説明

熱電変換素子及びその製造方法

【課題】起電力の大きい熱電変換素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の基材10と第2の基材18との間に熱電変換層12,14が配された積層体22と、熱電変換層の一方の端部に近接し、積層体の一方の面から一部が突出している柱状の第1の熱伝導体24aと、熱電変換層の他方の端部に近接し、積層体の他方の面にパッド部24cを有する柱状の第2の熱伝導体24bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、熱電変換材料を用いた熱電変換素子が提案されている。
【0003】
N型の熱電変換材料とP型の熱電変換材料とを直列接続し、温度差を適宜生じさせることにより、起電力が得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−16812号公報
【特許文献2】特開平4−30585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、提案されている熱電変換素子では、必ずしも十分に大きい起電力が得られない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、起電力の大きい熱電変換素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一観点によれば、第1の基材と第2の基材との間に熱電変換層が配された積層体と、前記熱電変換層の一方の端部に近接し、前記積層体の一方の面から一部が突出している柱状の第1の熱伝導体と、前記熱電変換層の他方の端部に近接し、前記積層体の他方の面にパッド部を有する柱状の第2の熱伝導体とを有することを特徴とする熱電変換素子が提供される。
【0008】
実施形態の他の観点によれば、第1の基材と第2の基材との間に熱電変換層が配された積層体を形成する工程と、板状の熱伝導体上に突出するように形成された柱状の第1の熱伝導体と、前記板状の熱伝導体上に突出するように形成され、前記第1の熱伝導体より高さの低い柱状の第2の熱伝導体とを、前記積層体に貫入する工程であって、前記熱電変換層の一方の端部に近接する箇所における前記第1の基材及び前記第2の基材に前記第1の熱伝導体を貫入し、前記第1の熱伝導体の一部を前記第2の基材から突出させ、前記熱電変換層の他方の端部に近接する箇所における前記第1の基材に前記第2の熱伝導体を貫入する工程と、前記板状の熱伝導体をエッチングすることにより、前記板状の熱伝導体の一部であるパッド部を前記第2の熱伝導体に接続させた状態で残存させる工程とを有することを特徴とする熱電変換素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の熱電変換素子によれば、積層体に埋め込まれた熱電変換層の一方の端部の近傍に柱状の第1の熱伝導体が配されており、第1の熱伝導体の一部が積層体の一方の面から突出しているため、熱電変換層の一方の端部を第1の熱伝導体を介して効果的に冷却し得る。また、積層体の他方の面にパッド部を有する第2の熱伝導体が熱電変換層の他方の端部の近傍に配されているため、熱電変換層の他方の端部を第2の熱伝導体を介して効果的に加熱し得る。従って、起電力の大きい熱電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、一実施形態による熱電変換素子を示す断面図である。
【図2】図2は、一実施形態による熱電変換素子を示す平面図である。
【図3】図3は、放熱量のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】図4は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その1)である。
【図5】図5は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その2)である。
【図6】図6は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その3)である。
【図7】図7は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その4)である。
【図8】図8は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その5)である。
【図9】図9は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その6)である。
