説明

燃料の生成

【課題】 植物油および動物性脂肪からのバイオディーゼル燃料の生成装置の提供。
【解決手段】 第1反応器と帰還機構とを備えた装置。第1反応器は、第1反応物質、第2反応物質、反応生成物、および第1反応物質と第2反応物質の一部を溶解する不活性溶媒を含有する混合物を受容する入口と、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素と、入口で受容した反応生成物および第1反応物質と第2反応物質との反応から生成された反応生成物を含む反応生成物を送出する出口とを有する。帰還機構は、出口からの反応生成物の少なくとも一部を入口に送り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2004年9月20日に出願されたチー・チュン・チョー(Chih−Chung Chou)の「Methods for Producing Alkyl Esters」と題する米国特許出願第10/945,339号の一部継続出願であり、上記出願の内容は本明細書に文献援用される。
【0002】
本発明は、植物油および動物性脂肪からのバイオディーゼル燃料の生成を含む燃料生成に関する。
【背景技術】
【0003】
植物油や動物性脂肪のアルコール分解によるオイルの供給源(以下、「油源」と称する)を用いて、脂肪酸アルキルエステルを生成することができる。この脂肪酸アルキルエステルは、本明細書では概して「バイオディーゼル」燃料と称するディーゼル燃料として使用され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの生成法においては、例えば、アルカリ性水酸化物やアルコラートなどの非酵素触媒を用いてアルコール分解を促進する。アルコール分解の副生成物はグリセロールである。非酵素触媒はグリセロールと共に除去されるので再生利用できない。グリセロールは大量の触媒を含有しているために精製が難しい。別の生成法では、例えばリパーゼなどの酵素触媒を用いてアルコール分解反応における天然油からのアルキルエステルの生成を促進する。トリグリセリドを有する油源とアルコールを有機溶媒に溶解させる。リパーゼを触媒として用いて、トリグリセリドとアルコールを反応させると、アルキルエステルと共に副生成物としてグリセロールが生成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般態様において、バイオディーゼル燃料を生成するための酵素的エステル交換法は、廃棄物や副生成物を少なくして費用効率的にアルキルエーテル(および、ある種の実施例では、副生成物のグリセロール)などの高純度燃料を生成する。酵素的エステル交換用処理プラントは、設備投資をあまり必要としない簡単な構成を用いて作成することができる。
【0006】
一般に、一態様において、本発明は、第1反応物質、第2反応物質、反応生成物、および第1反応物質と第2反応物質の少なくとも一部を溶解する不活性溶媒を含有する混合物を受容する入口と、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素と、入口で受容した反応生成物および第1反応物質と第2反応物質との反応により生成された反応生成物を含む反応生成物を送出する出口とを有する第1反応器を備える装置を特徴とする。この装置は、出口からの反応生成物の少なくとも一部を入口に送り返す帰還機構を有する。
【0007】
本発明の実施は以下の特徴を1つ以上含み得る。
反応生成物はアルキルエステルを含む。帰還機構は、アルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返す。混合物は、第1反応物質、第2反応物質、および反応生成物の少なくとも一部を溶解する溶媒を含有する。出口は、少なくとも、アルキルエステル、溶媒、および未反応の第1反応物質を送出する。
【0008】
この装置はさらに、溶媒を蒸発させて、アルキルエステルおよび未反応の第1反応物質を含む混合物を生成する蒸発器を備えている。出口はさらにグリセロールを送出する。さらにこの装置は、液−液相分離に基づいてグリセロールからアルキルエステルを分離する相分離器を含む。
【0009】
第1反応物質はトリグリセリドを含む。第1反応物質はカルボン酸を含む。第2反応物質は第1級アルコールと第2級アルコールの少なくとも一方を含む。第1反応物質は植物油と動物性脂肪の少なくとも一方を含む。反応生成物は、燃料としての使用に適した組成を有する。反応生成物は、ディーゼルエンジン燃料としての使用に適した組成を有する。反応生成物は、内燃ディーゼルエンジンとガスタービンディーゼルエンジンの少なくとも一方のための燃料としての使用に適した組成を有する。
【0010】
この装置はさらに、第1反応物質を受容する第1入口と、第2反応物質を受容する第2入口と、反応器出口からの反応生成物の一部を受容する第3入口と、不活性溶媒を受容する第4入口と、第1反応物質、第2反応物質、不活性溶媒、および反応生成物を含有する混合物を送出する出口とを有する混合器を備えている。前記出口はさらに他の成分を送出し、帰還機構はさらに他の成分の少なくとも一部を入口に送り返す。酵素は、他の成分と第2反応物質との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる。他の成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、およびカルボン酸の少なくとも1種を含む。
【0011】
この装置はさらに第2反応器を備えており、第2反応器は、付加的な第2反応物質および第1反応器出口からの反応生成物を含む混合物を受容する入口と、第2反応物質と他の成分との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素と、第2反応器の入口で受容した反応生成物および第2反応物質と他の成分との反応により生成された反応生成物を含む反応生成物を送出する出口とを有する。
【0012】
さらにこの装置は、不活性溶媒と、未反応の第1反応物質と未反応の第2反応物質の少なくとも一方とを蒸発させる蒸発器を備えている。この装置はさらに、残りの未反応反応物質から反応生成物を分離するショートパスエバポレータを備えている。反応生成物はアルキルエステルを含む。反応生成物は、少なくとも99%のアルキルエステルを含む。この装置はさらに、第2反応器出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を第1反応器の入口に送り返す帰還機構を有する。第1反応物質はトリグリセリドまたはカルボン酸を含み、第2反応物質は第1級アルコールまたは第2級アルコールを含む。
【0013】
一般に、別の態様において、本発明は、反応物質を含有する混合物を受容する入口および反応物質間の反応を促進する酵素を有する反応器と、反応生成物の少なくとも一部を入口に送り返すフィードバック機構とを備えた装置を特徴とする。
【0014】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
反応生成物はアルキルエステルを含み、フィードバック機構は、アルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返す。反応物質は、(1)トリグリセリドとカルボン酸の少なくとも一方と、(2)第1級アルコールと第2級アルコールの少なくとも一方とを含む。酵素はリパーゼを含む。
【0015】
一般に、別の態様において、本発明は、第1サブシステムと第2サブシステムとを有するアルキルエステル生成システムを特徴とする。第1サブシステムは、第1反応物質、第2反応物質、および第1反応物質と第2反応物質を溶解する不活性溶媒を含有する第1混合物を受容する入口と、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進して反応生成物を生
成させる第1酵素と、反応生成物、不活性溶媒、および他の成分を送出する第1出口とを有する第1反応器を有する。第2サブシステムは、付加的な第2反応物質、不活性溶媒、反応生成物の少なくとも一部、および第1入口からの他の成分を含有する第2混合物を受容する第2入口と、第2反応物質と他の成分との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる第2酵素と、第2入口で受容した反応生成物および第2反応物質と他の成分との反応により生成された反応生成物を含む反応生成物を送出する第2出口とを有する第2反応器を有する。
【0016】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
反応生成物はアルキルエステルを含む。本発明のシステムはさらに、第1出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を第1入口に送り返す帰還機構を含む。さらにこのシステムは、第2出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を第1入口に送り返す帰還機構を含む。第2反応器から送出される際の反応生成物中のアルキルエステルの割合は、第1反応器から送出される際の反応生成物中のアルキルエステルの割合より高い。
【0017】
第2サブシステムは、少なくとも90重量%のアルキルエステルを有する第2溶液を得るために、第2出口からの第1溶液流出物からアルキルエステル以外の成分の少なくとも一部を除去する分離器を有する。分離器は蒸発器を含む。蒸発器は液−液分離器を含む。
【0018】
第1サブシステムは、第1溶液より高い濃度のアルキルエステルを有する第2溶液を得るために、第1出口からの第1溶液流出物からアルキルエステル以外の成分の少なくとも一部を除去する分離器を有する。分離器は蒸発器を含む。分離器は液−液分離器を含む。
【0019】
ある種の実施例において、第1反応物質はトリグリセリドを含む。他の実施例において、第1反応物質はカルボン酸を含む。第2反応物質は第1級アルコールと第2級アルコールの少なくとも一方を含む。第1サブシステムは、第1反応物質を受容する第1入口と、第2反応物質を受容する第2入口と、不活性溶媒を受容する第3入口と、第1反応物質、第2反応物質、および不活性溶媒を混合する構造と、第1反応物質、第2反応物質、および不活性溶媒を含有する第1混合物を排出する出口とを有する混合器を備えている。ある種の実施例において、第1酵素は第2酵素と同じである。他の実施例においては、第1酵素は第2酵素と異なる。第1酵素と第2酵素の少なくとも一方はリパーゼを含む。
【0020】
一般に、別の態様において、本発明は、反応器、分離ユニット、および帰還機構を備えた装置を特徴とする。反応器は、第1反応物質、第2反応物質、不活性溶媒、および均質状態の反応生成物を含有する混合物を運ぶパイプラインと、パイプラインから混合物を受容する入口、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素、および前記入口で受容した反応生成物および第1反応物質と第2反応物質との反応により生成された反応生成物を含む反応生成物を排出する出口を有するカートリッジを受容する連結器とを有する。分離ユニットは、より高率の反応生成物を有する溶液を生成するように出口流出物を処理する。帰還機構は溶液の少なくとも一部をパイプラインに送り返す。
【0021】
一般に、別の態様において、本発明は、第1サブシステムと第2サブシステムとを有するアルキルエステル生成システムを特徴とする。第1サブシステムは、第1反応物質、第2反応物質、不活性溶媒、および均質状態のアルキルエステルを含有する第1混合物を運ぶ第1パイプラインと、第1パイプラインからの混合物を受容する入口、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くのアルキルエステルを生成させる第1酵素、ならびにアルキルエステル、溶媒、および他の成分を排出する第1出口を有する第1カートリッジを受容する第1連結器とを有する第1反応器を備えている。第2サブシステムは、付加的な第2反応物質、不活性溶媒、ならびに第1出口からのアルキルエステルおよび他
の成分の少なくとも一部を含有する第2混合物を運ぶ第2パイプラインと、第2パイプラインからの混合物を受容する第2入口、第2反応物質と他の成分との反応を促進してより多くのアルキルエステルを生成させる第2酵素、およびアルキルエステルを排出する第2出口を有する第2カートリッジを受容する第2連結器とを有する第2反応器を備えている。
【0022】
一般に、別の態様において、本発明はアルキルエステル生成システムを特徴とし、このシステムは、第1反応物質および第2反応物質を含有する混合物を受容し、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進して反応生成物を生成させる酵素を有し、識別子を有するカートリッジと、カートジッリ上の識別子に基づいてシステムの稼動状況を制御する制御器とを備えている。
【0023】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
反応生成物はアルキルエステルを含む。酵素はリパーゼを含む。制御器は、識別子に基づいて、溶液のカートリッジ通過速度を変化させるポンプ速度を制御する。制御器は、識別子に基づいて、溶液の温度を変化させる加熱器を制御する。制御器は、識別子に基づいて、カートリッジ交換が必要であることを示す信号を送る時期を決定する。
【0024】
一般に、別の態様において、本発明は、油源と反応物質を受容する入口、および油源と反応物質との反応を促進して所望の生成物および他の成分を生成させる酵素を有する第1反応器と、粗製所望生成物を生成するために他の成分から所望生成物を分離する分離器と、粗製所望生成物の少なくとも一部を第1反応器の入口に送り返す帰還機構とを備えた装置を特徴とする。
