説明

燃料カートリッジ

【課題】 燃料貯蔵体の液体燃料を効率的に排出して、燃料貯蔵体中の残燃料を極力減らすことができ、特に、大容量の燃料貯蔵体を使用した場合でも燃料貯蔵体中の残燃料を減らす効果に優れた燃料カートリッジを提供する。
【解決手段】 燃料貯蔵容器10内に液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体20を収容してなる燃料カートリッジAであって、前記燃料貯蔵体20は、液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体から構成されたことを特徴とする燃料カートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、ノート型パソコン及びPDAなどの携帯用電子機器の電源として用いられる小型の燃料電池用に好適な燃料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、空気電極層、電解質層及び燃料電極層が積層された燃料電池セルと、燃料電極層に還元剤としての燃料を供給するための燃料供給部と、空気電極層に酸化剤としての空気を供給するための空気供給部とからなり、燃料と空気中の酸素とによって燃料電池内で電気化学反応を生じさせ、外部に電力を得るようにした電池であり種々の形式のものが開発されている。
【0003】
近年、環境問題や省エネルギーに対する意識の高まりにより、クリーンなエネルギー源としての燃料電池を、各種用途に用いることが検討されており、特に、メタノールと水を含む液体燃料を直接供給するだけで発電できる燃料電池が注目されてきている(例えば、特許文献1及び2参照)。
これらの中でも、液体燃料の供給に毛細管力を利用したパッシブ型の各液体燃料電池等が知られている(例えば、特許文献3〜9)。
【0004】
これらの各特許文献に記載される液体燃料電池は、燃料タンクから液体燃料を毛細管力で燃料極に供給するため、液体燃料を圧送するためのポンプを必要としないなど小型化に際してメリットがあり、また、多孔体を燃料貯蔵体として使用した場合、多孔体の毛細管力により燃料を保持するため、適正な毛細管力を持つ多孔体を使用すれば、保存向きに関係なく液体燃料を保持することができ、燃料カートリッジとして優れている。
【0005】
しかしながら、多孔体中の液体燃料を全て燃料カートリッジから排出することは困難であり、燃料排出後も液体燃料が多孔体中に残ってしまう点に課題があり、特に、吸蔵量の大きな多孔体を使用した場合、多孔体中に残る液体燃料が多いという課題がある。
また、上記各特許文献に記載される燃料カートリッジにおいて、燃料カートリッジから燃料電池本体の燃料供給体への燃料供給は、カートリッジの「出口」(燃料供給口)部分で中継部材を介して接続するような構造であると、カートリッジの未使用(保管)時には、その部分にキャップ体を被せることとなる。しかしながら、通常のキャップ体を被せるだけの構造であると、キャップ体で覆われる閉空間部内に結露が生じる可能性があり、未使用(保管)時には利用できない燃料がキャップ内に蓄積されてしまうという課題がある。
【特許文献1】特開平5−258760号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平5−307970号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開昭59−66066号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平6−188008号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2003−229158号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特開2003−299946号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】特開2003−340273号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献8】特開2000−268836号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献9】特開2005−216817号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のパッシブ型の燃料電池用の燃料カートリッジにおける課題等に鑑み、これを解消するためになされたものであり、燃料貯蔵体の燃料を積極的に排出し、燃料貯蔵体中の残燃料を極力減らすことができ、特に、大容量の燃料貯蔵体を使用した場合でも燃料貯蔵体中の残燃料を減らす効果に優れた燃料カートリッジを提供することを目的とする。また、燃料カートリッジの未使用(保管)時においてキャップ体を施蓋する構造の燃料カートリッジであっても、キャップ体で覆われる閉空間部内に結露が生じることがなく、保管性、使用性に優れた燃料カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、燃料貯蔵体を特定構造とする燃料カートリッジを用いることにより、上記目的の燃料カートリッジが得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(12)に存する。
(1) 燃料貯蔵容器内に液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体を収容してなる燃料カートリッジであって、前記燃料貯蔵体は、液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体から構成されたことを特徴とする燃料カートリッジ。
(2) 燃料貯蔵容器内に液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体を収容してなる燃料カートリッジであって、前記燃料貯蔵体は、毛細管力が異なる少なくとも2以上の多孔体から構成されると共に、該各多孔体は液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体が連結されていることを特徴とする燃料カートリッジ。
(3) 多孔体の外周部には、不織布からなる外皮が設けられていることを特徴とする上記(2)記載の燃料カートリッジ。
(4) 多孔体には燃料中継部材が挿入されると共に、該燃料中継部材の毛細管力は多孔体の毛細管力よりも高く設定されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(5) 多孔体は、焼結体、発泡体及び繊維束の何れか一つにより構成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(6) 焼結体は、細孔径が5μm〜800μmであり、気孔率が50%〜90%であることを特徴とする上記(5)に記載の燃料カートリッジ。