【図10】図10は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その7)である。
【図11】図11は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その8)である。
【図12】図12は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その9)である。
【図13】図13は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その10)である。
【図14】図14は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その11)である。
【図15】図15は、一実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図(その12)である。
【図16】図16は、一実施形態の変形例(その1)による熱電変換素子を示す断面図である。
【図17】図17は、一実施形態の変形例(その2)による熱電変換素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[一実施形態]
一実施形態による熱電変換素子及びその製造方法について図1乃至図15を用いて説明する。
【0012】
(熱電変換素子)
まず、本実施形態による熱電変換素子について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態による熱電変換素子を示す断面図である。図2は、本実施形態による熱電変換素子を示す平面図である。図1(a)は、図2のA−A′線断面に対応しており、図1(b)は、図2のB−B′線断面に対応しており、図1(c)は、図2のC−C′線断面に対応しており、図1(d)は、図2のD−D′線断面に対応している。
【0013】
図1及び図2に示すように、基材10の一方の面(図1における紙面上側の面)には、N型の熱電変換層(熱電変換材料、熱電変換膜)12とP型の熱電変換層(熱電変換材料、熱電変換膜)14とが交互に配されている。基材10としては、例えば絶縁性シート(絶縁性フィルム)が用いられている。N型の熱電変換層12の材料としては、例えばNi48Cu52等が用いられている。P型の熱電変換層14の材料としては、例えばNi90Cr10等が用いられている。熱電変換層12,14の厚さは、例えば1μm程度とする。熱電変換層12,14の長さは、例えば8mm程度とする。熱電変換層12,14の幅は、例えば1mm程度とする。
【0014】
交互に配されたこれらの熱電変換層12,14は、導電パターン(電極)16a,16bにより直列に接続されている。即ち、N型の熱電変換層12とP型の熱電変換層14とが導電パターン16a、16bにより交互に直列に接続されている。図2の紙面下側においては、熱電変換層12の端部と熱電変換層14の端部とが導電パターン16aにより接続されている。一方、図2の紙面上側においては、熱電変換層12の端部と熱電変換層14の端部とが導電パターン16bにより接続されている。こうして、交互に直列に接続されたN型の熱電変換層16aとP型の熱電変換層16bとにより直列接続体15が形成されている。なお、N型の熱電変換層16aとP型の熱電変換層16bとを交互に直列に接続しているのは、大きい起電力を得るためである。直列接続体15の両端には、電極パッド16cがそれぞれ接続されている。電極パッド16cは、外部に接続するためのものである。
【0015】
直列接続体15が形成された基材10上には、直列接続体15を覆うように基材18が形成されている。基材18としては、例えば基材10と同様に、絶縁性シートが用いられている。基材18は、例えば絶縁性の接着剤(接着層)20を用いて、直列接続体15が形成された基材10に接着されている。
【0016】
こうして、N型の熱電変換層14とP型の熱電変換層16とが交互に直列に接続された直列接続体15が基材10と基材18との間に配された積層体22が形成されている。
【0017】
積層体22には、熱伝導部材(熱伝導体)24aが貫入されている。積層体22に貫入された熱伝導部材24aは、基体10と基体18とを貫通しており、熱伝導部材24aの一部が基体18から突出している。熱伝導部材24aの一方の端部(図1(a)における紙面上側の端部)、即ち、熱伝導部材24aの先端は、尖っている。熱伝導部材24aの一方の端部が尖っているのは、熱伝導部材24aにより積層体22を貫通させるためである。また、熱伝導部材24aの一部を基体18から突出させているのは、熱伝導部材24aからの放熱量を十分に大きくするためである。従って、熱伝導部材24aは、大気により効果的に冷却される。
