説明

熱電組成物及び方法

ナノスケールの内包物を含有するバルク熱電組成物を製造する方法が記載されている。本熱電組成物は、内包物を含まないものよりも高い性能指数(ZT)を有する。本組成物は、たとえば発電のため及びヒートポンプにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年6月6日に出願された仮出願第60/687769号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府の資金援助を受けた研究又は開発に関する申告:該当なし
【0003】
政府の権利に関する申告:該当なし
【0004】
本発明は、性能指数(ZT)を高めるナノスケールの内包物を有する、新規のバルク熱電組成物の製造方法に関する。特に、本発明は、ナノスケールの内包物を、透過型電子顕微鏡(TEM)画像化などの従来のナノスケール画像化技法によって見ることができる熱電組成物に関する。これらは発電用及びヒートポンプ用に有用である。
【背景技術】
【0005】
熱電材料及び素子における従来技術は、Cauchyの米国特許第5448109号、Kanatzidisらの米国特許第6312617号、並びにSterzelらの米国出願公開第2004/0200519 A1号及びKanatzidisらの同2005/0076944A1号に全般的に記載されている。これらの参考文献のそれぞれは、電気伝導度と熱電力の二乗との積を熱伝導度で割ったものに直接影響される性能指数(ZT)を増加させることに関する。一般的に、熱電材料の電気伝導度を増すと、熱伝導度も増加する。熱電素子の効率は、理論効率を下回り、商業的な目的に十分な効率にはなり得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の一目的は、比較的効率的なバルク熱電材料を提供することである。さらに、本発明の一目的は、これらの熱電材料の調製方法を提供することである。さらに、本発明の一目的は、人工的に蒸着された超格子薄膜熱電材料と比較して相対的に経済的に調製できる熱電材料を提供することである。これらの目的及び他の目的は、以下の説明及び図面によってさらに明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マトリックスを提供する第1のカルコゲニドの均質な固溶体又は化合物を、異なる組成を有する第2の相のナノスケール内包物と共に含み、組成物の性能指数(ZT)が内包物を含まない組成物の性能指数よりも大きい熱電組成物に関する。好ましくは、内包物は、組成物を、均質な固溶体の相図に基づいた融点よりも低い、ある適切な温度においてアニーリングした結果としてのスピノーダル分解によって形成されたものである。好ましくは、内包物は、マトリックスの溶融溶液をドーピングした結果としてのマトリックスカプセル化によって形成されたものである。好ましくは、内包物は、マトリックスの溶融溶液を冷却することによる内包物の核生成及び成長によって形成されたものである。
【0008】
本発明はまた、少なくとも2つの異なる金属カルコゲニドのナノ粒子の均一な沈殿した分散物を含む、カルコゲニドの均一な固溶体又は化合物を含み、カルコゲンがテルル、イオウ及びセレンから成る群から選択される、熱電組成物にも関する。好ましくは、組成物は、固溶体のスピノーダル分解によって形成されたものである。
【0009】
本発明はまた、カルコゲニドの均質な固溶体又は化合物を、カルコゲニドに加えられた金属又は半導体から得られる、分散したナノ粒子と共に含む熱電組成物にも関する。
【0010】
本発明はまた、固溶体又は化合物とは異なる組成のナノ粒子の形成を可能にする温度でアニールされた、カルコゲニドの均質な固溶体又は化合物を含む熱電組成物にも関する。
【0011】
本発明はさらに、内包物がマトリックスの溶融溶液をドーピングした結果、マトリックスカプセル化によって形成されたものである組成物に関する。
【0012】
本発明はさらに、内包物がマトリックスの溶融溶液を冷却することによる内包物の核生成及び成長によって形成されたものである組成物に関する。
【0013】
本発明はさらに、以下のことを含む熱電組成物の調製方法に関する:
(a)第1のカルコゲニドの液体溶液又は液体化合物及び異なる組成を有する第2の相を形成させるステップ、
