説明

熱風炉の応力腐食割れ防止方法

【課題】熱風炉の応力腐食割れを確実に防止する。
【解決手段】鉄皮11の内側を、フェライト系のステンレス12で覆う(内張り)。すなわち、鉄皮11とキャスタブル13との間に、ステンレス13を介装している。これを、燃焼室2、蓄熱室3、熱風本管5の全てに実施する。施工方法は、ステンレス12に所定間隔で複数の穴12aを設け、このステンレス12を鉄皮11に重ねた状態で、各穴12aを塞ぐようにしてプラグ溶接を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉の応力腐食割れ防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱風炉は、燃料ガスを燃焼させて得られる熱を蓄熱室に蓄えてから、蓄熱室に通風し熱交換された熱風を高炉へと供給する設備である。ところで、燃焼の際に発生するNOXが鉄皮内周面の結露と反応すると硝酸が生成されるので、特に残留応力の高い鉄皮の溶接部では、応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)が発生していた。なお、こうした鉄皮の応力腐食割れは、高炉へと熱風を供給する熱風本管でも発生する。
【0003】
そこで、応力腐食割れが発生した部位に、通常のシール溶接を施してから補修用鋼材を溶接固定し、シール溶接部と補修用鋼材との間に、耐食性金属層と耐酸性塗膜層とを形成し、応力腐食割れの再発を防ぐものがあった(特許文献1参照)。
また、0.001%C程度の極低炭素鋼や、780℃/1hr程度の中間熱処理鋼であれば、応力腐食割れに対して抵抗性があるので(非特許文献1参照)、これらを鉄皮に使用することも考えられていた。
【特許文献1】特開2003−336073号公報
【非特許文献1】小若正倫著、「金属の腐食損傷と防食技術」、新版、1995年9月、アグネ承風社、p.154−158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術は、応力腐食割れが発生した後の補修技術に過ぎず、その防止を図るものではない。また、非特許文献1に記載されているように、極低炭素鋼や中間熱処理鋼を使用すれば、応力腐食割れに対する抵抗性はあるが、やはり完全な防止策とは言えない。
本発明の課題は、熱風炉の応力腐食割れを確実に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る熱風炉の応力腐食割れ防止方法は、熱風炉における鉄皮の内側を、フェライト系のステンレスで覆うことを特徴とする。
本発明の請求項2に係る熱風炉の応力腐食割れ防止方法は、前記鉄皮に対して前記ステンレスをプラグ溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
NOX、塩素、SOX等に対して、オーステナイト系やマンテンサイト系のステンレスでは応力腐食割れが発生するが、フェライト系のステンレスでは応力腐食割れが発生しない。
本発明によれば、鉄皮の内側をフェライト系ステンレスで覆うことで、鉄皮をNOXから確実に遮断できるので、鉄皮の応力腐食割れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、熱風炉の概略構成である。熱風炉1は、燃焼を行う燃焼室2と、蓄熱を行う蓄熱室3とを備えており、これらは何れも竪型の円筒体で構成され、ドーム状の上部同士を連通させた構造になっている。燃焼室2の下部には、バーナ4が形成されており、供給される燃料ガス及び空気によって燃焼室2で燃焼を行う。また、燃焼室2は、高炉へと繋がる熱風本管5に連通されており、燃焼室2と熱風本管5との間には、熱風弁6を設けている。一方、蓄熱室3には、チェッカー煉瓦7が格子状に積層されており、その下側には、煙道に通ずる排気弁8が接続されている。また、チェッカー煉瓦7の下側には、送風機9から送風が供給される。
【0008】
この熱風炉1では、燃焼蓄熱工程と熱風供給工程とが交互に実施される。先ず、燃焼蓄熱工程では、熱風弁6を閉じ、且つ排気弁8を開いた状態で、バーナ4で燃焼を行う。このとき、燃焼ガスが燃焼室2から蓄熱室3へと送られ、チェッカー煉瓦7が加熱されることで蓄熱され、また排気弁8を介して排気される。一方、熱風供給工程では、バーナ4による燃焼を停止し、熱風弁6を開き、且つ排気弁8を閉じた状態で、送風機9から送風を供給する。このとき、チェッカー煉瓦7で熱交換された熱風が蓄熱室3から燃焼室2へ送られ、熱風弁6を介して熱風本管5へと供給される。
【0009】
図2は、熱風炉1の外壁断面であり、鉄皮11の内側を、フェライト系のステンレス12で覆っている(内張り)。すなわち、鉄皮11とキャスタブル13との間に、ステンレス13を介装している。これを、燃焼室2、蓄熱室3、熱風本管5の全てに実施する。
図3は、施工例である。先ず、ステンレス12に所定間隔で複数の穴12aを設け、このステンレス12を鉄皮11に重ねた状態で、各穴12aを密封するようにプラグ溶接を行うことにより固定している。
【0010】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
NOX、塩素、SOX等に対して、オーステナイト系やマンテンサイト系のステンレスでは応力腐食割れが発生するが、フェライト系のステンレスでは応力腐食割れが発生しない。そこで、本実施形態では、鉄皮11の内側をフェライト系のステンレス12で覆っている。これにより、鉄皮11をNOXから確実に遮断できるので、鉄皮11の応力腐食割れを確実に防止することができる。従来は約5年で応力腐食割れが発生していたが、フェライト系ステンレス12で内張りすることで、10年以上は応力腐食割れの発生を防止できると考えられる。
【0011】
ちなみに、炭素鋼の代わりに鉄皮11自体をフェライト系のステンレスにすると、コストが増大し、しかも脆化現象によって十分な強度を維持できないため、好ましい対策ではない。本実施形態では、鉄皮11の内側に、例えば5mm程度のフェライト系のステンレス12を内張りすることで、コストの増大を抑制しつつ、十分な強度を維持することができる。
【0012】
また、鉄皮11に対してステンレス12をプラグ溶接しているので、ステンレス12を全面に渡って堅固に内張りすることができ、しかも鉄皮11をNOXから確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】熱風炉の概略構成である。
【図2】熱風炉の外壁断面である。
【図3】施工例である。
【符号の説明】
【0014】
1 熱風炉
2 燃焼室
3 蓄熱室
4 バーナ
5 熱風本管
6 熱風弁
7 チェッカー煉瓦
8 排気弁
9 送風機
11 鉄皮
12 ステンレス
13 キャスタブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風炉における鉄皮の内側を、フェライト系のステンレスで覆うことを特徴とする熱風炉の応力腐食割れ防止方法。
【請求項2】
前記鉄皮に対して前記ステンレスをプラグ溶接することを特徴とする請求項1に記載の熱風炉の応力腐食割れ防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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