説明

熱電変換モジュールと該製造方法と該熱電変換モジュールを備える熱電変換ユニット

【課題】熱電変換素子が基板から剥がれることを好適に防止し得る熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】熱電変換モジュール2であって、一対の熱面を備えかつ熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子2aと、熱面のいずれか一つと電気的に接続される第一配線2b3が設けられた第一内面2b8と該第一内面2b8の裏面側の第一外面2b9を備える第一基板2bと、熱面の他の一つと電気的に接続される第二配線2c3が設けられた第二内面2c8と該第二内面2c8の裏面側の第二外面2c9を備えかつ第一基板2bより面積が小さい第二基板2cと、第一基板2bの第一内面2b8に当接されかつ第二基板2cの外周に沿う枠本体2f2と該枠本体2f2から第二基板2cの第二外面2c9の外周部に張出す張出片2f1を備える枠体2fと、張出片2f1と第二基板2cの第二外面2c9の間に設けられるシール部材8bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子を備える熱電変換モジュールと該熱電変換モジュールを備える熱電変換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱電変換素子と、熱電変換素子の一端部と電気的に接続される第一配線が塗布された第一基板と、熱電変換素子の他端部と電気的に接続される第二配線が塗布された第二基板を有する熱電変換モジュールが開示されている。特許文献2には、熱電変換モジュールと、熱電変換モジュールが設置される板部材と、板部材との間に流路を形成するケースを有する冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123964号公報
【特許文献2】特開平11−262343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし熱電変換素子が基板から剥がれることを好適に防止し得る熱電変換モジュールが従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の熱電変換モジュール等である。請求項1において熱電変換モジュールは、一対の熱面を備えかつ熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子と、熱面のいずれか一つと電気的に接続される第一配線が設けられた第一内面と該第一内面の裏面側の第一外面を備える第一基板と、熱面の他の一つと電気的に接続される第二配線が設けられた第二内面と該第二内面の裏面側の第二外面を備えかつ第一基板より面積が小さい第二基板と、第一基板の第一内面に当接されかつ第二基板の外周に沿う枠本体と該枠本体から第二基板の第二外面の外周部に張出す張出片を備える枠体と、張出片と第二基板の第二外面の間に設けられるシール部材を有する。
【0006】
したがって枠体の張出片によって第二基板が第一基板から離れる方向に移動することが規制される。そのため熱電変換素子が第二基板または第一基板から剥がれることが張出片によって抑制され得る。
【0007】
請求項2においてシール部材は、液状ガスケットまたは熱硬化性樹脂製の接着剤である。したがって液状ガスケットまたは熱硬化性樹脂製は、張出片と第二基板の隙間の大きさに対応して張出片と第二基板を接合し得る。そのため熱電変換素子に加わる外力、例えば張出片と第二基板の間をシールするために張出片を第二基板に押付けることで熱電変換素子に加わり得る外力を避け得る。かくして熱電変換素子が製造課程において潰れることが避けられ得る。
【0008】
請求項3において本体には、枠本体を貫通しかつ一端が第一基板と第二基板の間の空間に連通し、他端が熱電変換モジュールの外部空間に連通する連通穴が形成されている。したがって製造時において第一基板と第二基板の間の空間に発生し得るガスが連通穴によって外部空間へ排出され得る。例えば、液状ガスケットは、ペースト状から固体状に変化する際にガスが発生し、ガスが連通穴を通って外方へ排出され得る。そのためガスの発生によって前記空間の圧力が増大して、第一基板と第二基板が離れる方向に力を受けることが抑制される。かくして第一基板と第二基板が熱電変換素子から剥がれることが抑制され得る。
