説明

熱陰極蛍光ランプを備えたバックライト

【課題】ランプ周辺温度を低下できる熱陰極蛍光ランプを備えたバックライトを提供する。
【解決手段】熱陰極蛍光ランプ10と筐体20とを備え、熱陰極蛍光ランプ10を構成するバルブ12は略楕円の断面形状を有し、フィラメント14の長手方向がスクリーン方向40に向くように配置され、バルブ12の略楕円の長手方向12aがスクリーン方向40に向くように配置されている、バックライト100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極蛍光ランプを備えたバックライトに関し、特に、大画面テレビ用または看板用のバックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイのバックライトユニットの光源としては、冷陰極蛍光ランプが主に採用されている。冷陰極蛍光ランプは、細径化に適しているので、薄型化が要求されるバックライトユニットの光源として用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭56−73855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、液晶ディスプレイの大型化が進んでおり、これに伴ってバックライトユニットも大型化してきている。このバックライトユニットの大型化により、光源として冷陰極蛍光ランプを用いると、使用するランプ本数の増加によって点灯回路が複雑になるとともに、消費電力が高くなることが危惧されている。
さらに説明すると、冷陰極蛍光ランプは、他のランプと比べて駆動に必要な電圧(駆動電圧)が大きく、高圧な電源を用いることが必要である。特に、画面サイズが32インチ以上のような大型の液晶ディスプレイ(例えば、32インチ、42インチ、46インチ、65インチまたはそれ以上の液晶ディスプレイ)が最近登場しているため、ランプ長はより長くなり、その分、駆動電圧はさらに高圧化する傾向が強くなっている。
【0004】
また、冷陰極蛍光ランプは、1本当たりに投入する電力が小さいため、画面輝度を確保するためには本数を多くする必要があり、それゆえに、部品コストが増大するとともに、組み立て工数がかかるという問題が顕在化する可能性が高い。
そのような中、冷陰極蛍光ランプよりも高効率であり、また、ランプの使用本数が削減できることもあり、点灯回路も簡素化できる熱陰極蛍光ランプをバックライトユニットの光源として採用することが検討され始めている。しかしながら、バックライトとしては冷陰極蛍光ランプの開発・研究が今日に至るまで盛んに行われた結果、熱陰極蛍光ランプの欠点が克服されていないのが実情である。
【0005】
本願発明者は、液晶ディスプレイの大型化に伴って益々顕在化してくるバックライトユニットの問題を、現在主流の冷陰極蛍光ランプの改良により解決するのではなく、熱陰極蛍光ランプを用いることによって解決することを試みている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、放熱部材を用いなくても、温度低下の効果を得ることが可能な新規な熱陰極蛍光ランプを備えたバックライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバックライトは、熱陰極蛍光ランプと、前記熱陰極蛍光ランプを収納する筐体とを備え、前記熱陰極蛍光ランプは、内面に蛍光体が形成されたバルブと、前記バルブ内に設けられ、熱電子を放出するフィラメントとから構成されており、前記バルブは、略楕円の断面形状を有しており、前記フィラメントは、当該フィラメントの長手方向がスクリーン方向に向くように配置されており、前記バルブは、前記略楕円の長手方向が前記スクリーン方向に向くように配置されている。
【0007】
ある好適な実施形態において、前記筐体の少なくとも一部には、反射板が形成されている。
ある好適な実施形態において、前記筐体の前記スクリーン方向には、開口部が形成されており、前記開口部には、光学シートが配置されている。
ある好適な実施形態において、前記フィラメントは、四重コイルからなる。
【0008】
ある好適な実施形態において、互いに隣接する前記熱陰極蛍光ランプがペアとなって、一つの点灯回路に結線されている。
ある好適な実施形態において、前記バックライトは、直下型の画像表示装置用のバックライトである。
ある好適な実施形態において、前記バックライトは、32インチから46インチの画面サイズの液晶ディスプレイ用の光源であり、前記筐体に、前記熱陰極蛍光ランプは4本から6本配置されている。
【0009】
ある好適な実施形態において、前記熱陰極蛍光ランプは、公称寿命2万時間以上のランプである。
ある好適な実施形態において、前記熱陰極蛍光ランプの一本における一対の電極のうちの一個の前記フィラメントに5.0mg以上のエミッタが塗布されている。
ある好適な実施形態において、前記熱陰極蛍光ランプにおける前記バルブ内のガス圧は、500Pa以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバックライトによれば、熱陰極蛍光ランプを構成するバルブが略楕円の断面形状を有し、フィラメントの長手方向がスクリーン方向に向くように配置され、バルブの略楕円の長手方向がスクリーン方向に向くように配置されているので、例えば冷却ファンのような放熱手段を導入しなくても、ランプの周辺の温度を低下することが可能となる。その結果、大画面の画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)に、大出力の電力を導入する場合でも、他の構成と比較して、ランプ周辺温度を低下することが可能な熱陰極蛍光ランプを備えたバックライトを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明者は、大画面化が益々加速する液晶ディスプレイ用のバックライトに好適なものは、現在主流の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)を用いたものでなく、冷陰極蛍光ランプと比べて1本あたりに大出力の電力を投入できる熱陰極蛍光ランプ(HCFL)を用いたものに移行すると考え、研究開発を行っていた。