説明

燃料改質装置及びその診断方法

【課題】リサイクルガス流路の閉塞を検知可能な燃料改質装置及び診断方法を提供する。
【解決手段】脱硫器3と、水素含有ガスを生成する改質器4と、改質器4よりも下流側の水素含有ガス分岐部位12から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路14の途中の、脱硫器3よりも上流側の水素含有ガス合流部位11に合流されて、改質器4での改質処理によって生成された水素含有ガスの一部を脱硫器3に供給するためのリサイクルガス流路17とを備える燃料改質装置Rが、水素含有ガス合流部位11の圧力を水素含有ガス分岐部位12の圧力よりも低くした後での、水素含有ガス分岐部位12からリサイクルガス流路17を介した水素含有ガス合流部位11へのガスの通流により発生する水素含有ガス分岐部位12の圧力の低下度合いによって、リサイクルガス流路17のガス通流状態を判定する通流状態判定手段9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原燃料を改質して水素を主成分とする水素含有ガスを生成する燃料改質装置及びその診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素を含む原燃料ガスに水素を添加した上でその原燃料ガスに含まれる硫黄化合物の脱硫処理(所謂、水添脱硫処理)を行うことで、脱硫剤の長寿命化を図ることのできる脱硫器がある。脱硫器は、下流側に設けられる改質器の改質触媒が、原燃料ガスに含まれる硫黄化合物によって劣化するのを防止するために設けられる。そのため、脱硫器の脱硫剤の長寿命化を達成できると、改質器の改質触媒の長寿命化も併せて達成できる。
【0003】
特許文献1には、このような脱硫器を有する燃料改質装置が記載されている。具体的には、特許文献1に記載の燃料改質装置は、供給される原燃料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する脱硫処理を行う脱硫器と、脱硫器で脱硫処理された原燃料ガスに対して改質処理を行って水素を含む水素含有ガスを生成する改質器と、改質器で生成された水素含有ガスが通流する水素含有ガス流路の途中の、改質器よりも下流側の水素含有ガス分岐部位から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路の途中の、脱硫器よりも上流側の水素含有ガス合流部位に合流されて、改質器での改質処理によって生成された水素含有ガスの一部を脱硫器に供給するためのリサイクルガス流路とを備える。
【0004】
尚、改質器で水蒸気改質が行われている場合、改質器で生成される水素含有ガスには水蒸気が残存している。そのため、その水蒸気がリサイクルガス流路の途中で凝縮した場合には、凝縮水でリサイクルガス流路が閉塞する可能性がある。リサイクルガス流路が閉塞した場合、脱硫器に水素を供給できなくなるので、脱硫器の性能低下が発生し易くなる。それに伴って、脱硫器の下流側に設けられている改質器に、脱硫器で除去しきれなかった硫黄化合物が流入して、改質触媒の劣化が促進されるという問題が生じ得る。
【0005】
そのため、特許文献1に記載の燃料改質装置では、リサイクルガス流路を流れる水素含有ガスに含まれる水蒸気を予め除去しておく目的で、水蒸気を凝縮して分離させる水蒸気量低減器を設けている。加えて、特許文献1には、水蒸気量低減器での水素含有ガスの冷却を水冷式で行える旨の記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−356308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の発明のように水蒸気量低減器を設けたとしても、リサイクルガス流路を流れる水素含有ガス中の水蒸気を完全に除去することは困難である。例えば、特許文献1に記載のように水素含有ガスの冷却を水冷式で行った場合、その冷却水の温度の高低に応じて水素含有ガスから除去可能な水蒸気量も変化してしまう。その結果、特許文献1に記載の発明のように水蒸気量低減器を設けたとしても、リサイクルガス流路が水で閉塞する可能性を完全に無くすことは困難である。
加えて、水素含有ガスに異物が混入していた場合にも、リサイクルガス流路が閉塞する可能性がある。
【0008】