(b)溶液を急速に冷却するステップであって、マトリックスとしての第1のカルコゲニドの固溶体及びナノスケール内包物としての第2の相が形成され、その結果、性能指数が内包物を含まないものより大きいステップであって、好ましくは、内包物は、組成物を、均質な固溶体の相図に基づいた融点よりも低い、ある適切な温度においてアニーリングした結果としてのスピノーダル分解によって形成される。好ましくは、内包物は、マトリックスの溶融溶液を冷却することによるマトリックスカプセル化によって形成される。好ましくは、内包物は、マトリックスの過飽和固溶体における内包物の核生成及び成長によって形成される。好ましくは、カルコゲニドは、テルル、イオウ及びセレンから成る群から選択されるカルコゲンを有する。好ましくは、内包物は約1〜200ナノメートルである。
【0014】
本発明の物質及び利点は、以下の図面及び説明を参照することによって次第に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ナノメートルサイズの内包物を含むバルク材料は、高められた熱電特性を提供する。熱電性能指数は、電気伝導度及びゼーベック指数を維持又は高めつつ、熱伝導度を低下させることによって向上する。マトリックス中のコヒーレントなナノメートルサイズの内包物は、フォノンの散乱サイトとして働き、これは続いて熱電導度を低下させる。これらの材料の調製の一般的方法が開発されてきた。
【0016】
熱電式の熱を電気に変換する装置は、将来のエネルギーの保存、管理、及び利用において重要な役割を果たすことになる。熱電冷却器も、電子産業及び他の産業において重要な役割を果たしている。発電及び冷却用途における熱電材料の使用を拡大するためには、より効率的な熱電材料を特定する必要がある。
【0017】
先に指摘したとおり、熱電材料の品質を決定するために使用する尺度は、無次元の性能指数ZTであり、ZT=(σS/κ)Tであり、σは電気伝導度であり、Sはゼーベック係数又は絶対熱電力であり、Tは温度であり、κは熱伝導度である。量σ・Sは電力因子と呼ばれる。このとき、目標は、同時に熱電力、電気伝導度(すなわち電力因子)を向上させ、且つ熱伝導度を低下させ、それによってZTを高めることである。前述の諸特性は密接に関係づけられている。
【0018】
PbTe及びSi/Ge合金は発電に使用されている最新の熱電材料である。これらの化合物は、ドープされると600K及び1200Kでそれぞれ約0.8の最大ZTを有する。これらの材料の熱伝導度を下げることによって、すでに知られている特性を犠牲にすることなく、ZTを向上させることができる。最近では、BiTe並びにこれのBiSe及びSbTeとの合金は、BiとSbの合金と共に熱電冷却材料としては最先端と見なされている。これらの材料はそれらの性能を最適化するために多くの方法で化学的に改良されているが、現在使用されている熱電材料の特性を高めるために顕著な改良を行うことができる。
【0019】
熱電材料の効率を高めるためには、通常フォノンの散乱速度を上げると同時に高いキャリアー移動度を維持することが必要である。この点に関しては、薄膜超格子材料がZTを高めたことが実証されており、これは熱伝導度の低下によって説明することができる。超格子構造は、事実上、複合した構造界面の配置を作りだして、それが結果としてフォノン伝播の熱抵抗を高める。一方では、格子整合及び界面のコヒーレンスは、乱れのない電子の流れを確かにし、したがって高い移動度を維持する。電気伝導度と格子の熱伝導度のこの分離は、電気伝導度を犠牲にすることなく全体の熱伝導度を下げるために必要である。
【0020】
超格子薄膜の難点は、調製が高価につき、成長が困難であり、材料全体にわたる大きな温度差を支えることが容易ではないことである。したがって、低価格で、製造が容易で、且つ温度勾配を容易に支えることができるバルク材料中へ、長さがナノメートルスケールの内包物を組み入れることが望ましい。
【0021】
本発明で、熱電材料作製のための所望のナノ複合材料の製造においては3つの方法が使用された。これらの方法のそれぞれを、以下のセクションで、実施例、透過型電子顕微鏡(TEM)画像、及びそれぞれの一般的方法から作製することができる材料系の表と一緒に詳細に考察する。第1の、スピノーダル分解は、ナノメートル長さのスケールにおいて組成のゆらぎを有する材料を作るために使用した。他の2つの方法、マトリックスカプセル化並びに核生成及び成長は、ホストマトリックスの内部で、さまざまな材料の内包物を生成する能力を示した。
【0022】
半導体結晶中のフォノンの平均自由行程、tphは、1≦tph≦100nmの範囲内にあり、温度の上昇につれて減少する傾向がある。ナノ複合熱電材料の実現は、フォノン散乱によって格子熱伝導度を大幅に抑えることができるナノメートルサイズの散乱体を導入する手段を提供する。広い粒子サイズ分布の存在は、フォノンスペクトルのより広い範囲での散乱の可能性を提供する。
【0023】
