説明

熱電気変換素子、熱電気変換モジュール、及びそれらの製造方法

【課題】毒性がなく安全で、製造上の特性的が安定で重量も軽く、低価格で供給量に心配が無いGICを利用し、性能指数が大きく300℃以上でも使用可能な熱電気変換素子、熱電気変換モジュール、及びそれらの製造方法の提供。
【解決手段】グラファイト粉末にインターカレート物質を加えたGIC粉末とガラス粉末を混合した後にガラスの融点以上の温度で加熱して作製した複合材料を用いて構成した熱電気変換素は従来のビスマス・テルル合金、鉛・テルル合金等で見られる欠点が無く安定に作製でき、素子が軽量であることから扱いやすく、しかも安価な熱電気変換素子およびモジュールを提供できる。ガラス又は無機物で遮蔽されているため、大気中の酸素や水分などと反応せず、長期間に渡り安定に動作する。使用温度も室温以下からガラスの軟化点あるいは無機系接着剤の耐熱温度まで使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電気変換素子、熱電気変換モジュール、及びそれらの製造方法に関し、特に、温度差のある所を利用して発電を行う熱電気変換素子、熱電気変換モジュール、及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱電気変換素子はビスマス・テルル合金、ビスマス・アンチモン合金、鉛テルル合金、鉄シリコン合金等からなる半導体素子が使用されてきた。(例えば非特許文献1参照)
【0003】
以下、図5により従来の熱電気変換素子について説明する。図5は、従来の熱電気変換素子における各合金における温度T(℃)と、その温度Tと性能指数Zの積ZTとの関係を示す図である。
性能指数とはZ=α/κρであらわされる熱電材料の性能を表す指数である。ここでZは性能指数、αは熱電能、κは熱伝導率、ρは比抵抗である。300℃〜500℃でもっとも性能指数が高いものは鉛・テルル合金である。このためこの温度付近の熱電気変換素子の材料として鉛・テルル合金が用いられている。
【0004】
グラファイトの層間化合物(以下GICと略す)を利用した熱電気変換素子は研究段階であるが本質的に熱伝導率が高く性能指数が2桁から3桁ほど小さく実用にはならない。高分子材料を用いて複合化し、熱伝導率を低くする試みもなされている。
【0005】
図6は、従来のビスマス・テルル合金を用いた熱電気変換素子の一例を示す図である。
27はp型ビスマス・テルル合金、28はn型ビスマス・テルル合金、25は金属板、24は正極電極板、23は負極電極板、29は負極のリード線、30は正極のリード線である。
【0006】
図6において上方が高温、下方が低温として熱が上方から下方に流れるとすると負極のリード線29と正極のリード線30の間に起電力を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−22534号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「株式会社 リアライズ社 熱電変換工学―基礎と応用―」
【非特許文献2】松本里香、高橋洋一、阿久沢昇、第31回炭素材料学会 要旨集pp298(2004)
【非特許文献3】Thermoelectric properties and electrical transport of graphite Intercalation compounds, R.Matsumoto, Y.Hoshina, N.Akuzawa, Material Transactions, 50, pp.1607−1611, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上述べた室温〜200℃の温度領域における従来の熱電気変換素子はn型およびp型のビスマス・テルル合金を用いたpn接合が使用されている。200℃〜500度の温度領域では排熱発電に用いられる鉛・テルル合金が用いられている。ただし、鉛は有害性があり,テルルは有害性に加え年間産出量は100トン程度で資源埋蔵量が僅少である。エネルギー変換用材料として一度使われ始めると,かなりまとまった量が必要となるため供給に問題があった。
【0010】
粉末による焼結体としてプレスによる製造においては、鉛・テルル合金が構造に敏感なためプレスによる歪みにより熱電能が著しく低下するという欠点を有していた。また熱処理条件に敏感で焼結温度の違いにより特性が変化するという欠点を有していた。
【0011】
また、鉛・テルル合金は比重も大きく素子自体が重いという欠点も有していた。このため多数の素子を用いてモジュールに構成する場合には全体が重くなりそのフレームにも大きな強度が要求された。
【0012】
このような従来の熱電気変換素子が有していた問題を解決することを狙いとして、毒性がなく安全で、製造上の特性が安定的で重量も軽く、低価格で供給量に心配の無いGICを利用した熱電気変換素子が提案されているが、熱伝導率が高く性能指数が小さいという欠点を有していた。また大気中の酸素や水分などと反応しやすい欠点を有していた。
【0013】
GICを利用した熱電気変換素子の熱伝導率を低くする試みとして高分子材料との複合材料が提案されているが、高分子であるため300℃以上は使えない。
【0014】
