説明

熱電変換素子およびその製造方法

【課題】 ナノサイズのワイヤを確実に形成する。
【解決手段】 基板50を用意し、基板50の表面に対して垂直に配向した複数のカーボンナノチューブ40を形成する。複数のカーボンナノチューブ40の両端のうち、基板50に接合された側とは反対側の端部41が露出するように複数のカーボンナノチューブ40を樹脂部材20で固定する。そして、樹脂部材20から基板50を取り外すと共に、複数のカーボンナノチューブ40の両端41、42のうち、基板50に接合された側とは反対側の端部41をそれぞれ開口し、複数のカーボンナノチューブ40の内部にそれぞれ熱電変換材を充填してナノワイヤ10を形成する。この後、ナノワイヤ10の両端41、42が樹脂部材20から露出する面にそれぞれ電極31、32を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2電極間の温度差を起電力に変換する熱電変換素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱電変換素子は、半導体の両端に温度差を生じさせることで電気を発生させるゼーベック効果を利用したものとして知られている。このような熱電変換素子の構造は、例えば2枚の電極プレート間に複数の熱電変換材料が接続されたものになっている。
【0003】
上記熱電変換素子の性能は、熱電変換の性能指数Zとして求めることができる。すなわち、熱電変換の性能指数Zは、Z=Sσ/κで表される。Sは熱電変換材料のゼーベック係数、σは熱電変換材料の電気伝導率、κは熱電変換材料の熱伝導率である。また、ゼーベック係数Sは、S=πT[∂D(ε)/∂ε]/3eD(ε)で表される。kはボルツマン係数、D(ε)は熱電変換材料の状態密度、eは電荷である。なお、ε=ε(フェルミエネルギー)である。
【0004】
上記ゼーベック係数Sは、フェルミエネルギー近傍の状態密度の変化(∂D(ε=ε)/∂ε)が急峻であるほど大きな値となる。また、ゼーベック係数Sの値が大きいほど、熱電変換の性能指数Zの値も大きくなる。一方、熱電変換材料をナノスケールのワイヤ形状にすることで状態密度に量子効果を発現させ、急峻な状態密度を実現できることが知られている。これにより、ゼーベック係数S、ひいては熱電変換の性能指数Zを高めることができると考えられる。
【0005】
そこで、量子効果を発現させるため、ナノスケールのワイヤであるナノワイヤを作製する試みが発表されている(例えば、非特許文献1参照)。図6は、従来のナノワイヤ作製の様子を示した図である。
【0006】
まず、図示しない真空槽にヒータJ1が備えられた炉J2を用意し、この炉J2の中に液状Bi(ビスマス)の熱電材料J3を入れる。そして、ナノサイズ(4〜15nm)の孔が形成された厚さ数十μmの陽極酸化アルミナ層J4が設置された基板J5を、陽極酸化アルミナ層J4が炉J2側に向くように炉J2に設置する。
【0007】
この後、ヒータJ1で炉J2を加熱して炉J2内に熱電材料J3の蒸気を発生させると共に、陽極酸化アルミナ層J4の下部(炉J2側;温度T1)と上部(基板J5側;温度T2)とに温度差を生じさせ、下部が高温となる条件(T1>T2)で順次、温度を低下させる。これにより、熱電材料J3の蒸気が陽極酸化アルミナ層J4の孔から基板J5側に向けて順次、凝縮・析出し、Biのナノワイヤが陽極酸化アルミナ層J4の孔の中に形成される。
【非特許文献1】Joseph P. Heremans、“Thermoelectric power, electrical and thermal resistance, and magnetoresistance of nanowire composites.” Mat. Res. Soc. Symp. Pros.、Vol. 793、S1.1.1-S1.1.12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では、陽極酸化アルミナ層J4に形成された孔のサイズがナノサイズであるので、蒸発したBiがこの孔に進入しない可能性がある。このため、陽極酸化アルミナ層J4に形成された多数の孔のうち、陽極酸化アルミナ層J4を貫通するナノワイヤが形成される数が極めて少なく、歩留まりが低下してしまう。
【0009】
なお、各ワイヤの両端に電極を設置して熱電変換素子を形成しても、ワイヤの数が少ないため、両電極間の抵抗が高くなってしまう。
【0010】
また、上記陽極酸化アルミナ層J4の厚みは数十μmであるため、形成されるワイヤの長さも数十μmとなる。このため、ナノワイヤの両端に設置される2電極間の温度差が得られず、熱電変換素子として電気を発生させられない可能性がある。さらに、ナノワイヤの母材となる陽極酸化アルミナ層J4の熱伝導率が良いため、熱の大部分は熱電変換能力を持たない陽極酸化アルミナ層J4を通過してしまい、熱損失を生じさせて熱電変換素子の性能を下げてしまう。
【0011】