室温以下での上記のことの実験による確認は、図1に示す格子熱伝導度のプロットのようにPbTe−PbS16% at.系から得られ、ナノ沈殿試料の場合には、室温において同じ組成の完全混合物に対して、格子熱伝導度の>40%の低下が観察される。
【0024】
バンドギャップエンジニアリング又は電子のエネルギー状態のエンジニアリングは、熱電材料の電力因子をさらに高めるための別の手段を提供することが示唆されてきた。基本的には、着想は放物線バンド(バルク半導体)と次元性の低下した構造(すなわちナノドットが櫛状の状態密度を示す)を混合して、複合材料の得られる状態密度に対する波及効果を出現させることにある。
【0025】
高められた電力因子の実験による確認は、以下の表1に示す系から得られる:
【表1】

【0026】
方法1:スピノーダル分解
スピノーダル分解とは、2相からなる安定な1相混合物を不安定にすることができる方法のことである。熱力学的には、不均一相が安定性又は準安定性のための必要条件は、ある成分の化学ポテンシャルがその成分の濃度の増加と共に増加しなければならないということである。2成分については、この条件は、
【数1】


に帰し、Xは濃度である。この条件が満たされない場合は、混合物は連続的な組成変化に対して不安定であり、この準安定性の限度はスピノーダルと呼ばれて、
【数2】


で定義され、Xは濃度である。混合相系の両成分は同じ格子を共有しているので、スピノーダルなゆらぎには、結晶転換は関与せず、ナノスケールでの局所的組成の空間的変化が関与する。この空間的変化は、熱電マトリックス中にコヒーレントに埋め込まれたある相のナノ粒子を作るために、したがって大きな反応規模でナノ構造の熱電材料を作るために利用された。
【0027】
混合性に隙間のある相図、すなわち等圧又は等温相図の共存曲線内の少なくとも2相が共存する領域を考える(図2Aを参照されたい)。相A及び相Bと組成Xとの混合物が高温Tで処理され、次いでより低い温度Tまでクエンチされる溶液である場合は、直後には組成はいたるところで同じ(理想的な固溶体)であり、よって、系の自由エネルギーはG(X)曲線上のGであろう。しかし、無限小の組成の揺らぎが原因で、系は局所的にAリッチな領域及びBリッチな領域を生じる。このとき、系は全自由エネルギーが減少しているので、不安定になっている。時間と共に、系は系全体が平衡組成X及びXに到達するまで分解する(図2A及び図2Bを比較されたい)。
【0028】
熱電ナノ複合材料を製造するために、スピノーダル分解法を適用することには次の2つの主要な利点がある;(a)熱力学の原理は、空間的変化の波長λが、大いに望ましいフォノンの散乱長のスケールである、2≦λ≦5nmの範囲内であると規定していること、及び(b)ナノ構造が熱力学的に安定であること。したがって、スピノーダル分解された熱電材料は、相図によって規定される特定の温度領域で使用する場合には永続的に安定な、自然生成バルクナノ複合材料である。
【0029】
前述の手順は、PbTeがマトリックスとして働くPbTe−PbS系において広く適用された。
【実施例】
【0030】
PbTe−PbS x%調製の実施例:
PbTe−PbS x%2成分系のスピノーダル分解は、−4≦x≦96%については約700℃未満の温度で起こる(添付の図3の相図を参照されたい)。高純度の出発材料を、王水で清浄化した溶融シリカ管中で混合してから、図3Bに示す反応プロファイルに従って焼く。
【0031】
スピノーダル分解したPbTe−PbS 16%系のTEM画像を、図3C、3Dに示す。
【0032】
以下の表2は、スピノーダル分解機序によってナノ構造状態で存在するように製造することができる系を示す。ここに挙げたものは、A1−xの化学量諭比(0<x<1)の成分A及びBから構成される一組の材料である。
【表2】

【0033】
方法2:マトリックスカプセル化
これらの系は、相図によって表されているように、少量相が約0.1〜15%の組成範囲で組成物中の固溶体を有していなければならない。しかし、これらの系は、溶融物からクエンチされた場合に、少量相材料のナノメートルスケールでの内包物を示すことが観察された。この現象は、マトリックスが良好な熱電性であり、少量相は反応性がなく、より低い融点を有し、且つ液体状態でマトリックスと可溶な材料である、熱電的な関心のある他の系に拡大することができる。少量相はまた、それ自身が化合物を形成することができるか又はできない、これらの反応性のない材料の2つ以上の混合物であってもよい。これらの材料は、少量相を凍結させるために、マトリックスの融点を通過して速やかにクエンチしなければならない。クエンチした後は、サンプルを後アニールして、結晶性及び熱電特性を向上させなければならない。
