説明

燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置

【課題】より高い燃焼度の複数の使用済燃料集合体を、燃料収納容器における線量率の制限値を満足させて、より短時間に装荷することができる燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法を提供する。
【解決手段】金属キャスク内に収納する各使用済燃料集合体の燃焼度分布データがCPUに入力される(ステップ4)。CPUはそれらの燃焼度分布データを用いて各々の使用済燃料集合体の線源強度分布を算出する(ステップ5)。キャスク内での使用済燃料集合体の収納位置を決定する(ステップ6)。算出した線源強度分布の情報及び収納位置の情報に基づいて、キャスクの線量率分布を算出する(ステップ7)。線量率計算値が第1線量率設定値未満であるかの判定(ステップ8)、及び線量率計算値が第2線量率設定値以上であるかの判定(ステップ9)が共にYesである場合に、決定された各使用済燃料集合体を金属キャスク内に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラント及び加圧水型原子力発電プラントから発生する使用済燃料集合体を装荷するのに好適な燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の炉心内で所定期間使用されて原子炉から取り出された使用済燃料集合体は、例えば、原子炉建屋内の燃料貯蔵プール内に冷却されながら一時保管される。燃料貯蔵プール内での所定の冷却期間が経過した使用済燃料集合体は、ウラン及びプルトニウム等の再利用可能な核燃料物質を回収するため、放射能の遮蔽機能を有する使用済燃料容器(燃料収納容器)(以下、キャスクという)に収納され、トラックまたは船舶で核燃料再処理施設に輸送される。使用済燃料集合体は、再処理されるまでの期間、核燃料再処理施設内の燃料貯蔵プール内に貯蔵される。キャスクに収容された使用済燃料集合体は、核燃料再処理施設に搬送する前に、原子力発電所の敷地外(またはその敷地内)に設置された中間貯蔵施設に一時的に保管されることもある。
【0003】
キャスクの一種である金属キャスクは、外胴及び外胴の内側に存在する内胴を有し、外胴と内胴の間に中性子遮蔽体を配置し、内胴内にバスケットを配置している。バスケットは、格子部材で画定される複数の使用済燃料集合体を収納するための複数の収納空間を形成している。これらの収納空間内に使用済燃料集合体がそれぞれ収納される。さらに、金属キャスクは、収納された各使用済燃料集合体をいかなる場合にも保持するため、蓋及び底部構造で密封されている。
【0004】
使用済燃料集合体の輸送容器は、非特許文献1に示されるように、燃焼度分布を想定して放射線遮へい体の設計を行っている。一般に、バスケットの各収納空間内に収納する使用済燃料集合体のうち平均燃焼度以下の使用済燃料集合体を周辺部に位置する各収納空間内に装荷する。平均燃焼度を超える使用済燃料集合体は中央に位置する各収納空間内に装荷する。このような使用済燃料集合体のバスケット内への装荷を前提に放射線遮へい体の設計が行われる。この放射線遮へい体は、各使用済燃料集合体の平均燃焼度に基づいて設計される。使用済燃料集合体は、炉心内で装荷されていた位置によって出力密度が異なる。このため、使用済燃料集合体の炉心内での装荷位置の履歴によって、各使用済燃料集合体の軸方向の燃焼度分布が異なっている。さまざまなケースにおける軸方向の燃焼度分布が含まれるように想定した燃焼度分布を用いて、金属キャスクの放射線遮へい体が設計される。
【0005】
このような放射線遮へい体を備えた金属キャスク内に使用済燃料集合体が装荷される。燃焼度が従来よりも高い燃焼度(取り出し平均燃焼度38GWd/t)が得られる取替え用の新燃料集合体が原子炉の炉心内に装荷された(非特許文献2参照)。このようにより高い燃焼度の使用済燃料集合体が原子炉内から取り出され、燃料貯蔵プール内に貯蔵されている。このような燃焼度の高い使用済燃料集合体を金属キャスクに収納することが検討されている。
【0006】
特許文献1は、使用済燃料集合体の燃焼度を考慮して事前にキャスク内に複数の使用済燃料集合体を装荷した状態での未臨界性を計算することを記述している。
【0007】
【特許文献1】特開平6−194490号公報
【非特許文献1】日本原子力学会標準、使用済燃料・混合酸化物新燃料・高レベル放射性廃棄物輸送容器の安全設計及び検査基準:2006(AESJ−SC−F006:2006)(2006年2月)、付属書18の74頁及び付属書24の83頁、社団法人日本原子力学会
【非特許文献2】日立評論 Vol.80 No.2(1998−2)、27〜30頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃焼度の高い使用済燃料集合体は、従来よりも高燃焼度の新燃料集合体が原子炉内に装荷されることによって発生する。このような高燃焼度の使用済燃料集合体を、より多く、従来の低い燃焼度の使用済燃料集合体を装荷していたキャスク内に装荷することができれば、高燃焼度の使用済燃料集合体専用のキャスクを準備する必要がなくなる。
【0009】
本発明の目的は、より高い燃焼度の使用済燃料集合体を燃料収納容器における線量率の制限値を満足させてより短時間に燃料収納容器内に装荷することができる燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、燃料収納容器内に収納するために選定された複数の使用済燃料集合体の燃焼度情報を用いて前記選定された各使用済燃料集合体の線源強度を算出し、それぞれの使用済燃料集合体の算出された線源強度に基づいて燃料収納容器内での選定された使用済燃料集合体のそれぞれの収納位置を設定し、それぞれのその収納位置に各々の使用済燃料集合体を配置した状態において、それぞれの使用済燃料集合体の線源強度を用いて燃料収納容器の周囲での線量率を算出し、算出された線量率が第1設定線量率未満であるとき、選定された各使用済燃料集合体を、燃料収納容器内に収納することにある。
【0011】
本発明は、燃料収納容器内に装荷するために選定された複数の使用済燃料集合体のそれぞれの燃焼度情報を用いて算出された、それらの使用済燃料集合体の各線源強度に基づいて、それらの使用済燃料集合体を設定された各収納位置に配置した状態で燃料収納容器の周囲での線量率を算出している。このため、より高い精度の線量率を算出することができ、燃料収納容器内に装荷する使用済燃料集合体の選定、及びこれらの使用済燃料集合体の燃料収納容器内での装荷位置の決定をより正確に行うことができる。これによって、燃料収納容器内に装荷された各使用済燃料集合体の装荷し直しの頻度を著しく低減できる。本発明は、より高い燃焼度の、選定された複数の使用済燃料集合体を、燃料収納容器における線量率の制限値を満足させて、燃料収納容器内により短時間に装荷することができる。このような本発明は、燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷開始から、所定体数の使用済燃料集合体が装荷された燃料収納容器の搬出までに要する時間をより短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より高い燃焼度の複数の使用済燃料集合体を、燃料収納容器に対する線量率の制限値を満足させて、燃料収納容器内により短時間に装荷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
かつて、取り出し平均燃焼度33GWd/tが得られるように設計され製造された取替え用の新燃料集合体を炉心内に装荷し、原子炉を運転していた。所定数の運転サイクルでの運転を経験した後、その燃料集合体は、使用済燃料集合体として原子炉から取り出され、冷却水が充填された燃料貯蔵プール内に設置された燃料貯蔵ラック内に収納されて冷却される。所定期間貯蔵されて冷却された使用済燃料集合体は、燃料貯蔵ラックから燃料収納容器の一種である例えば金属キャスク内に収納される。
【0014】
平均燃焼度33GWd/tが得られるように製造された新燃料集合体の使用済燃料集合体48(図5参照)を収納する金属キャスクは、その使用済燃料集合体48の軸方向の燃焼度を反映して設計された放射線遮へい体を備えた金属キャスク内に収納される。その使用済燃料集合体48の軸方向の燃焼度分布49は、その燃料集合体の炉心内での装荷位置の履歴に応じて、図5に示すように異なっている。特に、沸騰水型原子炉の炉心に装荷されていた使用済燃料集合体48は、炉心内の装荷される位置によって、出力密度が異なりボイド率分布が異なっているので、その装荷位置の履歴によって燃焼度分布49が異なるのである。このため、これらの燃焼度分布49を全て包含できるより高めの軸方向の燃焼度分布50を想定し、この燃焼度分布50を用いて放射線遮へい能力が大きな金属キャスク(後述の金属キャスク40)を製造している。
【0015】
