燃料噴射弁
【課題】 スワール室において効率良く燃料にスワールを付与することができる燃料噴射弁を提供すること。
【解決手段】 連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側と反対側の側面である第1側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側の側面である第2側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第2直線としたときに、連通路を、第1側面に対して第1直線が成す角度が、第2側面に対して第2直線が成す角度よりも小さくなるように形成し、第2側面を、スワール付与室を軸方向から見たときに直線状に形成した。
【解決手段】 連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側と反対側の側面である第1側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側の側面である第2側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第2直線としたときに、連通路を、第1側面に対して第1直線が成す角度が、第2側面に対して第2直線が成す角度よりも小さくなるように形成し、第2側面を、スワール付与室を軸方向から見たときに直線状に形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射弁として用いられる燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、開弁時に側孔から横方向通路を経由してスワール室に燃料が供給され、スワール室でスワールを付与された燃料が燃料噴孔から外部に噴射されるものが開示されている。この横方向通路は、側孔からスワール室に向かって断面積が小さくなるように形成され、燃料の流速が増加するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−336562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、横方向通路の中心軸上に側孔の中心が位置しているため、スワール室に燃料が流入したときに燃料が横方向通の側面に衝突し、横方向通路中央付近の流速に対して側面付近の流速が遅くなる。特に、スワール室内の燃料の旋回方向外側の流速が遅いため、スワール室において効率良く燃料にスワールを付与することができないおそれがあった。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、スワール室において効率良く燃料にスワールを付与することができる燃料噴射弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本願発明では、連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側と反対側の側面である第1側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側の側面である第2側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第2直線としたときに、連通路を、第1側面に対して第1直線が成す角度が、第2側面に対して第2直線が成す角度よりも小さくなるように形成し、第2側面を、スワール付与室を軸方向から見たときに直線状に形成した
【発明の効果】
【0006】
本発明により、スワール付与室内で燃料が旋回する径方向外側の流速を速くすることができるため、スワール付与室内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の燃料噴射弁の軸方向断面図である。
【図2】実施例1の燃料噴射弁のスワール室付近の拡大断面図である。
【図3】実施例1の弁座部材を軸方向他端側から見た平面図である。
【図4】実施例1のノズルプレートを軸方向から見た平面図である。
【図5】比較例の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図6】比較例の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図7】比較例の連通路内の燃料の流速を示した図である。
【図8】実施例1の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図9】実施例1の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図10】実施例1の連通路内の燃料の流速を示した図である。
【図11】実施例1の弁座部材を軸方向他端側から見た平面図である。
【図12】実施例1のノズルプレートを軸方向から見た平面図である。
【図13】実施例2の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図14】実施例2の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図15】実施例2の連通路内の燃料の流速を示した図である。
【図16】実施例3の弁座部材を軸方向他端側から見た平面図である。
【図17】実施例3のノズルプレートを軸方向から見た平面図である。
【図18】実施例3の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図19】実施例3の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図20】他の実施例の燃料噴射弁のスワール室付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
実施例1の燃料噴射弁1について説明する。
[燃料噴射弁の構成]
図1は燃料噴射弁1の軸方向断面図である。この燃料噴射弁1は、自動車用エンジン等に用いられるものである。
燃料噴射弁1は、磁性筒体2と、磁性筒体2内に収容されるコア筒体3と、軸方向に摺動可能な弁体4と、弁体4と一体に形成された弁軸5と、閉弁時に弁体4により閉鎖される弁座6を有する弁座部材7と、開弁時に燃料が噴射される噴射孔を有するノズルプレート8と、通電時に弁体4を開弁方向に摺動させる電磁コイル9と、磁束線を誘導するヨーク10とを有している。
【0009】
磁性筒体2は、例えば電磁ステンレス鋼等の磁性金属材料により形成された金属パイプ等からなり、深絞り等のプレス加工、研削加工等の手段を用いることにより、図1に示すように段付き筒状をなして一体に形成されている。磁性筒体2は、一端側に形成された大径部11と、大径部11よりも小径であって他端側に形成された小径部12とを有している。
小径部12には、一部を薄肉化した薄肉部13が形成されている。小径部12は、薄肉部13より一端側にコア筒体3を収容するコア筒体収容部14と、薄肉部13より他端側に弁部材15(弁体4、弁軸5、弁座部材7)を収容する弁部材収容部16とに分けられている。薄肉部13は、後述するコア筒体3と弁軸5が磁性筒体2に収容された状態で、コア筒体3と弁軸5との間の隙間部分を取り囲むように形成されている。薄肉部13は、コア筒体収容部14と弁部材収容部16との間の磁気抵抗を増大させ、コア筒体収容部14と弁部材収容部16間を磁気的に遮断している。
【0010】
大径部11は弁部材15に燃料を送る燃料通路17を構成しており、大径部11の一端部には燃料を濾過する燃料フィルタ18が設けられている。燃料通路17にはポンプ47が接続されている。このポンプ47は、ポンプ制御装置54により制御されている。
コア筒体3は、中空部19を有する円筒形に形成されており、磁性筒体2のコア筒体収容部14に圧入されている。中空部19には、圧入等の手段により固定されたばね受20が収容されている。このばね受20の中心には軸方向に貫通した燃料通路43が形成されている。
弁体4の外形は略球体状に形成されており、周上に燃料噴射弁1の軸方向に対して並行に削られた燃料通路面21を有している。弁軸5は大径部22と、外形が大径部22より小径に形成された小径部23とを有している。
【0011】
小径部23の先端には弁体4が溶接により一体に固定されている。なお図中の黒半円や黒三角は溶接箇所を示している。大径部22の端部にはばね挿入孔24が穿設されている。このばね挿入孔24の底部は、ばね挿入孔24よりも小径に形成されたばね座り部25が形成されるとともに、段部のばね受部26が形成されている。小径部23の端部には燃料通路孔27が形成されている。この燃料通路孔27はばね挿入孔24と連通している。小径部23の外周と燃料通路孔27とは貫通した燃料流出孔28が形成されている。
弁座部材7は、略円錐状の弁座6と、弁座6より一端側に弁体4の径とほぼ同型に形成された弁体保持孔30と、一端開口側に向かうにつれて大径に形成された開口部31とが設けられている。
また弁座部材7の他端側には、燃料にスワール(旋回流)を与える複数のスワール室41と、各スワール室41に燃料を分配する中央室42が形成されている。
弁軸5および弁体4は、磁性筒体2に軸方向摺動可能に収装されている。弁軸5のばね受部26とばね受20との間にコイルバネ29が設けられ、弁軸5および弁体4を他端側に付勢している。弁座部材7は、弁座6に弁体4が座るように磁性筒体2に挿入され、磁性筒体2に溶接により固定されている。
【0012】
