説明

燃料供給装置及びガスタービン

【課題】油燃料と水との混合状態を良好にして、油燃料と水との分離の進行を抑制すること。
【解決手段】燃料供給装置は、油燃料と水とが混合したエマルジョン燃料を燃焼器に供給可能な燃料供給管121と、燃料供給管121に設けられ、エマルジョン燃料に含まれる水の液滴を微細化する水滴微細化装置130と、を備える。上記構成により、水滴微細化装置130がエマルジョン燃料を混合してエマルジョン燃料に含まれる水の液滴を微細化するため、燃料供給装置100は、油燃料と水との混合が良好となり、油燃料と水との分離の進行を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器に燃料を供給する燃料供給装置及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼器が燃料を燃焼させることで発生する燃焼ガスからエネルギーを取り出す装置としてガスタービンがある。ガスタービンによってエネルギーが取り出された燃焼ガスは、排気ガスとして排出される。この排気ガスに含まれるNOxを低減する手段の一つとして、燃料に水を添加してから前記燃料を燃焼させる技術がある。
【0003】
このような技術として、例えば、特許文献1には、水噴射穴から供給される水をガス燃料と混合して噴射するガス燃料ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2955093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、燃料はガス燃料に限られず、例えば、液体燃料としての油燃料がある。ガス燃焼と同様、油燃料に水を混ぜた燃料(エマルジョン燃料)を燃焼させても、NOxを低減することができる。しかしながら、水は油と混ざりにくく、油燃料に水を加えても、時間の経過と共に水と油燃料の分離が進行するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、油燃料と水との混合状態を良好にして、油燃料と水との分離の進行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る燃料供給装置は、油燃料と水とが混合したエマルジョン燃料を燃焼器に供給可能な燃料供給通路と、前記燃料供給通路を流れる前記エマルジョン燃料に含まれる前記水の液滴を微細化する水滴微細化手段と、を備え、前記水滴微細化手段は、前記エマルジョン燃料を掻き混ぜる複数のミキサーと、前記複数のミキサーよりも前記エマルジョン燃料の流れの上流側に設けられて、前記各ミキサーに分配する前記エマルジョン燃料の流量を調節可能な燃料分配量調節手段と、を含んで構成され、前記エマルジョン燃料が前記ミキサーを通過する際に損失した圧力を測定可能な圧力損失測定手段を備え、前記燃料分配量調節手段によって前記各ミキサーに分配される前記エマルジョン燃料の流量を、前記圧力損失測定手段が測定した値に基づいて変更することを特徴とする。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガスタービンは、油燃料と水とが混合したエマルジョン燃料を供給する燃料供給装置と、前記燃料供給装置から供給された前記エマルジョン燃料を燃焼させる燃焼器と、前記エマルジョン燃料が燃焼した燃焼ガスのエネルギーを回転エネルギーに変換するタービン部と、を備え、前記燃料供給装置は、前記エマルジョン燃料を前記燃焼器に供給可能な燃料供給通路と、前記燃料供給通路を流れる前記エマルジョン燃料に含まれる前記水の液滴を微細化する水滴微細化手段と、を備え、前記水滴微細化手段は、前記エマルジョン燃料を掻き混ぜる複数のミキサーと、前記複数のミキサーよりも前記エマルジョン燃料の流れの上流側に設けられて、前記各ミキサーに分配する前記エマルジョン燃料の流量を調節可能な燃料分配量調節手段と、を含んで構成され、前記エマルジョン燃料が前記ミキサーを通過する際に損失した圧力を測定可能な圧力損失測定手段を備え、前記燃料分配量調節手段によって前記各ミキサーに分配される前記エマルジョン燃料の流量を、前記圧力損失測定手段が測定した値に基づいて変更することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る燃料供給装置及びガスタービンは、上記構成により、水滴微細化手段がエマルジョン燃料を混合して前記エマルジョン燃料に含まれる前記水の液滴を微細化するため、油燃料と水との混合が良好となり、油燃料と水との分離の進行を抑制することができる。
【0010】
ここで、油燃料と水との分離の進行を抑制する方法として、エマルジョン燃料を乳化される乳化剤をエマルジョン燃料に添加する方法が考えられる。しかしながら、エマルジョン燃料に乳化剤を添加する場合、乳化剤を必要とする分、燃料のコストが増加するおそれが考えられる。また、数ある乳化剤の中には、ガスタービンに不向きな成分を含むものもあり、このような乳化剤を使用した場合、ガスタービンの耐久性が低下するおそれも考えられる。
【0011】
しかしながら、本発明に係る燃料供給装置及びガスタービンは、油燃料と水との混合が良好となり、油燃料と水との分離の進行を抑制することができるため、上述の乳化剤を必要としない。よって、燃料供給装置及びガスタービンは、乳化剤を必要としない分、燃料のコストを低減することができる。また、乳化剤を必要としない分、ガスタービンの耐久性が低下するおそれも抑制できる。
【0012】
例えば、燃料分配量調節手段が複数のミキサーすべてにエマルジョン燃料を分配した場合、水滴微細化手段全体で扱えるエマルジョン燃料の流量は最大となる。また、例えば、燃料分配量調節手段が複数のミキサーのうち、最も扱えるエマルジョン燃料の流量が少ないミキサーのみにエマルジョン燃料を分配した場合、水滴微細化手段全体で扱えるエマルジョン燃料の流量は最小となる。
【0013】
このようにして、燃料分配量調節手段が各ミキサーに分配する前記エマルジョン燃料の流量を調節することで、本発明に係る燃料供給装置は、水滴微細化手段全体で扱えるエマルジョン燃料の流量が変化する。これにより、燃料供給装置は、燃焼器に供給するエマルジョン燃料の流量にあわせて燃料分配量調節手段が各ミキサーに分配する前記エマルジョン燃料の流量を調節することで、水滴微細化手段全体で扱えるエマルジョン燃料の流量を調節することができる。
【0014】
