説明

燃料タンク用チェックバルブ

【課題】
燃料タンク内の圧力低下時に負圧バルブの弁体が確実に開き、しかも負圧バルブの弁座等の寸法にバラツキがあっても、シール性を十分に確保することができる燃料タンク用チェックバルブを提供する。
【解決手段】
この燃料タンク用チェックバルブ10は、第1接続管部32及び第2接続管部42を備えるハウジング20と、ハウジング20内でスライド可能に配置され、弾性手段60によってタンク側開口部33を閉じる方向に付勢されたスライド弁体50とを備えている。スライド弁体50内には、第1接続管部32及び第2接続管部42に連通する通気路と、通気路を開閉させる弁座52aとが形成され、弁座52aの開口部52dを閉塞する、ゴム又はエラストマー製の傘型弁53が取付けられ、燃料タンク内の圧力が低下したときに傘型弁53が開いて外気を燃料タンク内に流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の燃料タンクの内側又は外側に配設され、燃料タンク内の圧力を調整する燃料タンク用チェックバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクには、燃料タンク内の圧力が上昇したときに、燃料蒸気を外部に排出して燃料タンクの破裂等を防ぎ、一方、燃料タンク内の圧力が低下したときには、燃料タンク外から外気を流入させることによって、燃料タンクの潰れ等を防止するチェックバルブが取付けられている。
【0003】
このようなチェックバルブとして、下記特許文献1には、第1ボディと第2ボディとで形成された空間内に、正圧バルブと負圧バルブとを配設してなるチェックバルブにおいて、前記第1ボディに形成された接続管が第1管路を介して燃料タンクに連絡され、前記第2ボディに形成された接続管が第2管路を介してキャニスター側に連絡されており、前記正圧バルブと負圧バルブとが同一軸心上に配設され、前記正圧バルブは、略筒状のバルブボディと、第1ばねとからなり、前記バルブボディ上部に設けられ、当頂部に連通孔の形成された第1バルブが前記第1ボディ内に形成された第1弁座に嵌接可能となっており、前記バルブボディが、前記第1ばねにより前記第1弁座方向に付勢されており、前記負圧バルブは、第2バルブと第2ばねとからなり、前記第2バルブは、前記第2ばねに付勢されて前記バルブボディの下部に形成された第2弁座に嵌接可能となっており、前記バルブボディは、前記第1ボディの内壁面に沿って軸心方向に摺動可能となっており、前記第1ボディの内壁面と第1バルブボディの外周面との間には、前記燃料タンク側から前記キャニスター側に蒸発燃料を送給する第1通路が形成されており、前記第2バルブは、前記バルブボディの内周面に沿って摺動可能となっており、該第2バルブの外周面と、前記バルブボディの内周面との間には、前記キャニスター側から前記燃料タンク側に空気を送給する第2通路が形成されており、前記バルブボディは、第1バルブボディと、第2バルブボディとからなり、前記第1バルブは、前記第1バルブボディに形成され、前記第2弁座は前記第2バルブボディに形成されており、前記第1バルブボディと第2バルブボディとは、組立時に前記負圧バルブを内蔵して相互の接合部が溶着、固定されて一体化されていることを特徴とするチェックバルブの構造が開示されている。また、その実施形態には、第1ボディ、第2ボディ、第1バルブボディ、第2バルブボディ、及び第2バルブは全て合成樹脂で形成されていることが記載されている。
【特許文献1】特許第3421828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のチェックバルブは、第2弁座に当接する弁である第2バルブが、第2ばねに付勢されて、第2弁座とシールされている。そして、燃料タンクの内圧低下時には、第2バルブが燃料タンク側にスライドし第2弁座から離脱して、キャニスター側から第2通路を介して、燃料タンクへ空気が流入して、燃料タンク内を常圧に戻すようになっている。
【0005】
上記の第2バルブ、及び第2弁座が形成された第2バルブボディは、ともに合成樹脂で形成されている。そのため、第2弁座内径の真円度、及び、それに当接する第2バルブ外径の真円度等、各部材の寸法にバラツキがあると、第2弁座と第2バルブとが当接した当接面に隙間が生じやすく、シール性が低下する恐れがあった。特に、ガラス繊維等で合成樹脂を補強した場合、寸法精度の維持が難しくシール性の低下は顕著であった。また、第2弁座が形成された第2バルブボディと、第1バルブボディとを溶着により接合する際、溶着時の熱によって歪むこともあり、この場合もシール性が低下してしまうこととなる。