【0025】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
所望生成物は燃料を含む。所望生成物はアルキルエステルを含む。
本発明の装置はさらに、付加的な反応物質および粗製所望生成物の少なくとも一部を含有する混合物を受容する入口、および追加反応物質と粗製所望生成物中の成分との反応を促進して付加的な所望生成物を生成させる酵素を有する第2反応器と、高純度の所望生成物を生成するために他の成分から所望生成物を分離する第2分離器とを備えている。
【0026】
油源はトリグリセリドとカルボン酸の少なくとも一方を含む。粗燃料はアルキルエステルを含む。反応物質は、第1級アルコールと第2級アルコールの少なくとも一方を含む。酵素はリパーゼを含む。
【0027】
一般に、別の態様において、本発明は、酵素を有し、アルキルエステル生成装置に連結するように構成されたカートリッジを備えた装置を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、第1反応物質、第2反応物質、不活性溶媒、およびアルキルエステルを混合してカートリッジに通す溶液を生成する混合器であって、カートリッジ中の酵素は第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くのアルキルエステルを生成させる混合器と、第1反応物質と第2反応物質との反応由来のアルキルエステルの少なくとも一部を混合器に送り返す帰還機構とを備えている。
【0028】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
酵素はリパーゼを含む。カートリッジは、カートリッジ上に、アルキルエステル生成装置の稼動に関する情報を有する。
【0029】
一般に、別の態様において、本発明は、酵素を有し、アルキルエステルを生成する2ステージシステムの第1サブシステムに連結するように構成されたカートリッジを備えた装置を特徴とする。第1サブシステムは、第1反応物質、第2反応物質、および不活性溶媒
を受容し、第1反応物質、第2反応物質、および不活性溶媒を含有する混合物をカートリッジに通し、酵素は、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進して第1生成物を生成させ、第1生成物は第1分離器で処理されて、第1比率のアルキルエステルを有する粗生成物を生成する。第2サブシステムは、粗生成物と付加的な第2反応物質を受容して第2生成物を生成し、第2生成物は第2分離器で処理されて、第1比率より高い第2比率のアルキルエステルを有する精製生成物を生成する。
【0030】
一般に、別の態様において、本発明は、酵素を有し、アルキルエステルを生成する2ステージシステムの第2サブシステムに連結するように構成されたカートリッジを備えた装置を特徴とする。第1サブシステムは、第1反応物質と第2反応物質を受容して、第1比率のアルキルエステルを有する粗生成物を生成する。第2サブシステムは、粗生成物と付加的な第2反応物質を受容して、粗生成物と付加的な第2反応物質を含有する混合物をカートリッジに通し、酵素は粗生成物および追加第2反応物質中の成分の反応を促進して生成物を生成させ、生成物は分離ユニットで処理されて、第1比率より高い第2比率のアルキルエステルを有する精製生成物を生成する。
【0031】
一般に、別の態様において、本発明は、リパーゼを有し、アルキルエステル生成装置に連結するように構成されたカートリッジを備えた装置を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、有機溶媒中で油源と第1級アルコールまたは第2級アルコールとを混合してカートリッジに通す溶液を形成する混合器を有し、油源はトリグリセリドを含み、リパーゼは、トリグリセリドと第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進してアルキルエステルを生成させ、溶液は反応中相分離せず、副生成物としてグリセロールを生成する。アルキルエステル生成装置はさらに、有機溶媒および未反応第1級アルコールまたは第2級アルコールを除去する蒸発器と、グリセロールからアルキルエステルを分離する相分離器と、未反応油源からアルキルエステルを分離する第2分離器とを有する。
【0032】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。第2分離器はショートパスエバポレータを含む。
一般に、別の態様において、本発明は、リパーゼを有し、アルキルエステル生成装置に連結するように構成されたカートリッジを備えた装置を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、有機溶媒中で油源と第1級アルコールまたは第2級アルコールとを混合して、カートリッジに通す溶液を形成する混合器を備えており、油源はカルボン酸を含み、リパーゼは、カルボン酸と第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進してアルキルエステルを生成させ、溶液は反応中相分離せず、副生成物として水を生成する。アルキルエステル生成装置はさらに、有機溶媒および未反応第1級アルコールまたは第2級アルコールを除去する蒸発器と、未反応油源からアルキルエステルを分離する分離器とを有する。
【0033】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。分離器はショートパスエバポレータを含む。
一般に、別の態様において、本発明は、アルキルエステル、アルコール、不活性溶媒およびグリセロールを含有する混合物を受容する入口を有し、不活性溶媒およびアルコールを蒸発させてアルキルエステルおよびグリセロールを含有する溶液を生成する蒸発器と、溶液を受容する入口を有し、液−液相分離に基づいてグリセロールからアルキルエステルを分離する分離器とを備えた装置を特徴とする。
【0034】
一般に、別の態様において、本発明は、酵素利用アルキルエステル生成装置と、発電器とを備えた動力生成装置を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、反応物質を含有する混合物を受容する入口、反応物質間の反応を促進してアルキルエステルを生成させる酵素、および出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返すフィードバッ
ク機構とを備えている。発電器は、アルキルエステル生成装置で生成されたアルキルエステルを受容する入口と、アルキルエステルのエネルギーを電気に変換する変換器と、変換器で生成された電気を出力する出口とを有する。
【0035】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
アルキルエステル生成装置の少なくとも一部は、発電器で生成された電気により動力供給される。反応物質はトリグリセリドおよびアルコールを含む。
【0036】
一般に、別の態様において、本発明は、反応物質を貯蔵する貯蔵庫と、酵素利用アルキルエステル生成装置と、エンジンとを備えた輸送手段を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、反応物質を含有する混合物を入れる入口と、反応物質間の反応を促進してアルキルエステルを生成させる酵素と、出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返すフィードバック機構とを有する。エンジンは、アルキルエステル生成装置で生成されたアルキルエステルを受容する入口と、アルキルエステルのエネルギーを運動エネルギーに変換する変換器とを有する。
【0037】
本発明の実施は以下の特徴を1つ以上含み得る。
アルキルエステル生成装置の少なくとも一部は、エンジンで生成された運動エネルギーにより動力供給される。ある種の実施例において、輸送手段はさらに、運動エネルギーを車輪に伝達する伝達機構を備えている。ある種の実施例では、輸送手段はさらに、運動エネルギーをプロペラに伝達する伝達機構を備えている。
【0038】
一般に、別の態様において、本発明は、反応物質を貯蔵する貯蔵庫と、酵素利用アルキルエステル生成装置と、発電器とを備えた輸送手段を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、反応物質を含有する混合物を受容する入口と、反応物質間の反応を促進してアルキルエステルを生成させる酵素と、出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返すフィードバック機構とを有する。発電器は、アルキルエステル生成装置で生成されたアルキルエステルを受容する入口と、アルキルエステルのエネルギーを電気に変換する変換器と、変換器で生成された電気を出力する出力口とを有する。
【0039】
輸送手段はさらに、電子部品と、発電器で生成された電気の少なくとも一部を電子部品に伝送する電気系統とを備えている。
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。ある種の実施例において、輸送手段は飛行機を含む。ある種の実施例では、輸送手段は自動車を含む。ある種の実施例において、輸送手段は船舶を含む。
【0040】
一般に、別の態様において、本発明は、食品を加工する調理場と、食品加工に用いられる再生油を貯蔵する貯蔵庫と、酵素利用アルキルエステル生成装置とを備えた建物を特徴とする。アルキルエステル生成装置は、再生油および反応物質を含有する混合物を受容する入口と、再生油と反応物質との反応を促進してアルキルエステルを生成させる酵素と、出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返すフィードバック機構とを有する。
【0041】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
建物はさらに、アルキルエステル生成装置で生成されたアルキルエステルを受容する入口と、アルキルエステルのエネルギーを電気に変換する変換器と、電気の少なくとも一部を建物に伝送する電気系統とを有する。
【0042】
一般に、別の態様において、本発明はアルキルエステル生成装置を特徴とし、この装置は、有機溶媒中でトリグリセリドを含む油源と第1級アルコールまたは第2級アルコール
とを混合して溶液を形成する混合器と、溶液を受容し、トリグリセリドと第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進してアルキルエステルを生成させるリパーゼを有し、反応副生成物としてグリセロールを生成する反応器と、有機溶媒および未反応第1級アルコールまたは第2級アルコールを除去する蒸発器と、グリセロールからアルキルエステルを分離する相分離器とを備えている。
【0043】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。
反応容器が受容した溶液は反応中相分離しない。有機溶媒の各分子は、複数の炭素原子と1個のヘテロ原子を含み、炭素原子の数は4〜8個である。有機溶媒は、C4〜C8第3級アルコールを含む。有機溶媒は、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、2,2,3−トリメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、および3−メチル−3−ヘキサノールのうちの少なくとも1種を含む。有機溶媒はピリジンを含む。第1級アルコールと第2級アルコールの少なくとも一方は1〜18個の炭素原子からなる。油源は、植物油、動物油、および廃油脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0044】
この装置はさらに担体を含み、担体上にはリパーゼが固定されている。リパーゼは、カンジダ・アンタークチカ・リパーゼ(candida antarctica lipase)、テルモマイセス・ラヌジノーサ・リパーゼ(thermomyces lanuginosa lipase)、シュードモナス・フルオレセンス・リパーゼ(pseudomonas fluorescens lipase)、シュードモナス・セパシア・リパーゼ(pseudomonas cepacia lipase)、およびクロモバクテリウム・ビスコスム・リパーゼ(pseudomonas viscosum lipase)のうちの少なくとも1種を含む。トリグリセリドと第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進するために、反応器の一部は0〜95℃の反応温度に維持される。この装置はさらに、反応器に溶液を1〜180分で流すように構成されたポンプを備えている。
【0045】
この装置はさらに、油源を150〜215℃に加熱する加熱器を備えている。加熱された油源は、混合器に送られる前に反応温度に冷却される。この装置はさらに、溶液が反応器に送られる前に溶液にアルキルエステルを添加する入口を有する。さらにこの装置は、相分離器で分離されたアルキルエステルの少なくとも一部を入口に入れて溶液に添加する帰還機構を有する。
【0046】
一般に、別の態様において、本発明は、入口および出口を有し、入口と出口の間に酵素が配置されているカートリッジをアルキルエステル生成装置に挿入する工程と、カートリッジ上のコード化情報を読み出す工程と、この情報に基づいてアルキルエステル生成装置の稼動を制御する工程とを含む方法を特徴とする。
【0047】
本発明の実装は以下の特徴を1つ以上含み得る。アルキルエステル生成装置の稼動を制御する工程は、カートリッジの入口に流入する溶液の温度と流速の少なくとも一方を制御する工程を含む。