更に、仮にリサイクルガス流路が水や異物で閉塞したとしても、改質器の下流側にはリサイクルガス流路だけでなく水素含有ガスが燃料電池へと流れる水素含有ガス流路があるため、改質器の下流側で水素含有ガスの流量異常や圧力異常などの異常な挙動は現れない。そのため、リサイクルガス流路が閉塞したことを検知できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リサイクルガス流路の閉塞を検知可能な燃料改質装置及びその診断方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料改質装置の特徴構成は、供給される原燃料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する脱硫処理を行う脱硫器と、前記脱硫器で脱硫処理された原燃料ガスに対して改質処理を行って水素を含む水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された水素含有ガスが通流する水素含有ガス流路の途中の、前記改質器よりも下流側の水素含有ガス分岐部位から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の水素含有ガス合流部位に合流されて、前記改質器での改質処理によって生成された水素含有ガスの一部を前記脱硫器に供給するためのリサイクルガス流路とを備える燃料改質装置であって、
前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くした後での、前記水素含有ガス分岐部位から前記リサイクルガス流路を介した前記水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する前記水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いによって、前記リサイクルガス流路のガス通流状態を判定する通流状態判定手段とを備える点にある。
【0011】
水素含有ガス分岐部位からリサイクルガス流路を介して水素含有ガス合流部位へガスを通流させる状態が作り出された場合、リサイクルガス流路が閉塞されていなければ上流側の水素含有ガス分岐部位の圧力の低下が明確に現れる。逆に、リサイクルガス流路が完全に閉塞されていれば水素含有ガス分岐部位の圧力の低下は全く現れず、リサイクルガス流路が完全ではないにしろ閉塞されていれば水素含有ガス分岐部位の圧力の低下は閉塞されていないときに比べて緩やかとなるため検知可能である。
従って、本特徴構成のように、水素含有ガス分岐部位から水素含有ガス合流部位へガスを通流させる状態を作り出し、その水素含有ガス分岐部位から水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いを監視することで、リサイクルガス流路のガス通流状態(即ち、閉塞状態)を検知可能となる。
【0012】
本発明に係る燃料改質装置の別の特徴構成は、
前記原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の可燃性ガス分岐部位から分岐される可燃性ガス流路を備え、
前記原燃料ガス流路の途中の前記水素含有ガス合流部位及び前記可燃性ガス分岐部よりも上流側に第1弁を備え、前記原燃料ガス流路の途中の前記可燃性ガス分岐部位よりも下流側且つ前記脱硫器よりも上流側に第2弁を備え、前記可燃性ガス流路の途中に第3弁を備え、前記リサイクルガス流路の途中に第4弁を備え、及び、前記水素含有ガス流路の途中の前記水素含有ガス分岐部位よりも下流側に流路開閉手段を備え、
前記通流状態判定手段は、前記第1弁と前記第2弁と前記流路開閉手段とを閉止し且つ前記第3弁と前記第4弁とを開放して、前記水素含有ガス合流部位から前記第3弁を通ってガスを排出させることで、前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くした後での、前記水素含有ガス分岐部位から前記水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する前記水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いによって、前記リサイクルガス流路のガス通流状態を判定する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、第1弁と第2弁と流路開閉手段とが閉止され且つ第3弁と第4弁とが開放される。このとき、第3弁が開放されているので、水素含有ガス合流部位に存在するガスは第3弁を通過して可燃性ガス流路へと流れ出すことができる。従って、第1弁及び第2弁を閉止し且つ第3弁及び第4弁を開放することで、水素含有ガス合流部位の圧力を低下させること、即ち、水素含有ガス合流部位の圧力を水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くした状態を作り出すことができる。加えて、第1弁及び第2弁及び流路開閉手段が閉止され且つ第4弁が開放されているので、水素含有ガス分岐部位に存在するガスはリサイクルガス流路を介して水素含有ガス合流部位へと向かう方向へのみ流れることができる。