そのように移行すると考えた理由は、熱陰極蛍光ランプの「大出力」という特徴を生かすことで、液晶テレビにおけるコントラスト比を大きくすることができ、動画を含めた高画質化が可能となるとともに、冷陰極蛍光ランプに比べ、バックライトとして使用するランプの本数が大幅に削減でき、コストダウンが可能であるからである。このような開発の中、本願発明者は、偶然、ランプ周辺の温度低下を実現できる熱陰極蛍光ランプの構成を見出し、本発明に至った。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るバックライト100について説明する。本実施形態のバックライト100は、熱陰極蛍光ランプ10と、熱陰極蛍光ランプ10を収納する筐体20とから構成されている。熱陰極蛍光ランプ10は、内面に蛍光体(不図示)が形成されたバルブ12と、バルブ12内に設けられ、熱電子を放出するフィラメント14とから構成されている。
【0013】
本実施形態のバルブ12は、略楕円の断面形状を有している。ここで、「略楕円」とは、バルブ(ガラス管)12の中心軸に垂直な断面が、円形でなく、扁平形状をしていることをいい、楕円の他、長円などを含む。また、この「略楕円」には典型的な楕円形状も含むが、幾何学的な楕円形状である必要はなく、本実施形態の「略楕円」は、バルブ12の扁平形状の長径L1と、当該長径L1よりも短い短径L2とが規定できる形状であればよい。本実施形態における長径L1と短径L2は、それぞれ、バルブ12の外径を基準としているが、外径に限らず、例えばガラス肉厚を一定として、バルブ12の内径で規定することも可能である。バルブ12の内径で規定した場合、本実施形態の一例では、フィラメント(電極コイル)14の軸方向(長手方向14a)の長さLは、長径(長内径)L1、短径(短内径)L2と比べて、L2<L<L1の関係を満たしている。
【0014】
また、本実施形態の構成では、フィラメント14の長手方向14aがスクリーン方向40に向くように、熱陰極蛍光ランプ10が筐体20に配列されている。そして、バルブ12の長手方向12a(すなわち、長径L1が延びる方向)もスクリーン方向40に向くように、熱陰極蛍光ランプ10は筐体20に配列されている。
本実施形態のバックライト100では、ランプ周辺の温度を低下させる冷却手段ないし放熱手段(例えば、冷却ファンなど)を用いなくとも、バルブ12の長手方向12aとフィラメント14の長手方向14aとがスクリーン方向40に向くようにすることによって、ランプ周辺温度の低下手段を実現している。その温度低減の効果については後述する。
【0015】
熱陰極蛍光ランプ10を収納する筐体20には、開口部(図1中の紙面上方)20aが形成されており、その開口部20aには、光学シート30が配置される。光学シート30の上方には、画像表示パネル(特に、液晶ディスプレイパネル)が配置され、すなわち、画像表示パネルが配置される方向がスクリーン方向40である。換言すると、面状光源としてのバックライト100の光が向かうべき方向(画像表示パネルが存在する方向)がスクリーン方向40となる。したがって、図示した例のように、バックライト100が平行に配置されている場合には、スクリーン方向40は、鉛直方向(または略鉛直方向)となり、一方、バックライト100が鉛直方向に配置されている場合(いわゆる壁掛け状態)には、スクリーン方向40は水平方向(または略水平方向)となる。
【0016】
光学シート(または、光学フィルム)30は、複数の層が積層されて構成されており、例えば、拡散シート、レンズシート、偏向シートからなる。光学シート30と対向する面には、筐体20の主面(ここでは底面)20bが位置している。この筐体20の主面(底面)20bは、反射板として機能し、熱陰極蛍光ランプ10から放射された光をスクリーン方向40に向ける働きを持っている。具体的には、熱陰極蛍光ランプ10から放射された光が、筐体20の主面(底面)20bへ向かってもその光は反射されて、光学シート30を通って画像表示パネルの方に向っていく。
【0017】
筐体20の少なくとも一部には、反射板21が形成されており、本実施形態の構成では、筐体20の底面20bに反射板21が位置している。この例では、筐体20の底面20bに位置する反射板21は、金属板(例えば、メッキが施された鉄、アルミニウム)の表面に白色樹脂(例えば、白色の酸化チタン又は炭酸カルシウムが分散されてなるポリエチレンテレフタレート樹脂)が貼り付けられて形成されている。また、筐体20の一部を樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))から構成して、筐体20の底面20bに、銀などのような金属を蒸着して反射板21を形成することもできる。筐体20の底面20bの端部からは、筐体20の側面(側壁)20cが延びており、その側面20cの上端部が、筐体20の開口部20aを規定している。
【0018】
本実施形態のバックライト100は、直下型の画像表示装置用のバックライトであり、例えば、26インチ以上(好ましくは、32インチ以上。例えば、32インチ、40インチ、42インチ、46インチ、65インチなど)の液晶ディスプレイ用の面状光源として使用される。図1に示した例では、熱陰極蛍光ランプ10は、4本用いられているが、この数に限定されるものではない。ただし、本実施形態の好適な一例では、32インチから46インチの画面サイズの液晶ディスプレイのパネルに対して、筐体20内に熱陰極蛍光ランプ10を4本から6本配置して、点灯・動作させることが可能である。
【0019】
