後端補正手段105が実行する処理手順を示す。S9−1で先後端補正量調整手段104の調整結果A'〜D'を用いて算出される鋼板長(l)に対するベンダー補正量ΔB1(l)に対して、現在の圧延長lを取り込み、対応するΔB1(l )を算出する。
【0056】
S9−2で、算出結果を操作量算出手段130に出力する。操作量算出手段130はセットアップ手段102から出力されたベンダー値B0に対して、ΔB1(l)を加算した値を、ベンダー設定値Brefとして制御対象150に出力する。算出されたA'〜D'は新たなA〜Dとして、調整量格納手段113の該当する層別に格納される。
【0057】
本実施例では、鋼板先端からの距離に着目してクラウン分布やベンダー操作量を考えたが、鋼板153がワークロール160に噛み込んでからの圧延時間に着目することも考えられる。その場合でも本発明を同様の考え方で適用できる。また本実施例では、クラウンを制御するための操作端としてベンダーを考えたが、操作端としてクロス角とベンダーを併用することも考えられる。この場合でも本発明を同様の考え方で適用できる。
【実施例2】
【0058】
次に本発明の実施例2を説明する。鋼板153のミル151への噛み込みと尻抜け時には、荷重が増加する。荷重が増加すると、これに対応してクラウンが増加するため、荷重の増加を検出し、ベンダーでこれに伴うクラウン増加分をキャンセルすることが、鋼板長手方法に均一なクラウンを得る上で有効である。
【0059】
図10は、実施例1で示した先後端補正手段105に加え、荷重補正機能を備えた場合の構成を示す。本実施例では荷重受信手段1001と荷重補正手段1002を備え、検出した荷重にしたがってベンダーの補正を行う。ただし、図10では先後端補正手段105のみをしめし、先後端補正仕様調整手段104やクラウン受信手段110などは省略している。
【0060】
図11に荷重補正手段1002が実行する処理を示す。S11−1で荷重補正手段1002は、荷重受信手段1001で受信したミル151のワークロール160の荷重実績値とセットアップで想定した値を用いて、荷重変動を算出する。S11−2で、これに対応したベンダーの補正量ΔB2を出力する。ΔB2は数12で算出される。
【0061】
【数12】
【0062】
ただし、β1:ゲイン、Pset:セットアップ計算で想定した荷重、Pact:制御対象150からその都度取り込んだ実績荷重である。
【0063】
数12により、セットアップ計算時の想定荷重からの偏差の形態で、荷重の変動量が計算できる。計算の結果、実績荷重が大きいときには、対応してベンダーを大きくすることで、クラウンの増大を抑制する。操作量算出手段130はB0に対し、ΔB1(l)に加え、ΔB2を加算した値をベンダー設定値Brefとして制御対象150に出力する。
【実施例3】
【0064】
次に本発明の実施例3を説明する。ステッケルミルで圧延される鋼板153では、先後端の鋼板温度が低いため、クラウンが大きな値となる。温度の低下を検出し、ベンダーでこれに伴うクラウン増加分をキャンセルすることが、鋼板長手方法に均一なクラウンを得る上で有効である。
【0065】
図12は、実施例1で示した先後端補正手段105に加え、板温補正機能を備えた場合の構成を示す。本実施例では板温検出手段1201と板温補正手段1202を備えている。板温受信手段1201は温度計1200から検出した鋼板153の温度を受信する。板温補正手段1202は、板温受信手段1201が受信した板温に基づいて、ベンダーを補正する。
【0066】
図13に板温補正手段1202が実行する処理を示す。S13−1で板温補正手段1202は、板温受信手段1201から受信した鋼板温度実績値とセットアップで想定した鋼板温度を用いて、温度変動を算出する。S13−2で、これに対応したベンダーの補正量ΔB3を出力する。
ΔB3は数13で算出される。
【0067】
【数13】
【0068】
ただし、γ1:ゲイン、Tset:セットアップ計算で想定した荷重、Tact:温度計1200からその都度取り込んだ実績温度である。
【0069】
数13では、セットアップ計算時の想定温度からの偏差の形態で、鋼板温度の変動量を算出する。そして実績温度が想定温度より小さいときは、その度合いに応じてベンダーを大きくすることで、クラウンの増大を抑制する。操作量算出手段130はB0に対し、ΔB3を加算した値をベンダー設定値Brefとして制御対象150に出力する。
【0070】
本実施例では、ベンダーの先後端補正量に温度補正量を加算する構成としたが、荷重補正量をさらに加算、B0、ΔB1(l )、ΔB2を加算して、Brefを算出する構成も考えられる。この場合も各ゲインの適切な調整は必要となるが、本発明を同様の考え方で適用できる。
【実施例4】
【0071】
次に本発明の実施例4を説明する。本実施例では圧延済みのクラウンデータを複数鋼板について蓄え、これらを総合的に使用してベンダーの補正を行う。
【0072】
図14に実施例4によるクラウン制御装置の構成を示す。実施例1の構成に加えて、ベンダー調整指針抽出手段112の出力を蓄積する、調整指針格納手段1401を備えている。調整指針格納手段1401はベンダー調整指針抽出手段112の出力を蓄積し、蓄積結果をあらかじめ定められたタイミングで、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、後端補正量算出手段116、後端補正距離算出手段117に出力する。
【0073】
図15に調整指針格納手段1401の構成を示す。鋼種、板厚、板幅の各層別に対して、直近圧延された鋼板(鋼板No.1)からn本の鋼板の特徴量Lt(1)〜Lt(n)、Ut(1)〜Ut(n)、Lb(1)〜Lb(n)、Ub(1)〜Ub(n)が蓄えられている。これらを取り込んで、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、後端補正量算出手段116、後端補正距離算出手段117が実行する処理は数8〜数11と同様である。なお、使用するLt、Ut、Lb、Ubとしては、数14に例を示すように取り込んだ値の単純平均してもよいし、数15に例を示すように直近の結果に重きをおいた加重平均としても良い。
【0074】
【数14】
【0075】
【数15】
【0076】
また、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、後端補正量算出手段116、後端補正距離算出手段117のそれぞれが演算を実施し、先後端補正調整手段104の出力を更新するタイミングとしては、鋼板の圧延毎で良い。あるいは、特徴量格納手段1401に鋼板複数本分のデータが蓄積されたタイミングで先後端補正調整手段104が演算を行い、出力を更新しても良い。後者の場合、クラウン補正を多くの鋼板データで実施するため、補正の応答性は低下するが、安定した先後端補正を行うことができる。
【実施例5】
【0077】
次に本発明を、特許文献1記載のクラウン制御装置と組み合わせた実施例5を説明する。図16は実施例5によるクラウン制御装置の構成を示し、ミル151の入側と出側にクラウン計が取り付けられている。入側クラウン計170により、ミル151に対して入側に位置する鋼板153のクラウンを測定することができ、出側クラウン計171により、ミル151に対して出側に位置する鋼板153のクラウンを測定することができる。以下、ミル151による往復圧延において、1回あたりの圧延をパス、往復圧延回数をパス回数と称する。
【0078】