【0048】
一般に、別の態様において、本発明は食品加工法を特徴とし、この方法は、油を用いて食品を加工する工程と、使用済み油を再生利用して食品を加工する工程と、再生油、反応物質、および不活性溶媒を含有する混合物を受容する工程と、酵素を用いて再生油と反応物質との反応を促進してアルキルエステルを生成させる工程と、再生油および反応物質の溶解を支援するアルキルエステルの少なくとも一部と混合物とを混合してアルキルエステ
ルの少なくとも一部を再利用する工程と、アルキルエステルから電気または運動エネルギーを生成する工程と、電気または運動エネルギーを用いて食品加工に用いられる装置に動力を供給する工程とを含む。
【0049】
一般に、別の態様において、本発明は輸送手段稼動法を特徴とし、この方法は、反応物質および不活性溶媒を含有する混合物を受容する工程と、反応物質間の反応を促進してアルキルエステルを生成させる酵素を有するカートリッジに混合物を通す工程と、反応物質の溶解を支援するアルキルエステルの少なくとも一部を混合物と混合してアルキルエステルの少なくとも一部を再利用する工程と、アルキルエステルから電気または運動エネルギーを生成する工程と、電気または運動エネルギーを用いて輸送手段の稼動に用いられる装置に動力を供給する工程とを含む。
【0050】
本発明の他の特徴および利点は以下の説明および特許請求の範囲から明らかである。
記載されている刊行物、特許出願、特許または他の参考文献はすべて本明細書に文献援用される。文献援用された参考文献と抵触する場合には、定義を含む本明細書の通りとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
1.概要
図1を参照すると、燃料生成システムは、例えば大豆油などの油源110を受容して、アルキルエステルなどのバイオディーゼル燃料、または潤滑油もしくは中間体などの関連生成物を生成する処理プラント100を有する。処理プラント100は、それぞれ酵素触媒を用いる1つ以上の反応器140を用いる。処理プラントは、無水第3級アルコールまたは無水ピリジンなどの不活性溶媒120と共に、第1級または第2級アルコール、例えば無水メタノールなどの反応物質130を用いる。処理プラント100は、処理中に不活性溶媒120および反応物質130の一部を回収してそれらの供給を補充する。処理プラントはさらに、廃水またはグリセロールなどの副生成物160を生成する。
【0052】
以下にいくつかの異なる形態の処理プラントを説明する。これらの形態は、例えば、反応器の処理ステージ数(たとえば、1つの反応器を用いたシングルステージ、2つの反応器を用いた2ステージ)、前ステージの反応器への中間体粗バイオディーゼルのフィードバック配置などの機構、および、使用される特定の油源、不活性溶媒、バイオ触媒や、関連稼動条件において異なる。例えば、処理プラントは、連続フロー方式、あるいはバッチ方式で稼動し得る。
【0053】
種々の形態の処理プラントは種々の物理的サイズを有し得る。1つの実施例において、プラントは、比較的小型であり、例えば冷蔵庫の大きさであり、バイオディーゼル燃料が消費される個所、例えば発電に用いられるディーゼルモーターの位置に配置され得る。他の形態では、サイズが有意に大きくなるにつれ、生成能力も増大し得る。ある種の実施例において、プラントは家庭用として設計可能であり、大型冷蔵庫並の大きさを有し、1日に200リットル以下の生成能力を有し得る。他の実施例では、プラントは、農場、商店街または戦場用として設計可能であり、約6.096〜12.19メートル(20〜40フィート)の長さを有するコンテナ並のサイズを有する。他の実施例において、プラント100は、工業プラント用として設計可能であり、年間40,000〜25,000トン以上の能力を有し得る。
【0054】
1.1 プラント構成
図2A〜図2Dを参照すると、4種の典型的なプラント構成は、異なるステージ数および異なるタイプのフィードバックを用いる。図2Aを参照すると、シングルステージプラントは1つの反応器140を使用する。反応器(R−1)140の流出物は分離器(S−
1)220に供給され、分離器220は、例えば、蒸発器と液−液分離器との組み合わせを用いて、反応器流出物から不活性溶媒120、未反応反応物質130および副生成物160を分離して、粗バイオディーゼル生成物225を生成する構成部品を備えている。反応器(R−1)140の装入物は、油源110、不活性溶媒120および反応物質130を受容する混合器210からの流出物から供給される。この形態のプラントにおいて、混合器210はさらに、分離器S−1の流出物から得られる粗バイオディーゼル225の一部も受容する。この粗バイオディーゼルのフィードバックは、(1)反応物質間の反応の完了度を高め、(2)混合器210内で混ぜ合わせる必要がある不活性溶媒の量を減少させるという2つの利点を有する。分離器220の流出物は、バイオディーゼルをさらに精製して「純」バイオディーゼル生成物150を生成する最終分離器230、例えば、ショートパスエバポレータまたは短工程蒸留(short−pass distillation)に供給される。一例として、粗バイオディーゼル225は、純度90〜99重量%(% pure by weight)であり、純バイオディーゼル150は純度99重量%を超え得る。この形態のプラントは比較的部品が少ないので、小型の携帯型にも大型形態にも適している。
【0055】
図2Bを参照すると、2ステージプラント100Bは、それぞれが反応器140を有する2ステージ101,105を用いる。第1反応器(R−1)140および第1分離器(S−1)220の配置は図2Aのものと同様であり、第1反応器140に供給するために第1分離器220の流出物から由来する粗バイオディーゼル225の混合器210へのフィードバックを用いることを含む。この形態のプラントでは、第1分離器220の流出物は、粗バイオディーゼル225を付加的な不活性溶媒120および反応物質130と混ぜ合わせる第2混合器210に供給される。第2混合器210の流出物は第2反応器(R−2)140に供給される。第2反応器140の流出物は第2分離器(S−2)220に通される。第2分離器220の流出物は、そのままバイオディーゼル燃料150として用いてもよいが、流出させる前に最終分離器230に通すことが好ましい。一例として、そのような2ステージプラントにおいて、第1分離器220からの粗バイオディーゼル225流出物は少なくとも純度90重量%であるが、第2分離器の流出物は少なくとも純度95%である。
【0056】
図2C〜2Dを参照すると、粗バイオディーゼルのフィードバックを利用しないプラントは、その他の点では、それぞれ図2A〜2Bに示されているプラントに類似した構成を有する。一例として、これらの形態のプラントにおける第1分離器220の流出物は少なくとも純度80重量%であり、図2Dに示されている2ステージ形態では、第2分離器の流出物は少なくとも純度95%である。
【0057】
シングルステージプラント100Cは、例えば、触媒(例えば、特定のタイプのリパーゼ)が高価であり、かつ最終生成物が医療用または薬用などに高付加価値を有するときに有用である。シングルステージプラント100Cに必要なリパーゼの量は、ダブルステージプラント100B,100Dに必要なリパーゼの量より少ないであろうことから、最終生成物をよりコスト効率よく生成することができる。
【0058】
プラント100A〜100Dは種々の構成を有し得る。プラントは、溶液温度を増減させる熱交換器、溶液流量を制御するポンプなどの追加部品を備え得る。生成物から、不要な水分、グリセロール、または他の不要な不純物を除去するために除去床(removal bed)を備え得る。例えば、シングルステージプラント100Cにおいて、分離器220は、完全に反応しなかった原料(例えば、反応物質および油源)を生成物から分離して、完全に反応しなかった原料を再利用することができる。この場合、イオン交換樹脂を充填したグリセロール除去床を用いて、再利用される原料から微量のグリセロールを除去できる。
【0059】
ある種の実施例において、特定タイプの酵素触媒、例えばテルモマイセス・ラヌジノーサ・リパーゼを用いる場合、反応器140に流入する溶液中の水分量を制限することが有用である。そのような場合、小規模プラント用には、原料油入口流に水分吸着(または吸収)樹脂を充填したカートリッジ型除水床(water removal bed)を用い得る。大型プラントの場合、水湿分は、他の除去法、例えば、蒸発または乾燥熱気ストリッピング装置(hot dry air stripping apparatus)によって制御し得る。
【0060】
ある種の2ステージプラント(例えば、100Bおよび100D)実施例では、燃料分離器230を省略してもよい。
プラント100A〜100Dにおいて、反応器140内の反応平衡は、熱力学によって測定することができる。そのような反応平衡は使用される酵素触媒のタイプとは無関係である。したがって、バイオディーゼルの平衡濃度は、温度、不活性溶媒濃度、反応物質濃度、および生成物濃度の関数である。他の条件が同じであるとき、種々の温度下に種々の平衡濃度が得られる。
【0061】
1.2 化学的構成
2004年9月20日に出願されたチー・チュン・チョー(Chi−Chung Chou)の「アルキルエステルの製造方法(Methods for Producing
Alkyl Esters)」と題された米国特許出願第10/945,339号には、種々の燃料生成プラントに適した、油源、不活性溶媒、反応物質、および触媒、ならびに温度および反応時間を含めむ関連する稼動条件のさまざまな組合わせが記載されている。この特許出願は本明細書に文献援用される。
【0062】
上記処理法は、高純度アルキルエステルが、リパーゼの不活化が最小限になるリパーゼ触媒反応により原料油(例えば、植物油または動物性脂肪)から容易に生成され得るという知見に基づいている。特に、アルキルエステルは、例えば、エステル交換反応またはエステル化反応を介して生成され得る。この方法は、(1)各分子が4〜8個の炭素原子と1個のヘテロ原子を含む第1有機溶媒中で、トリグリセリドまたはカルボン酸を含有する油源と、第1の第1級アルコールまたは第1の第2級アルコールとを混合して第1溶液を形成する工程と、(2)第1リパーゼの存在下、トリグリセリドまたはカルボン酸と、第1の第1級アルコールまたは第1の第2級アルコールとを反応させて、第1アルキルエステルを生成する工程であって、第1溶液は反応中に相分離しない工程と、(3)第1溶液から第1アルキルエステルを分離する工程とを含む。
【0063】
適当な油源の例としては、植物油(例えば、微小藻類油)、動物油(例えば、魚油、ラード、精製脂肪、もしくは獣脂)、廃油脂(例えば、レストラン廃油脂)、またはその加水分解画分(例えば、カルボン酸)が挙げられる。油源は、混合工程の前に、150〜215℃に加熱し、反応温度に冷却され得る。
【0064】
油源は、反応させる前に、第1有機溶媒中で第1の第1級アルコールまたは第1第2級アルコールと混合して一相溶液を形成することができる。第1の第1級アルコールおよび第2級アルコールの例には、1〜18個の炭素原子を含むもの、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、3−メチル−1−ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、またはラウリルアルコールなどがある。第1有機溶媒の例としては、ピリジンまたはC4〜C8第3級アルコール(例えば、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、
2,2,3−トリメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、および3−メチル−3−ヘキサノール)が挙げられる。第1有機溶媒は他の適当な溶媒と混合してもよい。第1有機溶媒は、本発明の方法から得られるアルキルエステルまたは他の供給源(例えば、市販品)から得られるアルキルエステルであってよいアルキルエステルと混合され得る。第1有機溶媒を別の溶媒と共に用いる場合には、別の溶媒は、反応中の第1溶液の均質性を維持するのに十分な量で添加され、それによって、第1リパーゼの不活化を最小にする。用語「リパーゼ」とは、エステル交換反応またはエステル化反応を触媒し得る任意の酵素を指す。その例としては、カンジダ・アンタークチカ・リパーゼ、テルモマイセス・ラヌジノーサ・リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス・リパーゼ、シュードモナス・セパシア・リパーゼ、およびクロモバクテリウム・ビスコスム・リパーゼなどがある。第1リパーゼは、単一種リパーゼ、または2種以上のリパーゼの組み合わせを含み得る。第1リパーゼは第1反応器中の担体上に固定されていることが好ましい。エステル交換反応またはエステル化反応を0〜95℃(例えば、20〜95℃)で1〜180分(例えば、10〜90分または20〜60分)にわたって実施すると、第1アルキルエステルが得られる。
【0065】
トリグリセリドを含有する油源と第1の第1級アルコールまたは第2級アルコールとのエステル交換反応中、副生成物としてグリセロールが生成する。予想外なことに、第1アルキルエステルは、第1有機溶媒と未反応の第1の第1級または第2級アルコールを蒸発除去した後、第1アルキルエステルとグリセロールとを相分離させることにより容易に得ることができる。上記油源は、モノグリセリド、ジグリセリド、またはカルボン酸を含有し得る。モノグリセリドおよびジグリセリドは、トリグリセリドと同じように第1の第1級または第2級アルコールと反応する。カルボン酸はエステル化反応を介して第1の第1級または第2級アルコールと反応し、副生成物として水を生成するが、これは蒸発過程で容易に除去し得る。