平均燃焼度33GWd/tが得られる取替え用の新燃料集合体の後に、38GWd/tのより高い平均燃焼度が得られる取替え用の新燃料集合体が、炉心内に装荷された(非特許文献2参照)。この平均燃焼度38GWd/tが得られるように製造された新燃料集合体の使用済燃料集合体(後述の使用済燃料集合体39)も、燃料貯蔵プール内の燃料貯蔵ラックに収納され貯蔵されている。燃焼度がより高い使用済燃料集合体39を金属キャスクに収納するため、専用の金属キャスクを準備する必要がある。しかしながら、使用済燃料集合体48を収納する金属キャスク40に、使用済燃料集合体39を収納することができれば、二種類の金属キャスクを準備する必要がなくなる。
【0016】
発明者らは、従来用いられていた低い燃焼度の使用済燃料集合体48を収納する金属キャスクに、前述の燃焼度のより高い使用済燃料集合体39を収納する方法について検討を行った。この結果、発明者らは、使用済燃料集合体48を収納する金属キャスク40が、前述した燃焼度分布48を全て包含できるより高めの軸方向の燃焼度分布49を想定して製造されているため、放射線遮へい能力が大きくなっていることを見出した。また、発明者らは、使用済燃料集合体39を、上記の金属キャスク40内に装荷する方法も、新たに見出すことができた。すなわち、この新たな使用済燃料集合体の装荷方法は、事前に選定した所定体数の、燃焼度のより高い使用済燃料集合体の線源強度を用いて、選定されたそれらの使用済燃料集合体を燃料収納容器内に装荷した状態でこの燃料収納容器の外側での線量率を算出し、この線量率の計算値が線量率の制限値より小さいときに選定されたそれらの使用済燃料集合体を燃料収納容器内に装荷するものである。この使用済燃料の装荷方法は、放射線遮へい能力が大きくなっている金属キャスク40を有効に活用することができる。
【0017】
この新たに見出した使用済燃料集合体の装荷方法を適用した、本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法を、図1、図2及び図3を用いて説明する。本実施例の装荷方法は、沸騰水型原子炉に対して適用された例である。
【0019】
本実施例の装荷方法に用いられる燃料集合体装荷装置を、図2を用いて説明する。この燃料集合体装荷装置21は、燃料移送装置22、制御装置26及び演算処理装置である装荷燃料選定装置28を備えている。燃料移送装置22は、走行台車23、横行台車24及び燃料把持装置(図示せず)を有する。走行台車23は、燃料貯蔵プール34の一方向(X方向という)に伸びて燃料貯蔵プール34を間に挟んで配置されるガイドレール25A,25B上に移動可能に配置される。走行台車23は、走行台車23に設けられた第1駆動装置(図示せず)によってX方向に移動される。横行台車24は走行台車23上に走行台車23の長手方向に設置された一対のガイドレール(図示せず)上に配置される。横行台車24は、横行台車24に設けられた第2駆動装置(図示せず)によって、X方向と直交するY方向に移動される。燃料把持装置は横行台車24に取り付けられ、燃料集合体を掴む掴み部(図示せず)を有する。この掴み部は、燃料集合体を掴み、横行台車24に設けられた第3駆動装置(図示せず)により上下方向に移動される。燃料移送装置22としては、沸騰水型原子炉で、通常、燃料交換において使用される燃料交換機が用いられる。図2に示す燃料貯蔵プール34は、上方より見た状態を示している。
【0020】
制御装置26及び記憶装置27は燃料制御室47内に配置されている。記憶装置27は制御装置26に接続される。装荷燃料選定装置28は、演算装置であるCPU29、メモリ30、表示装置31及び入力装置32を有する。CPU29は、メモリ30、表示装置31及び入力装置32に接続される。CPU29は、さらに、制御装置26及び線量計33に接続される。入力装置32はキーボード及びマウスを含んでいる。装荷燃料選定装置28は中央制御室に設置される。装荷燃料選定装置28を燃料制御室47内に配置することも可能である。線量計33は、原子炉建屋内で金属キャスク40の外胴に蓋を取り付ける位置付近に配置される。
【0021】
沸騰水型原子炉においては、燃料貯蔵プール34は、原子炉建屋内で原子炉を収納する原子炉格納容器よりも上方に配置される。燃料貯蔵ラック38が燃料貯蔵プール34内に設置されている。燃料貯蔵プール34内には冷却水が充填されており、燃料貯蔵ラック38はその冷却水中に配置される。原子炉から取り出された使用済燃料集合体(新燃料集合体の状態で例えば平均燃焼度38GWd/tを取り出せるように設計、製造)39は、原子炉上方の原子炉ウェル(図示せず)内で燃料貯蔵プール34と同じレベルまで引き上げられ、水平方向に移動してゲート35を通って燃料貯蔵プール34内に移送される。さらに、この使用済燃料集合体39は、燃料貯蔵ラック38の、所定の位置、例えば、位置P1(X1,Y1)に挿入されて貯蔵される。貯蔵されている間、燃料貯蔵ラック38内で冷却水によって冷却される。このような使用済燃料集合体39の原子炉からの取り出し及び上記所定位置までの移送は、制御装置26で制御される、燃料交換機である燃料移送装置22によって行われる。制御装置26は、第1駆動装置、第2駆動装置及び第3駆動装置のそれぞれの駆動及び停止を制御する。走行台車23、横行台車24及び掴み部が、それらの制御によって所定の方向に移動される。
【0022】
原子炉の炉心内に装荷されている各燃料集合体に対して、個々の燃料集合体を認識するために識別コード(燃料ID)が与えられている。この燃料IDを用いることによって、原子炉の運停止時において炉心内で移動された装荷位置の履歴、軸方向の燃焼度分布データ及び平均燃焼度の情報を燃料集合体毎に管理することができる。各燃料集合体に対するそれらの情報は、記憶装置27に記憶されている。燃料集合体のその装荷位置の情報は、第1駆動装置及び第2駆動装置にそれぞれ設けられた各エンコーダによって得ることができる。
【0023】
原子炉から取り出された使用済燃料集合体が収納された燃料貯蔵ラック38内の位置、例えば、位置P1(X1,Y1)の情報も、前述の各エンコーダによって得られる。位置P1(X1,Y1)の情報も燃料IDに対応付けて記憶装置27に記憶されている。燃料貯蔵ラック38内に収納されている各使用済燃料集合体は、該当する燃料IDで記憶装置27に記憶されている情報を検索することによって、その燃料IDが付与された使用済燃料集合体に対する炉心内での各装荷位置の情報、燃焼度分布データ及び平均燃焼度等の炉心管理データを得ることができる。
【0024】
燃料貯蔵プール34は、例えば、一つのコーナ部にキャスクピット36を設けている。キャスクピット34は、開口部37を除いてコンクリート側壁で取囲まれている。使用済燃料集合体39が収納される金属キャスク(燃料収納容器)40が、キャスクピット36内で冷却水中に配置される。この金属キャスク40は、例えば、平均燃焼度33GWd/tが得られるように設計され製造された取替え用の新燃料集合体の使用済燃料集合体を収納するように作られている。金属キャスク40は、図3に示すように、内胴41及びバスケット42を有する。バスケット42は格子部材である。この格子部材を構成する各板材の両端部がそれぞれ内胴41に取り付けられることによって、バスケット42が内胴41に固定される。バスケット42で画定される各収納空間43内にそれぞれ使用済燃料集合体39が収納される。バスケット42で画定される各収納空間43は、バスケット42の横断面における中央に位置する中央領域45、及び中央領域45を取囲んでバスケット42の周辺に位置する周辺領域のいずれかに分けられる。図3に示す金属キャスク40は、放射線遮へい体及び外胴が省略されている。
【0025】
燃料貯蔵プール34内の燃料貯蔵ラック38内に収納されている使用済燃料集合体39は、燃料移送装置22の掴み部に掴まれて燃料貯蔵ラック38の上方に引き出され、走行台車23及び横行台車24の移動によって水平方向に移動される。この使用済燃料集合体39は、開口部37を通ってキャスクピット36内の金属キャスク40の上方に到達し、所定位置(例えば、位置P2(X2,Y2))の収納空間43内に挿入される。
【0026】
キャスクピット36内の金属キャスク40内に収納する各使用済燃料集合体39の選定処理を、図1に示す処理手順を用いて詳細に説明する。この処理手順は、プログラムであり、装荷燃料選定装置28のメモリ30に記憶されている。オペレータが入力装置32から起動指令を入力したとき、この起動指令を入力するCPU29が、メモリ30からそのプログラムを取り込み、このプログラムに規定された手順(図1に示す処理手順)に基づいた処理を実行する。まず、nが0とされ(ステップ1)、nがn+1に置き換えられる(ステップ2)。金属キャスク内に収納するために選定された使用済燃料集合体の燃料ID情報を入力する(ステップ3)。オペレータは、入力装置32からCPU29、燃料貯蔵ラック38内に収納されている各使用済燃料集合体の情報の表示要求指令を入力する。CPU29は、この表示要求指令に基づいて、制御装置26に対してそれらの使用済燃料集合体の各燃料ID情報、燃料貯蔵ラック38内での収納位置情報、軸方向の燃焼度分布データ及び平均燃焼度等の入力依頼を行う。制御装置26は、記憶装置27に記憶されているそれらの情報(炉心管理データ)を読み取り、CPU29に送信する。各使用済燃料集合体の燃料ID情報、その収納位置情報、軸方向の燃焼度分布データ及び平均燃焼度等は、一旦、メモリ30に記憶される。CPU29は、図4(A)に示す燃料貯蔵ラック38の画像情報を作成し、各使用済燃料集合体39の燃料ID情報を該当する収納位置情報と対応付けてその画像情報と共に表示装置31に出力する。図4(A)に示す画像情報及び上記の関連情報が表示装置31に表示される。図4(A)に示す升目一つずつが1体の使用済燃料集合体39を表している。オペレータは、表示された画像情報を見ながら、金属キャスク40内の収納空間43の数に相当する体数の使用済燃料集合体39を選定してマウスでクリックする。選定された各使用済燃料集合体39の燃料ID情報及び燃料貯蔵ラック38内での収納位置情報がCPU29に入力される。このようなステップ3の処理により、金属キャスク40内に収納する使用済燃料集合体39が仮設定される。