本発明は、このような従来の熱電気変換素子が有していた問題を解決しようとするもので、毒性がなく安全で、製造上の特性が安定的で重量も軽く、低価格で供給量に心配が無いGICを利用し、性能指数が大きく300℃以上でも使用可能な熱電気変換素子、熱電気変換モジュール、及びそれらの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の目的を達成するために材料をグラファイトにリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムなどn型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を加えて混合した後に、さらにガラス粉末あるいは無機系接着剤を加えて均一に混ぜ合わせて複合化して成形し、これをガラスの場合は融点まで加熱し、無機系接着剤の場合は固化する温度まで加熱して得たn型のGICとガラスとの複合材料をn型とし、グラファイトに銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム、白金、水銀、カドミウム、ジルコニウム,ハフニウム、アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム、ボロン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、ルテニウム、オスミウム、金、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀、カドミウム、アルミニウム、タリウム、金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素、リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物などp型のアクセプターとなり得る物質の一種類または二種類以上を混合した後に、さらにガラス粉末あるいは無機系接着剤を加えて均一に混ぜ合わせて複合化して成形し、これをガラスの場合は融点まで加熱し、無機系接着剤の場合は固化する温度まで加熱して得たp型のGICとガラスとの複合材料を加えてp型として、pn接合をして熱電気変換素子と、これを用いた熱電気変換モジュールを作製する。
【発明の効果】
【0016】
これらの熱電気変換素子とその熱電気変換モジュールの利点は従来のビスマス・テルル合金、鉛・テルル合金と比較して偏析を起こすことも無く、柔らかすぎて扱いにくいことも無く、また粉末による焼結体としてとしてはプレスによる歪で特性が大幅に劣化することも無い。熱処理条件にも敏感では無い。成形も容易に出来る。さらに、グラファイトとガラスの比重は小さいため、ビスマス・テルル合金、鉛・テルル合金に比べると軽い。材料費も低価格で供給量も心配がない。
【0017】
さらにこれらの熱電気変換素子とその熱電気変換モジュールの利点はGIC素子だけで構成した熱電気変換素子とその熱電気変換モジュールよりも熱伝導が大きく低下することにより熱電材料の性能を表す指数であるZが大きくなり性能が向上し、ガラスまたは無機系接着剤で遮蔽されているため、大気中の酸素や水分などと反応せず、長期間に渡り安定に動作する利点がある。また動作温度も室温以下からガラスの軟化点または無機系接着剤の耐熱温度まで使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1におけるp型熱電素子の作製プロセスを示す図である。
【図2】本発明の実施例1におけるガラス粉末とGIC粉末(p型又はn型)とを混合し複合化させた場合における、当該混合物全体(ガラス粉末+GIC粉末)に対するGIC粉末の混合体積分率と、この混合体積分率で作製したp型熱電素子の電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1における熱電気変換素子の概観を示す図である。
【図4】本発明の実施例2における熱電気変換モジュールを示す図である。
【図5】従来の熱電気変換素子における各合金における温度T(℃)と、その温度Tと性能指数Zの積ZTとの関係を示す図である。
【図6】従来のビスマス・テルル合金を用いた熱電気変換素子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例1を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例1におけるp型熱電素子の作製プロセスを示す図である。以下、本図を用いて、本実施例において比較的大気中で安定なp型熱電素子2を作製するプロセスを説明する。
【0020】
まず、グラファイトの粉末に、p型熱電素子2のアクセプターとなり得る物質の一種類または二種類以上を加えて、メノウ乳鉢等を利用して混合する。この混合過程は水分と酸素が存在しない不活性ガス中で行うことが望ましいが大気中でも可能である。
本実施例では、グラファイト粉末1モルに対し、p型熱電素子2のアクセプターとなり得る物質全体を0.01モル以上0.17モル以下の比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。
このp型熱電素子2のアクセプターとなり得る物質としては、例えば、銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム,白金,水銀,カドミウム,ジルコニウム,ハフニウム,アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム,ボロン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,クロム,ルテニウム,オスミウム,金,イットリウム,ランタン,ネオジウム,サマリウム,ユーロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ジスプロシウムホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀,カドミウム,アルミニウム,タリウム,金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素、リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物などである。
本実施例では、一例として、グラファイト粉末1モルに対し、塩化銅(II)を0.04モルの比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。