図2は、本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10の断面構成を模式的に示している。本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10は、バックライト用として用いられるので、長寿命のものが使用される。好ましくは、熱陰極蛍光ランプ10は、公称寿命1.2万時間以上のランプであり、さらに好ましくは、公称寿命2万時間以上、または、3万時間以上のランプである。なお、ディスプレイとして従来から広く普及している冷陰極管(CRT)装置の寿命は、約20000時間であるので、それ以上の寿命があるランプであることが望まれる。
【0020】
寿命の定義としては大きく2つの要素があり、1つはランプの明るさの減退率(いわゆる輝度維持率)と不点(不点灯)である。バックライトとしての使用を想定すると、熱陰極蛍光ランプの寿命が律則するのは電極フィラメントに形成された熱電子放射性物質(エミッタ)の枯渇による不点である。寿命を推定するには、複数のランプを所定の点灯条件(ランプの定格電流における連続点灯試験)のライフ試験に掛け、ある一定時間(例えば、100時間、500時間、1000時間、2000時間、5000時間)点灯後のランプを順次破壊、または、非破壊によりエミッタの残存量を随時測定し、初期からの消耗量(消耗速度)を測定する。これらの結果を基に、点灯経過時間とエミッタ消耗量(または、エミッタ残存量)の関係をプロットし、1次関数によりフィッティングを行うことで、寿命を推定することができる。なお、公称寿命は、前記の取得データを基に消耗量のばらつき、測定ばらつき、製造ばらつき(いずれも標準偏差の3倍:3シグマを基準)を鑑みて決定される。
【0021】
図示した熱陰極蛍光ランプ10は、直管状のガラスバルブ12と、ガラスバルブ12の両端に配設された一対の電極11とから構成されている。
ガラスバルブ12は、ソーダ石灰ガラス製、または、バリウム・ストロンチウムシリケート(軟化点675℃の軟質ガラス)製である。バルブ12の寸法を例示すると、32インチ用としては、バルブ12の外径12mm、肉厚0.8mm、長さ730mmである。45インチ用としては、バルブ12の外径12mm、肉厚0.8mm、長さ1010mmである。65インチ用としては、バルブ12の外径25.5mm、肉厚0.8mm、長さ1499mmである。なお、105インチ用としては、バルブ12の外径38mm、肉厚0.9mm、長さ2367mmである。なお、バルブの肉厚は、1.0mmにすることもできる。
【0022】
ガラスバルブ12の内面には蛍光体(不図示)が塗布されている。より具体的には、ガラスバルブ12の内面12bには、アルミナからなる保護膜が形成されており、その保護膜の上に蛍光体層が積層されている。蛍光体層を構成する蛍光体は、例えば、赤(Y:Eu)、緑(LaPO:Ce,Tb)および青(BaMgAl1627:Eu,Mn)の各色を発光する希土類蛍光体を混合したものを用いることができる。なお、蛍光体は、他の希土類蛍光体を用いることができる。例えば、赤として、(Y,La):Eu、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、緑として、CeMgAl1119:Tb、GdMgB10:Ce,Tb、青として、(Sr,Ca)10(POl2:Euを挙げることができる。
【0023】
ガラスバルブ12内には、水銀と、希ガスが封入されている。本実施形態では、ガラスバルブ12内に、約5mgの水銀(不図示)と、緩衝用希ガスとして常温における圧力500Paのアルゴン(Ar)が封入されている。なお、バルブ12内に封入する水銀は、水銀単体の他に、例えば、亜鉛水銀、スズ水銀、ビスマス、インジウム水銀などのアマルガムの形態で封入することもできる。
【0024】
また、希ガスとしては、アルゴン(Ar)の混合比率が100%のものの他、アルゴン(Ar)にクリプトン(Kr)を混合したものを用いることもできる。クリプトン(Kr)の混合比(分圧比)は、例えば、20%〜60%であり、一例として、アルゴン:クリプトン=50%:50%の混合ガス(ガス圧600Pa)を挙げることができる。
本実施形態における電極11は、フィラメント14と、フィラメント14を保持する一対のリード線13と、この一対のリード線13を保持するビーズガラス15とから構成されている。ビーズガラス15は、ビーズマウントとも称される。図示した電極11は、いわゆるガラスビーズマウント方式のものである。
【0025】
フィラメント14は、タングステン製であり、本実施形態では、長寿命ランプにするためにエミッタ塗布量を大きくするように複雑なコイル形状としている。すなわち、太いタングステン線の周囲にゆるく覆うように細いタングステン線を巻つけて長い籠状の構造体を形成し、この構造体を螺旋状に巻いたものが二重コイルと称される。フィラメント14は前記二重コイルをいまいちど螺旋状に巻いて三重コイルとしたもの、または前記三重コイルをさらに螺旋状に巻いて四重コイルとしたものである。フィラメント14が三重コイルの場合、三重目のコイルが5〜7ターンの電極コイルである。またフィラメント14が四重コイルの場合、2〜4ターンの電極コイルである。
【0026】
フィラメント14に塗布されるエミッタは、例えば、ストロンチウム、カルシウム、バリウムの酸化物である。本実施形態では、長寿命ランプを実現するために、フィラメント14に塗布するエミッタ量を多くするようにしており、本実施形態では、熱陰極蛍光ランプ10の一本あたり、一対の電極のうちの一つのフィラメント14に5.0mg以上のエミッタを塗布している。なお、希ガスの構成をアルゴン100%でなく、アルゴンよりも原子量の大きいクリプトンを所定混合比で混入させると、エミッタがフィラメント14から飛散し難くなり、その技術的意味でランプ寿命を長くすることができる。
【0027】
図示した電極11は、ガラスバルブ12の封止部16にてピンチシールされている。また、ガラスバルブ12の少なくとも一方の端部には、排気管17が封着されている。この排気管17は、バルブ12内を排気したり、希ガスを封入したりする時に使用され、その排気・封入の後に封着されたものである。なお、排気管17をバルブ12の一端でなく、両端に設けると、ガス排気・封入を効率良く行うことができるメリットがある。また、それにより、バルブ12内部の不純物の割合を低下させることもできる。
【0028】
