説明

燃料供給装置

【課題】燃料圧力変更時の応答性を向上することができ、燃料供給圧力の切替時間の算出精度を向上し、さらには燃費を向上できる圧力制御装置および燃料供給装置を提供する。
【解決手段】インジェクタ22に向けて燃料を吐出する燃料ポンプ40bと、インジェクタ22と燃料ポンプ40bとを連結するとともに、燃料ポンプ40bからインジェクタ22に燃料を供給する燃料管44と、燃料管44に連結されるとともに、操作圧燃料の圧力切替により燃料の圧力を制御する燃圧制御弁50と、操作圧燃料の圧力を切り替える燃料切替弁70と、燃圧制御弁50と燃料切替弁70とを連結するとともに、操作圧燃料を流通可能にする連結管100とを備える燃料供給装置3であって、連結管100は非膨張体の材質からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御装置を備えた燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された内燃機関の燃料供給装置は、燃料タンク内に貯留された燃料を燃料ポンプによって燃料消費部に供給するときに、燃料消費部に対する燃料供給圧力を調整するための圧力制御装置を備えている。この圧力制御装置は、燃料タンク内の燃料を汲み上げる燃料ポンプから、燃料消費部を構成するインジェクタへの燃料供給圧力を調圧するようになっている。
【0003】
このような圧力制御装置は、一般に、ハウジング内をダイヤフラムによって2室に区画し、そのダイヤフラムの一面側で調圧室内の燃料圧に応じたダイヤフラムの中央部の変位を利用して調圧弁体を開弁方向および閉弁方向に変位させる構成になっている。また、このような圧力制御装置は、ダイヤフラムの他面側では圧縮コイルばねによりダイヤフラムの変位を抑制することで、調圧室内の燃料圧が設定圧に達するよう調圧弁体の開弁状態を保持する構成となっている。このような圧力制御装置が、燃料ポンプとともに燃料タンク内に配置されていることが多い。
【0004】
この種の圧力制御装置としては、例えばハウジング内を2室に区画するダイヤフラムと、このダイヤフラムの一面側に位置し、燃料ポンプからの加圧燃料が導入される流体導入口および余剰燃料が排出される排出口を有する圧力室と、ダイヤフラムの他面側に位置し、背圧流体が導入される背圧室と、ハウジング内に摺動可能に設けられ、ダイヤフラムと背圧室の間に大気圧に開放される開放室を形成するプランジャと、ダイヤフラムの変位に応じて排出口を開閉するようダイヤフラムに装着された弁部材と、ダイヤフラムとプランジャの間に介在されて弁部材を開弁方向に付勢するスプリングと、プランジャの可動範囲を規定するストッパ手段とを備えたプレッシャレギュレータ、すなわち燃圧制御弁を利用したものが知られている。
【0005】
そして、この燃圧制御弁を備えた圧力制御装置では、背圧流体の供給の有無によってスプリングの設定荷重を2段階に切り替えることで、設定値を低圧値と高圧値に切り替えるようになっている(例えば、特許文献1参照)。ここで、燃圧制御弁および燃料ポンプは燃料タンク内に配置されていることから、燃料タンクの熱膨張や熱収縮による寸法の変化に伴って、燃圧制御弁と燃料ポンプとの相対位置が変化することがある。このため、燃圧制御弁と燃料ポンプとの相対位置の変化を吸収するために、燃圧制御弁と燃料ポンプとを連結する燃料供給管は、可撓性を有する例えばゴム管などから構成されている。
【0006】
また、特許文献1に開示された燃料供給装置では、エンジンの振動によって、エンジンと燃料タンクとの相対位置が変化することがある。このため、エンジンと燃料タンクとの相対位置の変化を吸収するために、エンジンと燃料タンクとを連結する燃料供給管の一部は、可撓性を有する例えばゴム管などから構成されている。
【0007】
また、従来から、燃料供給通路上に2つの圧力制御装置を備えた燃料供給装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この燃料供給装置は、燃料ポンプによって燃料タンクから燃料供給通路を介して圧送された燃料の圧力と基準圧力との差圧が所定値以上であるときに、燃料を燃料タンクに戻すリターン通路を開いて、前述した差圧を一定に調整する燃圧制御弁を備えている。そして、この燃料供給装置は、燃圧制御弁により所定圧力に調整された燃料を、間欠的に開駆動制御される燃料噴射弁によって機関に噴射供給する構成となっている。
【0008】
この特許文献2に開示された燃料供給装置は、燃圧制御弁が燃料供給通路の下流側及び上流側にそれぞれ配設されており、上流側の燃圧制御弁のリターン通路を介して燃料タンクに燃料を戻すか否かによって、上流側および下流側のいずれか一方の燃圧制御弁を機能させるようになっている。さらに、特許文献2に開示された燃料供給装置では、いずれか一方の燃圧制御弁を機能させるために、電磁弁からなる燃料切替弁の切り替えが行われるようになっている。
【0009】
また、特許文献2に開示された燃料供給装置は、2つの燃圧制御弁のいずれか一方を選択的に機能させる燃料切替弁と、2つの燃圧制御弁の切替条件を検出するスタートスイッチと、このスタートスイッチによって切替条件が検出された後の燃料噴射弁の噴射終了時期に同期させて燃料切替弁を制御して燃圧制御弁の切り替えを行わせる切替制御手段とを備えている。このような構成により、切替時に燃料圧に乱れが生じても、燃料圧の乱れによって噴射量の精度が悪化することが回避することができ、噴射精度を向上することができる。
【0010】
また、従来から、内燃機関が要求する燃料圧力に変更する際の応答性を向上させることができる燃料供給装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に開示された燃料供給装置は、前述したような圧力制御装置を備えた構成ではなく、インジェクタから供給される燃料の圧力をセンサで検出し、この燃料圧力を目標燃料圧力に一致させるように、燃料ポンプの圧力を制御するようになっている。
【0011】
特許文献3に開示された燃料供給装置では、燃料ポンプが燃料供給管を通じて内燃機関へ燃料を供給するようになっている。また、この燃料供給装置は、燃料供給管を内燃機関に接続する第1接続管と、燃料供給管を燃料ポンプに接続する第2接続管とを備えている。さらに、この燃料供給装置では、燃料供給管がステンレス管を用いて構成されるとともに、第1接続管および第2接続管が非膨張体で可撓性のあるナイロン管を用いて構成されている。このような構成により、第1接続管および第2接続管と、燃料供給管とのいずれもが膨張しなくなり、燃料ポンプの出力変化に対するインジェクタでの燃料圧の変化の応答に遅れがなくなり、燃料圧の変更の応答性が向上する。また、第1接続管および第2接続管に可撓性のあるナイロン管を用いたので、第1接続管および第2接続管によりエンジンの振動を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−144686号公報