本実施例で制御装置100は、目標の鋼板クラウンが生産されるように往復圧延の各パス毎の目標クラウンを決定し、制御モデル103を参照して目標クラウンを実現するベンダー指令Bsetを算出するセットアップ手段102、2パス目以降で、前パスで目標を満足できなかったクラウンの値を後のパスで解消できるように、スケジュールされたクラウン目標値を修正し、対応するベンダーの指令値を補正した上で補正値B0を出力するパス間フィードフォワード(FF)制御手段1710を持つ。また、入側クラウン計170の出力を受信する入側クラウン受信手段1710、各パスのミル入側において、鋼板153の先頭から定められた距離付近のクラウンを読み込み記憶する入側クラウンロックオン手段1711、ロックオン成立後、入側クラウンロックオン手段1711の出力と入側クラウン受信手段1710の出力との偏差を取り込み、鋼板各部位のクラウンがロックオンクラウンと一致するようにベンディング力を補正するための補正量ΔB4を出力する長手方向クラウン入側制御手段1712を持つ。また、出側クラウン計171の出力を受信する出側クラウン受信手段1720、各パスのミル出側において、鋼板153の先頭から定められた距離付近のクラウンを読み込み記憶する出側クラウンロックオン手段1721、ロックオン成立後、出側クラウンロックオン手段1721の出力と出側クラウン受信手段120の出力との偏差を取り込み、鋼板各部位のクラウンがロックオンクラウンと一致するようにベンディング力を補正するための補正量ΔB5を出力する長手方向クラウン出側制御手段1722を備えている。
【0079】
鋼板153先頭からのクラウン分布において、ロックオンクラウンは本来の目標クラウンよりも早いタイミングで得られるので、ロックオンクラウンを目標クラウンとした鋼板153長手方向の制御により、鋼板153の定常部クラウン405を長くできる。また本来のクラウン目標値との偏差を、パス間フィードフォワード(FF)制御手段1710により後ろのパスで補償することにより、定常部クラウン405を本来の目標クラウンに近づけることができる。
【0080】
制御装置100は、さらに操作量算出手段1730を備えており、操作量算出手段1730は、 B0、ΔB4、ΔB5を加算した値と、実施例1で示した先後端補正手段105の出力ΔB1を取り込み、これらを加算して、鋼板153の圧延における各タイミングで、最終的なベンダー操作量Brefを出力する。
【0081】
本実施例に示した構成では、特許文献1記載のクラウン制御装置に先後端補正手段105を付加したことにより、鋼板153の先端部クラウンが速やかに定常状態に漸近するので、クラウンをロックオンするまでの鋼板153の先頭からの距離を短くできる。あるいは同一距離でロックオンした場合、ロックオンクラウンを目標値に近づけることができる。いずれの場合も、鋼板153の定常部クラウン405を長くすることに寄与できる。なお、本実施例5は実施例2、3、4との組み合せも可能である。
【実施例6】
【0082】
実施例6は先後端のベンダー補正仕様のチューニングを、プラントメーカが遠隔からインターネットを用いたサービスとして行う。
【0083】
図17に実施例6のシステム構成を示す。メーカは鉄鋼会社1501の、制御対象150から制御装置100が取り込んだLt、Ut、Lb、Ubや、このときの荷重や温度、板速度等の実績データや、鋼種、板厚、板幅等の制御情報を、ネットワーク1511、サーバ1510、回線網1503を介して自社のサーバ1504に取り込む。そして調整用データベース1505に格納する。調整用データベース1505の構成は、調整量格納手段113と同様にすれば良い。
【0084】
メーカ1502は先後端補正手段1506を有しており、鉄鋼会社1501からの要求にしたがって、調整用データベース1505に蓄積されたデータを用いて各層別に対応したA,B,C,Dの計算を行い、計算結果を鉄鋼会社1501に送信する。
【0085】
モデルチューニング手段1506が実行するアルゴリズムは、先後端補正調整手段104と同様にすれば良い。モデルチューニングの対価は、チューニング回数に対応付けても良いし、チューニングの結果向上した制御結果に対応付けた成果報酬でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0086】
実施例1−4で説明したステッケルミルのクラウン制御以外にも、本発明は圧延後の鋼板のクラウンに着目した制御方式のため、最終スタンド出側にクラウン計が備えられるタンデムミルのクラウン制御にも、本発明を同じ構成で適用できる。
【符号の説明】
【0087】
100…制御装置、102…セットアップ手段、103…制御モデル、104…先後端補正調整手段、105…先後端補正手段、112…ベンダー調整指針抽出手段、113…調整量格納手段、114…端補正量算出手段、115…先端補正距離算出手段、116…後端補正量算出手段、117…後端補正距離算出手段、130…操作量算出手段、150…制御対象、1002…荷重補正手段、1202…温度補正手段、1401…調整指針格納手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ミルのクラウン制御装置および方法に係り、クラウンを鋼板の長手方向に均一化するのに好適な制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクラウンを鋼板の長手方向に均一化する手法には特許文献1、2がある。特許文献1には、圧延中に得られた検出クラウンを適当なタイミングでロックオンし、ロックオン値を目標値として鋼板長手方向にFF/FB制御することで、クラウンを鋼板の長手方向に均一化する手法が示されている。
【0003】
特許文献2には、上記でロックオンするタイミングを、クラウン偏差、圧延荷重、圧延速度等の変化に着目して最適化し、クラウンの長手方向均一化の度合いを高める手法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−021243号公報
【特許文献2】特開2006−231387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法は、圧延中のクラウン検出性が良いほど有効であり、ステッケルミルで、各パスもしくは奇パスのクラウンが十分な精度で測定できる場合や、タンデムミルでスタンド間にクラウン計を設置し、その測定結果を利用できる場合には有効な手法である。しかしながら、タンデムミルで最終スタンド出側にしかクラウン計が設置されておらず、このため最終的な圧延結果としてのクラウンしか計測できない場合や、圧延中のクラウンが計測できても精度が十分確保できない場合には、有効性が低下する問題があった。
【0006】
また特許文献2では、ロックオンタイミングを最適化する手法は示されているが、ロックオンタイミングを早めることで、鋼板長手方向で、クラウンをさらに均一化する方法については、示されていなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、クラウン制御の操作端であるベンダーを、鋼板の先端と後端で適切に補正して制御することで、先後端でクラウンが非定常な領域を最小化し、鋼板長手方向の広い範囲で、クラウンを均一化することにある。この結果、ロックオンタイミングを早めることにある。さらに次鋼板以降のベンダーの補正量や補正タイミングを、最終的な圧延結果として計測されたクラウンデータのみを用いて算定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本願発明では、鋼板先後端のクラウン補正の操作量を、先端補正量、先端補正距離、後端補正量、後端補正距離の4つに分解して算出することとし、圧延終了時に検出された鋼板長手方向のクラウンを蓄積するクラウンデータ蓄積手段と、クラウンのチャートデータから、特徴抽出を行うベンダー調整指針抽出手段と、4つのクラウン補正の操作量を記憶する調整量格納手段と、抽出された調整指針と記憶されている操作量から、先端補正量、先端補正距離、後端補正量、後端補正距離をそれぞれ算出する、先端補正量算出手段、先端補正距離算出手段、後端補正量算出手段及び後端補正距離算出手段を設けた。さらにこれら4つの算出手段の出力から、鋼板長手方向のベンダー補正量を算出して出力する先後端補正量手段、プリセット制御で決定されたベンダー値と合わせて、鋼板長手方向の各部位に対応したベンダー操作量を最終的に算出する操作量算出手段を備えた。
【0009】
本発明の作用を説明する。クラウンデータ蓄積手段には、製品として巻き取られた鋼板のクラウンが、鋼板先端からの距離に紐付いて蓄積されている。ベンダー調整指針抽出手段は、クラウンのチャートデータから、先端クラウンのアンダーシュート量、先端クラウンが定常状態になるまでの鋼板先端からの距離、後端クラウンのアンダーシュート量、定常状態終了部から鋼板後端までの距離の4つの特徴量を、ベンダー調整指針として抽出する。先端補正量算出手段、先端補正距離算出手段、後端補正量算出手段、後端補正距離算出手段は、調整量格納手段から各算出手段が出力した前回値を取り込み、抽出した特徴量を用いた所定の演算で、次回の鋼板へ適用する4つのクラウン補正の操作量を算出する。