従って、水素含有ガス分岐部位からリサイクルガス流路及び水素含有ガス合流部位及び第3弁を通って可燃性ガス流路へとガスが通流できる状態を作り出すことで、水素含有ガス合流部位の圧力を水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くした後での、水素含有ガス分岐部位から水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いを監視できる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料改質装置の診断方法の特徴構成は、供給される原燃料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する脱硫処理を行う脱硫器と、前記脱硫器で脱硫処理された原燃料ガスに対して改質処理を行って水素を含む水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された水素含有ガスが通流する水素含有ガス流路の途中の、前記改質器よりも下流側の水素含有ガス分岐部位から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の水素含有ガス合流部位に合流されて、前記改質器での改質処理によって生成された水素含有ガスの一部を前記脱硫器に供給するためのリサイクルガス流路とを備える燃料改質装置の診断方法であって、
前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くする圧力差形成工程と、
前記圧力差形成工程により生じ得る前記水素含有ガス分岐部位から前記水素含有ガス合流部位へのガスの通流による前記水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いによって、前記リサイクルガス流路のガス通流状態を判定する通流状態判定工程とを有する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、上記圧力差形成工程を実施することで、水素含有ガス分岐部位から水素含有ガス合流部位へ向かってガスを流すことができる状態を作りだせる。加えて、上記通流状態判定工程を実施することで、水素含有ガス分岐部位から水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いを監視して、リサイクルガス流路におけるガス通流状態(即ち、閉塞状態)を判定できる。
【0016】
本発明に係る燃料改質装置の診断方法の別の特徴構成は、前記燃料改質装置が、前記原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の可燃性ガス分岐部位から分岐される可燃性ガス流路を備え、前記原燃料ガス流路の途中の前記水素含有ガス合流部位及び前記可燃性ガス分岐部よりも上流側に第1弁を備え、前記原燃料ガス流路の途中の前記可燃性ガス分岐部位よりも下流側且つ前記脱硫器よりも上流側に第2弁を備え、前記可燃性ガス流路の途中に第3弁を備え、前記リサイクルガス流路の途中に第4弁を備え、及び、前記水素含有ガス流路の途中の前記水素含有ガス分岐部位よりも下流側に流路開閉手段を備え、
前記圧力差形成工程に先立って、前記第1弁と前記第2弁とを開放し且つ前記第3弁と前記第4弁と前記流路開閉手段とを閉止した状態で原燃料ガスを前記原燃料ガス流路に供給する圧力上昇工程を実施し、