【0009】
請求項4において第二基板は、一つの第一基板に対して複数設けられる。したがって熱電変換素子による熱応力は、第二基板間の隙間によって分散され、熱電変換モジュールの熱応力の耐久性が高くなる。
【0010】
請求項5において熱電変換ユニットは、熱電変換モジュールを備え、第一基板の第一外面で塞がれることで流路を形成する第一基板側凹部を備える第一基板側ケースを有する。したがって第一基板は、第一基板側ケースを流れる熱媒体と熱交換され得る。また第一基板は、一枚によって複数の第二基板との間に設けられた熱電変換素子を流路に対して仕切ることができる。かくして第一基板によってシール部材の数を少なくし得る。
【0011】
請求項6において熱電変換ユニットは、熱電変換モジュールを備え、第二基板の第二外面で塞がれることで流路を形成する第二基板側凹部を備える第二基板側ケースを有する。第二基板側ケースは、枠体の張出片に当接する当接部を有する。したがって第二基板側ケースは、枠体の張出片によって第二基板を押すことが規制される。そのため第二基板を介して熱電変換素子が第二基板側ケースによって押されることが規制され、熱電変換素子が潰れることが抑制され得る。
【0012】
請求項7において熱電変換モジュールの製造方法は、一対の熱面を備えかつ熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子と、熱面のいずれか一つに対してペースト状の半田を介して並設される第一配線が設けられた第一内面と該第一内面の裏面側の第一外面を有する第一基板と、熱面の他の一つに対してペースト状の半田を介して並設される第二配線が設けられた第二内面と該第二内面の裏面側の第二外面を有しかつ第一基板より面積の小さい第二基板を重ねる工程と、各ペースト状の半田に熱を加えて第一配線と熱電変換素子および第二配線と熱電変換素子を接着する工程と、第二基板の外周に沿う枠本体と、該枠本体から第二基板の第二外面の外周部に向けて延出する張出片を備える枠体を準備し、枠本体を第一基板の第一内面に当接するように設置しかつ張出片をシール部材を介して第二基板の第二外面の外周部に設置する工程を有する。
【0013】
したがって枠体の張出片は、第二基板が第一基板から離間する方向に移動することを規制する。そのため熱電変換素子が第二基板および第一基板から剥がれることが張出片によって抑制され得る。またシール部材と枠体は、半田を加熱した後に第一基板または第二基板に設けられる。そのため半田の加熱時における熱がシール部材と枠体に影響することが避けられ得る。例えば枠体を基板に接合した状態で半田に熱が加えられると、枠体と基板の熱膨脹差によって枠体が基板から剥がれるおそれがあるが、本方法によると該おそれが解消され得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱電変換モジュールによれば、熱電変換素子が基板から剥がれ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】熱交換システムの構成図である。
【図2】熱電変換ユニットの斜視図である。
【図3】熱電変換ユニットの分解斜視図である。
【図4】図2のIV―IV線一部断面矢視図である。
【図5】熱電変換モジュールの一部分解斜視図である。
【図6】熱電変換モジュールの第一基板側からの斜視図である。
【図7】図2のVII―VII線一部断面矢視図である。
【図8】図2のVIII―VIII線断面矢視図である。
【図9】図8のIX―IX線断面矢視図である。
【図10】図4の一部に相当する他の形態に係る熱電変換ユニットの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一つの実施の形態を図1〜9にしたがって説明する。熱交換システム10は、例えば車両に設けられ、図1に示すように熱電変換ユニット1とラジエタ11と室内温冷熱ユニット14を有する。ラジエタ11は、配管20によって車両のエンジン12と接続される。配管20の途中に設けられたポンプ13によって第一熱媒体(クーラント液)がエンジン12とラジエタ11の間を循環する。第一熱媒体は、エンジン12から熱(温熱)を受け、ラジエタ11から外気に熱を放出する。
【0017】