【0066】
カルボン酸を含有する油源と第1の第1級または第2級アルコールとのエステル化反応中に、副生成物として水(但し、グリセロールは含まない)が生成する。予想外にも、第1有機溶媒、未反応の第1の第1級または第2級アルコール、および水分を蒸発除去することにより、第1アルキルエステルが容易に得られる。上記油源が有意な量のトリグリセリド、ジグリセリド、またはモノグリセリドを含有している場合、第1アルキルエステルは前項に記載の方法で得ることができる。
【0067】
上述のようにして得られた第1アルキルエステルがモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、またはカルボン酸で汚染されている場合、汚染物質を、別のエステル交換反応またはエステル化反応を介してさらにアルコールと反応させて除去し得る。具体的には、第1アルキルエステルを第2有機溶媒中で第2の第1級アルコールまたは第2の第2級アルコールと混合して、第2溶液を形成することができる。第2有機溶媒の各分子は4〜8個の炭素原子と1個のヘテロ原子を含む。第2有機溶媒は第1有機溶媒と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2の第1級または第2級アルコールは第1の第1級または第2級アルコールと同じであることが好ましい。次いで、第2溶液中のモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、またはカルボン酸を、第2リパーゼの存在下、第2の第1級アルコールまたは第2の第2級アルコールと反応させて第2アルキルエステルを生成し得る。この反応中、第2溶液は相分離しない。第2リパーゼは第1リパーゼと同じでてあってもよいし、異なっていてもよい。次いで、このようにして得られた第1および第2アルキルエステルを第2溶液から分離し得る。第2アルキルエステルは第1アルキルエステルと同一であることが好ましい。
【0068】
前記処理法の実施例について以下に説明する。
1.2.1 実施例1
アルキルエステルを調製するための油源として大豆油を用いた。具体的には、第1混合器において、精製大豆油(55.4重量%)を、無水メタノール(8.6重量%)および無水t−ブタノール(36.0重量%)と混合して、一相の溶液を形成した。次いで、この溶液を、NOVOZYM 435〔カンジダ・アンタークチカ・リパーゼ;ノボザイムズ(Novozymes)A/S社、デンマーク、バグスバード(Bagsvaerd)所在〕を充填した第1反応器に送出した。詳細には、NOVOZYM 435を担体(マクロ多孔性樹脂)上に固定してから反応器に入れた。反応器の温度は45℃であった。反応時間は62分であった。反応完了後、溶液を真空蒸発器、次いで液−液分離器に送り、生成物を得た。生成物の組成をHPLC(高速液体クロマトグラフィ)〔カラム:Luna Su C18(2)250×4.6mm、フェノメネックス社(Phenomenex);移動相:メタノール、ヘキサンおよびイソプロパノール;UV検出器:UV−2075、ジャスコ(JASCO)社、日本〕により同定した。予想外にも、得られた生成物は、96.19重量%のアルキルエステルと、3.59重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.22重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0069】
別の実験では、共溶媒としてアルキルエステルを用いた。具体的には、第1混合器において、精製大豆油(49.1重量%)を無水メタノール(7.6重量%)および無水t−ブタノール(20.5重量%)と混合して、一相の溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は58.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、96.10重量%のアルキルエステルと、3.23重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.67重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0070】
さらに別の実験では、溶媒としてt−アミルアルコールおよびアルキルエステルを用いた。具体的には、第1混合器において、精製大豆油(40.8重量%)を無水メタノール(6.3重量%)、無水t−アミルアルコール(37.3重量%)およびアルキルエステル(15.6重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は53.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、96.96重量%のアルキルエステルと、2.64重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.40重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0071】
1.2.2 実施例2
別の混合器で、実施例1から得られたアルキルエステルを無水メタノールおよび無水t−ブタノールと混合して、一相溶液を形成した。このようにして形成された溶液は、70.00重量%のアルキルエステルと、2.8重量%の汚染物質(すなわち、2.47重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.31重量%のトリグリセリド)、7.28重量%のメタノールと、19.94重量%のt−ブタノールとを含んでいた。次いで、溶液を、NOVOZYM 435を充填した別の反応器に送った。具体的には、NOVOZYM 435は、担体上に固定してから反応器に入れた。第2反応器の温度は45℃であった。反応時間は17.5分であった。反応完了後、溶液を別の真空蒸発器、次いで別の液−液分離器に送り、生成物を得た。生成物の組成をHPLCで同定した。
【0072】
予想外にも、上記で得た生成物は、99.24重量%のアルキルエステルと、0.65重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.11重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0073】
1.2.3 実施例3
実施例1に記載のものと類似の方法でアルキルエステルを調製するための出発物質として大豆油以外の油源を用いた。使用した油源は、高遊離脂肪酸を含有するレストラン廃油脂、低遊離脂肪酸を含有するレストラン廃油脂、獣脂、ラード、魚油、ヤシ油、およびヒマシ油などであった。1つの実験では、高遊離脂肪酸を含有するレストラン廃油脂を用い
た。具体的には、NOVOZYM 435を入れた反応器に、上記レストラン廃油脂(49.1重量%)、無水メタノール(7.6重量%)、t−ブタノール(20.5重量%)およびアルキルエステル(22.8重量%)を含有する溶液を入れた。具体的には、NOVOZYM 435は、担体上に固定してから反応器に入れた。反応器の温度は45℃であった。反応時間は24.0分であった。反応器からの生成物を単離し、その組成をHPLCで同定した。予想外にも、上記で得た生成物は、96.63重量%のアルキルエステルと、3.17重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.20重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0074】
別の実験では、油源として魚油(動物油)を用いた。具体的には、第1混合器において、魚油(52.4重量%)を無水メタノール(7.8重量%)、無水ピリジン(39.8重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は25.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、95.63重量%のアルキルエステルと、3.03重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、1.34重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0075】
さらに別の実験では、油源としてヤシ油(植物油)を用いた。具体的には、第1混合器において、植物油(46.5重量%)を無水メタノール(7.5重量%)および無水t−アミルアルコール(46.0重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は41.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、96.97重量%のアルキルエステルと、1.95重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、1.08重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0076】
1.2.4. 実施例4
実施例1に記載のものと類似の方法でアルキルエステルを調製するための出発物質として第1級アルコールを用いた。使用アルコールは、メタノール、エタノール、イソブタノール、3−メチル−1−ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノールおよびラウリルアルコールなどであった。1つの実験では、NOVOZYM 436を入れた反応器に、魚油(52.0重量%)、エタノール(11.2重量%)および無水t−ブタノール(36.8重量%)を含有する溶液を入れた。具体的には、NOVOZYM 435は、担体上に固定してから反応器に入れた。反応器の温度は45℃であった。反応時間は39.0分であった。反応器からの生成物を単離し、その組成をHPLCで同定した。予想外にも、上記で得た生成物は、97.44重量%のアルキルエステルと、1.44重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、1.11重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0077】
別の実験では、出発物質としてヘキサノール(C6アルコール)を用いた。具体的には、第1混合器において、大豆油(53.7重量%)を無水ヘキサノール(26.6重量%)および無水t−ブタノール(19.7重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は46.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、95.06重量%のアルキルエステルと、4.11重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.88重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0078】
さらに別の実験では、出発物質としてラウリルアルコール(C12アルコール)を用いた。具体的には、第1混合器において、大豆油(37.2重量%)を無水ラウリルアルコール(33.6重量%)および無水t−ブタノール(29.2重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は66.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、95.03重量%のアルキルエステルと、4.07重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、0.90重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0079】
1.2.5 実施例5
実施例1に記載のものと類似の方法でアルキルエステルを調製するための出発物質として第2級アルコールを用いた。使用したアルコールは、イソプロパノール(C3アルコール)、2−ブタノール(C4アルコール)および第2級n−オクチルアルコール(C8アルコール)などであった。1つの実験では、NOVOZYM 436を入れた反応器に、菜種油(52.9重量%)、イソプロパノール(14.1重量%)および無水t−アミルアルコール(33.0重量%)を含有する溶液を入れた。具体的には、NOVOZYM 435は、担体上に固定してから反応器に入れた。反応器の温度は45℃であった。反応時間は39.0分であった。反応器からの生成物を単離し、その組成をHPLCで同定した。予想外にも、上記で得た生成物は、93.92重量%のアルキルエステルと、4.86重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、1.22重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0080】
別の実験では、出発物質として2−ブタノールを用いた。具体的には、第1混合器において、大豆油(52.5重量%)を無水2−ブタノール(18.9重量%)および無水t−アミルアルコール(28.6重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は46.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、92.84重量%のアルキルエステルと、5.08重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、2.09重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0081】