(7) 発泡体は、細孔径が10μm〜1mmであり、気孔率が50%〜99%であることを特徴とする上記(5)に記載の燃料カートリッジ。
(8) 繊維束は、下記条件(a)〜(d)を充足するものであることを特徴とする上記(5)に記載の燃料カートリッジ。
(a)繊維束の繊維の太さが0.5〜15デニールの単独若しくは混合を収束したもの。
(b)繊維束の繊維のクリンプ率が5%〜30%の単独若しくは混合を収束した繊維束。
(c)繊維束の繊維がフィラメント若しくはスライバーの単体若しくは混合を収束した繊維束。
(d)繊維束の気孔率が50〜97%であるもの。
(9) 燃料カートリッジには、燃料排出口部が設けられると共に、該燃料排出口部にはキャップ体が設けられていることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(10) キャップ体で覆われた燃料排出口の閉空間部が、10cm3以下であることを特徴とする上記(9)に記載の燃料カートリッジ。
(11) キャップ体には、燃料排出口部を封止する封止部と、燃料貯蔵容器の上端周部に着脱自在となる着脱部とを備えたことを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の燃料カートリッジ。
(12) キャップ体には、燃料排出口部を封止する封止部と、燃料貯蔵容器の上端周部に着脱自在となる着脱部と、外気と連通する通気部を備えたことを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の燃料カートリッジ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料貯蔵体の液体燃料を効率的に排出して、燃料貯蔵体中の残燃料を極力減らすことができ、特に、大容量の燃料貯蔵体を使用した場合でも燃料貯蔵体中の残燃料を減らす効果に優れた燃料カートリッジが提供される。
また、請求項10〜12の発明にあっては、燃料カートリッジの未使用(保管)時においてキャップ体を施蓋する構造の燃料カートリッジであっても、キャップで覆われた閉空間部内に結露が生じることがなく、保管性、使用性に優れた燃料カートリッジが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明の燃料カートリッジの第1実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジAは、図1(a)及び(b)に示すように、燃料貯蔵容器10内に液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体20を収容してなるものであって、前記燃料貯蔵体20が液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体から構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
燃料貯蔵容器10には、上部に燃料排出口11が設けられると共に、該燃料排出口11には該燃料排出口11を嵌合等により施蓋するキャップ体12が設けられている。
この燃料貯蔵容器10及びキャップ体12としては、液体燃料を吸蔵する燃料貯蔵体20に対して保存安定性、耐久性、ガス不透過性(酸素ガス、窒素ガス等に対するガス不透過性)があるものから構成されることが好ましく、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属、合成樹脂、ガラスなどが挙げられる。
特に好ましくは、燃料貯蔵容器10及びキャップ体12は、酸素バリア性に優れる樹脂層を少なくとも一層(単層又は2層以上の多層構造)以上有することが望ましい。酸素バリア性に優れる樹脂としては、例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの樹脂は、ガス不透過性、特に酸素バリア性に優れ、しかも、製造や組立時のコスト低減及び製造の容易性の点で特に好ましい。
燃料貯蔵容器10及びキャップ体12が多層構造の場合は、少なくとも1層が、前記した性能(酸素バリア性等)を持つ樹脂で構成されていれば、残りの層は通常の樹脂でも実使用上問題はない。このような構造の燃料貯蔵容器10及びキャップ体12は、押出し成形、射出成形、共押出し成形などにより製造することができる。
【0012】
燃料貯蔵体20は、液体燃料を貯留するために毛細管力を有する多孔体から構成されている。この燃料貯蔵体20は、液体燃料を貯留するために毛細管力が付与されて液体燃料を吸蔵できるものであり、後述するように液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなるものであれば特に限定されず、具体的には、1)樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体などの焼結体、2)フェルトやスポンジなどの発砲体、または、3)天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン径樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組合せからなる繊維束体などにより構成されている。
【0013】
本実施形態の燃料貯蔵体20では、ポリエチレン製の樹脂粒子の焼結体で構成されている。好ましい焼結体としては、細孔径が5μm〜800μmであり、気孔率が50%〜90%であるものが望ましい。焼結体の細孔径が5μm未満であると、毛細管力が非常に強く、燃料を排出しがたくなり、一方、細孔径が800μmを超えると、毛細管力が非常に弱く、実質燃料を保持できなくなり、好ましくない。また、焼結体の気孔率が50%未満であると、焼結体の体積に対する燃料貯蔵量が少なく、一方、気孔率が90%を越えると、毛細管力が非常に弱く、実質燃料を保持できなくなり、好ましくない。
【0014】
この燃料貯蔵体20は、液体燃料の排出を速やかに行うと共に、残燃料を極力なくすために、図1(b)における燃料貯蔵体20内の矢印に示すように、液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向)に毛細管力が強くなるように設定、即ち、毛細管力の勾配が燃料排出口11より遠い方向では毛細管力が弱く、液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向に)側に近くなるほど毛細管力が強くなるように設定されている。本実施形態の焼結体では、燃料供給方向に向かうに従い、粒子径の小さいポリエチレンを充填して焼結させており、燃料供給方向に向かうに従い、毛細管力が高くなるように設計したものである。