図1に示すように熱電変換ユニット1は、配管20に接続された配管21によってラジエタ11と接続され、エンジン12と並列にラジエタ11に接続される。第一熱媒体は、配管20,21を経由して熱電変換ユニット1から冷熱を受けて冷却される。したがって第一熱媒体は、ラジエタ11のみならず熱電変換ユニット1によっても冷却され得る。
【0018】
図1に示すように熱電変換ユニット1は、配管22によって室内温冷熱ユニット14と接続される。配管22の途中に設けられたポンプ15によって第二熱媒体(クーラント液)が熱電変換ユニット1と室内温冷熱ユニット14の間を循環する。第二熱媒体は、熱電変換ユニット1から温熱を受け、室内温冷熱ユニット14から室内の空気に熱を放出する。したがって室内温冷熱ユニット14によって室内が暖められ得る。
【0019】
熱電変換ユニット1は、図2,3に示すようにハウジング3とハウジング3内に設けられる熱電変換モジュール2を有する。ハウジング3は、厚み方向に重ねられた第一基板側ケース4と第二基板側ケース5を有する。
【0020】
第一基板側ケース4と第二基板側ケース5は、図2,3に示すようにケース本体4a,5aと導入管4b,5bと吐出管4c,5cを一体に有する。ケース本体4a,5aは、板状の板部4a1,5a1と、板部4a1,5a1の外周から突出する周壁部4a6,5a6を有する。板部4a1,5a1には、熱電変換モジュール2に向けて開口する凹部4h、5hが形成され、凹部4h、5hによって流路4a2,5a2が形成される。
【0021】
流路4a2,5a2は、図3に示すように板部4a1,5a1に形成された仕切部4a7,5a7によって第一流路4a3,5a3と折返し流路4a4,5a4と第二流路4a5,5a5に仕切られてU字状に延出する。折返し流路4a4,5a4には、板部4a1,5a1からガイド部4a8が突出する。ガイド部4a8は、対向する流路4a3,4a5,5a3,5a5に対して隣接する流路4a3,4a5,5a3,5a5に向けて傾斜する傾斜面を有する。したがってガイド部4a8によって熱媒体が第一流路4a3,5a3から第二流路4a5,5a5に円滑に流れ得る。
【0022】
導入管4b,5bと吐出管4c,5cは、図3に示すように板部4a1,5a1の一端側に並設される。導入管4b,5bと吐出管4c,5cは、板部4a1,5a1から熱電変換モジュール2の反対方向(厚み方向)に延出する。導入管4b,5bには、第一流路4a3,5a3と連通する導入路4b1,5b1が形成される。導入路4b1,5b1は、流路4a2,5a2の深さ方向と同じ方向に延出し、板部4a1,5a1と導入管4b,5bを貫通する。吐出管4c,5cには、第二流路4a5,5a5と連通する吐出路4c1,5c1が形成される。吐出路4c1,5c1は、第二流路4a5,5a5の深さ方向と同じ方向に延出し、板部4a1,5a1と吐出管4c,5cを貫通する。
【0023】
ケース本体4a,5aには、図3,7に示すように流路4a2,5a2に突出する突出部4f,5fが形成される。突出部4f,5fは、導入路4b1,5b1に隣接する板部4a1,5a1の領域から熱電変換モジュール2の基板2b,2cに向けて突出する。突出部4f,5fは、導入路4b1,5b1から離れるほど基板2b,2cに近づく傾斜面を有する。したがって導入路4b1,5b1から導入された熱媒体は、基板2b,2cに向けて流れ、基板2b,2cの近傍において流量が多くなる。
【0024】
第一基板側ケース4は、図3,9に示すようにコネクタ部4gを一体に有する。コネクタ部4gは、筒状であってケース本体4aから側方に突出する。コネクタ部4gには、図示省略のコンバータのコネクタ部が接続される。コンバータは、コンバータに入力された電圧を所定の電圧に変換して、第一基板側ケース4に設けられた電極部材6を介して熱電変換モジュール2に直流電流を供給する。
【0025】
第一基板側ケース4は、図3,9に示すように位置決め部4a9を一体に有する。位置決め部4a9は、周壁部4a6から突出して、熱電変換モジュール2の凹部2b7に突入する。したがって位置決め部4a9によって熱電変換モジュール2の第一基板側ケース4に対する位置が決定され得る。
【0026】
ケース4,5は、図示省略の第一と第二の成形型を閉じ、第一と第二の成形型間に樹脂材料を注入し、第一と第二の成形型を開くことでケース本体4a,5aと導入管4b,5bと吐出管4c,5cが一体に成形される。コネクタ部4gは、スライド型を用いて形成される。
【0027】