【0006】
ところで、燃料タンクの内圧がどの程度低下すると、第2バルブがスライドするかは、第2バルブと第1バルブとの間に介装された、第2ばねのばね圧によって決定される。例えば、燃料タンクの内圧が、−100mmAq(約−1kPa)程度の圧力になると、第2バルブがスライドし、その際に、例えば5L/min以上の外気が燃料タンク内に流入できるように設定されている。このように比較的低圧で、第2バルブがスライドできるようにするため、第2ばねのばね圧は小さく設定されている。
【0007】
しかしながら、小さいばね圧を正確に調整するのは一般に難しい。そして、ばね圧が小さすぎる場合、第2弁座に対する第2バルブの押圧力が低くなり、十分なシール性が得られなくなる。一方、ばね圧が大きすぎる場合には、燃料タンクの内圧が所定値以下となっても、第2バルブがスライドせず、燃料タンクの内圧を調整できなくなる。
【0008】
以上のように、上記特許文献1に示されるようなチェックバルブの負圧バルブにおいては、ばね圧が小さいばねで、弁体と弁座との寸法のバラツキを抑えて、弁体と弁座との当接面に十分なシール性を確保するのは極めて困難であった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、自動車用燃料タンクの内側又は外側に配設され、燃料タンク内の圧力を調整する燃料タンク用チェックバルブにおいて、燃料タンク内の圧力低下時に負圧バルブの弁体が確実に開き、しかも負圧バルブの弁座等の寸法にバラツキがあっても、シール性を十分に確保することができる燃料タンク用チェックバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、自動車用燃料タンクの内側又は外側に配設され、燃料タンク内の圧力が上昇したときに燃料蒸気を外気側に排出し、燃料タンク内の圧力が低下したときに外気側から外気を流入させることによって、燃料タンク内の圧力を一定範囲に保持する燃料タンク用チェックバルブにおいて、燃料タンク内に連通する内部配管が接続される第1接続管部と、外気側に連通する外部配管が接続される第2接続管部とを有するハウジングと、このハウジングの前記第1接続管部に連通するタンク側開口部を開閉するように、該ハウジング内でスライド可能に配置され、弾性手段によって前記タンク側開口部を閉じる方向に付勢されたスライド弁体とを備え、前記スライド弁体内には、一端が前記第1接続管部に連通し、他端が前記第2接続管部に連通する通気路が形成されており、この通気路のいずれかの箇所に該通気路を開閉させるための弁座が形成されており、この弁座の開口部を前記第1接続管部側から覆って閉じるように、ゴム又はエラストマーからなる傘型弁が取付けられており、燃料タンク内の圧力が低下したときに前記傘型弁が開いて外気を燃料タンク内に流入させるように構成されていることを特徴とする燃料タンク用チェックバルブを提供するものである。
【0011】
上記第1の発明によれば、燃料タンク内の圧力が所定値以上に高くなると、スライド弁体が弾性手段に抗してスライドし、タンク側開口部から離れるため、タンク側開口部が開いて、第1接続管部から流入したタンク内の燃料蒸気等が、上記開口部及びハウジング内を通って第2接続管部から流出し、例えばキャニスター等に送られる。
【0012】
また、燃料タンク内の圧力が外気圧に比べて負圧になると、スライド弁体内に配置されたゴム又はエラストマーからなる傘型弁が、その周縁をめくれ上げるようにして開き、第2接続管部から導入された外気が、スライド弁体内に形成された通気路を通って、第1接続管からタンク内に流入する。
【0013】
上記傘型弁は、スカート状のフランジ部が有する弾性力によって弁座の開口部を閉じているので、比較的弱い圧力によって開くことができ、成形形状によって上記弾性力を一定化しやすいので、製品によるバラツキを抑えることができる。また、スライド弁体やその内部の通気路に設けられた弁座の寸法にバラツキがあっても、傘型弁のスカート状のフランジ部の弾性によって弁座に密着できるため、各部材間の寸法のバラツキを吸収し、シール性を十分に確保することができる。