なお、燃料貯蔵体20の形状は、特に限定されず、例えば、円柱形状、直方体状、六角柱状とすることができ、本実施形態では直方体状となっている。
【0015】
上記燃料貯蔵体20に吸蔵される液体燃料としては、例えば、メタノールと水とからなるメタノール液が挙げられるが、燃料電池本体の燃料電極体において燃料として供給された化合物から効率良く水素イオン(H+)と電子(e-)が得られるものであれば、液体燃料は特に限定されず、例えば、ジメチルエーテル(DME)、エタノール液、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液、エチレングリコール、水素化ホウ素ナトリウム水溶液、ショ糖水溶液などの液体燃料も用いることができる。
また、これらの液体燃料の濃度は、燃料電池の構造、特性等により種々の濃度の液体燃料を用いることができ、例えば、1〜100%濃度の液体燃料を用いることができる。
【0016】
また、本実施形態では、図1(b)に示すように、燃料カートリッジの未使用(保管)時においてキャップ体12で燃料排出口11を施蓋できる構造であり、キャップ体12で覆われた燃料排出口11の閉空間部11aの体積は、結露を生じさせない点から、好ましくは、10cm3以下であることが望ましく、更に好ましくは、0.1〜5cm3であることが望ましい。
【0017】
このように構成される本実施形態の燃料カートリッジAでは、燃料貯蔵容器10内には燃料貯蔵体20が収容されると共に、液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向)に毛細管力が強くなるように液体燃料が貯蔵される燃料貯蔵体20が収容されているので、燃料電池本体(図示せず)に液体燃料を供給する場合、例えば、棒状の燃料供給部材(図示せず)の一方を燃料貯蔵体20の排出口周辺部20aに挿入し、他方を燃料電池本体の燃料供給口部(図示せず)などに毛管連結(毛細管力的に接触)することにより、燃料貯蔵体20の液体燃料は、燃料供給部材を介して燃料貯蔵体20の液体燃料を効率的に燃料電池本体の燃料供給口部に供給することができることとなる。
なお、燃料供給部材に連結する部分の毛細管力が燃料貯蔵用多孔体の高さ方向の寸法よりも大きく設定されている。これは、上向きで使用する場合、毛細管力で燃料を吸い上げるため、燃料供給部材が接触する部分の毛細管力が、燃料を保持するだけの毛細管力をもっていなければならないため、燃料供給部材が接触する部分の毛細管力は燃料供給部材の高さ方向の寸法よりも大きくなるように設計する必要があるためである。
また、本実施形態では、燃料供給方向にいくに従って毛細管力を強くすることにより、燃料貯蔵体20の毛細管力の弱い部分(遠い部分)の液体燃料を効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を極力減らすことができることとなる。特に、大容量、例えば、液体燃料を20ml以上(〜500ml)吸蔵する燃料貯蔵体を使用した場合でも燃料貯蔵体20中の残燃料を減らす効果に優れた燃料カートリッジが得られることとなる。
また、本実施形態では、図1(b)に示すように、燃料カートリッジの未使用(保管)時においてキャップ体12で燃料排出口11を施蓋できる構造であり、キャップ体12で覆われた燃料排出口11の閉空間部11aの体積を、好ましくは10cm3以下にすれば、キャップ内の閉空間部11aに結露が更に生じることがなく、保管性、使用性に更に優れた燃料カートリッジが得られることとなる。
【0018】
図2は、本発明の燃料カートリッジの第2実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。なお、以下の各実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本実施形態の燃料カートリッジBは、図2(a)及び(b)に示すように、燃料貯蔵容器10内に収容される液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体21が、毛細管力が異なる少なくとも2以上の多孔体、本実施形態では5つの多孔体から構成されると共に、該各多孔体21a〜21eは液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体が連結、具体的には、各多孔体の毛細管力が21a<21b<21c<21d<21eとなるように連結されている点でのみ、上記第1実施形態と異なるものである。
本実施形態において、多孔体同士の連結手段は、各多孔体が毛細管力的に連結していればよく、例えば、多孔体21a〜21e同士を接触させることにより連結することができる。なお、この各多孔体は何個接触していてもよく、接触方向も特に限定されない。
【0019】
各多孔体21a〜21eは、上記第1実施形態と同様に、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体などの焼結体、フェルトやスポンジなどの発砲体、または、繊維束体などにより構成することができ、本実施形態の各多孔体21a〜21eは、ウレタン製の発砲体で構成されている。好ましい発砲体としては、細孔径が10μm〜1mmであり、気孔率が50%〜99%であるものが望ましい。発砲体の細孔径が10μm未満であると、毛細管力が非常に強く、燃料を排出しがたくなり、一方、細孔径が1mmを超えると、毛細管力が非常に弱く、実質燃料を保持できなくなり、好ましくない。また、発砲体の気孔率が50%未満であると、焼結体の体積に対する燃料貯蔵量が少なく、一方、気孔率が99%を越えると、毛細管力が非常に弱く、実質燃料を保持できなくなり、好ましくない。
【0020】
この燃料カートリッジBは、液体燃料の排出を速やかに行うと共に、残燃料を極力なくすために、図2(b)に示すように、各多孔体21a〜21eは液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向)に毛細管力が強くなるように設定、即ち、毛細管力の勾配が燃料排出口11より遠い方向となる多孔体21aでは毛細管力が弱く、液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向に)側に近くなるほど毛細管力が強くなるように設定されているので、上記第1実施形態と同様に、燃料供給方向にいくに従って各多孔体の毛細管力を強くすることにより、燃料貯蔵体20の毛細管力の弱い部分(遠い部分)の多孔体の液体燃料を効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を極力減らすことができることとなる。