ガラスバルブ12の端部には、封止部16や排気管17を覆うように口金18が設けられている。なお、封止部16から外へ延びたリード線13と口金18との結線手法は、ランプ10の仕様に合わせて適宜決定すればよい。例えば、口金18の端面(紙面の左側と右側の端面)に、バックライトユニットへの取付け用のピンを配置し、そのピンとリード線13との結線を行うようにすることもできるし、あるいは、取付け用のピンを口金18の側面の一部(例えば、紙面正面側の円筒の一部)に配置し、そのピンとの結線を行うことも可能である。
【0029】
熱陰極蛍光ランプ10は、低圧水銀蒸気放電を応用したランプであり、ガラス管はランプの消費電力に適した直径と長さに設計され、直管および環形、U字形などがある。管の内壁には蛍光体が塗布されるが、蛍光体とガラスとの間には化学反応による特性の劣化を防ぐための保護膜(酸化アルミナやシリカ粉末など)が施される。電極となるフィラメントはタングステンの二重、または、三重コイルが一般的で、フィラメントには電子放射性物質であるエミッタが塗布されている。管内には液体水銀(または水銀アマルガム、合金)とバッファとしての希ガスが封入される。希ガスとしては一般にアルゴンが用いられることが多いが、ランプの構造や種類によってはクリプトンやネオンなどの混合ガスを用いることもある。
【0030】
発光の原理は、電子放出物質が塗布されている電極からは、放電(および電極を加熱する別の手段を講じ)により熱電子が放出されるだけの温度を維持することで、電子が供給されアーク放電を維持することができる(これは、冷陰極と大きく異なる点である)。この放電により得られた水銀原子の転移スペクトルのうち、主に254nmの紫外線を蛍光体の励起線として利用することで可視光に転換して利用している。
【0031】
つまり、このように熱陰極蛍光ランプは電極の構成が非常に重要な役割をしており、そして、この電極の寿命がランプとしての寿命を規制する。通常、この電極に塗布されたエミッタが長期間ランプを点灯することで枯渇してしまうため、一般の熱陰極を有する蛍光ランプの公称寿命は6,000時間〜18,000時間であり、そのまま、液晶テレビなどのバックライトとして使用するには要求される寿命に及ぶことはない。熱陰極の蛍光ランプをバックライトとして適用するためには長寿命化が必須の開発課題である。長寿命化には、いかにしてエミッタの消耗量(消耗速度)を抑え、かつ、初期に多くのエミッタ材料をフィラメントに形成するかが開発の要素となる。
【0032】
エミッタの消耗量を抑えるためには、封入する希ガスの圧力を高めたり、希ガスの中でも原子量の大きいガス(たとえば、クリプトンやキセノン)を用いたり、その混合比率を高めることである。これにより、電極におけるエミッタの熱による蒸発、始動時や再点灯時に発生するイオン衝撃による飛散を抑制することができる。また、初期のエミッタ量を多く塗布するためには、フィラメントの巻き数、巻き径、全長を長くすることで、より多くのエミッタを載せることができるため寿命を確保することが可能となる。
【0033】
しかしながら、これらの手段を用い、長寿命を実現することが可能となる一方、ランプの電極周辺の管面温度が高くなる(光学部材への温度インパクトのリスク増大;すなわち、熱による機械的応力が加わるとともに、化学反応の促進に伴う黄化等の変色や、酸化等による強度低下)という新たな課題が発生する。バッファガスの圧力増加はランプ管内のガスによる熱伝達により、最も温度の高くなるフィラメントの熱を管壁へ伝え易くし、管面温度を引き上げる方向に作用する。
【0034】
また、希ガスの種類も一般照明用蛍光ランプで通常使用されているアルゴンよりも、クリプトンやキセノンは質量(原子量)が大きく対流が起こりにくいためフィラメントからの熱をランプ管内で循環させにくく、局所的に温度の高い箇所を発生させ易い。さらに、電極のフィラメントの大型化は、熱源であるフィラメントからガラス管壁への距離が近くなり、熱が伝わりやすくなる。同時に、放射による熱伝達を考えると、熱を受けるガラス面から臨む立体角が大きいため放射による熱伝達も大きい。
【0035】
加えて、フィラメントが大きいことは、放熱面積が大きいということであり、熱陰極としての温度が上がりにくいことを意味している。調光時にはランプの主放電からだけでは十分な温度に達するためのエネルギーを得ることができず、そのため、点灯安定時も熱電子が放出できるのに十分なフィラメントの温度を保つため、常時、電極にはランプの主放電以外にもフィラメントには電力を供給しなければならない。その結果、フィラメント近傍のランプ管面温度が高くなるので、周辺部材の温度低減対策が要求される。
【0036】
一般に、バックライトユニットに組み込まれているランプ周辺には、光学的な性能を満足するための樹脂製の光学シート、フィルム類が多用されており、これらの耐熱性は高くない。そのため、熱陰極の蛍光ランプをバックライトとして組み込むと、早期に、ランプ電極近傍の管面の熱負荷による着色(黄変)や、たわみやそりが発生し著しく性能が低下する。熱対策のために、熱源であるランプと光学シート類との距離を離せば、バックライトユニットは厚くなり、薄型テレビとしてのデザイン性が損なわれると同時に、光源から被照面までの距離が遠ざかるため被照面の輝度も低下する(照度の逆二乗則)。あるいは、光学シートの高耐熱化を図ったり、ヒートシンクや冷却ファンの付与による放熱手段を追加するとこちらもコストアップに繋がることとなる。
【0037】
本実施形態の構成では、バルブ12が略楕円の断面形状を有し、フィラメント14の長手方向14aがスクリーン方向40に向くように配置されるとともに、バルブ12の略楕円の長手方向12aがスクリーン方向40に向くように配置されているので、例えば冷却ファンのような冷却手段・放熱手段を導入しなくても、ランプ10の周辺の温度を低下することが可能となる。なお、フィラメント14の長手方向14aは、フィラメント14と、それを保持する一対のリード線13との接続点によって決定することができる。また、バルブ12の長手方向12aは、例えばノギスでバルブの外径を測ることによって決定することができる。