【0018】
熱伝導部材24aは、熱電変換層12,14の一方の端部(図2における紙面下側の端部)に近接している。このため、熱伝導部材24aの近傍に位置している熱電変換層12,14の一方の端部(図2における紙面下側の端部)は、熱伝導部材24aを介して冷却され得る。
【0019】
基体18から突出している熱伝導部材24aの一部の寸法は、例えば5mm程度とする。熱伝導部材24aの径は、例えば1mm程度とする。熱伝導部材24aの材料は、例えばCu(銅)とする。
【0020】
このように熱伝導部材24aの一部(図1(a)における紙面上側の部分)は基体18から突出しているが、熱伝導部材24aの他方の端部(図1(a)における紙面下側の端部)は基体10から突出していない。熱伝導部材24aの他方の端部(図1(a)における紙面下側の端部)を基体10から突出させていないのは、以下のような理由によるものである。即ち、本実施形態による熱電変換素子を発熱体(図示せず)等に取り付ける際には、基体10の他方の面(図1(a)における紙面下側の面)の側が発熱体等に近接する。熱伝導部材24aの他方の端部(図1(a)における紙面下側の端部)が基体10から突出している場合には、熱伝導部材24aが発熱体等に接してしまい、熱伝導部材24aが発熱体等により加熱されてしまう。熱伝導部材24aは、上述したように冷却のために用いられるものである。従って、発熱体等により熱伝導部材24aが加熱されるのを抑制すべく、熱伝導部材24aの他方の端部(図1(a)における紙面下側の面)を基体10から突出させていない。
【0021】
また、積層体22には、熱伝導部材(熱伝導体)24bが貫入されている。かかる熱伝導部材24bの一方の端部(図1(b)における紙面上側の端部)は、尖っていない。より具体的には、熱伝導部材24bの一方の端部(図1(b)における紙面上側の端部)は、丸まっている。熱伝導部材24bの寸法(図1(b)における紙面上下方向の寸法)は、例えば0.3mm程度とする。熱伝導部材24bの材料は、例えばCuとする。
【0022】
熱伝導部材24bは、基体10の他方の面側(図1(b)における紙面下側の面側)にパッド部24cを有している。かかるパッド部24cは、本実施形態による熱電変換素子を発熱体(図示せず)等に取り付けた際に、発熱体等から発せられる熱を熱伝導部材24bに伝達させるためのものである。パッド部24cは、本実施形態による熱電変換素子を発熱体(図示せず)等に取り付けた際に、発熱体等に接する。
【0023】
熱伝導部材24bは、熱電変換層12,14の他方の端部(図2における紙面上側の端部)に近接している。このため、熱伝導部材24bの近傍に位置している熱電変換層12,14の他方の端部(図2における紙面上側の端部)は、熱伝導部材24bを介して加熱され得る。
【0024】
パッド部24cは、例えば接着剤(図示せず)等により基体10の他方の面(図1(b)における紙面下側の面)に固定されている。パッド部24cの厚さは、例えば50μm程度とする。パッド部24cの材料は、例えばCuとする。
【0025】
また、基体10の他方の面(図1(a)における紙面下側の面)には、スペーサ24dが配されている。スペーサ24dは、本実施形態による熱電変換素子を発熱体(図示せず)に取り付けた際に、熱伝導部材24aの他方の端部(図1(a)における紙面下側の端部)が発熱体等に接しないようにするためのものである。スペーサ24dは、例えば接着剤(図示せず)等により基体10の他方の面(図1(b)における紙面下側の面)に固定されている。スペーサ24dの厚さは、例えば50μm程度とする。スペーサ24dの材料は、例えばCuとする。
【0026】
本実施形態による熱電変換素子を発熱体等に取り付ける際には、図1における紙面下側が発熱体等に取り付けられる。従って、図1における紙面下側が高温側(発熱側)となり、図1における紙面上側が低温側(放熱側)となる。
【0027】
こうして、本実施形態による熱電変換素子(熱電変換装置、熱電変換モジュール)が形成されている。
【0028】
(評価結果)
次に、本実施形態による熱電変換素子についての評価結果について図3を用いて説明する。図3は、放熱量のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0029】
比較例は、積層体の上面全体に放熱のための金属膜を単に形成したものである。
【0030】
実施例は、本実施形態による熱電変換素子に対応するものである。
【0031】
実施例、比較例のいずれの場合においても、交互に直列接続された熱電変換層12,14の総数を100個とした。