【特許文献2】特開平06−249013号公報
【特許文献3】特開平10−318067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の特許文献1に開示された燃料供給装置にあっては、燃圧制御弁と燃料ポンプとを連結する燃料供給管は可撓性を有する例えばゴム管などから構成されている。このため、この燃料供給装置では、燃圧制御弁の背圧流体を供給する圧力を切り替えようとするときに、背圧流体の燃料圧の変化がゴム管の壁部で弾性的に吸収されて緩やかな変化になってしまう。
【0014】
これにより、図5(d)および図5(e)に二点鎖線で示すように、燃料制御弁により制御される燃料の圧力の切り替えまでもが緩やかになり、燃料圧切替における高い応答性を確保することが困難になるという問題があった。さらに、燃料圧切替における高い応答性を確保することが困難になると、例えば燃料圧を高圧から低圧に変更する場合に、変更時間が長くなり、燃料ポンプの高圧駆動の時間が長くなって燃料ポンプを駆動する負荷が増大し、燃費の向上が困難であるという問題があった。しかも、燃料圧切替における高い応答性を確保することが困難になると、燃料消費部へ供給する燃料の圧力の設定精度が低下し、本来の設定値と異なる圧力の燃料を燃料消費部に供給してしまう可能性があり、これにより燃費の向上を図ることができないという問題があった。このように、特許文献1に開示された燃料供給装置にあっては、燃料圧切替における高い応答性を確保するための構成については考慮されていない。
【0015】
また、従来の特許文献2に開示された燃料供給装置にあっては、2つの燃圧制御弁を有するとともに、いずれか一方の燃圧制御弁を機能させるために、燃料切替弁の切り替えが行われるようになっているが、燃料圧切替における高い応答性を確保するための構成は考慮されていない。
【0016】
また、従来の特許文献3に開示された燃料供給装置にあっては、圧力制御装置を備えていないため、燃料圧切替を行う場合は、急な圧力変動を抑制することができないという問題があった。
【0017】
また、従来の特許文献1および特許文献2に開示された燃料供給装置のように圧力制御装置と燃料切替弁とを備えた構成の場合、仮に、燃料ポンプとインジェクタとを接続する配管を、従来の特許文献3に開示された非膨張体で可撓性のある接続管にすることが考えられる。しかしながら、この場合でも、圧力制御装置と燃料切替弁との間で燃料圧切替の応答性の遅れが生じてしまうので、燃料圧切替の応答性の向上を期待することはできないという問題があった。
【0018】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、従来と比較して燃料圧力変更時の応答性を向上することができるとともに、燃料供給圧力の切替時間の算出精度を向上し、さらには燃費を向上することができる燃料供給装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る燃料供給装置は、上記目的達成のため、(1)燃料消費部に向けて燃料を吐出する燃料ポンプと、前記燃料消費部と前記燃料ポンプとを連結するとともに、前記燃料ポンプから前記燃料消費部に前記燃料を供給する第1の配管と、前記第1の配管に連結されるとともに、操作圧燃料の圧力切替により前記燃料の圧力を制御する燃圧制御弁と、前記操作圧燃料の圧力を切り替える燃料切替弁と、前記燃圧制御弁と前記燃料切替弁とを連結するとともに、前記操作圧燃料を流通可能にする第2の配管とを備える燃料供給装置であって、前記第2の配管は、非膨張体の材質からなるようにしている。
【0020】
ここで、本明細書中で「非膨張体の材質」とは、第2の配管内を流通する燃料に対して、第2の配管自体の軟らかさに起因する燃料圧変化の応答遅れなどを無視できる程度の高い剛性を有する材質を意味する。
【0021】
この構成により、燃圧制御弁と燃料切替弁との間で燃料を供給するときの第2の配管の容積の変化を抑制することができる。これにより、燃料切替弁により操作圧燃料の圧力を切り替えるときの変化を、従来のような緩やかな変化ではなく急な線形の変化にして応答性を向上できるとともに、燃圧制御弁により燃料の圧力を制御するときの応答性を向上できる。
【0022】
また、燃圧制御弁の応答性が向上することにより、燃料圧を高圧から低圧に切り替える時間が短くなる。このため、ポンプ圧を高圧から低圧に迅速に低減することができるので、燃費を向上することができる。
【0023】
上記(1)に記載の燃料供給装置においては、(2)前記第1の配管は、少なくとも一部に剛性基準部を有するとともに、前記第2の配管の剛性は、前記剛性基準部の剛性よりも高いことが好ましい。この構成により、第2の配管の剛性の高さを確保することができる。
【0024】
上記(2)に記載の燃料供給装置においては、(3)前記燃料を貯留するとともに、前記燃料ポンプを内蔵する燃料タンクを備え、前記第2の配管および前記剛性基準部は前記燃料タンク内に位置することが好ましい。ここで、従来は燃料タンク内の管は、使用環境が同一であるため同一材料で設計されていた。これに対し、本発明の構成により、第2の配管および剛性基準部は燃料タンク内という同一の使用環境下で使用されるものであっても、第2の配管の剛性は剛性基準部の剛性よりも高くなるようにできる。よって、第2の配管および剛性基準部は燃料タンク内という同一の使用環境下で使用されるものであっても、燃圧制御弁と燃料切替弁との間で燃料を供給するときの第2の配管の容積の変化を抑制することができる。
【0025】
上記(2)または(3)に記載の燃料供給装置においては、(4)前記剛性基準部はナイロンで構成されるとともに、前記第2の配管は金属で構成されることが好ましい。この構成により、第2の配管の剛性の高さを確保することができる。
【0026】
上記(1)から(4)に記載の圧力制御装置においては、(5)前記燃圧制御弁の一部の部材と、前記燃料切替弁の一部の部材と、前記第2の配管とは、一体化されたものであることが好ましい。この構成により、燃料供給装置全体として小型化を図ることができる。
【0027】
上記(1)から(5)に記載の圧力制御装置においては、(6)前記燃圧制御弁は、前記制御対象燃料が導入される燃料導入口、前記制御対象燃料が排出される燃料排出口および前記操作圧燃料が導入される操作圧燃料導入通路を有するハウジングと、前記ハウジング内に前記燃料導入口に連通するとともに前記操作圧燃料導入通路を備える調圧室を形成するとともに、前記調圧室内の燃料圧力に応じ前記燃料導入口と前記燃料排出口とを連通させる隔壁状の調圧部材と、を備え、前記燃圧制御弁は、前記操作圧燃料導入通路に前記操作圧燃料が導入されることにより、前記調圧部材が前記一面側で燃料圧力を受ける受圧領域の面積が変更され、前記受圧領域の面積に応じて前記調圧室内の燃料圧力を調整するものであり、前記燃料切替弁は、閉弁により前記操作圧燃料導入通路に前記操作圧燃料を封入し、開弁により前記操作圧燃料導入通路から前記操作圧燃料を開放させることが好ましい。