【0038】
通常、反射板21及び光学シート30のいずれもが他の部材に比べて耐熱性が低いので、大画面の画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)に、大出力の電力を投入する場合には、ランプの温度上昇に伴って生じる反射板21・光学シート30の耐熱性の問題を回避する必要がある。それゆえに、大出力の電力を投入することができなかったり、バックライトに冷却手段・放熱手段(冷却ファンなど)を設ける必要が生じていた。そして、これが、熱陰極蛍光ランプをバックライトに適用した液晶TVが商品化され難い主たる要因であった。
【0039】
一方、本実施形態の構成においては、そのような冷却ファンを設けなくとも、ランプ周辺の温度低下を実現することができるので、バックライトの構成を簡便にすることができ、また、コストアップの問題を回避することができる。したがって、本実施形態の構成によれば、光学部材を含むランプ周辺の温度を低下することが可能な熱陰極蛍光ランプ10を備えたバックライト100を実現することができる。
【0040】
次に、図3から図5を参照しながら、本実施形態のバックライト100の構成の一例を詳述する。図3および図4は、それぞれ、本実施形態のバックライト100の構成を示す断面図および上面図である。図5は、本実施形態のバックライト100の構成を説明するための分解斜視図である。
図示した構成では、本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10が6本配置された例を示している。この例の筐体20の一部となる反射板21は、金属板(例えば、メッキを施した鉄製、または、アルミニウム製)から構成されており、その厚さは1.5mmである。反射板21の一部は、凸状(三角状)に屈曲されて、補助反射板22を構成している。補助反射板22を含む反射板21の上面(筐体の主面20b)には、反射シート23が形成されている。反射シート23は、白色の酸化チタン(又は炭酸カルシウム)が分散されてなるポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂層から構成されており、その厚さは2.0mmである。補助反射板22の頂点(または稜線)の一部には、光学シート30の下面を支持するための支柱24が形成されている。支柱24は、白色樹脂製である。なお、バックライト100の高さH(反射板21の上面から光学シート30が位置する面までの高さ)は、例えば、27mmである。
【0041】
バックライト100の反射板21の下方には、点灯回路(バラスト回路または安定器)70が配設されている。この例では、各ランプ10に、一つの点灯回路70が設けられており、したがって、6本のランプ10に6個の点灯回路70が使用されている。点灯回路70は、ランプ10に電気的に接続されており、また、調光機能も備えている。点灯回路70を収納するように反射板21の下には、下カバー72が設けられている。下カバー72は、厚さ1.5mmの金属板から構成されている。下カバー72と反射板21との間の空間には、例えば、配線が配設されている。なお、バックライト100に下カバー72は設けなくてもよく、その場合、点灯回路70は液晶ディスプレイ(例えば、液晶テレビ)の筐体内に配置しておくことも可能である。
【0042】
また、反射板21の端部には、ランプ10を保持するためのランプホルダ75が設けられている。ランプホルダ75は、例えば、白色樹脂製のものである。加えて、バックライト100の筐体の開口部20aには、光学シート30が配置されている。この例では、光学シート30は、上から順に、偏向シート31(住友3M社製のDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)、厚さ0.440mm)、レンズシート32(厚さ0.155mm)、拡散シート33(厚さ0.113mm)、拡散板34(厚さ2.0mm)を含んでいる。拡散板34の下面に、さらにレンズシートを設けることも可能である。
【0043】
さらに、光学シート30の上には、液晶パネル(例えば、厚さ約2mm)60が配設され、そして、その液晶パネル60及び光学シート30を覆うように上カバー62が配設されている。上カバー62は、例えば、厚さ1.5mmの金属板からなる。なお、この例における画像表示領域65(図4参照)は、1018mm×573mmであるが、勿論その寸法に限らず、他の寸法であってもよい。また、ランプ10の封止部16周辺は、ランプ10の非点灯部位を隠すために額縁領域として覆われて、その非点灯の部位は外部には見えないことになる。
【0044】
図6は、本実施形態のバックライト100の改変例を示している。図6に示した構成例は、図1に示した構成と基本的に同じであるが、1つの点灯回路(安定器)70を2つの熱陰極蛍光ランプ10で共有して使用している点が異なる。本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10は、フィラメント14の長手方向14aがスクリーン方向40に向いた構成をしているので(すなわち、フィラメント14が縦置きであるので)、2つの熱陰極蛍光ランプ10を1つの点灯回路70に接続して使用する場合でも、図示したように簡便に結線することができる。
【0045】
図6に示した例のように、2つの熱陰極蛍光ランプ10で1つの点灯回路(例えば、インバータを含む回路)70を使用すると、図3に示した構成例では、点灯回路70の使用個数は半分の3個となる。このように、点灯回路70の共有化により、その使用個数が少なくなるので、コスト削減を図ることができる。
なお、図6に示した構成では、反射板21に補助反射板22が形成された筐体20を示している。平担な反射板21に補助反射板22を設けると、ランプより放射される光の向きを制御(配光制御)することができ、ランプとランプの間の「暗がり」を打ち消すことができ、その結果、バックライト100の均斉度を向上させたり、熱陰極蛍光ランプ10の一本一本の強い輝度のイメージを薄くすることができる効果を得ることができる。