実施例:この方法をPbTe−Sb、PbTe−Bi、PbTe−InSb及びPbTe−Pb−Sbに適用し、それぞれの事例で有望であることを示した。
【0034】
PbTe−Sb 4%調製の実施例
テルル化鉛及びアンチモニーを適切なモル比で組み合わせて、真空にした溶融シリカの管に封入し、図4Bに示すプロファイルに従って加熱した。明視野画像及び暗視野画像を図4C〜4Eに示す。カプセル化されたナノ粒子のTEM画像を、図4F〜4Kに示す。図4Lは、格子熱伝導度を示す。
【0035】
表3は、マトリックスカプセル化用の系を、マトリックス及び沈殿物を一覧表にして、示している。
【0036】
2種類以上のナノ相粒子を使用するマトリックスカプセル化:複数のナノスケール内包物(表3に上げられているものから2つ以上)を有するサンプルを、マトリックスカプセル化法によって作ることができる。
【0037】
これらの内包物は、それぞれの好ましい特性を組み合わせて、優れた熱電材料を製造するために使用する。追加される相はまた、液体状態でマトリックスと可溶でなければならず、マトリックスと反応性であってもなくてもよく、互いの間で化合物を形成してもしなくてもよい。この方法は、熱伝導度の低下という点でも、また電気輸送の挙動の改良という点でも興味深い挙動を示すSb及びPbの両方の内包物を有するPbTeに対して適用されてきた。PbとSbの比は、より高い電気伝導度が所望の温度範囲を通じて維持されるように伝導度を改良することができる。追加された相に付随する質量のゆらぎが、先に考察した実施例で見られるように、熱伝導度を低下させる。
【0038】
PbTe−Pb−Sb調製の実施例
Pb、Sb、及びTeは、真空にした溶融シリカ管中に封入して、溶融状態まで加熱した。次いで、管を溶融物の急冷のために高温炉から取り出した。この手順は上で論じたものと同様であるが、単一成分の内包物ではなく、複数のナノ沈殿物の内包物相を使用した。多くのさまざまな使用可能な内包物の組合せがありうるが、一例のPbTe−Pb−Sbを下に示す。
【0039】
SEM顕微鏡写真(図5A及び5B)、粉末X線回折(図6A及び6B)、TEM顕微鏡写真(図7A及び7B)、並びに実験的電力因子及び熱伝導度値(図8)。これらの系は、内包物相の全濃度、さまざまな内包物相の比率、及び内包物自体の特性などのいくつかの変数によって輸送特性を調節することができる興味深い材料の組である。最適化はまだ行われているところであるが、すでに調製されたままの系で1を超えるZT値が得られている。
【表3】

【0040】
方法3:核生成及び成長機序
熱電材料のマトリックス内部でのナノ粒子の核生成及び成長の方法は、複合材料の相図に決定的に依存する3つの異なる熱処理から成る。
a)(適切な化学量論比で混合された)出発材料を、相図の2相領域から1相領域まで加熱して、すべての沈殿物を溶解させる。混合物をそこで数時間保ち、完全な均一性を確実にする。
b)溶融物又は固溶体を、さまざまな方法(空気クエンチ、水クエンチ、氷クエンチ)を使用して、室温までクエンチする。これは高温の均一相を凍結して過飽和固溶体にする。
c)個々の系の動力学に応じて、試料を相図の2相領域内の高められた温度で後アニールし、そこで数時間保持して、ナノ沈殿物を形成させ成長させる。アニールする時間及び温度は沈殿物のサイズの成長と比例する。したがって、アニールする時間及び温度の注意深い選択によってナノ沈殿物のサイズを制御することができる。
【0041】
以下の略図は、図9A、9B及び9Cにおいて、第2の相のナノ沈殿が起こる様子を大ざっぱに示している。
【0042】
一般則として、この種のナノ構造を有する熱電材料は2つの条件を満たさなければならない:(1)2つの相は、特定の温度においては固溶体相に入り、他のより低い温度においては混合物中へ分離する元素を含有しなければならない。(2)沈殿分離する相はコヒーレント又は最良にはセミコヒーレントな沈殿物を創らなければならない。コヒーレントであることは、それがマトリックス格子との結合を確実にし、それ故に沈殿物は電子に対する強い散乱体としては働かないので重要である。
【0043】
上記の手順は、PbTe−CdTe系に対して幅広く適用されて、優れた結果が得られている。
【0044】
実施例
PbTe−CdTe x%調製の実施例
2≦x≦9のx%を目標にして化学量論量のPb、Te及びCdを秤量する。出発材料をグラファイトのるつぼに入れ、続いて高真空下でシリカ管中に封入してから、後に示す反応プロファイル(図9E)に従って焼く。この反応プロファイルはPbTe−CdTe系の相図(図9D)に基づいて決定されている。図9F及び9Gは、PbS−PbTe 6%の沈殿及び成長に関するTEM画像を示す。図9H及び9Iは、PbTe−CdTe 9%系を示す。