上記実施形態では、各多孔体21a〜21eは液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向)に毛細管力が強くなるように設定したものであるが、更に、各多孔体21a〜21e中の個々に液体燃料を供給する方向へ毛細管力が強くなるように毛細管力の強弱(勾配)のある多孔体を使用してもよいものである。
【0021】
図3は、本発明の燃料カートリッジの第3実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジCは、上記第2実施形態の燃料カートリッジにおいて、各多孔体21a〜21eの中央部に更に棒状の燃料中継部材30を最下段の多孔体21aまで挿入した点で、上記第2実施形態の燃料カートリッジBと異なるものである。
燃料中継部材30としては、各多孔体の液体燃料を燃料供給部材に供給できる毛細管力を有する部材であれば、特に限定されず、上述の多孔体と同様に、焼結体、発砲体、繊維束体などにより構成することができ、本実施形態の燃料中継部材30aは、繊維芯から構成されている。
本実施形態では、燃料中継部材30の毛細管力を燃料中継部材30の毛細管力>多孔体21eの毛細管力>………>多孔体21aの毛細管力に設定されており、これにより、更に上記第2実施形態よりも、更に各多孔体21a〜21eの液体燃料を順次効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を更に減らすことができることとなる。
なお、燃料中継部材30の挿入方向は、各多孔体の液体燃料を燃料供給部材に供給できるものであれば、その挿入方向は特に限定されず、各多孔体の側面部であってもよいものである。
【0022】
図4は、本発明の燃料カートリッジの第4実施形態を示すものであり、(a)斜視図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジDは、図4(a)〜(c)に示すように、燃料貯蔵容器10内に収容される液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体21が、毛細管力が異なる並列配置となる多孔体から構成されると共に、該各多孔体22a〜21cは液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体が連結、具体的には、中央部の多孔体22aの毛細管力が22a>両側の多孔体22b,22cの毛細管力となるように連結されている点、及び、各多孔体22a〜21cが天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン径樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの樹脂製繊維の1種又は2種以上の組合せからなる繊維束体、例えば、繊維マット、不織繊維、スライバー芯などの繊維束からなる点で、上記第2実施形態の燃料カートリッジと異なるものである。
なお、上記多孔体22aの両側の多孔体22b,22cの毛細管力は、同一であっても異なっていてもよいものであり、本実施形態では、多孔体22b,22cの毛細管力は同じものを使用している。
【0023】
本実施形態の多孔体22a〜21cは、ユニポイント社製の繊維束(中綿)で構成されている。好ましい繊維束としては、更に下記条件(a)〜(d)を充足するものであるものが望ましい。
(a)繊維束の繊維の太さが0.5〜15デニールの単独若しくは混合を収束したもの。
(b)繊維束の繊維のクリンプ率が5%〜30%の単独若しくは混合を収束したもの。
(c)繊維束の繊維がフィラメント若しくはスライバーの単体若しくは混合を収束したもの。
(d)繊維束の気孔率が50〜97%であるもの。
繊維束の繊維の太さが0.5デニール未満の細い繊維であると、繊維自体の剛性が不足し、毛細管力を維持することができず、一方、15デニールを越える繊維であると、繊維量を増やしても燃料の保持力が増えず、結果として燃料貯蔵量が減少し、好ましくない。
また、繊維のクリンプ率が5%未満の繊維であると、繊維収束体の反発力が弱く、形状を保持することができず、一方繊維のクリンプ率が30%を越えるものであると、反発力が強く、繊維を収束することができないこととなる。
更に、繊維束の繊維をフィラメント(長繊維)とすることで、燃料の保持力が安定し、一方、繊維をスライパー(短繊維)とすることで、燃料の排出性を高めることができることとなる。
更にまた、繊維束の気孔率が50%未満であると、繊維束の体積に対する燃料貯蔵量が少なく、一方、気孔率が97%を越えると、繊維束自体の強度が低下し、形状を保持できなくなり、好ましくない。
【0024】
この燃料カートリッジDは、液体燃料の排出を速やかに行うと共に、残燃料を極力なくすために、図4(b)に示すように、液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向)となる中央部の多孔体22aが両側の多孔体22b、22cよりも毛細管力が強くなるように設定されているので、毛細管力の弱い部分の多孔体22b,22cの液体燃料を効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を極力減らすことができることとなる。
なお、多孔体22aの毛細管力を液体燃料が供給される方向(上部側)へ毛細管力が強くなるように、毛細管力の強弱(勾配)のある多孔体を使用してもよいものである。
【0025】
更に、本実施形態においては、燃料消費率が更に向上せしめ、燃料貯蔵体20中の残燃料を更に減らすために、各多孔体22a〜23cの外周部に、不織布からなる外皮を設けてもよいものである。
不織布としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンなどの厚さ10〜200μmのシート状の不織布などが挙げられる。
各多孔体22a〜22cの外周部に不織布からなる外皮を設ける(巻回)する手段としては、例えば、巻上機にセットしたポリエチレンの不織布と繊維を同一方向で巻管部に挿入し、ヒートシールするなどにより施すことができる。
なお、上記不織布からなる外皮を設けた各多孔体22a〜22cにおいても、中央部の多孔体22aの毛細管力>多孔体22a両側の多孔体22b、22cの毛細管力となるように連結されているものである。
【0026】
図5は、本発明の燃料カートリッジの第5実施形態を示すものであり、(a)斜視図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジEは、上記第4実施形態の燃料カートリッジにおいて、多孔体21aに更に棒状の燃料中継部材30aを上端側から挿入した点でのみ、上記第4実施形態の燃料カートリッジDと異なるものである。