弁座部材7の他端側にはノズルプレート8が設けられ、このノズルプレート8は弁座部材7と溶接により固定されている。ノズルプレート8には、スワール室41においてスワールが与えられた燃料が噴射される燃料噴射孔44が形成されている。
磁性筒体2のコア筒体3の外周には電磁コイル9が挿嵌されている。すなわち、電磁コイル9はコア筒体3の外周に配置されることとなる。電磁コイル9は、樹脂材料により形成されたボビン32と、このボビン32に巻回されたコイル33とから構成されている。コイル33は、コネクタピン34を介して電磁コイル制御装置55に接続されている。電磁コイル制御装置55は、クランク角を検出するクランク角センサからの情報に基づいて計算した燃焼室側に燃料を噴射するタイミングに応じて、電磁コイル9のコイル33に通電して燃料噴射弁1を開弁させる。
【0013】
ヨーク10は中空の貫通孔を有し、一端開口側に形成された大径部35と、大径部35より小径に形成された中径部36と、中径部36より小径に形成され他端開口側に形成された小径部37から構成されている。小径部37は、弁部材収容部16の外周に嵌合されている。中径部36の内周には電磁コイル9が収装されている。大径部35の内周には連結コア38が配置されている。
連結コア38は磁性金属材料等により略C字状に形成されている。ヨーク10は、小径部37および連結コア38を介して大径部35において磁性筒体2と接続しており、すなわち電磁コイル9の両端部で磁性筒体2と磁気的に接続されていることとなる。ヨーク10の他端側先端には、燃料噴射弁1をエンジンの吸気ポートと接続するためのOリング40を保持し、かつ磁性筒体先端を保護するためのプロテクタ52が取り付けられている。
【0014】
コネクタピン34を介して電磁コイル9に給電されると磁界が発生し、この磁界の磁力によって、弁体4および弁軸5をコイルばね29の付勢力に抗して開弁させる。
燃料噴射弁1の図1に示すように、磁性筒体2の大径部11の一端部を除いた部分、小径部12の電磁コイル9設置位置まで、電磁コイル9とヨーク10の中径部36との間、連結コア38の外周と大径部35との間、大径部35の外周、中径部36の外周、およびコネクタピン34の外周は樹脂カバー53により被服されている。コネクタピン34の先端部分は樹脂カバー53が開口して形成されており、コントロールユニットのコネクタが差し込まれるようになっている。
磁性筒体2の一端部外周にはOリング39が、ヨーク10の小径部37の外周にはOリング40が設けられている。
【0015】
[スワール室の構成]
図2は燃料噴射弁1のスワール室41付近の拡大断面図である。図3は弁座部材7をA矢視した平面図である。
弁座部材7の他端側にはスワール室41と中央室42が形成されている。中央室42は弁座部材7の軸の同芯上に円形凹状に形成されている。開弁時には燃料が中央室42に導かれることとなる。
【0016】
スワール室41は、連通路45とスワール付与室46とから構成されている。連通路45は中央室42から放射状に延びて形成されている。放射状に延びた連通路45の先にはスワール付与室46が形成されている。スワール付与室46は、図3で示す平面図上で側壁がインボリュート曲線状に形成されている。連通路45からスワール付与室46に燃料が供給されると、燃料はスワール付与室46内を図3で見ると矢印の通り反時計回りに旋回する。
連通路45は、燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、径方向内側の第2側面45bとが対向して設けられている。図3に示すように、第1側面45aと第2側面45bとの間を通るとともに、中央室42の径方向に延びる線を直線Lとする。第1側面45aは、この力線Lと略平行に形成され、スワール付与室46の側面の接線上で接続されている。
【0017】
直線Lと第1側面45aとの距離(第1流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてa1,a2,a3、直線Lと第2側面45bとの距離(第2流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてb1,b2,b3とする。第1流路幅a1,a2,a3は、第2流路幅b1,b2,b3よりも短くなるように形成されている。すなわち、第1流路幅a1,a2,a3と第2流路幅b1,b2,b3との関係を連通路45にわたって第1流路幅<第2流路幅、詳しくはa1<b3となるように設定されている。また第2側面45bは、中央室42からスワール付与室46に近づくにつれて直線Lとの距離が短くなるように形成されている。すなわち、連通路45は、中央室42からスワール付与室46に指向するにつれて、その連通路45の幅が漸減するように形成されている。
【0018】
[ノズルプレートの構成]
図4はノズルプレート8を軸方向から見た平面図である。図4ではスワール室41と中央室42の位置を点線で示している。ノズルプレート8には、軸方向に貫通する燃料噴射孔44が形成されている。
【0019】
[作用]
次に実施例1の燃料噴射弁1の作用について説明する。
(燃料の微粒化)
開弁すると弁体4と弁座6との間から燃料が中央室42に供給される。中央室42に供給された燃料は、連通路45を通りスワール付与室46に流れ込む。スワール付与室46に流れ込んだ燃料は、スワール付与室46内を旋回して旋回エネルギーを持ったまま燃料噴射孔44に供給されて噴射される。旋回エネルギーを持つ燃料は、燃料噴射孔44の壁部分に沿うように旋回しながら噴射される。そのため、燃料噴射孔44から噴射された燃料は、燃料噴射孔44の接線方向Pに飛散する(図4)。燃料噴射孔44から噴射された直後の燃料噴霧は、燃料噴射孔44開口部のエッジ部分によって薄い液膜状態で円錐状に広がる。その後、液膜状態の燃料が分離して微粒化した液滴となる。
これにより燃料の気化を促進することができ、特に低温始動時の窒素酸化物等の発生を低減することができる。
【0020】
(スワール付与の効率化)
まず、連通路45を直線Lが中心を通るように形成した場合のスワール室41内の燃料の流速について説明する。図5は、連通路45を直線Lが中心を通るように形成したときの連通路45内の燃料の流れを示す図である。図6は、連通路45と中央室42の接続部分の燃料の流れを示す図である。図7は、図5のB-B線上の燃料の流速を示す図である。なお図6は説明の簡単のため、第1側面45aと第2側面45bはそれぞれ直線Lに対して略平行となるように記載している。
図5に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。図6に示すように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。連通路45を直線Lが中心を通るように形成した場合は、燃料が第1側面45aに向かう角度α1と、第2側面45bに向かう角度α2とはほぼ同じであるため、第1側面45a側の流速と第2側面45b側の流速はほぼ同様に低下する。
【0021】
よって図7に示すように、連通路45の中央付近の流速が速く、第1側面45a、第2側面45b側の流速が遅くなる。特にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速が遅いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができず、燃料の粗大化するおそれがあった。
【0022】
そこで実施例1の燃料噴射弁1では、第1側面45aと直線Lとの距離(第1流路幅a1,a2,a3)が、第2側面45bと直線Lとの距離(第2流路幅b1,b2,b3)より短くなるように連通路45を形成した(図3参照)。すなわち、第1流路幅と第2流路幅との距離の関係を連通路45にわたって第1流路幅<第2流路幅、詳しくはa1<b3となるように設定されている。
図8は、連通路45を第1側面45aと直線Lとの距離が、第2側面45bと直線Lとの距離より短くなるように形成したときの連通路45内の燃料の流れを示す図である。図9は、連通路45と中央室42の接続部分の燃料の流れを示す図である。図10は、図8のC-C線上の燃料の流速を示す図である。なお図9は説明の簡単のため、第1側面45aと第2側面45bはそれぞれ直線Lに対して略平行となるように記載している。
図8に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。図9に示すように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。連通路45を第1側面45aと直線Lとの距離が、第2側面45bと直線Lとの距離より短くなるように形成した場合は、燃料が第1側面45aに向かう角度α3は、第2側面45bに向かう角度α4に対して小さいため、第1側面45a側の流速の低下は第2側面45b側の流速の低下よりも小さく、すなわち第1側面45a側の流速は第2側面45b側の流速よりも速くなる。
また直線L方向に進入してくる燃料は、第1側面45aや第2側面45bと衝突しないため、直線L付近の燃料の流速は最も大きい。直線Lが第1側面45a側にあるため、第1側面45a側の流速を速くすることができる。
【0023】
よって図10に示すように、第2側面45b側の流速に比べて第1側面45a側の流速は速くなる。これにより、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