さらに別の実験では、出発物質として第2級n−オクチルアルコールを用いた。具体的には、第1混合器において、大豆油(46.4重量%)を無水第2級n−オクチルアルコール(29.3重量%)および無水t−ブタノールアルコール(24.3重量%)と混合して、一相溶液を形成した。反応条件は上記のものと同じであったが、但し、反応は42.0分で完了した。予想外にも、得られた生成物は、94.69重量%のアルキルエステルと、2.45重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、2.86重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0082】
1.2.6 実施例6
出発物質としてラウリン酸およびメタノールを用い、実施例1に記載のものと類似の方法で、エステル化反応を介して、アルキルエステルを調製した。具体的には、NOVOZYM 435を入れた反応器に、無水ラウリン酸(77.7重量%)、無水メタノール(17.6重量%)および無水t−ブタノール(4.7重量%)を含有する溶液を入れた。NOVOZYM 435は、担体上に固定してから反応器に入れた。反応器の温度は45℃であった。反応時間は37.0分であった。反応器からの生成物を単離し、その組成をGC(ガスクロマトグラフィ)〔8610C、エス・アール・アイ(SRI)社、米国;カラム:MXT−65TG、長さ:30m、I.D.:0.25μm;キャリヤーガス:He、流速:1ml/分;インジェクタ:分割比:20:1、温度:300℃;検出器:FID、温度:370℃〕で同定した。
予想外にも、上記で得た生成物は、96.0重量%のラウリン酸メチルと4.0重量%のラウリン酸とを含んでいた。
【0083】
1.2.7 実施例7
出発物質として大豆油およびメタノールを用い、実施例1に記載のものと類似の方法で、但し、大豆油を使用前に一定時間加熱して、アルキルエステルを調製した。具体的には、大豆油は、先ず200℃で5分または210℃で1時間加熱し、次いで反応温度に冷却した。その後、混合器で、大豆油(49.1重量%)を無水メタノール(7.6重量%)、無水t−ブタノール(20.5重量%)およびアルキルエステル(22.8重量%)と混合して、一相溶液を形成した。次いで、この溶液を、NOVOZYM 435を充填し
た反応器に送った。具体的には、NOVOZYM 435は、前以て担体上に固定してから反応器に入れた。反応器の温度は45℃であった。反応器からの各生成物を単離し、その組成をHPLCで同定した。
【0084】
予想外にも、それぞれ、200℃で5分加熱した大豆油と、210℃で1時間加熱した大豆油を用いた場合には、50.3分および47.4分で、1.5重量%未満のトリグリセリドを含有する生成物を得た。それに比べ、類似反応条件下に事前加熱処理をしない大豆油を用いた場合には、上記生成物を得るのに53.8分を要した。
【0085】
1.2.8 実施例8
実施例1に記載のものと類似の方法でアルキルエステルを調製するための触媒として、LIPOZYME TL IM〔テルモマイセス・ラヌジノーサ・リパーゼ、ノボザイムズA/S社、デンマーク、バグスバード所在〕を用いた。具体的には、触媒は、粒状シリカ担体上に固定してから反応器に入れた。次いで、反応器に、大豆油(49.1重量%)、無水メタノール(7.6重量%)、無水t−ブタノール(20.5重量%)およびアルキルエステル(22.8重量%)を含有する溶液を入れた。反応器の温度は45℃であった。反応時間は51.0分であった。反応器からの生成物を単離し、その組成をHPLCで同定した。
【0086】
予想外にも、上記で得た生成物は、94.04重量%のアルキルエステルと、3.65重量%のモノグリセリドおよびジグリセリドと、2.31重量%のトリグリセリドとを含んでいた。
【0087】
2. シングルステージによるバイオディーゼル燃料生成法
図3を参照すると、図2Aに示されている構成の処理プラント100Aの1つの実施例は、分離器220,230を実現するために使用されるいくつかの構成部品、並びに、図2Aには示されてはいない回収された生成物および分離器で生成された廃棄物の処理に使用される付加的な部品を有する。この実施例において、反応物質130はアルコールを含む。
【0088】
反応器140は、例えば、酵素触媒142を入れた栓流反応器であってよい。油源110と反応アルコール130との反応の説明は、1.2項および米国特許出願第10/945,339号に示されている。反応器140を通過する流体の流速は、反応を完了させるのに十分な時間を考慮して反応器140について規定された滞留時間に合致するように制御される。滞留時間は、例えば、3時間〜20分未満の範囲であり得る。反応器140の温度は設定値に維持され、設定値は、一部、油源、反応物質および触媒のタイプに応じて、例えば、20〜95℃の範囲であり得る。
【0089】
反応器140は、粗生成物103を送出し、この粗生成物103は、アルキルエステル、グリセロール、および不純物、例えば、油源110と反応物質130との反応から生成される、完全に反応していない油(不完全反応油)などを含んでいる。不完全反応油の例として、モノグリセリドやジグリセリドなどがある。
【0090】
処理プラント100Aは、粗生成物103中の成分を、例えば、粗グリセリール168と、未反応油110、不活性溶媒120および未反応の反応物質130を含有する粗バイオディーゼル150とに分離する分離モジュール220を有する。分離モジュール220は、真空蒸発器、例えば、ドイツ、デッゲンドルフ(Deggendorf)所在のフェアファーレン・テクニッシェ・アウラーゲン社(Verfahrens Technische Aulagen GMBH)製のDモデルタイプの薄膜蒸発器(wiped thin film evaporator)324、または充填床蒸発器と一体化された
簡単なフラッシュドラムを有する。薄膜蒸発器324は、薄膜蒸発を用いて、粗生成物103中のさまざまな成分を分離する。薄膜蒸発器324は、不活性溶媒120、未反応アルコール130および水分を高速で蒸発させ得るように大きな表面積を有する薄膜を備えている。低沸点成分、例えば、未反応アルコール130、水蒸気、不活性溶媒および他の不純物は、勢いよく流され、凝縮され、溶媒回収ユニット328に回収され、溶媒回収装置328は、不活性溶媒120、未反応アルコール130、水蒸気および他の不純物を分離する。不活性溶媒120と未反応アルコール130は、再循環し、反応器140への投入物の一部として、新規溶媒120、新規油源110、および新規反応アルコール130と混合し得る。水蒸気と他の不純物は、触媒変換器362に送られ、触媒変換器362は、不純物を、例えば炭酸ガスに変換する。水蒸気と炭酸ガスは通気口(図示せず)から排出される。
【0091】
薄膜蒸発器324からの残渣は、グリセロール、アルキルエステル、未反応油、および不完全反応油を含んでおり、それらは第1コアレッサ・分離器(coalescer &
separator)336に送られる。コアレッサはグリセリール液滴を融合して液状にする。溶液を分離器中で一定時間静置すると、バイオディーゼルとグリセロールが分離し、上層のバイオディーゼルと下層のグリセロールを形成するであろう。
【0092】
下層グリセロールは、粗グリセロール168と称され、不純物、例えば、水分、不活性溶媒、および未反応アルコールを含有する。粗グリセロール168は、粗グリセロール蒸発器338に送られる。蒸発器338の一例は、ショートパスエバポレータ、例えば、ファオ・テー・アー社(VTA GMBH)製のVKモデルタイプ、または充填床蒸発器が一体化された単純なフラッシュドラムである。蒸発器338は、不純物からグリセロールを蒸発させて分離し、「純」グリセロール114を産出する働きをする。一例として、純グリセロール114は少なくとも純度99重量%であり得る。
【0093】
上層のバイオディーゼルは、不純物、例えば、不完全反応油、未反応油、および微量のグリセロールを含有するため、粗バイオディーゼル225と称される。粗バイオディーゼル225の一部は再生利用され、反応器140に送り返される。上述のように、粗バイオディーゼル225を再利用すると、反応の完全性を促進するという利点に加えて、油源および反応アルコールの溶解に必要とされる不活性溶媒の量を減らすことができる。
【0094】
粗バイオディーゼル225のうち再生利用されない部分は、不純物からバイオディーゼルを分離して純バイオディーゼル150を生成するショートパスエバポレータ344を含む最終分離器230に送られる。
【0095】
ショートパスエバポレータ344は、不完全反応油、未反応油、およびグリセロールを、他の成分からグリセロールを分離または除去する第2コアレッサ・分離器354または再生イオン交換樹脂床(栓流層)に向けて送出する。コアレッサ・分離器354は、粗グリセロール156を粗グリセロール蒸発器338に向けて送出し、蒸発器338は、粗グリセロール156を処理して純グリセロール114を生成する。コアレッサ・分離器354は、不完全反応油および未反応油を産出し、それらは、場合により、再利用するために反応器140に送り返されることがある。
【0096】
3. シングルステージシステムの詳細設計
図4(図4A〜図4C)を参照して、図2Aに示されている構成を有するプラント110Aの別の実施例を以下に詳細に説明する。
【0097】
図4を参照すると、プラント110Aは、油源110を貯蔵する油ドラム(D−1)を有する。不活性溶媒120は溶媒ドラムに貯蔵され、溶媒ドラムは、新規不活性溶媒、プ
ラント内の溶媒回収ユニットからの再生不活性溶媒、および窒素ガスを受容する。窒素ガスは溶媒からの湿分および酸素をブロックする。反応アルコール130は反応アルコールドラムに貯蔵され、反応アルコールドラムは、新規反応アルコール、再生反応アルコール、および窒素ガスを受容する。
【0098】
油源110、不活性溶媒120、および反応アルコール130の混合は、いくつかの部品を用いて実施される。ツインヘッド計量ポンプ(P−1)430は、油源110を、経路432に沿って一定速度で、例えば、油源から微量の水分を直接除去する高吸水性樹脂で充填された充填床であり得る除水床(RB−1)436に送り込む。水分が除去されたら、油源は、パイプ440を通って、スタティックミキサー(SM−1)438を含む混合器210に送られる。同時に、ツインヘッド計量ポンプ(P−2)424は、反応物質および不活性溶媒を、油源と反応アルコールおよび不活性溶媒との比率が所定値に維持されるような速度で、スタティックミキサー438に送り込む。ポンプ430は、さらに再生粗バイオディーゼル225を、パイプ476を介して、所定の再生粗バイオディーゼル:油源の比率で、スタティックミキサー438に送り込む。
【0099】
スタティックミキサー438は、例えば、米国特許第3,286,992号に記載されているようなマルチエレメントスタティックミキサー、または、スイス、ズルツァー・ケムテック社(Zulzer Chemtech)製のズルツァー・コンパクト・スタティックミキサー(Sulzer Compact Static Mixer)などのコンパクトミキサーであってよい。スタティックミキサーは、可動部を有さず、外部動力を使用することなく、溶液を混合する。スタティックミキサー438は、反応物質、不活性溶媒、油源および再生粗バイオディーゼルを完全に混合して均質溶液を生成する。
【0100】
熱交換器(HE−1)448とカートリッジ型反応器(R−1)404を有する反応器140は、混合器210の流出物を受容する。具体的には、スタティックミキサー438からの流出物は熱交換器(HE−1)448に送られ、熱交換器448は、例えば、冷却水、熱油、蒸気、または電気加熱器もしくは冷却器を用いて混合溶液の温度を調整する。熱交換器448は、例えば、二重管形であってよい。次いで、溶液は、酵素触媒142、この場合にはリパーゼが充填されている反応器の細長いカートリッジ404に入る。反応温度は0〜95℃であってよいが、好ましくは室温(例えば、25℃)である。
【0101】
多くの代替型カートリッジ404を用い得る。例えば、カートリッジ404は、底にグリッド支持体を有するカラムであってよい。カートリッジの底には、カートリッジ内に酵素触媒142を保持するためにスクリーンが設けられており、カートリッジの上部にはカートリッジ内の溶液の流量を均一にするために別のスクリーンが設けられている。カートリッジの2つのスクリーンの間には触媒が充填されている。温度制御混合溶液は、カートリッジ404の上部開口を介してカートリッジ404に入り、酵素触媒142を通って流れ落ちる。酵素触媒は、反応アルコールとトリグリセリドを含む油源との反応を促進して、アルキルエステル、グリセロール、および水分(および/または他の不純物)を生成させる。
【0102】
反応器140は、アルキルエステル、グリセロール、未反応油(トリグリセリド)、不完全反応油(モノグリセリドおよびジグリセリド)、未反応アルコール、不活性溶媒、および他の不純物を含有する粗生成物を産出する。図3に関連して上述したように、反応器140の粗生成物は、蒸発器324と、コアレッサ・分離器336とを含む分離器220に送られる。図4には特定設計のコアレッサ・分離器336が参照番号336Aで示されており、このコアレッサ・分離器336Aには、グリセロール液滴を融合させるために1〜5μmの細孔径を有するメンブランフィルターが用いられている。
【0103】
図4に示されているプラント110Aにおいて、蒸発器324は、圧力調整器(PR)452と、予熱器(HE−2)448と、充填床設計が一体化された単純なフラッシュドラム蒸発器(E−1)451とを含む。予熱器448は、例えば、熱油または蒸気を用いて粗生成物を予熱し得る。蒸発器451は、被覆領域における熱媒体として熱油または熱蒸気を用い得る。蒸発器451内において、不活性溶媒、水分、および未反応アルコールは蒸発して、蒸発器451の上部開口から退出する。不活性溶媒、水分、および未反応アルコールは凝縮され、溶媒回収ユニット328(図4では示さず)に回収され、再利用することができる。