さらに先後端補正手段はこれらを総合し、鋼板長手方向の各部位に対応したベンダー補正量を算出し、操作量算出手段はセットアップで決定されたベンダーの操作量と、先後端補正手段の出力を合成して、鋼板長手方向の各部位に対応したベンダー操作量を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋼板先後端のクラウン非定常部(過渡状態部)においても、適切な補正により相対的に目標値に近いクラウンが得られるとともに、鋼板先端部のより早いタイミングで定常クラウンが得られるため、ロックオンタイミングを早めることができる。
【0011】
さらにベンダー補正量を、圧延中のクラウン情報を使用せず、圧延後の最終的なクラウンデータにしたがって行うため、最終的な圧延結果としてのクラウンしか計測できない場合や、圧延中のクラウンが計測できても、種々の理由で精度が十分確保できない場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1によるクラウン制御装置を示す構成図。
【図2】クラウンの定義を示した説明図。
【図3】鋼板長手方向の検出クラウンを示す模式図。
【図4】クラウンデータ蓄積手段の蓄積例を示す説明図。
【図5】鋼板長手方向の検出クラウンに対して、調整のための特徴量を示す模式図。
【図6】ベンダー調整指針抽出手段の処理を示すフロー図。
【図7】調整量格納手段の格納例を示す説明図。
【図8】鋼板長手方向のベンダー補正量を示す模式図。
【図9】先後端補正手段の処理を示すフロー図。
【図10】実施例2の荷重補正手段を備えたクラウン制御装置の構成図。
【図11】荷重補正手段の処理を示すフロー図。
【図12】実施例3の温度補正手段を備えたクラウン制御装置の構成図。
【図13】温度補正手段の処理を示すフロー図。
【図14】実施例4の調整指針格納手段を備えたクラウン制御装置の構成図。
【図15】調整指針格納手段の格納例を示す説明図。
【図16】実施例5のクラウン制御装置で、ロックオン値を目標値として鋼板長手方向にFF/FB制御する方式と実施例1を組み合せた構成図。
【図17】ベンダーの先後端補正量の調整を遠隔サービスするシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態では、先後端を含む長手方向に、目標値に近い値のクラウンが均一に分布する鋼板を生産する。さらにクラウンを高精度化したことで、鋼板の形状(幅方向の伸び率のばらつき)の均一化も実現でき、結果として高品質な製品が生産できる。以下、本発明の実施例1〜実施例6を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1によるクラウン制御装置の構成図を示す。クラウン制御装置100は制御対象150から種々の信号を受信し、制御信号を制御対象150に出力する。まず制御対象150の構成を説明する。
【0015】
本実施例の制御対象150は熱間圧延のステッケルミルであり、前工程である粗圧延機で生産された厚さ30mm程度の粗材152をミル151で3回〜7回程度往復圧延し、2mm〜10mm程度の鋼板153を生産する。以下、各圧延をパスと呼ぶ。圧延中の鋼板は入側コイラ162と出側コイラ163に巻き取られつつ往復圧延されることで、粗板の状態から徐々に薄くされる。本実施例ではミル151の出側に、鋼板のクラウン量を測定するクラウン計171が備えられている。
【0016】
図2はクラウンの定義を示した説明図である。クラウンCとは板の中央の厚みhcと、エッジから一定距離部の厚みhe1、he2との差であり、数1で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
he1、he2の測定点であるエッジからの距離は40mmで定義されることが多いが、25mmや70mmの場合もある。クラウン計171は、図2のように板幅方向に複数の測定ポイント201を有しており、板幅方向の板厚分布を検出した上で、クラウン量を算出する。本実施例で板幅方向の厚み分布は、主としてワークロール160に与えられる鋼板幅方向の曲げ力で制御される場合を例に説明するが、上下のロールをクロスさせ、クロス角で制御する場合にも、本発明を同様に適用できる。以下曲げ力をベンディング力と称する。
【0019】
制御装置100からミル151に出力される操作量はベンディング力の設定値である。またクラウン計171は制御の結果得られたクラウンを検出し、計測値としてクラウン制御装置100に出力する。実際には多くの信号がやり取りされるが、必要なものに限って説明する。
【0020】
次にクラウン制御装置100の構成を説明する。クラウン制御装置100は、目標の鋼板クラウンが生産されるように往復圧延の各パス毎の目標クラウンを決定し、制御モデル103を参照して目標クラウンを実現するベンダー指令B0を算出するセットアップ手段102を持つ。また、クラウン計171の計測結果を受信するクラウン受信手段110、受信したクラウンデータを鋼板先端からの距離に紐付けて蓄積するクラウンデータ蓄積手段111、蓄積されたクラウンデータから以後に圧延される鋼板に対して、鋼板先後端に適用するベンダー補正仕様を算出して出力する先後端補正調整手段104を持つ。さらに、先後端補正調整手段104の出力であるベンダー補正仕様にしたがって先後端の補正量を鋼板先端からの距離にしたがって具体的に算出し、ΔB1として出力する先後端補正手段105を持つ。そして、セットアップ手段102と先後端補正手段105の出力を合成してワークロール160に出力するベンダー設定値Brefを出力する操作量算出手段130とから構成される。
【0021】
さらに先後端補正手段104は、クラウンデータ蓄積手段111に蓄えられている鋼板一本分のクラウンデータから、ベンダーの先後端補正仕様を決定するための特徴量を抽出するベンダー調整指針抽出手段112、現在の先後端補正の調整量を蓄積している調整量格納手段113を持つ。また、ベンダー調整指針抽出手段112が抽出した特徴量と調整量格納手段113の内容から、鋼板先端のベンダーの補正量を算出する先端補正量算出手段114、先端補正を施す範囲を鋼板先端からの距離として算出する先端補正距離算出手段115、鋼板後端のベンダーの補正量を算出する後端補正量算出手段116、後端補正を施す範囲を鋼板後端からの距離として算出する後端補正距離算出手段117を持つ。
【0022】
以下、各部の処理を詳細に説明する。制御モデル103は圧延後のクラウン量(鋼板出側クラウン量)を推定するための数式である。クラウンは主として、ベンディング力に加え、圧延前のクラウン量(鋼板入側クラウン量)、圧延荷重、ワークロールの幅方向のロール径プロファイル形状(ワークロールクラウン)により決定され、一例として数2〜数4のような代数式となる。クラウンを板厚で除した値をクラウン比率と言い、代数式中でεHは圧延前のクラウン比率、εhは圧延後のクラウン比率を示している。
【0023】
【数2】
【0024】
【数3】
【0025】
【数4】
【0026】
ただし,CH:鋼板入側クラウン量(圧延前クラウン量)、Ch:鋼板出側クラウン量(圧延後クラウン量)、Hc:入側板厚、hc:出側板厚、B:ベンディング量、P:圧延荷重、CRW:ワークロールクラウン、A1〜A5:板厚、板幅、鋼種等により決定される係数。
【0027】
セットアップ手段102は、目標板厚を得るために決定された各パスの圧延荷重、板の温度等から、最終パスで目標クラウンが得られるような各パスの目標クラウンを決定する。
その後、入側クラウン、入側板厚、出側板厚、圧延荷重、およびワークロールクラウン量の推定値を入力値とし、数2〜数4で与えられる入力値と鋼板出側クラウン量の関係から、各パスの目標クラウンを実現するベンディング力B0を各パス毎に算出し、出力する。また、ワークロールクラウンの推定は、圧延中の熱膨張量、ワークロール160交換後の磨耗によるロール径の減衰効果、ワークロール160の鋼板幅方向のシフト量を考慮した演算で、決定される。
【0028】