【0046】
次に、図7から図13を参照しながら、本実施形態のバックライト100のランプ周辺温度低下の効果について説明する。
本願発明者は、図7(a)に示すようなフィラメント14が縦置きの熱陰極蛍光ランプ10(本実施形態)と、図7(b)に示すようなフィラメント14が横置きの熱陰極蛍光ランプ10’(比較例)の効果の差異について検討していた。
【0047】
図7(a)は、本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10の構成を示しており、フィラメント14を縦置きに配置、すなわち、フィラメント14の長手方向(14a)をスクリーン方向40に向けた配置のものである。ここで、ランプホルダ75の外縁(基準線)から外側に位置する長さL1(額縁長;いわゆる非表示面)は30mmであり、その基準線からフィラメント14までの距離L2は8mmである。なお、図示した構成例では、封止部16から延びたリード線(延長部)13eは、口金18に取り付けられたピン19に電気的に接続されており、このピン19を通じて点灯回路(不図示)に電気的に接続することができる。
【0048】
一方、図7(b)に示した熱陰極蛍光ランプ10’は、図7(a)に示した熱陰極蛍光ランプ10をそのフィラメント14の長手方向が横向きになるように回転させたものであり、他の構成・寸法・点灯条件などは同じである。つまり、図7(b)に示した熱陰極蛍光ランプ10’は、フィラメント14の長手方向をスクリーン方向40に対して直角にしたものである。図7(a)及び(b)に示した何れのランプ10、10’も、フィラメント14は、画像表示領域(液晶表示領域、または、ユニット光学系)65内に位置している。
【0049】
本願発明者は、まず、輝度分布について両者(ランプ10、10’)の違いについて検討した。ここでは、熱陰極蛍光ランプ10の単体(1本)の視線方向を変えて、ランプ10(縦置き;実施形態)とランプ10’(横置き;比較例)との違いを観測した。
熱陰極蛍光ランプ10においてフィラメント14の長手方向14aに沿って視線方向を定めて、バルブ12の管面輝度(中心軸)を計測した結果を、図8(a)にてライン(a)で表す。一方、フィラメント14の長手方向14aに対して垂直に視線方向を定めて、バルブ12の管面輝度(中心軸)を計測した結果をライン(b)で表す。なお、スクリーン方向を基準に考えると、ライン(a)の結果は、図7(a)に示した構成例の結果に対応し、一方、ライン(b)の結果は、図7(b)に示した構成例の結果に対応する。
【0050】
図8(a)からわかるとおり、口金端よりの距離[mm]を変化させても、両者の管面輝度(中心軸)[cd/m]に有意な差は見いだせなかった。これは、管面輝度(中心軸)を、図8(b)に示すようにパーセントで換算して表記しても変わらず、同様に有意な差は見いだせなかった。
次に、図9に示すように、円形バルブの熱陰極蛍光ランプの管面輝度(ラインc)を基準にして、略楕円バルブを有するランプの長径方向から見た管面輝度(ラインa)と、略楕円バルブを有するランプの長径方向から見た管面輝度(ラインb)とを比較したのであるが、この検討によって有意な差異は見いだせなかった。なお、図9中の横軸は、ソケット端からの距離[mm]であり、縦軸は、中心を100%とした場合の管面輝度[%]である。
【0051】
したがって、円形バルブを有するランプでも、略楕円バルブを有するランプでも、視線方向による輝度分布の変化がないがゆえに、それらには光学的な観点から技術的に顕著な特徴はないというように思えた。なお、図8・図9中の測定値(輝度分布)が荒れているのは、測定系に組み込んだCCDカメラが拾ったノイズと蛍光膜面の塗り斑による輝度バラツキが重畳された結果によるものである。
【0052】
さらに、円形バルブを有する熱陰極蛍光ランプ10,10’をバックライトに組み込んで、両者(10,10’)の管面温度の違いを観測した。管面温度は、バックライトを壁掛けの状態で計測した。したがって、図7(a)に示した構成例(実施形態)では、フィラメント14の長手方向14aは水平方向となり、図7(b)に示した構成例(比較例)では、フィラメント14の長手方向14aは鉛直方向となる。
【0053】
図10は、ランプ(10,10’)のバルブ12における各側面(左側と右側)のフィラメント14付近の管面温度[℃]を計測し、その平均の値((左側温度と右側温度との平均の値)の結果を示している。図10の横軸はランプに投入する電力(Wla[W])であり、縦軸は温度(Tbulb[℃])である。図10においては、ライン(a)と(b)との結果に有意な差は見いだせなかった。
【0054】
したがって、熱陰極蛍光ランプ10,10’の光学的特性、熱的特性について両者に違いがあるとはいえず、本願発明者は、図7(a)と(b)に示した構成例において、バックライトとして有利な特徴といえるような差異は見出せないという結論付けをした。
しかしながら、図10に示した実験内容を、円形バルブのランプから略楕円バルブのランプに代えて行ったところ、顕著な差異が発見された。その結果を図11に示す。
【0055】
図10に示したものと同様に、図11は、略楕円バルブ12における各側面(左側と右側)のフィラメント14付近の管面温度[℃]を計測し、その平均の値(左側温度と右側温度との平均の値)の結果を示している。
図11において、ライン(a)の管面温度が、ライン(b)の管面温度よりも、おおよそ20℃〜10℃低下していることが観測された。ここで管面側面は、反射板21と光学シート30に対向する面であるので、この顕著な温度低下は、比較的耐熱性の弱い反射板21と光学シート30にとって耐久性や光学特性維持において非常に有利に働く。
【0056】
また、略楕円バルブのランプをバックライトに組み込んで、温度測定を行った結果を図12に示す。図12からも、ライン(a)の管面温度[℃]が、ライン(b)の管面温度[℃]から、約20℃低いことがわかる。なお、図12中の縦軸は、電極付近の管面温度(対面との平均値)[℃]であり、横軸は、調光を行った際のシステム入力電力[W]である。