図4に示すように熱電変換モジュール2は、熱電変換素子2aと基板2b,2cとフィン2d,2eを有する。熱電変換素子(ペルチェ素子)2aは、異なる金属、導体または半導体から構成される。熱電変換素子2aは、直流電流を流すことでペルチェ効果を奏し、第一熱面と第二熱面のいずれか一つが吸熱部となって吸熱し、他の一つが放熱部となって放熱する。複数の熱電変換素子2aは、基板2b,2cの間に設けられる。
【0028】
熱電変換モジュール2は、図3,6に示すように一枚の第一基板2bと、第一基板2bより小さい複数(例えば10枚)の第二基板2cを有する。基板2b,2cは、図4に示すように導電性を有する金属材料から形成される板本体2b1,2c1を有する。板本体2b1,2c1は、凹部4h側に位置する外面2b9,2c9と、外面2b9,2c9の裏側面である内面2b8,2c8を有する。内面2b8,2c8には、絶縁層2b2,2c2と配線2b3,2c3が設けられる。絶縁層2b2,2c2は、板本体2b1,2c1の内面2b8,2c8に塗布され、板本体2b1,2c1と配線2b3,2c3を電気的に遮断する。
【0029】
配線2b3,2c3は、図4,5を参照するように導電性の材料から形成され、絶縁層2b2,2c2の表面に塗布(印刷)される。配線2b3,2c3には、熱電変換素子2aが当接されかつ半田付けされる。配線2b3,2c3は、協働して複数の熱電変換素子2aを直列に接続する。したがって電流は、熱電変換素子2aを順番に流れて基板2b,2c間を交互に流れる。
【0030】
第一基板2bに設けられた第一配線2b3は、図5を参照するように主配線2b4と接続配線2b5と端部2b6を有する。主配線2b4は、第二基板2cによって覆われる領域を延出する。主配線2b4には熱電変換素子2aが半田付けされる。接続配線2b5は、第二基板2cによって覆われない領域を延出して、第一基板2bに設置される枠体2fによって覆われる。端部2b6は、接続配線2b5から枠体2fの外へ延出する。端部2b6には、ケース4に設けられた電極部材6が電気的に接続される(図8参照)。
【0031】
第一基板2bには、図3,6に示すように二個の第一フィン2dが設けられる。一方、各第二基板2cには各一つの第二フィン2eが設けられる。フィン2d,2eは、基板2b,2cから熱電変換素子2aと反対方向に突出する。フィン2d,2eは、図4に示すように板状でかつジグザグ形状であって、流路4a2,5a2内に設置される。フィン2d,2eには、ジグザグ間に隙間2d1,2e1が形成される。隙間2d1,2e1は、流路4a2,5a2を遮断しないように流路4a2,5a2の長手方向に延出する。
【0032】
第一基板2bは、図3に示すように第一基板側ケース4の周壁部4a6の内周に設置される。第一基板2bには、位置決め部4a9が設置される凹部2b7が形成される。したがって第一基板2bは、凹部2b7と外周縁によって第一基板側ケース4に対して位置決めされる。第一基板2bは、第一基板側ケース4の凹部(第一凹部)4hの開口部を覆って、ケース本体4aと協働して流路4a2を形成する。
【0033】
第一基板2bには、図3,5に示すように熱電変換素子2aを介して第二基板2cが所定間隔で設置される。第一基板2bに第二基板2cを設置した状態において枠体2fが第一基板2bに設置される。枠体2fは、第一基板2bに接着剤等によって接合される。
【0034】
図4,5に示すように枠体2fは、樹脂製で枠本体2f2と張出片2f1を一体に有する。枠本体2f2は、第二基板2cの外周に沿って延出し、各第二基板2cを区画する。枠本体2f2は、第一基板2bから第二基板2cを超えて延出する。張出片2f1は、枠本体2f2から第二基板2cの外側面(第二面)に張出す。張出片2f1は、第二基板2cの外側面の全周に渡って延出する。張出片2f1の中央には、開口窓2f3が形成され、開口窓2f3からフィン2eが突出する。
【0035】
張出片2f1と第二基板2cの間には、図4に示すようにシール部材8bが設けられる。シール部材8bは、液状ガスケットであって、第二基板2cの外側面外周部の全周と張出片2f1の間を液密にする。したがってシール部材8bによって流路5a2内の熱媒体が第二基板2cと枠体2fの間を通って熱電変換素子2aに浸入することが抑制される。
【0036】
枠本体2f2には、図4に示すように連通穴2f4が形成される。連通穴2f4は、枠本体2f2を貫通し、第一基板2bと第二基板2cの間の空間と枠体2fの外側を連通する。したがって製造課程において発生したガスが前記空間から外方に排出される。例えばシール部材8bである液状ガスケットは、ペースト状から固体状に変化する際にガスが発生して、ガスが前記空間内から連通穴2f4を通って外方へ排出される。