なお、Si基板上にAlとSi(あるいはGe)の混合膜をスパッタ成膜し、Alナノ柱を形成した後、濃硫酸でAlナノ柱をエッチングして多孔体を形成し、電着にて多孔体にBiTeを充填する方法が報告されている(特開2004−193526号公報)。しかしながら、この電着によってワイヤを形成する方法においても、上記と同様に、歩留まり良くワイヤを形成できない、薄膜の母材(混合膜)でしかワイヤを形成できない、そして母材の熱伝導率が高い、という問題がある。
【0012】
本発明は、上記点に鑑み、ナノサイズのワイヤを確実に形成してなる熱電変換素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明では、基板(50)を用意し、基板の表面に対して垂直に配向した複数のカーボンナノチューブ(40)を形成する。そして、複数のカーボンナノチューブの両端(41、42)のうち、基板に接合された側とは反対側の端部(41)が露出するように複数のカーボンナノチューブを樹脂部材(20)で固定する。この後、樹脂部材から基板を取り外すと共に、複数のカーボンナノチューブの両端(41、42)のうち、基板に接合された側とは反対側の端部をそれぞれ開口して、複数のカーボンナノチューブの内部にそれぞれ熱電変換材を充填してナノワイヤ(10)を形成する。最後に、ナノワイヤの両端が樹脂部材から露出する面にそれぞれ電極(31、32)を形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、上記とは異なる方法として、樹脂部材で固定したカーボンナノチューブを除去して複数の孔(21)を形成し、この複数の孔の内部にナノワイヤを形成することを特徴としている。さらに異なる方法として、カーボンナノチューブをセラミック部材(90)で固定した後、カーボンナノチューブを除去して複数の孔(91)を設け、この複数の孔の内部にナノワイヤを形成することを特徴としている。
【0015】
このように、カーボンナノチューブを形成して樹脂部材で固定し、このカーボンナノチューブの内部に熱電変換材を充填してナノワイヤを形成する。また、カーボンナノチューブの固定および除去によって樹脂部材またはセラミック部材の内部に複数の孔を形成し、これら孔の内部にナノワイヤを形成する。これにより、自己組織化的にナノサイズの中空ワイヤを形成するカーボンナノチューブをテンプレートとして用いるため、ナノワイヤを歩留り良く形成することができる。
【0016】
また、配向したカーボンナノチューブを形成できるため、mmオーダー厚の実用的なナノワイヤを備えた熱電変換素子を得ることができる。さらに、熱伝導率が小さい樹脂部材でカーボンナノチューブを固定しているため、エネルギー変換に寄与しない熱流を小さくすることができ、熱電変換性能を向上させることができる。
【0017】
本発明では、複数のカーボンナノチューブの端部をそれぞれ開口する工程では、酸素プラズマ処理を行うことによって端部を開口することを特徴とする。
【0018】
このように、酸素プラズマ処理を行って、カーボンナノチューブの端部を開口する。これにより、カーボンナノチューブの両端が開口した状態にすることができ、この両端から熱電変換材を注入するようにすることができる。
【0019】
本発明では、ナノワイヤを形成する工程では、圧入容器(82)内に加熱容器(83)を設置し、圧入容器内の雰囲気圧力を大気圧から低下させた状態で加熱容器の中で熱電変換材を溶融させて融液(85)を用意し、複数のカーボンナノチューブが固定された樹脂部材、または複数の孔が形成された樹脂部材、もしくは複数の孔が設けられたセラミック部材を、それぞれが融液に覆われるように融液中に浸す。そして、圧入容器内に不活性ガスを導入して圧入容器内を加圧状態とし、カーボンナノチューブの内部もしくは多数の孔に融液を充填することを特徴とする。
【0020】
このように、真空中に熱電変換材の融液を用意し、その融液の中に樹脂部材またはセラミック部材を浸して圧入容器内部に不活性ガスを導入して加圧する。これにより、カーボンナノチューブの内部もしくは多数の孔に融液を充填することができる。このようにして、樹脂部材の内部もしくはセラミック部材の内部に熱電変換材を充填することができる。
【0021】
本発明では、複数のカーボンナノチューブを除去する工程では、樹脂部材の内部に固定された複数のカーボンナノチューブを酸素プラズマ処理によって除去することを特徴とする。
【0022】
このように、酸素プラズマ処理によってカーボンナノチューブを除去する。これにより、樹脂部材の内部に固定されていたカーボンナノチューブが除去されることで多数の孔を形成することができる。
【0023】
本発明では、ナノワイヤを形成する工程では、ナノワイヤを形成した後、ナノワイヤの両端が樹脂部材から露出する面を灰化させるアッシング処理を行う工程を含んでいることを特徴とする。
【0024】
このように、ナノワイヤが樹脂部材から露出するようにアッシング処理を行う。これにより、樹脂部材に電極を形成する際、電極とナノワイヤとを確実に電気的に接続することができる。
【0025】
本発明では、複数のカーボンナノチューブを除去する工程では、セラミック部材を酸素雰囲気中で加熱することにより複数のカーボンナノチューブを除去することを特徴とする。
【0026】
このように、セラミック部材を酸素雰囲気中で加熱することにより複数のカーボンナノチューブを除去する。これにより、セラミック部材に多数の孔を形成することができる。