【0021】
上記のようにして得た混合粉末を不活性ガス中で200℃から600℃の範囲の温度で加熱した後、室温まで冷却して、p型GICの粉末を作製する。
【0022】
次に、このp型GICの粉末とガラス粉末とが略均一に分散するように十分に混合し、複合化する。
図2は、本発明の実施例1におけるガラス粉末とGIC粉末(p型又はn型)とを混合し複合化させた場合における、当該混合物全体(ガラス粉末+GIC粉末)に対するGIC粉末の混合体積分率と、この混合体積分率で作製したp型熱電素子2の電気抵抗との関係を示すグラフである。
図に示すように、混合物全体に対してp型GICの体積分率が15%未満では電気抵抗が大きく、30%でほとんど導通する。また、上記混合体積分率が80%を超えると熱伝導度が大きくなり性能指数Zが悪くなる(低下する)。
このため、混合物全体におけるp型GICの粉末の混合体積分率は、15〜80%が好ましく、特に30%が好ましい。本実施例では、その混合体積分率を30%とする。
【0023】
こうして作製したp型GICとガラスの複合物を金型に入れて加圧しブロックに成形する。このブロック状に形成した混合物において、グラファイト粉末の結晶は加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
このブロック状の混合物をガラスの融点より高い温度で不活性ガス中で加熱し、カラスを溶融した後冷却してp型熱電素子のペレットとする。
【0024】
次に、大気中では不安定なn型熱電素子1を作製するプロセスを説明する。
まず、グラファイトの粉末に、n型熱電素子1のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を加えて、メノウ乳鉢等を利用して混合する。この混合過程は水分と酸素が存在しない不活性ガス中で行う。
本実施例では、グラファイト粉末1モルに対し、n型熱電素子1のドナーとなり得る物質全体を0.01モル以上0.17モル以下の比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。
このn型熱電素子1のドナーとなり得る物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムなどである。
本実施例では、一例として、グラファイト粉末1モルに対し、リチウムを0.08モルの比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。
【0025】
上記のようにして得た混合粉末を不活性ガス中で200℃〜600℃の範囲の温度で加熱した後、室温まで冷却してn型GICの粉末を作製する。
【0026】
このn型GICの粉末とガラス粉末を十分に混合する。
図2に示すように、混合物全体に対してn型GICの体積分率が15%未満では電気抵抗が大きく、30%でほとんど導通する。また、上記混合体積分率が80%を超えると熱伝導度が大きくなり性能指数Zが悪くなる(低下する)。このため、混合物全体におけるn型GICの粉末の混合体積分率は、15〜80%が好ましく、特に30%が好ましい。本実施例では、その混合体積分率を30%とする。
【0027】
こうして作製したn型GICとガラスの複合物を金型に入れて加圧しブロックに成形する。このブロック状に形成した混合物において、グラファイト粉末の結晶は加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
このブロック状の混合物をガラスの融点より高い温度で不活性ガス中で加熱し、カラスを溶融した後、冷却してn型熱電素子のペレットとする。
【0028】
次に、上述のように作製したp型熱電素子及びn型熱電素子のペレットからそれぞれ小さいp型熱電素子2及びn型熱電素子1を切り出す。
図3は、本発明の実施例1における熱電気変換素子の概観を示す図である。
本図において、1はn型熱電素子、2はp型熱電素子、3は負極電極板、4は正極電極板、5はn型熱電素子とp型熱電素子を連結する金属板である。
そして、図3に示すように、上記切りだしたp型熱電素子2を負極電極板3に接合し、上記切りだしたn型熱電素子1を正極電極板4に接合するとともに、これら切りだしたp型熱電素子2及びn型熱電素子1を金属板5に接合して、熱電気変換素子を作製する。
このとき重要なことは、これら切りだした各素子1,2におけるグラファイト粉末の結晶のc軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と平行に、かつ上記グラファイト粉末の結晶のa軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と垂直になるように熱電気変換素子を作製することにある。
このように作製することにより、熱電気変換素子の内部抵抗を低下させることが可能となる。
【0029】
金属板5の上方から熱を与え金属板5と電極板3、4との間に温度差を与えると電極板3と電極板4の間に起電力が現れた。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができた。使用温度としては室温以下からガラスの軟化点の温度領域まで使用できた。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の実施例2における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0031】
n型のGIC粉末を次のように次のように作製する。
n型インターカレート(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの一種類又は二種類以上)とグラファイトとをガラス管あるいはステンレス管の中に離して置き、そのガラス管あるいはステンレス管の一端を封じ真空排気する。
