説明

熱電変換素子を電源とするアクティブRFIDタグ

【課題】本発明は、熱電変換素子の微弱な起電力を利用して永続的に動作することのできるアクティブRFIDタグを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のアクティブRFIDタグは、その電力供給機構として、第1および第2の回路ブロックからなる冗長回路を含む。第1および第2の回路ブロックは、熱電変換素子および昇圧回路に対して、交互、且つ、排他的に接続される。さらに、各回路ブロックに含まれる複数の電気二重層コンデンサを、熱電変換素子に対して並列に接続し、昇圧回路に対して直列に接続することによって、熱電変換素子の微弱な起電力からでも短時間でRFIDタグの駆動電圧をつくることができ、且つ、これを永続的に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ型RFIDタグに関し、より詳細には、熱電変換素子の微弱な起電力を利用して連続的に動作するアクティブRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグを利用した個体識別技術が、さまざまなソリューションに応用されている。ここで、RFIDタグには、電源を内蔵し自発的に電波を発振駆動することのできるアクティブ型と、外部からの電波エネルギーを利用してこれに応答する形で発振駆動するパッシブ型に分けられる。一般に、アクティブ型RFIDは、パッシブ型に比較して格段に通信距離が長く、用途が広いという利点はあるものの、駆動電源として電池を内蔵せざるを得ないため、これに伴って電池交換などの維持管理コストが発生する。
【0003】
この点につき、特開2007−280368号公報(特許文献1)は、そのような電源に係るコストを排除すべく、熱電素子を駆動電源として備えるアクティブ型RFIDを開示する。しかしながら、特許文献1は、その熱電素子を含んだ電力供給機構について、何ら具体的な構成を開示するものではなく、その内容は、単なる着想を開示するものに過ぎなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−280368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、熱電変換素子の微弱な起電力を利用して永続的に動作するアクティブRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、熱電変換素子の微弱な起電力を利用して永続的に動作することのできるアクティブRFIDタグにつき鋭意検討した結果、電力供給機構として複数の電気二重層コンデンサを含む2つの回路を冗長回路として形成することに想到した。さらに、この2つの冗長回路を、熱電変換素子側およびRFID本体側に対して、交互、且つ、排他的に接続することに加え、各冗長回路に含まれる複数の電気二重層コンデンサを、熱電変換素子に対して並列に接続し、昇圧回路に対して直列に接続することによって、熱電変換素子の微弱な起電力から、短時間でRFIDタグの駆動電圧をつくり、且つ、これを永続的に供給することのできることを見出し、本発明に至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、熱電変換素子と、RFID本体部に接続される昇圧回路と、前記熱電変換素子および前記昇圧回路に対して排他的に接続される冗長回路とを含むアクティブRFIDタグであって、前記冗長回路は、複数の電気二重層コンデンサを備える第1および第2の回路ブロックを含み、前記第1の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記熱電変換素子並列に接続され、前記第2の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記昇圧回路に直列に接続される第1の状態と、前記第2の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記熱電変換素子並列に接続され、前記第1の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記昇圧回路に直列に接続される第2の状態とを交互に繰り返すように制御されるアクティブRFIDタグが提供される。
【0008】
本発明においては、前記冗長回路は、前記第1の状態においては、前記第1の回路ブロックが前記昇圧回路から切り離され、前記第2の回路ブロックが前記熱電変換素子から切り離されるように制御され、前記第2の状態においては、前記第2の回路ブロックが前記昇圧回路から切り離され、前記第1の回路ブロックが前記熱電変換素子から切り離されるように制御することができる。また、本発明においては、前記冗長回路は、前記昇圧回路の入力電圧が閾値電圧に達したことに応答して、各状態間を遷移するように制御することができ、前記閾値電圧は、前記昇圧回路の最低入力電圧とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明によれば、熱電変換素子の微弱な起電力を利用して永続的に動作することのできるアクティブRFIDタグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のアクティブRFIDタグの電力供給機構の概念図。
【図2】本実施形態のアクティブRFIDタグの電力供給回路の概念図。
【図3】本実施形態のアクティブRFIDタグの動作フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0012】