【0032】
実施例1においては、熱伝導部材24aの径を1mmとし、積層体22から突出している部分の熱伝導部材24aの寸法を5mmとした。
【0033】
対流放熱量をQ[W]、放射放熱量をQ[W]とすると、放熱量Q[W]は、以下のような式により表される。
【0034】
Q = Q+ Q = αA(T−T)+Aεσ(T−T
ここで、αは対流熱伝達率[W/m・K]であり、Aは放熱面積[m]であり、εは放射率であり、σはステファンボルツマン定数[W/m・K]であり、Tは外側表面温度[℃]であり、Tは外気温度[℃]である。
【0035】
実施例における放熱面積Aは400[mm]とした。また、比較例における放熱面積Aを250[mm]とした。
【0036】
外側表面温度Tと外気温度Tとの差を10[℃]とし、放射率εを1.0とし、対流熱伝達率αを50[W/m・K]とすると、放熱量は図3のようになる。
【0037】
図3から分かるように、実施例の場合、即ち、本実施形態の場合では、十分な放熱量で放熱することが可能である。
【0038】
このように、本実施形態によれば、熱電変換層12,14の一方の端部に近接している熱伝導部材24aの一部が積層体22から突出しているため、熱電変換層12,14の一方の端部を熱伝導部材24aを介して効果的に冷却し得る。一方、熱電変換層12,14の他方の端部に近接している熱伝導部材24bがパッド部24cを介して発熱体等により効果的に加熱されるため、熱電変換層12,14の他方の端部を効果的に加熱し得る。従って、本実施形態によれば、起電力の大きい熱電変換素子を提供することができる。
【0039】
(熱電変換素子の製造方法)
次に、本実施形態による熱電変換素子の製造方法について図4乃至図15を用いて説明する。図4乃至図14は、本実施形態による熱電変換素子の製造方法を示す工程図である。図4(a)はA−A′断面図である。図4(c)は平面図であり、図4(b)は図4(c)のA−A′線断面図である。図5(a)はA−A′線断面図である。図5(c)は平面図であり、図5(b)は図5(c)のA−A′線断面図である。図6(a)はA−A′線断面図であり、図6(b)はB−B′線断面図である。図7(c)は平面図であり、図7(a)は図7(c)のA−A′線断面図であり、図7(b)は図7(c)のB−B′線断面図である。図8(a)は、A−A′断面図であり、図8(b)はB−B′線断面図である。図8(c)はA−A′線断面図であり、図8(d)はB−B′線断面図である。図9(a)はA−A′断面図であり、図9(b)はB−B′線断面図である。図10(c)は平面図であり、図10(a)は図10(c)のA−A′線断面図であり、図10(b)は図10(c)のB−B′線断面図である。図11(c)は平面図であり、図11(a)は図11(c)のA−A′線断面図であり、図11(b)は図11(c)のB−B′線断面図である。図12(a)はA−A′線断面図であり、図12(b)はB−B′線断面図である。図13(c)は平面図であり、図13(a)は図13(c)のA−A′線断面図であり、図13(b)は図13(c)のB−B′線断面図である。図14(c)は平面図であり、図14(a)は図14(c)のA−A′線断面図であり、図14(b)は図14(c)のB−B′線断面図である。図15(a)は、図14(c)のC−C′線断面図である。図15(b)は、図14(c)のD−D′線断面図である。
【0040】
まず、図4(a)に示すように、基材(基板)10上に、メタルマスク26を載置する。メタルマスク26には、N型の熱電変換層12を形成するための開口部28が形成されている。メタルマスク26の厚さは、例えば50μm程度とする。メタルマスク26の材料としては、例えばコバールが用いられている。基材10としては、例えば絶縁性シートを用いる。かかる絶縁性シートとしては、例えば、宇部興産株式会社製のポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス(登録商標)−S)等を用いる。基材10のサイズは、例えば、5cm×5cm×25μm程度とする。
【0041】
次に、メタルマスク26をマスクとして、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚1μm程度のN型の熱電変換材料膜12を堆積する。かかる熱電変換材料膜12としては、例えばNi48Cu52の熱電変換材料膜を成膜する。Ni48Cu52の熱電変換材料膜12を形成する場合には、Niの含有量が48wt%に設定され、Cuの含有量が52wt%に設定されたターゲットを用いる。こうして、メタルマスク26の開口部28が位置する箇所における基材10上に、N型の熱電変換層12が形成される。熱電変換層12の長さは、例えば8mm程度とする。熱電変換層12の幅は、例えば1mm程度とする。