【0037】
熱電変換モジュール2の製造方法は、先ず図5を参照するように基板2b,2cにペースト状の半田を塗布し、半田によって基板2b,2cに対して熱電変換素子2aを接合する。半田に熱を加えて半田をペースト状から固体状にする。枠体2fまたは第二基板2cに図4に示すシール部材8bを塗布し、枠体2fを第一基板2bに設置する。
【0038】
熱電変換モジュール2は、図4に示すように第一基板側ケース4に設置される。第一基板側ケース4と第一基板2bの間には、シール部材8aが設けられる。シール部材8aは、液状ガスケットであって、第一基板側ケース4と第一基板2bの外周部の間、および第一基板側ケース4の仕切部4a7と第一基板2bの間に設けられる。
【0039】
図3,4に示すように熱電変換モジュール2の一方が第一基板側ケース4によって覆われ、熱電変換モジュール2の他方が第二基板側ケース5によって覆われる。第二基板側ケース5の開口部は、第二基板2cと枠体2fによって覆われ、第二基板2cと枠体2fとケース本体部5aによって流路4a2が形成される。第二基板側ケース5の周壁部5a6は、第一基板側ケース4の周壁部4a6と張出片2f1に当接し、周壁部4a6と張出片2f1に溶着あるいは接着剤によって接合される。第二基板側ケース5の仕切部5a7は、張出片2f1に当接し、張出片2f1に溶着あるいは接着剤によって接合される。
【0040】
図8,9に示すようにケース4には、棒状の電極部材6が設けられる。電極部材6は、電性のある金属材料から棒状に形成され、ケース4に対してインサート成形される。電極部材6は、埋設部6aと第一端部6bと第二端部6cと接続部6dを一体に有する。埋設部6aは、ケース本体4a内をケース本体4aの長手方向に延出する第一部6a1と、第一部6a1から直交方向に延出する第二部6a2を有する。第一端部6bは、ケース本体4aから突出してコネクタ部4g内を延出する。第一端部6bは、コネクタ部4gに挿入されるコネクタと電気的に接続されてコネクタを経由してコンバータと電気的に接続される。
【0041】
図8,9に示すように第二端部6cは、第一基板2bの凹部2b7から第一基板2bの厚み方向に延出しかつ第一基板2bの表面よりも上方へ延出する。第二端部6cと接続部6dの間には屈曲部6eが形成される。屈曲部6eには溝が形成され、屈曲部6eが屈曲容易な構造になっている。屈曲部6eは、製造課程で折曲げられて、接続部6dを図9の仮想線で示す製造課程位置から実線で示す使用位置に移動させる。
【0042】
図9に示すように接続部6dは、製造課程位置において第一基板2bの表面、すなわち第一基板側ケース4の反対側領域を開放する。そのため第一基板側ケース4に対して第一基板2bをセットする際に接続部6dが邪魔にならない。第一基板側ケース4に第一基板2bをセットした後に、屈曲部6eを折り曲げ、接続部6dを製造課程位置から使用位置に移動させる。使用位置において接続部6dを配線2b3に半田付けする。
【0043】
熱電変換ユニット1は、図示省略のコンバータと電気的に接続され、図1に示すように配管21,22と接続される。コンバータは、図9に示す電極部材6を介して各熱電変換素子2aに電流を供給する。熱電変換素子2aは、第一熱面において吸熱し、図4に示すように第一基板2bと第一フィン2dを介して第一基板側ケース4に冷熱を放出する。熱電変換素子2aは、第二熱面において放熱し、第二基板2cと第二フィン2eを介して第一基板側ケース4に温熱を放出する。
【0044】
図1に示すように第一基板側ケース4には、配管21を介してポンプ13によって第一熱媒体が供給される。第一熱媒体は、図3に示す導入管4bから流路4a2に導入され、吐出管4cから排出される。第一熱媒体は、流路4a2を流れることで第一フィン2dと第一基板2bを介して熱電変換素子2aから冷熱を受ける(図4参照)。
【0045】
図1に示すように第二基板側ケース5には、配管22を介してポンプ15によって第二熱媒体が供給される。第二熱媒体は、図3に示す導入管5bから流路5a2に導入され、吐出管5cから排出される。第二熱媒体は、流路5a2を流れることで第二フィン2eと第二基板2cを介して熱電変換素子2aから温熱を受ける(図4参照)。第二熱媒体は、図1に示すように室内温冷熱ユニット14内を流れることで室内の空気に温熱を供給する。