また実施例1の燃料噴射弁1では、連通路45を第2側面45bと直線Lとの距離が、スワール付与室46に近づくほど短くなるように形成した。これにより、第2側面45b方向に進む燃料は第2側面45bに対する角度が大きくなるため、第2側面45b方向に進む燃料の流速の低下は、第1側面45a方向に進む燃料の流速の低下よりも大きくなる。そのため、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速くなるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
また実施例1の燃料噴射弁1では、第1側面45aを直線Lと略平行に形成した。これにより、第1側面45a方向に進む燃料は第1側面45aに対する角度が小さくなるため、第1側面45a方向に進む燃料の流速の低下は、第2側面45b方向に進む燃料の流速の低下よりも小さくなる。そのため、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速くなるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0024】
[効果]
実施例1の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(1)摺動可能に設けられた弁体4と、閉弁時に弁体4が座る弁座6が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材7と、弁座部材7の開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室42と、中央室42よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室46と、スワール付与室46の底部に円筒状に形成され外部に貫通する燃料噴射孔44と、スワール付与室46の接線方向に向かってスワール付与室46と接続するとともに、スワール付与室46と弁座部材7の開口部とを連通する連通路45と、を備えた燃料噴射弁において、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離が、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向内側の第2側面45bと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離より短くなるように連通路45を形成した。
よって、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速を速くすることができるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0025】
(2)第2側面45bと中央室42の径方向に延びる線との距離が、スワール付与室46に近づくほど短くなるように連通路45を形成した。
よって、第2側面45b側の燃料の流速を第1側面45a側の燃料の流速に比べて大きく低下させることができる。そのため、相対的にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速を速くすることができ、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することで燃料の微細化を促進することができる。
(3)第1側面45aが中央室42の径方向に延びるように連通路45を形成した。
よって、第1側面45a側の燃料の流速を第2側面45b側の燃料の流速に比べて低下を抑制することができる。そのため、相対的にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速を速くすることができ、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することで燃料の微細化を促進することができる。
【0026】
〔実施例2〕
実施例2の燃料噴射弁1について説明する。実施例1の燃料噴射弁1と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。実施例2の燃料噴射弁1は、連通路45の形状が実施例1の燃料噴射弁1と異なる。
【0027】
[スワール室の構成]
図11は弁座部材7を他端側から見た平面図である。スワール室41は、連通路45とスワール付与室46とから構成されている。連通路45は中央室42から放射状に延びて形成されている。放射状に延びた連通路45の先にはスワール付与室46が形成されている。スワール付与室46は、図11で示す平面図上で側壁がインボリュート曲線状に形成されている。連通路45からスワール付与室46に燃料が供給されると、燃料はスワール付与室46内を図11で見ると矢印のように反時計回りに旋回する。
連通路45は、燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、径方向内側の第2側面45bとが対向して設けられている。図11に示すように、第1側面45aと第2側面45bとの間を通るとともに、中央室42の径方向に延びる線を直線Lとする。第1側面45aは、直線Lと略平行に形成され、スワール付与室46の側面の接線上で接続されている。第2側面45bは、中央室42からスワール付与室46に向かうにつれて直線L側に近づくように形成されている。直線Lは第1側面45aと第2側面45bの中央室42側端部間の中央を通る。
すなわち、中央室42の中心と第1側面45aの中央室42側端部とを結ぶ直線を第1直線M1、中央室42の中心と第2側面45bの中央室42側端部とを結ぶ直線を第2直線M2とすると、第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cは、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成されている。
【0028】
[ノズルプレートの構成]
図12はノズルプレート8を軸方向から見た平面図である。図12ではスワール室41と中央室42の位置を点線で示している。ノズルプレート8には、軸方向に貫通する燃料噴射孔44が形成されている。
【0029】
[作用]
(スワール付与の効率化)
実施例1でも述べたように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。燃料が第1側面45aに向かう角度と、第2側面45bに向かう角度とがほぼ同じであるとき、第1側面45a側の流速と第2側面45b側の流速はほぼ同様に低下する。
よって、連通路45の中央付近の流速が速く、第1側面45a、第2側面45b側の流速が遅くなる。特にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速が遅いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができず、燃料の粗大化するおそれがあった。
【0030】
そこで実施例2の燃料噴射弁2では、連通路45を第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cと、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成した。
図13は、連通路45を第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cと、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成したときの連通路45内の燃料の流れを示す図である。図14は、連通路45と中央室42の接続部分の燃料の流れを示す図である。図15は、図13のD-D線上の燃料の流速を示す図である。
図13に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。図14に示すように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。連通路45を第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cと、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成した場合、燃料が第1側面45aに向かう角度α5は、第2側面45bに向かう角度α6に対しては小さいため、第1側面45a側の流速の低下は第2側面45b側の流速の低下よりも小さく、すなわち第1側面45a側の流速は第2側面45b側の流速よりも速くなる。また直線L方向に進入してくる燃料は、第1側面45aや第2側面45bと衝突しないため、直線L付近の燃料の流速は最も大きい。
【0031】
よって図15に示すように、第2側面45b側の流速に比べて第1側面45a側の流速は速くなる。これにより、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0032】
[効果]