燃料中継部材30aとしては、多孔体の液体燃料を燃料供給部材に供給できる毛細管力を有する部材であれば、特に限定されず、上述の多孔体と同様に、焼結体、発砲体、繊維束体などにより構成することができ、本実施形態の燃料中継部材30は、繊維芯から構成されている。
本実施形態では、燃料中継部材30aの毛細管力を燃料中継部材30aの毛細管力>燃料供給方向に近い多孔体22aの毛細管力>多孔体22b、22cの共に同じ毛細管力に設定されており、これにより、更に上記第4実施形態よりも、更に各多孔体の液体燃料を効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を更に減らすことができることとなる。
また、燃料中継部材30aの挿入長さは、多孔体23aの長さの0.8〜1.0(多孔体23aの長さと同じ)とすることが好ましい。
【0027】
図6は、本発明の燃料カートリッジの第6実施形態を示すものであり、(a)横断面図、(b)は縦断面図、(c)は斜視図である。
本実施形態の燃料カートリッジFは、図6(a)〜(c)に示すように、六角柱形状の燃料貯蔵容器10a内に収容される液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体が、毛細管力が異なる6つの多孔体から構成されると共に、該各多孔体23a〜23gは液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体が連結、具体的には、中央部の多孔体23aの毛細管力>多孔体23a周囲の多孔体23b〜23gの毛細管力となるように連結されている点で、上記第5実施形態の燃料カートリッジEと異なるものである。
なお、上記多孔体23aの周囲の多孔体23b〜23gの毛細管力は、同一であっても異なっていてもよく、本実施形態では、多孔体23b〜23gの毛細管力は同じものを使用しているものである。
【0028】
本実施形態の多孔体23a〜23gは、ユニポイント社製の上記条件(a)〜(d)を充足する繊維束で構成されている。
この燃料カートリッジFでは、液体燃料の排出を速やかに行うと共に、残燃料を極力なくすために、図6(a)及び(b)に示すように、液体燃料を供給する方向(燃料排出口11方向)となる中央部の多孔体22aが周囲の多孔体23b〜23gよりも毛細管力が強くなるように設定されているので、毛細管力の弱い部分の多孔体23b〜23gの液体燃料を効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を極力減らすことができることとなる。
なお、上記第4実施形態で詳述したように、多孔体32aの毛細管力を液体燃料が供給される方向(上部側)へ毛細管力が強くなるように、毛細管力の強弱(勾配)のある多孔体を使用してもよいものである。
【0029】
図7は、本発明の燃料カートリッジの第7実施形態を示すものであり、(a)横断面図、(b)は縦断面図、(c)は斜視図である。
本実施形態の燃料カートリッジGは、上記第6実施形態の燃料カートリッジにおいて、六角柱形状の燃料貯蔵容器10a内に収容される液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体が、毛細管力が異なる6つの多孔体から構成されると共に、該各多孔体24a〜24gは液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体が連結、具体的には、図7(a)及び(b)に示すように、右隅部の多孔体24aの毛細管力>多孔体24a以外の多孔体24b〜24gの毛細管力となるように連結されている点で、上記第6実施形態の燃料カートリッジと異なるものである。
本実施形態では、燃料中継部材30の毛細管力を燃料中継部材30bの毛細管力>燃料供給方向に近い多孔体23aの毛細管力>多孔体23b,23c,23dの共に同じ毛細管力>多孔体23e,23f,23gの共に同じ毛細管力に設定されており、これにより、上記第6実施形態と同様に、多孔体23e,23f,23gの液体燃料を多孔体23b,23c,23dの強い毛細管力で効率よく吸い出し、更に順次多孔体23a、燃料中継部材30の毛細管力で効率よく液体燃料を吸いだすことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を更に減らすことができることとなる。
【0030】
図8は、本発明の燃料カートリッジの第8実施形態を示すものであり、(a)斜視図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジHは、上記第5実施形態の燃料カートリッジにおいて、燃料供給方向が図面上で右側上端部に設けた点、燃料中継部材30aを挿入方向が右上端側から挿入した点、燃料中継部材30の毛細管力を燃料中継部材30aの毛細管力>燃料供給方向に近き多孔体22cの毛細管力>多孔体22aの毛細管力>多孔体22bの毛細管力に設定されている点で、上記第5実施形態の燃料カートリッジEと異なるものである。
本実施形態では、燃料中継部材30aの毛細管力を燃料中継部材30aの毛細管力>燃料供給方向に近き多孔体22cの毛細管力>多孔体22aの毛細管力>多孔体22bの毛細管力に設定されており、これにより、順次多孔体22b、多孔体22a、多孔体22c、燃料中継部材30aへと液体燃料を効率よく吸い出すことができるため、燃料消費率が更に向上し、燃料貯蔵体20中の残燃料を更に減らすことができることとなる。
【0031】
図9は、本発明の燃料カートリッジの第9実施形態を示すものであり、(a)平面図、(b)は縦断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジIは、上記第7実施形態の燃料カートリッジGにおいて、キャップ体12が、燃料排出口部11を嵌合により封止する環状の封止部12aと、排出口11を補強する隔壁となる楕円状の補強リブ部12bと、燃料貯蔵容器10の上端外縁部に嵌合する嵌合部12cとを備えた点で、上記第7実施形態の燃料カートリッジGと異なるものである。
本実施形態では、燃料カートリッジの未使用(保管)時においてキャップ体12を施蓋する構造において、キャップ体12が、燃料排出口部11を嵌合により封止する封止部12aと、キャップ体12の耐久性を更に向上させる補強リブ部12bと、燃料貯蔵容器10の上端外縁部に嵌合する嵌合部12cとを備えると共に、キャップ体12内での密封空間周囲に空気層を形成させることにより、結露の生じにくい、未使用(保管)時における、保管性、耐久性に更に優れた燃料カートリッジが得られることとなる。
【0032】
図10は、本発明の燃料カートリッジの第10実施形態を示すものであり、(a)平面図、(b)は縦断面図である。