【0046】
図3に示すように第一基板側ケース4内の第一熱媒体の流れ方向と第二基板側ケース5内の第二熱媒体の流れ方向は、対向している。そのため熱電変換素子2aの吸熱部側と放熱部側の差は、熱電変換素子2aの位置における差が小さい。かくして熱電変換モジュール2の全体の熱効率が高い。
【0047】
以上のように熱電変換モジュール2は、図4に示すように一対の熱面を備えかつ熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子2aと、熱面のいずれか一つと電気的に接続される第一配線2b3が設けられた第一内面2b8と第一内面2b8の裏面側の第一外面2b9を備える第一基板2bと、熱面の他の一つと電気的に接続される第二配線2c3が設けられた第二内面2c8と第二内面2c8の裏面側の第二外面2c9を備えかつ第一基板2bより面積が小さい第二基板2cと、第一基板2bの第一内面2b8に当接されかつ第二基板2cの外周に沿う枠本体2f2と該枠本体2f2から第二基板2cの第二外面2c9の外周部に張出す張出片2f1を備える枠体2fと、張出片2f1と第二基板2cの第二外面2c9の間に設けられるシール部材8bを有する。
【0048】
したがって枠体2fの張出片2f1によって第二基板2cが第一基板2bから離れる方向に移動することが規制される。そのため熱電変換素子2aが第二基板2cまたは第一基板2bから剥がれることが張出片2f1によって抑制され得る。
【0049】
図4に示すようにシール部材8bは、液状ガスケットである。したがって液状ガスケットによって第二基板2cと枠体2fの間がシールされる。また液状ガスケットは、張出片2f1と第二基板2cの隙間の大きさに対応して張出片2f1と第二基板2cを接合し得る。そのため熱電変換素子2aに加わる外力、例えば張出片2f1と第二基板2cの間をシールするために張出片2f1を第二基板2cに押付けることで熱電変換素子2aに加わり得る外力を避け得る。かくして熱電変換素子2aが製造課程において潰れることが避けられ得る。
【0050】
図4に示すように枠本体2f2には、枠本体2f2を貫通しかつ一端が第一基板2bと第二基板2cの間の空間に連通し、他端が熱電変換モジュール2の外部空間に連通する連通穴2f4が形成されている。したがって製造時において第一基板2bと第二基板2cの間の空間に発生し得るガスが連通穴2f4によって外部空間へ排出され得る。例えば、液状ガスケットは、ペースト状から固体状に変化する際にガスが発生し、ガスが連通穴2f4を通って外方へ排出され得る。そのためガスの発生によって前記空間の圧力が増大して、第一基板2bと第二基板2cが離れる方向に力を受けることが抑制される。かくして第一基板2bと第二基板2cが熱電変換素子2aから剥がれることが抑制され得る。
【0051】
図3に示すように第二基板2cは、一つの第一基板2bに対して複数設けられる。したがって熱電変換素子2aによる熱応力は、第二基板2c間の隙間によって分散され、熱電変換モジュール2の熱応力の耐久性が高くなる。
【0052】
図3,4に示すように熱電変換ユニット1は、第一基板2bの第一外面2b9で塞がれることで流路4a2を形成する第一基板側凹部4hを備える第一基板側ケース4を有する。したがって第一基板2bは、第一基板側ケース4を流れる熱媒体と熱交換され得る。また第一基板2bは、一枚によって複数の第二基板2cとの間に設けられた熱電変換素子2aを流路に対して仕切ることができる。かくして第一基板2bによってシール部材の数を少なくし得る。
【0053】
図3,4に示すように熱電変換ユニット1は、第二基板2cの第二外面2c9で塞がれることで流路5a2を形成する第二基板側凹部5hを備える第二基板側ケース5を有する。第二基板側ケース5は、枠体2fの張出片2f1に当接する当接部(5a6,5a7)を有する。したがって第二基板側ケース5は、枠体2fの張出片2f1によって第二基板2cを押すことが規制される。そのため第二基板2cを介して熱電変換素子2aが第二基板側ケース5によって押されることが規制され、熱電変換素子2aが潰れることが抑制され得る。
【0054】