本発明は、熱電変換素子の起電力によってアクティブRFIDタグを動作させるための機構を備える。すなわち、本発明においては、熱電変換素子の起電力を、一旦、電気二重層コンデンサに蓄電し、この蓄電電力を使用してRFIDタグを動作させる。しかしながら、熱電変換素子の起電力は、一般に小さく、特に、人や恒温動物の体温を熱源とするような用途の場合には、熱源と外気の温度差はせいぜい十数℃程度と小さいため、その発電量は極めて微量なものになり、電気二重層コンデンサの端子電圧がRFIDタグの駆動電圧に達するまでには長い時間を要する。さらに、電気二重層コンデンサが放電した後、再度蓄電されるまでの間は、RFID本体に電力を供給することができないため、その間、RFIDタグは発振することができないことになる。この点につき、本発明は、熱電変換素子の微弱な起電力のみでアクティブRFIDタグを永続的に動作させるための電力供給機構を開示する。
【0013】
図1は、本発明の熱電変換素子の起電力で動作するアクティブRFIDタグ(以下、アクティブRFIDタグとして参照する)の電力供給機構について説明するための概念図である。以下、本発明のアクティブRFIDタグの電力供給機構を、蓄電モードと供給モードとに分けて説明する。
【0014】
図1(a)は、蓄電モード100の概念図である。蓄電モード100は、熱電変換素子10と、2つの電気二重層コンデンサ12,12を含む回路ブロックAと、同じく2つの電気二重層コンデンサ12,12を含み回路ブロックAと同じ回路構成を有する回路ブロックBとから構成されている。蓄電モード100においては、回路ブロックAおよびBは、いずれも、熱電変換素子10に対して並列に接続される2つの電気二重層コンデンサ12,12を含んで構成されており、且つ、回路ブロックAまたはBのいずれか一方が熱電変換素子10に対して排他的に接続されるように構成されている。なお、本発明における熱電変換素子10は、2種類の異なる金属または半導体を接合してなるゼーベック素子であり、両端に温度差を生じさせると起電力が生じる素子であればよい。
【0015】
図1(a)に示すように、熱電変換素子10は、回路ブロックAと接続されており、この状態においては、熱電変換素子10の起電力は、並列に接続された回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12に蓄電される。一方、熱電変換素子10は、破線矢印で示すように、回路ブロックBとも接続するように構成されており、その場合は、熱電変換素子10の起電力は、並列に接続された回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12に蓄電される。図1(a)においては、熱電変換素子10の起電力によって、電気二重層コンデンサ12の端子電圧が0.6Vになると仮定している。
【0016】
なお、上記各回路ブロックの電気二重層コンデンサ12の静電容量は、RFIDの時間当たりの消費電力、想定される使用態様における熱電変換素子10の時間当たりの発電量などに基づいて、適切な値のものを選択することが望ましい。この点については、後に詳細に述べる。
【0017】
一方、図1(b)は、供給モード200の概念図である。供給モード200は、先に説明した回路ブロックAまたはBと、直流電圧を昇圧するためのDC−DCコンバータ14とから構成されている。ここでは、仮に、DC−DCコンバータ14が作動するための最低入力電圧を0.8Vとし、最終的な電力の供給先であるRFID本体部16の駆動電圧の3.0Vとして、以下説明する。
【0018】
供給モード200においては、蓄電された2つの電気二重層コンデンサ12,12を含む回路ブロックAおよびBのどちらか一方が、DC−DCコンバータ14に対して排他的に接続される。図1(b)に実線矢印は、回路ブロックBがDC−DCコンバータ14に接続される場合を例示している。ここで、先に説明した蓄電モード100においては、回路ブロックB内の2つの電気二重層コンデンサ12,12は、蓄電された結果、その端子電圧が0.6Vになっている。しかしながら、この値は、DC−DCコンバータ14の最低入力電圧の0.8Vに及ばない。
【0019】
そこで、供給モード200においては、まず、回路ブロックB内の2つの電気二重層コンデンサ12,12は、DC−DCコンバータ14に対して直列になるようにその接続が切り換えられる。その結果、DC−DCコンバータ14に対する入力電圧は、0.6×2=1.2Vとなり、DC−DCコンバータ14の最低入力電圧である0.8Vを超えることができる。すなわち、回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12の蓄電電力は、1.2VでDC−DCコンバータ14に入力され、3.0Vにまで昇圧された後、RFID本体部16に対して供給される。なお、これに並行して、蓄電モード100では、熱電変換素子10から回路ブロックAの2つの電気二重層コンデンサ12,12に対する蓄電が行なわれている。
【0020】
その後、DC−DCコンバータ14に直列に接続された回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12の端子電圧は、RFID本体部16の電力消費に伴って、当初の1.2Vから経時的に低下していく。ここで、仮に、これがDC−DCコンバータ14の最低入力電圧である0.8Vを下回ると、DC−DCコンバータ14は昇圧不能になり、RFID本体部16に対する電力供給が止まってしまう。したがって、本発明においては、そのような事態が発生する前に、図1(b)に破線矢印で示すように、DC−DCコンバータ14の接続先を回路ブロックBから回路ブロックAに切り換える。以上、説明した制御を繰り返すことによって、RFID本体部16に対して永続的に電力供給がなされることになる。