【0014】
また、負圧弁として傘型弁を用いたことにより、ばね圧の調整に煩わされることなく、チェックバルブ全体の部品点数を減らすことができる。更に、ハウジング等の寸法精度を厳密に要求されることがないので、コストの低減を図ることができる。また、傘型弁は、スライドするためのスペースを必要としないので、スライド弁体をコンパクト化して、全体としてもコンパクトなチェックバルブが得られる。
【0015】
本発明の第2は、上記第1の発明において、前記スライド弁体内の弁座の開口部は、前記傘型弁の軸部の周りに配置されて、前記傘型弁のフランジ部で閉塞される複数の孔で構成され、これらの孔の内径は、前記第1接続管部側に向かって広がっており、かつ、これらの孔の内周は、前記傘型弁の軸部に対して外周側の内壁の方が傾斜角が大きい形状をなしている燃料タンク用チェックバルブを提供するものである。
【0016】
上記第2の発明によれば、弁座の開口部の孔は、第1接続管部側に向かって広がり、かつ、その内周は、傘型弁の軸部に対して外周側の内壁の方が傾斜角が大きい形状をなしているので、傘型弁は、開口部の第1接続管部側に広がった側の孔に、フランジ部の裏面側が当接してシールするようになる。
【0017】
ところで、弁座の開口部の孔が、第2接続管部側に向かって直線上をなした、従来からの形状である場合、外気を流入する際に、笛吹き音のような甲高い異音が発生する場合があった。この発生原因は明らかではないが、弁座の開口部の孔を上記第2の発明の形状にすることにより、上記異音の発生を効果的に防止できることが分かった。また、上記形状によれば、傘型弁の軸部を支持する部分の肉厚を薄くする必要がないので、支持部の強度も保持することができる。
【0018】
本発明の第3は、上記第1又は第2の発明において、前記ハウジング及び前記スライド弁体は、ガラス繊維で補強されたポリアミド系樹脂で形成されており、前記傘型弁は、シリコン系ゴム又はフッ素系ゴムで形成されている燃料タンク用チェックバルブを提供するものである。
【0019】
上記第3の発明によれば、ハウジング及びスライド弁体がガラス繊維で補強されたポリアミド系樹脂で形成され、傘型弁がシリコン系ゴム又はフッ素系ゴムで形成されているので、強度、耐久性、耐熱性に優れており、例えば金属タンク内に配設する場合に、金属タンクを密閉してから、焼付け塗装を行っても耐えられるチェックバルブを提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃料タンク用チェックバルブによれば、燃料タンク内の圧力が所定値以上に高くなると、スライド弁体がスライドしタンク側開口部が開いて、タンク内の燃料蒸気等がキャニスター等に送られ、燃料タンク内の圧力が負圧になると、スライド弁体内に配置されたゴム又はエラストマーからなる傘型弁が、その周縁をめくれ上げるようにして開き、外気が第1接続管からタンク内に流入するようになる。この傘型弁は、フランジ部が有する弾性力によって弁座の開口部を閉じているので、比較的弱い圧力によって開き、成形形状により弾性力を一定化しやすいので、製品によるバラツキを抑えることができ、スライド弁体や弁座の寸法にバラツキがあっても、フランジ部の弾性によって弁座に密着できるため、各部材間の寸法のバラツキを吸収し、シール性を十分に確保可能となる。また、ばねを用いないので、ばね圧の調整が不要で、簡単に傘型弁と弁座とのシール性を維持できる、チェックバルブ全体の部品点数を減らし、組付け作業性も向上するので、コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜8を参照して、本発明の燃料タンク用チェックバルブの一実施形態を説明する。
【0022】
図1、2に示すように、この燃料タンク用チェックバルブ10(以下、チェックバルブ10という)は、第1接続管部32が形成された本体部30と、第2接続管部42が形成された蓋体部40とからなるハウジング20を有している。
【0023】
本体部30は、開口を有しスライド弁体50を収容可能な筒状の円筒部31と、この円筒部31の内部に連通し、後述する燃料タンク内周に沿って配設される蒸気導入管が接続される、一対の対向して伸びる第1接続管部32,32とから主として構成される。また、本体部30内の第1接続管部32に連通するタンク側開口部33の周縁には、スライド弁体50が当接する弁座33aが形成されている。