【0028】
この構成により、調圧部材が燃料圧を受ける面積を可変とすることにより燃料圧が2段階に調圧される。したがって、可変燃料圧調整弁の内部を3室にしたり、可変燃料圧調整弁を2つ設けることなく燃料消費部に供給される燃料圧を2段階に制御することができる。このため、燃料供給装置を小型化することができる。
【0029】
また、燃料切替弁を開閉させることで、操作圧燃料導入通路に操作圧燃料が導入されるか否かを切り替えることが可能となり、調圧部材の受圧領域の面積を容易に変化させることができる。よって、燃圧制御弁による制御対象燃料の圧力を容易に制御することができる。
【0030】
上記(1)から(6)に記載の圧力制御装置においては、(7)前記燃料消費部は、内燃機関の燃料噴射部であることが好ましい。この構成により、燃料噴射部に供給される制御対象燃料の燃料圧を高圧と低圧に切り替える時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、従来と比較して燃料圧力変更時の応答性を向上することができるとともに、燃料供給圧力の切替時間の算出精度を向上し、さらには燃費を向上することができる燃料供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る燃料供給装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る圧力制御装置の燃料切替弁が閉塞している状態を示す図であり、(a)は概略図、(b)はその受圧領域を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る圧力制御装置の燃料切替弁が開放している状態を示す図であり、(a)は概略図、(b)はその受圧領域を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る燃料供給装置の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る燃料供給装置の動作を示すタイムチャートであり、(a)は電圧、(b)は電流、(c)はバルブの位置、(d)は操作圧燃料の燃料圧、(e)は制御対象燃料の燃料圧を示す。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る圧力制御装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、本発明を車両用の内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置に適用したものである。
【0034】
(第1の実施の形態)
まず、その燃料供給装置を搭載した車両の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように、車両1は、内燃機関2と、燃料供給装置3と、ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)4とを備えている。
【0036】
内燃機関2は、自動車に搭載される多気筒の内燃機関、例えば4サイクルガソリンエンジン(以下、エンジン2という)としている。エンジン2は、複数の気筒20と、各気筒20に対応する吸気ポート21および燃料消費部としてのインジェクタ22と、デリバリーパイプ23とを備えている。インジェクタ22は、例えばその噴孔側の端部22aを各気筒20に対応する吸気ポート21内に露出して設けられている。また、デリバリーパイプ23は、各インジェクタ22に連結されている。これにより、デリバリーパイプ23は、燃料供給装置3からの燃料を各インジェクタ22に分配するようになっている。
【0037】
燃料供給装置3は、エンジン2の複数のインジェクタ22に燃料を圧送および供給するものであり、燃料タンク30と、燃料圧送機構31と、圧力制御装置32とを備えている。
【0038】
燃料タンク30は、エンジン2で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する。燃料タンク30は、内部にサブタンク30aと、フランジ30bとを備えている。サブタンク30a内には、燃料圧送機構31の一部が配設されている。ここで、本明細書中で燃料タンク30とは、サブタンク30aをも含んだ総括的な意味で用い、例えば、燃料タンク30に貯留された燃料とはサブタンク30aに貯留された燃料をも含む意味とする。さらに、燃料タンク30は、エンジン2で遂次消費される燃料消費量分だけサブタンク30a内に燃料を導入する公知の図示しないジェットポンプを有している。
【0039】
フランジ30bは、燃料タンク30の上部に形成された開口部30cに対し図示しないパッキン部材などを介して取り付けられるとともに、開口部30cを閉塞している。また、フランジ30bは、燃料圧送機構31の一部を燃料タンク30の内部に吊り下げて支持している。
【0040】
燃料圧送機構31は、燃料ポンプユニット40と、サクションフィルタ41と、燃料フィルタ42と、チェック弁43と、第1の配管としての燃料管44と、分岐管45と、燃料ポンプコントローラ(FPC)46とを備えている。
【0041】
燃料管44は、燃料ポンプユニット40とデリバリーパイプ23とを連結している。燃料管44は、上流側可撓部44aと、剛性基準部としての下流側可撓部44bと、エンジン側可撓部44cと、これら以外の金属パイプ部44dとを備えている。金属パイプ部44dを構成する金属パイプは、例えばヤング率200[GPa]程度としている。
【0042】
上流側可撓部44aは、ナイロンで構成された蛇腹からなり、燃料ポンプユニット40から分岐管45まで、燃料フィルタ42およびチェック弁43を介して連結されている。下流側可撓部44bは、ナイロン構成された蛇腹からなり、分岐管45からエンジン側可撓部44cまで連結されている。上流側可撓部44aおよび下流側可撓部44bを構成するナイロンは、例えばヤング率3[GPa]程度としている。エンジン側可撓部44cは、ゴムで構成された管からなり、エンジン2の近傍に配置されるとともにデリバリーパイプ23に連結されている。エンジン側可撓部44cを構成するゴムは、例えばヤング率0.01[GPa]程度としている。
【0043】