一般的に、前記ミキサーが扱えるエマルジョン燃料の流量よりも、前記ミキサーに供給されたエマルジョン燃料の流量が多くなるほど、ミキサーを通過する際にエマルジョン燃料が損失する圧力は大きくなる。本発明に係る燃料供給装置は、ミキサーを通過する際にエマルジョン燃料が損失する圧力に基づいて、前記ミキサーが扱えるエマルジョン燃料の流量よりも、前記ミキサーに供給されたエマルジョン燃料の流量が多いか否かを判定することができる。
【0015】
これにより、燃料供給装置は、前記ミキサーが扱えるエマルジョン燃料の流量よりも、前記ミキサーに供給されたエマルジョン燃料の流量が多い場合に、燃料分配量調節手段が前記ミキサー以外のミキサーに燃料を分配することができる。これにより、燃料供給装置は、水滴微細化手段全体で扱えるエマルジョン燃料の流量を増加させることができる。
【0016】
ここで、前記ミキサーが扱えるエマルジョン燃料の流量よりも、前記ミキサーに供給されたエマルジョン燃料の流量が多い場合、燃料供給装置は、エマルジョン燃料の圧力の損失が増大することに起因して、燃焼器に供給可能なエマルジョン燃料の流量が不足するおそれがある。しかしながら、燃料供給装置は、水滴微細化手段全体で扱えるエマルジョン燃料の流量を増加させることができるので、燃焼器に供給可能なエマルジョン燃料の流量が不足するおそれを抑制することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様としては、前記燃焼器が前記エマルジョン燃料を燃焼させる際に燃焼振動を生じた場合、前記燃料分配量調節手段によって前記各ミキサーに分配される前記エマルジョン燃料の流量を変更することが望ましい。
【0018】
燃焼器が燃焼振動を生じた際は、燃焼の燃焼速度を変えることによって前記燃焼振動を抑制することができる。そこで、本発明に係る燃料供給装置は、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさを変化させることによって、燃焼器での水滴の蒸発の時期を変化させ、結果としてエマルジョン燃料の燃焼速度を変化させる。
【0019】
具体的には、燃料供給装置は、水滴微細化手段全体での許容量を変化させることによって、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさを変化させる。ここで、許容量とは、ミキサーが取り扱い可能なエマルジョン燃料の流量である。ミキサーに許容量と同じ流量のエマルジョン燃料が供給されると、ミキサーはエマルジョン燃料を適当に混合することができる。
【0020】
例えば、ミキサーに供給されるエマルジョン燃料の流量が一定で、ミキサーの許容量が小さくなればなるほどエマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさは小さくなる。一方、ミキサーに供給されるエマルジョン燃料の流量が一定で、ミキサーの許容量が大きくなればなるほどエマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさは大きくなる。
【0021】
燃料供給装置は、燃料分配量調節手段が各ミキサーに分配するエマルジョン燃料の流量を変化させることによって、水滴微細化手段全体での許容量を変化させる。例えば、燃料供給装置は、第1ミキサーのみにエマルジョン燃料を供給することにより、水滴微細化手段全体での許容量を最小とし、第1ミキサー及び第2ミキサーの両方にエマルジョン燃料を供給することによって水滴微細化手段全体での許容量を最大とする。
【0022】
燃料供給装置は、このようにして水滴微細化手段全体での許容量を変化させることによって、燃料器に供給するエマルジョン燃料の流量を変化させることなく、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさを調節する。これにより、燃料供給装置は、燃焼器での水滴の蒸発の時期を変化さてエマルジョン燃料の燃焼速度を変化させる。結果として、燃料供給装置は、燃料振動を抑制することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様としては、前記水滴微細化手段は、前記エマルジョン燃料が流動可能な外管の内部に静止部材が固定されて構成されるスタティックミキサーを含んで構成されることが望ましい。
【0024】
スタティックミキサーは、可動部材がない。一般的に可動部材は、静止部材よりも不具合が発生しやすい。よって、燃料供給装置は、可動部材がない分、不具合の発生を抑制することができる。また、可動部材を動かすための構成やエネルギーを必要としないため、燃料供給装置は、部品点数が低減され、コストが低減される。また、部品点数が低減されるため、燃料供給装置は、構成の複雑化が抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、油燃料と水との混合状態を良好にして、油燃料と水との分離の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガスタービンを示す構成図である。
【図2】燃料供給装置を示す構成図である。
【図3】実施形態1の水滴微細化装置を示す構成図である。
【図4】実施形態2の水滴微細化装置を示す構成図である。
【図5】実施形態3の水滴微細化装置を示す構成図である。
【図6】実施形態4の水滴微細化装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0028】
(実施形態1)
図1は、ガスタービンを示す構成図である。本実施形態に係るガスタービン500は、図1に示すように、気体の流れの上流側から下流側に向けて順に、圧縮部510と、燃焼部520と、タービン部530と、排気部540とを含んで構成される。
【0029】
圧縮部510は空気を加圧して、燃焼部520へ加圧された空気を送り出す。燃焼部520は、前記加圧された空気に燃料を供給すると共に燃料を燃焼させる。タービン部530は、燃焼部520から送り出された燃焼ガスが持つエネルギーを回転エネルギーに変換する。排気部540は、前記燃焼ガスを大気へと排出する。
【0030】
燃焼部520は、複数の燃焼器521を含んで構成される。複数の燃焼器521は、それぞれ、内筒522と、尾筒523と、燃料ノズル524とを含んで構成される。内筒522は、圧縮空気の通路であって略円筒形状に形成さる。内筒522は、燃料ノズル524を構成するメインノズルと、パイロットノズルとを内部に支持する。
