説明

燃料タンク

【課題】アッパーシェル部とロアシェル部を別々に形成し、内部に燃料ポンプユニット等を装着した、点検開口部を容易に開口させることのできる燃料タンクが必要である。
【解決手段】燃料タンク1は、それぞれ内側樹脂層15、25と、内側樹脂層の外面を覆う外側シート層16、26とより構成された、アッパーシェル部10とロアシェル部20の接合周縁部が融合され一体に構成される。シェル部の外壁の一部に、部品の点検開口部13を設け、点検開口部13は、蓋部13aにより閉じられ、蓋部を外側シート層が覆うとともに点検開口部の内側樹脂層に、蓋部が分離された場合には点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋50が取付け可能な点検開口部ネジ部14が形成される。蓋部は、燃料タンク内の部品の点検時には外側シート層とともに分離可能に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々に分割して射出形成されたアッパーシェル部とロアシェル部を合体させて溶着し形成された、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用燃料タンク等の大型の燃料タンクは、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した合成樹脂のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、燃料タンクを製造していた。
【0003】
しかし、この方法では、自動車用燃料タンクのような大型の燃料タンクの場合は、パリソンの全体の重量が大きくなり、また、自動車用燃料タンクのような強度が必要な場合に、強度増加のため厚肉の燃料タンクを製造するときにもパリソンの重量が増加して、溶融状のパリソンを成形機の上部から金型に入れるときに下方に垂れるため、上部の肉厚が下部の肉厚よりも薄くなる場合があった。
また、複雑な形状をした製品の場合は、パリソンを金型内で膨張させたときに、パリソンの膨張の割合が製品の部位によって異なる場合があり、製品の肉厚にバラツキが生じる場合があった。
【0004】
また、ブロー成形製の燃料タンクは、燃料タンク内にポンプやバルブ等の付属品を取付けることも困難であり、リブや梁等を設けることも難しく、付属品を取付ける場合でも、ブロー成形品に穴あけ加工が必要であり、その付属品をモジュール化して、穴あけ部にガスケットを介してネジ等で取付ける構造が必要であった。その場合には、付属品の燃料ポンプ等は構造が複雑となり部品点数も多くなっていた。また、付属品の点検の場合には、そのモジュールの全体を取り外しており、手間がかっていた。
【0005】
そのため合成樹脂製中空体を上下に分割して、アッパーシェル部とロアシェル部をそれぞれ別に射出成形等により成形して、その後そのアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部を相互に溶着して燃料タンクを形成する方法も行われている(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、アッパーシェル部とロアシェル部の溶着前に燃料ポンプ等の付属品を容易に装着することができる。また、装着用のリブや梁等をアッパーシェル部とロアシェル部の内面に容易に形成することができる。
【0006】
図19に示すように、このような、アッパーシェル部110とロアシェル部120を融合する燃料タンク101においては、燃料タンク101内からの燃料透過を防止するために、外側を耐燃料透過防止性の外側シート層116、126で覆い、内側を内側樹脂層115、125で形成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
また、燃料タンクの外側に耐燃料透過防止性の外側シートを接着したものもある(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
一方、図20に示すように、アッパーシェル部210とロアシェル部220を分割して形成し、その後溶着した燃料タンク201内のロアシェル部220に装着した燃料ポンプユニット204等を点検、修理する場合には、アッパーシェル部210に点検用の開口部213を形成する必要がある。この場合は、例えば、燃料タンク201が製造された当初は、アッパーシェル部210の開口部213は、開口部213と一体に形成された蓋部213aで塞がれている。そして点検、修理するときに、開口部213と蓋部213aの間に形成された溝部213cの部分から蓋部213aを切断し、開口させている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
しかしながら、この場合には、蓋部213aを切断し、除去するため、燃料タンク201の外側を耐燃料透過性のシートで覆うことが困難であった。そのため、アッパーシェル部210とロアシェル部220を形成する材料が耐燃料透過性を必要とし、成形性の低い、あるいは高価なものであったり、燃料透過性を防止することが充分でない場合もあり、材料選択の余地が少なかった。
【特許文献1】特開平11−34180号公報
【特許文献2】特開平5−16938号公報
【特許文献3】特開2005−343451号公報
【特許文献4】米国特許第6179145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようにアッパーシェル部とロアシェル部を別々に形成し、内部に燃料ポンプユニット等を装着した場合に、点検開口部を容易に開口させることのできる、耐燃料透過性に優れた燃料タンクが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、
燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合され一体に構成されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ内側樹脂層と、内側樹脂層の外面を覆う外側シート層とより構成され、
アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に、燃料タンク内の部品の点検開口部を設け、点検開口部は、蓋部により閉じられ、蓋部を外側シート層が覆い、蓋部は、燃料タンク内の部品の点検時には外側シート層とともに分離可能に形成されるとともに、点検開口部の内側樹脂層に、蓋部が分離された場合には点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋が取付け可能な点検開口部ネジ部が形成された燃料タンクである。
【0011】
請求項1の本発明では、燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合され一体に構成されている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部とを組み合わせて形成された燃料タンクは、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品を得ることができる。また、アッパーシェル部とロアシェル部の内部に部品取付リブや、補強リブを形成することができ、内蔵部品等を取付けることも容易にできる。成形されたアッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部が融合されているため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部は強固に一体的に結合しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくし、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
【0012】
アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ内側樹脂層と内側樹脂層の外面を覆う外側シート層とより構成されている。このため、内側樹脂層に強度が大きく、成形性に優れた樹脂を選択することができ、外側シート層に耐燃料透過性に優れたシートを使用することができ、製造が容易である。
【0013】
アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に、燃料タンク内の部品の点検開口部を設け、点検開口部は、蓋部により閉じられ、蓋部を上記外側シート層が覆っている。このため、点検開口部を開口するまでは、点検開口部を完全に塞ぎ、点検開口部から燃料が透過することを防止できる。
【0014】
蓋部は、燃料タンク内の部品の点検時には外側シート層とともに分離可能に形成されるとともに、点検開口部の内側樹脂層に、蓋部が分離された場合には点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋が取付け可能な点検開口部ネジ部が形成されている。このため、燃料タンク内の部品の点検時に容易に蓋部と蓋部に対応する外側シート層を分離し、除去することができ、点検開口部から点検、修理ができる。また、点検、修理が終了後は、点検開口部ネジ部に点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋をネジ止めすることができ、さらにシーリングを介してネジ止めすることで、確実に点検開口部を塞ぐことができる。
【0015】
請求項2の本発明は、蓋部は、点検開口部と一体に形成され、燃料タンク内の部品の点検、修理時には切断可能に形成された燃料タンクである。
【0016】
請求項2の本発明では、蓋部は、点検開口部と一体に形成されたため、蓋部はアッパーシェル部又はロアシェル部を成形するときに同時に形成することができ、製造が容易であるとともに、点検開口部を完全に塞ぐことができる。また、燃料タンク内の部品の点検、修理時には切断可能に形成されたため、点検開口部を容易に開口させることができ、点検、修理が簡単にできる。
【0017】
請求項3の本発明は、蓋部は、点検開口部と別に形成され、点検開口部ネジ部にネジ止めされている燃料タンクである。
【0018】
請求項3の本発明では、蓋部は、点検開口部と別に形成され、点検開口部ネジ部にネジ止めされているため、燃料タンク内部の部品の点検、修理時には、蓋部を容易に取り外すことができる。
【0019】
請求項4の本発明は、外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートで形成される燃料タンクである。
【0020】
請求項4の本発明では、外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートで形成されるため、燃料タンクの内部の燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、多層シート中の耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に、内側樹脂層と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができる。
【0021】
請求項5の本発明は、点検開口部の周囲に、アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁面よりも下がった段部を形成し、蓋部を分離したときは、段部に外側シート層が当接又は接合するとともに、段部の外側シート層の上に開口部開閉蓋のシール部材が当接可能に形成された燃料タンクである。
【0022】