【0024】
また、円筒部31の外周には、燃料タンク内壁に形成されるブラケットに固定するためのフック34が設けられている。このフック34は、円筒部31の周壁から突設された支柱34aと、支柱34aの先端から錨状に円筒部31方向に延出された係止片34bとで構成されている。更に円筒部31の外周で、フック34の係止片34bの先端に対向する位置には、リブ状の当接部35,35が形成されている。
【0025】
蓋体部40は、本体部30の円筒部31の開口を閉塞するように組み付けられる蓋本体41と、この蓋本体41内に連通し、蓋本体41から延出した第2接続管部42とを有している。この第2接続管部42には、外気側に連通する外部配管74が接続される。
【0026】
また、蓋本体41の周壁41a内周には、複数の切欠き溝41bが、等間隔で形成されている。この切欠き溝41bは、第2接続管部42に向かって次第に浅くなるテーパー状をなしている。この切欠き溝41bは、燃料タンク内の圧力が大幅に上昇し、スライド弁体50が、蓋本体41の周壁41a内周に当接するまで、スライドしたような場合であっても、燃料蒸気を第2接続管部42へ逃がすことができるようにするためのものである。更に、蓋本体41の底壁には、後述するスプリング60の外れを防止する凸部43が形成されている。
【0027】
図8に示すように、本発明のチェックバルブ10は、燃料タンク70内壁に形成されたブラケット71に取付けられる。すなわち、ブラケット71の図示しない取付け孔にフック34が挿入されて、その取付け孔周縁に係止片34bが係止するとともに、当接部35がブラケット71に当接して、燃料タンク70内に取付けられるようになっている。そして、燃料タンク70内壁には、チェックバルブ10と、このチェックバルブ10の第1接続管部32,32に接続される蒸気導入管72,72と、この蒸気導入管72,72の先端に連結されたカットバルブ73,73と、チェックバルブ10の第2接続管部42に接続された、図示しないキャニスターに連結される外部配管74が配設されるようになっている。なお、この実施形態においては、本発明のチェックバルブ10は、燃料タンク70の内壁に取付けられているが、燃料タンクの外壁に取付けてもよい。
【0028】
本体部30の円筒部31に収容されるスライド弁体50は、図2、3に示すように、全体として円筒状の弁本体51と、この弁本体51の基端内周に挿入されて溶着された弁サポート52を有している。また、弁サポート52には、傘型弁53が取付けられている。
【0029】
弁本体51は、本体部30の円筒部31内周に遊嵌して、円筒部31内でスライド可能に配置されている。また、弁本体51の先端には曲面状の弁頭部51aが形成され、この弁頭部51aは、円筒部31の前記弁座33aに接離して、第1接続管部32,32に連通する、タンク側開口部33を開閉するようになっている。また、弁頭部51aの先端中央には通気口51bが形成されている。この通気孔51bは、弁本体51の内部空間と連通している。。
【0030】
弁サポート52は、円板状の弁座52aと、この弁座52a外周から軸方向に延出した外筒部52bとから構成されている。図4、5を併せて参照すると、円板状の弁座52aの中央には、傘型弁53を支持する軸支持部52cが形成されており、軸支持部52cの外周には、通気孔となる開口部52dが形成されている。
【0031】
軸支持部52cには、後述する傘型弁53の軸部53cが挿入され、傘型弁53を支持して、弁座52aに取付けるようになっている。また、この軸支持部52cには、外筒部52bとは反対方向の端面から、所定深さで環状凹部52eが形成されており、傘型弁53の凸部53bが嵌合するようになっている。
【0032】
また、開口部52dは、軸支持部52c外周に等間隔にて形成された放射状のリブ52g、及びリブ52gによって区分けされた複数の孔52hで構成されている。また、開口部52dには、外筒部52bと同一方向に延出した内筒部52fが形成されており、開口部52dと連通している。
【0033】