本実施形態の燃料カートリッジJは、上記第6実施形態の燃料カートリッジFにおいて、キャップ体12が、燃料排出口部11を嵌合により封止する封止部12dと、排出口11を補強する隔壁となる環状の補強リブ部12eと、燃料貯蔵容器10の上端外縁部に嵌合する嵌合部12fと、上記補強リブ部12eと嵌合部12fとを所定間隔毎に継手する継手部12g、12g…と、継手部12g、12g…間に設けられる通気部12h、12h…を備えた点で、上記第6実施形態の燃料カートリッジFと異なるものである。
本実施形態では、燃料カートリッジの未使用(保管)時においてキャップ体12を施蓋する構造において、キャップ体12が、燃料排出口部11を嵌合により封止する封止部12dと、排出口11を補強する環状の補強リブ部12eと、燃料貯蔵容器10の上端外縁部に嵌合する嵌合部12fと、上記補強リブ部12eと嵌合部12fとを所定間隔毎に継手する継手部12g、12g…と、継手部12g、12g…間に設けられる通気部12h、12h…を備えたことにより、未使用(保管)時における、保管性、耐久性に優れると共に、キャップ体12内での密封空間を極力無くすことによりキャップ内の内部圧力の上昇を回避すると共に、誤飲した場合の喉での通気性を確保することができる安全なキャップ体を備えた燃料カートリッジが得られることとなる。
【0033】
本発明の燃料カートリッジは、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができるものである。
例えば、燃料カートリッジの形状を、断面がL字型、T字型、ロの字型などの異形断面であってもよい。
また、燃料カートリッジを接合する燃料電池本体の設計上の都合により、細長いチューブ状の形や、球形としたり、係合部を設けた形状としてもよいものである。
更に、意匠上の要請により、ハート型、注射型、乾電池型、リング型としてもよいものである。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記表1に実施例1〜8及び比較例1〜7で用いた各多孔体の大きさ、物性(気孔率、毛細管力)等を示し、下記表2に実施例1〜8及び比較例1〜7の燃料カートリッジにおける燃料消費率を示す。
【0035】
〔実施例1、図1準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
ポリエチレン粒子の焼結体を用いた。ポリエチレン粒子焼結体(下記表1の多孔体No.13)は、燃料供給方向に向かうに従い、粒子径の小さいポリエチレンを充填して焼結させており、燃料供給方向に向かうに従い、毛細管力が高くなるように設計したものである。
内寸法φ60mm、高さ25mmのPP製燃料カートリッジに多孔体を挿入した。多孔体はφ60mm、高さ25mm、容量45mlである。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては、繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料貯蔵用多孔体の毛細管力の強い部分に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:80%であった。なお、燃料消費率は、
で算出した(以下、同様)。
【0036】
〔実施例2、図2準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
ウレタン樹脂の発泡体を用いた。ウレタン樹脂発泡体を、下記表1のNo.5、4、3、2、1の順番で下から積み上げ、内寸法φ60mm、高さ25mmのPP製燃料カートリッジに挿入した。各発泡体のサイズは、φ60mm、高さ5mm。
燃料貯蔵体全体としては、φ60mm、高さ25mm、容量60ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を多孔体1に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:80%。
【0037】
〔実施例3、図3準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
ウレタン樹脂の発泡体を用いた。ウレタン樹脂発泡体を、下記表1のNo.5、4、3、2、1の順番で下から積み上げ、内寸法φ60mm、高さ25mmのPP製燃料カートリッジに挿入した。各発泡体のφ60の中心部分にφ4の孔を開け、φ5の繊維芯(下記表1の多孔体No10)を挿入した。
No.1〜5の発泡体はそれぞれ、φ60mm、高さ5mm。
燃料貯蔵体全体としては、φ60mm、高さ25mm、容量60ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材である多孔体No.10に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:95%。
【0038】
〔実施例4、図4準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
外皮を不織布で作成した表1の多孔体No.6、7の繊維束(中綿)を、幅37mm、奥行き13mm、高さ100mmのPP容器中に、No.7,6,7の順番で不織布同士が接触するように挿入した。中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
燃料貯蔵体の容量は30ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を多孔体No.6の上面に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:85%。
【0039】
〔実施例5、図5準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
外皮を不織布で作成した下記表1の多孔体No.6、7の繊維束(中綿)をNo.7,6,7の順番で不織布同士を接触させ、幅37mm、奥行き13mm、高さ100mmのPP容器中に挿入した。
多孔体No.11の多孔体No.6からの出寸法は5mmである。中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
燃料貯蔵体の容量は30ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材であるNo.11に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:88%。
【0040】
〔実施例6、図6準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
