説明

燃料ガスタンク固定システム

【課題】遮蔽カバー及び燃料ガスタンクの位置ずれを防止する燃料ガスタンク固定システムを提供することを目的とする。
【解決手段】車両に搭載される燃料ガスタンク14の周囲に取り付けられた遮蔽カバー10と、燃料ガスタンク14に取り付けられた遮蔽カバー10を前記車両のアンダーボディ26から吊す固定バンド12と、を備え、固定バンド12は、遮蔽カバー10を上方に押圧して、遮蔽カバー10及び燃料ガスタンク14を前記車両に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスタンクを車両に固定するための燃料ガスタンク固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮天然ガスタンクを備える天然ガス車両や水素貯蔵タンクを備える燃料電池車等における燃料ガスタンクは、一般に、専用の取り付け部材によって車両の底部の所定位置に固定される。そして、燃料ガスタンクの周囲は、火災や走行時の飛び石等から燃料ガスタンクを保護するために、耐熱性の遮蔽カバーで覆われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−137233号公報
【特許文献2】特開2003−200742号公報
【特許文献3】特開2002−370550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料ガスタンクと遮蔽カバーが別々に車両に固定されていると、車両の衝突等による衝撃が加わった際に、遮蔽カバーの位置や燃料ガスタンクの位置がずれて、燃料ガスタンクが遮蔽カバーから露出する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、遮蔽カバー及び燃料ガスタンクの位置ずれを防止する燃料ガスタンク固定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料ガスタンク固定システムは、車両に搭載される燃料ガスタンクの周囲に取り付けられた遮蔽カバーと、前記燃料ガスタンクに取り付けられた遮蔽カバーを前記車両から吊す固定バンド部材と、を備え、前記固定バンド部材は、前記遮蔽カバーを上方に押圧して、前記遮蔽カバー及び前記燃料ガスタンクを前記車両に固定する。
【0007】
また、前記燃料ガスタンク固定システムにおいて、前記固定バンド部材は、前記遮蔽カバーの外周の周方向に沿って形成される溝部に配置されることが好ましい。
【0008】
また、前記燃料ガスタンク固定システムにおいて、前記遮蔽カバーと前記燃料ガスタンクとの間に衝撃吸収材を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮蔽カバー及び燃料ガスタンクの位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムの構成の一例を示す模式斜視図である。
【図2】本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムの構成の一例を示す模式底面図である。
【図3】本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムを車両の底部に取り付けた状態を示す模式断面図である。
【図4】図3のA−A線における燃料ガスタンク固定システムの模式断面図である。
【図5】図3のB−B線における燃料ガスタンク固定システムの模式断面図である。
【図6】本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムを車両の底部に取り付けた状態の他の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムの構成の一例を示す模式斜視図であり、図2は、本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムの構成の一例を示す模式底面図である。また、図3は、本実施形態に係る燃料ガスタンク固定システムを車両の底部に取り付けた状態を示す模式断面図であり、図4は、図3のA−A線における燃料ガスタンク固定システムの模式断面図であり、図5は、図3のB−B線における燃料ガスタンク固定システムの模式断面図である。
【0013】
図1に示すように、燃料ガスタンク固定システム1は、遮蔽カバー10と、固定バンド12と、を備える。遮蔽カバー10は、主に車両火災等の炎や走行時の飛び石等から燃料ガスタンク14を保護するためのものであり、図1及び図3に示すように、遮蔽カバー10の内部に形成された収納空間に、燃料ガスタンク14を収納することができる構造になっている。なお、本実施形態の遮蔽カバー10は、上方が開口しており、開口部には外方に突出するリブ16が形成されているが、遮蔽カバー10の形状は特に制限されるものではない。また、遮蔽カバー10は、耐熱性を有する材料から構成され、例えば、ステンレス鋼等の金属板、耐熱性の樹脂板等が挙げられる。
【0014】
通常、燃料ガスタンク14には圧力開放装置18(PRD:Pressure Relief Device)が設けられているが、図2及び図3に示すように、圧力開放装置18は、遮蔽カバー10の外部に配置されることが望ましい。圧力開放装置18は、車両の火災時等に燃料ガスタンク14の破裂を防止するために作動して、燃料ガスタンク14内の燃料ガスを大気中に放出させる機能を有するものである。すなわち、圧力開放装置18を遮蔽カバー10の外部に配置することにより、圧力開放装置18の作動時には、速やかに燃料ガスを大気中に放出させることが可能となる。
【0015】
固定バンド12は、例えば、柔軟性を有する金属板等を帯状に形成したものやゴムバンド等である。図1及び図2に示すように、固定バンド12の両端には、固定部20が設けられおり、固定部20には貫通孔22が形成されている。本実施形態では、2つの固定バンド12が、遮蔽カバー10の外周を支持するように、互いに間隔を開けて配設されている。そして、図5に示すように、固定部20に形成された貫通孔22には、下側から取付ボルト24が挿通され、この取付ボルト24を車両のアンダーボディ26に設けられた図示しないナット部へねじ込むことにより、遮蔽カバー10を上方に押圧して、遮蔽カバー10及び燃料ガスタンク14を車両のアンダーボディ26に固定することができる。