そして、開口部52dの孔52hの内径は、第1接続管部32側に向かって広がっており、かつ、その内周は、傘型弁53の軸部53cに対して、外周側の内壁52iの傾斜角が大きく形状されている。そのため、燃料タンク内の圧力低下時に、外気を流入させる流路面積が大きく、外気の圧力をあまり損失させずに、傘型弁53のフランジ部53aをスムーズに開くことができるので、笛吹き音のような異音の発生を効果的に防止する。
【0034】
また、内筒部52fと、外筒部52bとの間には、後述するスプリング60が当接するスプリング当接部52jが放射状に等間隔で形成されている。
【0035】
以上のようにして、スライド弁体50内には、弁サポート52の内筒部52f及び開口部52dと、弁本体51の内部空間と、弁頭部51aの通気孔52dとを通って、第2接続管部42から第1接続管部32に連通する通気路が形成され、燃料タンク70内の圧力が低下したときに傘型弁53が開いて、上記通気路を通して燃料タンク70内に外気が流入するようになっている。
【0036】
また、上記各構成部品のうち、傘型弁53を除く、ハウジング20及びスライド弁体50の各構成部材は、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等の燃料非透過性に優れた樹脂材料で形成されることが好ましい。更には、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂に、10〜40wt%程度のガラス繊維等の補強材料を含有させた樹脂で形成されることが好ましく、それによって、強度、耐久性、耐熱性を付与することができ、例えば金属タンク内に配設する場合に、金属タンクを密閉してから、焼付け塗装を行っても問題なく耐えることができる。
【0037】
弁サポート52に取付けられる傘型弁53は、図3に示すように、ほぼ円盤に近い形に広がったスカート状のフランジ部53aと、このフランジ部53aの凹面側の中央から円盤状にやや突出した凸部53bと、この凸部53bの中央部から更に軸方向に延出された軸部53cとで構成されている。また、軸部53c外周の途中には、環状リブ53dが形成されている。
【0038】
上記傘型弁53は、例えば、フロロシリコン等のシリコン系ゴム、フッ化ビリニデン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系等のフッ素系ゴムなどの弾性体で形成されている。そのため、耐熱性、耐燃料性に優れており、焼き付け塗装工程前に、弁サポート52に予め取付けておき、燃料タンクに配設しておくことができる。
【0039】
そして、弁サポート52の軸支持部52cの、前記弁本体51の内部に配置される面側から、傘型弁53の軸部53cが挿入すると、傘型弁53の環状リブ53dが、軸支持部52c裏側の開口周縁に当接し、それとともに、傘型弁53の凸部53bが、弁サポート52の環状凹部52eに嵌合する。このように、傘型弁53の凸部53b、及び環状リブ53dの両者によって、軸支持部52cが挟持されるので、傘型弁53は弁座52aにしっかりと取付けられることとなる。
【0040】
こうして、弁サポート52に取付けられた傘型弁53は、そのフランジ部53aが、弁座52aに当接してシールするようになる。この際に、傘型弁53は、ゴム又はエラストマー等の弾性体で形成されているので、例えば、スライド弁体の弁座や、傘型弁が所定寸法で形成されず、寸法のバラツキがあるような場合でも、傘型弁53は、その弾性力によって弁座52aに押圧されて、弁座52aに隙間なく当接して各部材間の寸法のバラツキを吸収し、傘型弁53と弁座52aとのシール性を十分に確保することができる。
【0041】
また、傘型弁53は、環状リブ53d及び凸部53bにより、弁座52aのシール面よりも、若干軸支持部52c側に引っ張られて、軸支持部52cに取付けられているので、弁座52aに対する傘型弁53のフランジ部53aの押圧力が強まり、傘型弁53と弁座52aとのシール性の向上を図ることができる。
【0042】
そして、傘型弁53を取付けた弁サポート52は、弁本体51に組み付けられ、超音波溶着、熱板溶着等の溶着によって接合される。この際、弁サポート52の弁本体51に対する溶着面52kは、弁座52aとある程度離れているので、溶着による熱が弁座52aに伝わりにくい。したがって、溶着時の熱による歪みによって、弁座52aの寸法のバラツキを抑えることができ、傘型弁53と弁座52aとのシール性低下を防止可能となる。
【0043】
