説明

熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法

【課題】圧延材間ピッチが熱間圧延ライン上で一層最短となるように熱間圧延ライン上で圧延材を搬送制御すること。
【解決手段】加熱炉、粗圧延機R2,R4、および仕上げ圧延機F1〜F7を備える熱間圧延ラインであって、先行材および後行材の先端および尾端が前記各設備位置に到達する時刻を予測演算することにより、圧延材の加熱炉からの抽出時刻を決定し、圧延材を待機可能位置でオシレーションさせ、所定の圧延材間ピッチに制御する熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法において、前記待機可能位置WP1〜WP3は、仕上げ圧延機F1の直前位置と仕上げ圧延機F1前の複数位置(WP1,WP2)とに設けられ、前記各設備位置に到達した先行材および後行材の到達情報を取得して前記予測演算結果を修正し、前記所定の圧延材間ピッチを最短に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉、粗圧延機、および仕上げ圧延機を備える熱間圧延ラインであって、先行材および後行材の先端および尾端が前記各設備位置に到達する時刻を予測演算することにより、圧延材の加熱炉からの抽出時刻を決定し、圧延材を待機可能位置でオシレーションさせ、所定の圧延材間ピッチに制御する熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱炉、粗圧延機、および仕上げ圧延機を備える熱間圧延ラインでは、圧延材が加熱炉に在るときに、加熱炉から各設備を通過する時間を予測計算し、連続圧延される圧延材間で干渉が生じないよう、すなわち設備設定時間等の搬送インターロックにかからないように、加熱炉からの各圧延材の抽出予定時刻、および各圧延材の各設備通過の予測時刻を決定し、加熱炉からの各圧延材の自動抽出および各設備による圧延を制御している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載された熱間圧延ラインのミルペーシング方法では、加熱炉抽出側から、仕上げ圧延機までの中間点、たとえば粗圧延機前で圧延材を自動待機させる調整を行い、可能であれば、加熱炉抽出の早出し等を行って、最終的な仕上げ圧延機前での圧延材間(バーツーバー)時間を短縮できるようにしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたものでは、加熱炉から仕上げ圧延機までの間の一箇所で圧延材を自動待機させるオシレーションを行っているのみで、きめの細かいミルペーシング制御を行うことができなかった。
【0006】
すなわち、従来、圧延材間ピッチを実績修正するポイントであるオシレーション位置が粗圧延機前と仕上げ圧延機前とに限られていたため、オシレーション位置間隔が長い分、次のオシレーション位置での実績修正までに手介入などの外乱が多く入る場合、圧延材の搬送誤差が大きくなりやすく、その結果、圧延材間ピッチが最短とはならず、熱間圧延ライン上で滞留などが発生したり、圧延材の衝突リスクが大きくなるという問題点が生じやすかった。圧延材の搬送予測誤差は、少なからず存在し、搬送実績の遅れが生じた場合、圧延材間ピッチが最短とならず、熱間圧延ライン上で無駄なアイドル時間を生じさせてしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圧延材間ピッチが熱間圧延ライン上で一層最短となるように熱間圧延ライン上で圧延材を搬送制御することができる熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法は、加熱炉、粗圧延機、および仕上げ圧延機を備える熱間圧延ラインであって、先行材および後行材の先端および尾端が前記各設備位置に到達する時刻を予測演算することにより、圧延材の加熱炉からの抽出時刻を決定し、圧延材を待機可能位置でオシレーションさせ、所定の圧延材間ピッチに制御する熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法において、前記待機可能位置は、前記仕上げ圧延機の直前位置と前記仕上げ圧延機前の複数位置とに設けられ、前記各設備位置に到達した先行材および後行材の到達情報を取得して前記予測演算結果を修正し、前記所定の圧延材間ピッチを最短に制