【0045】
以下の表4は、核生成及び成長用の系を、マトリックス及び沈殿物を列挙して、示している。
【表4】

【0046】
先の説明は、本発明の例示するものに過ぎず、且つ本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】PbTe−PbS 16%ナノ複合材料によって示される最小の熱伝導度を示すグラフである。
【図2】(2A):A及びBについての理論的相図である。;(2B):相の組成の空間的な相違を示す図解である。
【図3】(3A):PbTe−PbSの相図である。;(3B):PbTe−PbS x%のナノ複合材料の反応及びスピノーダル分解を利用する後アニーリングのプロファイルである。;(3C):PbTe−PbS 16%スピノーダル分解系の高解像度TEM画像である。;(3D):PbTe−PbS 16%スピノーダル分解系の高解像度TEM画像である。
【図4】(4A):マトリックスカプセル化の略図である。;(4B):PbTe−Sbの加熱プロファイルのグラフである。;(4C):PbTe−Sb(2%)の明視野画像である。;(4D):PbTe−InSb(2%)の明視野TEM画像である。;(4E):PbTe−InSb(2%)の暗視野TEM画像である。Sbのいくつかのナノ沈殿が、PbTeのマトリックスの内部にコヒーレントに埋め込まれていることを示す高解像度透過型電子顕微鏡写真である。;(4F〜4K):PbTe結晶マトリックス内部にあるSbの分散ナノ粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。(A)PbTe−Sb(2%)、(B)PbTe−Sb(4%)、(C)PbTe−Sb(8%)及び(D)PbTe−Sb(16%)について類似のサイズ、形状、及び容積分率が観察される。8%及び16%のサンプルは、はっきりしたSb領域を含むので、図4C及び4Dに示す画像は、PbTeリッチな領域からのものである。埋め込まれた粒子は、フォノン散乱のサイトとして働いて熱伝導度を低下させると同時に、電子の高い移動度を維持することに役立つ。図4Fは、PbTe−Bi(4%)系の高解像度顕微鏡写真であり、やはりPbTeマトリックス中に埋め込まれた粒子を示している。;(4L):熱伝導度を温度の関数として示すグラフである。
【図5】(5A〜5B):PbTe+Pb(2%)+Sb(3%)の走査型電子顕微鏡写真である。Pb−Sb共晶から構成される、大きな領域又は長さ数百ミクロンのリボン状の領域が、サンプル全体に現れている。類似のミクロ構造は、類似の組成を有する他のサンプルでも観察される。
【図6】(6A〜6B):25〜40度の拡大図によって明らかにされているように、Pb及びSbの追加相を明瞭に示す粉末X線回折を示す。約29度のピークは、元素状のSbに対応し、31度及び36度のピークは、元素状のPbにより示すことができる。
【図7】(7A):PbTeマトリックス内部のPb及びSb分散粒子を示す低拡大率透過型電子顕微鏡写真である。;(7B):マトリックス中にコヒーレントに埋め込まれていると見られる粒子を示す高拡大率TEM顕微鏡写真である。
【図8】350K及び600Kにおける格子熱伝導度をPb/Sb比の関数として示すグラフである。比率を変えるにつれて、格子熱伝導度の強く線形の依存性が観察される。
【図9】(9A):クエンチによって作成された過飽和固溶体の模式図である。;(9B):第2の相の秩序化されたナノ沈殿への凝集を開始させる、相図の2相領域内での後アニーリングの模式図である。;(9C):形成されたコヒーレントなナノ粒子の模式図である。;(9D):PbTe−CdTeの相図である。;(9E):2≦x≦9に対するPbTe−CdTex%の反応及び後アニーリングのプロファイルのグラフである。;(9F):PbS−PbTe6%のTEM画像である。;(9G):PbS−PbTe6%のTEM画像である。;(9H):PbTe−CdTe9%のTEM画像である。;(9I):PbTe−CdTe9%のTEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる組成を有する第2の相のナノスケール内包物をマトリックスにもたらす、第1のカルコゲニドの均一な固溶体又は化合物を含む熱電組成物であって、前記組成物の性能指数(ZT)が内包物を含まないものよりも大きい、熱電組成物。
【請求項2】