図3に鋼板先端から後端までの一般的なクラウン分布を、模式的に示す。鋼板先端301から後端302までの検出クラウンC(l)が、鋼板長(l)に対して描かれている。ステッケルミルで圧延された鋼板におけるクラウンは、温度低下のため、鋼板先後端で図のように大きな値となる。
【0029】
したがって鋼板全体のクラウン分布は大きく、先端過渡状態部303、定常部304、後端過渡状態部305の分けられる。鋼板長手方向に良好なクラウン制御結果を得るためには、定常部304のクラウンを目標値に近づけることに加えて、先端過渡状態部303と後端過渡状態部305の範囲をできるだけ狭め、定常部304を鋼板長手方向のより広い範囲で確保することが必要となる。一般に定常部304のクラウン精度はセットアップ手段102の計算結果の良好性で決定される。一方、本願で提供するベンダーの先後端補正方法は、定常部の範囲を広げることを目的としている。
【0030】
図4にクラウンデータ蓄積手段111の構成を示す。クラウンデータ蓄積手段111はクラウン受信手段110が受信した測定クラウンを取り込み、鋼板先端からの距離に紐付けて蓄積する。図4では鋼板先端から後端まで100mm単位で、クラウンの測定値が格納された例を示している。
【0031】
以下、先後端補正仕様調整手段104の構成を示す。図5にベンダー調整指針抽出手段112が抽出する特徴量を模式的に示す。ベンダー調整指針抽出手段112はクラウンの波形から、先後端の補正仕様を調整するための特徴量として、先端過渡状態部303の長さLt、先端過渡状態部303におけるクラウンのアンダーシュート量Ut、後端過渡状態部305の長さLb、後端過渡状態部305におけるクラウンのアンダーシュート量Ubを抽出する。ここでUt、Ubは、アンダーシュートしている場合に負の値をとるものとする。検出クラウン401のうち、Lt、Utは鋼板先端部クラウン404と定常部クラウン405を用いて、またLb、Ubは定常部クラウン405と鋼板後端部クラウン406を用いて、以下のように算出する。
【0032】
図6にLt、Ut、Lb、Ubの4つの特徴量を抽出するためのアルゴリズムを示す。まずS6−1で100mm毎の検出クラウンC(l)について、移動平均Ca(l)を算出する。移動平均Ca(l)は、数5で算出できる。
【0033】
【数5】
【0034】
nはクラウンデータのバラツキ具合に依存して決める値であるが、実際には2〜5程度の値が選択される場合が多い。次に各lに対応した移動分散を算出する。移動分散Cv(l)は数6で算出できる。
【0035】
【数6】
【0036】
次に定常部クラウンの平均値に相当する値を算出する。鋼板長をLとし、MからL−Mの間のC(l)の平均値CAを算出する。平均値CAは数7で算出される。
【0037】
【数7】
【0038】
Mは定常クラウンが十分に実現されている範囲を特定するためのパラメータで、例えばLの1/3に設定すれば良い。この場合、鋼板の中央1/3のクラウンデータで平均値を算出したことになる。
【0039】
次に、S6−2でCa(l)とCAとの差が一定値以下、かつCv(l)が一定値以下を満足するlの最小値lminを抽出する。lminは、鋼板先端から、クラウンが定常部の値に漸
近し、かつ、ばらつきが一定値以下に落ち着くまでの長さを示している。すなわち先端過渡状態部の長さを定量化したことになる。
【0040】
S6−3では、鋼板先端からの距離lがlminより小さい範囲で、Ca(l)−CAの最小
値Ctminを抽出する。Ctminが負のときクラウンが鋼板先端近傍でアンダーシュート
したことを示しており、Ctminが大きいほどアンダーシュート量が大きいことと対応し
ている。
【0041】
S6−4では、Ca(l)とCAとの差が一定値以下、かつCv(l)が一定値以下を満足するlの最大値lmaxを抽出する。lmaxは、鋼板後端から先端に向けて遡ったときに、ク
ラウンが定常部の値に漸近し、かつばらつきが一定値以下に落ち着くまでの長さを示している。すなわち後端過渡状態部の長さを定量化したことになる。
【0042】
S6−5では、鋼板後端からの距離lがlmaxより大きい範囲で、Ca(l)−CAの最小
値Cbminを抽出する。Cbminが負のときクラウンが鋼板後端近傍でアンダーシュート
したことを示しており、Cbminが大きいほどアンダーシュート量が大きいことと対応し
ている。
【0043】
S6−6では、lminを代入することでLtを、Ctminを代入することでUt、L−lm
axを代入することでLbを、Cbminを代入することでUbをそれぞれ算出する。
【0044】
以上で、図5に示した、4つの特徴量がすべて算出されたことになる。以下、鋼板先後端のアンダーシュート量と過渡状態の範囲を小さくすることを目的に、鋼板先後端でベンダーを適切に補正する方法を示す。
【0045】
図7に調整量格納手段113の構成を、図8に鋼板長手方向に対して施されるベンダー補正量の模式図を示す。ベンダー補正は鋼板の先後端に対して施され、図8に示すように、鋼板先端の補正範囲(鋼板先端からの補正長さ)をA、鋼板先端の補正量をB、鋼板後端の補正範囲(鋼板後端までの補正長さ)をC、鋼板後端の補正量をDとする。ここで先後端ベンダーの補正仕様の調整は、A、B、C、Dを適切な値に調整していくことに他ならない。
【0046】
本実施例で調整量格納手段113は、図7に示すように鋼種、板厚、板幅、パス番号で層別されており、それぞれの層別に対応して、ベンダー補正のための調整量A、B、C、Dが格納されている。A、B、C、Dの初期値は、経験的な値等に従って適切な値を入力する。図7では鋼種がステンレスのSUS304、板厚が2.0〜3.0、板幅が900mm、1パス目のとき、鋼板先端からベンダー補正を施す長さAが24m、ベンダー補正量Bが150ton、鋼板後端からのベンダー補正範囲Cが14m、補正量Dが120tonであることを示している。
【0047】
ステンレス圧延を対象にした通常のステッケルミルに習って、パス回数の最大値を7としたが、高強度材を対象としたミルでは、パス回数の最大値としてもっと大きな値が必要になる場合がある。このときには、調整量格納手段113のパス回数の層別を、必要なだけ確保すればよい。
【0048】
先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、先端補正量算出手段116、先端補正距離算出手段117は、調整量格納手段113の内容と、直近の圧延で得られたクラウン波形から抽出した特徴量Lt、Ut、Lb、Ubから、次回の圧延に使用する各パスのA'、B'、C'、D'をパス毎に、それぞれ算出する。
【0049】
基本的な算出方策は先後端とも同様で、クラウンのアンダーシュート量に着目して、アンダーシュート量が大きいときはベンダー補正量を小さくし、アンダーシュートしてないときは、クラウン過渡状態の範囲を小さくする方向に、ベンダーの補正範囲を調整する。
A'〜D'を算出するために、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、先端補正量算出手段116、先端補正距離算出手段117が実行する計算式を、数8〜数11に定量的に示す。
【0050】
【数8】
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
A'〜D'が求められたことで、鋼板長手方向の部位lに対するベンダー補正量ΔB1(l)が一意に決定できる。
【0055】
図9に先後端補正手段105が実行する処理手順を示す。S9−1で先後端補正量調整手段104の調整結果A'〜D'を用いて算出される鋼板長(l)に対するベンダー補正量ΔB1(l)に対して、現在の圧延長lを取り込み、対応するΔB1(l )を算出する。
【0056】
S9−2で、算出結果を操作量算出手段130に出力する。操作量算出手段130はセットアップ手段102から出力されたベンダー値B0に対して、ΔB1(l)を加算した値を、ベンダー設定値Brefとして制御対象150に出力する。算出されたA'〜D'は新たなA〜Dとして、調整量格納手段113の該当する層別に格納される。
【0057】