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法は、上記の発明において、前記仕上げ圧延機前の複数位置は、複数の粗圧延機のうちのリバース圧延を行わない粗圧延機前、および加熱炉と粗圧延機との間に配置されるサイジングプレス前であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法は、上記の発明において、前記加熱炉および複数の前記待機可能位置では、圧延材の搬送予測と実績予測との差に遅れがあった場合、該遅れ誤差分、圧延材を早出しすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法は、上記の発明において、前記予測演算は、前記圧延材の圧延機での通過速度を時間積分して該圧延材の実績長を求め、該実績長を次の圧延機以降での予測演算に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、待機可能位置が、仕上げ圧延機の直前位置と仕上げ圧延機前の複数位置とに設けられ、各設備位置に到達した先行材および後行材の到達情報を取得して予測演算結果を修正し、所定の圧延材間ピッチを最短に制御するようにしているので、加熱炉からの抽出ピッチはもちろん、圧延材が熱間圧延ライン上にあるときも、圧延材の到達状況を把握して待機可能位置での待機あるいは早出しによって動的に変更され、圧延材間ピッチが熱間圧延ライン上で一層最短とすることができ、圧延効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施の形態の熱間圧延ラインの設備配置と熱延鋼板である圧延材の先尾端の動きの概要を示すスケジュール図である。
【図2】図2は、図1に示した熱間圧延ライン上のチェックポイントでのバーツーバー時間の一例を示すスケジュール図である。
【図3】図3は、最適抽出ピッチの決定処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、前材と当材との干渉チェックによるHSBピッチの修正の一例を示す図である。
【図5】図5は、設備設定時間を考慮したHSBピッチの再修正の一例を示す図である。
【図6】図6は、搬送実績をもとにした抽出ピッチの修正および待機時間の追加を示すスケジュール図である。
【図7】図7は、チェックポイントと待機可能位置との関係を示す図である。
【図8】図8は、圧延材の早出しをしないときの搬送予測に対する搬送実績の一例を示す図である。
【図9】図9は、圧延材の早出しをしたときの搬送予測に対する搬送実績の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態の熱間圧延ラインの設備配置と熱延鋼板である圧延材の先尾端の動きの概要を示す図である。また、図2は、図1に示した熱間圧延ライン上のチェックポイントCPでのバーツーバー(BTB)時間の一例を示す図である。図1および図2では、縦軸が時間を示し、横軸が各設備の配置位置を示している。本実施の形態の熱間圧延ラインは、2つの加熱炉(1炉、2炉)を有し、加熱されて抽出された圧延材は、HSB(ホットスケールブレーカー)を介して搬送される。HSBから送られた圧延材は、SSP(スラブサイジングプレス)、粗圧延機R2,R4、切断装置CS、仕上げ圧延機F1〜F7、ダウンコイラDC1,DC2の順に順次搬送されて圧延される。なお、粗圧延機R2は、リバース圧延を行うミルである。図2に示す制御部Cは、ミルペーシング機能の制御を行う。ミルペーシング機能とは、前圧延材(前材)とこれに続く次圧延材(次材)との熱間圧延ライン上の間隔が、お互いに衝突せず、また開きすぎないように、圧延材の圧延時間などを、モデルを用いて予測し、最適なピッチで圧延する機能のことである。たとえば、図1では、前材と、次材である当材との関係から算出した抽出ピッチに、前材の実績から求めた抽出ピッチ修正量を加えた最適抽出ピッチで、次材の抽出ピッチを決定している。
【0016】