【0042】
この後、メタルマスク26を基材10上から取り外す(図4(b)及び図4(c)参照)。
【0043】
次に、図5(a)に示すように、基材10上に、メタルマスク30を載置する。メタルマスク30には、P型の熱電変換層14を形成するための開口部32が形成されている。メタルマスク30の厚さは、例えば50μm程度とする。メタルマスク30の材料としては、例えばコバールが用いられている。
【0044】
次に、メタルマスク30をマスクとして、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚1μm程度のP型の熱電変換材料膜14を堆積する。かかる熱電変換材料膜14としては、例えばNi90Cr10の熱電変換材料膜14を成膜する。Ni90Cr10の熱電変換材料膜14を形成する場合には、NiとCrとの組成比が90:10に設定されたターゲットを用いる。こうして、メタルマスク30の開口部32が位置する箇所における基材10上に、P型の熱電変換層14が形成される。熱電変換層14の長さは、例えば8mm程度とする。熱電変換層14の幅は、例えば1mm程度とする。熱電変換層12と熱電変換層14との間隔(スペース)は、例えば1mm程度とする。
【0045】
この後、メタルマスク30を基材10上から取り外す(図5(b)及び図5(c)参照)。
【0046】
次に、基材10上に、メタルマスク34を載置する。メタルマスク34には、導電パターン(電極)16a、16b及び電極パッド16c(図2参照)を形成するための開口部36が形成されている。メタルマスク34の厚さは、例えば50μm程度とする。メタルマスク34の材料としては、例えばコバールが用いられている。
【0047】
次に、メタルマスク34をマスクとして、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚500nm程度の導電膜を成膜する。かかる導電膜の材料としては、例えばCuを用いる。これにより、メタルマスク34の開口部36が位置する箇所における基材10上に、導電パターン16a,16b及び電極パッド16c(図2参照)が形成される。
【0048】
この後、メタルマスク34を基材10上から取り外す(図7参照)。
【0049】
こうして、N型の熱電変換層12とP型の熱電変換層14とが導電パターン16a、16bにより交互に直列接続された直列接続体15(図2参照)が、基体10上に形成される。
【0050】
次に、図8(a)及び図8(b)に示すように、全面に、接着剤20を塗布する。かかる接着剤20としては、例えば絶縁性の接着剤を用いる。
【0051】
次に、図8(c)及び図8(d)に示すように、接着剤20が塗布された基材上に、基材18を貼り付ける。基材18としては、基材10と同様に、例えば絶縁性シートを用いる。かかる絶縁性シートとしては、基材10に用いられている絶縁性シートと同様に、例えば、宇部興産株式会社製のポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス(登録商標)−S)等を用いる。基材18のサイズは、例えば、5cm×5cm×50μm程度とする。
【0052】
こうして、N型の熱電変換層12とP型の熱電変換層14とが交互に直列接続された直列接続体15(図2参照)が基材10と基材18との間に配された積層体22が形成される(図9(a)及び図9(b)参照)。
【0053】
次に、例えばCOレーザを用い、基材10に開口部(貫通孔)38a、38bを形成する。開口部38aは、熱伝導部材24aを貫入するためのものであり、開口部38bは、熱伝導部材24bを貫入するためのものである。開口部38a、38bの径は、例えば1mmとする。
【0054】
次に、図11に示すように、板状の熱伝導体24上に柱状の熱伝導体24a、24bが形成された構造体40を用意する。板状の熱伝導体24の寸法は、例えば5cm×5cm×1mm程度とする。板状の熱伝導体24の材料としては、例えばCuが用いられている。熱伝導体24aの高さは、例えば5mm程度とする。熱伝導体24bの高さは、例えば60μm程度とする。熱伝導体24aの一方の端部(図11(a)における紙面上側の端部)、即ち、熱伝導体24aの先端は、尖っている。熱伝導体24aの先端が尖っているのは、上述したように、基体10及び基体18を熱伝導体24aにより貫通させるためである。
【0055】
なお、板状の熱伝導体24と熱伝導体24a,24bとは一体形成されていてもよいし、板状の熱伝導体24と別個に形成された熱伝導体24a,24bが板状の熱伝導体24に取り付けられていてもよい。