【0027】
使用済燃料集合体の燃焼度分布データが入力される(ステップ4)。CPU29は、仮設定された各使用済燃料集合体39の燃料ID情報を用いてメモリ30からそれらの使用済燃料集合体39に対するそれぞれの軸方向の燃焼度分布及び平均燃焼度データを読み取る。これらの燃焼度分布データは、燃料ID情報と共に、CPU29から表示装置31に出力され、表示装置31に表示される。軸方向の燃焼度分布データの表示例を、図4(B)に示す。
【0028】
キャスク内での使用済燃料集合体の収納位置を決定する(ステップ5)。メモリ30に格納された各使用済燃料集合体39の平均燃焼度の情報を用いて、仮設定された使用済燃料集合体39毎に、挿入する、バスケット42内の収納空間43を決定する。この決定は、CPU29が行う以下に示す処理によりなされる。まず、それらの使用済燃料集合体39を、平均燃焼度に基づいて、中央領域45内の各収納空間43にそれぞれ収納する使用済燃料集合体、及び周辺領域46内の各収納空間43にそれぞれ収納する使用済燃料集合体に分類する。この分類は、各使用済燃料集合体39の平均燃焼度と平均燃焼度設定値を比較することによって行われる。すなわち、平均燃焼度が平均燃焼度設定値以上の使用済燃料集合体39Aを中央領域45に収納し、平均燃焼度が平均燃焼度設定値未満の使用済燃料集合体39Bを周辺領域46に収納するものとする。すなわち、表示装置31に表示された図4(A)に示す画像情報を基に金属キャスク40内に収納する使用済燃料集合体を選定する際に、中央領域45内の収納空間43の数だけ燃焼度の高い使用済燃料集合体39を選定し、また、周辺領域46内の収納空間43の数だけ燃焼度の低い使用済燃料集合体39を選定する。前者の使用済燃料集合体39は平均燃焼度が平均燃焼度設定値以上になり、後者の使用済燃料集合体39は平均燃焼度が平均燃焼度設定値未満となる。
【0029】
CPU29は、中央領域45に存在する各収納空間43を対象に、使用済燃料集合体39A毎に収納空間43を決める。例えば、金属キャスク40の中心軸付近に位置する一つの収納空間43を基点に時計回りに螺旋状に外側へ向かって、平均燃焼度の大きい使用済燃料集合体39Aの順に中央領域45に存在する収納空間43を決定する。周辺領域46内に位置する各収納空間43に対しても、同様に、収納する使用済燃料集合体39Bをそれぞれ決定する。例えば、中央領域45の収納空間43と隣り合う周辺領域46内の一つの収納空間43を基点に時計回りに螺旋状に外側へ向かって、平均燃焼度の大きい使用済燃料集合体39Bの順に周辺領域46に存在する収納空間43を決定する。収納位置が決定された後、中央領域45内の収納空間43毎に、その収納空間43の位置情報と使用済燃料集合体39Aの燃料ID情報を対応付けてメモリ30に記憶する。また、周辺領域46内の収納空間43毎に、その収納空間43の位置情報と使用済燃料集合体39Bの燃料ID情報を対応付けてメモリ30に記憶する。
【0030】
線源強度分布を算出する(ステップ6)。仮設定された各使用済燃料集合体39のそれぞれの軸方向の燃焼度分布データを用いて各使用済燃料集合体39における軸方向の線源強度分布を算出する。ここで、線源とは、使用済燃料集合体内の核燃料物質に含まれている核分裂生成物、及びPu,Am,Cm等の重元素から放出される放射線(ガンマ線及び中性子線)及び崩壊熱を意味している。算出された軸方向の線源強度分布の情報は、メモリ30に記憶される。
【0031】
キャスクの線量分布を算出する(ステップ7)。メモリ30は、線量分布計算プログラム及び金属キャスク40の構造や部材の密度などを定義した入力データを記憶している。CPU29は、収納される各使用済燃料集合体39A,39Bの線源強度分布の情報及び上記入力データを用いて、線量分布計算プログラムにより、放射線、すなわち中性子及びγ線のフラックス分布を計算する。さらに、CPU29は、放射線のエネルギーに依存するフラックス分布を基に金属キャスク40周りの実効当量線量(線量)の空間分布(線量率分布)を、線量分布計算プログラムを用いて計算する。CPU29は、算出された線量率分布の情報に基づいて表示画像情報を作成する。この画像情報は表示装置31に表示される。その画像情報の表示例が図4(C)に示される。この画像情報は金属キャスク40の画像情報も含んでいる。図4(C)に示す画像情報は、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における、軸方向(Z座標方向)の線量率分布を示している。図4(C)の「R」は金属キャスクの半径方向を示している。本表示例では、金属キャスク40の側部の上記位置での線量率の最大値が、90マイクロ・シーベルト毎時(μSv/h)であり、線量率の制限値(100μSv/h)を下回っている。
【0032】
線量率計算値が第1線量率設定値未満であるかを判定する(ステップ8)。CPU29は、算出された線量率分布の情報に含まれる最大線量率(線量率計算値C)が第1線量率設定値(線量率の制限値)未満であるかを判定する。この最大線量率は、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置において算出された値である。キャスクの表面から1m離れた位置での線量率制限値は100μSv/hである。ステップ8の判定が「No」の場合、線量率計算値Cが100μSv/h以上である場合には、金属キャスク40に収納する使用済燃料集合体39を再選定し、ステップ3で再選定された各使用済燃料集合体39の燃料ID情報を入力する。再選定された各使用済燃料集合体39を基にしたステップ4〜8の前述の各処理が、ステップ8の判定が「Yes」になるまで繰り返される。
【0033】
ステップ8の判定が「Yes」になったとき、線量率計算値が第2線量率設定値以上であるかを判定する(ステップ9)。第2線量率設定値は第1線量率設定値よりも小さな値である。例えば、第2線量率設定値は第1線量率設定値の90%に設定される。本実施例では、第2線量率設定値は90μSv/hである。線量率計算値Cが第2線量率設定値よりも小さい場合、すなわち、ステップ9の判定が「No」である場合には、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における線量率に余裕があることを示しており、平均燃焼度がより高い、すなわち、線源強度がより強い使用済燃料集合体39を収納することができる。ステップ9の判定が「No」であるとき、仮設定した使用済燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に再設定するステップ3〜9の処理が繰り返される。その再設定は、表示装置31に例えば図4(A)に示す画像情報が表示される。燃料貯蔵ラック38内の収納位置情報と併せて燃焼度情報分布の情報を表示することによって、燃焼度の高い使用済燃料集合体を選定することが容易になる。
【0034】
選定された使用済燃料集合体の情報を制御装置26に出力する(ステップ10)。ステップ9の判定が「Yes」になったとき、CPU29は、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における線量率の計算値Cが90μSv/h以上100μSv/h未満になる仮設定の各使用済燃料集合体39を金属キャスク40に収納する使用済燃料集合体であると決定する。これらの使用済燃料集合体の燃料ID情報、燃料貯蔵ラック38内での収納位置情報(以下、第1収納位置情報という)及び金属キャスク40のバスケット42内での収納位置情報(以下、第2収納位置情報という)が、CPU29から制御装置26に伝えられる。
【0035】
制御装置26は、入力した燃料ID情報、第1収納位置情報及び第2収納位置情報を用いて燃料移送装置22を制御し、燃料貯蔵ラック38内の使用済燃料集合体39をキャスクピット36内に置かれた金属キャスク40内に収納する。すなわち、制御装置26は、第1収納位置情報に基づいて第1駆動装置、第2駆動装置及び第3駆動装置を駆動させて走行台車23、横行台車24及び掴み部を移動させる。掴み部は、燃料貯蔵ラック38内で第1収納位置に収納されている使用済燃料集合体39を掴む。この使用済燃料集合体39は、掴み部の上昇によって燃料貯蔵ラック38から引き出され、走行台車23及び横行台車24の移動によって、開口部37を通って金属キャスク40の第2収納位置の真上に到達する。制御装置26が第3駆動装置を制御することによって、掴み部が下降して掴み分に掴まれている使用済燃料集合体39が第2収納位置に位置する収納空間43内に収納される。このような制御装置26の制御による燃料移送装置22の移動が繰り返されることにより、装荷燃料選定装置28で決定された、燃料貯蔵ラック38内の各第1収納位置に存在する各使用済燃料集合体39が、装荷燃料選定装置28で決定された、金属キャスク40内の各第2収納位置に存在する各収納空間43内に収納される。以上のようにして、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における線量率が、計算上、90μSv/h以上100μSv/h未満を達成するように、選定された各使用済燃料集合体39がバスケット42内の定められた収納空間43内に収納される。