実施例2の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(4)摺動可能に設けられた弁体4と、閉弁時に弁体4が座る弁座6が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材7と、弁座部材7の開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室42と、中央室42よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室46と、スワール付与室46の底部に円筒状に形成され外部に貫通する燃料噴射孔44と、スワール付与室46の接線方向に向かってスワール付与室46と接続するとともに、スワール付与室46と弁座部材7の開口部とを連通する連通路45と、を備えた燃料噴射弁において、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aの中央室42側端部と中央室42の中心とを結ぶ直線を第1直線M1とし、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向内側の第2側面M2の中央室42側端部と中央室42の中心とを結ぶ直線を第2直線M2としたときに、連通路45を、第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度が、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度よりも小さくなるように形成した。
よって、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速を速くすることができるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0033】
〔実施例3〕
実施例3の燃料噴射弁1について説明する。実施例1の燃料噴射弁1と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。実施例3の燃料噴射弁1は、連通路45の形状が実施例1の燃料噴射弁1と異なる。
【0034】
[スワール室の構成]
図16は弁座部材7を他端側から見た平面図である。スワール室41は、連通路45とスワール付与室46とから構成されている。連通路45は中央室42の接線方向に延びて形成されている。連通路45の先にはスワール付与室46が形成されている。スワール付与室46は、図16で示す平面図上で側壁がインボリュート曲線状に形成されている。連通路45からスワール付与室46に燃料が供給されると、燃料はスワール付与室46内を図16で見ると矢印のように時計回りに旋回する。
連通路45は、燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、径方向内側の第2側面45bとが対向して設けられている。第1側面45aは、スワール付与室46の側面の接線上で接続されている。図16に示すように、第1側面45aに略平行であって、中央室42の径方向に延びる線を直線Nとする。直線Nは第2側面45bに対して第1側面45aの反対側を通る。すなわち中央室42の中心は、第2側面45b側に配置されている。また、スワール室46の中心も、第2側面45b側に配置されている。
【0035】
直線Nと第1側面45aとの距離(第1流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてa4,a5,a6、直線Nと第2側面45bとの距離(第2流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてb4,b5,b6とする。第1流路幅a4,a5,a6は、第2流路幅b4,b5,b6よりも長くなるように形成されている。また第2側面45bは、第1側面45aと略平行に形成されており、すなわち、連通路45は、中央室42からスワール付与室46に指向するにつれて、その連通路45の幅は一定となるように形成されている。
【0036】
[ノズルプレートの構成]
図17はノズルプレート8を軸方向から見た平面図である。図17ではスワール室41と中央室42の位置を点線で示している。ノズルプレート8には、軸方向に貫通する燃料噴射孔44が形成されている。
【0037】
[作用]
(スワール付与の効率化)
図18は、実施例3の連通路45内の燃料の流れを示す図である。図19は、図18のE-E線上の燃料の流速を示す図である。
図18に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。連通路45の第2側壁45b側には流れのよどみが発生する。
【0038】
よって図19に示すように、第2側面45b側の流速に比べて第1側面45a側の流速は速くなる。これにより、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0039】
[効果]
実施例3の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(5)摺動可能に設けられた弁体4と、閉弁時に弁体4が座る弁座6が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材7と、弁座部材7の開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室42と、中央室42よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室46と、スワール付与室46の底部に円筒状に形成され外部に貫通する燃料噴射孔44と、スワール付与室46の接線方向に向かってスワール付与室46と接続するとともに、スワール付与室46と弁座部材7の開口部とを連通する連通路45と、を備えた燃料噴射弁において、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離が、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向内側の第2側面45bと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離より長くなるように連通路45を形成し、かつ中央室42の中心とスワール付与室46の中心を第2側面46aに配置した。
よって、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速を速くすることができるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0040】
〔他の実施例〕
以上、本願発明を実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
実施例2の燃料噴射弁1では、連通路45を直線Lが第1側面45aと第2側面45bの中央室42側端部間の中央を通るように形成しているが、直線Lが第1側面45aと第2側面45bの中央室42側端部間の中央寄りも第1側面側を通るように形成しても良い。すなわち、第1側面45aと直線Lとの距離が、第2側面45bと直線Lとの距離より短くなるように連通路を形成するようにしても良い。
直線L方向に進入してくる燃料は、第1側面45aや第2側面45bと衝突しないため、直線L付近の燃料の流速は最も大きい。直線Lが第1側面45a側にあるため、第1側面45a側の流速を速くすることができる。これにより、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0041】
また実施例1,2の燃料噴射弁1では弁座部材7にスワール室41を形成するようにしていたが、中間プレート50を設けてこの中間プレート50にスワール室41を形成するようにしても良い。
図16は燃料噴射弁1のスワール室41付近の拡大断面図である。図7に示すように、中間プレート50にスワール室41を形成し、ノズルプレート8とともに中間プレート50を弁座部材7に溶接する。
【符号の説明】
【0042】
1 燃料噴射弁
4 弁体
6 弁座
7 弁座部材
8 ノズルプレート
41 スワール室
42 中央室
44 燃料噴射孔
45 連通路
46 スワール付与室
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射弁として用いられる燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、開弁時に側孔から横方向通路を経由してスワール室に燃料が供給され、スワール室でスワールを付与された燃料が燃料噴孔から外部に噴射されるものが開示されている。この横方向通路は、側孔からスワール室に向かって断面積が小さくなるように形成され、燃料の流速が増加するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−336562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、横方向通路の中心軸上に側孔の中心が位置しているため、スワール室に燃料が流入したときに燃料が横方向通の側面に衝突し、横方向通路中央付近の流速に対して側面付近の流速が遅くなる。特に、スワール室内の燃料の旋回方向外側の流速が遅いため、スワール室において効率良く燃料にスワールを付与することができないおそれがあった。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、スワール室において効率良く燃料にスワールを付与することができる燃料噴射弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本願発明では、連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側と反対側の側面である第1側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、連通路の側面であってスワール付与室を軸方向から見たときにスワール付与室が膨出する側の側面である第2側面の中央室側端部と中央室の中心とを結ぶ直線を第2直線としたときに、連通路を、第1側面に対して第1直線が成す角度が、第2側面に対して第2直線が成す角度よりも小さくなるように形成し、第2側面を、スワール付与室を軸方向から見たときに直線状に形成した