本実施例では、鋼板先端からの距離に着目してクラウン分布やベンダー操作量を考えたが、鋼板153がワークロール160に噛み込んでからの圧延時間に着目することも考えられる。その場合でも本発明を同様の考え方で適用できる。また本実施例では、クラウンを制御するための操作端としてベンダーを考えたが、操作端としてクロス角とベンダーを併用することも考えられる。この場合でも本発明を同様の考え方で適用できる。
【実施例2】
【0058】
次に本発明の実施例2を説明する。鋼板153のミル151への噛み込みと尻抜け時には、荷重が増加する。荷重が増加すると、これに対応してクラウンが増加するため、荷重の増加を検出し、ベンダーでこれに伴うクラウン増加分をキャンセルすることが、鋼板長手方法に均一なクラウンを得る上で有効である。
【0059】
図10は、実施例1で示した先後端補正手段105に加え、荷重補正機能を備えた場合の構成を示す。本実施例では荷重受信手段1001と荷重補正手段1002を備え、検出した荷重にしたがってベンダーの補正を行う。ただし、図10では先後端補正手段105のみをしめし、先後端補正仕様調整手段104やクラウン受信手段110などは省略している。
【0060】
図11に荷重補正手段1002が実行する処理を示す。S11−1で荷重補正手段1002は、荷重受信手段1001で受信したミル151のワークロール160の荷重実績値とセットアップで想定した値を用いて、荷重変動を算出する。S11−2で、これに対応したベンダーの補正量ΔB2を出力する。ΔB2は数12で算出される。
【0061】
【数12】
【0062】
ただし、β1:ゲイン、Pset:セットアップ計算で想定した荷重、Pact:制御対象150からその都度取り込んだ実績荷重である。
【0063】
数12により、セットアップ計算時の想定荷重からの偏差の形態で、荷重の変動量が計算できる。計算の結果、実績荷重が大きいときには、対応してベンダーを大きくすることで、クラウンの増大を抑制する。操作量算出手段130はB0に対し、ΔB1(l)に加え、ΔB2を加算した値をベンダー設定値Brefとして制御対象150に出力する。
【実施例3】
【0064】
次に本発明の実施例3を説明する。ステッケルミルで圧延される鋼板153では、先後端の鋼板温度が低いため、クラウンが大きな値となる。温度の低下を検出し、ベンダーでこれに伴うクラウン増加分をキャンセルすることが、鋼板長手方法に均一なクラウンを得る上で有効である。
【0065】
図12は、実施例1で示した先後端補正手段105に加え、板温補正機能を備えた場合の構成を示す。本実施例では板温検出手段1201と板温補正手段1202を備えている。板温受信手段1201は温度計1200から検出した鋼板153の温度を受信する。板温補正手段1202は、板温受信手段1201が受信した板温に基づいて、ベンダーを補正する。
【0066】
図13に板温補正手段1202が実行する処理を示す。S13−1で板温補正手段1202は、板温受信手段1201から受信した鋼板温度実績値とセットアップで想定した鋼板温度を用いて、温度変動を算出する。S13−2で、これに対応したベンダーの補正量ΔB3を出力する。
ΔB3は数13で算出される。
【0067】
【数13】
【0068】
ただし、γ1:ゲイン、Tset:セットアップ計算で想定した荷重、Tact:温度計1200からその都度取り込んだ実績温度である。
【0069】
数13では、セットアップ計算時の想定温度からの偏差の形態で、鋼板温度の変動量を算出する。そして実績温度が想定温度より小さいときは、その度合いに応じてベンダーを大きくすることで、クラウンの増大を抑制する。操作量算出手段130はB0に対し、ΔB3を加算した値をベンダー設定値Brefとして制御対象150に出力する。
【0070】
本実施例では、ベンダーの先後端補正量に温度補正量を加算する構成としたが、荷重補正量をさらに加算、B0、ΔB1(l )、ΔB2を加算して、Brefを算出する構成も考えられる。この場合も各ゲインの適切な調整は必要となるが、本発明を同様の考え方で適用できる。
【実施例4】
【0071】
次に本発明の実施例4を説明する。本実施例では圧延済みのクラウンデータを複数鋼板について蓄え、これらを総合的に使用してベンダーの補正を行う。
【0072】
図14に実施例4によるクラウン制御装置の構成を示す。実施例1の構成に加えて、ベンダー調整指針抽出手段112の出力を蓄積する、調整指針格納手段1401を備えている。調整指針格納手段1401はベンダー調整指針抽出手段112の出力を蓄積し、蓄積結果をあらかじめ定められたタイミングで、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、後端補正量算出手段116、後端補正距離算出手段117に出力する。
【0073】
図15に調整指針格納手段1401の構成を示す。鋼種、板厚、板幅の各層別に対して、直近圧延された鋼板(鋼板No.1)からn本の鋼板の特徴量Lt(1)〜Lt(n)、Ut(1)〜Ut(n)、Lb(1)〜Lb(n)、Ub(1)〜Ub(n)が蓄えられている。これらを取り込んで、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、後端補正量算出手段116、後端補正距離算出手段117が実行する処理は数8〜数11と同様である。なお、使用するLt、Ut、Lb、Ubとしては、数14に例を示すように取り込んだ値の単純平均してもよいし、数15に例を示すように直近の結果に重きをおいた加重平均としても良い。
【0074】
【数14】
【0075】
【数15】
【0076】
また、先端補正量算出手段114、先端補正距離算出手段115、後端補正量算出手段116、後端補正距離算出手段117のそれぞれが演算を実施し、先後端補正調整手段104の出力を更新するタイミングとしては、鋼板の圧延毎で良い。あるいは、特徴量格納手段1401に鋼板複数本分のデータが蓄積されたタイミングで先後端補正調整手段104が演算を行い、出力を更新しても良い。後者の場合、クラウン補正を多くの鋼板データで実施するため、補正の応答性は低下するが、安定した先後端補正を行うことができる。
【実施例5】
【0077】
次に本発明を、特許文献1記載のクラウン制御装置と組み合わせた実施例5を説明する。図16は実施例5によるクラウン制御装置の構成を示し、ミル151の入側と出側にクラウン計が取り付けられている。入側クラウン計170により、ミル151に対して入側に位置する鋼板153のクラウンを測定することができ、出側クラウン計171により、ミル151に対して出側に位置する鋼板153のクラウンを測定することができる。以下、ミル151による往復圧延において、1回あたりの圧延をパス、往復圧延回数をパス回数と称する。
【0078】
本実施例で制御装置100は、目標の鋼板クラウンが生産されるように往復圧延の各パス毎の目標クラウンを決定し、制御モデル103を参照して目標クラウンを実現するベンダー指令Bsetを算出するセットアップ手段102、2パス目以降で、前パスで目標を満足できなかったクラウンの値を後のパスで解消できるように、スケジュールされたクラウン目標値を修正し、対応するベンダーの指令値を補正した上で補正値B0を出力するパス間フィードフォワード(FF)制御手段1710を持つ。また、入側クラウン計170の出力を受信する入側クラウン受信手段1710、各パスのミル入側において、鋼板153の先頭から定められた距離付近のクラウンを読み込み記憶する入側クラウンロックオン手段1711、ロックオン成立後、入側クラウンロックオン手段1711の出力と入側クラウン受信手段1710の出力との偏差を取り込み、鋼板各部位のクラウンがロックオンクラウンと一致するようにベンディング力を補正するための補正量ΔB4を出力する長手方向クラウン入側制御手段1712を持つ。また、出側クラウン計171の出力を受信する出側クラウン受信手段1720、各パスのミル出側において、鋼板153の先頭から定められた距離付近のクラウンを読み込み記憶する出側クラウンロックオン手段1721、ロックオン成立後、出側クラウンロックオン手段1721の出力と出側クラウン受信手段120の出力との偏差を取り込み、鋼板各部位のクラウンがロックオンクラウンと一致するようにベンディング力を補正するための補正量ΔB5を出力する長手方向クラウン出側制御手段1722を備えている。
【0079】