【0016】
このように、固定バンド12により遮蔽カバー10を上方に押圧して遮蔽カバー10及び燃料ガスタンク14をアンダーボディ26に固定することにより、すなわち、固定バンド12と燃料ガスタンク14との間に遮蔽カバー10を挟んで、燃料ガスタンク14及び遮蔽カバー10をアンダーボディ26に固定することにより、車両や遮蔽カバー10等に衝撃が加わった場合でも、遮蔽カバー10と燃料ガスタンク14との位置ズレ及び遮蔽カバー10の単独落下等を防止することができる。したがって、衝撃が加わっても、遮蔽カバー10から燃料ガスタンク14の露出が防止され、遮蔽カバー10により燃料ガスタンク14を安全に保護することができる。
【0017】
本実施形態では、複数の固定バンド12により、遮蔽カバー10及び燃料ガスタンク14を車両のアンダーボディ26に固定しているが、固定バンド12の数は特に制限されるものではない。
【0018】
本実施形態では、燃料ガスタンク14を車両のアンダーボディ26に固定した時に、燃料ガスタンク14を車両のアンダーボディ26に直接接触させてもよいが、図3に示すように、燃料ガスタンク14の両端の外周にゴムパッド30を取り付け、ゴムパッド30を車両のアンダーボディ26(及び遮蔽カバー10)に接触させ、燃料ガスタンク14を固定することが望ましい。燃料ガスタンク14を車両のアンダーボディ26に直接接触させると、車両の衝突時等に加わる衝撃が、直接燃料ガスタンク14に加わるが、ゴムパッド30を設置することにより、燃料ガスタンク14に加わる衝撃が緩和され、燃料ガスタンク14の損傷を防止することが可能となる。
【0019】
図3に示すように、固定バンド12は遮蔽カバー10の外周の周方向に沿って設けられた溝部28に配置され、遮蔽カバー10を支持する(吊す)ことが望ましい。これにより、固定バンド12による遮蔽カバー10の固定力を向上させることができ、車両等に衝撃が加わった場合でも、遮蔽カバー10の位置ずれを効果的に防止することができる。図3に示すように、溝部28は、遮蔽カバー10の内側に突出するように成形してもよいし、また、例えば、遮蔽カバー10の溝部28に相当する箇所を削ること等により成形してもよい。なお固定バンド12と遮蔽カバー10とはボルト等によって固定してもよい。
【0020】
本実施形態では、車両や遮蔽カバー10等に衝撃が加わった場合でも、遮蔽カバー10の変形を抑制することができる観点から、遮蔽カバー10と燃料ガスタンク14との間に、ゴムやウレタン等の弾性材からなる衝撃吸収材32を設置することが好ましい。例えば、図3〜図5に示すように、衝撃吸収材32は、溝部28の成形によって遮蔽カバー10の内側に形成された突出部間の空間に設置される。この突出部間の空間は、断面視円弧状になっており、図4及び図5に示すように、その空間部に衝撃吸収材32が充填されている。このように、遮蔽カバー10と燃料ガスタンク14との間に衝撃吸収材32を設置することにより、車両や遮蔽カバー10等に衝撃が加わった場合でも、遮蔽カバー10の変形を抑制することができるため、遮蔽カバー10の変形による燃料ガスタンク14の損傷を抑制することが可能となる。また、遮蔽カバー10が変形した場合でも、遮蔽カバー10が燃料ガスタンク14に直接接触することを防止することができるため、燃料ガスタンク14の損傷を抑制することができる。
【0021】
図6は、本実施形態に係る固定システムを車両の底部に取り付けた状態の他の一例を示す模式断面図である。図6に示す燃料ガスタンク固定システム2において、図1に示す燃料ガスタンク固定システム1と同様の構成については同一の符号を付している。例えば、図6に示すように、燃料ガスタンク34の長さ(形状)によって、溝部28の成形によってできた突出部間の空間以外に、遮蔽カバー10と燃料ガスタンク34との間に隙間(空間)が形成される場合には、衝撃による遮蔽カバー10の変形等を抑制する点で、その隙間にも衝撃吸収材32を配置することが望ましい。
【0022】
以上のような本実施形態の燃料ガスタンク固定システムによる取り付け構造は、燃料ガスタンクの製造技術の向上、特にCFPRタンクの製造技術の向上により、タンクの肉薄化が可能となり、車両搭載スペースに余裕ができたこと、大径タンクが製造できるようになったこと、燃料ガスタンクに設置されるゴムパッドの肉厚が厚くなったこと等により可能となった。また、新SAE試験への対応において、衝撃等によって燃料ガスタンクが露出しないに遮蔽カバーを固定できる本実施形態の燃料ガスタンク固定システムは好適である。
【符号の説明】
【0023】
1,2 燃料ガスタンク固定システム、10 遮蔽カバー、12 固定バンド、14、34 燃料ガスタンク、16 リブ、18 圧力開放装置、20 固定部、22 貫通孔、24 取付ボルト、26 アンダーボディ、28 溝部、30 ゴムパッド、32 衝撃吸収材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料ガスタンクの周囲に取り付けられた遮蔽カバーと、前記燃料ガスタンクに取り付けられた遮蔽カバーを前記車両から吊す固定バンド部材と、を備え、
前記固定バンド部材は、前記遮蔽カバーを上方に押圧して、前記遮蔽カバー及び前記燃料ガスタンクを前記車両に固定することを特徴とする燃料ガスタンク固定システム。
【請求項2】
前記固定バンド部材は、前記遮蔽カバーの外周の周方向に沿って形成される溝部に配置されることを特徴とする請求項1記載の燃料ガスタンク固定システム。
【請求項3】
前記遮蔽カバーと前記燃料ガスタンクとの間に衝撃吸収材を配置することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料ガスタンク固定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240448(P2012−240448A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109436(P2011−109436)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】