前記圧力上昇工程に引き続く前記圧力差形成工程において、前記第1弁と前記第2弁と前記第4弁と前記流路開閉手段とを閉止し且つ前記第3弁を開放して、或いは、前記第1弁と前記第2弁と前記流路開閉手段とを閉止し且つ前記第3弁と前記第4弁とを開放して、前記水素含有ガス合流部位から前記第3弁を通ってガスを排出させることで、前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くさせる点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、上記圧力上昇工程を実施することで、閉止されている第4弁及び流路開閉手段の間に存在する水素含有ガス分岐部位の圧力を、原燃料ガスによって上昇させることができる。加えて、その圧力上昇工程に引き続いて上記圧力差形成工程を実施することで、水素含有ガス合流部位から第3弁を通ってガスを排出させて、それにより水素含有ガス合流部位の圧力を水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くすることができる。その結果、上記通流状態判定工程において水素含有ガス分岐部位から水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いを監視することで、リサイクルガス流路のガス通流状態(即ち、閉塞状態)を検知可能となる。
【0018】
本発明に係る燃料改質装置の診断方法の更に別の特徴構成は、前記燃料改質装置の運転停止中に前記各工程を実施する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、燃料改質装置の運転停止中に上記各工程を実施することで、次に燃料電池及び燃料改質装置を起動する前にリサイクルガス流路の閉塞の有無を事前確認できる。その結果、リサイクルガス流路が閉塞されていない状態、即ち、脱硫器に水素を供給できる状態を確保した上で燃料改質装置の運転を行うことができ、結果として、脱硫器の劣化や改質器の劣化が発生しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】燃料改質装置の構成を示す図である。
【図2】燃料改質装置の診断方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明に係る燃料改質装置Rについて説明する。
図1は、燃料改質装置Rの構成を示す図である。図示するように、燃料改質装置Rでは、原燃料ガスが原燃料ガス流路14を通して改質器4に供給され、その原燃料ガスが改質器4で水素を主成分とするガス(水素含有ガス)に改質される。そして、改質器4で生成された水素含有ガスが水素含有ガス流路16を通して燃料電池に供給される。
【0022】
〔原燃料ガス流路〕
原燃料ガス流路14には、第1弁V1とブロア1と第2弁V2と脱硫器3とが設けられ、原燃料ガスはそれらを順次通過した後で改質器4に流入する。第1弁V1は、燃料改質装置Rの系内に流入する原燃料ガスの流量を調節する。例えば、制御装置9が、第1弁V1の開度を制御して、原燃料ガス流路14を通して燃料改質装置Rの系内に流入する原燃料の流量を調節する。
【0023】
第1弁V1よりも下流側の原燃料ガス流路14にはブロア1が設けられている。つまり、第1弁V1から燃料改質装置Rの系内に流入した原燃料ガスはブロア1によって吸引されて昇圧された上でそのブロア1の下流側に送出される。
【0024】
ブロア1よりも下流側の原燃料ガス流路14には第2弁V2が設けられている。第2弁V2は、例えば制御装置9によって制御される開閉弁であり、原燃料ガス流路14における原燃料ガスの通流を遮断する際に用いられる。
【0025】
第2弁V2よりも下流側の原燃料ガス流路14には脱硫器3が設けられている。脱硫器3には脱硫剤が充填されており、原燃料ガス流路14を通して供給される炭化水素等の原燃料ガスの脱硫処理を行う。例えば、原燃料ガスは、メタンやプロパンなどの炭化水素を主成分とするガスである。これら原燃料ガスとして用いられるメタンやプロパンなどは一般に都市ガスやLPGであり、例えばジメチルスルフィド(DMS)などの硫黄化合物が付臭剤として含まれている。よって、後段の改質器4に充填されている改質触媒や燃料電池のセルを構成するアノードなどが硫黄化合物によって劣化することを避けるために、脱硫器3によってその硫黄化合物を除去する。また、原燃料ガスに水素を添加した水添脱硫を行うことで、脱硫剤の長寿命化を図ることができる。原燃料ガスに水素を添加するために利用するリサイクルガス流路17の構成については後述する。
【0026】