【0021】
すなわち、回路ブロックAおよび回路ブロックBは、蓄電モード100においては、複数の電気二重層コンデンサを熱電変換素子に対して並列に接続し、供給モード200においては、蓄電済みの複数の電気二重層コンデンサを直列に接続し直した上で、昇圧回路に接続することによって、熱電変換素子10の微弱な起電力から、短時間でRFIDの駆動電圧を生成できる。
【0022】
さらに、その蓄電モード100および供給モード200を通して、回路ブロックAおよび回路ブロックBのうち、いずれか一方を発電側に接続し、他方を電力消費側に接続するという状態を交互に繰り返すことによって、回路ブロックAおよびBが2つの冗長回路として機能しており、このことがRFID本体部16に対する永続的な電力供給を可能にしている。以上、本発明のアクティブRFIDタグの電力供給機構について、その概略を説明してきたが、次に、図2および図3を参照して、当該電力供給機構の動作を具体的に説明する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態である熱電変換素子の起電力で動作するアクティブRFIDタグ20(以下、アクティブRFIDタグ20として参照する)について、その電力供給回路を概念的に示す。本実施形態のアクティブRFIDタグ20は、熱電変換素子10と、冗長回路22と、DC−DCコンバータ14と、RFID本体部16とを含んで構成されており、冗長回路22は、熱電変換素子10とDC−DCコンバータ14との間を接続自在に形成されている。本実施形態における冗長回路22は、回路ブロックAおよび回路ブロックBを含んで構成されており、両ブロックは、いずれも、2つ電気二重層コンデンサ12,12を含む同等の回路として構成されている。
【0024】
冗長回路22における回路ブロックA,Bは、複数のスイッチSWを含んで構成されており、これらのスイッチがON/OFF制御されることによって、冗長回路22は、図2(a)に示す第1の状態から図2(b)に示す第2の状態へ遷移する。なお、図2は、アクティブRFIDタグ20の電力供給回路を概念的に示したものであり、実際の回路を示すものではない。実際の電力供給回路においては、第1の状態から第2の状態へ遷移を制御するためのスイッチSWを、例えば、ダイオードスイッチによって構成することができる。
【0025】
第1の状態においては、図2(a)に太線で示すように、回路ブロックAに含まれる電気二重層コンデンサ12,12は、熱電変換素子10に対して並列に接続され、DC−DCコンバータ14からは切り離される。また、第1の状態においては、回路ブロックBに含まれる電気二重層コンデンサ12,12は、DC−DCコンバータ14に対して直列に接続され、熱電変換素子10からは切り離される。
【0026】
一方、第2の状態においては、図2(b)に太線で示すように、回路ブロックAに含まれる電気二重層コンデンサ12,12は、DC−DCコンバータ14に対して直列に接続され、熱電変換素子10からは切り離される。また、第2の状態においては、回路ブロックBに含まれる電気二重層コンデンサ12,12は、熱電変換素子10に対して並列に接続され、DC−DCコンバータ14からは切り離される。冗長回路22は、上述した第1の状態と第2の状態を交互に繰り返すことによって、熱電変換素子10から生じる微弱な起電力をDC−DCコンバータ14の駆動電圧にまで効率的に昇圧し、これを連続的に供給することを可能にする。
【0027】
図3は、本実施形態のアクティブRFIDタグ20の動作フローチャートを示す。以下、図3の動作フローチャートと図2に示す回路概念図とを交互に参照しながら、本実施形態のアクティブRFIDタグ20における電力供給動作について、より具体的に説明する。
【0028】
本実施形態のアクティブRFIDタグ20においては、図2(a)に示す第1の状態を初期設定とするものとして説明する。まずステップ101において、熱電変換素子10に対して並列に接続された回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12の端子間電圧(VPA)が監視される。この電圧監視は、(VPA)が閾値電圧(V)に達するまで繰り返される(ステップ101、No)。ここで、本実施形態における閾値電圧(V)は、以下に示す基準に従って、適切な値を設定することができる。
【0029】
まず、閾値電圧(V)は、DC−DCコンバータ14の最低入力電圧(VDC−DC)を回路ブロックAに含まれる電気二重層コンデンサ12の数で割って求まる値よりも大きく、最低入力電圧より小さい適切な値を設定することが好ましい。ここで、仮に、最低入力電圧を「0.8V」とし、電気二重層コンデンサ12の数を「2」とすれば、閾値電圧(V)は、{ 0.4(=0.8/2)< V< 0.8 }として定義することができる。
【0030】
さらに、閾値電圧(V)は、電気二重層コンデンサ12,12の直列端子電圧の、RFIDの電力消費に伴う時間当たりの低下率(ΔV/t)と、一回の蓄電当たりのRFIDの動作時間(t)に応じて適切な値を決定することができる。ここで、一回の蓄電当たりのRFIDの動作時間(t)は、任意の設計事項であり、適宜決定することができる。
【0031】