【発明の効果】
【0006】
本発明により、スワール付与室内で燃料が旋回する径方向外側の流速を速くすることができるため、スワール付与室内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の燃料噴射弁の軸方向断面図である。
【図2】実施例1の燃料噴射弁のスワール室付近の拡大断面図である。
【図3】実施例1の弁座部材を軸方向他端側から見た平面図である。
【図4】実施例1のノズルプレートを軸方向から見た平面図である。
【図5】比較例の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図6】比較例の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図7】比較例の連通路内の燃料の流速を示した図である。
【図8】実施例1の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図9】実施例1の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図10】実施例1の連通路内の燃料の流速を示した図である。
【図11】実施例1の弁座部材を軸方向他端側から見た平面図である。
【図12】実施例1のノズルプレートを軸方向から見た平面図である。
【図13】実施例2の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図14】実施例2の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図15】実施例2の連通路内の燃料の流速を示した図である。
【図16】実施例3の弁座部材を軸方向他端側から見た平面図である。
【図17】実施例3のノズルプレートを軸方向から見た平面図である。
【図18】実施例3の連通路内の燃料の流れを示した図である。
【図19】実施例3の連通路と中央室の接続部分の燃料の流れを示す図である。
【図20】他の実施例の燃料噴射弁のスワール室付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
実施例1の燃料噴射弁1について説明する。
[燃料噴射弁の構成]
図1は燃料噴射弁1の軸方向断面図である。この燃料噴射弁1は、自動車用エンジン等に用いられるものである。
燃料噴射弁1は、磁性筒体2と、磁性筒体2内に収容されるコア筒体3と、軸方向に摺動可能な弁体4と、弁体4と一体に形成された弁軸5と、閉弁時に弁体4により閉鎖される弁座6を有する弁座部材7と、開弁時に燃料が噴射される噴射孔を有するノズルプレート8と、通電時に弁体4を開弁方向に摺動させる電磁コイル9と、磁束線を誘導するヨーク10とを有している。
【0009】
磁性筒体2は、例えば電磁ステンレス鋼等の磁性金属材料により形成された金属パイプ等からなり、深絞り等のプレス加工、研削加工等の手段を用いることにより、図1に示すように段付き筒状をなして一体に形成されている。磁性筒体2は、一端側に形成された大径部11と、大径部11よりも小径であって他端側に形成された小径部12とを有している。
小径部12には、一部を薄肉化した薄肉部13が形成されている。小径部12は、薄肉部13より一端側にコア筒体3を収容するコア筒体収容部14と、薄肉部13より他端側に弁部材15(弁体4、弁軸5、弁座部材7)を収容する弁部材収容部16とに分けられている。薄肉部13は、後述するコア筒体3と弁軸5が磁性筒体2に収容された状態で、コア筒体3と弁軸5との間の隙間部分を取り囲むように形成されている。薄肉部13は、コア筒体収容部14と弁部材収容部16との間の磁気抵抗を増大させ、コア筒体収容部14と弁部材収容部16間を磁気的に遮断している。
【0010】
大径部11は弁部材15に燃料を送る燃料通路17を構成しており、大径部11の一端部には燃料を濾過する燃料フィルタ18が設けられている。燃料通路17にはポンプ47が接続されている。このポンプ47は、ポンプ制御装置54により制御されている。
コア筒体3は、中空部19を有する円筒形に形成されており、磁性筒体2のコア筒体収容部14に圧入されている。中空部19には、圧入等の手段により固定されたばね受20が収容されている。このばね受20の中心には軸方向に貫通した燃料通路43が形成されている。
弁体4の外形は略球体状に形成されており、周上に燃料噴射弁1の軸方向に対して並行に削られた燃料通路面21を有している。弁軸5は大径部22と、外形が大径部22より小径に形成された小径部23とを有している。
【0011】
小径部23の先端には弁体4が溶接により一体に固定されている。なお図中の黒半円や黒三角は溶接箇所を示している。大径部22の端部にはばね挿入孔24が穿設されている。このばね挿入孔24の底部は、ばね挿入孔24よりも小径に形成されたばね座り部25が形成されるとともに、段部のばね受部26が形成されている。小径部23の端部には燃料通路孔27が形成されている。この燃料通路孔27はばね挿入孔24と連通している。小径部23の外周と燃料通路孔27とは貫通した燃料流出孔28が形成されている。
弁座部材7は、略円錐状の弁座6と、弁座6より一端側に弁体4の径とほぼ同型に形成された弁体保持孔30と、一端開口側に向かうにつれて大径に形成された開口部31とが設けられている。
また弁座部材7の他端側には、燃料にスワール(旋回流)を与える複数のスワール室41と、各スワール室41に燃料を分配する中央室42が形成されている。
弁軸5および弁体4は、磁性筒体2に軸方向摺動可能に収装されている。弁軸5のばね受部26とばね受20との間にコイルバネ29が設けられ、弁軸5および弁体4を他端側に付勢している。弁座部材7は、弁座6に弁体4が座るように磁性筒体2に挿入され、磁性筒体2に溶接により固定されている。
【0012】
弁座部材7の他端側にはノズルプレート8が設けられ、このノズルプレート8は弁座部材7と溶接により固定されている。ノズルプレート8には、スワール室41においてスワールが与えられた燃料が噴射される燃料噴射孔44が形成されている。
磁性筒体2のコア筒体3の外周には電磁コイル9が挿嵌されている。すなわち、電磁コイル9はコア筒体3の外周に配置されることとなる。電磁コイル9は、樹脂材料により形成されたボビン32と、このボビン32に巻回されたコイル33とから構成されている。コイル33は、コネクタピン34を介して電磁コイル制御装置55に接続されている。電磁コイル制御装置55は、クランク角を検出するクランク角センサからの情報に基づいて計算した燃焼室側に燃料を噴射するタイミングに応じて、電磁コイル9のコイル33に通電して燃料噴射弁1を開弁させる。
【0013】
ヨーク10は中空の貫通孔を有し、一端開口側に形成された大径部35と、大径部35より小径に形成された中径部36と、中径部36より小径に形成され他端開口側に形成された小径部37から構成されている。小径部37は、弁部材収容部16の外周に嵌合されている。中径部36の内周には電磁コイル9が収装されている。大径部35の内周には連結コア38が配置されている。
連結コア38は磁性金属材料等により略C字状に形成されている。ヨーク10は、小径部37および連結コア38を介して大径部35において磁性筒体2と接続しており、すなわち電磁コイル9の両端部で磁性筒体2と磁気的に接続されていることとなる。ヨーク10の他端側先端には、燃料噴射弁1をエンジンの吸気ポートと接続するためのOリング40を保持し、かつ磁性筒体先端を保護するためのプロテクタ52が取り付けられている。
【0014】
コネクタピン34を介して電磁コイル9に給電されると磁界が発生し、この磁界の磁力によって、弁体4および弁軸5をコイルばね29の付勢力に抗して開弁させる。
燃料噴射弁1の図1に示すように、磁性筒体2の大径部11の一端部を除いた部分、小径部12の電磁コイル9設置位置まで、電磁コイル9とヨーク10の中径部36との間、連結コア38の外周と大径部35との間、大径部35の外周、中径部36の外周、およびコネクタピン34の外周は樹脂カバー53により被服されている。コネクタピン34の先端部分は樹脂カバー53が開口して形成されており、コントロールユニットのコネクタが差し込まれるようになっている。
磁性筒体2の一端部外周にはOリング39が、ヨーク10の小径部37の外周にはOリング40が設けられている。
【0015】
[スワール室の構成]
図2は燃料噴射弁1のスワール室41付近の拡大断面図である。図3は弁座部材7をA矢視した平面図である。
弁座部材7の他端側にはスワール室41と中央室42が形成されている。中央室42は弁座部材7の軸の同芯上に円形凹状に形成されている。開弁時には燃料が中央室42に導かれることとなる。
【0016】
スワール室41は、連通路45とスワール付与室46とから構成されている。連通路45は中央室42から放射状に延びて形成されている。放射状に延びた連通路45の先にはスワール付与室46が形成されている。スワール付与室46は、図3で示す平面図上で側壁がインボリュート曲線状に形成されている。連通路45からスワール付与室46に燃料が供給されると、燃料はスワール付与室46内を図3で見ると矢印の通り反時計回りに旋回する。
連通路45は、燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、径方向内側の第2側面45bとが対向して設けられている。図3に示すように、第1側面45aと第2側面45bとの間を通るとともに、中央室42の径方向に延びる線を直線Lとする。第1側面45aは、この力線Lと略平行に形成され、スワール付与室46の側面の接線上で接続されている。