【0104】
溶媒回収ユニット内の凝縮液の組成は、未反応アルコール、不活性溶媒、水分および微量のバイオディーゼルを含み得る。2つの単純カラムを用いて、未反応アルコール、不活性溶媒、および水分を分離することができる。1つの実施例において、第1カラムは未反応アルコールおよび水から不活性溶媒を分離する。含まれているとしても、ごく微量のバイオディーゼルを含有している不活性溶媒は、第1カラムの底から退出して、不活性溶媒ドラムに再循環される。
【0105】
溶媒回収ユニットでは、未反応アルコールと水分は第1カラムの底から出て、第2カラムに送られ、第2カラムで、未反応アルコールは上部のリフラックスドラムに回収され、反応アルコールドラムに再循環される。第2カラムの底の残渣は、主に、水分と少量の未反応アルコールと不活性溶媒とからなる。少量の未反応アルコールと不活性溶媒は触媒変換器で気化され、完全に使い果たされる。単純カラムはいずれも周囲圧力下に自動稼動可能である。一般に、溶媒回収の設計は使用されるアルコールや不活性溶媒に依存し、種々の回収スキームを用い得る。
【0106】
続いて図4を参照すると、高沸点を有する蒸発器451内の成分はギアポンプによりコアレッサ(CL−1)454に送り込まれ、グリセロール液滴は融合して大きな液滴になり、粗バイオディーゼルから容易に分離され得る。液−液相分離器(S−2)456では2種の液体が形成される。粗バイオディーゼルは、冷却器(HE−3)458、次いで再生イオン交換樹脂が充填された微量グリセロール除去床(RB−3)461に送られる。微量グリセロール除去床461の流出物は2つの流れ476と流れ478とに分れる。一方の流れ476はスタティックミキサー438に再循環され、もう一方の流れ478はショートパスエバポレータ(E−2)424に送られる。
【0107】
少なくとも95重量%のアルキルエステルを含有し得る粗バイオディーゼルは、分離器456から流れ出て、冷却器(HE−3)458で冷却される。冷却器内での粗バイオディーゼルの冷却には冷却水が用いられる。
【0108】
粗バイオディーゼルの一部はフィードバックパイプ476を通って再循環される。再生粗バイオディーゼルは、粗バイオディーゼルと純バイオディーゼルとに切り替え得る三方電磁弁を通過する。上述のように、ポンプ430は、再生バイオディーゼルをスタティックミキサー438に送り込む。
【0109】
粗バイオディーゼルのうち再生利用されない部分は、ショートパスエバポレータ344(図3に示されているような最終分離器230の一部)に送られる。ショートパスエバポレータ344は、熱交換器(HE−4)486と、圧力調整器452と、ショートパスエバポレータ(E−2)424とを含む。ショートパスエバポレータ424は、グリセロール、未反応油、および他の不純物からバイオディーゼルを分離する。高純度バイオディーゼルはエバポレータ424から経路426に流れ出る。
【0110】
エバポレータ424は、微量のグリセロールで汚染された未反応油をドラム(S−4)
472に向けて経路433に送出する。未反応油は、ギアポンプ(P−8)473により冷却器(HE−6)475に送り込まれる。未反応油の質および/または油中の不純物量に応じて、未反応油は、廃油処理ドラムに送られるか、残留グリセロールを除去するグリセロール除去床(RB−2)444を通って油ドラムD−1に再循環される。グリセロール除去床444は、例えば、溶液から微量のグリセロールを除去し得る樹脂で充填された充填床であってよい。
【0111】
グリセロールを自動的に送出するために、液−液相分離器(S−2)456とドラム474の間に二軸重力式ドレントラップ(DN−1)457が配置されている。このトラップ457の1つの例は、米国ミシガン州所在のアームストロング社(Armstrong)から入手し得る。あるいは、グリセロールの量が少な過ぎるためにドレントラップを使えない場合には、高レベルスイッチと低レベルスイッチとを有する小型ドラムを用いることも可能である。上記スイッチはどちらもドラムの底にあるグリセロール送出用電磁弁に連結される。
【0112】
ドラム474内の粗グリセロールは、(図4には示されていない)真空蒸発器を介して精製して、水分、未反応アルコール、および不活性溶媒を除去することができる。蒸発蒸気は凝縮され、上記蒸発器E−1(およびE−2)の凝縮液ドラムに集められる。粗グリセロール蒸発器から出て行く残留物は商用利用に適した純グリセロール生成物である。
【0113】
ショートパスエバポレータ424からの高純度バイオディーゼルは熱交換器(HE−5)408に送り込まれ、そこで、冷却水が高純度バイオディーゼルを冷却する。最終純バイオディーゼル生成物は、少なくとも99重量%のアルキルエステルを含み得る。純バイオディーゼル生成物は純バイオディーゼル生成物ドラム(D−5)に貯蔵される。処理プラント起動時、粗バイオディーゼルが手に入らない場合には、純バイオディーゼルを反応器140に供給するために、フィードバック経路を介して混合器210に再循環し得る。このフィードバック経路は、粗バイオディーゼルを用いるときには再循環純バイオディーゼルをオフに切り替えられるように電磁弁478に接続されている。
【0114】
4. シングルステージシステムの代替設計
図5(図5A〜図5D)は、生成物底部排出設計を用いるシングルステージ反応器の1つの代替設計を示している。真空と空気とに切り替えられる2つの液体ドラム(S−1)556および(S−2)566を用いて、蒸発器に連結されたドラム455から液体を排出させる。ドラム556および566では、液体排出切り替え操作を自動制御するための液体検出器(図示せず)を用いる。二方電磁弁558,560および三方電磁弁568は、ドラム454からドラム556,566への溶液の流量を制御する。弁560は、ドラム556の底から流出する液体の流量を制御する。初期には、弁560は閉鎖されており、弁558は開放されている。三方電磁弁568は、ドラム556の上部開口を真空ポンプ(図示せず)に連結するように構成されている。溶液は重力によりドラム454からドラム556に流れ込む。
【0115】
ドラム556に設定量の溶液が入ると、弁558を閉じる。弁560を開き、室内空気がシリカゲル(または樹脂)を通過して、ドラム556の上部開口に入るように三方電磁弁568を選択する。シリカゲルまたは樹脂570は、ドラム556に入ってくる空気から水分を除去する。
【0116】
ドラム556内の溶液は重力によりドラム566に流れ込む。溶液がドラム556から設定レベルまで流出したら、弁560を閉鎖し、弁568を切り替えて、弁558を再び開放する。
【0117】
ポンプ562は溶液を連続的にコアレッサ(CL−1)に送り込む。コアレッサ454では、グリセロール液滴が融合されて大きな液滴となり、粗バイオディーゼルから分離される。ポンプ562は、図4のギアポンプ467の役割に類似した機能を果たす。違いは、ポンプ562の場合には、吸気圧力は、ギアポンプ567の場合のような高真空状態ではなく、周囲圧力に由来することである。これはポンプの選択に一層の柔軟性を与え、適切なポンプを見つけ易くする。
下流の稼動は図4に示されているものと同様である。ショートパスエバポレータ(E−2)424の底部流には類似設計を用い得る。
【0118】
5. 2ステージプラント
図6(図6A〜図6C)を参照して、図2Bに示されている構成を有する2ステージ処理プラント110Bの1つの実施例を以下に詳細に説明する。図2Bの最終分離器230は図6では省略されている。
【0119】
図6の処理プラント110Bの第1部分は、第1反応器140と、第1蒸発器324と、図5の対応要素と同じように作動する第1コアレッサ・分離器336Bとを備える。図6の処理プラント110Bは、図5にあるようなショートパスエバポレータ344を用いる代わりに、第2反応器、第2蒸発器324、および第2コアレッサ・分離器336Bを用いる。第1反応器140と類似のものであってよい第2反応器140には、酵素触媒、例えばリパーゼが入っている。第1および第2反応器140は、同一または異なる酵素触媒を使用し得る。
【0120】
粗バイオディーゼルからグリセロールを除去するグリセロール除去床RB−2から退出する粗バイオディーゼルは、パイプ288に沿って、第1反応器140の第1スタティックミキサー210に類似した第2スタティックミキサー(SM−2)に向かって移動する。同時に、ツインヘッドポンプ(P−4)292は、反応アルコール130および不活性溶媒120を、設定比率の反応アルコール130および不活性溶媒120がスタティックミキサー(SM−2)210に進入する前の位置290で粗バイオディーゼルと混合するような速度で、第2スタティックミキサー(SM−2)に送り込む。スタティックミキサー(SM−2)210の流出物は第2反応器140に送られる。
【0121】
第2反応器140では、反応アルコール、未反応油、および不完全反応油が反応してさらにアルキルエステルを生成し、その結果、第2反応器の流出物中では、未反応油や不完全反応油の量が減少する。
【0122】
第2コアレッサ・分離器336Bからの流出物は、高率の(例えば、99重量%を超える)アルキルエステルを含有する高純度バイオディーゼルを含む。微量のグリセロールを含有し得る高純度バイオディーゼルは、先ず冷却器(HE−5)488で冷却され、次いで、樹脂床(RB−3)489に通される。樹脂床(RB−3)には微量グリセロールを除去するための樹脂が充填されている。
【0123】
例えば、99重量%のアルキルエステルを含有し得る最終生成物−高純度バイオディーゼル150は、高純度生成物ドラム(D−5)に送られる。ドラムD−5内の高純度バイオディーゼルは、始動時に再利用されるか、あまたユーザーに供給され得る。
【0124】
ある種の実施例において、処理プラント100A(図4および5)と100B(図6)の稼動条件は以下のようであり得る。第1反応器404は0〜95℃の温度で稼動し、滞留時間は1〜180分である。第1蒸発器451は120℃未満の温度および約13330Pa(100mmHg)未満の圧力で稼動する。除去床436,444,461は、20〜80℃の温度、好ましくはほぼ室温(例えば、25℃)で稼動し得る。コアレッサ4
54および456は、20〜80℃の温度で稼動し得る。
【0125】
6. 典型的な稼動条件
6.1 実施例1
以下に述べるのは、粗バイオディーゼルを第1反応器の入口に再循環する上述の2ステージ処理プラントの稼動条件の一例である。薄膜蒸発器を用い、ショートパスエバポレータは用いなかった。処理プラントへの原料油として、地元のスーパーマーケットから購入した精製大豆油を用いた。精製大豆油中の水分量は、約200〜300ppmであった。純無水メタノールを反応アルコールとして用いた。純無水t−アミルアルコールを不活性溶媒として用いた。第1反応器(R−1)は、リパーゼを充填した充填床を有し、リパーゼはノボザイムズ社製のTL IMであった。第1反応器内の溶液の滞留時間は50分、反応温度は25℃であった。第2反応器(R−2)は、リパーゼを充填した充填床であり、リパーゼはノボザイムズ社製のNovo 435であった。第2反応器内の溶液の滞留時間は115分、反応温度は25℃であった。蒸発器は、温度110℃、絶対圧力約133.3Pa(1.0mmHg)、毎分250回転の回転速度で作動する薄膜蒸発器である。最終生成物は、99.10重量%のバイオディーゼル、0.2重量%のモノグリセリド、0.22重量%のジグリセリド、0.066重量%のトリグリセリドを含んでおり、酸価は0.630mgKOH/gであった。
【0126】
6.2 実施例2
以下に述べるのは、粗バイオディーゼルを反応器の入口に再循環させる上述のシングルステージ処理プラントの稼動条件の一例である。2種の代替蒸発器設計例:(1)充填床蒸発器と一体化された単純フラッシュドラム;および(2)薄膜蒸発器を用いた。最終生成物は、ショートパスエバポレータで処理した。装入原料は、水湿分200〜300ppmを含む新規精製大豆油であった。反応器(R−1)はリパーゼを充填した充填床であった。リパーゼは、TL IM(ノボザイムズ社製)、滞留時間は53分、反応温度は25℃であった。蒸発器(E−1)が充填床と一体化された単純フラッシュドラムを用いた場合、稼動温度は120℃、絶対圧力は約666.61156Pa(5 torr)であった。蒸発器が前にフラッシュドラムを有さない薄膜蒸発器を用いた場合、稼動温度は120℃、絶対圧力は約133.32Pa(1 torr)、回転速度は毎分250回転であった。最終分離器は、稼動温度が120℃、絶対圧力が約6.6661156Pa(0.05 torr)、回転速度が400RPMのショートパスエバポレータを用いた。得られた最終生成物は、99.81重量%のバイオディーゼル、0.13重量%のモノグリセリド、0.66重量%のジグリセリド、検出不能量のトリグリセリドを含んでおり、酸価は0.770mgKOH/gであった。
【0127】
6.3 実施例3
以下に述べるのは、粗バイオディーゼルを再生利用しなかった上述のシングルステージ処理プラントの稼動条件の一例である。装入原料は水湿分200〜300ppmを含む新規精製大豆油であった。反応器(R−1)はリパーゼを充填した充填床であった。リパーゼは、TL IM(ノボザイムズ社製)、滞留時間は66.6分、反応温度は25℃であった。蒸発器(E−1)は、温度120℃、絶対圧力約666.61156Pa(5 torr)で作動する、充填床と一体化された単純フラッシュドラムであった。得られた最終生成物は、86.55重量%のバイオディーゼル、6.52重量%のモノグリセリド、5.24重量%のジグリセリド、および1.69重量%のトリグリセリドを含んでいた。
【0128】
6.4 実施例4