【0027】
本発明では、複数のカーボンナノチューブを形成する工程では、半導体特性を有する単層カーボンナノチューブを形成することを特徴とする。
【0028】
このように、カーボンナノチューブとして、半導体的性質を持つ単層カーボンナノチューブを形成する。これにより、電気伝導に寄与しにくく高強度の筒部材としてのカーボンナノチューブを設けることができる。
【0029】
本発明では、複数のカーボンナノチューブを形成する工程では、複数のカーボンナノチューブそれぞれがカーボンナノチューブの直径以上の隙間をもって配置されるように複数のカーボンナノチューブを形成することを特徴とする。
【0030】
このように、カーボンナノチューブの隙間を規定する。これにより、隣接するカーボンナノチューブ同士が接触してしまうことを防止できる。
【0031】
本発明では、ナノワイヤを形成する工程では、熱電変換材としてBiを含む金属を用いることを特徴とする。このように、熱電変換材としてBiを含む金属を採用できる。
【0032】
本発明では、矩形状の樹脂部材(20)と、樹脂部材に固定されたカーボンナノチューブ(40)と、カーボンナノチューブの内部に充填されたナノワイヤ(10)と、樹脂部材の両端面においてナノワイヤの両端面にそれぞれ電気的に接続される電極(31、32)と、を有することを特徴とする。
【0033】
このように、低熱伝導率である樹脂部材内にカーボンナノチューブを固定し、このカーボンナノチューブ内にナノワイヤを設ける。これにより、自己組織化的にナノサイズの中空ワイヤを形成するカーボンナノチューブ内にナノワイヤを歩留り良く形成したものとして熱電変換素子を構成することができる。
【0034】
また、熱伝導率が小さい樹脂部材でカーボンナノチューブを固定しているため、エネルギー変換に寄与しない熱流を小さくすることができ、熱電変換性能を向上させることができる。
【0035】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱電変換素子の概略斜視図である。図1に示されるように、熱電変換素子100は、ナノワイヤ10と、樹脂部材20と、電極31、32と、を備えて構成されている。
【0038】
ナノワイヤ10は、後述する各電極31、32を電気的に接続する配線であり、熱電変換材として例えばBi(ビスマス)を含む金属で構成される。なお、Biを含む金属とは、Biを含有した合金を指すだけでなく、Bi単体で構成される金属も指す。
【0039】
このナノワイヤ10の外壁に半導体的性質を有する単層カーボンナノチューブとしてのカーボンナノチューブ(以下、CNTという)40が設けられている。換言すると、中空円柱状のCNT40の内部にナノワイヤ10が設けられた状態となっている。このような半導体的性質のCNT40を用いることで、ナノワイヤ10以外の電気伝導、熱伝導を防止することができる。
【0040】
また、隣接するナノワイヤ10との距離をナノワイヤ10の直径とほぼ同等にしているため、樹脂部材20に含まれるナノワイヤ10の密度は約25%となっている。このようなナノワイヤ10の径は、ナノワイヤ10に量子効果を発現させるために例えば2nmになっており、電極31、32間の長さは例えば2mmである。
【0041】
樹脂部材20は、熱電変換素子100の外形をなすものであり、直方体形状(矩形状)の母材である。また、樹脂部材20は、多数のナノワイヤ10を内部に固定するものである。このような樹脂部材20として、例えばポリアミドイミドなどの光や熱によって硬化する樹脂が採用される。本実施形態では、樹脂部材20の熱伝導率は0.1〜0.2W/mKである。
【0042】
電極31、32は、ナノワイヤ10の両端に電気的に接続されるものである。本実施形態では、各電極31、32は蒸着の方法により樹脂部材20の両端面、すなわちナノワイヤ10の両端に形成される。このような電極31、32に、例えば電気伝導率が高いCu(銅)が採用される。
【0043】
以上が、本実施形態に係る熱電変換素子100の構成である。
【0044】
次に、図1に示される熱電変換素子100の製造方法について図2を参照して説明する。図2は、図1に示される熱電変換素子100の製造工程を示した図である。
【0045】
図2(a)に示す工程では、CNT40を形成する。まず、例えばシリコンウェハや石英基板などのCNT成長用基板50を用意する。次に、CNT成長用基板50上に配列したフェリチンをオゾン等で酸化除去することにより、規則的に配列した直径6nmの金属触媒(Feなど)を形成する。すなわち、金属(Feなど)をコアとして内包するフェリチンタンパク質を形成し、これが自己組織化的にCNT成長用基板50上に一層だけ配列することを利用する。
【0046】
なお、ナノワイヤ10の量子効果を充分に発現させるため、CNT40の一本一本が電気的に孤立している、すなわち隣接するCNT40がそれぞれ接触しない程度に離れていることが望ましい。したがって、隣接するCNT40がそれぞれ接触しないように分離して形成するためには金属触媒を分散させて形成する必要がある。すなわち、CNT40それぞれが、CNT40の直径以上の隙間をもって配置されるようにCNT40を形成する。これにより、隣接するCNT40同士が接触してしまうことを防止できる。