【0017】
直線Lと第1側面45aとの距離(第1流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてa1,a2,a3、直線Lと第2側面45bとの距離(第2流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてb1,b2,b3とする。第1流路幅a1,a2,a3は、第2流路幅b1,b2,b3よりも短くなるように形成されている。すなわち、第1流路幅a1,a2,a3と第2流路幅b1,b2,b3との関係を連通路45にわたって第1流路幅<第2流路幅、詳しくはa1<b3となるように設定されている。また第2側面45bは、中央室42からスワール付与室46に近づくにつれて直線Lとの距離が短くなるように形成されている。すなわち、連通路45は、中央室42からスワール付与室46に指向するにつれて、その連通路45の幅が漸減するように形成されている。
【0018】
[ノズルプレートの構成]
図4はノズルプレート8を軸方向から見た平面図である。図4ではスワール室41と中央室42の位置を点線で示している。ノズルプレート8には、軸方向に貫通する燃料噴射孔44が形成されている。
【0019】
[作用]
次に実施例1の燃料噴射弁1の作用について説明する。
(燃料の微粒化)
開弁すると弁体4と弁座6との間から燃料が中央室42に供給される。中央室42に供給された燃料は、連通路45を通りスワール付与室46に流れ込む。スワール付与室46に流れ込んだ燃料は、スワール付与室46内を旋回して旋回エネルギーを持ったまま燃料噴射孔44に供給されて噴射される。旋回エネルギーを持つ燃料は、燃料噴射孔44の壁部分に沿うように旋回しながら噴射される。そのため、燃料噴射孔44から噴射された燃料は、燃料噴射孔44の接線方向Pに飛散する(図4)。燃料噴射孔44から噴射された直後の燃料噴霧は、燃料噴射孔44開口部のエッジ部分によって薄い液膜状態で円錐状に広がる。その後、液膜状態の燃料が分離して微粒化した液滴となる。
これにより燃料の気化を促進することができ、特に低温始動時の窒素酸化物等の発生を低減することができる。
【0020】
(スワール付与の効率化)
まず、連通路45を直線Lが中心を通るように形成した場合のスワール室41内の燃料の流速について説明する。図5は、連通路45を直線Lが中心を通るように形成したときの連通路45内の燃料の流れを示す図である。図6は、連通路45と中央室42の接続部分の燃料の流れを示す図である。図7は、図5のB-B線上の燃料の流速を示す図である。なお図6は説明の簡単のため、第1側面45aと第2側面45bはそれぞれ直線Lに対して略平行となるように記載している。
図5に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。図6に示すように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。連通路45を直線Lが中心を通るように形成した場合は、燃料が第1側面45aに向かう角度α1と、第2側面45bに向かう角度α2とはほぼ同じであるため、第1側面45a側の流速と第2側面45b側の流速はほぼ同様に低下する。
【0021】
よって図7に示すように、連通路45の中央付近の流速が速く、第1側面45a、第2側面45b側の流速が遅くなる。特にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速が遅いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができず、燃料の粗大化するおそれがあった。
【0022】
そこで実施例1の燃料噴射弁1では、第1側面45aと直線Lとの距離(第1流路幅a1,a2,a3)が、第2側面45bと直線Lとの距離(第2流路幅b1,b2,b3)より短くなるように連通路45を形成した(図3参照)。すなわち、第1流路幅と第2流路幅との距離の関係を連通路45にわたって第1流路幅<第2流路幅、詳しくはa1<b3となるように設定されている。
図8は、連通路45を第1側面45aと直線Lとの距離が、第2側面45bと直線Lとの距離より短くなるように形成したときの連通路45内の燃料の流れを示す図である。図9は、連通路45と中央室42の接続部分の燃料の流れを示す図である。図10は、図8のC-C線上の燃料の流速を示す図である。なお図9は説明の簡単のため、第1側面45aと第2側面45bはそれぞれ直線Lに対して略平行となるように記載している。
図8に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。図9に示すように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。連通路45を第1側面45aと直線Lとの距離が、第2側面45bと直線Lとの距離より短くなるように形成した場合は、燃料が第1側面45aに向かう角度α3は、第2側面45bに向かう角度α4に対して小さいため、第1側面45a側の流速の低下は第2側面45b側の流速の低下よりも小さく、すなわち第1側面45a側の流速は第2側面45b側の流速よりも速くなる。
また直線L方向に進入してくる燃料は、第1側面45aや第2側面45bと衝突しないため、直線L付近の燃料の流速は最も大きい。直線Lが第1側面45a側にあるため、第1側面45a側の流速を速くすることができる。
【0023】
よって図10に示すように、第2側面45b側の流速に比べて第1側面45a側の流速は速くなる。これにより、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
また実施例1の燃料噴射弁1では、連通路45を第2側面45bと直線Lとの距離が、スワール付与室46に近づくほど短くなるように形成した。これにより、第2側面45b方向に進む燃料は第2側面45bに対する角度が大きくなるため、第2側面45b方向に進む燃料の流速の低下は、第1側面45a方向に進む燃料の流速の低下よりも大きくなる。そのため、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速くなるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
また実施例1の燃料噴射弁1では、第1側面45aを直線Lと略平行に形成した。これにより、第1側面45a方向に進む燃料は第1側面45aに対する角度が小さくなるため、第1側面45a方向に進む燃料の流速の低下は、第2側面45b方向に進む燃料の流速の低下よりも小さくなる。そのため、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速くなるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0024】
[効果]
実施例1の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(1)摺動可能に設けられた弁体4と、閉弁時に弁体4が座る弁座6が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材7と、弁座部材7の開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室42と、中央室42よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室46と、スワール付与室46の底部に円筒状に形成され外部に貫通する燃料噴射孔44と、スワール付与室46の接線方向に向かってスワール付与室46と接続するとともに、スワール付与室46と弁座部材7の開口部とを連通する連通路45と、を備えた燃料噴射弁において、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離が、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向内側の第2側面45bと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離より短くなるように連通路45を形成した。
よって、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速を速くすることができるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0025】
(2)第2側面45bと中央室42の径方向に延びる線との距離が、スワール付与室46に近づくほど短くなるように連通路45を形成した。
よって、第2側面45b側の燃料の流速を第1側面45a側の燃料の流速に比べて大きく低下させることができる。そのため、相対的にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速を速くすることができ、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することで燃料の微細化を促進することができる。
(3)第1側面45aが中央室42の径方向に延びるように連通路45を形成した。
よって、第1側面45a側の燃料の流速を第2側面45b側の燃料の流速に比べて低下を抑制することができる。そのため、相対的にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速を速くすることができ、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することで燃料の微細化を促進することができる。