前記内包物が、相図に基づく前記均一な固溶体の融点より低い適切な温度で前記組成物をアニーリングした結果、スピノーダル分解によって形成されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記内包物が、前記マトリックスの溶融溶液をドーピングした結果、マトリックスのカプセル化によって形成されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記内包物が、前記マトリックスの溶融溶液を冷却することによる内包物の核生成及び成長によって形成されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種又は複数種のナノ粒子の均一な沈殿分散物を含んだカルコゲニドの均一な固溶体又は化合物を含み、カルコゲンがテルル、イオウ及びセレンから成る群から選択される、熱電組成物。
【請求項6】
前記固溶体のスピノーダル分解によって形成されたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記内包物が、前記マトリックスの溶融溶液をドーピングした結果、マトリックスカプセル化によって形成されたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記内包物が、前記マトリックスの溶融溶液を冷却することによる内包物の核生成及び成長によって形成されたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
カルコゲニドに添加された金属又は半導体から得られる分散ナノ粒子を有するカルコゲニドの均一な固溶体又は化合物を含む熱電組成物。
【請求項10】
固溶体又は化合物とは異なる組成のナノ粒子の形成を可能にする温度でアニールされた、カルコゲニドの均一な前記固溶体を含む熱電組成物。
【請求項11】
(a)第1のカルコゲニドの液体溶液又は液体化合物及び異なる組成を有する第2の相を形成させるステップと、
(b)前記溶液を急速に冷却するステップであって、それによりマトリックスとしての第1のカルコゲニドの固溶体及びナノスケール内包物としての第2のカルコゲニド相が形成され、その結果、性能指数が内包物を含まないものより大きいステップと
を含む、熱電組成物の調製方法。
【請求項12】
前記内包物が、前記均一な固溶体の融点より低い適切な温度で前記組成物をアニーリングした結果、スピノーダル分解によって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記内包物が、前記マトリックスの溶融溶液冷却のドーピングの結果、マトリックスのカプセル化によって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記内包物が、前記マトリックスの過飽和固溶体における内包物の核生成及び成長によって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カルコゲニドがテルル、イオウ及びセレンから成る群から選択されるカルコゲンでできる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記内包物が、約1〜200ナノメートルである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
それぞれ異なる化学組成を有する2つ以上の内包物が存在する、請求項1、2、3又は4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
それぞれ異なる化学組成を有する2つ以上の内包物が存在する、請求項5、6、7、8、9又は10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
それぞれ異なる化学組成を有する2つ以上の内包物が存在する、請求項11、12、13、14、15又は16のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図4L】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−543110(P2008−543110A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515793(P2008−515793)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/021630
【国際公開番号】WO2006/133031
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(594114134)ミシガン ステイト ユニバーシティー (22)