【0031】
尾筒523は筒状に形成され、内部に燃料が燃焼する燃焼領域が形成される。尾筒523は、内筒522の軸方向の端部のうち、一方の端部に取り付けられる。内筒522の軸方向の端部のうち尾筒523とは反対側の他方の端部には、内筒522の内部に配置される燃料ノズル524に燃料を供給するための燃料供給装置100の配管が接続される。
【0032】
ここで、燃料供給装置100によって燃料ノズル524に供給される燃料は、油燃料と水とが混合されたエマルジョン燃料である。燃料供給装置100は、油燃料と水とを混合させて燃料ノズル524にエマルジョン燃料を供給する。以下に燃料供給装置100の構成を説明する。
【0033】
図2は、燃料供給装置を示す構成図である。燃料供給装置100は、油燃料タンク111と、水タンク112と、油燃料管113と、水管114と、油燃料ポンプ115と、水ポンプ116と、油燃料分配器117と、水分配器118と、燃料供給通路としての複数の燃料供給管121と、複数の水供給管122とを含んで構成される。油燃料タンク111は、油燃料を溜める容器である。油燃料分配器117は、供給された油燃料を複数の経路に分配する手段である。
【0034】
油燃料タンク111と油燃料分配器117とは、油燃料ポンプ115を介して油燃料管113で接続される。燃料供給装置100は、油燃料分配器117に複数の燃料供給管121が接続される。燃料供給管121は、一方の端部が油燃料分配器117に接続され、他方の端部が図1に示す複数の燃焼器521の燃料ノズル524にそれぞれ接続される。
【0035】
水タンク112は、油燃料に混合させる水を溜める容器である。水分配器118は、供給された水を複数の経路に分配する手段である。水タンク112と水分配器118とは、水ポンプ116を介して水管114で接続される。燃料供給装置100は、水分配器118に複数の水供給管122が接続される。水供給管122は、一方の端部が水分配器118に接続され、他方の端部が複数の燃料供給管121にそれぞれ開口する。
【0036】
上記構成の燃料供給装置100は、油燃料ポンプ115が油燃料管113を介して油燃料タンク111から油燃料分配器117へ油燃料を供給する。油燃料分配器117によって複数の燃料供給管121に分配された油燃料は、燃料供給管121を介して、図1に示す複数の燃料ノズル524に導かれる。
【0037】
また、燃料供給装置100は、水ポンプ116が水管114を介して水タンク112から水分配器118へ水を供給する。水分配器118によって複数の水供給管122に分配された水は、水供給管122を介して複数の燃料供給管121に導かれる。これにより、油燃料と水とが混ざってエマルジョン燃料となり、燃料供給装置100は、このエマルジョン燃料を燃料ノズル524に供給する。
【0038】
ここで、エマルジョン燃料は、時間の経過と共に油燃料と水との分離が進行する。ここで、油燃料と水との分離の進行とは、具体的には、油燃料の中に混在する水の液滴が寄り集まって大きくなることである。以下、エマルジョン燃料の油燃料の中に混在する水の液滴を水滴という。水滴の大きさが適当な大きさよりも大きくなると、ガスタービンは、排気ガスに含まれるNOxやスス低減が不十分となる。
【0039】
エマルジョン燃料に乳化剤を添加してエマルジョン燃料を乳化させることによっても、油燃料と水との分離の進行は抑制することができる。しかしながら、乳化剤をエマルジョン燃料に添加する場合、乳化剤を必要とする分、燃料のコストが増加するおそれが考えられる。また、数ある乳化剤の中には、ガスタービンに不向きな成分を含むものもあり、このような乳化剤を使用した場合、ガスタービンの耐久性が低下するおそれも考えられる。
【0040】
そこで、本実施形態の燃料供給装置100は、乳化剤を添加することなく、エマルジョン燃料の油燃料と水との混合を良好にして、油燃料と水との分離の進行を抑制する。以下にそのための構成を説明する。
【0041】
図3は、実施形態1の水滴微細化装置を示す構成図である。燃料供給装置100は、図2に示す水供給管122が燃料供給管121に開口する部分と図1に示す燃料ノズル524との間の燃料供給管121に、図3に示す水滴微細化手段としての水滴微細化装置130を有する。本実施形態の水滴微細化装置130は、スタティックミキサー131によって構成される。
【0042】
スタティックミキサー131は、例えば、筒状の部材である。スタティックミキサー131は、エマルジョン燃料が流動可能な外管の内部に静止部材が固定されて構成される。
【0043】
具体的には、スタティックミキサー131は、図3に示すように、例えば、筒状に形成された外管132と、静止部材としての羽根133及び羽根134及び複数の突起135とを有する。羽根133と羽根134とは、互いに交差して外管132の内部に固定される。羽根133及び羽根134は、エマルジョン燃料の流れの方向、つまり、外管132の軸方向に対して角度を有する面を備える。
【0044】
複数の突起135は、例えば、外管132及び羽根133よりも、エマルジョン燃料の流れの下流側の外管132に固定される。突起135は、例えば、外管132の径方向内側に向かって外管132の内周部に固定される。なお、以下、エマルジョン燃料の流れの下流側を単に下流側といい、エマルジョン燃料の流れの上流側を単に上流側という。
【0045】
スタティックミキサー131に供給されたエマルジョン燃料は、まず羽根133及び羽根134によって流れが変化する。ここで、羽根133及び羽根134は、エマルジョン燃料を切り刻む機能も実現する。スタティックミキサー131は、羽根133及び羽根134によってエマルジョン燃料の流れを変化すると共に、エマルジョン燃料に含まれる水滴を切り刻むことによって、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴を微細化する。
【0046】
さらに、エマルジョン燃料は、羽根133及び羽根134を通過した後、複数の突起135と衝突する。これにより、スタティックミキサー131は、エマルジョン燃料を構成する油燃料と水との混合を促進して、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴をさらに微細化する。
【0047】