【0026】
〔実施例2〕
実施例2の燃料噴射弁1について説明する。実施例1の燃料噴射弁1と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。実施例2の燃料噴射弁1は、連通路45の形状が実施例1の燃料噴射弁1と異なる。
【0027】
[スワール室の構成]
図11は弁座部材7を他端側から見た平面図である。スワール室41は、連通路45とスワール付与室46とから構成されている。連通路45は中央室42から放射状に延びて形成されている。放射状に延びた連通路45の先にはスワール付与室46が形成されている。スワール付与室46は、図11で示す平面図上で側壁がインボリュート曲線状に形成されている。連通路45からスワール付与室46に燃料が供給されると、燃料はスワール付与室46内を図11で見ると矢印のように反時計回りに旋回する。
連通路45は、燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、径方向内側の第2側面45bとが対向して設けられている。図11に示すように、第1側面45aと第2側面45bとの間を通るとともに、中央室42の径方向に延びる線を直線Lとする。第1側面45aは、直線Lと略平行に形成され、スワール付与室46の側面の接線上で接続されている。第2側面45bは、中央室42からスワール付与室46に向かうにつれて直線L側に近づくように形成されている。直線Lは第1側面45aと第2側面45bの中央室42側端部間の中央を通る。
すなわち、中央室42の中心と第1側面45aの中央室42側端部とを結ぶ直線を第1直線M1、中央室42の中心と第2側面45bの中央室42側端部とを結ぶ直線を第2直線M2とすると、第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cは、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成されている。
【0028】
[ノズルプレートの構成]
図12はノズルプレート8を軸方向から見た平面図である。図12ではスワール室41と中央室42の位置を点線で示している。ノズルプレート8には、軸方向に貫通する燃料噴射孔44が形成されている。
【0029】
[作用]
(スワール付与の効率化)
実施例1でも述べたように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。燃料が第1側面45aに向かう角度と、第2側面45bに向かう角度とがほぼ同じであるとき、第1側面45a側の流速と第2側面45b側の流速はほぼ同様に低下する。
よって、連通路45の中央付近の流速が速く、第1側面45a、第2側面45b側の流速が遅くなる。特にスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速が遅いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができず、燃料の粗大化するおそれがあった。
【0030】
そこで実施例2の燃料噴射弁2では、連通路45を第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cと、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成した。
図13は、連通路45を第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cと、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成したときの連通路45内の燃料の流れを示す図である。図14は、連通路45と中央室42の接続部分の燃料の流れを示す図である。図15は、図13のD-D線上の燃料の流速を示す図である。
図13に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。図14に示すように、第1側面45a、第2側面45b方向に進む燃料は、第1側面45a、第2側面45bに対して角度を有しているため、燃料が連通路45に進入するときに第1側面45a、第2側面45bに衝突したときに進行方向が曲げられ、燃料の流速が低下させられる。連通路45を第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度cと、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度dよりも小さくなるように形成した場合、燃料が第1側面45aに向かう角度α5は、第2側面45bに向かう角度α6に対しては小さいため、第1側面45a側の流速の低下は第2側面45b側の流速の低下よりも小さく、すなわち第1側面45a側の流速は第2側面45b側の流速よりも速くなる。また直線L方向に進入してくる燃料は、第1側面45aや第2側面45bと衝突しないため、直線L付近の燃料の流速は最も大きい。
【0031】
よって図15に示すように、第2側面45b側の流速に比べて第1側面45a側の流速は速くなる。これにより、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0032】
[効果]
実施例2の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(4)摺動可能に設けられた弁体4と、閉弁時に弁体4が座る弁座6が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材7と、弁座部材7の開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室42と、中央室42よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室46と、スワール付与室46の底部に円筒状に形成され外部に貫通する燃料噴射孔44と、スワール付与室46の接線方向に向かってスワール付与室46と接続するとともに、スワール付与室46と弁座部材7の開口部とを連通する連通路45と、を備えた燃料噴射弁において、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aの中央室42側端部と中央室42の中心とを結ぶ直線を第1直線M1とし、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向内側の第2側面M2の中央室42側端部と中央室42の中心とを結ぶ直線を第2直線M2としたときに、連通路45を、第1側面45aに対して第1直線M1が成す角度が、第2側面45bに対して第2直線M2が成す角度よりも小さくなるように形成した。
よって、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速を速くすることができるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0033】
〔実施例3〕
実施例3の燃料噴射弁1について説明する。実施例1の燃料噴射弁1と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。実施例3の燃料噴射弁1は、連通路45の形状が実施例1の燃料噴射弁1と異なる。
【0034】
[スワール室の構成]
図16は弁座部材7を他端側から見た平面図である。スワール室41は、連通路45とスワール付与室46とから構成されている。連通路45は中央室42の接線方向に延びて形成されている。連通路45の先にはスワール付与室46が形成されている。スワール付与室46は、図16で示す平面図上で側壁がインボリュート曲線状に形成されている。連通路45からスワール付与室46に燃料が供給されると、燃料はスワール付与室46内を図16で見ると矢印のように時計回りに旋回する。
連通路45は、燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、径方向内側の第2側面45bとが対向して設けられている。第1側面45aは、スワール付与室46の側面の接線上で接続されている。図16に示すように、第1側面45aに略平行であって、中央室42の径方向に延びる線を直線Nとする。直線Nは第2側面45bに対して第1側面45aの反対側を通る。すなわち中央室42の中心は、第2側面45b側に配置されている。また、スワール室46の中心も、第2側面45b側に配置されている。
【0035】
直線Nと第1側面45aとの距離(第1流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてa4,a5,a6、直線Nと第2側面45bとの距離(第2流路幅)を中央室42からスワール付与室46に向けてb4,b5,b6とする。第1流路幅a4,a5,a6は、第2流路幅b4,b5,b6よりも長くなるように形成されている。また第2側面45bは、第1側面45aと略平行に形成されており、すなわち、連通路45は、中央室42からスワール付与室46に指向するにつれて、その連通路45の幅は一定となるように形成されている。
【0036】
[ノズルプレートの構成]
図17はノズルプレート8を軸方向から見た平面図である。図17ではスワール室41と中央室42の位置を点線で示している。ノズルプレート8には、軸方向に貫通する燃料噴射孔44が形成されている。