請求項5の本発明では、点検開口部の周囲に、アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁面よりも下がった段部を形成したため、点検開口部の蓋部の位置が明確になり、点検開口部を開口する作業が容易となるとともに、開口後は開口部開閉蓋のシール部材を段部で保持することができる。
蓋部を分離したときは、段部に外側シート層が当接又は接合するとともに、段部の外側シート層の上に開口部開閉蓋のシール部材が当接可能に形成された。このため、点検開口部を開口後に、開口部開閉蓋で閉じるときに、点検開口部の周囲を外側シート層が当接又は接合して、その上にシール部材が当接して、点検開口部の耐燃料透過性を確保することができる。
【0023】
請求項6の本発明は、点検開口部の蓋部は、点検開口部ネジ部にネジ止めされたときに点検開口部の段部に当接するフランジ部が形成され、外側シート層は、点検開口部と別に形成され点検開口部ネジ部にネジ止めされている蓋部とは、接着又は溶着されていなく、蓋部を外して点検開口部を開口するときに、外側シート層は段部に対応する部分を残して切除され、点検開口部が開口後に、蓋体を点検開口部ネジ部にネジ止めしたときに、段部に対応する部分の外側シート層は、蓋部に押圧され、段部に当接する燃料タンクである。
【0024】
請求項6の本発明では、点検開口部の蓋部は、点検開口部ネジ部にネジ止めされたときに点検開口部の段部に当接するフランジ部が形成されているため、点検開口部を開口するときに蓋部を取り外し、その蓋体をそのまま開口部開閉蓋として使用することができる。
外側シート層は、点検開口部と別に形成され点検開口部ネジ部にネジ止めされている蓋部とは、接着又は溶着されていなく、蓋部を外して点検開口部を開口するときに、外側シート層は段部に対応する部分を残して切除され、点検開口部が開口後に、蓋体を点検開口部ネジ部にネジ止めしたときに、段部に対応する部分の外側シート層は、蓋部に押圧され、段部に当接する。このため、点検開口部が開口後に、蓋体を点検開口部ネジ部にネジ止めしたときに、段部に外側シート層が密着し、その上にシール部材を置き、フランジ部がそのシール部材を外側シート層に圧接することができ、点検開口部の耐燃料透過性を確保することができる。
【0025】
請求項7の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部は、全周に亘りそれぞれ略直角に外側に張り出したフランジ部が形成され、外側シート層はフランジ部の先端まで被覆した燃料タンクである。
【0026】
請求項7の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部は、全周に亘りそれぞれ略直角に外側に張り出したフランジ部が形成され、外側シート層はフランジ部の先端まで被覆した。このため、このアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に圧着することにより、アッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部を全周にわたり強固に密着させて、固着することができる。また、接合周縁部とフランジ部からの燃料透過を防止できる。
【0027】
請求項8の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層が高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、外側シート層が耐燃料透過性多層樹脂シートで形成された燃料タンクである。
【0028】
請求項8の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部は、内側樹脂層が高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、外側シート層が耐燃料透過性多層樹脂シートで形成された。このため、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されているため、燃料タンクの強度を大きくすることができる。
【0029】
外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートで形成されるため、燃料タンクの内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に高密度ポリエチレン(HDPE)と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に、点検開口部を設け、点検開口部の蓋部を外側シート層が覆っている。このため、点検開口部を開口するまでは、点検開口部を完全に塞ぎ、点検開口部から燃料が透過することを防止できる。
蓋部は、分離可能に形成されるとともに、蓋部が分離された場合には点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋が取付け可能な点検開口部ネジ部が形成されているため、燃料タンク内の部品の点検時に容易に蓋部を分離し、除去することができる。また、点検、修理が終了後は、点検開口部ネジ部に点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋をネジ止めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、自動車用の燃料タンク1を例にとり、図1〜図17に基づき、説明する。本発明は、自動車用以外にも、各種の燃料タンクに使用することができる。
図1は、燃料タンク1の長手方向の断面図であり、図2は、燃料タンク1のアッパーシェル部10とロアシェル部20の接合周縁部11、21を溶着する工程を示す模式図である。
図3〜図17は、燃料タンク1の点検開口部13の製造方法を示す図である。
【0032】
燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、射出成形で形成される内側樹脂層15、25と、内側樹脂層15、25の外側に形成される耐燃料透過性多層樹脂シート3から構成される外側シート層16、26の2層から形成される。
燃料タンク1の分割は2個ばかりでなく3個以上に分割することも可能である。
本実施の態様では、ロアシェル部20に燃料ポンプユニット4を装着し、アッパーシェル部10に点検開口部13を設けた燃料タンク1を例にとり説明する。
【0033】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内面は、複数の内側リブ17、27がそれぞれ、燃料タンク1の内部方向に向けて一体的に形成することができる。この内側リブ17、27により燃料タンク1の強度・剛性が増加する。またタンクシェル内側に取付構造を一体成形することも可能である。燃料タンク1内に装着する燃料ポンプユニット4やキャニスター、バルブ、ホース等を取付けることができる。
【0034】
アッパーシェル部10には、パイプ取付孔2とポンプユニットの点検開口部13が形成されている。ポンプユニットの点検開口部13は、燃料タンク1内部に取付けた燃料ポンプユニット4の点検・修理等をするための孔であり、パイプ取付孔2は、燃料注入用のパイプ(図示せず)を取付ける孔である。なお、アッパーシェル部10の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプ(図示せず)を設けてもよい。
【0035】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口の全周には、図2に示すように、アッパーシェル部10の接合周縁部11とロアシェル部20の接合周縁部21が形成され、その接合周縁部11、21には、全周に亘りそれぞれ外面から外側に張り出したフランジ部12,22が形成されている。接合周縁部11、21とフランジ部12,22は、それぞれ相互に対向して溶着されている。
フランジ部12,22は、図2に示すように、アッパーシェル部10とロアシェル部20の本体とは断面略L字形に形成される。
【0036】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25の外面は、フランジ部12、22の先端まで全体が、耐燃料透過性多層樹脂シート3が一体的に溶着されて、上記の通り、外側シート層16、26を構成している。耐燃料透過性多層樹脂シート3の融着は耐燃料透過性多層樹脂シート3の表面を加熱して行うことができる。このため、フランジ部12、22の先端まで燃料透過を防止することができる。
【0037】
耐燃料透過性多層樹脂シート3は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着層と、その接着層の外面にポリエチレン(PE)から形成される外層から構成される5層のシートである。
【0038】
変性ポリエチレンから形成される接着層は、バリヤー層と外層の両方に対して接着性を有している。このため、バリヤー層と外層を強固に接着することができる。
耐燃料透過性多層樹脂シート3の外側の層は、衝撃や磨耗に強いポリエチレン(PE)から形成されることができ、この場合は、燃料タンク1の強度を増加させ、バリヤー層を保護することができる。内側樹脂層15、25と接合する層は、内側樹脂層15、25がオレフィン系合成樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されている場合は、内側樹脂層15、25と融着して、強固に接合されることができる。
【0039】
アッパーシェル部10の内側樹脂層15には、後で詳述するように、燃料ポンプユニット4等を点検するための点検開口部13が形成されている。点検開口部13は、外側がアッパーシェル部10の他の部分と連続している耐燃料透過性多層樹脂シート3である外側シート層16で覆われている。このため、点検開口部13部分も他の部分と同様に、燃料の透過を防止できる。
【0040】
次に、アッパーシェル部10とロアシェル部20の接合周縁部11、21を溶着する方法について説明する。まず、燃料タンク1内に装着する燃料ポンプユニット4等の部品をアッパーシェル部10とロアシェル部20に取付ける。
その後図2に示すように、アッパーシェル部10とロアシェル部20の接合周縁部11、21を、隙間を空けて対向させ、その間に熱板30を置き、接合周縁部11、21を全周に亘り加熱する。これにより、接合周縁部11、21とフランジ部12、22の対向する部分は、軟化することができる。
【0041】
次に、アッパーシェル部10とロアシェル部20の接合周縁部11、21のフランジ部12、22をそれぞれ押さえ治具で押さえて溶着する。このとき、フランジ部12、22の先端の外側シート層16、26を圧接して、薄肉にすると、フランジ部12、22からの燃料の透過を防止できる。
【0042】
次に、本発明の第1の実施の形態の点検開口部13の構造、製造方法及び燃料ポンプユニット4を点検、修理するときに点検開口部13を開口し、その開口を開口部開閉蓋50で閉じる方法について、図3〜図6に基づき、説明する。
点検開口部13は、アッパーシェル部10の外壁面から若干下がった段部13bが周囲に形成されている。この段部13bと連続して一体的に蓋部13aが形成され、点検開口部13の開口部分を塞いでいる。段部13bと蓋部13aの境界には、溝部13cが形成されている。段部13bから下方(タンクの内部方向)に、内面にネジ山が形成された点検開口部ネジ部14が筒状に形成されている。
【0043】
この段部13b、蓋部13a、溝部13c及び点検開口部ネジ部14は、アッパーシェル部10を射出成形するときに同時に成形することができる。
その後、図4に示すように、耐燃料透過性多層樹脂シート3が外面に、接着又は溶着され、外側シート層16となる。これにより、点検開口部13の耐燃料透過性を確保することができる。