多孔体6の繊維束(中綿)の周りに、多孔体7の中綿を最密に6個隣接させ、断面の内径が1辺17mmの正6角径であり、内部の長さが100mmのPP容器に入れた。多孔体6の中央に燃料中継部材として、多孔体11を多孔体6の円の中心部分に出寸法が5mmになるまで挿入した。中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
燃料貯蔵体の容量は70ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材であるNo.11に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:80%。
【0041】
〔実施例7、図7準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
下記表1の多孔体6、多孔体7、多孔体8を、図7のように、不織布部分を接触させ、断面の内径が1辺17mmの正6角径であり、内部の長さが100mmのPP容器に入れた。多孔体6の中央に燃料中継部材として、多孔体11を多孔体6の円の中心部分に出寸法が5mmになるまで挿入した。中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
多孔体6の容量は5ml。多孔体7の容量は5.1ml、多孔体8の容量は5.2ml。
燃料貯蔵体の容量は70ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材であるNo.11に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:78%。
【0042】
〔実施例8、図8準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
外皮を不織布で作成した下記表1の多孔体No.6、7の中綿を、幅37mm、奥行き13mm、高さ100mmのPP容器中に、No.6,7,8の順番で不織布同士が接触するように挿入した。
多孔体No.12を多孔体6側面に差し込んだ。中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
多孔体6の容量は5ml。多孔体7の容量は5.1ml、多孔体7の容量は5.2ml。燃料貯蔵体の容量は30ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を多孔体No.12の端面に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:80%。
【0043】
〔比較例1、図1準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
ポリエチレン粒子の焼結体を用いた。ポリエチレン粒子焼結体下記表1のNo.14は均一な粒子径のポリエチレンを充填して焼結させており、細孔径はほぼ均一である。
内寸法φ60mm、高さ25mmのPP製燃料カートリッジに多孔体を挿入した。多孔体はφ60mm、高さ25mm。容量45ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料貯蔵用多孔体の毛細管力の強い部分に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:50%であった。
【0044】
〔比較例2、図2準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔
下記表1の多孔体No.2、ウレタン樹脂発泡体を5枚重ね、燃料貯蔵体とした。
燃料貯蔵体の容量は60ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料貯蔵用多孔体の毛細管力の強い部分に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:20%。
【0045】
〔比較例3、図3準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
下記表1の多孔体No.2、ウレタン樹脂発泡体を5枚重ね、燃料貯蔵体とした。
多孔体2の端面中央に、燃料中継部材として、多孔体12を出寸法が5mmになるまで挿入した。
燃料貯蔵体の容量は60ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯多孔体No.12の端面に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:20%。
【0046】
〔比較例4、図5準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
外皮を不織布で作成した多孔体No.6を幅37mm、奥行き13mm、高さ100mmのPP容器中に3本不織布同士が接触するように入れた。下記表1多孔体No.11を多孔体6中に刺した。
多孔体No.13の多孔体No.6からの出寸法は5mmである。
中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
燃料貯蔵体の容量は30ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材であるNo.11に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:65%。
【0047】
〔比較例5、図6準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
多孔体6の中綿の周りに、多孔体6の中綿を最密に6個隣接させ、断面の内径が1辺17mmの正6角径であり、内部の長さが100mmのPP容器に入れた。多孔体6の中央に燃料中継部材として、多孔体11を多孔体6の円の中心部分に出寸法が5mmになるまで挿入した。中綿は圧入されているため、中綿側面が潰れ、不織布同士は面で接触している。
燃料貯蔵体の容量は70ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材であるNo.11に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:80%。
【0048】
〔比較例6、図11準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
多孔体No.6の中綿を燃料貯蔵体とした。
燃料貯蔵体の容量は11.5ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料貯蔵用多孔体の毛細管力の強い部分に接触させ、PERISTA PUMP(アトー社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:65%。