こうして、組み付け終わったスライド弁体50を、本体部30の円筒部31に収容して、弾性手段であるスプリング60を、スライド弁体50の傘サポート52のスプリング当接部52jと、蓋体部40の凸部43との間に介装する。更に、蓋体部40の蓋本体41を、本体部30の開口に組み付けて、超音波溶着等の溶着によって接合し、本発明のチェックバルブ10が形成される。
【0044】
このように、本発明のチェックバルブ10においては、燃料タンク内が負圧となったときに開く負圧バルブとして、ばねを用いない傘型弁53を採用したので、上記特許文献1のように、ばね圧の調整に煩わされることなく、簡単に傘型弁53と弁座52aとのシール性を維持できる。更に、ばねが不要なので、チェックバルブ全体の部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性も向上するようになり、その上、ある程度の寸法精度で、弁座52aや傘型弁53を成形すればよいので、コストの低減を図ることができる。また、傘型弁53は、スライドせずに開くようになっているので、スライド弁体50、ひいてはチェックバルブ10全体のコンパクト化を図れる。
【0045】
次に、このチェックバルブ10の作用について説明する。
【0046】
上記スライド弁体50は、スプリング60により図2に示されるように、弁頭部51aが、本体部30の弁座33aに当接させる方向に弾性付勢される。
【0047】
したがって、このチェックバルブ10は、燃料タンク70内の圧力が、外気圧よりも高いが、予め設定された圧力以下のときは、図2に示すように、スプリング60の付勢力によって、スライド弁体50の弁頭部51aが、本体部30の弁座33aに当接し、チェックバルブ10は閉じた状態となる。
【0048】
そして、燃料タンク70内の圧力が所定値、例えば300〜400mmAq(約3〜4kPa)以上になると、図5に示すように、スプリング60の付勢力に抗して、スライド弁体50が本体部30の弁座33aから離れ、カットバルブ73,73及び蒸気導入管72,72を通して、燃料タンク70内の燃料蒸気がチェックバルブ10内に導入される。
【0049】
チェックバルブ10内に導入された燃料蒸気は、スライド弁体50と、ハウジング20の本体部30との間の空隙を通り、更に第2接続管部42及び外部配管74を通って、燃料タンク70の外に配設された図示しないキャニスターに送られる。
【0050】
次に、燃料タンク70内の圧力が外気圧よりも所定値以上低い負圧、例えば−100mmAq(約−1kPa)程度より低い圧力となったときには、キャニスターに接続された外部配管74側の方が高い圧力となるので、図6に示されるように、傘型弁53のフランジ部53aの周縁部がめくれ上がるようにして、弁座52aから離れて開き、燃料タンク70の外に配設された図示しないキャニスターから取り込まれた外気が、外部配管74を通ってチェックバルブ10内に流入する。
【0051】
そして、外気は、弁サポート52の内筒部52f及び開口部52d、弁本体51の内部空間及び通気口51bからなる通気路を通り、更に第1接続管部32及び蒸気導入管72を通って、燃料タンク70内に導入される。
【0052】
また、図7は、燃料タンク内の内圧が、図5に示す場合よりも著しく上昇した場合の状態を示している。この場合、スライド弁体50全体が、スプリング60の付勢力に抗してスライドして、スライド弁体50の弁サポート52が、蓋体部40の蓋本体41の周壁41aに当接した状態となる。しかしながら、本発明のチェックバルブ10には、蓋体部40の周壁41a内周に切欠き溝41bが形成されているので、このような状態となっても燃料蒸気は、切欠き溝41bを通して第2接続管部42へ逃がすことができるようになっている。
【0053】
こうして、燃料タンク70内の圧力を、常時一定の範囲に保って、燃料タンク70の破裂や変形、給油口からの燃料の吹き出し等を防ぐようにしている。そして、本発明のチェックバルブ10においては、ゴム又はエラストマー等の弾性体で形成された傘型弁53の弾性力によって弁座52aを押圧し、傘型弁53が弁座52aに隙間なく当接するようにし、傘型弁53や弁座52aの寸法のバラツキを吸収して、傘型弁53と弁座52aとのシール性を十分に確保しているので、燃料タンク70内の圧力の調整を効果的に行うことができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動車用の燃料タンクの内側又は外側に配設され、燃料タンク内の圧力を調整する燃料タンク用チェックバルブとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の燃料タンク用チェックバルブの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同燃料タンク用チェックバルブの断面図である。