【0036】
該当する全ての使用済燃料集合体39を収納した金属キャスク40は、原子炉建屋内の天井クレーン(図示せず)を用いてキャスクピット36から引き出され、原子炉建屋内の所定の位置まで搬送される。その位置で、金属キャスク40内の冷却水が排出され、外胴の上端に蓋が取り付けられる。外胴と蓋の間から放射線が放出されない程度に、蓋が外胴に締め付けられる。線量計33は、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置において線量を計測し、得られた線量率(線量率計測値E)を出力する。
【0037】
装荷燃料選定装置28のCPU29は、さらに、線量率計測値Eを用いて以下の処理を実行する。線量率計測値が入力される(ステップ11)。CPU29は、線量計33からの線量計側値Eを入力する。線量率計測値が第1線量率設定値未満であるかを判定する(ステップ12)。CPU29は、線量率計測値Eが第1線量率設定値(例えば100μSv/h)未満であるかを判定する。この判定が「Yes」であるとき、線量率計測値が第2線量率設定値以上であるかを判定する(ステップ13)。CPU29は、線量率計測値Eが第2線量率設定値(例えば90μSv/h)以上であるかを判定する。「キャスク搬送」のメッセージ情報が表示装置に出力される(ステップ14)。CPU29は、ステップ13の判定が「Yes」になったとき、「キャスク搬送」のメッセージ情報を表示装置31に出力する。
【0038】
「キャスク搬送」のメッセージ情報が表示装置31に表示されたとき、定められた体数の使用済燃料集合体39を収納した金属キャスク40を、核燃料再処理施設まで搬送することが許可される。蓋が作業員により外胴に締め付けられ、定められた体数の使用済燃料集合体39A,39Bがステップ6で定められた位置に収納された金属キャスク40が密封される。この金属キャスク40が原子力発電所から核燃料再処理施設まで搬送される。
【0039】
線量率計測値と線量率計算値が比較される(ステップ15)。CPU29は、入力した線量率計測値Eと線量率計算値Cを比較する。この比較によって、線量率補正量δDが求められる(ステップ16)。線量率補正量δDの算出は、例えば、実施例3における燃焼度補正量δSの算出と同様に行われる。CPU29は、この線量率補正量δDをメモリ30に記憶させ、次回、金属キャスク30に収納する使用済燃料集合体39の選定処理を行い際に、線量率補正量δDを用いてステップ6で算出された線量率分布の情報を補正する。このような線量率の補正によって、線量率計測値が第1線量率設定値以上になって使用済燃料集合体を、金属キャスク内に収納し直すリスクを軽減できる。
【0040】
次に、ステップ12,13のそれぞれの判定が「Yes」になった場合について説明する。まず、ステップ12の判定が「Yes」になった場合を説明する。ステップ12の判定が「Yes」になったとき、この判定の情報が表示装置31に表示され、作業員に伝えられる。作業員は、外胴から蓋を外し、天井クレーンを操作して蓋が外された金属キャスク40をキャスクピット36内に戻す。その判定結果の情報を装荷燃料選定装置28のCPU29から入力した制御装置26は、燃料移送装置22を移動させる。伽巣ピット36内に戻された金属キャスク40内の各使用済燃料集合体39が、燃料貯蔵ラック38内の元の該当するそれぞれの収納空間内に戻される。
【0041】
ステップ12の判定が「No」になったとき、CPU29は、ステップ3の処理を実行する。すなわち、金属キャスク40に収納される使用済燃料集合体であるとステップ10で決定された各使用済燃料集合体は、キャンセルされる。ステップ3の処理によって、金属キャスク40内に収納される各使用済燃料集合体が、再度、仮設定される。再仮設定された各使用済燃料集合体39を基にステップ4〜8の処理が実行される。ステップ8の判定が「No」になったとき、再仮設定された全使用済燃料集合体を再選定するスッテプ3の処理を含めてステップ8までの処理が、ステップ8の判定が「Yes」になるまで繰り返される。ステップ8の判定が「Yes」になったとき、ステップ9の判定が行われる。ステップ9の判定が「Yes」になったとき、ステップ10の処理が実行される。制御装置26は、前述したように燃料移送装置22を制御し、燃料貯蔵ラック38内の該当する各使用済燃料集合体39を、キャスクピット36内に置かれた金属キャスク40内の定められた収納空間43にそれぞれ収納する。ステップ9の判定が「No」であるときには、ステップ3において、仮設定した使用済燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に再設定し、ステップ9で「Yes」になるまで、ステップ9までの処理が繰り返される。
【0042】
ステップ12の判定が「Yes」で前述したステップ13の判定が「No」になったときは、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における線量率計測値に余裕があり、燃焼度のより高い使用済燃料集合体39を収納することができる。ステップ13の判定が「No」である場合も、選定された各使用済燃料集合体が収納された、蓋が外された金属キャスク40がキャスクピット36内に戻される。しかしながら、ステップ12の判定が「No」になった場合と異なり、金属キャスク40内に存在する全使用済燃料集合体が燃料貯蔵ラック38に戻されない。ステップ13の判定が「No」であるとき、金属キャスク40内に収納された使用済燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に取替えて、金属キャスク40内に収納する使用済燃料集合体39A,39Bを再選定するステップ3〜9の処理が繰り返される。その一部の使用済燃料集合体39は金属キャスク40から取り出される燃料集合体である。ステップ9の判定が「Yes」になってステップ10の処理が実行されたとき、燃料移送装置22の移動により、前述の一部の使用済燃料集合体が燃料貯蔵ラック38内の元の収納空間内に戻される。替りに選定された使用済燃料集合体39が、燃料移送装置22により、燃料貯蔵ラック38から取り出され、金属キャスク40内の定められた収納空間43内に収納される。この収納空間43は、上記の取り出された一部の使用済燃料集合体39が収納されていた位置である。
【0043】
再選定された使用済燃料集合体の金属キャスク40への収納が終了したとき、この金属キャスク40は、上記の天井クレーンにより、原子炉建屋内の所定の位置まで移送される。金属キャスク40内の冷却水が、再度、排出され、外胴に蓋が取り付けられる。この状態で、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置での線量が線量計33によって計測される。CPU29は、この線量計測値Eが線量計33から入力し(ステップ11)、ステップ12及び13の判定を行う。これらの判定が「Yes」のとき、CPU29は、「キャスク搬送を許可」のメッセージ情報を表示装置31に出力する。
【0044】
本実施例は、金属キャスク40内に装荷するために仮設定された複数の使用済燃料集合体のそれぞれの線源強度を用いて、それらの使用済燃料集合体39を定められたそれぞれの位置に装荷した状態で金属キャスク40の周囲(例えば、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置)での線量率を算出している。このため、より高い精度の線量率を算出することができ、金属キャスク40内に装荷する使用済燃料集合体39の選定、及びこれらの使用済燃料集合体39の金属キャスク40内での装荷位置の決定をより正確に行うことができる。これによって、金属キャスク40内に装荷した使用済燃料集合体39の装荷し直しの頻度を著しく低減できる。このような本実施例は、金属キャスク40への使用済燃料集合体39の装荷開始から、使用済燃料集合体39が装荷された金属キャスク40の搬出までに要する時間をより短縮することができる。また、金属キャスク40内に装荷する使用済燃料集合体39の選定、及びこれらの使用済燃料集合体39の金属キャスク40内での装荷位置の決定に要する演算時間を、それらの選定し直し等の頻度が減少するので、短縮させることができる。本実施例は、より高い燃焼度の選択された複数の使用済燃料集合体39を、金属キャスク40に対する線量率の制限値を満足させて、金属キャスク40内により短時間に装荷することができる。
【0045】
本実施例は、上記したように、金属キャスク40内に装荷する使用済燃料集合体39の選定、及びこれらの使用済燃料集合体39の金属キャスク40内での装荷位置の決定をより正確に行うことができるので、所定体数の使用済燃料集合体39を、前述した使用済燃料集合体48の収納用に作成した金属キャスク40内に装荷することができる。この場合でも、金属キャスク40の周囲(例えば側部表面から1m離れた位置)の線量率は、制限値未満になっている。
【0046】
本実施例は、線量率計測値E及び線量率計算値Cに基づいて算出したE/Cを用いて、ステップ7での線量率分布の算出に用いられる線量分布計算プログラムを修正している。この線量分布計算プログラムを修正するので、線量率計測値Eが第1線量率設定値以上になって使用済燃料集合体39を、金属キャスク40内に収納し直すリスクを軽減することができる。
【0047】
装荷燃料選定装置28で選定された各使用済燃料集合体39を金属キャスク40内に装荷した後、線量計33で計測された、その金属キャスク40の周囲の線量率が線量率の制限値未満であるかを判定している。このような本実施例は、線量率が制限値未満である金属キャスク40の周囲の線量率が制限値未満であって、燃料貯蔵ラック38内に収納されている使用済燃料集合体39のうち、より燃焼度の高い使用済燃料集合体39を金属キャスク40内に装荷することができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の他の実施例である燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法を、図6を用いて説明する。本実施例の装荷方法は、沸騰水型原子炉に対して適用された例である。
【0049】
発明者らは、ステップ6で算出した線源強度の情報を基に、原子炉から取り出した使用済燃料集合体39からの放射線及び発生する崩壊熱に影響を与える核分裂生成物がどの放射性核種であるかを検討した。この結果、原子炉から取り出した時点から十数年が経過した時点においては、その使用済燃料集合体39での放射線及び崩壊熱に占める割合が最も高いのは核分裂生成物であるバリウム137メタステ−ブル(Ba−137m)からのγ線であることが分かった。この核分裂生成物は、核分裂生成核種であるセシウム137(Cs−137)のベ−タ(β−)崩壊で生成される。そのγ線は、Ba−137mの励起電子が基底状態に戻り、バリウム137(Ba−137)になる際に放出される0.662MeVのγ線である。本実施例は、発明者らが新たに見出した上記した知見に基づいて、すなわち、Ba−137mのγ線の測定値に基づいて使用済燃料集合体を収納したキャスクの表面温度を評価するものである。
【0050】
本実施例の使用済燃料集合体の装荷方法は、図2に示す燃料集合体装荷装置21によって実行され、CPU29で実行される図1に示す実施例1の処理手順のステップ1〜16に、ステップ17,18の処理を付加した処理手順に基づいて行われる。ステップ16,17の処理は、今回の使用済燃料集合体39の選定処理の前に実行される。
【0051】
ステップ16,17の処理について説明する。線源強度の補正情報δRは以下のようにして求められる。線源強度の補正量(線源強度の情報)δRは、前回、金属キャスク40に収納する各使用済燃料集合体39の選定時に図1に示すステップ7で算出した金属キャスク40の周囲の線量率のうちBa−137mの0.662MeVのγ線が寄与している線量率計算値、及び図1に示すステップ11で入力されてメモリ30に記憶されている線量率計測値EのうちBa−137mのγ線が寄与する線量率計測値(ステップ11で入力した計測値)が比較される(ステップ15)。線源強度の補正量δRが算出される(ステップ17)。すなわち、線源強度の補正量δRは、Ba−137mの0.662MeVのγ線が寄与している線量率計算値、及びBa−137mのγ線が寄与する線量率計測値に基づいて、求められる。線源強度の補正量δRは、後者のγ線が寄与する線量率計測値に対する前者のγ線の線量率計算値の割合で示される。算出された線源強度の補正量δRは、メモリ30に記憶される。
【0052】
ステップ9の判定が「Yes」のときにステップ60の処理が実行されるが、その前に、補正後の線源強度(崩壊熱)分布を算出する(ステップ18)。ステップ6で算出された線源強度分布の情報が上記したように予め求められてメモリ30に記憶されている線源強度の補正情報δRに基づいて補正され、補正された線源強度分布が求められる。次に、金属キャスク40内の各部の温度分布を計算する(ステップ60)。この温度分布の計算は、ステップ5で決定された、金属キャスク40内での各使用済燃料集合体39の収納位置の情報、ステップ18で算出された、補正された線源強度分布の情報、及び金属キャスク構成部材の寸法や密度、熱伝導率などの物性値を用いて金属キャスク40内の温度分布を計算し、この温度分布の情報を用いて金属キャスク40の表面温度を求める。
【0053】
線源強度の補正情報δRは以下のようにして求められる。線源強度の補正量(線源強度の情報)δRは、前回、金属キャスク40に収納する各使用済燃料集合体39の選定時に図1に示すステップ7で算出した金属キャスク40の周囲の線量率のうちBa−137mの0.662MeVのγ線が寄与している線量率計算値、及び図1に示すステップ11で入力されてメモリ30に記憶されている線量率計測値EのうちBa−137mのγ線が寄与する線量率計測値(ステップ11で入力した計測値)が比較される(ステップ15)。線源強度の補正量δRが算出される(ステップ17)。すなわち、線源強度の補正量δRは、Ba−137mの0.662MeVのγ線が寄与している線量率計算値、及びBa−137mのγ線が寄与する線量率計測値に基づいて、求められる。線源強度の補正量δRは、後者のγ線が寄与する線量率計測値に対する前者のγ線の線量率計算値の割合で示される。算出された線源強度の補正量δRは、メモリ30に記憶される。
【0054】
算出した表面温度が設定温度以下であるかを判定する(ステップ61)。上記したように、ステップ60で求められた表面温度が、設定温度(例えば、85℃)以下であるかが判定される。その表面温度が85℃以下である場合(判定結果が「Yes」である場合)には、ステップ10の処理が実行される。すなわち、選定された使用済燃料集合体の情報が制御装置26に出力される。その表面温度が85℃を超える場合(判定結果が「No」である場合)には、ステップ3以降の処理が、ステップ9の判定結果が「Yes」でステップ61の判定が「Yes」になるまで繰り返される。
【0055】
実施例1で述べたように、キャスクは、原子炉建屋外に搬送される前に表面から1m位置での線量が測定されることになっている。放射線のうちBa−137mからのγ線の測定値を反映した線源強度の補正情報を用いているので、キャスクの表面温度を精度良く求めることができる。したがって、本実施例は、選定された使用済燃料集合体39を金属キャスク40内に収納する前に、金属キャスク40の周囲の線量率が制限値未満で金属キャスク40の表面温度が設定温度以下になるように、金属キャスク40内に収納する各使用済燃料集合体39を予め選定することができるので、使用済燃料集合体39をキャスク内に収納し直すリスクを低減することができる。本実施例は、実施例1で生じる効果も、得ることができる。
【0056】
以上のようにしてキャスクの表面温度を求める本実施例は、キャスクの除熱性能(表面温度)を確認するために実施する伝熱検査に要する時間を著しく短縮することができる。すなわち、必ず実施する放射線線量率検査において、特定の核分裂生成核種から放出されるγ線の測定を追加するだけで、かなり大掛かりな準備が必要で手間と時間がかかっていた従来の伝熱検査よりも、伝熱検査に要する時間を著しく短縮することができる。尚、線量率と同様に発熱源の予測精度が向上するので、従来よりも発熱密度が高い高燃焼度の使用済燃料集合体をキャスク内に収納する使用済燃料集合体として選定することが可能になる。
【0057】
尚、Ba−137m以外の核分裂生成核種からのγ線を用いて得られた線源強度の補正情報に基づいても、全く同様の手順で、キャスクの表面温度を求めることができる。
【実施例3】
【0058】
本発明の他の実施例である燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法を、図7〜図9を用いて説明する。本実施例の使用済燃料集合体の装荷方法は、沸騰水型原子炉から取り出された使用済燃料集合体に対して適用された例である。本実施例は、次回に、前回と同じ仕様のキャスクに収納する複数の使用済燃料集合体の選定処理を実行する際において、そのキャスク周辺の線量率の予測精度を向上させる使用済燃料集合体の装荷方法である。これは、キャスク内に収納した複数の使用済燃料集合体の前回の選定処理で用いた情報、及び線量計33で計測された前回の線量の計測値に基づいて、次回の使用済燃料集合体の選定処理で用いる情報を補正することによって、実現できるのである。キャスク周辺の線量率の予測精度の向上は、使用済燃料集合体を収納した状態におけるキャスク周辺の線量率測定値の制限値に対する余裕を、より高い燃焼度の使用済燃料集合体のキャスク内への装荷に活用することができる。本実施例では、前回の選定処理で用いた情報、及び線量計33で計測された前回の線量の計測値を、次回、前回と同じ種類で別の金属キャスク40に収納する使用済燃料集合体の選定処理に用いる燃焼度分布の情報及びキャスクの遮へい体の厚みのそれぞれの補正に用いている。
【0059】
以上の特徴を有する本実施例の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法を、具体的に説明する。本実施例の使用済燃料集合体の装荷方法は、図2に示す燃料集合体装荷装置21によって実行され、CPU29で実行される処理手順として、図1に示す処理手順の替りに図7〜図9に示す処理手順を用いている。図7に示す処理手順及び図1に示す処理手順において同じ符号が付されたステップは、同じ処理を実行する。本実施例におけるステップ60及び61の処理は、図6に示すそれらの処理と同じである。
【0060】
本実施例は、CPU29にて、実施例1と同様にステップ1〜10の処理を行い、さらに実施例2と同様にステップ60及び61の処理を行って、金属キャスク40内に収納する複数の使用済燃料集合体39を選定し、これらの使用済燃料集合体39の金属キャスク40内での収納位置を決定する。さらに、選定された各使用済燃料集合体39を収納した金属キャスク40の周囲の線量率を算出してこの線量率が設定値を満足したときに、CPU29が選定された各使用済燃料集合体39の情報を制御装置26に出力する。燃料移送装置22及び制御装置26によって、実施例1と同様に、燃料貯蔵ラック38内の使用済燃料集合体39が、金属キャスク40内に収納される。選択された使用済燃料集合体39が収納されて密封された金属キャスク40が、キャスクピット36から引き上げられる。線量計33がこの金属キャスク40の周囲の線量を計測する。ステップ13の判定が「Yes」になった場合に、ステップ14においてその金属キャスク40が原子炉建屋外に搬送される。
【0061】
CPU29は、その搬送された金属キャスク40に収納する各使用済燃料集合体の選定処理で用いた情報、及び線量計33で計測された前回の線量の計測値に基づいて、次回、同じ仕様の別の金属キャスク40内に収納する各使用済燃料集合体の選定処理で用いる補正情報を作成する。この補正情報の作成は、次回の使用済燃料の選定処理を実行する前に、図8及び図9に示された各処理に基づいて行われる。CPU29にて作成される補正情報は、燃焼度補正量(燃焼度補正情報)δS、遮へい厚み補正量(遮へい厚み補正情報)δTである。
【0062】
実施例1で述べたように、金属キャスク40周辺の線量率の予測は解析によって実施される。すなわち、線量率は、収納する使用済燃料集合体から放出される放射線(ガンマ線及び中性子線)の線源強度分布、及び金属キャスク40を構成する部材の寸法、配置、材質等の仕様及び構成部材の物性(密度、中性子反応断面積等の核特性)の各情報を用いて、多群の輸送方程式を解いて得られたγ線と中性子線のフラックス(空間及び粒子のエネルギーの関数)に、フラックスから線量当量率への換算係数を乗じて算出される。
【0063】
線源強度分布は、当該使用済燃料集合体の燃焼度分布と対応している。しかしながら、燃焼度を評価する際に用いる炉心内の該当する位置での出力密度の真値と、炉心管理データを作成するための核計算に基づく出力密度には核計算モデルの近似及び中性子反応断面積の誤差などに起因する、ずれ(誤差)が生じる。このため、実際の燃焼度とステップ4で入力される燃焼度(記憶装置27に記憶されていた)との間にずれが生じている可能性がある。発明者らは、線量率計測値Eを用いて、上記した燃焼度のずれに伴って低下する線量率の予測精度を向上させる方法を考えた。これが、以下に述べる燃焼度補正量δSの作成である。
【0064】
この燃焼度補正量δSの作成方法を、図8を用いて説明する。図8に示す燃焼度補正量δSの作成処理手順62のプログラムは、メモリ30に記憶されており、ステップ6,7,63〜66を有している。CPU29は、その処理手順62に基づいて燃焼度補正量δSを作成する。CPU29で実行される燃焼度補正量δSの作成処理を順次説明する。前回、選定された各使用済燃料集合体39の金属キャスク40内の収納位置を決定した際に用いた、当該使用済燃料集合体39の平均燃焼度Sを入力し(ステップ63)、この平均燃焼度Sに偏差δSを加えて摂動燃焼度S’(=S+δS)を求める(ステップ64)。この偏差δSは、設計ノミナル燃焼度分布に基づく平均燃焼度Sを用いて計算した線量率Cが線量率計測値Eより小さい場合に、任意に設定した正の値を有する偏差である。次に、ステップ6及び7において、平均燃焼度Sに対応する線源強度及び線量率分布、及び摂動燃焼度S’に対応する線源強度及び線量率分布がそれぞれ求められる。そのステップ6では、前回、選定された各使用済燃料集合体39の燃焼度分布を用いてそれらの使用済燃料集合体39における軸方向の線源強度分布が算出される。そのステップ7では、実施例1で述べたように、それらの使用済燃料集合体39の線源強度分布の情報及び金属キャスク40の構造や部材の密度などを定義した入力データ(実施例1参照)を用いて、金属キャスク40周りの線量率分布を計算する。ステップ7で求められた、平均燃焼度Sに対応する金属キャスク40の表面から1m離れた位置での線量率は、線量率Cである。また、摂動燃焼度S’に対応するその表面から1m離れた位置での線量率は、線量率C’である。次に、前回、ステップ11で入力された線量率計測値E(実施例1参照)と求められた線量率C及び線量率C’とを比較する(ステップ65)。この比較によって、線量率計測値Eを再現する燃焼度(平均値)の補正量δSを算出する(ステップ66)。例えば、燃焼度補正量δsは、線量率Cと線量率C’の間を線量率計測値Eによって内挿することによって求められ、線量率計測値Eと一致する値である。得られた燃焼度補正量δSはメモリ30に記憶される。
【0065】
なお、図8のステップ7で算出された線量率C’が線量率計測値Eより小さい場合には、線量率C’が線量率計測値Eよりも大きくなる偏差δSを用いて、摂動燃焼度S’を再計算する(ステップ64)。その後、前述した図8のステップ6,7の処理を行う。燃焼度補正量δSは、上記したように、線量率Cと線量率C’を内挿して得られる、線量率計測値Eと一致する値である。算出された計測率Cが線量率計測値Eより大きい場合には、偏差δSとして負の値を用いて上述したようにステップ64以降の処理をやり直す。
【0066】
金属キャスク40を構成する部材にも寸法及び物性(密度等)に製造公差に伴う不確定性がある。そこで、発明者らは、金属キャスクの仕様に係る線量率の不確定性を低減させ、線量率の予測精度を向上させる方法を考えた。これが、以下に述べる遮へい厚み補正量δTの作成である。
【0067】
この遮へい厚み補正量δTの作成方法を、図9を用いて説明する。図9に示す遮へい厚み補正量δTの作成処理手順67のプログラムは、メモリ30に記憶されており、ステップ7,68〜71を有している。CPU29は、その処理手順67に基づいて遮へい厚み補正量δTを作成する。CPU29で実行される遮へい厚み補正量δTの作成処理を順次説明する。ここでは、金属キャスク40の仕様のうち、線量率を決定する支配要因と考えられる内胴及び中性子遮へい体の各厚さなどの所謂遮へい厚み(放射線遮へい厚み)に着目する。前回使用した金属キャスク40の遮へい厚み(設計ノミナル値)Tをメモリ30から入力し(ステップ68)、この遮へい厚みTに偏差δTを加えた摂動遮へい厚みT’(=T+δT)を求める(ステップ67)。この偏差δTは、設計ノミナル遮へい厚みTを用いて計算した線量率Cが線量率計測値Eより小さい場合に、任意に設定した正の値を有する偏差である。ステップ7において、遮へい厚みTに対応する線量率分布、及び摂動遮へい厚みT’に対応する線量率分布がそれぞれ求められる。そのステップ7では、実施例1で述べたように、それらの使用済燃料集合体39の線源強度分布の情報及び金属キャスク40の遮へい厚みや部材の密度などを定義した入力データ(実施例1参照)を用いて、金属キャスク40周りの線量率分布を計算する。ステップ7で求められた、遮へい厚みTに対応する金属キャスク40の表面から1m離れた位置での線量率は、線量率Cである。また、摂動遮へい厚みT’に対応するその表面から1m離れた位置での線量率は、線量率C’である。次に、前回、ステップ11で入力された線量率計測値E(実施例1参照)と求められた線量率C及び線量率C’とを比較する(ステップ70)。この比較によって、線量率計測値Eを再現する遮へい厚み補正量δTを算出する(ステップ71)。例えば、遮へい厚み補正量δTは、線量率Cと線量率C’の間を線量率計測値Eによって内挿することによって求められ、線量率計測値Eと一致する値である。得られた遮へい厚み補正量δTはメモリ30に記憶される。
【0068】
なお、図9のステップ7で算出された線量率C’が線量率計測値Eより小さい場合には、線量率C’が線量率計測値Eよりも大きくなる偏差δTを用いて、摂動遮へい厚みT’を再計算する(ステップ69)。その後、前述した図9のステップ7の処理を行う。遮へい厚み補正量δTは、上記したように、線量率Cと線量率C’を内挿して得られる、線量率計測値Eと一致する値である。算出された計測率Cが線量率計測値Eより大きい場合には、偏差δTとして負の値を用いて上述したようにステップ69以降の処理をやり直す。
【0069】
別の金属キャスク40に収納する使用済燃料集合体の選定処理は、CPU29が図7に示す処理手順、すなわち、ステップ1〜13,4A,60,61の各処理を実行することによって行われる。ここでは、燃焼度補正量δS及び遮へい厚み補正量δTを用いた各処理を以下に説明する。他の処理は、実施例1及び2で説明しているので省略する。
【0070】
ステップ4で入力された燃焼度分布のデータは、ステップ4Aで、燃焼度補正量δSによって補正される。その後のステップ5,6等で用いられる燃焼度は補正された燃焼度である。ステップ6では、上記した別の金属キャスク40内に選定された各使用済燃料集合体39における軸方向の線源強度分布の情報が、補正された燃焼度の分布の情報を用いて実施例1のステップ6の処理と同様にして求められる。選定された各使用済燃料集合体39を収納した状態での上記した別の金属キャスク40の周囲の線量率分布が、ステップ7で求められる。この線量率分布の算出は、その金属キャスク40の遮へい厚みを遮へい厚み補正量δTで補正して得られた補正された遮へい厚み及び線源強度分布のそれぞれの情報を用いて行われる。ステップ60では、金属キャスク40内での各使用済燃料集具体39の収納位置情報、及びこの算出された線源強度分布等の情報を用いて実施例2と同様に金属キャスク40の表面温度が求められる。この表面温度を用いてステップ61の判定が行われる。
【0071】
尚、前回の金属キャスク40への使用済燃料集合体39の装荷時に、設計ノミナル燃焼度に基づいて計算した線源強度分布と設計ノミナル遮へい厚みを用いて計算で求めた線量率計算値C(n)と線量率計測値E(n)を比較して、バイアス値En/Cnを求め、次回において同じ種類の他の金属キャスク40へ使用済燃料集合体39を装荷する場合に、線量率計算値C(n+1)に上記バイアス値をかける簡略的な補正方法によっても、線量率の予測精度を高めることができる。
【0072】
本実施例は、実施例1で得られる効果、実施例2で述べたステップ60及び61の処理によって得られる効果を、得ることができる。本実施例は、さらに、以下の効果を得ることができる。本実施例は、種々の使用済燃料集合体39を対象に、燃焼度の不確定性、遮へい厚の不確定性を同時に考慮して、線量率の予測値と実測値の比較を繰り返すことによって、使用済燃料集合体の燃焼履歴に依存する燃焼度と、金属キャスクの仕様の不確定性に依存する遮へい厚のそれぞれの不確定性に対してより適切な補正量を求めることができる。これによって、線量率の予測精度が徐々に向上し、金属キャスク40の設計の裕度を活用し、同じ仕様(同じ種類)の他の金属キャスク40に対して、より燃焼度が高い使用済燃料集合体を収納することが可能になる。
【0073】
実施例1,2及び3で述べた燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法は、加圧水型原子炉から取り出された使用済燃料集合体を燃料収納容器に収納する際にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法のフロ−チャートである。
【図2】図1に示す使用済燃料集合体の装荷方法を実施する燃料集合体装荷装置の構成図である。
【図3】図1に示す使用済燃料集合体の装荷方法により使用済燃料集合体が収納される金属キャスクのバスケット部分の横断面図である。
【図4】図2に示す燃料集合体装荷装置の表示装置に表示される画像情報の例を示す説明図である。
【図5】燃料収納容器の放射線遮へい体の設計において想定される使用済燃料集合体の軸方向燃焼度分布を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施例である実施例2の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法のフロ−チャートである。
【図7】本発明の他の実施例である実施例3の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法のフロ−チャートである。
【図8】図7に示す燃焼度補正量を算出する処理手順のフロ−チャートである。
【図9】図7に示す遮へい厚みの補正量を算出する処理手順のフロ−チャートである。
【符号の説明】
【0075】
21…燃料集合体装荷装置、22…燃料移送装置、23…走行台車、24…横行台車、26…制御装置、27…記憶装置、28…装荷燃料選定装置、29…CPU、30…メモリ、31…表示装置、33…線量計、34…燃料貯蔵プール、36…キャスクピット、38…燃料貯蔵ラック、39,39A,39B…使用済燃料集合体、40…金属キャスク、41…内胴、42…バスケット、43…収納空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料収納容器内に収納するために選定された複数の使用済燃料集合体の燃焼度情報を用いて前記選定された各使用済燃料集合体の線源強度を算出し、それぞれの前記使用済燃料集合体の前記燃焼度情報に基づいて前記燃料収納容器内での前記選定された使用済燃料集合体のそれぞれの収納位置を設定し、それぞれの前記収納位置に各々の前記使用済燃料集合体を配置した状態において、それぞれの前記使用済燃料集合体の前記線源強度を用いて前記燃料収納容器の周囲での線量率を算出し、算出された前記線量率が第1設定線量率未満であるとき、前記選定された各使用済燃料集合体を、燃料貯蔵プールから前記燃料収納容器内に収納することを特徴とする燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項2】
前記算出された線量率が前記設定線量率以上であるとき、前記燃料収納容器内に収納するために新たに選定されたそれぞれの前記使用済燃料集合体を基に、前記線源強度の算出、前記収納位置の設定及び前記線量率の算出を行い、この新たに算出された線量率が前記第1設定線量率未満であるとき、前記燃料収納容器内に収納する前記各使用済燃料集合体を、前記新たに選定された各使用済燃料集合体とする請求項1に記載の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項3】
前記算出された線量率が前記第1設定線量率未満で前記第1設定線量率よりも低い第2設定線量率以上であるとき、前記選択された使用済燃料集合体の一部をより高い燃焼度の前記使用済燃料集合体と置き換え、この置き換えられた前記使用済燃料集合体及び置き換えられなかった他の複数の前記使用済燃料集合体を基に、前記線源強度の算出、前記収納位置の設定及び前記線量率の算出を行い、この新たに算出された線量率が前記第1設定線量率未満であって前記第2設定線量率以上であるとき、前記燃料収納容器内に収納する前記各使用済燃料集合体を、前記新たに選定された各使用済燃料集合体とする請求項1に記載の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項4】
装荷燃料選定装置が、選定されたそれぞれの前記使用済燃料集合体を基に、前記線源強度の算出、前記収納位置の設定、前記線量率の算出及び前記算出された線量率が前記第1設定線量率未満であるかの判定を行い、
制御装置が、前記算出された線量率が前記第1設定線量率未満であるとき、選定された各前記使用済燃料集合体の、前記燃料貯蔵プール内でのそれぞれの収納位置の情報、及び選択された前記各使用済燃料集合体の、前記燃料収納容器内でのそれぞれの前記収納位置の情報に基づいて、前記使用済燃料集合体を移送する燃料移送装置の移動を制御し、
前記燃料移送装置が、その制御によって、選定されたそれぞれの前記使用済燃料集合体を、前記燃料貯蔵プール内でのそれぞれの前記収納位置から、前記燃料収納容器内でのそれぞれの前記収納位置に移動して前記燃料収納容器内に装荷する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項5】
選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の周囲の線量率計測値及び前記第1の使用済燃料集合体の第1の前記燃焼度情報に基づいて燃焼度補正情報を求め、第2の前記燃料収納容器に収納するために新たに選定された複数の第2の使用済燃料集合体の各第2の燃焼度情報を、前記燃焼度補正情報を用いて補正し、補正された前記第2の燃焼度情報をそれぞれ用いて前記選定された各第2の使用済燃料集合体の線源強度を算出し、それぞれの前記補正された第2の燃焼度情報に基づいて前記第2の燃料収納容器内での前記選定された第2の使用済燃料集合体のそれぞれの収納位置を設定し、それぞれの前記収納位置に各々の前記第2の使用済燃料集合体を配置した状態において、それぞれの前記第2の使用済燃料集合体の前記線源強度を用いて前記第2の燃料収納容器の周囲での線量率を算出し、この算出された前記線量率が第1設定線量率未満であるとき、前記選定された各第2の使用済燃料集合体を、燃料貯蔵プールから前記第2の燃料収納容器内に収納する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項6】
選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の放射線遮へいの厚み及び前記第1の使用済燃料集合体の第1の前記燃焼度情報を用いて求められた前記第1の燃料収納容器周囲の線量率、及び選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の周囲の線量率計測値に基づいて放射線遮へい厚み補正情報を求め、第2の前記燃料収納容器の放射線遮へい厚み情報を、放射線遮へい厚み補正情報を用いて補正し、各前記第2の使用済燃料集合体のそれぞれの第2の燃焼度情報に基づいて前記選定された各第2の使用済燃料集合体の線源強度を算出し、それぞれの前記第2の燃焼度情報に基づいて前記第2の燃料収納容器内での前記選定された第2の使用済燃料集合体のそれぞれの収納位置を設定し、それぞれの前記収納位置に各々の前記第2の使用済燃料集合体を配置した状態において、それぞれの前記第2の使用済燃料集合体の前記線源強度及び補正された前記放射線遮へい厚み情報を用いて前記第2の燃料収納容器の周囲での線量率を算出し、この算出された前記線量率が第1設定線量率未満であるとき、前記選定された各第2の使用済燃料集合体を、燃料貯蔵プールから前記第2の燃料収納容器内に収納する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項7】
選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の放射線遮へいの厚み及び前記第1の使用済燃料集合体の第1の前記燃焼度情報を用いて求められた前記第1の燃料収納容器周囲の線量率、及び選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の周囲の線量率計測値に基づいて放射線遮へい厚み補正情報を求め、第2の前記燃料収納容器の放射線遮へい厚み情報を、放射線遮へい厚み補正情報を用いて補正し、前記第2の燃料収納容器の周囲での前記線量率の算出を、補正された放射線遮へい厚み情報及びそれぞれの前記第2の使用済燃料集合体の前記線源強度に基づいて行う請求項5に記載の燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法。
【請求項8】
前記選定された各前記第2の使用済燃料集合体の前記第2の燃料収納容器内への前記収納は、算出された前記線量率が第1設定線量率未満で、かつ前記選定された各前記第1の使用済燃料集合体を収納した前記第1の燃料収納容器の周囲で計測された前記線量率の計測値に基づいて求められた前記燃料収納容器の表面温度が設定温度以下であるときに行われる請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の燃料収納容器の装荷方法。
【請求項9】
前記線量率の計測値は、Ba−137mのγ線の計測値である請求項8に記載の燃料収納容器の装荷方法。
【請求項10】
燃料収納容器内に収納するために選定された複数の使用済燃料集合体の燃焼度情報を用いて前記選定された各使用済燃料集合体の線源強度を算出し、それぞれの前記使用済燃料集合体のその線源強度に基づいて前記燃料収納容器内での前記選定された使用済燃料集合体のそれぞれの収納位置を設定し、それぞれの前記収納位置に各々の前記使用済燃料集合体を配置した状態において、それぞれの前記使用済燃料集合体の前記線源強度を用いて前記燃料収納容器の周囲での線量率を算出し、算出された前記線量率が第1設定線量率未満であるとき、使用済燃料集合体移送指令を出力する装荷燃料選定装置と、
前記使用済燃料集合体を移送する燃料移送装置と、
前記使用済燃料集合体移送指令を入力したとき、選定された各前記使用済燃料集合体の、燃料貯蔵プール内でのそれぞれの収納位置の情報、及び選択された前記各使用済燃料集合体の、前記燃料収納容器内でのそれぞれの前記収納位置の情報に基づいて、前記燃料移送装置の移動を制御する制御装置と、
前記制御装置による制御によって、選定されたそれぞれの前記使用済燃料集合体を、前記燃料貯蔵プール内でのそれぞれの前記収納位置から、前記燃料収納容器内でのそれぞれの前記収納位置に移動させて前記燃料収納容器内に装荷する前記燃料移送装置とを備えたことを特徴とする燃料集合体装荷装置。
【請求項11】
前記装荷燃料選定装置が、前記算出された線量率が前記設定線量率以上であるとき、前記燃料収納容器内に収納するために新たに選定されたそれぞれの前記使用済燃料集合体を基に、前記線源強度の算出、前記収納位置の設定及び前記線量率の算出を行い、この新たに算出された線量率が前記第1設定線量率未満であるとき、前記新たに選定された各使用済燃料集合体を移送させる前記使用済燃料集合体移送指令を、前記制御装置に出力する請求項10に記載の燃料集合体装荷装置。
【請求項12】
前記装荷燃料選定装置が、前記算出された線量率が前記第1設定線量率未満で前記第1設定線量率よりも低い第2設定線量率以上であるとき、前記選択された使用済燃料集合体の一部をより高い燃焼度の前記使用済燃料集合体と置き換え、この置き換えられた前記使用済燃料集合体及び置き換えられなかった他の複数の前記使用済燃料集合体を基に、前記線源強度の算出、前記収納位置の設定及び前記線量率の算出を行い、この新たに算出された線量率が前記第1設定線量率未満であって前記第2設定線量率以上であるとき、前記新たに選定された各使用済燃料集合体を移送させる前記使用済燃料集合体移送指令を、前記制御装置に出力する請求項10または請求項11に記載の燃料集合体装荷装置。
【請求項13】
前記装荷燃料選定装置が、
選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の周囲の線量率計測値及び前記第1の使用済燃料集合体の第1の前記燃焼度情報に基づいて燃焼度補正情報を求め、
第2の前記燃料収納容器に収納するために新たに選定された複数の第2の使用済燃料集合体の各第2の燃焼度情報を、前記燃焼度補正情報を用いて補正し、
前記燃焼度情報として補正された前記第2の燃焼度情報を用いて、前記選定された各第2の使用済燃料集合体における前記線源強度の算出、及び前記第2の燃料収納容器内での前記選定された第2の使用済燃料集合体のそれぞれの前記収納位置の設定を行い、
それぞれの前記収納位置に各々の前記第2の使用済燃料集合体を配置した状態における前記第2の燃料収納容器の周囲での前記線量率の算出は、それぞれの前記第2の使用済燃料集合体の前記線源強度を用いて行う請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の燃料集合体装荷装置。
【請求項14】
前記装荷燃料選定装置が、
選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の放射線遮へいの厚み及び前記第1の使用済燃料集合体の第1の前記燃焼度情報を用いて求められた前記第1の燃料収納容器周囲の線量率、及び選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の周囲の線量率計測値に基づいて放射線遮へい厚み補正情報を求め、
第2の前記燃料収納容器の放射線遮へい厚み情報を、放射線遮へい厚み補正情報を用いて補正し、
前記第2の燃料収納容器内での前記選定された第2の使用済燃料集合体のそれぞれの前記収納位置の設定、及び前記選定された各第2の使用済燃料集合体の前記線源強度の算出は、それぞれの前記第2の燃焼度情報に基づいて行い、
それぞれの前記収納位置に各々の前記第2の使用済燃料集合体を配置した状態における前記第2の燃料収納容器の周囲での前記線量率の算出は、それぞれの前記第2の使用済燃料集合体の前記線源強度及び補正された前記放射線遮へい厚み情報を用いて行う請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の燃料集合体装荷装置。
【請求項15】
前記装荷燃料選定装置が、
選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の放射線遮へいの厚み及び前記第1の使用済燃料集合体の第1の前記燃焼度情報を用いて求められた前記第1の燃料収納容器周囲の線量率、及び選定された各々の第1の前記使用済燃料集合体を収納した第1の前記燃料収納容器の周囲の線量率計測値に基づいて放射線遮へい厚み補正情報を求め、
第2の前記燃料収納容器の放射線遮へい厚み情報を、放射線遮へい厚み補正情報を用いて補正し、
前記第2の燃料収納容器の周囲での前記線量率の算出を、補正された放射線遮へい厚み情報及びそれぞれの前記第2の使用済燃料集合体の前記線源強度に基づいて行う請求項13に記載の燃料集合体装荷装置。
【請求項16】
燃料収納容器内に収納するために選定された複数の使用済燃料集合体の燃焼度情報を用いて前記選定された各使用済燃料集合体の線源強度を算出し、それぞれの前記使用済燃料集合体のその線源強度に基づいて前記燃料収納容器内での前記選定された使用済燃料集合体のそれぞれの収納位置を設定し、それぞれの前記収納位置に各々の前記使用済燃料集合体を配置した状態において、それぞれの前記使用済燃料集合体の前記線源強度を用いて前記燃料収納容器の周囲での線量率を算出し、算出された線量率が第1設定線量率未満であるかを判定し、算出された線量率が前記第1設定線量率未満であるとき、使用済燃料集合体移送指令を出力することを特徴とする装荷燃料選定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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