また、熱間圧延ライン上のSSP直前、リバース圧延を行わない粗圧延機であるR4ミル直前、およびF1ミル(CS)直前には、それぞれオシレーションを行う待機可能位置WP1〜WP3に待機装置が設けられる。制御部Cは、圧延材が互いに干渉せず、BTB時間が短くなるように、加熱炉からの抽出ピッチを決定するとともに、当材が加熱炉から抽出されて圧延が開始された後、各設備位置のチェックポイントCP(HSB,SSP,R2,R4,CS,F1,F7,DC1,DC2)における前材の圧延実績を検出して各待機可能位置WP1〜WP3で当材のBTB時間をさらに個別に最適調整するようにしている。待機可能位置WP3は、F1ミル前であるが、この待機可能位置は、温度調整などの微調を含めて行うために従来から設けられているものである。SSP前の待機可能位置WP1は、R2ミルによるリバース圧延が行われる前であり、圧延長が短いため、圧延材の待機時間を大きく変更することができ、装置も小さく済む。また、R4前の待機可能位置WP2は、温度調整が必要な待機可能位置WP3での待機時間を最短に調整するためである。なお、待機可能位置を3つとしているが、待機装置が設置可能なスペースがあれば4以上設けてもよい。
【0017】
なお、図2では、圧延材として前材、当材、次材の3つが例示されている。HSB間のBTB時間はHSBBTB、R2でのBTB時間はR2BTB、R4でのBTB時間はR4BTB、CSでのBTB時間はCSBTB、F1でのBTB時間はF1BTB、DC1でのBTB時間はDCBTBである。ここで、図2では、前材と当材との間のすべてのBTB時間の中でR2BTBが最も小さく、当材と次材との間のすべてのBTB時間の中でDCBTBが最も小さくなっており、それぞれはネック工程と呼ばれる。
【0018】
ここで、図3に示したフローチャートを参照して、加熱炉からの圧延材を抽出する最適抽出ピッチの決定処理について説明する。まず、仮のHSBピッチを設定する(ステップS1)。その後、前材と当材との干渉チェックによってHSBピッチを修正する(ステップS1)。この干渉チェックは、図2に示すように、各チェックポイントCPで前材の尾端搬送線と当材の先端搬送線とが重ならないように求め、かつネック工程のBTB時間(R2BTB)が最小となるように修正する。換言すれば、各チェックポイントCPで前材の尾端搬送線と当材の先端搬送線とが重なって干渉する最大BTB時間分を各チェックポイントに加える修正処理を行う。
【0019】
さらに、各設備での設定変更に最低限必要な時間である設備設定時間を考慮して、ステップS2で修正されたHSBピッチを再修正する(ステップS3)。すなわち、各チェックポイントCPで、設備設定時間と干渉チェックによる現BTB時間とを比較し、設備設定時間が干渉チェックによるBTB時間に比して大きい場合、その差分を干渉チェックによる差分BTB時間とし、この差分BTB時間のうち最も大きな差分BTB時間である最大差分BTB時間を各現BTB時間に加算する処理を行う。たとえば、図5に示すように、R2では、ネック工程であるのでR2BTB=0であり、最大差分BTB時間そのものがR2での修正BTB時間となる。また、R4では、干渉チェックによる現BTB時間が設備設定時間よりも大きいため、現BTB時間に最大差分BTB時間を加算した値が修正BTB時間となる。さらに、F1では、設備設定時間から干渉チェックによる現BTB時間を減算した差分BTB時間が各CPの中で最大であるため、最大差分BTB時間となり、各CPでの現BTB時間に加算される。
【0020】
その後、加熱炉燃焼制御のピッチにより求めた加熱炉抽出ピッチと、ステップS3で求めた再修正HSBピッチとを比較し、大きい方を最適抽出ピッチとして決定する(ステップS4)。この最適抽出ピッチで、圧延材は、加熱炉から抽出され、前材と当材との圧延材レベル間での初期処理が終了する。
【0021】
一方、制御部Cは、各CPでの搬送実績を取得し、この搬送実績と圧延スケジュールの予測の進捗とを比較し、当材よりも上流にある材に対して干渉チェックによる搬送予測修正を次々と行い、熱間圧延ライン上にある圧延材に対して、各待機可能位置WP1〜WP3への進入タイミングが最適となるように、必要に応じてオシレーション処理による待機あるいは早出しを行うスケジューリングを行う。また、次材の最適抽出ピッチをさらに修正する処理を行う。
【0022】
たとえば、図6に示すように、当材の遅れによって当材と次材との干渉が発生した場合、あるいは当材の遅れによって修正後の次材と次次材との干渉が発生した場合、最寄りの待機可能位置で待機させるスケジューリング修正や、ネック工程位置の干渉時間分、加熱炉からの抽出ピッチを大きくするスケジューリング修正を逐次行うようにしている。
【0023】