【0047】
この後、金属触媒を形成したCNT成長用基板50を約800℃に加熱し、このCNT成長用基板50にエタノール蒸気を吹き付ける。こうすることにより、CNT成長用基板50上の各金属触媒から、CNT40がCNT成長用基板50の面に対して垂直方向に成長していく。
【0048】
CNT40においては、グラフェンシートの巻き方に応じて、金属的性質のものと半導体的性質のものとを成長させることができるが、本実施形態では半導体的性質のCNT40を成長させる。これは、CNT40に電流が流れにくくなるようにすることを目的としている。以上のようにして、CNT成長用基板50上に、直径2nmの中空円柱状のCNT40を形成する。
【0049】
図2(b)に示す工程では、CNT40を樹脂部材20で固定する。すなわち、樹脂封入型60をCNT成長用基板50上に設置し、この樹脂封入型60の中にCNT40の端部41が露出するように樹脂を流し入れる。
【0050】
本実施形態では、熱や光によって硬化し、硬化後に300℃程度の耐熱性を有する樹脂を用いる。このような樹脂として、例えばポリアミドイミドなどを採用する。本実施形態で用いられるポリアミドイミドのガラス転位温度は320℃である。このように、300℃の耐熱性が必要な理由は、後の工程で300℃の溶融ビスマス金属をCNT40内部に圧入する工程を行うためである。この後、樹脂封入型60に流し込んだ樹脂を光や熱によって硬化させる。
【0051】
図2(c)に示す工程では、樹脂封入型60およびCNT成長用基板50を取り外す。すなわち、上記図2(b)に示す工程にて樹脂部材20を形成した後、CNT成長用基板50から樹脂封入型60を取り外す。続いて、樹脂部材20からCNT成長用基板50を取り外す。
【0052】
これにより、樹脂部材20に封止されたCNT40のうち、CNT成長用基板50に保持されていた側ではCNT40の端部42が開口する。一方、樹脂部材20においてCNT成長用基板50が保持されていた側とは反対側のCNT40の端部41は閉口した状態になっている。以下では、本工程で得られた樹脂部材20をテンプレートブロック70と呼ぶことにする。このテンプレートブロック70のサイズは、例えば5cm×5cm×0.2cmである。
【0053】
図2(d)に示す工程では、テンプレートブロック70内のCNT40のうち閉口した端部41を開口させる。具体的には、テンプレートブロック70を酸素プラズマ中にさらす酸素プラズマ処理を行う。これにより、CNT40の閉口した端部41は五員環の部分を起点として破損して開口する。こうして、テンプレートブロック70に保持されたCNT40の両端41、42を開口した状態にすることができる。これにより、CNT40の両端41、42が開口した状態にすることができ、この両端41、42からBiを注入するようにすることができる。
【0054】
図2(e)に示す工程では、CNT40の内部にBiを充填して、ナノワイヤ10を形成する。まず、加熱ヒータ81を備えた圧入容器82を用意する。そして、この圧入容器82の内部にるつぼ83を設置し、このるつぼ83の中に図2(d)で得られたテンプレートブロック70と、溶融したときにテンプレートブロック70を充分覆う量のBiを配置させる。なお、テンプレートブロック70はBiより比重が小さいため、浮き上がらないように図示しない固定具で固定しておく。また、図2(e)ではテンプレートブロック70内のCNT40を省略してある。さらに、るつぼ83は、本発明の加熱容器に相当する。
【0055】
この後、ガス排気口84に接続された図示しない真空ポンプにより、圧入容器82の内部を真空排気する。これにより、CNT40内の空気を除去する。続いて、加熱ヒータ81により徐々に圧入容器82、ひいてはるつぼ83を加熱して、Biの融点(271.4℃)以上に昇温し、その後例えば300℃に維持する。これにより、るつぼ83の中のテンプレートブロック70はBi融液85に浸された状態となる。なお、Bi融液85は、本発明の融液に相当する。
【0056】
次に、ガス排気口84を閉じて真空ポンプを切り離し、ガス導入口86から高圧不活性ガス、例えばAr(アルゴン)を導入し、圧入容器82内の温度を維持したまま加圧状態を保持する。本実施形態では、圧入容器82の内部を例えば300〜400気圧とし、これを10時間程度保持する。これにより、CNT40の開口した両端41、42からCNT40の内部にBi融液85が進入する。このようにして、CNT40の内部にBiを充填させる。
【0057】
この後、圧入容器82の内部の温度を徐々に降下させる。この温度降下速度によって、CNT40内に充填されたBiの結晶性が左右され、熱電変換素子100としての特性に影響を与えるため、例えば約12時間程度かけて徐冷する。そして、圧入容器82の内部が室温に戻った後、ガス導入口86を開口して圧入容器82内を大気圧に戻す。こうして、CNT40内部にBi配線を形成でき、ナノワイヤ10を形成することができる。
【0058】