スタティックミキサー131は、本実施形態では、燃料供給管121の一部に直列に取り付けられる。つまり、本実施形態では、スタティックミキサー131は、燃料供給管121の一部をバイパスせずに取り付けられる。以下に、燃料供給管121の一部に直列に取り付けられると好ましい理由及び効果を説明する。
【0048】
水滴微細化装置130は、エマルジョン燃料がスタティックミキサー131を通過することによって、油燃料に混在する水滴を微細化する。よって、水滴微細化装置130は、より多くのエマルジョン燃料をスタティックミキサー131に供給する方が油燃料に混在する水滴を微細化することができる。
【0049】
燃料供給管121を流れるエマルジョン燃料の量が同じであれば、スタティックミキサー131が燃料供給管121の一部に直列に取り付けられる場合にスタティックミキサー131を通過するエマルジョン燃料の量は、スタティックミキサー131が燃料供給管121の一部をバイパスして燃料供給管121に取り付けられる場合にスタティックミキサー131を通過するエマルジョン燃料の量よりも多い。
【0050】
これにより、水滴微細化装置130は、スタティックミキサー131が燃料供給管121の一部に直列に取り付けられることによって、より多くのエマルジョン燃料の油燃料の中に含まれる水滴を微細化することができる。
【0051】
但し、スタティックミキサー131が燃料供給管121の一部をバイパスして燃料供給管121に取り付けられる場合であっても、エマルジョン燃料の一部はスタティックミキサー131を通過する。よって、水滴微細化装置130は、スタティックミキサー131が燃料供給管121の一部をバイパスして燃料供給管121に取り付けられる場合でも、燃料供給管121にスタティックミキサー131が全く取り付けられない場合よりは、より多くのエマルジョン燃料の油燃料の中に含まれる水滴を微細化することができる。
【0052】
スタティックミキサー131が燃料供給管121の一部に直列に取り付けられる場合、燃料供給装置100は、例えば、燃料供給管121の一部が切除されて、この切除された部分にスタティックミキサー131が溶接によって取り付けられる。また、燃料供給装置100は、スタティックミキサー131の両端部にフランジが形成され、スタティックミキサー131の前記フランジが燃料供給管121に形成されたフランジに取り付けられることによって燃料供給管121に取り付けられてもよい。
【0053】
なお、スタティックミキサー131の構成は上記構成に限定されない。燃料供給装置100は、スタティックミキサー131が有する羽根の数、羽根の形状、突起の数、突起の形状、羽根と突起との位置関係等が自由に変更されてかまわない。
【0054】
また、スタティックミキサー131は、羽根133及び羽根134及び突起135が外管132に固定されて外管132に対して動かない構成、つまり、すべて静止部材で構成されているが、水滴微細化装置130は、このようなスタティックミキサー131に替えて、可動部材を含んで構成されるダイナミックミキサーによって構成されてもよい。可動部材を含んで構成されるダイナミックミキサーとは、例えば、外管の中心軸を軸に回転可能に外管の内部に支持される羽根車を含んで構成されるミキサーである。
【0055】
前記ミキサーは、例えば、モーターの回転が前記羽根車に伝わるように構成される。これにより、前記羽根車が回転して外管の内部を通過するエマルジョン燃料を掻き混ぜる。このようなミキサーによって構成されても、水滴微細化装置130は、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴を微細化することができる。
【0056】
但し、スタティックミキサー131は、可動部材がないため可動部材を動かすためのエネルギーを必要としない。これにより、スタティックミキサー131は、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴を微細化するために必要なエネルギーを抑制することができる。
【0057】
また、スタティックミキサー131は、可動部材を動かすための構成、例えば、モーターや、モーターに電気を供給するための電源装置及び配線を必要としない。これにより、スタティックミキサー131は、燃料供給装置100の部品点数の増加や、構成の複雑化を抑制することができる。
【0058】
また、一般的に可動部材は、静止部材よりも不具合が発生しやすい。スタティックミキサー131は、可動部材がないため、燃料供給装置100は、不具合の発生を抑制することができる。
【0059】
スタティックミキサー131は、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴を、例えば、3μmから10μmまでの直径になるまで微細化する。これは、近年の研究によって、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴の大きさが3μmから10μmまでの直径である場合に、排気ガスに含まれるNOxやススを好適に抑制できることが判明したためである。
【0060】
エマルジョン燃料は、燃焼器で燃焼する際に、まず油燃料に含まれる水が蒸発して急膨張する。この水の急膨張によって油燃料の液滴が微細化してエマルジョン燃料の燃焼速度が向上する。ここで、水滴の大きさが変化すると、水が蒸発する時期が変化する。これにより、油燃料の液滴が微細化する時期も変化して、結果的にエマルジョン燃料の燃焼速度も変化する。
【0061】
このような原理を踏まえて、排気ガスに含まれるNOxやススを好適に抑制することができる燃焼速度を実現できる水滴の大きさを実験によって調査したところ、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさは、3μmから10μmまでが好ましいと判明した。
【0062】
以上の理由により、エマルジョン燃料の油燃料に混在する水滴を、例えば、3μmから10μmまでの直径になるまで微細化することができるスタティックミキサー131を備えることで、燃料供給装置100は、排気ガスに含まれるNOxやススをより好適に抑制することができる。
【0063】
ここで、本実施形態では、燃料供給装置100は、ガスタービンの燃焼器にエマルジョン燃料を供給するものとして説明したが、燃料供給装置100は、例えば、空調装置のボイラにエマルジョン燃料を供給してもよい。この場合でも、燃料供給装置100は、油燃料と水との混合が良好となり、油燃料と水との分離の進行を抑制することができる。