【0057】
加えて、略楕円バルブのランプをバックライトに組み込んだ場合において、反射板21の温度[℃]と、システム入力電力[W]との関係を図13に示す。システム入力電力[W]が130W付近が、実験で使用したバックライトにおいてDuty比ほぼ100%の調光状態で、そして、80W付近がDuty比が40%又はそれ未満の調光状態を表している。
【0058】
図13に示すように、Duty比が40%以上の範囲で、ライン(a)と(b)とを比較すると、本実施形態の構成では、約13℃の温度低下の効果が反射板21の温度で確認され、そして、Duty比が40%未満の範囲では、その温度低下効果は約25℃も観測された。なお、ライン(a)及び(b)における構成は、バルブ管面と反射板との距離はどちらも同じである。
【0059】
通常、ある程度の温度低下(例えば、10℃又はそれ以上の温度低下)の効果を得るには、冷却ファンのような専用の部品を導入するか、ランプ電力の大幅な投入をあきらめるという手段を採用せざるを得ない。つまり、反射板21や光学シート30の耐熱性の問題を避けることはできず、ランプ輝度を上げたいとしても、仮に10℃の温度上昇がネック(すなわち、設計上の制約条件)となり、冷却部品(例えば、冷却ファン)を追加するか、バックライトの大幅な熱設計の変更を行うか、あるいは、ランプの出力(輝度)の向上をあきらめることを採用せざるを得ない。
【0060】
しかしながら、本実施形態の構成によれば、略楕円バルブ12の長手方向12aと、フィラメント14の長手方向14aをスクリーン方向40に揃えるという構成にすることにより、ランプ周辺温度(特に、反射板21と光学シート30の温度)の低下効果を実現することができる。したがって、新たに部品コストや、熱設計の開発コストをかけることなく、温度低下の効果を達成することができ、非常に大きな技術的貢献をもたらす。
【0061】
また、本実施形態の構成を用いれば、たとえ冷却・放熱手段を導入する場合でも、本実施形態の冷却効果を利用できるので、簡便なもの又は安価なものを導入できたり、あるいは、熱設計の変更を行う場合でも、軽微な変更で対応できる可能性も高まる。したがって、その点でも技術的価値がある。
本願発明者は、本実施形態の構成よる温度低下の効果がなぜ起こるか考察してみたところ、次のような仮説を考え出した。
【0062】
ランプの管断面が楕円のように扁平である場合、フィラメントの長軸方向が楕円の長径方向に位置すると、楕円の扁平面(曲率の小さい曲面)から見る熱源であるフィラメントの立体角が大きく熱放射による熱伝達を受けやすい。つまり、ランプの管面温度が高くなる。逆に、楕円の曲率の大きい曲面から見ると熱源のフィラメントの立体角が小さく熱放射による熱伝達を受けにくい。つまり、管面温度は低くなる。
【0063】
加えて、楕円の扁平面は相対的に曲率の大きい管面側と比して放熱(熱通過)面積が大きく、高い管面温度と相まって熱流束が大きくなる。すなわち熱の移動が大きいわけである。この熱の移動が大きい楕円の扁平面(上記のフィラメントの長手方向は、扁平面に平行に配置の条件)がスクリーン方向に向くと、耐熱性の低い光学シート、フィルム類への熱の移動量が大きくなり、シート類の温度を上昇せしめる。逆に、熱の移動の少ない楕円ランプの曲率の大きい面がスクリーン方向に向くと、シート類の温度を低減できる。替わりに、ランプホルダへの熱の移動が大きくなるが、ランプホルダは比較的耐熱性の高い樹脂(例えば、PETやPBTなどのエンジニアリングプラスティック)の採用が可能であり、形状などの設計の自由度も高く問題は起こり難いと考えられる。
【0064】
したがって、これらの楕円ランプにおけるフィラメントの配置と、バックライトユニットへのランプの組み込み配置を組み合わせることで、バックライトユニットの温度を適切に設計することができる。
また、略楕円バルブ12の長手方向12aと、フィラメント14の長手方向14aとは、厳密に、スクリーン方向40と一致していなくても、ほぼその方向に沿っていれば、上述の温度低下の効果を得ることができる。したがって、スクリーン方向40から、フィラメント14の長手方向14aが所定角度(例えば±10°)の範囲内でズレていても、本実施形態の構成でいうところの「スクリーン方向に向いている」に該当する。
【0065】
なお、上述した本実施形態に係るバルブ12の形状である「略楕円」は、一般的に断面が円形で作製されたバルブ12が製造プロセス上の誤差(公差)によって偏位し、円形と称されるものの幾何学的な円形でないものの形状まで含む意図ではない。ただし、典型的な製造プロセスを利用して、円形のバルブから、扁平率を上げて、本実施形態における略楕円のバルブを作製しても構わない。本実施形態における楕円ランプでは、長径L1/短径L2の値が1.6のものを用いたが、典型的には、1.2≦(L1/L2)≦1.8の範囲のものを用いることができる。
【0066】
本実施形態における略楕円のバルブ12を作製するには、例えば、図14(a)から(d)に示すようにすればよい。具体的には、図14(a)に示すように、断面円形のバルブ(ガラスバルブ)80を用意し、そのバルブ80を加熱して、略楕円中空の型(金型)81、82の間に配置する。型81、82は、例えば、ステンレス製である。次に、図14(b)に示すように、型81、82によってバルブ80を挟み込んで変形させると、図14(c)に示すように、略楕円状のバルブ12が形成される。最後に、型81、82を外せば、本実施形態の略楕円バルブ12が得られる。なお、バルブ12の内面に塗布されるアルミナや蛍光体は、適宜好適な段階で形成すればよい。あるいは、円形のランプを作製してから、それに熱を加えて、ランプのガラスを軟化させプレス加工して、略楕円バルブ12を製造することもできる。
