説明

燃料ガスの燃焼制御方法

【課題】コークス炉、高炉、転炉等から回収され、湿分を含む副生ガスを燃焼させる場合に好適な燃料ガスの燃焼制御方法を提供する。
【解決手段】燃料ガス量、好適には副生ガス、から、前記燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる湿分を減じて実質燃料ガス量とし、当該実質燃料ガス量に対して理論空気量を求める。好ましくは、燃料ガス中の湿分は、燃焼炉周辺の大気温度を用いて求めた飽和水蒸気量とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスの燃焼制御方法に関し、コークス炉、高炉、転炉等から回収され、湿分を含む副生ガスを燃焼させる場合に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
LPG、LNG等の燃料ガスを燃焼させる場合、最適燃焼が得られるように空燃比(空気と燃料の割合)を設定する。燃料ガス1Nmを完全燃焼させる場合、理論酸素量を更に空気換算して求めた理論空気量TNmの割合を空気比1(理論空気比)とし、実際には更に過剰の空気を加えて空気比1.1〜1.2で燃焼が行われている。
【0003】
燃焼制御においては理論空気量と、理論空気量に過剰空気量を足した供給空気量の比である、空気比を適宜設定し完全燃焼させるが、その場合、燃料ガス中に含まれる湿分も含めて空気比の設定がなされている。LPG、LNG等では燃料ガス中に含まれる湿分が極めて低いことからその影響は少ない。
【0004】
しかし、製鉄所やごみ処理場などから発生する副生ガスを燃料ガスに用いる場合は、ガス中に含まれる湿分が多く、見掛けの流量に対して実際の燃料ガス量は少ないことから、見掛けの流量を基に燃焼制御を行うと過剰空気燃焼となり燃焼効率が低下する。
【0005】
燃料ガスから湿分を除去する為には冷却、再加熱のプロセスが必要で、製鉄所のような大規模な製造所の場合は、設備的負荷が大きく、湿分除去は実施されていない事が多い。
【0006】
特許文献1は燃焼制御における湿分補正に関し、ボイラー等の工業炉の燃焼制御で、空気と同じ機能を有する助燃ガスである酸素の湿り酸素濃度を乾き酸素濃度とする湿分補正をして最適燃焼化を達成することが記載されている。
【特許文献1】特開平3−87513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、製鉄所において、夏場は、放散熱が少なく燃料、空気、被加熱体の顕熱が大きいことから燃料使用量が少なくなるものと想定されるところ、燃料ガスの使用量が冬場に少なく夏場に多い加熱炉等の燃焼設備が多く見られ、夏場に対応する適切な燃焼制御により、燃料ガスの使用量を削減することが要望されている。
【0008】
図3は、製鉄所における加熱炉の年間を通じた燃料使用量を示し、7月から10月の夏場の燃料使用量は、11月から3月の冬場の燃料使用量より多くなっている。尚、年間を通じて各月ごとの熱処理量はほぼ一定で、夏場の燃焼効率が低下していることが認められる。図4に、同じ加熱炉での燃料使用量を大気温(℃)で整理した結果を示す。
【0009】
そこで、本発明は、製鉄所などで使用される、副生ガスを、年間を通じて燃焼効率良く燃焼させる燃焼制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は以下の手段で達成可能である。
1.燃焼炉における燃料ガスの燃焼制御方法であって、燃料ガス量から、前記燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる湿分を減じて実質燃料ガス量とし、当該実質燃料ガス量に対して求めた理論空気量を用いて燃焼制御を行うことを特徴とする燃料ガスの燃焼制御方法。
2.1記載の燃料ガスの燃焼制御方法において、燃料ガス中の湿分を、燃焼炉周辺の大気温度を用いて求めた飽和水蒸気量とすることを特徴とする燃料ガスの燃焼制御方法。
3.燃料ガスが副生ガスであることを特徴とする1または2記載の燃料ガスの燃焼制御方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、副生ガスを燃料ガスとする製鉄所の工業炉の燃焼制御において年間を通じて適切な燃焼制御が可能となり、夏場の燃料ガスの使用量が、冬場より多くなることが防止され、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、副生ガスなど湿分を含むガスを燃料ガスとする燃焼炉の燃焼制御において、燃料ガス量から湿分を減じて実質燃料ガス量とし、当該実質燃料ガス量に対して空気量の設定を行うことを特徴とする。
【0013】
燃焼炉では、目標温度になるように燃焼負荷が自動調整され、燃料ガスの流量に対して空気の流量が比例計算されている。
【0014】
以下に、本発明を実施例を用いて説明する。図2は、加熱炉1の燃焼制御フローの一例を示し、加熱炉1の炉温を炉温計T1で計測して温度調節計(TIC1)3に入力し、目標炉温の達成に必要な目標燃料ガス量を燃料ガス流量調節計(FIC2)4により制御する。
【0015】