これにより、燃料圧送機構31は、燃料タンク30に貯留された燃料をエンジン2の複数のインジェクタ22に圧送および供給するようになっている。分岐管45は、燃料管44の上流側可撓部44aおよび下流側可撓部44bの間から分岐して、圧力制御装置32に連結されている。
【0044】
また、燃料タンク30内に上流側可撓部44aおよび下流側可撓部44bを備えることにより、燃料タンク30の熱膨張や熱収縮による燃料ポンプユニット40などの位置の変動を吸収するようになっている。さらに、エンジン2の近傍にエンジン側可撓部44cが設けられているので、エンジン2の振動による燃料管44への応力発生を吸収するようになっている。
【0045】
燃料ポンプユニット40は、例えばポンプ作動用の羽根車を有する燃料ポンプ40aと、その燃料ポンプ40aを回転駆動する内蔵直流モータであるポンプ駆動モータ40bとを有している。燃料ポンプユニット40は、そのポンプ駆動モータ40bへの通電を燃料ポンプコントローラ46を介してECU4により制御されることで駆動および停止されるようになっている。
【0046】
燃料ポンプユニット40は、ポンプ駆動モータ40bの駆動により、燃料タンク30内から燃料を汲み上げ加圧して吐出することができるようになっている。また、燃料ポンプユニット40は、同一の供給電圧に対しそのポンプ駆動モータ40bの回転速度[rpm]を負荷トルクに応じて変化させたり、供給電圧の変化に対応してポンプ駆動モータ40bの回転速度を変化させたりすることができる。これにより、燃料ポンプユニット40は、単位時間当りの吐出量や吐出圧を変化させることができるようになっている。
【0047】
サクションフィルタ41は、燃料ポンプユニット40の吸入口に設けられ、異物の吸入を阻止するようになっている。燃料フィルタ13は、燃料ポンプユニット40の吐出口に設けられ、吐出燃料中の異物を除去するようになっている。
【0048】
チェック弁43は、燃料フィルタ13の上流側または下流側に設けられる逆止弁からなる。チェック弁43は、燃料ポンプユニット40からインジェクタ22側への燃料供給方向に開弁する一方、インジェクタ22側から燃料ポンプユニット40側への燃料の逆流方向には閉弁し、加圧された供給燃料の逆流を阻止するようになっている。
【0049】
燃料ポンプコントローラ46は、燃料タンク30の上部に設けられている。燃料ポンプコントローラ46は、ECU4からのポンプ制御信号と、ポンプ駆動モータ40bの端子電圧を検出する図示しない電圧検出部の検出信号との偏差に応じて、燃料ポンプユニット40のポンプ駆動モータ40bに印加する電圧を制御するようになっている。
【0050】
圧力制御装置32は、燃圧制御弁50および燃料切替弁70と、第2の配管としての連結管100とを備えている。
【0051】
連結管100は、非膨張体の材質からなり、本実施の形態では金属パイプからなる。この金属パイプは、例えばヤング率200[GPa]程度としている。ここで、図5(d)および図5(e)に示すように、連結管100の剛性は、操作圧燃料の燃料圧の切り替えが略線形になる大きさにしている。また、連結管100の剛性は、下流側可撓部44bの剛性よりも高くなっている。
【0052】
図2(a)に示すように、燃圧制御弁50は、ハウジング51と、調圧部材52と、圧縮コイルばね53と、外側筒状部材54と、内側筒状部材55とを備えている。燃圧制御弁50は、操作圧燃料の圧力切替により制御対象の燃料の圧力を制御するようになっている。制御対象の燃料は、燃料タンク30から供給されてインジェクタ22から噴射される燃料としている。ハウジング51は、一対の凹状の第1のハウジング部材56および第2のハウジング部材57をそれらの外周部でかしめ結合して形成されている。
【0053】
第1のハウジング部材56は、燃料が導入される燃料導入口51aと、その燃料が排出される燃料排出口51bと、操作圧燃料が導入される操作圧導入孔51cと、操作圧導入孔51cに連通して操作圧燃料が導入される操作圧燃料導入通路65とを有している。第1のハウジング部材56の内部の空間は、調圧部材52に仕切られることにより、調圧室58を形成する。このため、調圧室58は、燃料導入口51aに連通するとともに、操作圧燃料導入通路65を備えたものとなる。
【0054】
第2のハウジング部材57は、少なくとも1つの大気圧導入穴57aを有している。第2のハウジング部材57の内部の空間は、調圧部材52に仕切られることにより、背圧室59を形成する。このため、燃料導入口51aと、燃料排出口51bと、操作圧導入孔51cとは、調圧部材52に対して調圧室58側に配置されている。調圧部材52は、調圧室58内の燃料圧力に応じ燃料導入口51aと燃料排出口51bとを連通させる。
【0055】
調圧部材52は、隔壁状で、第1のハウジング部材56および第2のハウジング部材57に挟持されて支持されるとともに、ハウジング51の内部を調圧室58と背圧室59との2室に区画している。調圧部材52は、第1のハウジング部材56との間に流体導入口51aに連通する調圧室58を形成する隔壁部60と、調圧室58内の燃料圧に応じた開度で調圧室58を流体排出口51bに連通させる開弁方向に変位する可動弁体部61とを一体化して形成されている。
【0056】
隔壁部60は、第1のハウジング部材56側で調圧室58内の燃料圧を常時受圧するようになっている。隔壁部60は、例えば燃料に対して劣化し難いゴム層を基布材料層として、これに他のゴム層を積層して一体的に接着してなる可撓性のダイヤフラムで構成されている。可動弁体部61は、隔壁部60の中央部に支持された例えば金属製の円板状の弁体プレートで構成されている。
【0057】
圧縮コイルばね53は、背圧室59内に、可動弁体部61を調圧室58側、すなわち閉弁方向に付勢するように設けられている。
【0058】
外側筒状部材54および内側筒状部材55は、調圧室58内に設けられている。外側筒状部材54および内側筒状部材55は、径を異にするとともに、可動弁体部61の移動方向を軸方向として同心に配置されている。内側筒状部材55の可動弁体部61側の端部は、第1弁座部62とされている。外側筒状部材54の可動弁体部61側の端部は、第2弁座部63とされている。
【0059】
第1弁座部62は、その内周側に流体排出口51bに連通する排出通路64を形成している。排出通路64は、ハウジング51の流体排出口51bに連通している。第2弁座部63は、その内周側で第1弁座部62との間に操作圧燃料導入通路65を形成している。操作圧燃料導入通路65は、ハウジング51の操作圧導入孔51cに連通している。また、操作圧燃料導入通路65から連結管100を経て燃料切替弁70までに流通する燃料を操作圧燃料としている。
【0060】