図2(f)に示す工程では、テンプレートブロック70を分割して複数のチップ71を形成する。具体的には、固化したBi塊を圧入容器82から取り出し、Biに埋め込まれたテンプレートブロック70を例えばダイヤモンドワイヤーソーにて切り出す。そして、テンプレートブロック70の周囲に付着したBi残渣を研磨除去し、所望の大きさにカットする。こうして、1つのテンプレートブロック70から複数のチップ71を形成する。なお、図2(f)ではチップ71内のナノワイヤ10を省略してある。
【0059】
この後、図示しないが、図2(f)で得られた各チップ71に対し、例えば蒸着の方法によって電極31、32を形成し、各電極31、32をナノワイヤ10で電気的に接続する。以上のようにして、図1に示される熱電変換素子100を形成することができる。
【0060】
上記のようにして得られた熱電変換素子100の熱電材料としての性能について説明する。上述のように、熱電変換材料の性能は、無次元性能指数ZTで評価される。ここで、Tは絶対温度(K)、ZはSσ/κとして表される。また、Sはゼーベック係数(V/K)、σは電気伝導率(/Ωm)、そしてκは熱伝導率(W/mK)である。
【0061】
ナノワイヤ10であるBi配線のゼーベック係数Sは、その径がナノサイズであることからバルク材料に比べて極めて高い値となり、φ10nmのもので約2.5mV/K(バルクは約50μV/K)が得られる。ただし、本実施形態の場合、樹脂部材20内に半導体的性質のCNT40が並列抵抗として存在するため、発生する起電力がその抵抗比に応じて低下する。
【0062】
そこで、Bi配線の抵抗をr、CNT40の抵抗をRとし、その比R/r=mとおくと、熱起電力VはV=S・ΔT[m/(m+1)]となる。Biの電気伝導率は18℃において0.84×10/Ωmである。CNT40の電気伝導率は形成条件によっても異なるが、ここでは最も厳しい条件を考える。半導体の定義として最も高い電気伝導率は、1×10/Ωmであり、この場合はBiの電気伝導率とほぼ同等である。
【0063】
そして、CNT40の外径が2nm、内径が1.8nmであるとすると、Bi配線の直径は1.8nmであり、その抵抗比はm=0.68となる。上式より起電力Vはゼーベック係数Sの0.4倍となる。したがって、CNT40も含めた場合でのナノワイヤ10の等価的なゼーベック係数Sは1mV/Kと見積もることができる。
【0064】
一方、電気伝導率σは、上記のBi、CNT40ともに電気伝導率がほぼ同じであることから、CNT40も含めたナノワイヤ10の電気伝導率は約1×10/Ωmとなる。上述のように、樹脂部材20中のナノワイヤ10の密度は約25%であるから、全体的な電気伝導率σは2.5×10/Ωmとなる。
【0065】
熱伝導率は、Biが7.87W/mK、CNT40が約200W/mK(いずれも室温付近)との報告(カーボンナノチューブによる熱伝導の分子動力学、丸山茂夫他、Thermal Science&Engineering, vol.9, No.3(2001))がある。両者の断面積比より、CNT40も含めたナノワイヤ10の熱伝導率は44.6W/mKとなる。また、樹脂部材20の熱伝導率は約0.2W/mKであり、ナノワイヤ10の樹脂部材20に対する密度が上記のように25%の場合、全体としての熱伝導率κは11.3W/mKとなる。
【0066】
以上のことから、熱電変換の性能指数ZはZ=Sσ/κ=0.022となるので、300Kにおける無次元性能指数ZTはZT=6.6となり、極めて高い性能を有する熱電変換素子100を得ることができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、CNT40を形成して樹脂部材20で固定し、このCNT40の内部にBiを充填してナノワイヤ10を形成する。これにより、自己組織化的にナノサイズの中空ワイヤを形成するCNT40をテンプレートとして用いるため、ナノワイヤ10を歩留り良く形成することができる。
【0068】
また、単層カーボンナノチューブとしてのCNT40を形成できるため、mmオーダー厚の実用的なナノワイヤ10を備えた熱電変換素子100を得ることができる。さらに、熱伝導率が小さい樹脂部材20でCNT40を固定しているため、エネルギー変換に寄与しない熱流を小さくすることができ、熱電変換性能を向上させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、第1実施形態で示された製造工程のうち、図2(f)に示される工程の後、ナノワイヤ10の両端を樹脂部材20から露出させることが第1実施形態と異なる。
【0070】
図3は、本発明の第2実施形態に係る熱電変換素子100の製造工程を示した図である。なお、図3において、図1に示される熱電変換素子100に同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図3中、同一符号を付してある。
【0071】
本実施形態では、図2(f)に示す工程を終えた後、各チップ71に対してアッシング(灰化)処理を施す。すなわち、各チップ71において、CNT40(ナノワイヤ10)の両端41、42が樹脂部材20から突出するように、樹脂部材20の端面をアッシング(燃やして灰にする)する。