【0037】
[作用]
(スワール付与の効率化)
図18は、実施例3の連通路45内の燃料の流れを示す図である。図19は、図18のE-E線上の燃料の流速を示す図である。
図18に示すように、中央室42に供給された燃料は放射状に広がり連通路45に進入する。連通路45の第2側壁45b側には流れのよどみが発生する。
【0038】
よって図19に示すように、第2側面45b側の流速に比べて第1側面45a側の流速は速くなる。これにより、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面側)の流速が速いため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0039】
[効果]
実施例3の燃料噴射弁1の効果について以下に列記する。
(5)摺動可能に設けられた弁体4と、閉弁時に弁体4が座る弁座6が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材7と、弁座部材7の開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室42と、中央室42よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室46と、スワール付与室46の底部に円筒状に形成され外部に貫通する燃料噴射孔44と、スワール付与室46の接線方向に向かってスワール付与室46と接続するとともに、スワール付与室46と弁座部材7の開口部とを連通する連通路45と、を備えた燃料噴射弁において、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側の第1側面45aと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離が、連通路45の側面であるスワール付与室46内で燃料が旋回する径方向内側の第2側面45bと、中央室42の径方向に延びる線(直線L)との距離より長くなるように連通路45を形成し、かつ中央室42の中心とスワール付与室46の中心を第2側面46aに配置した。
よって、スワール付与室46内で燃料が旋回する径方向外側(第1側面45a側)の流速を速くすることができるため、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0040】
〔他の実施例〕
以上、本願発明を実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
実施例2の燃料噴射弁1では、連通路45を直線Lが第1側面45aと第2側面45bの中央室42側端部間の中央を通るように形成しているが、直線Lが第1側面45aと第2側面45bの中央室42側端部間の中央寄りも第1側面側を通るように形成しても良い。すなわち、第1側面45aと直線Lとの距離が、第2側面45bと直線Lとの距離より短くなるように連通路を形成するようにしても良い。
直線L方向に進入してくる燃料は、第1側面45aや第2側面45bと衝突しないため、直線L付近の燃料の流速は最も大きい。直線Lが第1側面45a側にあるため、第1側面45a側の流速を速くすることができる。これにより、スワール付与室46内で燃料に強い旋回力を付与することができ、燃料の微細化を促進することができる。
【0041】
また実施例1,2の燃料噴射弁1では弁座部材7にスワール室41を形成するようにしていたが、中間プレート50を設けてこの中間プレート50にスワール室41を形成するようにしても良い。
図16は燃料噴射弁1のスワール室41付近の拡大断面図である。図7に示すように、中間プレート50にスワール室41を形成し、ノズルプレート8とともに中間プレート50を弁座部材7に溶接する。
【符号の説明】
【0042】
1 燃料噴射弁
4 弁体
6 弁座
7 弁座部材
8 ノズルプレート
41 スワール室
42 中央室
44 燃料噴射孔
45 連通路
46 スワール付与室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動可能に設けられた弁体と、
閉弁時に前記弁体が座る弁座が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材と、
前記弁座部材の前記開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室と、
前記中央室よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室と、
前記スワール付与室の底部に円筒状に形成され外部に貫通する噴射孔と、
前記スワール付与室の接線方向に向かって前記スワール付与室と接続するとともに、前記スワール付与室と前記弁座部材の前記開口部とを連通する連通路と、
を備えた燃料噴射弁において、
前記連通路の側面であって前記スワール付与室を軸方向から見たときに前記スワール付与室が膨出する側と反対側の側面である第1側面の前記中央室側端部と前記中央室の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、前記連通路の側面であって前記スワール付与室を軸方向から見たときに前記スワール付与室が膨出する側の側面である第2側面の前記中央室側端部と前記中央室の中心とを結ぶ直線を第2直線としたときに、
前記連通路を、前記第1側面に対して前記第1直線が成す角度が、前記第2側面に対して前記第2直線が成す角度よりも小さくなるように形成し、
前記第2側面を、前記スワール付与室を軸方向から見たときに直線状に形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記第1側面と前記中央室の径方向に延びる線との距離が、前記第2側面と前記中央室の径方向に延びる線との距離より短くなるように前記連通路を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第2側面と前記中央室の径方向に延びる線との距離が、前記スワール付与室に近づくほど短くなるように前記連通路を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料噴射弁において、
前記第1側面が前記中央室の径方向に延びるように前記連通路を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項1】
摺動可能に設けられた弁体と、
閉弁時に前記弁体が座る弁座が形成されるとともに、下流側に開口部を有する弁座部材と、
前記弁座部材の前記開口部と連通し、円筒状の内側面を有する中央室と、
前記中央室よりも下流側に形成され、円筒状の内側面を有し、内部で燃料を旋回させて旋回力を付与するスワール付与室と、
前記スワール付与室の底部に円筒状に形成され外部に貫通する噴射孔と、
前記スワール付与室の接線方向に向かって前記スワール付与室と接続するとともに、前記スワール付与室と前記弁座部材の前記開口部とを連通する連通路と、
を備えた燃料噴射弁において、
前記連通路の側面であって前記スワール付与室を軸方向から見たときに前記スワール付与室が膨出する側と反対側の側面である第1側面の前記中央室側端部と前記中央室の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、前記連通路の側面であって前記スワール付与室を軸方向から見たときに前記スワール付与室が膨出する側の側面である第2側面の前記中央室側端部と前記中央室の中心とを結ぶ直線を第2直線としたときに、
前記連通路を、前記第1側面に対して前記第1直線が成す角度が、前記第2側面に対して前記第2直線が成す角度よりも小さくなるように形成し、
前記第2側面を、前記スワール付与室を軸方向から見たときに直線状に形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記第1側面と前記中央室の径方向に延びる線との距離が、前記第2側面と前記中央室の径方向に延びる線との距離より短くなるように前記連通路を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第2側面と前記中央室の径方向に延びる線との距離が、前記スワール付与室に近づくほど短くなるように前記連通路を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料噴射弁において、
前記第1側面が前記中央室の径方向に延びるように前記連通路を形成したことを特徴とする燃料噴射弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−92158(P2013−92158A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−30872(P2013−30872)
【出願日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【分割の表示】特願2010−222511(P2010−222511)の分割
【原出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【分割の表示】特願2010−222511(P2010−222511)の分割
【原出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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