【0067】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。また、本発明の実施形態に係るバックライトは、上述したように、例えば32インチ以上の大画面液晶TVに好適に用いられるが、それに限らず、中型(例えば、26インチ〜14インチ)の液晶TVにも適用可能である。さらに、公称寿命(又は平均寿命)が1.2万時間を下回るランプまたはバックライトであっても、本発明の実施形態によるランプ周辺温度低下の効果のメリットは得ることができるので、そのような用途に用いることも可能である。加えて、液晶TVに限らず、他の画像表示装置(特に、大画面用)のバックライトに用いることも可能であるし、あるいは、広告看板のバックライトに用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、ランプ周辺温度を低下することが可能な熱陰極蛍光ランプを備えたバックライトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係るバックライト100を模式的に示す断面図
【図2】本発明の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプ10を模式的に示す断面図
【図3】本発明の実施形態に係るバックライト100の構成を示す断面図
【図4】本発明の実施形態に係るバックライト100の構成を示す平面図
【図5】本発明の実施形態に係るバックライト100の構成を説明するための分解斜視図
【図6】本発明の実施形態に係るバックライト100の改変例を示す断面図
【図7】(a)は、熱陰極蛍光ランプ10(実施形態)の構成を示す上面図。(b)は熱陰極蛍光ランプ10’(比較例)の構成を示す上面図
【図8】(a)および(b)は、バルブ12の管面輝度(中心軸)に基づく輝度分布の結果を示すグラフ
【図9】各種ランプの管面輝度[%]に基づく輝度分布の結果を示すグラフ
【図10】(a)は、円形バルブ12における鉛直上側、(b)は、円形鉛直下側のフィラメント付近の管面温度[℃]を示すグラフ、(c)は、円形バルブ12における側面のフィラメント付近の管面温度(平均値)[℃]を示すグラフ
【図11】(a)は、略楕円バルブ12における鉛直上側、(b)は、略楕円バルブ12における側面のフィラメント付近の管面温度(平均値)[℃]を示すグラフ
【図12】略楕円バルブのランプ10をバックライトに組み込んだときの温度測定結果を示すグラフ
【図13】反射板21の温度[℃]とシステム入力電力[W]との関係を示すグラフ
【図14】(a)から(d)は、略楕円バルブ12の作製方法を説明するための工程斜視図
【符号の説明】
【0070】
10 熱陰極蛍光ランプ
11 電極
12 バルブ(ガラスバルブ)
12a 略円形バルブの長手方向
13 リード線
14 フィラメント(電極コイル)
14a フィラメントの長手方向
15 ビーズガラス
16 封止部
17 排気管
18 口金
19 ピン
20 筐体
21 反射板
22 補助反射板
23 反射シート
24 支柱
30 光学シート
31 偏向シート
32 レンズシート
33 拡散シート
34 拡散板
40 スクリーン方向
60 液晶パネル
62 上カバー
65 画像表示領域
70 点灯回路(安定器)
72 下カバー
75 ランプホルダ
80 円形バルブ
81、82 型(金型)
100 バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱陰極蛍光ランプと、
前記熱陰極蛍光ランプを収納する筐体と、
を備え、
前記熱陰極蛍光ランプは、内面に蛍光体が形成されたバルブと、前記バルブ内に設けられ、熱電子を放出するフィラメントとから構成されており、
前記バルブは、略楕円の断面形状を有しており、
前記フィラメントは、当該フィラメントの長手方向がスクリーン方向に向くように配置されており、
前記バルブは、前記略楕円の長手方向が前記スクリーン方向に向くように配置されている、バックライト。
【請求項2】
前記筐体の少なくとも一部には、反射板が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。
【請求項3】
前記筐体の前記スクリーン方向には、開口部が形成されており、
前記開口部には、光学シートが配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のバックライト。
【請求項4】
前記フィラメントは、四重コイルからなることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。
【請求項5】
互いに隣接する前記熱陰極蛍光ランプがペアとなって、一つの点灯回路に結線されていることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。
【請求項6】
前記バックライトは、直下型の画像表示装置用のバックライトであることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。
【請求項7】
前記バックライトは、32インチから46インチの画面サイズの液晶ディスプレイ用の光源であり、
前記筐体に、前記熱陰極蛍光ランプは4本から6本配置されていることを特徴とする、請求項6に記載のバックライト。
【請求項8】
前記熱陰極蛍光ランプは、公称寿命2万時間以上のランプであることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。
【請求項9】
前記熱陰極蛍光ランプの一本における一対の電極のうちの一個の前記フィラメントに5.0mg以上のエミッタが塗布されていることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。
【請求項10】
前記熱陰極蛍光ランプにおける前記バルブ内のガス圧は、500Pa以上であることを特徴とする、請求項1に記載のバックライト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−204795(P2008−204795A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39434(P2007−39434)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】