以上により、燃料タンク1の製造は完了し、自動車等に装着することができる。
【0044】
次に、燃料タンク1を自動車等に装着後に、燃料ポンプユニット4等を点検又は修理する必要が生じた場合には、図5に示すように、点検開口部13の溝部13cに切断刃60を当て回転させて、蓋部13aとその上の外側シート層16を同時に切り取り、取り除く。そうすると、点検開口部13が開口して、点検又は修理をすることができる。点検開口部13の段部13bには、外側シート層16が接着したまま残されている。
【0045】
点検又は修理が完了すると、図6に示すように、点検開口部13に開口部開閉蓋50をはめ込んで塞ぐ。
開口部開閉蓋50は、点検開口部13を塞ぐ天井部51と、天井部の周囲の下面から下方に外面にネジ山が形成されたネジ部52が形成され、天井部51の周囲からから横方向に張り出した蓋フランジ部53が形成されている。開口部開閉蓋50は、耐燃料透過性の材料から形成されている。
【0046】
開口部開閉蓋50を点検開口部13にはめ込むときに、蓋フランジ部53の下にはシール部材であるシールリング54が取付けられる。シールリング54は、点検開口部13の段部13bに当接して、シールリング54が外れることなく安定して保持され、シールすることができる。段部13bには、外側シート層16が接合されており、シールリング54と開口部開閉蓋50により点検開口部13の耐燃料透過性を確保することができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態の点検開口部13の構造、製造方法及び燃料ポンプユニット4を点検、修理するときに点検開口部13を開口する方法について図7と図8に基づき説明する。点検開口部13を開口後、開口部開閉蓋50で点検開口部13を塞ぐ方法は、第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0048】
点検開口部13は、アッパーシェル部10の外壁面から若干下がった段部13bが周囲に形成されている。段部13bから下方(タンクの内部方向)に、内側樹脂層15から連続して、内面にネジ山が形成された点検開口部ネジ部14が筒状に形成されている。
この点検開口部ネジ部14に、アッパーシェル部10とは別に形成された点検開口部閉部材18がネジ止めされている。点検開口部閉部材18は、上面が平面状の天井部18aを形成している。天井部18aの周囲から下方に筒状部18dが形成され、筒状部18dの外周にはネジ山が形成されている。このため、点検開口部13の点検開口部ネジ部14にネジ止めされることができる。
【0049】
そして、この点検開口部閉部材18の上には、第1の実施の形態と同様に、耐燃料透過性多層樹脂シート3が、アッパーシェル部10から連続して接着又は溶着されている。そして、図8に示すように、外側シート層16となる、これにより、点検開口部13の耐燃料透過性を確保することができる。なお、点検開口部閉部材18と点検開口部13の段部13bの間には、溝状の凹部が形成されるため、点検開口部閉部材18の位置は確認することができる。
以上により、燃料タンク1の製造は完了し、自動車等に装着することができる。
【0050】
次に、自動車等に装着後に、燃料ポンプユニット4等を点検又は修理する必要が生じた場合には、第1の実施の形態と同様に、点検開口部13の溝部13cに切断刃60を当て回転させて、外側シート層16を切り取り、点検開口部閉部材18を回転させて、取り除く。そうすると、点検開口部13が開口して、点検又は修理をすることができる。その後、開口部開閉蓋50を取付けることも、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
点検開口部閉部材18は、点検開口部ネジ部14にネジ止めされているため、点検開口部閉部材18を容易に取り外すことができる。
第2の実施の形態では、点検開口部閉部材18はネジ止めされているので、外側シート層16のみを切断すればよく、点検開口部閉部材18の取り外しが容易である。
【0052】
次に、本発明の第3の実施の形態の点検開口部13の構造、製造方法及び燃料ポンプユニット4を点検、修理するときに点検開口部13を開口する方法について図9から図13に基づき説明する。
点検開口部13の形状は、第2の実施の形態と同じであり、アッパーシェル部10の外壁面から若干下がった段部13bが周囲に形成されている。段部13bから下方(タンクの内部方向)に、内側樹脂層15から連続して、内面にネジ山が形成された点検開口部ネジ部14が筒状に形成されている。
【0053】
この点検開口部ネジ部14に、アッパーシェル部10とは別に形成された開口部開閉蓋50がネジ止めされている。第2の実施の形態と同様に、点検開口部13を開口した後にその点検開口部13を塞ぐ開口部開閉蓋50を予め、ネジ止めするものである。この開口部開閉蓋50の下面には筒状で外周にネジ山が形成されたネジ部52が形成されており、このネジ部52が点検開口部ネジ部14にネジ止めされることができる。
【0054】
そして、この開口部開閉蓋50の上部の天井部51の上には、耐燃料透過性多層樹脂シート3が、アッパーシェル部10から連続して当接している。この耐燃料透過性多層樹脂シート3は、開口部開閉蓋50とは接着も溶着もされていない。このとき、開口部開閉蓋50の上部の天井部51は、アッパーシェル部10の上面よりは出っ張っている。このため、開口部開閉蓋50の位置は、確認することができる。
以上により、燃料タンク1の製造は完了し、自動車等に装着することができる。
【0055】
次に、自動車等に装着後に、燃料ポンプユニット4等を点検又は修理する必要が生じた場合には、図10に示すように、点検開口部13の開口部開閉蓋50の内側に、後述するように、外側シート層16の端部が段部13bの当接できる幅を残して、切断刃60を当て回転させて、その上の外側シート層16を切り取り、取り除く。外側シート層16は、開口部開閉蓋50とは接着していないため容易に取り除くことができる。そして、図11に示すように、開口部開閉蓋50回して外すことができる。そうすると、点検開口部13が開口して、点検又は修理をすることができる。