【0056】
次に、図12に示すように、板状の熱伝導体24上に突出している熱伝導体24a、24bを積層体22に貫入する。この際、熱伝導体24aは開口部38aに貫入され、熱伝導体24bは開口部38bに貫入される。熱伝導体24aの先端は尖っており、しかも、熱伝導体24aの寸法(図12(a)における紙面上下方向の寸法)は積層体24の厚さに対して十分に大きいため、熱伝導体24aにより基体10及び基体18が貫通され、熱伝導体24aの一部が基体18から突出した状態となる。熱伝導体24bの寸法(図12(b)における紙面上下方向の寸法)は、基体10の厚さよりは大きいが、積層体22の厚さよりは小さいため、熱伝導体24bの一方の端部(図13(b)における紙面上側の端部)は基体18に接した状態となる(図13参照)。
【0057】
熱伝導体24aは、熱電変換層12,14の一方の端部(図13(c)における紙面下側の端部)に近接する箇所に貫入される。そして、熱伝導体24aの一部が積層体22から突出しているため、熱伝導体24aは効果的に冷却される。このため、熱電変換層12,14のうちの熱伝導体24aの近傍に位置している端部(図13(c)における紙面下側の端部)は、熱伝導体24aを介して効果的に冷却され得る。
【0058】
なお、基体10と板状の熱伝導体24とは、例えば接着剤等を用いて接着される。
【0059】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、板状の熱伝導体24をエッチングする(図14及び図15参照)。これにより、熱伝導部材24aが、板状の熱伝導体24から分離される。また、板状の熱伝導体24の一部が、熱伝導体24bの他方の端部(図14(b)における紙面下側の端部)に接続された状態で、基体10の他方の面(図14(b)における紙面下側の面)に残存し、エッチングされた板状の熱伝導体24の一部によりパッド部24cが形成される。これにより、基体10の他方の面側(図14(b)における紙面下側の面側)にパッド部24cを有する熱伝導部材24bが形成される。また、図14(a)に示すように、基体10の他方の面(図14(b)における紙面下側の面)に、板状の熱伝導体24の一部によりスペーサ24dを形成する。
【0060】
スペーサ24dは、本実施形態による熱電変換素子を発熱体(図示せず)に取り付けた際に、熱伝導部材24aの他方の端部(図14(a)における紙面下側の端部)が発熱体等に接しないようにするためのものである。従って、熱伝導部材24aとスペーサ24dとは接続されていない。
【0061】
パッド部24cは、本実施形態による熱電変換素子を発熱体(図示せず)等に取り付けた際に、発熱体等に接触するものである。熱伝導部材24bは、熱電変換層12,14のうちの他方の端部(図14(c)における紙面上側の端部)に近接する箇所に貫入される。このため、熱電変換層12,14のうちの熱伝導部材24bの近傍に位置している端部(図14(c)における紙面上側の端部)は、熱伝導部材24bを介して効果的に加熱され得る。
【0062】
このように、本実施形態によれば、熱電変換層12,14の一方の端部に近接している熱伝導部材24aの一部が積層体22から突出しているため、熱電変換層12,14の一方の端部を熱伝導部材24aを介して効果的に冷却し得る。一方、熱電変換層12,14の他方の端部に近接している熱伝導部材24bがパッド部24cを介して発熱体等により効果的に加熱されるため、熱電変換層12,14の他方の端部を効果的に加熱し得る。従って、本実施形態によれば、起電力の大きい熱電変換素子を得ることができる。
【0063】
(変形例(その1))
次に、本実施形態による熱電変換素子の変形例(その1)について図16を用いて説明する。図16は、本実施形態による熱電変換素子の変形例を示す断面図である。図16(a)はA−A′線断面図であり、図16(b)はB−B′線断面図であり、図16(c)はC−C′断面図であり、図16(d)はD−D′線断面図である。
【0064】
図16に示すように、本変形例では、熱伝導部材24aの他方の端部(図16(a)における紙面下側の端部)がエッチングされている。このため、本変形例では、熱伝導部材24aの他方の端部(図16(a)における紙面下側の端部)の面が、基体10の他方の面(図16(a)における紙面下側の面)に対して凹んだ状態となっている。本変形例において、熱伝導部材24aの他方の端部(図16(a)における紙面下側の端部)をエッチングしているのは、本変形例による熱電変換素子を発熱体等に取り付けた際における熱伝導部材24aと発熱体等との距離を十分に確保するためである。これにより、熱伝導部材24aが発熱体等により加熱されるのをより十分に抑制し得る。