改質器4には改質触媒が充填され、水蒸気の存在下で脱硫処理後の原燃料ガスの水蒸気改質を行って、水素を主成分とする水素含有ガスを生成する。水蒸気は、例えば原燃料ガス流路14の脱硫器3の下流側の水蒸気合流部位18で添加される。そして、改質器4は、原燃料ガスを、水素を主成分とし、副生成物としての一酸化炭素などを含む水素含有ガスに改質する。副生成物としての一酸化炭素は、燃料電池のセルを構成するアノードを劣化させるため、本実施形態では後述するような一酸化炭素変成器5による一酸化炭素変成処理並びに一酸化炭素除去器7による一酸化炭素除去処理を行っている。
【0027】
上述した改質器4で行われる水蒸気改質処理は吸熱反応であるため、改質器4には、燃焼器2で発生された燃焼熱が伝えられる。燃焼器2は、原燃料ガス流路14の途中の可燃性ガス分岐部位13から分岐した可燃性ガス流路15を通して供給される原燃料ガス(水添脱硫が行われている際には水素含有ガスも添加される)を燃焼して、改質器4を加熱するための燃焼熱を放出する。可燃性ガス流路15の途中には、流路を開閉する第3弁V3が設けられている。本実施形態において、可燃性ガス分岐部位13は、ブロア1の下流側且つ第2弁V2の上流側の原燃料ガス流路14に設けられている。従って、水添脱硫が行われている際には、可燃性ガス流路15に水素含有ガスも添加される。
【0028】
本実施形態では、脱硫器3の下流側且つ改質器4の上流側の原燃料ガス供給路に、原燃料ガス流路14中のガス圧を検出可能な圧力計Pが設けられている。圧力計Pの検出結果は、制御装置9に伝達される。
【0029】
〔水素含有ガス流路〕
改質器4で生成された水素含有ガスは、水素含有ガス流路16を通して燃料電池へと供給される。上述のように、水素含有ガス流路16には、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成する変成処理を行う一酸化炭素変成器5と、変成処理後の水素含有ガスに含まれている微量の一酸化炭素を酸化及びメタン化等によって除去する一酸化炭素除去器7とを設けている。この一酸化炭素変成器5及び一酸化炭素除去器7の組み合わせにより、燃料電池へと供給される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を非常に低くできる。
【0030】
一酸化炭素変成器5と一酸化炭素除去器7との間の水素含有ガス流路16には、水素含有ガスに含まれる水蒸気量を低減するための水蒸気量低減器6が設けられている。水蒸気量低減器6の詳細については説明を省略するが、水蒸気量低減器6は水素含有ガスを冷却して水蒸気を凝縮させる冷却部と凝縮水を分離して排水する気水分離部等を有する。
【0031】
一酸化炭素除去器7の下流側の水素含有ガス流路16には、本発明の流路開閉手段としての第5弁V5が設けられている。第5弁V5は、例えば制御装置9によって制御される開閉弁であり、水素含有ガス流路16における水素含有ガスの通流を遮断する際に用いられる。
【0032】
〔リサイクルガス流路〕
原燃料ガスに水素を添加するために利用するリサイクルガス流路17は、改質器4で生成された水素含有ガスが通流する水素含有ガス流路16の途中の、改質器4よりも下流側の水素含有ガス分岐部位12から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路14の途中の、脱硫器3よりも上流側の水素含有ガス合流部位11に合流される。本実施形態では、水素含有ガス分岐部位12は、一酸化炭素変成器5と一酸化炭素除去器7との間を接続する水素含有ガス流路16の途中に設けられる。その結果、改質器4で生成された水素含有ガスの一部が原燃料ガス流路14に流入して、脱硫器3へは水素が添加された原燃料ガスが供給されることになる。このように、リサイクルガス流路17を通して脱硫器3に供給される水素含有ガスは、一酸化炭素除去器7を通っていない。従って、一酸化炭素除去器7で処理されるガス量は抑制されるため、一酸化炭素除去器7に充填されている一酸化炭素除去触媒の寿命が必要以上に短くなることが避けられる。
【0033】
リサイクルガス流路17の途中には、第4弁V4とオリフィス8とが設けられている。第4弁V4は、例えば制御装置9によって制御される開閉弁であり、リサイクルガス流路17における水素含有ガスの通流を遮断する際に用いられる。オリフィス8は、リサイクルガス流路17における水素含有ガスの流量を制限するために設けられている。つまり、オリフィス8を設けることで、水素含有ガス分岐部位12からリサイクルガス流路17へと流入する水素含有ガスの量が制限され、大部分の水素含有ガスが燃料電池の方へと流れるようになる。
【0034】
〔燃料改質装置の診断方法〕
次に、燃料改質装置Rの診断方法について説明する。図2は、燃料改質装置Rの診断方法を示すフロー図である。
この診断方法は、リサイクルガス流路17の閉塞状態を診断するためのものである。このような診断を行うのは、リサイクルガス流路17の内部が凝縮水や異物によって完全に又は部分的に閉塞した場合には、脱硫器3に水素を供給できなくなって脱硫器3の性能低下が発生し易くなるからである。制御装置9は、この診断方法を燃料改質装置Rの運転停止中に実施する。そのため、上述した各反応器(燃焼器2、改質器4、一酸化炭素変成器5及び一酸化炭素除去器7など)や水蒸気量低減器6は動作状態にない。
【0035】
図2の工程10において制御装置9は、圧力上昇工程を実施する。圧力上昇工程は、第2弁V2と第4弁V4と第5弁V5とで囲まれる流路の圧力を原燃料ガスで高める工程である。制御装置9は、第1弁V1と第2弁V2とを開放し且つ第3弁V3と第4弁V4と第5弁V5とを閉止した状態で原燃料ガスを原燃料ガス流路14に供給する。具体的には、制御装置9が、第1弁V1と第2弁V2とを開放してブロア1を作動させることで、原燃料ガスは第2弁V2よりも下流側に流入する。このとき、制御装置9は、第3弁V3と第4弁V4と第5弁V5とを閉止している。その結果、供給される原燃料は、燃焼器2へは流入せず、且つ、燃料電池の方へは流出せず、且つ、リサイクルガス流路17へは流入しない。従って、圧力計Pで検出可能な、第2弁V2と第4弁V4と第5弁V5とで囲まれる流路の圧力(特に、水素含有ガス分岐部位12の圧力)は上昇する。尚、この圧力上昇工程の段階では第2弁V2は開放されているので、水素含有ガス分岐部位12の圧力だけでなく、水素含有ガス合流部位11の圧力も同等に上昇する。そして、制御装置9は、圧力計Pの検出結果が所定の圧力値になると、圧力上昇工程を終了して次の圧力差形成工程へと移行する。尚、制御装置9は、圧力上昇工程の終了時に、全ての弁(第1弁V1、第2弁V2、第3弁V3、第4弁V4、第5弁V5)を閉止し、ブロア1の動作を停止させる。
【0036】
工程20において制御装置9は、圧力差形成工程を実施する。圧力差形成工程は、水素含有ガス合流部位11の圧力を水素含有ガス分岐部位12の圧力よりも低くする工程である。具体的には、制御装置9は、圧力上昇工程の終了時に全ての弁(第1弁V1、第2弁V2、第3弁V3、第4弁V4、第5弁V5)を閉止した状態から、第1弁V1と第2弁V2と第4弁V4と第5弁V5とを閉止し且つ第3弁V3を開放する状態に各弁の開閉状態を変更する。或いは、制御装置9は、圧力上昇工程の終了時に全ての弁(第1弁V1、第2弁V2、第3弁V3、第4弁V4、第5弁V5)を閉止した状態から、第1弁V1と第2弁V2と第5弁V5とを閉止し且つ第3弁V3と第4弁V4とを開放する状態に各弁の開閉状態を変更する。それにより、燃料改質装置Rの系内からのガス流出は、第3弁V3及び燃焼器2を介した大気への流出のみが許容される。つまり、ガス流出に伴う圧力低下が発生する第3弁V3の近傍に存在する水素含有ガス合流部位11でも、水素含有ガス合流部位11から第3弁V3を通ってのガス排出に伴って、圧力低下が発生する。その結果、水素含有ガス合流部位11の圧力が水素含有ガス分岐部位12の圧力よりも低くなる。
【0037】
工程30において制御装置9は、通流状態判定工程を実施する。通流状態判定工程は、圧力差形成工程により形成された水素含有ガス分岐部位12と水素含有ガス合流部位11との間の圧力差により生じ得る水素含有ガス分岐部位12の圧力の低下度合いによって、リサイクルガス流路17のガス通流状態を判定する工程である。制御装置9は、圧力差形成工程を実施したときの各弁の開閉状態が、第1弁V1と第2弁V2と第4弁V4と第5弁V5とを閉止し且つ第3弁V3を開放する状態である場合には、通流状態判定工程の開始時に第4弁V4を追加で開放する状態(即ち、第1弁V1と第2弁V2と第5弁V5とを閉止し、且つ、第3弁V3と第4弁V4とを開放する状態)に各弁の開閉状態を変更すると共に後述するような水素含有ガス分岐部位12の圧力の経時的な変化を監視する。或いは、制御装置9は、圧力差形成工程を実施したときの各弁の開閉状態が、第1弁V1と第2弁V2と第5弁V5とを閉止し且つ第3弁V3と第4弁V4とを開放する状態である場合には、通流状態判定工程の開始時に各弁の開閉状態をそのまま維持しつつ後述するような水素含有ガス分岐部位12の圧力の経時的な変化を監視する。
【0038】