【図3】同燃料タンク用チェックバルブのスライド弁体の部分断面図である。
【図4】同燃料タンク用チェックバルブの弁サポートを示しており、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図5】同燃料タンク用チェックバルブのスライド弁体を収容したハウジングであって、燃料タンク内の圧力が高圧になったときの状態を示す部分断面図である。
【図6】同燃料タンク用チェックバルブのスライド弁体を収容したハウジングであって、燃料タンク内の圧力が負圧になったときの状態を示す部分断面図である。
【図7】同燃料タンク用チェックバルブのスライド弁体を収容したハウジングであって、燃料タンク内の圧力が著しく上昇したときの状態を示す部分断面図である。
【図8】同燃料タンク用チェックバルブを、燃料タンクの内壁に配設した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10 燃料タンク用チェックバルブ
20 ハウジング
30 本体部
31 円筒部
32 第1接続管部
33 タンク側開口部
34 フック
40 蓋体部
42 第2接続管部
50 スライド弁体
51 弁本体
51a 弁体
52 弁サポート
52a 弁座
52c 軸支持部
52d 開口部
52h 孔
52i 内壁
53 傘型弁
53a フランジ部
53c 軸部
60 スプリング
70 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用燃料タンクの内側又は外側に配設され、燃料タンク内の圧力が上昇したときに燃料蒸気を外気側に排出し、燃料タンク内の圧力が低下したときに外気側から外気を流入させることによって、燃料タンク内の圧力を一定範囲に保持する燃料タンク用チェックバルブにおいて、
燃料タンク内に連通する内部配管が接続される第1接続管部と、外気側に連通する外部配管が接続される第2接続管部とを有するハウジングと、
このハウジングの前記第1接続管部に連通するタンク側開口部を開閉するように、該ハウジング内でスライド可能に配置され、弾性手段によって前記タンク側開口部を閉じる方向に付勢されたスライド弁体とを備え、
前記スライド弁体内には、一端が前記第1接続管部に連通し、他端が前記第2接続管部に連通する通気路が形成されており、
この通気路のいずれかの箇所に該通気路を開閉させるための弁座が形成されており、この弁座の開口部を前記第1接続管部側から覆って閉じるように、ゴム又はエラストマーからなる傘型弁が取付けられており、
燃料タンク内の圧力が低下したときに前記傘型弁が開いて外気を燃料タンク内に流入させるように構成されていることを特徴とする燃料タンク用チェックバルブ。
【請求項2】
前記スライド弁体内の弁座の開口部は、前記傘型弁の軸部の周りに配置されて、前記傘型弁のフランジ部で閉塞される複数の孔で構成され、これらの孔の内径は、前記第1接続管部側に向かって広がっており、かつ、これらの孔の内周は、前記傘型弁の軸部に対して外周側の内壁の方が傾斜角が大きい形状をなしている請求項1記載の燃料タンク用チェックバルブ。
【請求項3】
前記ハウジング及び前記スライド弁体は、ガラス繊維で補強されたポリアミド系樹脂で形成されており、前記傘型弁は、シリコン系ゴム又はフッ素系ゴムで形成されている請求項1又は2記載の燃料タンク用チェックバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−44586(P2006−44586A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231464(P2004−231464)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】