ここで、CPとしてのSSPでは、SSP入側に当材の先端が到達したタイミングで、前材との干渉チェックを行い、必要であれば、当材をSSP待機可能位置(WP1)で待機させる。なお、SSP出側の修正チェックポイントで当材の予測に対する遅れが生じている場合、前材と当材との搬送予測および干渉チェックを改めて行った結果、依然として残る遅れを待機時間として決定する。そして、最小R2BTB時間を達成できる圧延材間隔をとるようにしている。
【0024】
なお、制御部Cは、圧延ミルでの圧延材の通過速度を時間積分して、この圧延材の実績長を求め、この実績長は、次の圧延ミル以降での圧延スケジュールでの予測演算に用いられる。これによって、搬送予測の精度を向上させることができる。また、圧延材の存在は、ロードセルによって検出される。
【0025】
この実施の形態では、前材、当材および次材以降の隣接する圧延材(後行材)との間でお互いに衝突せず、また開きすぎないように、圧延材の抽出ピッチを決定し、変更することともに、CP位置での実績をもとに仕上げ圧延機F1前に配置された3以上の待機可能位置での待機時間の決定を動的に修正変更するようにしているので、一層、圧延効率を向上させることができる。
【0026】
特に、この実施の形態では、待機設備をSSP前、R4前、F1前の3か所に設けているため、圧延材の搬送予測誤差はSSP前、R4前の待機設備で吸収され、F1BTBを短くすることができ、圧延長の長い圧延材が長時間滞留しないため、圧延効率を向上させることができる。
【0027】
たとえば、従来、図8に示すように、チェックポイントF1では、予測のF1BTBに対して実績が、全体的に遅れが生じ、特に予測が20秒の場合、実績が30秒以上となり、10秒以上遅れが生じている。すなわち、10秒の無駄時間が発生している。これに対し、予測が20秒の圧延材に対して、加熱炉などでの早出しを行う修正を行うと、図9に示すように、10秒の遅れ分を吸収し、予測に近い値でF1ミルに進入し、圧延効率を向上させることができる。なお、早出しは、加熱炉からの抽出ピッチに限らず、待機可能位置WP1〜WP3での早出しも可能である。
【符号の説明】
【0028】
R2,R4 粗圧延機
F1〜F7 仕上げ圧延機
DC1,DC2 ダウンコイラ
WP1〜WP3 待機可能位置
C 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉、粗圧延機、および仕上げ圧延機を備える熱間圧延ラインであって、先行材および後行材の先端および尾端が前記各設備位置に到達する時刻を予測演算することにより、圧延材の加熱炉からの抽出時刻を決定し、圧延材を待機可能位置でオシレーションさせ、所定の圧延材間ピッチに制御する熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法において、
前記待機可能位置は、前記仕上げ圧延機の直前位置と前記仕上げ圧延機前の複数位置とに設けられ、
前記各設備位置に到達した先行材および後行材の到達情報を取得して前記予測演算結果を修正し、前記所定の圧延材間ピッチを最短に制御することを特徴とする熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法。
【請求項2】
前記仕上げ圧延機前の複数位置は、複数の粗圧延機のうちのリバース圧延を行わない粗圧延機前、および加熱炉と粗圧延機との間に配置されるサイジングプレス前であることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法。
【請求項3】
前記加熱炉および複数の前記待機可能位置では、圧延材の搬送予測と実績予測との差に遅れがあった場合、該遅れ誤差分、圧延材を早出しすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法。
【請求項4】
前記予測演算は、前記圧延材の圧延機での通過速度を時間積分して該圧延材の実績長を求め、該実績長を次の圧延機以降での予測演算に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱間圧延ラインにおける圧延材の搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111616(P2013−111616A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260739(P2011−260739)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】