具体的には、まず、回路ブロックA,Bが、DC−DCコンバータ14に対して接続される際の初期電圧(V)を動作時間(t)に応じて決定する。ここで、仮に、動作時間(t)を「10分」とし、低下率(ΔV/t)を「0.04V/分」とすると、一回の蓄電で「10分」の動作時間を実現するためには、最低入力電圧(VDC−DC)の値「0.8V」に、「0.04(V/分)×10(分)=0.4V 」を加えた「1.2V」を初期電圧(V)とする必要がある。このようにして初期電圧(V)を決定すれば、これを電気二重層コンデンサ12の数で割ることよって閾値電圧(V)が導出される。上述して例においては、閾値電圧(V)は、1.2V ÷ 2=0.6Vとなる。
【0032】
回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12の端子間電圧(VPA)が上述した手順で設定された閾値電圧(V)に達すると(ステップ101、Yes)、ステップ102に進み、回路の切り換え処理が実行される。ステップ102において、冗長回路22は、図2(a)に示す第1の状態から図2(b)に示す第2の状態に切り換わる。具体的には、回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12が熱電変換素子10から切り離され、昇圧回路であるDC−DCコンバータ14に対して直列に接続されると同時に、回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12がDC−DCコンバータ14から切り離され、熱電変換素子10に対して並列に接続される。
【0033】
ステップ102において、回路の切り換え処理がなされると、回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12からの入力電圧(VPA×2)がDC−DCコンバータ14によってRFID本体部16の駆動電圧まで昇圧されたのち、RFID本体部16に電力供給がなされる(ステップ103)。これに並行して、回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12は、熱電変換素子10に対して並列に接続されて蓄電される(ステップ104)。
【0034】
この間、ステップ105において、DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)が監視され、閾値電圧(V)を下回るまで(ステップ105、No)、上記ステップ103および104が実行される。ここで、閾値電圧(V)は、DC−DCコンバータ14の最低入力電圧の値またはこれに適切なマージンを加えた値を設定することができる。
【0035】
DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)が閾値電圧(V)を下回ると(ステップ105、Yes)、ステップ106において、回路の切り換え処理が実行され、冗長回路22は、図2(b)に示す第2の状態から図2(a)に示す第1の状態に遷移する。具体的には、回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12がDC−DCコンバータ14から切り離され、熱電変換素子10に対して並列に接続されると同時に、回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12が熱電変換素子10から切り離され、DC−DCコンバータ14に対して直列に接続される。
【0036】
ステップ106において、回路の切り換え処理がなされると、ステップ107においては、回路ブロックBの電気二重層コンデンサ12,12からの入力電圧(VPB×2)がDC−DCコンバータ14によってRFID本体部16の駆動電圧まで昇圧されたのち、RFID本体部16に電力供給がなされる。これと並行して、ステップ108においては、回路ブロックAの電気二重層コンデンサ12,12か熱電変換素子10に並列に接続されて蓄電がなされる(ステップ108)。
【0037】
この間、ステップ109において、DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)が監視され、上述した閾値電圧(V)に達するまで(ステップ109、No)、上記ステップ107および108が実行される。
【0038】
DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)が閾値電圧(V)を下回ると(ステップ109、Yes)、動作は、ステップ102に戻り、熱電変換素子10から所定量以上の発電がある限り、永続的にステップ102以降の動作を繰り返す。
【0039】
なお、上述した本実施形態においては、蓄電モードにある回路ブロックの端子間電圧を監視せず、DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)のみを監視して、回路の切り換えタイミングを決定する構成を採用している。この理由について、以下説明する。
【0040】
この点につき、ステップ105を例にとって説明すると、既に説明したように、先のステップ101においては、回路ブロックAが閾値電圧(V)に達するまで蓄電されており、その放電時間(すなわち、動作時間(t))は、一義的に決定されている。ここで、本実施形態においては、回路ブロックBの蓄電時間(すなわち、回路ブロックBの電気二重層コンデンサの端子間電圧が閾値電圧(V)に達するまでに要する時間)が、回路ブロックAの放電時間よりも短くなるように、電気二重層コンデンサ12の静電容量が設計されている。