十分排気した後に、そのガラス管あるいはステンレス管の他端を封じる。
グラファイトとn型インターカレートの比率は、グラファイト6モルに対し、n型インターカレートを1モル以下0.01モル以上とする。
このガラス管あるいはステンレス管を熱してグラファイトに上記n型インターカレートの蒸気を接触させ、粉末状のn型GICを作製する。
【0032】
p型のGIC粉末を次のように次のように作製する。
グラファイトの粉末と、p型インターカレート(銅、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、マンガン、パラジウム、白金、水銀、カドミウム、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、モリブデン、ウラニウム、ボロン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、ルテニウム、オスミウム、金、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、テルル又はタングステンの塩化物などの一種類又は二種類以上)をガラス管あるいはステンレス管の中に離して置き、そのガラス管あるいはステンレス管の一端を封じ真空排気する。
十分排気した後に、そのガラス管あるいはステンレス管の他端を封じる。
グラファイトとp型インターカレートの比率は、グラファイト6モルに対し、p型のインターカレートを1モル以下0.01モル以上とする。
【0033】
真空排気後に塩素ガスをガラス管あるいはステンレス管の中に導入することにより、p型GICの作製速度がさらに加速する。この熱したガラス管あるいはステンレス管の中に導入したグラファイトに上記p型インターカレートの蒸気を接触させ、粉末状のp型GICを作製する。
【0034】
上記のようにして得たn型のGICの粉末を無機系接着剤に体積比率50%の割合で均一に混合する。これを無機系接着剤の固化温度で加熱した後に整形し、n型熱電素子1とする。
同様に、p型のGICの粉末を無機系接着剤に体積比率50%の割合で均一に混合する。これを無機系接着剤の固化温度で加熱した後に整形し、p型熱電素子2とする。
【0035】
混合物全体におけるn型及びp型GICの粉末の混合体積分率は、15〜80%が好ましい。その理由は実施例1と同様である。
【0036】
また、固化する前処理として、GIC粉末と無機接着剤の塊を上部から圧力をかけて平たく変形させてから行うことが望ましい。GIC粉末の結晶のa軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と垂直になるように熱電気変換素子を作製することができるからである。
【0037】
上記のようにして作製したn型、p型の熱電素子1,2をpn接合し、実施例1と同様に図3のような熱電気変換素子を作製する。この熱電気変換素子において、電極板3,電極板4間に所定以上の温度差が生じると、電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明の実施例3における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0039】
n型のGIC粉末を次のように作製する。
n型熱電素子1のドナーとして、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムの粉末の一種類又は二種類以上を液体アンモニア溶液に浸す。
グラファイトをこの溶液に十分浸した後に脱気処理してアンモニアを放出させ200℃〜400℃で加熱してn型のGIC粉末を作製する。
【0040】
p型のGIC粉末は実施例1又は実施例2の製造方法により作製する。
このようにして得たn型、p型のGIC粉末をガラス粉末と体積比率50%の比率で均一に混合し型に入れ加圧して小さなブロック状に形成する。このブロック状に形成した混合物において、グラファイト粉末の結晶は加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
これをガラスの軟化点以上の温度で加熱した後に整形し、n型及びp型の熱電素子1,2を得る。
【0041】
上記のようにして作製したn型、p型の熱電素子1,2をpn接合し、実施例1と同様に図3のような熱電気変換素子を作製する。この熱電気変換素子において、電極板3,電極板4間に所定以上の温度差が生じると、電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
【0042】
上記のn型GICの作製にあたっては液体アンモニア溶液の代わりにメチルアミン、タフタレンとテトラヒドロフランの混合液、等の溶媒を用いても同様の結果が得られる。
【実施例4】
【0043】
次に、本発明の実施例4における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0044】
n型のGIC粉末を次のように作製する。
ペンタン中でリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの粉末とコバルトの錯塩Co(C)(PCHを激しく攪拌し分散させる。これにグラファイトを接触させるとn型GICが得られる。
【0045】
これを乾燥させた後、無機系接着剤に対し40%の体積比率になるように混合する。
次に、実施例2と同様に、無機系接着剤におけるGIC粉末の結晶のa軸が図3における電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と垂直になるように混合物の塊を上部から圧力をかけて平たく変形させてから固化のための加熱を行いn型熱電素子1とする。
【0046】
p型GICは実施例1又は実施例2の方法で作製し、上記と同様に無機系接着剤に対し40%の体積比率になるように混合して固化温度で加熱してp型熱電素子2とする。
【0047】