【0056】
点検又は修理が完了すると、図12と図13に示すように、点検開口部13に開口部開閉蓋50をはめ込んで塞ぐ。
まず、図12に示すように、外した開口部開閉蓋50の蓋フランジ部53の下面にシール部としてシールリング54をはめ込む。
その後、図13に示すように、外側シート層16の切残した端部を点検開口部13部の段部13bに押し当てる。
【0057】
そうして、開口部開閉蓋50を点検開口部13にはめ込む。そうすると、シールリング54は、点検開口部13の段部13bにある外側シート層16に当接して、外側シート層16とシールリング54の間でシールすることができ、耐燃料透過性を確保することができる。また、段部13bにより、シールリング54が外れることなく安定して保持されることができる。
なお、開口部開閉蓋50は、燃料透過を防止する材料で形成されている。
【0058】
次に、本発明の第4の実施の形態の点検開口部13の構造、製造方法及び燃料ポンプユニット4を点検、修理するときに点検開口部13を開口する方法について図14から図18に基づき説明する。
図14に示すように、点検開口部13及び開口部開閉蓋50の形状は同じである。また、開口部開閉蓋50をネジ込み、この開口部開閉蓋50の上部の天井部51の上に、耐燃料透過性多層樹脂シート3が、アッパーシェル部10から連続して当接していることも同じである。また、燃料タンク1の製造は完了するところまでは、同じである。即ち、この耐燃料透過性多層樹脂シート3は、開口部開閉蓋50とは接着も溶着もされていなく、開口部開閉蓋50の上部の天井部51は、アッパーシェル部10の上面よりは出っ張っていることも同じである。
【0059】
しかし、自動車等に装着後に、燃料ポンプユニット4等を点検又は修理する必要が生じた場合のその後が異なる。
図15に示すように、点検開口部13の開口部開閉蓋50と点検開口部13の境界部分で、外側シート層16に切断刃60を当て回転させて、その上の外側シート層16を切り取り、取り除く。外側シート層16は、開口部開閉蓋50とは接着していないため容易に取り除くことができる。そして、図16に示すように、開口部開閉蓋50回して外すことができる。そうすると、点検開口部13が開口して、点検又は修理をすることができる。
【0060】
点検又は修理が完了すると、図17と図18に示すように、点検開口部13に開口部開閉蓋50をはめ込んで塞ぐ。
まず、図17に示すように、外した開口部開閉蓋50の蓋フランジ部53の下面にシール部としガスケット55をはめ込む。
その後、図18に示すように、外側シート層16の端部と点検開口部13部の段部13bにガスケット55を押し当てできるように開口部開閉蓋50をねじ込む。
【0061】
そうして、開口部開閉蓋50を点検開口部13にはめ込む。そうすると、ガスケット55は、外側シート層16の端部と点検開口部13の段部13bに当接して、外側シート層16とガスケット55の間でシールすることができ、耐燃料透過性を確保することができる。特に、ガスケット55は外側シート層16の端部を覆うようにフランジ部53で圧接されるので、開口部開閉蓋50の蓋フランジ部53と段部13bにより、ガスケット55が外れることなく安定して保持されることができる。
なお、開口部開閉蓋50は、同様に燃料透過を防止する材料で形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンクの長手方向の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部を熱板で溶融する状態の断面模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態である、点検開口部の製造工程を示す断面模式図であり、点検開口部に耐燃料透過性多層樹脂シートを融着する部分の工程を示す断面模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態である、点検開口部に耐燃料透過性多層樹脂シートを融着した状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態である、点検開口部の開口工程を示す断面模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態である、点検開口部の開口後、点検開口部を開口部開閉蓋で閉じた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態である、点検開口部の製造工程を示す断面模式図であり、点検開口部に耐燃料透過性多層樹脂シートを融着する部分の工程を示す断面模式図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態である、点検開口部に耐燃料透過性多層樹脂シートを融着した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態である、点検開口部に耐燃料透過性多層樹脂シートを融着した状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態である、点検開口部の開口工程において、外側シート層を切除する工程を示す断面模式図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態である、点検開口部の開口工程において、開口部開閉蓋を外す工程を示す断面模式図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態である、点検開口部の開口工程において、開口部開閉蓋を外し、シールリングを取付けた工程を示す断面模式図