【0041】
したがって、ステップ105において、DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)が閾値電圧(V)を下回る時点では、当然にして、蓄電側の回路ブロックBの電気二重層コンデンサの端子間電圧は、閾値電圧(V)に達しているため、その判断を省略するものである。上述した点については、ステップ109においても同様である。なお、本発明においては、蓄電側の回路ブロックの端子間電圧と、DC−DCコンバータ14の入力電圧(VDC−DC)の双方を所定の閾値と比較し、双方の条件が成立したときにのみ、回路を切り換えるように構成することもできる。
【0042】
以上、本発明のアクティブRFIDタグを図2および3に示した実施の形態をもって説明してきたが、本発明のアクティブRFIDタグは、上述した実施形態に限定されるものではなく、上述した各回路ブロックは、3つ以上の電気二重層コンデンサを備えていてもよく、また、上述した冗長回路を3つ以上の回路ブロックから構成してもよい。
【0043】
さらに、本発明のアクティブRFIDタグは、温度センサとして応用することができることに注目されたい。その際には、上述した回路ブロックの一回の蓄電量に対応するRFIDの動作時間(t)が、温度センサの時間解像度になる。すなわち、熱源が熱を発生しなくなってから、最長でも(t)時間後には、RFIDタグに対する電力供給が断たれ、RFIDタグはその発振を中止するため、発振信号の受信不能をもって温度低下を検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上、説明したように、本発明のアクティブRFIDタグは、熱源が存在するところであれば、バッテリーフリーで永続的に使用することができるため、アクティブRFIDタグを利用する既存システムの維持管理コストが大幅に低減される。
【0045】
また、本発明のアクティブRFIDタグは、非常に小さな熱源でも永続的に動作することができるため、その熱源として体温を利用することが考えられる。例えば、本発明のアクティブRFIDタグを、牛豚などの家畜類や犬・猫などのペット類に代表される恒温動物の身体に装着することによって、これらの個別認証情報を利用したさまざまなソリューションを展開することができる。さらに、本発明のアクティブRFIDタグを人体に装着することによって、例えば、入院患者のセキュリティ管理や、独居老人の安否確認などに関するソリューションを展開することができる。
【0046】
さらに、注目すべきは、本発明のアクティブRFIDタグの温度センサとして応用展開である。例えば、本発明のアクティブRFIDタグが人や恒温動物に装着されている場合、RFIDタグからの発振があるということは、そこに生命機能があることを意味する。本発明のアクティブRFIDタグのこのような温度センサ機能は、大規模震災時における被災者の探索や安否確認に利用することができるであろう。
【符号の説明】
【0047】
10…熱電変換素子、12…電気二重層コンデンサ、14…DC−DCコンバータ、16…RFID本体部、20…アクティブRFIDタグ、22…冗長回路、100…蓄電モード、200…供給モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子と、RFID本体部に接続される昇圧回路と、前記熱電変換素子および前記昇圧回路に対して排他的に接続される冗長回路とを含むアクティブRFIDタグであって、
前記冗長回路は、複数の電気二重層コンデンサを備える第1および第2の回路ブロックを含み、
前記第1の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記熱電変換素子並列に接続され、前記第2の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記昇圧回路に直列に接続される第1の状態と、前記第2の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記熱電変換素子並列に接続され、前記第1の回路ブロックの前記複数の電気二重層コンデンサが前記昇圧回路に直列に接続される第2の状態とを交互に繰り返すように制御される、
アクティブRFIDタグ。
【請求項2】
前記冗長回路は、前記第1の状態においては、前記第1の回路ブロックが前記昇圧回路から切り離され、前記第2の回路ブロックが前記熱電変換素子から切り離されるように制御され、前記第2の状態においては、前記第2の回路ブロックが前記昇圧回路から切り離され、前記第1の回路ブロックが前記熱電変換素子から切り離されるように制御される、請求項1に記載のアクティブRFIDタグ。
【請求項3】
前記冗長回路は、前記昇圧回路の入力電圧が閾値電圧に達したことに応答して、各状態間を遷移するように制御される、請求項1または2に記載のアクティブRFIDタグ。
【請求項4】
前記閾値電圧は、前記昇圧回路の最低入力電圧である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクティブRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−204927(P2010−204927A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49389(P2009−49389)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】