上記のようにして作製したn型、p型の熱電素子1,2をpn接合し、実施例1と同様に図3のような熱電気変換素子を作製する。この熱電気変換素子において、電極板3,電極板4間に所定以上の温度差が生じると、電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
【実施例5】
【0048】
次に、本発明の実施例5における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1〜実施例4における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0049】
図4は、本発明の実施例5における熱電気変換モジュールを示す図である。
図において、11はn型熱電素子、12はp型熱電素子、13は負極電極板、14は正極電極板、15はn型熱電素子11とp型熱電素子12を連結する金属板、16はガラスのスペーサーで、n型熱電素子11とp型熱電素子12を電気的に絶縁させている。
【0050】
n型熱電素子11及びp型熱電素子12の製造方法は実施例1〜実施例4におけるn型熱電素子1及びp型熱電素子2と同様である。また、各電極板13,14及び金属板15は、第1の実施例の各電極板3,4及び金属板5と同様である。
これらn型熱電素子11及びp型熱電素子12を交互に並ばせて直列接続になるように電極板13,14及び連結する金属板15によって連結する。互いに隣接するn型熱電素子11及びp型熱電素子12は、上記金属板15による電気的接続を除きすべてガラスのスペーサーにより電気的に絶縁されている。
【0051】
このような直列連結をn型熱電素子11及びp型熱電素子12各々40個ずつ用いて熱電気変換モジュールを構成し、上部(上面側)と下部(底面側)との温度差を200℃与えた場合に数ボルトの電位差が得られた。使用温度としては室温以下からガラスの軟化点の温度領域まで使用できた。
【実施例6】
【0052】
次に、本発明の実施例6における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1〜実施例5における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0053】
実施例1ではn型熱電素子のドナーとなり得る物質としてリチウムを用いていたのに対し、本実施例では、グラファイト1モルに対しリチウムとバリウムを混合して0.08モルとしたものを用いる。
この混合物を不活性ガス中で300℃で加熱し、n型GICの粉末を作製する。
このように、n型GICにおいて、リチウムにバリウムを加えることにより、n型キャリアーが増加し、特性が向上する。
【0054】
また、実施例1ではp型熱電素子のアクセプターとなり得る物質として塩化銅(II)を用いていたのに対し、本実施例では、グラファイト1モルに対し塩化銅(II)と塩化鉄(II)を混合して0.04モルとしたものを用いる。
この混合物を不活性ガス中で300℃で加熱し、p型GICの粉末を作製する。
このように、p型GICにおいて、塩化銅(II)に塩化鉄(II)を加えることにより、塩化銅(II)の持つ毒性が希釈され、安全性が増す。
【0055】
次に、ガラス対し、n型GIC及びp型GICの各粉末を体積比40%で均一に混合させ、金型に入れて加圧して成形した後、不活性ガスを通した炉の中でガラスの溶融点以上で加熱した後に冷却してp型熱電素子及びn型熱電素子のペレットを作製する。
そして、実施例1と同様に、これらペレットから切り出して、p型熱電素子2及びn型熱電素子1を作製する。
【0056】
ガラス材料は発電するところの熱源の温度により選定する。熱源が低温であれば低融点ガラスを用い、熱源が高温であれば高融点のガラスを用いる。
【0057】
上記のようにして作製したp型熱電素子2及びn型熱電素子1をそれぞれ60個用いて、実施例5と同様に、金属板5等で直列接続して熱電気変換モジュールを作製した結果、100℃程度の温度差で数ボルトの起電力を得ることができた。使用温度としては室温以下からガラスの軟化点の温度領域まで使用できた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本熱電気変換素子を用いれば熱が発生する所での発電が可能で、例えば温泉地帯の地熱、工場における廃熱、ごみ焼却場の焼却熱、自動車や燃料電池の廃熱、高レベル核廃棄物冷却時に発生する熱などによる発電が可能である。
【0059】
太陽電池は太陽が出ている昼だけしか発電できないが熱電気変換素子による発電は昼夜にかかわらず発電できる。また作製価格が太陽電池より安く、メンテナンスフリーでもあり本格的に大量に使われれば電力の節約に大いに寄与できる。
【0060】
また、熱電気変換素子による発電は太陽電池と同様に電力を得るのに炭酸ガスを発生せず、大気汚染も引き起こさない。地球環境にやさしい発電が出来る。
【符号の説明】
【0061】
1,11 n型熱電素子
2,12 p型熱電素子
3,13,23 負極電極板
4,14,24 正極電極板
5,15,25 金属板
16 ガラスのスペーサー
27 p型ビスマス・テルル合金
28 n型ビスマス・テルル合金
29 負極のリード線
30 正極のリード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型熱電素子とp型熱電素子とをpn接合して構成される熱電気変換素子であって、
前記n型熱電素子は、1モルのグラファイトの粉末に対し、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムのn型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下加えて得たn型のグラファイトのインターカレーション化合物を、ガラス粉末あるいは無機系接着剤のマトリックス中に体積比15〜80%の割合で混合し分散させて固めガラスの融点あるいは無機系接着剤の固化温度で加熱して形成され、