【0072】
このようにして、樹脂部材20からCNT40(ナノワイヤ10)の両端41、42を露出させ、ナノワイヤ10の両端41、42が露出した樹脂部材20の面に電極31、32をそれぞれ形成する。これにより、各電極31、32とナノワイヤ10の両端41、42との電気的接続特性をより高めることができる。
【0073】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、樹脂部材20にCNT40を残さないことが第1実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る熱電変換素子の製造方法について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る熱電変換素子の製造工程を示した図である。
【0074】
まず、第1実施形態と同様に、図2(a)〜図2(c)に示す工程を行う。この後、図4に示す工程では、樹脂部材20に保持されたCNT40を除去する。具体的には、図示しないチャンバ内にテンプレートブロック70を設置し、酸素プラズマ等の酸化性雰囲気中で樹脂部材20内のCNT40を酸化・除去する。これにより、樹脂部材20に多数の孔21を形成する。
【0075】
この酸素プラズマ処理によって、樹脂部材20もわずかながらエッチングされてしまう。このため、CNT40に接していた樹脂部材20がエッチングされ、孔21の径がCNT40の径よりも若干大きくなってしまう。しかしながら、CNT40を除去することによって、並列伝導により熱電性能を低下させていた成分がなくなるため、さらに熱電変換性能を向上させることができる。
【0076】
図4に示す工程を終えた後、図2(e)および図2(f)に示す工程と、電極31、32を形成する工程と、を行う。こうして、本実施形態に係る熱電変換素子が完成する。
【0077】
上記のようにしてCNT40を取り除いた熱電変換素子の熱電材料としての性能について説明する。まず、上述のように、Bi配線のゼーベック係数Sはφ10nmで約2.5mV/K(バルクは約50μV/K)である。本実施形態では、CNT40による並列伝導がないため、このゼーベック係数Sが得られる。
【0078】
また、電気伝導率σは、Bi配線の電気伝導率が0.84×10/Ωmである。そして、Bi配線の樹脂部材20内での充填密度が25%である場合を想定すると、全体的な電気伝導率σは2.1×10/Ωmとなる。
【0079】
さらに、熱伝導率κについては、Biの熱伝導率が7.87W/mK、樹脂部材20の熱伝導率は約0.2W/mKであり、Bi配線の樹脂部材20内での充填密度が25%である場合を想定すると、全体的な熱伝導率κは2.1W/mKとなる。
【0080】
以上のことから、熱電変換の性能指数ZはZ=Sσ/κ=0.625となるので、300Kにおける無次元性能指数ZTはZT=187となり、極めて高い性能を有する熱電変換素子を得ることができる。
【0081】
このように、樹脂部材20内のCNT40を除去してできた多数の孔21の内部にBi配線を充填してナノワイヤ10を形成することもできる。
【0082】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、特に、CNT40を保持する部材にセラミックスを用いることを特徴としている。以下、本実施形態に係る熱電変換素子の製造方法について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る熱電変換素子の製造工程を示した図である。
【0083】
まず、第1実施形態と同様に、図2(a)に示す工程を行う。この後、図5(a)に示す工程では、CNT40をセラミック充填材90で固定する。すなわち、樹脂封入型60をCNT成長用基板50上に設置し、この樹脂封入型60の中にCNT40の端部41が露出するように溶融させたセラミック充填材90を流し入れる。なお、セラミック充填材90は、本発明のセラミック部材に相当する。
【0084】
本実施形態では、150℃の加熱で硬化し、1200℃の耐熱性を有するセラミック充填材90を採用する。この後、樹脂封入型60に流し込んだセラミック充填材90を硬化させる。
【0085】
図5(b)に示す工程では、樹脂封入型60およびCNT成長用基板50を取り外す。すなわち、図2(c)に示す工程と同じ処理を行い、テンプレートブロック72を得る。
【0086】
図5(c)に示す工程では、セラミック充填材90内のCNT40を除去する。具体的には、酸化用ヒータ87を備えた加熱酸化装置88にテンプレートブロック72を配置する。そして、加熱酸化装置88内の空気を排出し、加熱酸化装置88内に酸素を充填する。この後、酸化用ヒータ87で加熱酸化装置88内を500〜700℃に加熱することにより、テンプレートブロック72内のCNT40の酸化・除去を行う。これにより、セラミック充填材90に多数の孔91を形成する。
【0087】