【0064】
(実施形態2)
図4は、実施形態2の水滴微細化装置を示す構成図である。ここで、スタティックミキサーには、個体や種類によって適当に混合することができる液体の流量がある。なお、ここでは、水滴の大きさは、3μmから10μmまでの大きさに微細化することができる場合を「適当」とする。以下、スタティックミキサーが適当に混合することができるエマルジョン燃料の流量をスタティックミキサーの許容量という。
【0065】
スタティックミキサーは、例えば、外管の径が大きいほど許容量が増加する。仮に、スタティックミキサーの許容量よりも、スタティックミキサーに供給されるエマルジョン燃料の流量が少ない場合、燃料供給装置は、エマルジョン燃料に含まれる水滴の微細化が不十分になるおそれがある。
【0066】
これは、スタティックミキサー内でのエマルジョン燃料の圧力が不足して、例えば、エマルジョン燃料が図3に示す突起135と衝突する際のエネルギーが小さくなるためである。このようにして、燃料供給装置は、エマルジョン燃料に含まれる水滴の微細化が不十分になるおそれがある。
【0067】
また、仮に、図1に示す燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が増加すると、スタティックミキサーに供給されるエマルジョン燃料の流量も増加する。これによって、スタティックミキサーの許容量よりも、スタティックミキサーに供給されるエマルジョン燃料の流量が多くなる場合、燃料供給装置は、スタティックミキサーでの圧力の損失によって、燃料ノズルに供給されるエマルジョン燃料が不足するおそれがある。
【0068】
実施形態2の燃料供給装置200が備える水滴微細化装置230は、図1に示す燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が変化しても、燃料ノズルに供給することができるエマルジョン燃料が不足するおそれを抑制することができると共に、エマルジョン燃料に含まれる水滴を微細化することができる点に特徴がある。以下、水滴微細化装置230の構成を説明する。
【0069】
水滴微細化装置230は、図4に示すように、第2ミキサーとしての大容量スタティックミキサー231と、第1ミキサーとしての小容量スタティックミキサー232と、バイパス管233と、燃料分配量調節手段としての大容量側バルブ234と、燃料分配量調節手段としての小容量側バルブ235とを備える。大容量スタティックミキサー231は、小容量スタティックミキサー232よりも、許容量が多いスタティックミキサーである。大容量側バルブ234及び小容量側バルブ235は、自身よりも下流側に流すエマルジョン燃料の流量を調節するためのバルブである。
【0070】
燃料供給装置200は、燃料供給管121に、上流側から下流側に向かって順に、大容量側バルブ234と、大容量スタティックミキサー231とが配置される。また、燃料供給装置200は、バイパス管233が大容量側バルブ234及び大容量スタティックミキサー231をバイパスして設けられる。
【0071】
つまり、バイパス管233は、一方の端部が大容量側バルブ234よりも上流側の燃料供給管121に開口し、他方の端部が大容量スタティックミキサー231よりも下流側に開口する。燃料供給装置200は、バイパス管233に、上流側から下流側に向かって順に、小容量側バルブ235及び小容量スタティックミキサー232が配置される。
【0072】
上記構成により、大容量側バルブ234が開弁し、小容量側バルブ235も開弁している場合には、燃料供給装置200は、大容量スタティックミキサー231及び小容量スタティックミキサー232の両方にエマルジョン燃料が供給される。
【0073】
また、大容量側バルブ234が開弁し、小容量側バルブ235が閉弁している場合には、燃料供給装置200は、大容量スタティックミキサー231のみにエマルジョン燃料が供給される。
【0074】
また、大容量側バルブ234が閉弁し、小容量側バルブ235が開弁している場合には、燃料供給装置200は、小容量スタティックミキサー232のみにエマルジョン燃料が供給される。
【0075】
ガスタービン500のオペレータは、燃料ノズル524に供給する燃料の流量によって、大容量側バルブ234及び小容量側バルブ235を操作する。具体的には、例えば、図1に示す燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量を「最大」と「中間」と「最小」との三段階に分け、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が最大の段階の際には、オペレータは、大容量側バルブ234及び小容量側バルブ235を開弁する。
【0076】
また、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が三段階の内の中間の段階の際には、オペレータは、大容量側バルブ234を開弁し、小容量側バルブ235を閉弁する。また、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が最小の段階の際には、オペレータは、大容量側バルブ234を閉弁し、小容量側バルブ235を開弁する。
【0077】
オペレータがこのように大容量側バルブ234及び小容量側バルブ235を操作することにより、燃料供給装置200は、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が、三段階の内最大の段階の際に、大容量スタティックミキサー231及び小容量スタティックミキサー232の両方にエマルジョン燃料が供給される。
【0078】
また、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が三段階の内の中間の段階の際には、燃料供給装置200は、大容量スタティックミキサー231のみにエマルジョン燃料が供給される。また、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が最小の段階の際には、燃料供給装置200は、小容量スタティックミキサー232のみにエマルジョン燃料が供給される。
【0079】