【0049】
〔比較例7、図12準拠〕
(1)燃料貯蔵用多孔体
下記表1の多孔体No.6の中綿を燃料貯蔵体とした。中綿N0.6の端面中央に、燃料中継部材として、多孔体12を出寸法が5mmになるまで挿入した。
燃料貯蔵体の容量は11.5ml。
(2)燃料供給に関して
燃料としては、50%メタノール水溶液を用いた。
燃料供給部材としては繊維芯(テイボー社製:EF−220N)を用いた。繊維芯をシリコンチューブに連結させ、繊維芯を燃料中継部材であるNo.12の多孔体に接触させ、PERISTA PUMP(アト−社製)で0.5ml/1minの条件で燃料を供給した。
(3)燃料消費率:65%。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
上記表1及び表2に示すように、本発明範囲となる実施例1〜8は、本発明の範囲外となる比較例1〜7に較べて、燃料貯蔵体の燃料を積極的に排出し、燃料貯蔵体中の残燃料を極力減らすことができ、特に、大容量の燃料貯蔵体を使用した場合でも燃料貯蔵体中の残燃料を減らす効果に優れた燃料カートリッジとなることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の燃料カートリッジの第1実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図2】本発明の燃料カートリッジの第2実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図3】本発明の燃料カートリッジの第3実施形態を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図4】本発明の燃料カートリッジの第4実施形態を示すものであり、(a)斜視図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
【図5】本発明の燃料カートリッジの第5実施形態を示すものであり、(a)斜視図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
【図6】本発明の燃料カートリッジの第6実施形態を示すものであり、(a)横断面図、(b)は縦断面図、(c)は斜視図である。
【図7】本発明の燃料カートリッジの第7実施形態を示すものであり、(a)横断面図、(b)は縦断面図、(c)は斜視図である。
【図8】本発明の燃料カートリッジの第8実施形態を示すものであり、(a)斜視図、(b)は縦断面図、(c)は横断面図である。
【図9】本発明の燃料カートリッジの第9実施形態を示すものであり、(a)平面図、(b)は縦断面図である。
【図10】本発明の燃料カートリッジの第10実施形態を示すものであり、(a)平面図、(b)は縦断面図である。
【図11】比較例6の燃料カートリッジの縦断面図である。
【図12】比較例7の燃料カートリッジの縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
A 液体燃料カートリッジ
10 燃料貯蔵容器
11 燃料排出口
12 キャップ体
20 燃料貯蔵体(多孔体)
30 燃料中継部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料貯蔵容器内に液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体を収容してなる燃料カートリッジであって、前記燃料貯蔵体は、液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体から構成されたことを特徴とする燃料カートリッジ。
【請求項2】
燃料貯蔵容器内に液体燃料を吸蔵する毛細管力を有する燃料貯蔵体を収容してなる燃料カートリッジであって、前記燃料貯蔵体は、毛細管力が異なる少なくとも2以上の多孔体から構成されると共に、該各多孔体は液体燃料を供給する方向に毛細管力が強くなる多孔体が連結されていることを特徴とする燃料カートリッジ。
【請求項3】
多孔体の外周部には、不織布からなる外皮が設けられていることを特徴とする請求項2記載の燃料カートリッジ。
【請求項4】
多孔体には燃料中継部材が挿入されると共に、該燃料中継部材の毛細管力は多孔体の毛細管力よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項5】
多孔体は、焼結体、発泡体及び繊維束の何れか一つにより構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項6】
焼結体は、細孔径が5μm〜800μmであり、気孔率が50%〜90%であることを特徴とする請求項5に記載の燃料カートリッジ。
【請求項7】
発泡体は、細孔径が10μm〜1mmであり、気孔率が50%〜99%であることを特徴とする請求項5に記載の燃料カートリッジ。
【請求項8】
繊維束は、下記条件(a)〜(d)を充足するものであることを特徴とする請求項5に記載の燃料カートリッジ。
(a)繊維束の繊維の太さが0.5〜15デニールの単独若しくは混合を収束したもの。
(b)繊維束の繊維のクリンプ率が5%〜30%の単独若しくは混合を収束したもの。
(c)繊維束の繊維がフィラメント若しくはスライバーの単体若しくは混合を収束したもの。
(d)繊維束の気孔率が50〜97%であるもの。
【請求項9】
燃料カートリッジには、燃料排出口部が設けられると共に、該燃料排出口部にはキャップ体が設けられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項10】
キャップ体で覆われた燃料排出口の閉空間部が、10cm3以下であることを特徴とする請求項9に記載の燃料カートリッジ。
【請求項11】
キャップ体には、燃料排出口部を封止する封止部と、燃料貯蔵容器の上端周部に着脱自在となる着脱部とを備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の燃料カートリッジ。
【請求項12】
キャップ体には、燃料排出口部を封止する封止部と、燃料貯蔵容器の上端周部に着脱自在となる着脱部と、外気と連通する通気部を備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の燃料カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−97831(P2008−97831A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274341(P2006−274341)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】