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態である、点検開口部の開口後、点検開口部を開口部開閉蓋で閉じた状態を示す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態である、点検開口部に耐燃料透過性多層樹脂シートを融着した状態を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態である、点検開口部の開口工程において、外側シート層を切除する工程を示す断面模式図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態である、点検開口部の開口工程において、開口部開閉蓋を外す工程を示す断面模式図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態である、点検開口部の開口工程において、開口部開閉蓋を外し、シールガスケットを取付けた工程を示す断面模式図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態である、点検開口部の開口後、点検開口部を開口部開閉蓋で閉じた状態を示す断面図である。
【図19】従来のアッパーシェル部とロアシェル部を溶着した状態を示す模式図である。
【図20】従来の燃料タンクの断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料タンク
10 アッパーシェル部
13 点検開口部
15、25 内側樹脂層
16、26 外側シート層
18 点検開口部閉部材
20 ロアシェル部
50 開口部開閉蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクにおいて、
該燃料タンクは、それぞれ射出成形により分割して別々に成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の接合周縁部が融合され一体に構成されるとともに、上記アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ内側樹脂層と、該内側樹脂層の外面を覆う外側シート層とより構成され、
アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁の一部に、燃料タンク内の部品の点検開口部を設け、該点検開口部は、蓋部により閉じられ、該蓋部を上記外側シート層が覆い、上記蓋部は、上記燃料タンク内の部品の点検時には上記外側シート層とともに分離可能に形成されるとともに、上記点検開口部の上記内側樹脂層に、上記蓋部が分離された場合には上記点検開口部を塞ぐ開口部開閉蓋が取付け可能な点検開口部ネジ部が形成されたことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
上記蓋部は、上記点検開口部と一体に形成され、上記燃料タンク内の部品の点検、修理時には切断可能に形成された請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
上記蓋部は、点検開口部と別に形成され、上記点検開口部ネジ部にネジ止めされている請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項4】
上記外側シート層は、耐燃料透過性多層樹脂シートで形成される請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項5】
上記点検開口部の周囲に、アッパーシェル部又はロアシェル部の外壁面よりも下がった段部を形成し、上記蓋部を分離したときは、上記段部に上記外側シート層が当接又は接合するとともに、上記段部の外側シート層の上に上記開口部開閉蓋のシール部材が当接可能に形成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項6】
上記点検開口部の蓋部は、上記点検開口部ネジ部にネジ止めされたときに上記点検開口部の段部に当接するフランジ部が形成され、上記外側シート層は、上記点検開口部と別に形成され上記点検開口部ネジ部にネジ止めされている上記蓋部とは接着されていなく、上記蓋部を外して上記点検開口部を開口するときに、上記外側シート層は上記段部に対応する部分を残して切除され、上記点検開口部が開口後に、上記蓋体を点検開口部ネジ部にネジ止めしたときに、上記段部に対応する部分の上記外側シート層は、上記蓋部に押圧され、上記段部に当接する請求項5に記載の燃料タンク。
【請求項7】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの接合周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、上記外側シート層は上記フランジ部の先端まで被覆した請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
上記アッパーシェル部とロアシェル部は、上記内側樹脂層が高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、上記外側シート層が耐燃料透過性多層樹脂シートで形成された請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の燃料タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2008−155877(P2008−155877A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349999(P2006−349999)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】