第1のハウジング部材56と、調圧部材52と、外側筒状部材54とは、環状の導入側通路66を形成している。導入側通路66は、燃料ポンプユニット40から吐出された燃料を流体導入口51aから導入して、隔壁部60にその燃料圧を受圧させるようになっている。
【0061】
ハウジング51の流体導入口51aは、燃料圧送機構31のチェック弁43より下流側の回路部分である燃料管44に分岐管45を介して接続されている。ハウジング51の操作圧導入孔51cは、燃料切替弁70に接続されている。
【0062】
ここで、図2(a)に示すように、燃料切替弁70が閉塞状態の時は、操作圧燃料導入通路65が閉塞されるので、操作圧燃料導入通路65の操作圧燃料の圧力は導入側通路66と同等になる。この場合、図2(b)に示すように、調圧部材52の受圧領域は、調圧部材52の導入側通路66に対向する環状受圧面52aおよび操作圧燃料導入通路65に対向する環状受圧面52bとを合わせた領域となる。
【0063】
一方、図3(a)に示すように、燃料切替弁70が開放状態の時は、操作圧燃料導入通路65が燃料タンク30内に開放されるので、操作圧燃料導入通路65の操作圧燃料の圧力は大気圧もしくは燃料タンク30内の燃料と同等になる。この場合、図3(b)に示すように、調圧部材52の受圧領域は、調圧部材52の導入側通路66に対向する環状受圧面52aのみになる。
【0064】
このため、操作圧燃料導入通路65が閉塞されるか開放されるかによって調圧部材52の受圧領域の面積が変化する。そして、調圧部材52の受圧領域の面積が増大すると、圧縮コイルばね53の付勢力に対抗して調圧部材52を開弁させる燃料圧が小さくて済むので、環状の導入側通路66内の燃料の調圧レベルが低下する。逆に、操作圧燃料導入通路65が燃料タンク30内に開放され、調圧部材52の受圧領域の面積が縮小されると、圧縮コイルばね53の付勢力に対抗して調圧部材52を開弁させるために大きな燃料圧が必要になる。このため、環状の導入側通路66内の燃料の調圧レベルが上昇するようになっている。
【0065】
このように、燃圧制御弁50は、操作圧燃料導入通路65に操作圧燃料が導入されることにより、調圧部材52が一面側で燃料圧力を受ける受圧領域の面積が変更され、受圧領域の面積に応じて調圧室58内の燃料圧力を調整するものとなっている。
【0066】
燃圧制御弁50の高圧側の設定圧は、暖機時や高燃温時などにデリバリーパイプ23内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃料圧(通常、ゲージ圧で324[kPa]以上)の設定値となっている。また、燃圧制御弁50の低圧側の設定圧は、例えばゲージ圧で200[kPa]であり、走行中にデリバリーパイプ23内の燃料温度が比較的低温になったとき、燃料ベーパが生じ難い燃料圧設定値となっている。
【0067】
燃料切替弁70は、ボビン71と、電磁コイル72と、バルブ73と、付勢手段としての圧縮コイルばね74と、シールド75と、ステータコア76とを備え、操作圧燃料の圧力を切り替えるようになっている。
【0068】
ボビン71は、合成樹脂から構成され、ボビン部80と、シリンダ部81と、燃料流通部としての燃料管部82とを備えている。ボビン部80は、外側に電磁コイル72が巻き付けられているとともに、内側に圧縮コイルばね74が収容されている。シリンダ部81はボビン部80に連続して形成され、シリンダ部81の内部にはバルブ73が往復動可能に収容されている。燃料管部82は、シリンダ部81の端部に形成されるとともに、燃料が供給される燃料流入管82aと、燃料が排出される燃料流出管82bと、シリンダ部81の内側を向けて開放された燃料流出管82bの開口端部82cとを備えている。燃料流入管82aは、連結管100を介して燃圧制御弁50の操作圧導入孔51cに連結されている。
【0069】
バルブ73は、磁性体からなるとともに、アーマチャ部83と、弁体としてのシール部84とを備えている。アーマチャ部83は略円柱形状で、開口端部82c側の端面に円柱形状のシール部84を備えている。
【0070】
シール部84の端面は、開口端部82cに当接可能になっている。シール部84の端面が開口端部82cに当接して押圧されることにより、開口端部82cが閉塞され、燃料流入管82aと燃料流出管82bとの連通が閉塞されるようになっている。
【0071】
電磁コイル72は、シール部84を開弁する方向にアーマチャ部83を移動する。また、圧縮コイルばね74は、バルブ73が燃料流入管82aと燃料流出管82bとの連通を閉塞する方向、すなわちシール部84を閉弁する方向にアーマチャ部83を移動するように付勢している。シールド75は、金属製で、電磁コイル72の周囲を覆うように設けられている。シールド75は、電磁コイル72から外部に漏れる磁束を遮蔽している。
【0072】
図2(a)に示すように、電磁コイル72に電圧が印加されていない時は、バルブ73が圧縮コイルばね74により開口端部82cに押圧されている。これにより、燃料流入管82aと燃料流出管82bとの連通が閉塞されるようになっている。すなわち、この燃料切替弁70は、ノーマリーオフ型となっている。また、この状態を下死点とする。
【0073】
一方、図3(a)に示すように、電磁コイル72に電圧が印加されている時は、バルブ73が電磁コイル72に吸引されて開口端部82cから離隔している。これにより、燃料流入管82aと燃料流出管82bとが連通するようになっている。バルブ73が最も吸引された状態を上死点とする。
【0074】
これにより、燃料切替弁70は、閉弁により操作圧燃料導入通路65に操作圧燃料を封入するとともに、開弁により操作圧燃料導入通路65から操作圧燃料を開放させるようになっている。
【0075】
図1に示すように、ECU4は、CPU(Central Processing Unit)と、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、書き替え可能な不揮発性のメモリからなるバックアップメモリと、A/D変替器やバッファなどを有する入力インターフェース回路と、駆動回路などを有する出力インターフェース回路とを備えている。ECU4には車両のイグニッションスッチのON/OFF信号が取り込まれるとともに、図示しないバッテリからの電源供給がなされるようになっている。
【0076】
さらに、ECU4の入力インターフェース回路には、各種センサ群が接続されており、これらセンサ群からのセンサ情報がA/D変替器などを含む入力インターフェース回路を通してECU4に取り込まれるようになっている。ECU4の出力インターフェース回路には、インジェクタ22や燃料ポンプユニット40、燃料切替弁70などのアクチュエータ類を制御するためのリレースイッチや、燃料ポンプユニット40の駆動電流を可変制御するためのスイッチング素子などが接続されている。
【0077】