【0065】
このように、熱伝導部材24aの他方の端部(図16(a)における紙面下側の端部)をエッチングするようにしてもよい。
【0066】
(変形例(その2))
次に、本実施形態による熱電変換素子の変形例(その2)について図17を用いて説明する。図17は、本実施形態による熱電変換素子の変形例を示す断面図である。図17(a)はA−A′線断面図であり、図17(b)はB−B′線断面図であり、図17(c)はC−C′線断面図であり、図17(d)はD−D′線断面図である。
【0067】
図17に示すように、本変形例では、熱伝導部材24aの他方の端部(図17(a)における紙面下側の端部)がエッチングされており、更に、基体10の他方の面(図17(a)における紙面下側の面)にスペーサ24d(図1(a)参照)が配されていない。
【0068】
熱伝導部材24aの他方の端部(図17(a)における紙面下側の端部)が本変形例のようにエッチングされている場合には、基体10の他方の面(図17(a)における紙面下側の面)にスペーサ24dを配さなくても、熱伝導部材24aと発熱体等とは接触しない。従って、本変形例のように、基体10の他方の面(図17(a)における紙面下側の面)側にスペーサ24d(図1(a)参照)を配さなくてもよい。
【0069】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、N型の熱電変換層12の端部とP型の熱電変換層14の端部とが導電パターン16a、16bを介して電気的に接続されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、N型の熱電変換層12の端部とP型の熱電変換層14の端部とが直接接続されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、熱伝導部材24a,24bの材料としてCuを用いる場合を例に説明したが、熱伝導部材24a,24bの材料はCuに限定されるものではない。熱伝導部材24a,24bの材料として、熱伝導性の比較的高い材料を適宜用いることができる。例えば、熱伝導部材24a,24bの材料として、カーボンナノチューブ、アルミニウム、シリコンカーバイト等を用いてもよい。
【0072】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0073】
(付記1)
第1の基材と第2の基材との間に熱電変換層が配された積層体と、
前記熱電変換層の一方の端部に近接し、前記積層体の一方の面から一部が突出している柱状の第1の熱伝導体と、
前記熱電変換層の他方の端部に近接し、前記積層体の他方の面にパッド部を有する柱状の第2の熱伝導体と
を有することを特徴とする熱電変換素子。
【0074】
(付記2)
付記1記載の熱電変換素子において、
前記第1の熱伝導体は、前記第1の基材及び前記第2の基材を貫通している
ことを特徴とする熱電変換素子。
【0075】
(付記3)
付記1又は2記載の熱電変換素子において、
前記積層体の前記一方の面から突出している前記第1の熱伝導体の端部は、尖っている
ことを特徴とする熱電変換素子。
【0076】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の熱電変換素子において、
前記第2の熱伝導体は、前記第1の基材を貫通しており、
前記第1の基材を貫通した前記第2の熱伝導体の端部は、前記第2の基材に接している
ことを特徴とする熱電変換素子。
【0077】
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の熱電変換素子において、
前記第1の基材は、第1の樹脂シートであり、
前記第2の基材は、第2の樹脂シートである
ことを特徴とする熱電変換素子。
【0078】
(付記6)
第1の基材と第2の基材との間に熱電変換層が配された積層体を形成する工程と、
板状の熱伝導体上に突出するように形成された柱状の第1の熱伝導体と、前記板状の熱伝導体上に突出するように形成され、前記第1の熱伝導体より高さの低い柱状の第2の熱伝導体とを、前記積層体に貫入する工程であって、前記熱電変換層の一方の端部に近接する箇所における前記第1の基材及び前記第2の基材に前記第1の熱伝導体を貫入し、前記第1の熱伝導体の一部を前記第2の基材から突出させ、前記熱電変換層の他方の端部に近接する箇所における前記第1の基材に前記第2の熱伝導体を貫入する工程と、
前記板状の熱伝導体をエッチングすることにより、前記板状の熱伝導体の一部であるパッド部を前記第2の熱伝導体に接続させた状態で残存させる工程と