上述のように、CNT40を保持する保持部材にセラミック充填材90を用いているため、酸素中でCNT40を熱的に酸化・除去するために必要な温度500〜700℃に充分耐えることができる。また、セラミック充填材90であるセラミック自身は酸化されないため、CNT40のみが除去される。したがって、第3実施形態のようにセラミック充填材90がエッチングされて孔91の径が拡大してしまうことはない。
【0088】
図5(c)に示す工程を終えた後、図2(e)および図2(f)に示す工程と、電極31、32を形成する工程と、を行う。こうして、本実施形態に係る熱電変換素子が完成する。
【0089】
上記のようにしてCNT40を取り除いた熱電変換素子の熱電材料としての性能について説明する。硬化したセラミック充填材90の熱伝導率κは、0.7W/mK程度であり、樹脂部材20より若干高い熱を伝えやすいが、セラミック充填材90内のBi配線の充填密度が25%の場合を想定すると、全体的な熱伝導率κは2.5W/mKとなる。
【0090】
以上のことから、熱電変換の性能指数ZはZ=Sσ/κ=0.525となるので、300Kにおける無次元性能指数ZTはZT=157となり、極めて高い性能を有する熱電変換素子を得ることができる。このように、セラミック充填材90を用いて熱電変換素子を構成することもできる。
【0091】
(他の実施形態)
上記実施形態において、熱電変換素子100に用いられる材質やサイズは一例を示すものであって、用いられる状況に合わせて自由に変更可能である。同様に、テンプレートブロック70、72のサイズや樹脂部材20、セラミック充填材90中のナノワイヤ10の含有量等については、上記実施形態に限定されるものではなく、自由に設計可能である。
【0092】
上記実施形態では、電極31、32を蒸着の方法により形成しているが、例えばスパッタ、めっきなどの方法により形成することも可能である。
【0093】
上記実施形態に示されたCNT40の成長方法は一例を示すものであって、上記の方法に限定されるものではない。
【0094】
上記第3実施形態で製造した各チップ71に対して、第2実施形態で示されたアッシング処理を施すようにしても構わない。これにより、樹脂部材20に電極31、32を形成する際、電極31、32とナノワイヤ10とを確実に電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱電変換素子の概略斜視図である。
【図2】図1に示される熱電変換素子の製造工程を示した図である。
【図3】第2実施形態に係る熱電変換素子の製造工程を示した図である。
【図4】第3実施形態に係る熱電変換素子の製造工程を示した図である。
【図5】第4実施形態に係る熱電変換素子の製造工程を示した図である。
【図6】従来のナノワイヤ作製の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0096】
10…ナノワイヤ、20…樹脂部材、21、91…孔、31、32…電極、
40…カーボンナノチューブ(CNT)、41、42…端部、
50…CNT成長用基板、82…圧入容器、83…加熱容器、85…Bi融液、
90…セラミック充填材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(50)を用意し、前記基板の表面に対して垂直に配向した複数のカーボンナノチューブ(40)を形成する工程と、
前記複数のカーボンナノチューブの両端(41、42)のうち、前記基板に接合された側とは反対側の端部(41)が露出するように前記複数のカーボンナノチューブを樹脂部材(20)で固定する工程と、
前記樹脂部材から前記基板を取り外すと共に、前記複数のカーボンナノチューブの両端(41、42)のうち、前記基板に接合された側とは反対側の端部をそれぞれ開口する工程と、
前記複数のカーボンナノチューブの内部にそれぞれ熱電変換材を充填してナノワイヤ(10)を形成する工程と、
前記ナノワイヤの両端が前記樹脂部材から露出する面にそれぞれ電極(31、32)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブの端部をそれぞれ開口する工程では、酸素プラズマ処理を行うことによって前記端部を開口することを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記ナノワイヤを形成する工程では、
圧入容器(82)内に加熱容器(83)を設置し、前記圧入容器内の雰囲気圧力を大気圧から低下させた状態で前記加熱容器の中で前記熱電変換材を溶融させて融液(85)を用意する工程と、
前記複数のカーボンナノチューブが固定された前記樹脂部材を、前記樹脂部材が前記融液に覆われるように前記融液中に浸す工程と、
前記圧入容器内に不活性ガスを導入して前記圧入容器内を加圧状態とし、前記カーボンナノチューブの内部に前記融液を充填する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項4】
基板(50)を用意し、前記基板の表面に対して垂直に配向した複数のカーボンナノチューブ(40)を形成する工程と、
前記複数のカーボンナノチューブの両端(41、42)のうち、前記基板に接合された側とは反対側の端部(41)が露出するように前記複数のカーボンナノチューブを樹脂部材(20)で固定する工程と、
前記樹脂部材から前記基板を取り外すと共に、前記複数のカーボンナノチューブを除去して前記樹脂部材に複数の孔(21)を形成する工程と、
前記複数の孔の内部に熱電変換材を充填してナノワイヤ(10)を形成する工程と、
前記ナノワイヤの両端が前記樹脂部材から露出する面にそれぞれ電極(31、32)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記複数のカーボンナノチューブを除去する工程では、前記樹脂部材の内部に固定された前記複数のカーボンナノチューブを酸素プラズマ処理によって除去することを特徴とする請求項4に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記ナノワイヤを形成する工程では、
圧入容器(82)内に加熱容器(83)を設置し、前記圧入容器内の雰囲気圧力を大気圧から低下させた状態で前記加熱容器の中で前記熱電変換材を溶融させて融液(85)を用意する工程と、
前記カーボンナノチューブを除去した前記樹脂部材を、前記樹脂部材が前記融液に覆われるように前記融液中に浸す工程と、
前記圧入容器内に不活性ガスを導入して前記圧入容器内を加圧状態とし、前記樹脂部材内に設けられた前記複数の孔の内部に前記融液を充填する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項4または5に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記ナノワイヤを形成する工程では、前記ナノワイヤを形成した後、前記ナノワイヤの両端が前記樹脂部材から露出する面を灰化させるアッシング処理を行う工程を含んでいることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項8】
基板(50)を用意し、前記基板の表面に対して垂直に配向した複数のカーボンナノチューブ(40)を形成する工程と、
前記複数のカーボンナノチューブの両端(41、42)のうち、前記基板に接合された側とは反対側の端部(41)が露出するように前記複数のカーボンナノチューブをセラミック部材(90)で固定する工程と、
前記セラミック部材から前記基板を取り外すと共に、前記複数のカーボンナノチューブを除去して前記セラミック部材に複数の孔(91)を形成する工程と、
前記複数の孔の内部に熱電変換材を充填してナノワイヤ(10)を形成する工程と、
前記ナノワイヤの両端が前記セラミック部材から露出する面にそれぞれ電極(31、32)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記複数のカーボンナノチューブを除去する工程では、前記セラミック部材を酸素雰囲気中で加熱することにより前記複数のカーボンナノチューブを除去することを特徴とする請求項8に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記ナノワイヤを形成する工程では、
圧入容器(82)内に加熱容器(83)を設置し、前記圧入容器内の雰囲気圧力を大気圧から低下させた状態で前記加熱容器の中で前記熱電変換材を溶融させて融液(85)を用意する工程と、
前記セラミック部材を、前記セラミック部材が前記融液に覆われるように前記融液中に浸す工程と、
前記圧入容器内に不活性ガスを導入して前記圧入容器内を加圧状態とし、前記セラミック部材内に設けられた前記複数の孔の内部に前記融液を充填する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項8または9に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記複数のカーボンナノチューブを形成する工程では、半導体特性を有する単層カーボンナノチューブを形成することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記複数のカーボンナノチューブを形成する工程では、前記複数のカーボンナノチューブそれぞれが前記カーボンナノチューブの直径以上の隙間をもって配置されるように前記複数のカーボンナノチューブを形成することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項13】
前記ナノワイヤを形成する工程では、前記熱電変換材としてBiを含む金属を用いることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項14】
矩形状の樹脂部材(20)と、前記樹脂部材に固定されたカーボンナノチューブ(40)と、前記カーボンナノチューブの内部に充填されたナノワイヤ(10)と、前記樹脂部材の両端面において前記ナノワイヤの両端面にそれぞれ電気的に接続される電極(31、32)と、を有することを特徴とする熱電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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