ECU4は、ROM内に格納された制御プログラムを実行することで、公知の電子スロットル制御、燃料噴射量制御、点火時期制御、燃料カット制御、可変バルブタイミング制御などを実行することができる。例えば、ECU4は、エアフローメータにより検出される吸入空気量とクランク角センサにより検出されるエンジン回転数とに基づいて燃焼毎に必要な基本噴射量を算出し、さらにエンジン2の運転状態に応じた各種補正や空燃比フィードバック補正などを施した燃料噴射量を算出し、その燃料噴射量に対応する燃料噴射時間だけ対応するインジェクタ22を開弁駆動する。なお、ここでの燃料噴射時間は、インジェクタ22に供給される燃料圧の設定値に応じて理論空燃比を保つよう設定される。
【0078】
また、ECU4は、エンジン2の運転に要求される燃料噴射量に応じて燃料ポンプユニット40の吐出量を最適値にするようその吐出量に対応するポンプ駆動モータ40bの駆動電圧のコマンド値を生成し、燃料ポンプコントローラ46と共にポンプ駆動モータ40bの駆動電圧をフィードバック制御する機能を有している。
【0079】
さらに、ECU4は、各種センサ群からのセンサ情報およびROMに予め格納された設定値やマップ情報に基づいて、エンジン2の運転中にその負荷状態を繰返し判定する。そして、例えば、エンジン2の始動の暖機時や高燃温時には、燃料切替弁70の電磁コイル72に通電して、燃料ポンプユニット40からの燃料の燃料圧を高圧側の設定圧に切り替えるようになっている(図4参照)。また、例えば、エンジン2の暖機後や高燃温時でない通常の運転時は、燃料切替弁70の電磁コイル72の通電を停止して、燃料ポンプユニット40からの燃料の燃料圧を低圧側の設定圧に切り替えるようになっている(図4参照)。
【0080】
ECU4のROMおよびバックアップメモリに格納される設定値には、燃料圧の高圧側の設定値および低圧側の設定値がそれぞれ含まれている。また、ROMおよびバックアップメモリに格納されるマップ情報には、運転負荷の判定とその判定結果に応じた燃料圧の切替制御のためのマップなどが含まれている。
【0081】
次に、作用について説明する。
【0082】
上述のように構成された本実施の形態の燃料供給装置3では、エンジン2の停止中、燃料ポンプユニット40のポンプ駆動モータ40bおよび燃料切替弁70の電磁コイル72への通電はそれぞれ停止されている状態にある。燃料切替弁70においては、図2(a)に示すように、バルブ73が圧縮コイルばね74により開口端部82cに押圧され、燃料流入管82aと燃料流出管82bとの連通が閉塞されている。
【0083】
エンジン2が始動されると、ECU4はインジェクタ22や燃料ポンプユニット40を作動させる。図1に示すように、燃料ポンプユニット40から吐出された燃料は、チェック弁43および燃料フィルタ42を介してデリバリーパイプ23に流入される。燃料管44を流通する燃料は分岐管45にも流入され、燃圧制御弁50に入り込む。
【0084】
また、図4に示すように、エンジン2が始動されると、ECU4は燃料ポンプユニット40からの燃料の燃料圧を高圧側の設定圧に切り替える。このため、図5(a)に示すように、ECU4は、燃料切替弁70の電磁コイル72に対して、電圧の印加を開始する。図7(b)に示すように、電圧の印加により、電流が緩やかに上昇する。
【0085】
そして、電流値が所定値90を超えた時点で、電磁コイル72からバルブ73に作用する吸引力が圧縮コイルばね74の抗力を上回り、図5(c)に示すように、バルブ73が下死点から移動し始める。これにより、バルブ73が開口端部82cから離隔して、燃料流入管82aと燃料流出管82bとが連通する。さらに、図3(a)に示すように、バルブ73が最も移動することにより上死点に達する。よって、燃料切替弁70は開放される。
【0086】
そして、上述した燃料ポンプユニット40から燃圧制御弁50に供給された燃料は、図3(a)に示すように、燃料導入口51aから調圧室58に入り込む。ここで、燃料切替弁70が開放状態であるので、操作圧燃料導入通路65が燃料タンク30内に開放されている。このため、図3(b)に示すように、調圧部材52の受圧領域は、調圧部材52の環状受圧面52aのみになる。
【0087】
これにより、圧縮コイルばね53の付勢力に対抗して調圧部材52を開弁させるために大きな燃料圧が必要になり、環状の導入側通路66内の燃料の調圧レベルが上昇する。分岐管45および燃料管44の燃料圧も上昇して、速やかに高圧側の設定圧、例えば400[kPa]に達し、燃料通路15を通し高燃料圧の燃料がデリバリーパイプ23に供給される。これにより、暖機時にインジェクタ22からの燃料噴射を高圧で行うことにより、噴霧の微粒化を図ることができ、暖機時の未燃炭化水素の発生を抑えることができる。
【0088】
図5(c)〜図5(e)に示すように、燃料切替弁70のバルブ73が少しでも動き始めると同時に、操作圧燃料の燃料圧が下がり、デリバリーパイプ23への供給燃料の燃料圧が上昇し始める。
【0089】
ここで、連結管100の剛性は、操作圧燃料の燃料圧の切り替えが略線形になる大きさにしている。このため、図5(d)に二点鎖線で示すように、従来の低剛性の連結管ではグラフの直線の立ち下がりが緩くなるのに対し、図5(d)に実線で示すように、本実施の形態の高剛性の連結管100ではグラフの直線の立ち下がりが急な線形になる。
【0090】
さらに、デリバリーパイプ23への供給燃料の燃料圧については、図5(e)に二点鎖線で示すように、従来の低剛性の連結管ではグラフの直線の立ち上がりが緩くなるのに対し、図5(e)に実線で示すように、本実施の形態の高剛性の連結管100ではグラフの直線の立ち上がりが急な線形になる。これにより、燃料圧切替の応答性を向上することができる。
【0091】
そして、図5(a)に示すように、暖機運転中は、ECU4は燃料切替弁70の電磁コイル72に対して電圧の印加を維持する。これにより、図5(e)に示すように、高圧の燃料噴射が維持される。
【0092】
次に、図4に示すように、暖機運転が終了すると、ECU4は燃料ポンプユニット40からの燃料の燃料圧を低圧側の設定圧に切り替える。
【0093】
そこで、図5(a)に示すように、ECU4は、燃料切替弁70の電磁コイル72に対して、電圧の印加を停止する。図5(b)に示すように、電圧の印加の停止により、電流が緩やかに下降する。
【0094】
電流値が所定値91を下回った時点で、電磁コイル72からバルブ73に作用する吸引力が圧縮コイルばね74の付勢力より小さくなり、図5(c)に示すように、バルブ73が圧縮コイルばね74の付勢力によって上死点から移動し始める。これにより、バルブ73が開口端部82cに近づき、さらに、図2(a)に示すように、バルブ73が開口端部82cに当接して押圧することにより下死点に達する。よって、燃料切替弁70は閉塞される。
【0095】
そして、上述した燃料ポンプユニット40から燃圧制御弁50に供給された燃料は、図2(a)に示すように、燃料導入口51aから調圧室58に入り込む。ここで、燃料切替弁70が閉塞状態になった後は、操作圧燃料導入通路65が閉塞されている。このため、図2(b)に示すように、調圧部材52の受圧領域は、調圧部材52の環状受圧面52aおよび環状受圧面52bとなる。
【0096】
これにより、圧縮コイルばね53の付勢力に対抗して調圧部材52を開弁させるために小さい燃料圧で足りることになり、環状の導入側通路66内の燃料の調圧レベルが低下する。そして、図7(c)〜図7(e)に示すように、燃料切替弁70のバルブ73が完全に閉塞すると同時に、操作圧燃料の燃料圧が上がり、デリバリーパイプ23への供給燃料の燃料圧が下降し始める。よって、分岐管45および燃料管44の燃料圧も低下して、速やかに低圧側の設定圧、例えば200[kPa]達し、燃料通路15を通し低燃料圧の燃料がデリバリーパイプ23に供給される。これにより、ポンプユニット40を低圧作動させることにより、燃費を向上することができる。
【0097】
操作圧燃料の燃料圧については、図5(d)に二点鎖線で示すように、従来の低剛性の連結管ではグラフの直線の立ち上がりが緩くなるのに対し、図5(d)に実線で示すように、本実施の形態の高剛性の連結管100ではグラフの直線の立ち上がりが急な線形になる。デリバリーパイプ23への供給燃料の燃料圧については、図5(e)に二点鎖線で示すように、従来の低剛性の連結管ではグラフの直線の立ち下がりが緩くなるのに対し、図5(e)に実線で示すように、本実施の形態の高剛性の連結管100ではグラフの直線の立ち下がりが急な線形になる。これにより、燃料圧切替の応答性を向上することができる。
【0098】
また、図5(a)〜図5(e)に示すように、本実施の形態による電圧の印加の停止から実際に燃料圧が下降し終わるまでの時間Tは、従来の連結管を備えた燃料供給装置による時間Tに比べて大幅に短くなる。
【0099】
また、エンジン2の始動から一定時間が経過した後は、通常の運転状態、例えば部分負荷運転時には、燃費や燃料ポンプユニット40の信頼性の面から低圧側の設定圧が要求される。一方、高燃温時には、ベーパの発生を抑制するために高圧側の設定圧が要求される。
【0100】
以上のように、本実施の形態に係る燃料供給装置3によれば、連結管100の剛性を高めることができるので、燃圧制御弁50と燃料切替弁70との間で燃料を供給するときの連結管100の容積の変化を抑制することができる。これにより、燃料切替弁70により操作圧燃料の圧力を切り替えるときの変化を、従来のような緩やかな変化ではなく線形の変化にして応答性を向上できるとともに、燃圧制御弁50により燃料の圧力を制御するときの応答性を向上できる。これにより、インジェクタ22に供給する燃料制御における指示から実際に圧力が変化するまでのタイムラグの算出精度を向上することができる。
【0101】
また、燃圧制御弁50の応答性が向上することにより、燃料圧を高圧から低圧に切り替える時間も短くなる。このため、ポンプ圧を高圧から低圧に迅速に低減することができるので、燃費を向上することができる。
【0102】
また、本実施の形態に係る燃料供給装置3によれば、連結管100は、燃料タンク30内に位置する下流側可撓部44bより剛性を高くしている。このため、連結管100および下流側可撓部44bは燃料タンク30内という同一の使用環境下で使用されるものであっても、燃圧制御弁50と燃料切替弁70との間で燃料を供給するときの連結管100の容積の変化を、より確実に抑制することができる。
【0103】
また、本実施の形態に係る燃料供給装置3によれば、燃料切替弁70を開閉させることで、燃圧制御弁50の操作圧燃料導入通路65に操作圧燃料が導入されるか否かを切り替えることが可能となる。操作圧燃料導入通路65に操作圧燃料が導入されるか否かにより、調圧部材52の受圧領域の面積を容易に変化させることができるので、燃圧制御弁50による燃料の圧力を容易に制御することができる。
【0104】
また、本実施の形態に係る燃料供給装置3によれば、燃圧制御弁50の燃料導入口51aと、燃料排出口51bと、操作圧導入孔51cとは、調圧部材52に対して調圧室58側に配置されている。このため、背圧室59に操作圧燃料を導入する必要がなく、燃圧制御弁50の調圧室58側のみに燃料および操作圧燃料の配管を設ければよい。このため、コンパクトで簡素な配管が可能な燃圧制御弁50を提供することができる。また、本実施の形態に係る燃料供給装置3によれば、ハウジング51内を3室にすることや、燃圧制御弁を2つ設けることなしに、2段階に燃料圧を調整することができる。
【0105】
上述した本実施の形態の燃料供給装置3においては、下流側可撓部44bを剛性基準部としている。しかしながら、本発明に係る燃料供給装置においては、これに限られず、例えば、上流側可撓部44aを剛性基準部としてもよい。あるいは、本実施の形態の燃料供給装置3においては、剛性基準部を燃料タンク30内に有しているが、本発明に係る燃料供給装置においては、これに限られず、剛性基準部を燃料タンク30外に有してもよい。この場合、例えば、エンジン側可撓部44cや金属パイプ部を剛性基準部としてもよい。
【0106】
また、本実施の形態の燃料供給装置3においては、剛性基準部である下流側可撓部44bはナイロンで構成されるとともに、連結管100は金属パイプで構成されている。しかしながら、本発明に係る燃料供給装置においては、これに限られず、例えば、下流側可撓部44bはナイロンで構成されるとともに、連結管100は下流側可撓部44bより剛性の高い合成樹脂で構成されるようにしてもよい。あるいは、下流側可撓部44bはゴムで構成されるとともに、連結管100は下流側可撓部44bより剛性の高いナイロンで構成されるようにしてもよい。
【0107】
また、本実施の形態の燃料供給装置3においては、下流側可撓部44bと連結管100との材質が異なるようにしている。しかしながら、本発明に係る燃料供給装置においては、これに限られず、例えば、下流側可撓部44bと連結管100とのいずれもナイロン製にするとともに、連結管100の壁厚を下流側可撓部44bの壁厚よりも厚くすることで、連結管100の剛性を下流側可撓部44bの剛性より高くするようにしてもよい。
【0108】
また、本実施の形態の燃料供給装置3においては、燃圧制御弁50は操作圧導入孔51cを調圧室58側に配置したものとしている。しかしながら、本発明に係る燃料供給装置においては、これに限られず、燃圧制御弁50は操作圧導入孔51cを背圧室59側に配置したものとしてもよい。
【0109】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様の全体構成を有している。本実施の形態に係る燃料供給装置においては、特に圧力制御装置132の構成が異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1〜図3に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0110】
図6に示すように、本実施の形態の圧力制御装置132は、燃圧制御弁150および燃料切替弁170を備えている。
【0111】
燃料切替弁170のボビン171は、合成樹脂で構成され、ボビン部180と、シリンダ部181と、燃料管部182と、燃圧制御弁支持部185と、第2の配管としての連結管部200とを備えている。燃料管部182の燃料流入管182aは、シリンダ部181の側部に設けられている。燃圧制御弁支持部185は、燃圧制御弁150のハウジング151を保持している。ここで、図6中ではボビン171は一体成形品として示しているが、実際には適宜な部材同士を組み合わせて一体的に構成されるものとしている。すなわち、燃圧制御弁150の一部の部材と、燃料切替弁170の一部の部材と、連結管部200とが組み合わされて一体化されている。あるいは、燃圧制御弁150の一部の部材と、燃料切替弁170の一部の部材と、連結管部200とが一体成形されたものとしてもよい。
【0112】
燃圧制御弁150の第1のハウジング部材156は、燃料が導入される燃料導入口151aと、その燃料が排出される燃料排出口151bと、操作圧燃料が導入される操作圧導入孔151cとを有している。燃料導入口151aは、排出通路64の上流側に連通するように第1のハウジング部材156の周側部に形成されるとともに、燃料導入管167が取り付けられている。操作圧導入孔151cは、操作圧燃料導入通路65の下流側に連通するように第1のハウジング部材156の周側部に形成されている。
【0113】
連結管部200は、第1のハウジング部材156の操作圧導入孔151cの形成された部位と燃料流入管182aとを連結している。また、第1のハウジング部材156と燃圧制御弁支持部185とは密着している。これにより、連結管部200から操作圧燃料が第1のハウジング部材156と燃圧制御弁支持部185との隙間に漏れ出ることは防止される。
【0114】
本実施の形態に係る燃料供給装置3によれば、連結管部200は合成樹脂製であり剛性を高めることができるので、燃圧制御弁150と燃料切替弁170との間で燃料を供給するときの連結管部200の容積の変化を抑制することができる。
【0115】
また、本実施の形態の圧力制御装置132によれば、燃圧制御弁150と、燃料切替弁170と、連結管200とが一体化されているので、燃料供給装置3全体として小型化を図ることができる。
【0116】
以上のように、本発明に係る燃料供給装置は、従来と比較して燃料圧力変更時の応答性を向上することができるとともに、燃料供給圧力の切替時間の算出精度を向上し、さらには燃費を向上することができるという効果を奏するものであり、圧力制御装置を備えた燃料供給装置に有用である。
【符号の説明】
【0117】
2 エンジン(内燃機関)
3 燃料供給装置
22 インジェクタ(燃料消費部)
30 燃料タンク
40a 燃料ポンプ
44 燃料管(第1の配管)
44b 下流側可撓部(剛性基準部)
50 燃圧制御弁
51 ハウジング
51a 燃料導入口
51b 燃料排出口
52 調圧部材
58 調圧室
65 操作圧燃料導入通路
70 燃料切替弁
100 連結管(第2の配管)
200 連結管部(第2の配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料消費部に向けて燃料を吐出する燃料ポンプと、
前記燃料消費部と前記燃料ポンプとを連結するとともに、前記燃料ポンプから前記燃料消費部に前記燃料を供給する第1の配管と、
前記第1の配管に連結されるとともに、操作圧燃料の圧力切替により前記燃料の圧力を制御する燃圧制御弁と、
前記操作圧燃料の圧力を切り替える燃料切替弁と、
前記燃圧制御弁と前記燃料切替弁とを連結するとともに、前記操作圧燃料を流通可能にする第2の配管とを備える燃料供給装置であって、
前記第2の配管は、非膨張体の材質からなることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記第1の配管は、少なくとも一部に剛性基準部を有するとともに、
前記第2の配管の剛性は、前記剛性基準部の剛性よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記燃料を貯留するとともに、前記燃料ポンプを内蔵する燃料タンクを備え、
前記第2の配管および前記剛性基準部は前記燃料タンク内に位置することを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記剛性基準部はナイロンで構成されるとともに、前記第2の配管は金属で構成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記燃圧制御弁の一部の部材と、前記燃料切替弁の一部の部材と、前記第2の配管とは、一体化されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記燃圧制御弁は、前記制御対象燃料が導入される燃料導入口、前記制御対象燃料が排出される燃料排出口および前記操作圧燃料が導入される操作圧燃料導入通路を有するハウジングと、前記ハウジング内に前記燃料導入口に連通するとともに前記操作圧燃料導入通路を備える調圧室を形成するとともに、前記調圧室内の燃料圧力に応じ前記燃料導入口と前記燃料排出口とを連通させる隔壁状の調圧部材と、を備え、
前記燃圧制御弁は、前記操作圧燃料導入通路に前記操作圧燃料が導入されることにより、前記調圧部材が前記一面側で燃料圧力を受ける受圧領域の面積が変更され、前記受圧領域の面積に応じて前記調圧室内の燃料圧力を調整するものであり、
前記燃料切替弁は、閉弁により前記操作圧燃料導入通路に前記操作圧燃料を封入し、開弁により前記操作圧燃料導入通路から前記操作圧燃料を開放させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項7】
前記燃料消費部は、内燃機関の燃料噴射部であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32720(P2013−32720A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168481(P2011−168481)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)