鋼板153先頭からのクラウン分布において、ロックオンクラウンは本来の目標クラウンよりも早いタイミングで得られるので、ロックオンクラウンを目標クラウンとした鋼板153長手方向の制御により、鋼板153の定常部クラウン405を長くできる。また本来のクラウン目標値との偏差を、パス間フィードフォワード(FF)制御手段1710により後ろのパスで補償することにより、定常部クラウン405を本来の目標クラウンに近づけることができる。
【0080】
制御装置100は、さらに操作量算出手段1730を備えており、操作量算出手段1730は、 B0、ΔB4、ΔB5を加算した値と、実施例1で示した先後端補正手段105の出力ΔB1を取り込み、これらを加算して、鋼板153の圧延における各タイミングで、最終的なベンダー操作量Brefを出力する。
【0081】
本実施例に示した構成では、特許文献1記載のクラウン制御装置に先後端補正手段105を付加したことにより、鋼板153の先端部クラウンが速やかに定常状態に漸近するので、クラウンをロックオンするまでの鋼板153の先頭からの距離を短くできる。あるいは同一距離でロックオンした場合、ロックオンクラウンを目標値に近づけることができる。いずれの場合も、鋼板153の定常部クラウン405を長くすることに寄与できる。なお、本実施例5は実施例2、3、4との組み合せも可能である。
【実施例6】
【0082】
実施例6は先後端のベンダー補正仕様のチューニングを、プラントメーカが遠隔からインターネットを用いたサービスとして行う。
【0083】
図17に実施例6のシステム構成を示す。メーカは鉄鋼会社1501の、制御対象150から制御装置100が取り込んだLt、Ut、Lb、Ubや、このときの荷重や温度、板速度等の実績データや、鋼種、板厚、板幅等の制御情報を、ネットワーク1511、サーバ1510、回線網1503を介して自社のサーバ1504に取り込む。そして調整用データベース1505に格納する。調整用データベース1505の構成は、調整量格納手段113と同様にすれば良い。
【0084】
メーカ1502は先後端補正手段1506を有しており、鉄鋼会社1501からの要求にしたがって、調整用データベース1505に蓄積されたデータを用いて各層別に対応したA,B,C,Dの計算を行い、計算結果を鉄鋼会社1501に送信する。
【0085】
モデルチューニング手段1506が実行するアルゴリズムは、先後端補正調整手段104と同様にすれば良い。モデルチューニングの対価は、チューニング回数に対応付けても良いし、チューニングの結果向上した制御結果に対応付けた成果報酬でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0086】
実施例1−4で説明したステッケルミルのクラウン制御以外にも、本発明は圧延後の鋼板のクラウンに着目した制御方式のため、最終スタンド出側にクラウン計が備えられるタンデムミルのクラウン制御にも、本発明を同じ構成で適用できる。
【符号の説明】
【0087】
100…制御装置、102…セットアップ手段、103…制御モデル、104…先後端補正調整手段、105…先後端補正手段、112…ベンダー調整指針抽出手段、113…調整量格納手段、114…端補正量算出手段、115…先端補正距離算出手段、116…後端補正量算出手段、117…後端補正距離算出手段、130…操作量算出手段、150…制御対象、1002…荷重補正手段、1202…温度補正手段、1401…調整指針格納手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウンを検出するクラウン計と、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルにおいて、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算でベンダーの設定値を算出するセットアップ手段と、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積するクラウン蓄積手段と、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正調整手段と、先後端補正調整手段が算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段と、前記ベンダーの設定値と前記ベンダーの補正値とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項2】
前記先後端補正調整手段は、クラウン蓄積手段からクラウンデータを取り込み、あらかじめ定められた演算により、鋼板先端部と後端部のそれぞれで、アンダーシュート量と過渡状態部の長さを抽出する、ベンダー調整指針抽出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項3】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板先端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板先端部のベンダー補正量を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板先端過渡状態部の長さに応じて鋼板先端部のベンダー補正量を大きくする先端補正量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項4】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板先端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板先端部のベンダー補正距離を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板先端過渡状態部の長さに応じて鋼板先端部のベンダー補正距離を大きくする先端補正距離算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項5】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板後端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板後端部のベンダー補正量を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板後端過渡状態部の長さに応じて鋼板後端部のベンダー補正量を大きくする後端補正量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項6】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板後端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板後端部のベンダー補正距離を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板後端過渡状態部の長さに応じて鋼板後端部のベンダー補正距離を大きくする後端補正距離算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項7】
前記クラウン蓄積手段から取り込んだクラウンデータに対して、移動平均値、移動分散値、鋼板中央付近の平均値を算出し、移動平均値と鋼板中央付近の平均値が一定以下で、かつ移動分散値が一定以下になった部位の鋼板先端からの距離で、鋼板先端の過渡状態部の長さを抽出し、鋼板先端の過渡状態部で移動平均値から鋼板中央付近の平均値を減じた値の最小値を抽出して鋼板先端部のアンダーシュート量とし、移動平均値と鋼板中央付近の平均値が一定以上で、かつ移動分散値が一定以上になった部位の鋼板後端からの距離で、鋼板後端の過渡状態部の長さを抽出し、鋼板後端の過渡状態部で移動平均値から鋼板中央付近の平均値を減じた値の最小値を抽出して鋼板後端のアンダーシュート量とするベンダー調整指針抽出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項8】