典型的なメンブランタイプのコアレッサ(細孔径1〜5μm)からの流出物である粗バイオディーゼル生成物は、液−液分離後に、1,000〜1,500ppm量のグリセロールを有し得る。粗バイオディーゼルは90cmの深さを有する樹脂床に通してもよく、
樹脂床での流体の滞留時間は約25分である。流出物中の最終グリセロール濃度は15ppm未満であり得る。使用樹脂は、イオン交換樹脂の1種である、ドイツ、バイエル社(Bayer Company)製のMonoPlus SP112であってよい。この飽和床は、メタノール、エタノールまたは同等物質で再生され得る。
【0129】
7. 触媒カートリッジ
第1および第2反応器140は、酵素触媒を充填した取り外し可能なカートリッジを使用し得る。これにより、長期稼動後、触媒の効力が無くなったときには、古いカートリッジを新しいものと取り替えることができる。第1および第2反応器140は、種々のメーカー由来、または種々のタイプの触媒を有する種々の取り外し可能カートリッジを受容するように構成されている。処理プラント100A〜100Dは、カートリッジを容易に着脱し得るように、カートリッジを連結する連結機構を有するように設計され得る。様々な種類の酵素触媒を用いることができ、各触媒が異なる稼動条件セット、例えば、流速および稼動温度に関連づけられる。このバイオディーゼル燃料生成システムは、使用される特定タイプの酵素触媒に基づいて稼動条件を調整し得る。
【0130】
図7を参照すると、バイオディーゼル燃料生成システム702は複数の反応器704を有し、反応器704はそれぞれ、酵素触媒を充填したカートリッジ706を備えている。カートリッジ706は、内部の酵素触媒を識別するバーコードまたは無線周波認識(Radio Frequency Identificatio:RFID)タグなどの識別子708を有する。読取装置710(例えば、バーコードまたはRFID読取装置)は、識別子708を読み取り、識別情報をデータプロセッサ712に送信する。この識別情報に基づいて、データプロセッサ712は、データベース714から事前記憶稼動情報を読み出し、その稼動情報を用いて、流量制御サブシステム716および温度制御サブシステム718を制御する。
【0131】
流量制御サブシステム716は、例えば、反応器を通って流れる油源および反応アルコールの流速を決定するポンプを有する。ある種の実施例では、識別子708は短い滞留時間を要求する酵素触媒に関連付けられるので、データプロセッサ712は、反応器704に溶液をより速やかに溶液を送り込むように流量制御サブシステムを制御する。ある種の実施例では、識別子708は長い滞留時間を要求する酵素触媒に関連付けられるので、データプロセッサ712は、反応器704に溶液をゆっくりと送り込むように流量制御サブシステムを制御する。ある種の実施例においては、識別子708は高反応温度を要求する酵素触媒に関連づけられるので、データプロセッサ712は、反応器または熱交換器の温度を高い値に設定するように温度制御サブシステム718を制御する。ある種の実施例では、識別子708は、低い反応温度を要求する酵素触媒に関連づけられるので、データプロセッサ712は、反応器または熱交換器の温度を低値に設定するように温度制御サブシステム718を制御する。
【0132】
ある種の実施例において、識別子708は、カートリッジ706の交換時期を推定する予め記憶された情報に関連づけられ得る。予め記憶された情報は、一定量の溶液がカートリッジ706を通過した後でカートリッジ706の交換が必要であることを指示し得る。データプロセッサ712は、このシステムの流量計(図示せず)に基づいて、カートリッジ706を通過した溶液量を測定する。溶液量が一定限度を超えると、データプロセッサ712は、カートリッジ交換が必要なことを指示するメッセージをユーザーに表示する。
【0133】
8. 用途
図8を参照すると、発電装置800は、油源804および反応アルコール805を受容してバイオディーゼル806を生成する処理プラント802を有する。バイオディーゼル806はバイオディーゼル発電器808に送られ、発電器808はバイオディーゼルから
電気810を発電する。電気の一部は、経路812を介して処理プラント802に送られ、処理プラントの種々の電機部品への動力供給に用いられる。
【0134】
システム802は、上述の処理プラントのいずれであってもよい。
発電装置800の利点は、このシステムが石油系ディーゼル燃料を用いる発電装置よりも公害を発生せずに、電気を発電し得ることである。油源がトリグリセリドを含有していると、発電装置800は、副生成物として、グリセロール、水、および炭酸ガスを生成する。
【0135】
図9を参照すると、輸送手段820は、油源804と反応アルコール805を受容してバイオディーゼル806を生成する処理プラント802を有する。バイオディーゼル806はディーゼルエンジン814に送られ、ディーゼルエンジン814はバイオディーゼルを動力820に変換し、動力820は、輸送手段820に動力を供給するために車輪やプロペラに運動エネルギーを伝送する伝動装置816に送られる。輸送手段820は、ディーゼルエンジンからの運動エネルギーを電気に変換する発電器(図示せず)を有し得る。電気は、輸送手段820の種々の電機部品への動力供給に用いられ得る。
【0136】
処理プラント802は、上述の処理プラントのいずれであってもよい。輸送手段820は、例えば、自動車、トラック、列車、船舶、または飛行機であり得る。
図10を参照すると、例えばレストランなどの建物830は、食品加工用の食用油832を受容する食品加工ユニット834(例えばキッチン)を有する。食品加工ユニット834で生成された再生油836は処理プラント802に送られ、処理プラント802は、さらに反応アルコール805を受容して、バイオディーゼル806を生成する。ディーゼル発電器808はバイオディーゼルを受容して、電気を発電し、電気は、食品加工ユニット834や処理プラント802の種々の電気部品への動力供給に用いられる。
【0137】
9. 代替態様
当然のことながら、上記説明は本発明を例示するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付特許請求の範囲に従って定められる。他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。例えば、ツインヘッドポンプは、2つの独立したポンプで代替し得る。スタティックミキサーは、攪拌混合ドラムまたは計量式スタティックミキサー(dosing−type static mixer)で代替してもよい。バイオディーゼルを小規模生成する場合、各混合ポイントで、計量式コンパクトスタティックミキサーを用い得る。油源が、高率、例えば2,000ppmを超える水分を含んでいる場合、除水床は熱気ストリッピング装置に置き換えられ得る。水分は、ストリッピングにより除去可能であり、油は、反応器に送られる前に冷却される。ある種の実施例では、装入原料として動物性脂肪または高融点植物油を用いる場合には、先ず、それらの脂肪または油は不活性溶媒に溶解される。
【0138】
油源がカルボン酸を含む場合、カルボン酸と反応アルコールとの反応により、アルキルエステルと共に副生成物として水が生成する。この場合、グリセロールは生成しない。グリセロールが存在しないので、アルキルエステルの精製は、溶媒、未反応アルコールおよび水分を蒸発させることによって行われ得る。油源がカルボン酸を含む場合、グリセロールからバイオディーゼルを分離するために分離器を使用したり、グリセロールを除去するために除去床を使用したりする必要はない。
【0139】
ある種の実施例において、バイオディーゼルは、内燃ディーゼルエンジンまたはガスタービンディーゼルエンジン用燃料として用いられ得る。
ある種の実施例において、小型ユニット処理プラントの反応器に酵素触媒を充填したカートリッジが用いられる。より大型の商用ユニットの場合、リパーゼのオンラインローデ
ィングおよびダウンローディングをシステム設計に組み込んでもよい。
【0140】
ある種の実施例において、蒸発器E−1(図4〜図6)は、充填床設計が一体化されているか、または一体化されていない単純フラッシュドラムであってよい。他の実施例では、高級アルコール(反応アルコールまたは不活性溶媒)を使う場合、薄膜蒸発器を用い得る。
【0141】
ある種の実施例において、同一処理プラント中の冷却器(HE−1、HE−3、HE−5、およびHE−T)は、小規模システム用にひとまとめにして1ユニットにし得る。ある種の実施例では、冷却器は、ばらばらに、但しボックス内に平行に配置し、冷却水などの冷媒用の共通入口と共通出口を有する。ある種の実施例では、冷却器は、1つのファンを用いてすべての流れを同時に冷却する空気冷却器として設計される。
【0142】
ある種の実施例においては、ショートパスエバポレータは、入口に蒸発器E−1のものと類似のフラッシュドラムを用い得る。このように設計することにより、短工程ユニット内のコンデンサ負荷を低減させることができ、これは、高入口速度が得られることを意味する。フラッシュドラムを出て行く蒸発蒸気を凝縮させるために外部コンデンサを用い得る。凝縮液は短工程ユニットの蒸留物と一緒になる。
【0143】
グリセロール除去床の再生は、(例えば、大型システム用に平行設計を用いる場合などの)オンライン処理か、(例えば、小型ユニット用にカートリッジタイプ設計を用いる場合などの)オフライン処理であり得る。
【0144】
稼動停止時には、燃料生成システム全体を窒素で被覆して、湿気や空気を遮断する(バイオディーゼルまたは油源の酸性化を低下させる)ことができる。
ある種の実施例では、グリセロール除去樹脂は、イオン交換樹脂、例えば、ドイツ、レバークーゼン(Leverkusen)所在のバイエル・ケミカル社(Bayer Chemical)から入手し得るLewatit MonoPlus SP112であってよい。
【0145】
スタティックミキサーは、生成速度がレベル制御により調節される攪拌混合器(ドラム)で代替し得る。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】燃料生成システムのブロック図。
【図2A】燃料生成プラントの種々の構成のブロック図であって、粗バイオディーゼルのフィードバックを伴うシングルステージプラントを示す図。
【図2B】燃料生成プラントの種々の構成のブロック図であって、第1ステージからの粗バイオディーゼルのフィードバックを伴う2ステージプラントを示す図。
【図2C】燃料生成プラントの種々の構成のブロック図であって、シングルステージプラントを示す図。
【図2D】燃料生成プラントの種々の構成のブロック図であって、2ステージプラントを示す図。
【図3】粗バイオディーゼルのフィードバックを伴うシングルステージプラントのブロック図。
【図4】粗バイオディーゼルのフィードバックを伴うシングルステージプラントの概略図。
【図4A】図4の部分拡大図。
【図4B】図4の部分拡大図。
【図4C】図4の部分拡大図。
【図5】粗バイオディーゼルのフィードバックを伴うシングルステージプラントの概略図。
【図5A】図5の部分拡大図。
【図5B】図5の部分拡大図。
【図5C】図5の部分拡大図。
【図5D】図5の部分拡大図。
【図6】粗バイオディーゼルのフィードバックを伴う2ステージプラントの概略図。
【図6A】図6の部分拡大図。
【図6B】図6の部分拡大図。
【図6C】図6の部分拡大図。
【図7】燃料生成システムのブロック図。
【図8】発電器に連結された燃料生成システムのブロック図。
【図9】燃料生成システムを有する輸送手段のブロック図。
【図10】燃料処理ユニットに連結された燃料生成システムのブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応器であって、
第1反応物質と、第2反応物質と、反応生成物と、第1反応物質および第2反応物質の少なくとも一部を溶解する不活性溶媒とを含有する混合物を受容する入口、
第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素、および
前記入口で受容した反応生成物および第1反応物質と第2反応物質との反応により生成された反応生成物を含有する反応生成物を送出する出口を有する、第1反応器と、
前記出口からの反応生成物の少なくとも一部を前記入口に送り返す帰還機構と
を備えた装置。
【請求項2】
反応生成物がアルキルエステルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
帰還機構がアルキルエステルの少なくとも一部を前記入口に送り返す、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記混合物は、第1反応物質、第2反応物質および反応生成物の少なくとも一部を溶解する溶媒を含有する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記出口は、少なくとも、アルキルエステル、溶媒、および未反応の第1反応物質を送出する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
溶媒を蒸発させて、アルキルエステルおよび未反応の第1反応物質を含有する混合物を生成する蒸発器をさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記出口がさらにグリセロールをも送出する、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
溶媒を蒸発させて、アルキルエステル、グリセロールおよび未反応の第1反応物質を含有する混合物を生成する蒸発器をさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