これにより、燃料供給装置200は、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が変化しても、それにともなってオペレータが大容量側バルブ234及び小容量側バルブ235を操作することによって、水滴微細化装置230全体で扱えるエマルジョン燃料の流量が変化する。以下、水滴微細化装置全体で扱えるエマルジョン燃料の流量を水滴微細化装置全体の許容量という。
【0080】
よって、燃料供給装置200は、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が変化しても、燃料ノズルに供給されるエマルジョン燃料が不足するおそれを抑制しつつ、エマルジョン燃料に含まれる水滴を微細化することができる。
【0081】
なお、水滴微細化装置230は、大容量側バルブ234及び小容量側バルブ235に替えて、エマルジョン燃料の流路を、大容量スタティックミキサー231側と、小容量スタティックミキサー232側とのうちのどちらか一方に切り替える切り替えバルブを備えてもよい。
【0082】
この場合、図1に示す燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量を例えば二段階に分け、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が多い段階の際には、オペレータは、前記切り替えバルブを大容量側バルブ234側に切り替える。また、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が少ない段階の際には、オペレータは、前記切り替えバルブを小容量側バルブ235側に切り替える。
【0083】
このように、前記切り替えバルブを備える場合であっても、燃料供給装置200は、燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が変化しても、それにともなってオペレータが前記切り替えバルブを操作することによって、水滴微細化装置230全体の許容量が変化する。
【0084】
よって、燃料供給装置200は、燃料ノズルに供給されるエマルジョン燃料が不足するおそれを抑制しつつ、エマルジョン燃料に含まれる水滴を微細化することができる。さらに、前記切り替えバルブを備えることにより、水滴微細化装置230は、必要なバルブの数が低減される。よって、水滴微細化装置230は、構成の複雑化を抑制することができる。
【0085】
(実施形態3)
図5は、実施形態3の水滴微細化装置を示す構成図である。実施形態2の水滴微細化装置230は、オペレータによって大容量側バルブ234と小容量側バルブ235とが操作されたが、図5に示す実施形態3の燃料供給装置300は、自動で大容量側バルブ234の開度と小容量側バルブ235の開度とが変更される。
【0086】
水滴微細化装置330は、燃料分配量調節手段としての大容量側流量調整装置334と、燃料分配量調節手段としての小容量側流量調整装置335と、圧力損失測定手段としての大容量側圧力損失測定装置336と、圧力損失測定手段としての小容量側圧力損失測定装置337と、制御装置340とを含んで構成される。
【0087】
大容量側流量調整装置334は、水供給管122が燃料供給管121に開口する部分と、大容量スタティックミキサー231との間の燃料供給管121に設けられる。これにより、大容量側流量調整装置334は、大容量スタティックミキサー231に供給するエマルジョン燃料の流量を調節する。
【0088】
小容量側流量調整装置335は、小容量スタティックミキサー232よりも上流側のバイパス管233に設けられる。これにより、小容量側流量調整装置335は、小容量スタティックミキサー232に供給するエマルジョン燃料の流量を調節する。大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335は、例えば、それぞれ弁体と、弁体を動作させるモーターやアクチュエータなどの駆動装置とを含んで構成される。
【0089】
大容量側圧力損失測定装置336は、大容量側流量調整装置334と大容量スタティックミキサー231との間の燃料供給管121内の圧力と、大容量スタティックミキサー231よりも下流側の圧力との差を測定する。つまり、大容量側圧力損失測定装置336は、エマルジョン燃料が大容量スタティックミキサー231を通過する際の圧力の損失を測定する。
【0090】
小容量側圧力損失測定装置337は、小容量側流量調整装置335と小容量スタティックミキサー232との間のバイパス管233内の圧力と、小容量スタティックミキサー232よりも下流側の圧力との差を測定する。つまり、小容量側圧力損失測定装置337は、エマルジョン燃料が小容量スタティックミキサー232を通過する際の圧力の損失を測定する。
【0091】
制御装置340は、大容量側圧力損失測定装置336及び小容量側圧力損失測定装置337に電気的に接続される。これにより、制御装置340は、大容量側圧力損失測定装置336及び小容量側圧力損失測定装置337から、エマルジョン燃料が大容量スタティックミキサー231を通過する際に損失した圧力及びエマルジョン燃料が小容量スタティックミキサー232を通過する際に損失した圧力を取得する。
【0092】
また、制御装置340は、大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335の駆動装置と電気的に接続される。これにより、制御装置340は、前記駆動装置を制御する。以下に、制御装置340が大容量側圧力損失測定装置336及び小容量側圧力損失測定装置337から取得した値に基づいて、大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335を制御する具体的な一例を説明する。
【0093】
以下、大容量側圧力損失測定装置336の値、つまり大容量スタティックミキサー231での圧力の損失を大容量側圧損P1とする。また、小容量側圧力損失測定装置337の値、つまり小容量スタティックミキサー232での圧力の損失を小容量側圧損P2とする。
【0094】
また、大容量スタティックミキサー231での圧力の損失の許容値を大容量側許容最小値P1min以上大容量側許容最大値P1max以下の範囲とする。つまり、この範囲であれば、大容量スタティックミキサー231に供給されるエマルジョン燃料の流量が適当の範囲となり、大容量スタティックミキサー231は、大容量スタティックミキサー231に供給されるエマルジョン燃料に含まれる水滴を3μmから10μmの大きさまで微細化することができる。
【0095】