前記先後端補正調整手段は、最近圧延された鋼板から抽出された鋼板先端部と後端部のアンダーシュート量と過渡状態部の長さを、あらかじめ定められた層別毎に複数蓄積する調整指針格納手段を備え、先端補正量算出手段、先端補正距離手段、後端補正量算出手段および後端補正距離算出手段は、次回圧延される鋼板に対応して蓄積されている鋼板先端部と後端部のアンダーシュート量と過渡状態部の長さを用いて、先端補正量、先端補正距離、後端補正量、後端補正距離をそれぞれ算出することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項9】
前記熱間圧延ミルから圧延中の荷重を取り込み、セットアップ計算時の想定荷重からの変動がクラウンに与える影響を相殺するベンダー補正量を算出し、第1のベンダー補正量として出力する荷重補正手段を備え、前記先後端補正手段が出力した第2のベンダー補正量と、前記セットアップ手段が出力したベンダー設定値とから、ベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項10】
前記熱間圧延ミルから圧延中の鋼板温度を取り込み、セットアップ計算時の想定鋼板温度からの変動がクラウンに与える影響を相殺するベンダー補正量を算出し、第1のベンダー補正量として出力する板温補正手段を備え、前記先後端補正手段が出力した第2のベンダー補正量と、前記セットアップ手段が出力したベンダー設定値とから、ベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項11】
ミルの出側にクラウン計を備え、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルにおいて、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算で該ベンダーの設定値を算出するセットアップ手段と、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積するクラウン蓄積手段と、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正調整手段と、先後端補正調整手段が算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段と、
鋼板の先端からあらかじめ定められた距離におけるクラウンの値を記憶して出力する出側クラウンロックオン手段と、該記憶後、出側クラウンロックオン手段の出力とクラウン計の検出値の偏差を取り込み、該偏差が小さくなるようにベンダー等の操作量を修正する出側長手方向クラウン制御手段と、
前記ベンダーの設定値とベンダーの補正値と前記出側長手方向クラウン制御手段の出力とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルの制御装置。
【請求項12】
ミルの入側と出側にクラウン計を備え、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルにおいて、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算で該ベンダーの設定値を算出するセットアップ手段と、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積するクラウン蓄積手段と、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正調整手段と、先後端補正調整手段が算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段と、
鋼板の先端からあらかじめ定められた距離におけるクラウンの値を記憶して出力する入側クラウンロックオン手段と、該記憶後、入側クラウンロックオン手段の出力とクラウン計の検出値の偏差を取り込み、該偏差が小さくなるようにベンダー等の操作量を修正する入側長手方向クラウン制御手段と、
鋼板の先端からあらかじめ定められた距離におけるクラウンの値を記憶して出力する出側クラウンロックオン手段と、該記憶後、出側クラウンロックオン手段の出力とクラウン計の検出値の偏差を取り込み、該偏差が小さくなるようにベンダー等の操作量を修正する出側長手方向クラウン制御手段と、
前記ベンダーの設定値とベンダーの補正値と前記入側長手方向クラウン制御手段の出力と前記出側長手方向クラウン制御手段の出力とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルの制御装置。
【請求項13】
クラウンを検出するクラウン計と、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルのクラウン制御方法において、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算で該ベンダーの設定値を算出し、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積し、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出し、ベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出し、ベンダーの設定値とベンダーの補正値とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力することを特徴とする熱間圧延ミルのクラウン制御方法。
【請求項1】
クラウンを検出するクラウン計と、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルにおいて、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算でベンダーの設定値を算出するセットアップ手段と、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積するクラウン蓄積手段と、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正調整手段と、先後端補正調整手段が算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段と、前記ベンダーの設定値と前記ベンダーの補正値とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項2】
前記先後端補正調整手段は、クラウン蓄積手段からクラウンデータを取り込み、あらかじめ定められた演算により、鋼板先端部と後端部のそれぞれで、アンダーシュート量と過渡状態部の長さを抽出する、ベンダー調整指針抽出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項3】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板先端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板先端部のベンダー補正量を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板先端過渡状態部の長さに応じて鋼板先端部のベンダー補正量を大きくする先端補正量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項4】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板先端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板先端部のベンダー補正距離を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板先端過渡状態部の長さに応じて鋼板先端部のベンダー補正距離を大きくする先端補正距離算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項5】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板後端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板後端部のベンダー補正量を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板後端過渡状態部の長さに応じて鋼板後端部のベンダー補正量を大きくする後端補正量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項6】