熱電変換モジュール2の製造方法は、図4を参照するように一対の熱面を備えかつ熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子2aと、熱面のいずれか一つに対してペースト状の半田を介して並設される第一配線2b3が設けられた第一内面2b8と該第一内面2b8の裏面側の第一外面2b9を有する第一基板2bと、熱面の他の一つに対してペースト状の半田を介して並設される第二配線2c3が設けられた第二内面2c8と該第二内面2c8の裏面側の第二外面2c9を有しかつ第一基板2bより面積の小さい第二基板2cを重ねる工程と、各ペースト状の半田に熱を加えて第一配線2b3と熱電変換素子2aおよび第二配線2c3と熱電変換素子2aを接着する工程と、第二基板2cの外周に沿う枠本体2f2と、該枠本体2f2から第二基板2cの第二外面2c9の外周部に向けて延出する張出片2f1を備える枠体2fを準備し、枠本体2f2を第一基板2bの第一内面2b8に当接するように設置しかつ張出片2f1をシール部材8bを介して第二基板2cの第二外面2c9の外周部に設置する工程を有する。
【0055】
したがって枠体2fの張出片2f1は、第二基板2cが第一基板2bから離間する方向に移動することを規制する。そのため熱電変換素子2aが第二基板2cおよび第一基板2bから剥がれることが張出片2f1によって抑制され得る。またシール部材8bと枠体2fは、半田を加熱した後に第一基板2bまたは第二基板2cに設けられる。そのため半田の加熱時における熱がシール部材8bと枠体2fに影響することが避けられ得る。例えば枠体2fを基板2b,2cに接合した状態で半田に熱が加えられると、枠体2fと基板2b,2cの熱膨脹差によって枠体2fが基板2b,2cから剥がれるおそれがあるが、本方法によると該おそれが解消され得る。
【0056】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態であっても良い。例えば熱交換システム10は、車両の室内の暖房に使用されても良いし、冷房に使用されても良い。冷房に使用する場合は、第一基板側ケース4が配管22と接続され、第二基板側ケース5が配管21と接続される。
【0057】
熱交換システム10は、車両の室内の冷暖房に使用されても良いし、電池等の車両部品の冷却または加熱に使用されても良いし、あるいは車両以外の製品を冷却または加熱するために使用されても良い。
【0058】
ケース4,5内に供給される熱媒体は、液体でも良いし、気体でも良い。
【0059】
熱電変換モジュール2の製造方法は、ペースト状の半田によって基板2b,2cに熱電変換素子2aを接合し、半田に熱を加えて半田を固体状にした後に、シール部材8bと枠体2fを基板2b,2cに設けても良いし、シール部材8bと枠体2fを基板2b,2cに設けた後に、半田に熱を加えて半田をペースト状から固体状にしても良い。
【0060】
枠体2fは、図10に示すように突出部2f5を有していても良い。突出部2f5は、枠本体2f2から第一基板2bの外周に沿って延出し、突出部2f5の内周側に第一基板2bが嵌め込まれる。突出部2f5と第一基板側ケース4の間、および第一基板2bと第一基板側ケース4の間には、シール部材8aが設けられる。
【0061】
シール部材8a,8bは、液状ガスケットでも良いし、熱硬化性樹脂製の接着剤であっても良い。したがって接着剤によって第二基板2cと枠体2fの間がシールされる。また接着剤は、張出片2f1と第二基板2cの隙間の大きさに対応して張出片2f1と第二基板2cを接合し得る。そのため熱電変換素子2aに加わる外力、例えば張出片2f1と第二基板2cの間をシールするために張出片2f1を第二基板2cに押付けることで熱電変換素子2aに加わり得る外力を避け得る。かくして熱電変換素子2aが製造課程において潰れることが避けられ得る。
【0062】
シール部材8a,8bは、液状ガスケットでも良いし、環状のゴム部材等であっても良い。
【0063】
枠体2fは、第一基板2bに接着剤等によって接合されても良いし、枠体2fが第一基板2bに接合されず、第一基板2b等とともにケース4,5間に設けられ、ケース4,5によって保持されても良い。
【0064】
熱電変換モジュール2は、フィン2d,2eを有していても良いし、フィン2d,2eを有していなくても良い。
【0065】
熱電変換ユニット1は、ケース4,5を有していても良いし、ケース4,5の一つまたは両方を有しておらず、ケースを有していない側では熱電変換モジュール2と外気が熱交換しても良い。
【0066】
熱電変換素子2aは、ペルチェ効果を奏するペルチェ素子であっても良いし、ゼーベック効果またはトムソン効果を奏する素子であっても良い。