また、小容量スタティックミキサー232での圧力の損失の許容値を小容量側許容最小値P2min以上小容量側許容最大値P2max以下の範囲とする。つまり、この範囲であれば、小容量スタティックミキサー232に供給されるエマルジョン燃料の流量が適当の範囲となり、小容量スタティックミキサー232は、小容量スタティックミキサー232に供給されるエマルジョン燃料に含まれる水滴を3μmから10μmの大きさまで微細化することができる。
【0096】
制御装置340は、大容量側圧損P1が、大容量側許容最小値P1min以上大容量側許容最大値P1max以下の場合は、大容量側流量調整装置334を開弁とし、小容量側流量調整装置335を閉弁とする。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち中間の段階に設定される。
【0097】
また、制御装置340は、小容量側圧損P2が、小容量側許容最小値P2min以上小容量側許容最大値P2max以下の場合は、大容量側流量調整装置334を閉弁とし、小容量側流量調整装置335を開弁とする。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち最小の段階に設定される。
【0098】
また、制御装置340は、大容量側圧損P1が大容量側許容最大値P1maxを超える場合は、大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335を共に開弁とする。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち最大の段階に設定される。
【0099】
ここで、水滴微細化装置330全体の許容量が、三段階のうち最大の段階に設定されている時に、大容量側圧損P1が大容量側許容最小値P1min未満になった場合、または、小容量側圧損P2が小容量側許容最小値P2min未満になった場合、制御装置340は、小容量側流量調整装置335のみを閉弁する。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち中間の段階に設定される。
【0100】
水滴微細化装置330全体の許容量が、三段階のうち中間の段階に設定されている時に、大容量側圧損P1が、大容量側許容最小値P1min未満になった場合、制御装置340は、大容量側流量調整装置334を閉弁し、小容量側流量調整装置335を開弁する。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち最小の段階に設定される。
【0101】
また、水滴微細化装置330全体の許容量が、三段階のうち中間の段階に設定されている時に、大容量側圧損P1が、大容量側許容最大値P1maxを超える場合、制御装置340は、小容量側流量調整装置335を開弁する。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち最大の段階に設定される。
【0102】
水滴微細化装置330全体の許容量が、三段階のうち最小の段階に設定されている時に、小容量側圧損P2が、小容量側許容最大値P2maxを超える場合、制御装置340は、大容量側流量調整装置334を開弁し、小容量側流量調整装置335を閉弁する。これにより、水滴微細化装置330全体の許容量は、三段階のうち中間の段階に設定される。
【0103】
このように、制御装置340は、大容量側圧力損失測定装置336及び小容量側圧力損失測定装置337から大容量側圧損P1及び小容量側圧損P2を定期的に取得して、大容量側圧損P1及び小容量側圧損P2に基づいて大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335を制御する。
【0104】
上記構成により、燃料供給装置300は、図1に示す燃料ノズル524に供給しようとするエマルジョン燃料の流量が変化しても、大容量側圧損P1及び小容量側圧損P2に基づいて、制御装置340が自動で大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335を制御する。これにより、燃料供給装置300は、水滴微細化装置330全体の許容量が自動で調節される。
【0105】
これにより、燃料供給装置300は、オペレータの操作を必要とせずに、水滴微細化装置330での圧力の損失に起因する燃料ノズルに供給されるエマルジョン燃料が不足するおそれを抑制することができる。また、燃料供給装置300は、水滴微細化装置330に供給されるエマルジョン燃料の流量が、水滴微細化装置330の許容量に対して過小となることに起因するエマルジョン燃料に含まれる水滴の微細化が不十分となるおそれを抑制することができる。
【0106】
(実施形態4)
図6は、実施形態4の水滴微細化装置を示す構成図である。実施形態4の燃料供給装置400は、図5に示す制御装置340に替えて制御装置440を備える点で実施形態3の燃料供給装置300と異なる。制御装置440は、図1に示すガスタービン500に燃焼振動が生じた際に、大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335を制御して前記燃焼振動を抑制する点に特徴がある。
【0107】
上述したように、エマルジョン燃料を燃焼させるガスタービンでは、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさが変化すると、前記水が蒸発する時期が変化する。具体的には、水滴微細化装置430の許容量が、実際に水滴微細化装置430に供給されているエマルジョン燃料の流量よりも大きくなると、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさが大きくなる。これにより、前記水が蒸発する時期は、現在よりも遅くなる。
【0108】
また、水滴微細化装置430全体の許容量が、実際に水滴微細化装置430に供給されているエマルジョン燃料の流量よりも小さくなると、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさが小さくなって、前記水が蒸発する時期が現在よりも早くなる。
【0109】
このように、前記水滴の大きさが変化すると、前記水が蒸発する時期が変化して、エマルジョン燃料に含まれる油燃料の液滴の大きさが変化する。すると、前記油燃料が燃焼する時期が変化して、結果として、ガスタービン500は、エマルジョン燃料の燃焼速度が変化する。