液−液相分離に基づいて、グリセロールからアルキルエステルを分離する相分離器をさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
第1反応物質がトリグリセリドを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
第1反応物質がカルボン酸を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第2反応物質が第1級アルコールおよび第2級アルコールの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
第1反応物質が植物油と動物性脂肪の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記反応生成物は燃料としての使用に適した組成を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
付加的な第2反応物質および第1反応器の出口からの反応生成物を含有する混合物を受容する入口と、
第2反応物質と他の成分との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素と、
第2反応器の入口で受容した反応生成物および第2反応物質と他の成分との反応により
生成された反応生成物を含む反応生成物を送出する出口と
を有する第2反応器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
不活性溶媒と、未反応の第1反応物質と未反応の第2反応物質の少なくとも一方とを蒸発させる蒸発器をさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
残りの未反応反応物質から反応生成物を分離するショートパスエバポレータをさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
反応生成物がアルキルエステルを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
第2反応器出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を第1反応器の入口に送り返す帰還機構をさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
反応物質を含有する混合物を受容する入口および反応物質間の反応を促進する酵素を有する反応器と、反応生成物の少なくとも一部を前記入口に送り返すフィードバック機構とを備える装置。
【請求項21】
反応生成物はアルキルエステルを含み、フィードバック機構は、アルキルエステルの少なくとも一部を入口に送り返す、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記反応物質は、(1)トリグリセリドとカルボン酸の少なくとも一方と、(2)第1級アルコールと第2級アルコールの少なくとも一方とを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記酵素がリパーゼを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項24】
第1反応器を備える第1サブシステムであって、第1反応器は、
第1反応物質、第2反応物質、および第1反応物質と第2反応物質を溶解する不活性溶媒を含有する第1混合物を受容する第1入口、
第1反応物質と第2反応物質との反応を促進して反応生成物を生成させる第1酵素、および
反応生成物、不活性溶媒、および他の成分を送出する第1出口を有する、第1サブシステムと、
第2反応器を備える第2サブシステムであって、第2反応器は、
付加的な第2反応物質、不活性溶媒、反応生成物の少なくとも一部、および第1入口からの他の成分を含有する第2混合物を受容する第2入口、
第2反応物質と他の成分との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる第2酵素、および
第2入口で受容した反応生成物および第2反応物質と他の成分との反応により生成された反応生成物を含む反応物質を送出する第2出口を有する、第2サブシステムとを有する、アルキルエステル生成用システム。
【請求項25】
前記反応生成物はアルキルエステルを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
第1出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を第1入口に送り返すフィードバック機構をさらに有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
第2出口からのアルキルエステルの少なくとも一部を第1入口に送り返すフィードバック機構をさらに有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
第2サブシステムは、少なくとも90重量%のアルキルエステルを有する第2溶液を得るために第2出口からの第1溶液流出物からアルキルエステル以外の成分の少なくとも一部を除去する分離器を有する、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記分離器は蒸発器を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記分離器は液−液分離器を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
第1サブシステムは、第1溶液より高濃度のアルキルエステルを有する第2溶液を得るために、第1出口からの第1溶液流出物からアルキルエステル以外の成分の少なくとも一部を除去する分離器を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記分離器は蒸発器を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記分離器は液−液分離器を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
第1反応物質、第2反応物質、不活性溶媒、および均質状態の反応生成物を含有する混合物を運ぶパイプラインと、
カートリッジを受容するための連結器であって、前記カートリッジは、
パイプラインから混合物を受容する入口、
第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してより多くの反応生成物を生成させる酵素、および
前記入口で受容した反応生成物および第1反応物質と第2反応物質との反応により生成された反応生成物を含む反応生成物を送出する出口を有する、連結器と、
より高い比率の反応生成物を有する溶液を生成するように前記出口からの流出物を処理する分離ユニットと、
溶液の少なくとも一部をパイプラインに送り返す帰還機構と
を有する反応器を備える装置。
【請求項35】
第1反応器を備える第1サブシステムであって、第1反応器は、
第1反応物質、第2反応物質、不活性溶媒、および均質状態のアルキルエステルを含有する第1混合物を運ぶ第1パイプラインと、
第1パイプラインから混合物を受容する第1入口、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進してアルキルエステルを生成させる第1酵素、およびアルキルエステル、溶媒、および他の成分を送出する第1出口を有する第1カートリッジを受容する第1連結器とを有する、第1サブシステムと、
第2反応器を備える第2サブシステムであって、第2反応器は、
付加的な第2反応物質、不活性溶媒、および第1出口からのアルキルエステルの少なくとも一部と他の成分とを含有する第2混合物を運ぶ第2パイプラインと、
第2パイプラインから混合物を受容する第2入口、第2反応物質と他の成分との反応を促進してより多くのアルキルエステルを生成させる第2酵素、およびアルキルエステルを送出する第2出口を有する第2カートリッジを受容する第2連結器とを有する、第2サブシステムと
を有する、アルキルエステル生成用システム。
【請求項36】
アルキルエステル生成システムであって、
第1反応物質および第2反応物質を含有する混合物を受容し、第1反応物質と第2反応物質との反応を促進して反応生成物を生成させる酵素を含み、識別子を有するカートリッジと、
カートジッリ上の識別子に基づいてシステムの稼動状況を制御する制御器と
を有するシステム。
【請求項37】
前記反応生成物は、アルキルエステルを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記酵素は、リパーゼを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
前記制御器は、識別子に基づいて、溶液のカートリッジ通過速度を変化させるポンプ速度を制御する、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記制御器は、識別子に基づいて、溶液の温度を変化させる加熱器を制御する、請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
前記制御器は、識別子に基づいて、カートリッジを交換する必要があることを示す信号を送る時期を決定する、請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
リパーゼを有するカートリッジを備える装置であって、前記カートリッジはアルキルエステル生成装置に連結されるように構成されており、前記アルキルエステル生成装置は、
有機溶媒中で油源と第1級アルコールまたは第2級アルコールとを混合してカートリッジに通す溶液を形成する混合器であって、前記油源はトリグリセリドを含み、リパーゼはトリグリセリドと第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進してアルキルエステルを生成させ、前記溶液は反応中に相分離せず、副生成物としてグリセロールを生成する、混合器と、
有機溶媒および未反応第1級アルコールまたは第2級アルコールを除去する蒸発器と、
グリセロールからアルキルエステルを分離する相分離器と、
未反応油源からアルキルエステルを分離する第2分離器と
を備える、装置。
【請求項43】
リパーゼを有するカートリッジを備える装置であって、前記カートリッジはアルキルエステル生成装置に連結するように構成されており、前記アルキルエステル生成装置は、
有機溶媒中で油源と第1級アルコールまたは第2級アルコールとを混合してカートリッジに通す溶液を形成する混合器であって、前記油源はカルボン酸を含み、リパーゼはカルボン酸と第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進してアルキルエステルを生成させ、溶液は反応中相分離せず、副生成物として水を生成する、混合器と、
有機溶媒および未反応第1級アルコールまたは第2級アルコールを除去する蒸発器と、
未反応の油源からアルキルエステルを分離する分離器と
を備える、装置。
【請求項44】
分離器がショートパスエバポレータを含む、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
アルキルエステル、アルコール、不活性溶媒およびグリセロールを含有する混合物を受容する入口を有し、不活性溶媒とアルコールを蒸発させてアルキルエステルとグリセロールを含有する溶液を生成する蒸発器と、
溶液を受容する入口を有し、液−液相分離に基づいてグリセロールからアルキルエステルを分離する分離器と
を備える装置。
【請求項46】
アルキルエステル生成装置であって、
有機溶媒中でトリグリセリドを含む油源と第1級アルコールまたは第2級アルコールと
を反応させて溶液を形成する混合器と、
前記溶液を受容する反応器であって、トリグリセリドと第1級アルコールまたは第2級アルコールとの反応を促進するリパーゼを有し、かつ副生成物としてグリセロールを生成する反応器と、
有機溶媒および未反応第1級アルコールまたは第2級アルコールを除去する蒸発器と、
グリセロールからアルキルエステルを分離する相分離器と
を備える装置。
【請求項47】
さらに担体を有し、担体上にはリパーゼが固定されている、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
相分離器によって分離されたアルキルエステルの少なくとも一部を前記入口に入れて前記溶液に添加する帰還機構をさらに有する、請求項46に記載の装置。
【請求項49】
入口および出口と、それらの入口と出口との間に配置された酵素を有するカートリッジを挿入する工程と、
カートリッジ上にコード化された情報を読み取る工程と、
前記情報に基づいてアルキルエステル生成装置の稼動を制御する工程とを含む方法。
【請求項50】
アルキルエステル生成装置の稼動を制御する工程が、カートリッジの入口に流入する溶液の温度および流速の少なくとも一方を制御する工程を含む、請求項49に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−115836(P2006−115836A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−272117(P2005−272117)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(505068158)サンホー バイオディーゼル コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】Sunho Biodiesel Corporation
【Fターム(参考)】