前記p型熱電素子は、1モルのグラファイトの粉末に対し、銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム,白金,水銀,カドミウム,ジルコニウム,ハフニウム,アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム,ボロン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,クロム,ルテニウム,オスミウム,金,イットリウム,ランタン,ネオジウム,サマリウム,ユーロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ジスプロシウムホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀,カドミウム,アルミニウム,タリウム,金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素,リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物のp型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下加えて得たp型のグラファイトのインターカレーション化合物をガラス粉末あるいは無機系接着剤のマトリックス中に体積比15〜80%の割合で混合し分散させて固めガラスの融点あるいは無機系接着剤の固化温度で加熱して形成されることを特徴とする熱電気変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電気変換素子における前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子を、前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とが必ず隣接するように配列するとともに、該互いに隣接する前記n型熱電素子と前記p型熱電素子との間をガラスのスペーサーで電気的に絶縁し、
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを金属板で交互に直列に接続することを特徴とする熱電気変換モジュール。
【請求項3】
1モルのグラファイトの粉末に対し、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムのn型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下の比率となるように加えて得たn型のグラファイトのインターカレーション化合物を、ガラス粉末あるいは無機接着剤のマトリックス中に体積比15〜80%の割合で混合し分散させてガラスの融点あるいは無機系接着剤の固化温度で加熱してn型熱電素子を形成するn型熱電素子形成工程と、
1モルのグラファイトの粉末に対し、銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム,白金,水銀,カドミウム,ジルコニウム,ハフニウム,アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム,ボロン,アルミニウム,ガリウム,インジウム,タリウム,クロム,ルテニウム,オスミウム,金,イットリウム,ランタン,ネオジウム,サマリウム,ユーロピウム,ガドリニウム,テルビウム,ジスプロシウムホルミウム,エルビウム,ツリウム,イッテルビウム,ルテチウム,テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀,カドミウム,アルミニウム,タリウム,金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素,リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物をp型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下の比率となるように加えて得たp型のグラファイトのインターカレーション化合物をガラス粉末あるいは無機接着剤のマトリックス中に体積比15〜80%の割合で混合し分散させてガラスの融点あるいは無機系接着剤の固化温度で加熱してp型熱電素子を形成するp型熱電素子形成工程と、
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とをpn接合して熱電気変換素子を形成する熱電気変換素子形成工程とを有することを特徴とする熱電気変換素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱電気変換素子の製造方法により製造された熱電気変換素子を用いて熱電気変換モジュールを製造する熱電気変換モジュールの製造方法であって、
請求項3記載の前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子を、前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とが必ず隣接するように配列するとともに、該互いに隣接する前記n型熱電素子と前記p型熱電素子との間をガラスのスペーサーで電気的に絶縁する熱電素子配列工程と、
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを金属板で交互に直列に接続する熱電素子接続工程とを有することを特徴とする熱電気変換モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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