【0110】
一般的に、燃焼振動が生じた際は、燃料の燃焼速度を変化させることで前記燃焼振動を抑制することができる。制御装置440は、この原理に基づいて、エマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさを変化させて、燃焼振動を抑制する。以下に、燃焼振動が生じた際に、制御装置440が、大容量側流量調整装置334及び小容量側流量調整装置335の状態を現在から変化させる具体的な一例を説明する。
【0111】
例えば、水滴微細化装置430全体の許容量が、三段階のうち最大の段階に設定されている時に燃焼振動が生じた場合、制御装置440は、小容量側流量調整装置335のみを閉弁する。これにより、水滴微細化装置430全体の許容量は、三段階のうち中間の段階に変化する。
【0112】
また、例えば、水滴微細化装置430全体の許容量が、三段階のうち中間の段階に設定されている時に燃焼振動が生じた場合、制御装置440は、小容量側流量調整装置335を開弁する。これにより、水滴微細化装置430全体の許容量は、三段階のうち最大の段階に変化する。または、大容量側流量調整装置334を閉弁し、小容量側流量調整装置335を開弁する。これにより、水滴微細化装置430全体の許容量は、三段階のうち最小の段階に変化する。
【0113】
また、例えば、水滴微細化装置430全体の許容量が、三段階のうち最小の段階に設定されている時に燃焼振動が生じた場合、制御装置440は、大容量側流量調整装置334を開弁し、小容量側流量調整装置335を閉弁する。これにより、水滴微細化装置430全体の許容量は、三段階のうち中間の段階に変化する。
【0114】
上記構成により、燃料供給装置400は、制御装置440がエマルジョン燃料に含まれる水滴の大きさを調節して燃焼振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0115】
100、200、300、400 燃料供給装置
111 油燃料タンク
112 水タンク
113 油燃料管
114 水管
115 油燃料ポンプ
116 水ポンプ
117 油燃料分配器
118 水分配器
121 燃料供給管(燃料供給通路)
122 水供給管
130、230、330、430 水滴微細化装置(水滴微細化手段)
131 スタティックミキサー(ミキサー)
132 外管
133 羽根(静止部材)
134 羽根(静止部材)
135 突起(静止部材)
231 大容量スタティックミキサー(第2ミキサー)
232 小容量スタティックミキサー(第1ミキサー)
233 バイパス管
234 大容量側バルブ(燃料分配量調節手段)
235 小容量側バルブ(燃料分配量調節手段)
334 大容量側流量調整装置(燃料分配量調節手段)
335 小容量側流量調整装置(燃料分配量調節手段)
336 大容量側圧力損失測定装置(圧力損失測定手段)
337 小容量側圧力損失測定装置(圧力損失測定手段)
340、440 制御装置
500 ガスタービン
510 圧縮部
520 燃焼部
521 燃焼器
530 タービン部
540 排気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油燃料と水とが混合したエマルジョン燃料を燃焼器に供給可能な燃料供給通路と、
前記燃料供給通路を流れる前記エマルジョン燃料に含まれる前記水の液滴を微細化する水滴微細化手段と、
を備え、
前記水滴微細化手段は、
前記エマルジョン燃料を掻き混ぜる複数のミキサーと、
前記複数のミキサーよりも前記エマルジョン燃料の流れの上流側に設けられて、前記各ミキサーに分配する前記エマルジョン燃料の流量を調節可能な燃料分配量調節手段と、
を含んで構成され、
前記エマルジョン燃料が前記ミキサーを通過する際に損失した圧力を測定可能な圧力損失測定手段を備え、
前記燃料分配量調節手段によって前記各ミキサーに分配される前記エマルジョン燃料の流量を、前記圧力損失測定手段が測定した値に基づいて変更することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃焼器が前記エマルジョン燃料を燃焼させる際に燃焼振動を生じた場合、
前記燃料分配量調節手段によって前記各ミキサーに分配される前記エマルジョン燃料の流量を変更することを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記水滴微細化手段は、
前記エマルジョン燃料が流動可能な外管の内部に静止部材が固定されて構成されるスタティックミキサーを含んで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
油燃料と水とが混合したエマルジョン燃料を供給する燃料供給装置と、
前記燃料供給装置から供給された前記エマルジョン燃料を燃焼させる燃焼器と、
前記エマルジョン燃料が燃焼した燃焼ガスのエネルギーを回転エネルギーに変換するタービン部と、
を備え、
前記燃料供給装置は、
前記エマルジョン燃料を前記燃焼器に供給可能な燃料供給通路と、
前記燃料供給通路を流れる前記エマルジョン燃料に含まれる前記水の液滴を微細化する水滴微細化手段と、
を備え、
前記水滴微細化手段は、
前記エマルジョン燃料を掻き混ぜる複数のミキサーと、
前記複数のミキサーよりも前記エマルジョン燃料の流れの上流側に設けられて、前記各ミキサーに分配する前記エマルジョン燃料の流量を調節可能な燃料分配量調節手段と、
を含んで構成され、
前記エマルジョン燃料が前記ミキサーを通過する際に損失した圧力を測定可能な圧力損失測定手段を備え、
前記燃料分配量調節手段によって前記各ミキサーに分配される前記エマルジョン燃料の流量を、前記圧力損失測定手段が測定した値に基づいて変更することを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229703(P2012−229703A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186877(P2012−186877)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2008−315773(P2008−315773)の分割
【原出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)