目標炉温にするように(TIC1)3からの出力に基づき燃料ガス流量センサ9が検出する燃料ガス流量が前記目標燃料ガス流量に一致するように燃料ガス流量調節計(FIC2)4の出力に基づき燃料ガス流量調節弁6を調整する。本発明に係る燃焼制御方法では、当該燃料ガス中の湿分を補正して空気量を設定することを特徴とする。
【0016】
空気量の設定は演算制御器5により以下のように計算を行う。まず、燃料ガス温度を炉周辺の大気温度T2とみなして、当該大気温度T2における飽和水蒸気量を湿分量とし、燃料ガス流量センサ9が検出する燃料ガス量から前記湿分量を減じて実質燃料ガス量とし、前記実質燃料ガス量に対して理論空気量を求める。
【0017】
演算制御器5で求めた前記理論空気量と、前記理論空気量に過剰空気量を足した供給空気量の比である空気比を比率設定器(R1)11で所望の値に設定し、空気流量センサ8で検出される供給空気量が、設定された前記空気比を満足する供給空気量になるように供給空気流量調節計(FIC3)10で空気流量調節弁7を調整する。
【0018】
図1は、燃料ガスとして用いる副生ガスの構成を説明する図で、ある測定流量の副生ガス(燃料ガス)Gは、実質燃料ガス(実ガスG´)、湿分(水蒸気分)および温度補正による膨張分の和とされ、湿分(水蒸気分)は副生ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる。
【0019】
但し、夏場など、副生ガスが、発生源のコークス炉等から燃焼炉1へ、地表に敷設された鋼製ガス管で流送される等副生ガスが加熱される場合、副生ガスが高温となってもガス管内では水分は補給されないので副生ガス中の湿分が飽和状態とならない場合も生じる。
【0020】
図5はガス中の湿分量(飽和水蒸気量)とガス温度との関係を示し、ガス温度が高温となるとガス中の湿分量(飽和水蒸気量)も増加する。夏場において、地表に敷設された鋼製ガス管で流送された副生ガスを燃焼炉で燃焼させる場合、副生ガスは鋼製ガス管内で太陽熱により加熱されて生成時より高温となり、一方、鋼製ガス管内では水分は補給されない状態となる。
【0021】
このような場合、副生ガス中の湿分を、鋼製ガス管内での副生ガスの温度における飽和水蒸気量とすると、実際より多い値となる。
【0022】
例えば、20℃で生成された副生ガスが、鋼製ガス管内で40℃に加熱されると、飽和水蒸気量は、見掛け上、5.3%上昇することになる。実際には水分は補給されないので、40℃に加熱された副生ガス中の飽和水蒸気量は20℃での値のままである。
【0023】
従って、夏場に副生ガス中の実質燃料ガス量を副生ガスの測定流量から飽和水蒸気量を減じて求める場合、副生ガスの生成時の温度、例えば、燃焼炉周辺の大気温度、における飽和水蒸気量を用いると、より適切な燃焼制御が可能となり好ましい。副生ガスとしては製鉄所で発生する高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガスやその混合ガスやごみ焼却炉からの発生するガス等が挙げられる。
【0024】
以上の説明は燃料ガスを副生ガスとして説明を行ったが、本発明は湿分を含む燃料ガスであれば作用効果が得られ、燃料ガスを副生ガスに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】副生ガス(燃料ガス)の一構成を示す図。
【図2】本発明における加熱炉の燃焼制御フロー図。
【図3】年間の燃料使用量の変化を示す図。
【図4】燃料使用量に及ぼす大気温の影響を示す図。
【図5】飽和水蒸気量と大気温の関係を示す図。
【符号の説明】
【0026】
1 加熱炉
3 温度調節計(TIC1)
4 燃料ガス流量調節計(FIC2)
5 演算制御器
6 燃料ガス流量調節弁
7 空気流量調節弁
8 空気流量センサ
9 燃料ガス流量センサ
10 供給空気流量調節計
11 空気比の比率設定器(R1)
T1 炉温計
T2 大気温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉における燃料ガスの燃焼制御方法であって、燃料ガス量から、前記燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる湿分を減じて実質燃料ガス量とし、当該実質燃料ガス量に対して求めた理論空気量を用いて燃焼制御を行うことを特徴とする燃料ガスの燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の燃料ガスの燃焼制御方法において、燃料ガス中の湿分を、燃焼炉周辺の大気温度を用いて求めた飽和水蒸気量とすることを特徴とする燃料ガスの燃焼制御方法。
【請求項3】
燃料ガスが副生ガスであることを特徴とする請求項1または2記載の燃料ガスの燃焼制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−68774(P2009−68774A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238141(P2007−238141)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】