を有することを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【0079】
(付記7)
付記7記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記積層体に前記第1の熱伝導体及び前記第2の熱伝導体を貫入する工程の前に、前記第1の熱伝導体を貫入するための第1の開口部と、前記第2の熱伝導体を貫入するための第2の開口部とを、前記第1の基材に形成する工程を更に有し、
前記積層体に前記第1の熱伝導体及び前記第2の熱伝導体を貫入する工程では、前記第1の熱伝導体を前記第1の開口部に貫入するとともに、前記第2の熱伝導体を前記第2の開口部に貫入する
ことを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【0080】
(付記8)
付記6又は7記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記第1の熱伝導体の一方の端部は、尖っている
ことを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【0081】
(付記9)
付記6乃至8のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記積層体に前記第1の熱伝導体及び前記第2の熱伝導体を貫入する工程では、前記第2の熱伝導体が前記第1の基材を貫通し、前記第1の基材を貫通した前記第2の熱伝導体の端部が前記第2の基材に接する
ことを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【0082】
(付記10)
付記6乃至9のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記第1の基材は、第1の樹脂シートであり、
前記第2の基材は、第2の樹脂シートである
ことを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
【符号の説明】
【0083】
10…基体
12…N型の熱電変換層
14…P型の熱電変換層
15…直列接続体
16a、16b…導電パターン
16c…電極パッド
18…基体
20…接着層
22…積層体
24…熱伝導体
24a、24b…熱伝導部材、熱伝導体
24c…パッド部
24d…スペーサ
26…メタルマスク
28…開口部
30…メタルマスク
32…開口部
34…メタルマスク
36…開口部
38a,38b…開口部
40…構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と第2の基材との間に熱電変換層が配された積層体と、
前記熱電変換層の一方の端部に近接し、前記積層体の一方の面から一部が突出している柱状の第1の熱伝導体と、
前記熱電変換層の他方の端部に近接し、前記積層体の他方の面にパッド部を有する柱状の第2の熱伝導体と
を有することを特徴とする熱電変換素子。
【請求項2】
請求項1記載の熱電変換素子において、
前記第1の熱伝導体は、前記第1の基材及び前記第2の基材を貫通している
ことを特徴とする熱電変換素子。
【請求項3】
請求項2記載の熱電変換素子において、
前記積層体の前記一方の面から突出している前記第1の熱伝導体の端部は、尖っている
ことを特徴とする熱電変換素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱電変換素子において、
前記第2の熱伝導体は、前記第1の基材を貫通しており、
前記第1の基材を貫通した前記第2の熱伝導体の端部は、前記第2の基材に接している
ことを特徴とする熱電変換素子。
【請求項5】
第1の基材と第2の基材との間に熱電変換層が配された積層体を形成する工程と、
板状の熱伝導体上に突出するように形成された柱状の第1の熱伝導体と、前記板状の熱伝導体上に突出するように形成され、前記第1の熱伝導体より高さの低い柱状の第2の熱伝導体とを、前記積層体に貫入する工程であって、前記熱電変換層の一方の端部に近接する箇所における前記第1の基材及び前記第2の基材に前記第1の熱伝導体を貫入し、前記第1の熱伝導体の一部を前記第2の基材から突出させ、前記熱電変換層の他方の端部に近接する箇所における前記第1の基材に前記第2の熱伝導体を貫入する工程と、
前記板状の熱伝導体をエッチングすることにより、前記板状の熱伝導体の一部であるパッド部を前記第2の熱伝導体に接続させた状態で残存させる工程と
を有することを特徴とする熱電変換素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate