説明

燃料フィルタ取り付け構造

【課題】他の構成部品と干渉しない燃料フィルタ取付構造を提供する。
【解決手段】燃料フィルタ取付構造1はマッドガード15を有し、マッドガード15はサイドフレーム11aに締結されている。
マッドガード15の後方には燃料フィルタブラケット17が設けられている。燃料フィルタブラケット17は平面形状がハット型形状を有しており、ハット型形状のフランジ部43a、43bがサイドフレーム11aに締結されている。
燃料フィルタブラケット17のハット型形状の内部には燃料フィルタ21が締結されている。
燃料フィルタブラケット17と、マッドガード15は連結ブラケット19によって連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料フィルタ取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス等の車両においては、燃料を燃料タンクからエンジンに供給する途中で、燃料に含まれているゴミや水分を除去する燃料フィルタと呼ばれる装置がある。
【0003】
燃料フィルタは従来、エンジン付近に設けられていたが、エンジンの振動の影響により、フィルタの目詰まり検知センサ等の部品が故障する場合があるため、近年ではエンジンから離れた荷台の下のサイドフレームに設けられていることがある。
【0004】
図11は燃料フィルタ93を搭載したトラック2aを示す上面図であって、図12は燃料フィルタ93を搭載したトラック2bを示す側面図である。
【0005】
図11に示すように燃料フィルタ93は、エンジン88から離れた荷台75の下部のサイドフレーム81aに設けられている。
このような構成としては、以下のようなものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10-100692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成では、架装と燃料フィルタが接触してしまうという問題がある。
例えば車両を冷凍車とする場合には、荷台下に大型の冷凍機ユニット87を架装することがある。しかしながら、荷台下にはエアタンク89、バッテリー90、燃料タンク91などの部品が配設されるため、止む無く、燃料フィルタ93の搭載位置を移設して、大型の冷凍機ユニット87を架装することがある。
【0007】
このような場合は、図12に示すように、キャブ73の下部に燃料フィルタ93を設ける方法が考えられる。
しかし、キャブチルト機構を備えたキャブオーバー型の車両の場合、キャブ73に前輪77aのマッドガード95が設けられているため、図12に示すように、キャブ73を傾斜させた場合に、図中斜線部で示すマッドガード95の可動範囲内に燃料フィルタ93を設けることができない。
【0008】
さらに、キャブ73を傾斜させるための電動ユニット等が設けられている場合は、燃料フィルタ93の取付可能な場所は更に制限される。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は他の構成部品と干渉しない燃料フィルタ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の燃料フィルタ取付構造は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、前記サイドフレームに対して回動自在に支持されるキャブとを備えたキャブオーバー型車両の燃料フィルタ取付構造であって、前輪の後方に設けられ、前記サイドフレームに支持されるマッドガードと、前記マッドガードの後方に配置される燃料フィルタと、前記サイドフレームの外側に取り付けられ、前記燃料フィルタを支持するブラケットと、を備え、前記ブラケットが前記サイドフレームから離れた位置において前記マッドガードに結合されている(請求項1)。
【0011】
前記燃料フィルタは、前記キャブの下部に設けられていることが好ましい(請求項2)。
前記ブラケットは、前記サイドフレームに取り付けられた燃料フィルタブラケットと、前記燃料フィルタブラケットと前記マッドガードを連結する連結ブラケットと、を有し、前記燃料フィルタブラケットは、水平断面形状が車両内方に向けて開口し、その開口縁に夫々フランジ部を有するハット型であり、前記ハット型の内部に前記燃料フィルタが設けられ、前記フランジ部が前記サイドフレームに取り付けられていることが好ましい(請求項3)。
【0012】
前記燃料フィルタブラケットは、前記ハット型の両側面と前記フランジ部とを連結する補強部材が設けられていることが好ましい(請求項4)。
前記マッドガードは、上下方向に延びる複数の凹状の溝部を有し、前記溝部のうち、少なくとも1つに前記連結ブラケットが嵌合されていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明の燃料フィルタの取付構造によれば、マッドガードをサイドフレームに取り付けたので、従来までのキャブにマッドガードを設けた場合のように、キャブを傾斜させる際に発生するマッドガードの可動範囲内に燃料フィルタを配設することが可能となる。これにより、燃料フィルタは車両の架装に影響されることがなくなる。
また、燃料フィルタをブラケットを介してサイドフレームに取り付けたので、燃料フィルタをエンジン付近に設けた場合と比べて燃料フィルタの振動が抑えられ、燃料フィルタの目詰まり検知センサ等の部品が故障することを抑制できる。
そして、燃料フィルタはマッドガードの後方に配置されているので、自車の前輪からの泥や石などの飛散物が衝突し難くなっている。
さらに、マッドガードは、サイドフレームに取り付けられたブラケットに結合されているので、マッドガードの振動抑制に効果がある。
請求項2記載の本発明の燃料フィルタの取付構造によれば、燃料フィルタはキャブの下部に設けられているので、燃料フィルタに雪や雨が降りかかることを低減できると共に、キャブを傾斜させた場合にはフィルタの交換作業などの整備性が向上する。
さらに、キャブの下部は、エンジン等の発熱により、雰囲気温度が高いため、燃料の凍結防止に効果がある。
請求項3記載の本発明の燃料フィルタの取付構造によれば、燃料フィルタブラケットは、水平断面形状が車両内方に向けて開口したハット型であるため、高剛性である。
また、連結ブラケットは、高剛性である燃料フィルタブラケットとマッドガードを連結するため、マッドガードの振動抑制に効果がある。
さらに燃料フィルタは、ハット型である燃料フィルタブラケットの内部に設けられているため、自車および他車からの泥や石などの飛散物が衝突し難くなっている。
請求項4記載の本発明の燃料フィルタの取付構造によれば、燃料フィルタブラケットは、両側面とフランジ部とを連結する補強板を設けているため、両側面が車両前後方向の荷重に対して変形することを抑制できる。
請求項5記載の本発明の燃料フィルタの取付構造によれば、上下方向に延びる複数の凹状の溝部のうち、少なくとも1つに連結ブラケットを嵌合しているので、マッドガードの剛性が向上し、振動抑制に効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る燃料フィルタ取付構造1が設けられたトラック2を示す側面図であって、図2は図1のA方向矢視図である。
【0015】
また、図3は図1の燃料フィルタ取付構造1付近の拡大斜視図であって、図4は図3のB方向矢視図、図5は図3のC方向矢視図、図6は図3のD方向矢視図である。
【0016】
さらに、図7は燃料フィルタブラケット17を示す斜視図である。
また、図8は連結ブラケット19を示す斜視図であって、図9は図8のG方向矢視図、図10は図8のH方向矢視図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、トラック2は車両前後に延びた左右一対のサイドフレーム11a、11bを有し、サイドフレーム11aとサイドフレーム11bはクロスメンバ13a、13b、13c、13dで連結されている。
【0018】
サイドフレーム11a、11b上には既知のキャブチルト機構によって該サイドフレーム11a、11bに対して回動自在に支持されているキャブ3と、その後方に荷台5が設けられ、側面には前輪7a、7b、後輪9a、9bが設けられている。
【0019】
前輪7aの後方で、かつキャブ3の下面には、燃料フィルタ取付構造1が設けられている。燃料フィルタ取付構造1は、サイドフレーム11aの側面に設けられている。
【0020】
図3、図4、図5および図6に示すように、燃料フィルタ取付構造1はマッドガード15を有している。
【0021】
図3に示すように、マッドガード15は、本体29および本体29の上下端に設けられた上面板31b、下面板31aからなる。
本体29の表面には凹状の溝部である、ビード35a、35b、35c、35d、35eが上下方向に延びて設けられ、マッドガード15の本体29の剛性を向上し、車両の振動や走行風により発生する曲げや捩りを抑制している。
【0022】
図4に示すように、マッドガード15は、ボルト23a、23b、23cによってサイドフレーム11aの側面に締結されている。
【0023】
図3〜図6に示すように、マッドガード15の後方には燃料フィルタブラケット17が設けられている。
図5および図7に示すように、燃料フィルタブラケット17は、平面形状が車両内方に向けて開口したハット型の形状を有しており、ハット型の側面である側板39a、39bと、該側板39a、39b間に設けられる天板37と、側板39a、39bに対して略直角に形成されたフランジ部43a、43bとからなる。
【0024】
側板39a、39bにはフランジ部43a、43bが設けられており、フランジ部43a、43bにはボルト挿通孔45a、45b、45c、45d(図示なし)が設けられている。
【0025】
ボルト挿通孔45a、45b、45c、45d(図示なし)にはボルト27a、27b、27c、27d(図示なし)が挿入されており、図4、図5に示すように、燃料フィルタブラケット17は、ボルト27a、27b、27c、27d(図示なし)によってサイドフレーム11aの側面に締結されている。
なお、側板39a、39bとフランジ部43a、43bの間には両部材を連結する補強板(補強部材)41a、41bが設けられており、側板39a、39bが車両前後方向の荷重に対して変形することを抑制している。
【0026】
また、図7に示すように、天板37にはボルト挿通孔47a、47bが設けられており、ボルト挿通孔47a、47bにはボルト25a、25bが挿通されている。
そして、図5に示すように、ハット型の内部には燃料フィルタ21がボルト25a、25bで燃料フィルタブラケット17に締結されている。
【0027】
燃料フィルタ21は、前述のように、燃料に含まれているゴミや水分を除去する装置であり、内部には図示しないフィルタが設けられている。
【0028】
図3〜図6に示すように、燃料フィルタブラケット17とマッドガード15とは、連結ブラケット19で連結されている。
【0029】
連結ブラケット19は、図8〜図10に示すように、本体49および本体49に設けられたフランジ51からなり、図3に示すように、本体49がマッドガード15のビード35cに嵌合され、図示しないボルトによって締結されている。
【0030】
このように、ビード35dに連結ブラケット19を嵌合することにより、マッドガード15の本体29の剛性が向上する。また、連結ブラケット19は、なるべく車両外方側のビードに嵌合させることが好ましく、マッドガード15の本体29が走行風を受けてばたつくことにより振動してしまうことを抑制できる。
【0031】
また、図9に示すように、フランジ51にはボルト挿通孔53a、53bが設けられており、ボルト挿通孔53bにはボルト24aおよび図示しないボルトが挿通されている。
そして、図4に示すように、連結ブラケット19と燃料フィルタブラケット17とはボルト24aおよび図示しないボルトで燃料フィルタブラケット17の天板37に設けられたボルト孔37a、37bに締結されている。
【0032】
本実施形態の燃料フィルタ取付構造1によれば、マッドガード15をサイドフレーム11aに取り付けたので、従来までのキャブ73にマッドガード95を設けた場合のように、キャブ73を傾斜させる際に発生するマッドガード95の可動範囲内に燃料フィルタ21を配設することが可能となる。これにより、燃料フィルタ21は車両の架装に影響されることがなくなると共に、従来、燃料フィルタ21が配設されていた荷台75の下部に冷凍機ユニット87等の構成部品を配設することができる。
【0033】
また、燃料フィルタ21を燃料フィルタブラケット17によりサイドフレーム11aに取り付けたので、燃料フィルタをエンジン付近に設けた場合と比べて、燃料フィルタ21の振動が抑えられ、燃料フィルタ21の目詰まり検知センサ等の部品が故障することを抑制できる。
【0034】
そして、燃料フィルタ21は、マッドガード15の後方に配置されているので、前輪7aからの泥や石の飛散物が衝突し難くなっている。
さらに、マッドガードは、サイドフレームに取り付けられたブラケットに結合されているので、マッドガードの振動抑制に効果がある。
【0035】
また、燃料フィルタ21は、キャブ3の下部に設けられているので、燃料フィルタ21に雪や雨が降りかかることを低減できると共に、キャブ3を傾斜させた場合には、フィルタの交換作業などの整備性が向上する。
さらに、キャブ3の下部は、エンジン等の発熱により、雰囲気温度が高いため、燃料の凍結防止に効果がある。
【0036】
また、燃料フィルタブラケット17は、水平断面形状が車両内方に向けて開口したハット型であるため、高剛性であり、さらに、側板39a、39bとフランジ部43a、43bとを連結する補強板41a、41bを有しているため、側板39a、39bが車両前後方向の荷重に対して変形することを抑制できる。
そして、燃料フィルタ21は、ハット型である燃料フィルタブラケット17の内部に設けられているため、自車及び他車からの泥や石などの飛散物が衝突し難くなっている。
【0037】
連結ブラケット19は、高剛性である燃料フィルタブラケット17とマッドガード15を連結するため、マッドガード15の振動抑制に効果がある。さらに、マッドガード15側の取り付けは、マッドガード15に設けられたビード35cに嵌合され、連結ブラケット19とビード35cを形成する3辺とが面接触しているので、マッドガード15の振動抑制効果はより向上する。なお、本実施形態では、連結ブラケット19はビード35cのみに嵌合されているが、複数のビードに嵌合させるように連結ブラケット19の本体49の形状を変形してもよい。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、燃料フィルタ取付構造1がマッドガード15、燃料フィルタブラケット17、連結ブラケット19および燃料フィルタ21からなり、燃料フィルタ取付構造1はサイドフレーム11aに取り付けられている。
従って、燃料フィルタ21が他の構成部品と干渉するのを防ぐことができる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】トラック2を示す側面図
【図2】図1のA方向矢視図
【図3】図1の燃料フィルタ取付構造1付近の拡大斜視図
【図4】図3のB方向矢視図
【図5】図3のC方向矢視図
【図6】図3のD方向矢視図
【図7】燃料フィルタブラケット17を示す斜視図
【図8】連結ブラケット19を示す斜視図
【図9】図12のG方向矢視図
【図10】図12のH方向矢視図
【図11】トラック2aを示す上面図
【図12】トラック2bを示す側面図
【符号の説明】
【0041】
1…………燃料フィルタ取付構造
2…………トラック
3…………キャブ
5…………荷台
7a………前輪
9a………後輪
11a……サイドフレーム
13a……クロスメンバ
15………マッドガード
17………燃料フィルタブラケット
19………連結ブラケット
21………燃料フィルタ
23a……ボルト
24a……ボルト
25a……ボルト
27a……ボルト
29………本体
31a……下面板
31b……上面板
35a……ビード
37………天板
39………側板
41a……補強板
49………本体
51………フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、
前記サイドフレームに対して回動自在に支持されるキャブとを備えたキャブオーバー型車両の燃料フィルタ取付構造であって、
前輪の後方に設けられ、前記サイドフレームに支持されるマッドガードと、
前記マッドガードの後方に配置される燃料フィルタと、
前記サイドフレームの外側に取り付けられ、前記燃料フィルタを支持するブラケットと、を備え、
前記ブラケットが前記サイドフレームから離れた位置において前記マッドガードに結合されていることを特徴とする燃料フィルタ取付構造。
【請求項2】
前記燃料フィルタは、前記キャブの下部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ取り付け構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、
前記サイドフレームに取り付けられた燃料フィルタブラケットと、
前記燃料フィルタブラケットと前記マッドガードを連結する連結ブラケットと、を有し、
前記燃料フィルタブラケットは、水平断面形状が車両内方に向けて開口し、その開口縁に夫々フランジ部を有するハット型であり、前記ハット型の内部に燃料フィルタが設けられ、前記フランジ部が前記サイドフレームに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ取り付け構造。
【請求項4】
前記燃料フィルタブラケットは、前記ハット型の両側面と前記フランジ部とを連結する補強部材が設けられていることを特徴とする請求項3記載の燃料フィルタ取り付け構造。
【請求項5】
前記マッドガードは、上下方向に延びる複数の凹状の溝部を有し、前記溝部のうち、少なくとも1つに前記連結ブラケットが嵌合されていることを特徴とする請求項1記載の燃料フィルタ取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−261349(P2007−261349A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87004(P2006−87004)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】