【0067】
配線2b3,2c3は、基板2b,2cに印刷によって設けられても良いし、接着、塗布などによって基板2b,2cに設けられても良い。
【符号の説明】
【0068】
1…熱電変換ユニット
2…熱電変換モジュール
2a…熱電変換素子
2b…第一基板
2b3…第一配線
2c…第二基板
2c3…第二配線
2f…枠体
2f1…張出片
2f2…枠本体
2f4…連通穴
4…第一基板側ケース
4a2〜4a5,5a2〜5a5…流路
4h…第一基板側凹部
5…第二基板側ケース
5h…第二基板側凹部
8a,8b…シール部材
10…熱交換システム
11…ラジエタ
12…エンジン
13,15…ポンプ
14…室内温冷熱ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールであって、
一対の熱面を備えかつ前記熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子と、
前記熱面のいずれか一つと電気的に接続される第一配線が設けられた第一内面と該第一内面の裏面側の第一外面を備える第一基板と、
前記熱面の他の一つと電気的に接続される第二配線が設けられた第二内面と該第二内面の裏面側の第二外面を備えかつ前記第一基板より面積が小さい第二基板と、
前記第一基板の前記第一内面に当接されかつ前記第二基板の外周に沿う枠本体と該枠本体から前記第二基板の前記第二外面の外周部に張出す張出片を備える枠体と、
前記張出片と前記第二基板の前記第二外面の間に設けられるシール部材を有する熱電変換モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電変換モジュールであって、
前記シール部材は、液状ガスケットまたは熱硬化性樹脂製の接着剤である熱電変換モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の熱電変換モジュールであって、
前記枠本体には、前記枠本体を貫通しかつ一端が前記第一基板と前記第二基板の間の空間に連通し、他端が前記熱電変換モジュールの外部空間に連通する連通穴が形成されている熱電変換モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱電変換モジュールであって、
前記第二基板は、一つの前記第一基板に対して複数設けられる熱電変換モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の熱電変換モジュールを備える熱電変換ユニットであって、
前記第一基板の前記第一外面で塞がれることで流路を形成する第一基板側凹部を備える第一基板側ケースを有する熱電変換ユニット。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の熱電変換モジュールを備える熱電変換ユニットまたは請求項5に記載の熱電変換ユニットであって、
前記第二基板の前記第二外面で塞がれることで流路を形成する第二基板側凹部を備える第二基板側ケースを有し、
前記第二基板側ケースは、前記枠体の前記張出片に当接する当接部を有する熱電変換ユニット。
【請求項7】
熱電変換モジュールの製造方法であって、
一対の熱面を備えかつ前記熱面のいずれか一つが吸熱部で他の一つが放熱部になる熱電変換素子と、前記熱面のいずれか一つに対してペースト状の半田を介して並設される第一配線が設けられた第一内面と該第一内面の裏面側の第一外面を有する第一基板と、前記熱面の他の一つに対してペースト状の半田を介して並設される第二配線が設けられた第二内面と該第二内面の裏面側の第二外面を有しかつ前記第一基板より面積の小さい第二基板を重ねる工程と、
各前記ペースト状の半田に熱を加えて前記第一配線と前記熱電変換素子および前記第二配線と前記熱電変換素子を接着する工程と、
前記第二基板の外周に沿う枠本体と、該枠本体から前記第二基板の前記第二外面の外周部に向けて延出する張出片を備える枠体を準備し、前記枠本体を前記第一基板の前記第一内面に当接するように設置しかつ前記張出片をシール部材を介して前記第二基板の前記第二外面の外周部に設置する工程を有する熱電変換モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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