前記先後端補正調整手段は、ベンダー調整指針抽出手段の出力を取り込み、クラウンが鋼板後端部でアンダーシュートしているかどうかを判定し、アンダーシュートしている場合には、アンダーシュート量に応じて鋼板後端部のベンダー補正距離を小さくし、アンダーシュートしていない場合には、鋼板後端過渡状態部の長さに応じて鋼板後端部のベンダー補正距離を大きくする後端補正距離算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項7】
前記クラウン蓄積手段から取り込んだクラウンデータに対して、移動平均値、移動分散値、鋼板中央付近の平均値を算出し、移動平均値と鋼板中央付近の平均値が一定以下で、かつ移動分散値が一定以下になった部位の鋼板先端からの距離で、鋼板先端の過渡状態部の長さを抽出し、鋼板先端の過渡状態部で移動平均値から鋼板中央付近の平均値を減じた値の最小値を抽出して鋼板先端部のアンダーシュート量とし、移動平均値と鋼板中央付近の平均値が一定以上で、かつ移動分散値が一定以上になった部位の鋼板後端からの距離で、鋼板後端の過渡状態部の長さを抽出し、鋼板後端の過渡状態部で移動平均値から鋼板中央付近の平均値を減じた値の最小値を抽出して鋼板後端のアンダーシュート量とするベンダー調整指針抽出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項8】
前記先後端補正調整手段は、最近圧延された鋼板から抽出された鋼板先端部と後端部のアンダーシュート量と過渡状態部の長さを、あらかじめ定められた層別毎に複数蓄積する調整指針格納手段を備え、先端補正量算出手段、先端補正距離手段、後端補正量算出手段および後端補正距離算出手段は、次回圧延される鋼板に対応して蓄積されている鋼板先端部と後端部のアンダーシュート量と過渡状態部の長さを用いて、先端補正量、先端補正距離、後端補正量、後端補正距離をそれぞれ算出することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項9】
前記熱間圧延ミルから圧延中の荷重を取り込み、セットアップ計算時の想定荷重からの変動がクラウンに与える影響を相殺するベンダー補正量を算出し、第1のベンダー補正量として出力する荷重補正手段を備え、前記先後端補正手段が出力した第2のベンダー補正量と、前記セットアップ手段が出力したベンダー設定値とから、ベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項10】
前記熱間圧延ミルから圧延中の鋼板温度を取り込み、セットアップ計算時の想定鋼板温度からの変動がクラウンに与える影響を相殺するベンダー補正量を算出し、第1のベンダー補正量として出力する板温補正手段を備え、前記先後端補正手段が出力した第2のベンダー補正量と、前記セットアップ手段が出力したベンダー設定値とから、ベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルのクラウン制御装置。
【請求項11】
ミルの出側にクラウン計を備え、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルにおいて、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算で該ベンダーの設定値を算出するセットアップ手段と、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積するクラウン蓄積手段と、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正調整手段と、先後端補正調整手段が算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段と、
鋼板の先端からあらかじめ定められた距離におけるクラウンの値を記憶して出力する出側クラウンロックオン手段と、該記憶後、出側クラウンロックオン手段の出力とクラウン計の検出値の偏差を取り込み、該偏差が小さくなるようにベンダー等の操作量を修正する出側長手方向クラウン制御手段と、
前記ベンダーの設定値とベンダーの補正値と前記出側長手方向クラウン制御手段の出力とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルの制御装置。
【請求項12】
ミルの入側と出側にクラウン計を備え、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルにおいて、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算で該ベンダーの設定値を算出するセットアップ手段と、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積するクラウン蓄積手段と、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出する先後端補正調整手段と、先後端補正調整手段が算出したベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出する先後端補正手段と、
鋼板の先端からあらかじめ定められた距離におけるクラウンの値を記憶して出力する入側クラウンロックオン手段と、該記憶後、入側クラウンロックオン手段の出力とクラウン計の検出値の偏差を取り込み、該偏差が小さくなるようにベンダー等の操作量を修正する入側長手方向クラウン制御手段と、
鋼板の先端からあらかじめ定められた距離におけるクラウンの値を記憶して出力する出側クラウンロックオン手段と、該記憶後、出側クラウンロックオン手段の出力とクラウン計の検出値の偏差を取り込み、該偏差が小さくなるようにベンダー等の操作量を修正する出側長手方向クラウン制御手段と、
前記ベンダーの設定値とベンダーの補正値と前記入側長手方向クラウン制御手段の出力と前記出側長手方向クラウン制御手段の出力とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力する操作量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ミルの制御装置。
【請求項13】
クラウンを検出するクラウン計と、クラウンを制御するための操作端として少なくともベンダーを有する熱間圧延ミルのクラウン制御方法において、
鋼板の圧延に先立ったセットアップ計算で該ベンダーの設定値を算出し、クラウン計から取り込んだ鋼板のクラウンデータを蓄積し、蓄積されたクラウンデータを用いて、次回の鋼板に適用する鋼板先後端におけるベンダーの補正仕様を算出し、ベンダーの補正仕様と鋼板の圧延部位の情報から鋼板圧延中にベンダーの補正値を算出し、ベンダーの設定値とベンダーの補正値とからベンダー指令値を算出して熱間圧延ミルに出力することを特徴とする熱間圧延ミルのクラウン制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−25318(P2011−25318A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224469(P2010−224469)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2007−170693(P2007−170693)の分割
【原出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2007−170693(P2007−170693)の分割
【原出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]