つまり、上述した圧力差形成工程によって水素含有ガス合流部位11の圧力が水素含有ガス分岐部位12の圧力よりも低くなる状態が既に作り出されており、更にリサイクルガス流路17の途中に設けられる第4弁V4が開放されていると、そのリサイクルガス流路17を介して水素含有ガス分岐部位12から水素含有ガス合流部位11へ向かってガスを流すことができる状態が作り出される。従って、リサイクルガス流路17が閉塞されていなければ、水素含有ガス分岐部位12の付近に存在しているガスがリサイクルガス流路17を通流して水素含有ガス合流部位11の方へ流れるため、圧力計Pで検出される水素含有ガス分岐部位12の圧力の低下が明確に現れる。逆に、リサイクルガス流路17が完全に閉塞されていれば、圧力計Pで検出される水素含有ガス分岐部位12の圧力の経時的な低下は全く現れない。或いは、リサイクルガス流路17が完全ではないにしろ閉塞されていれば、圧力計Pで検出される水素含有ガス分岐部位12の圧力の経時的な低下は閉塞されていないときに比べて緩やかとなるため検知可能である。
【0039】
従って、制御装置9は、水素含有ガス分岐部位12から水素含有ガス合流部位11へガスを通流させる状態を作り出した時点から所定時間経過後に圧力計Pで検出される圧力値に基づいて、リサイクルガス流路17のガス通流状態(基本的には、リサイクルガス流路が閉塞されているか否か)を判定できる。例えば、所定時間経過後に検出される圧力値が、圧力上昇工程の実施により得られた圧力値と同等であれば、リサイクルガス流路17は完全に閉塞されていると判定できる。また、所定時間経過後に検出される圧力値が、圧力上昇工程の実施により得られた圧力値からの低下度合いが大きいとき、リサイクルガス流路17は閉塞されていないと判定できる。このように、本発明の通流状態判定手段として機能する制御装置9は、所定時間経過後に圧力計Pで検出される圧力値に基づいて、リサイクルガス流路17のガス通流状態を判定できる。
【0040】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、燃料改質装置Rの構成は適宜変更してもよい。例えば、一酸化炭素除去器7を設けなくてもよい。また、水素含有ガス分岐部位12の圧力を計測できるのであれば、圧力計Pを改質器4の下流側などの他の部位に設けてもよい。
【0041】
<2>
上記実施形態において、圧力差形成工程及び通流状態判定工程で燃焼器2を燃焼作動させてもよい。つまり、圧力差形成工程及び通流状態判定工程では、第3弁V3及び燃焼器2を介して原燃料ガスが大気へ流出されることとなるが、このときに燃焼器2を燃焼作動させることで、原燃料ガスが大気へ流出しないようにできる。
【0042】
<3>
上記実施形態において、本発明の流路閉止手段を第5弁V5で実現する例を説明したが、一酸化炭素除去器7の下流側の水素含有ガス流路16の閉止及び開放を行える手段であれば上記第5弁V5以外の手段によって本発明の流路閉止手段を実現してもよい。例えば、水素含有ガス流路16の途中の一酸化炭素除去器7よりも下流側に水(例えば、燃料電池の冷却水など)を流入させることで、一酸化炭素除去器7の下流側の水素含有ガス流路16の閉止が行われるような流路閉止手段を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、燃料改質装置のリサイクルガス流路の閉塞を検知するために利用できる。
【符号の説明】
【0044】
2 燃焼器
3 脱硫器
4 改質器
9 制御装置(通流状態判定手段)
11 水素含有ガス合流部位
12 水素含有ガス分岐部位
13 可燃性ガス分岐部位
14 原燃料ガス流路
15 可燃性ガス流路
16 水素含有ガス流路
17 リサイクルガス流路
R 燃料改質装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される原燃料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する脱硫処理を行う脱硫器と、
前記脱硫器で脱硫処理された原燃料ガスに対して改質処理を行って水素を含む水素含有ガスを生成する改質器と、
前記改質器で生成された水素含有ガスが通流する水素含有ガス流路の途中の、前記改質器よりも下流側の水素含有ガス分岐部位から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の水素含有ガス合流部位に合流されて、前記改質器での改質処理によって生成された水素含有ガスの一部を前記脱硫器に供給するためのリサイクルガス流路とを備える燃料改質装置であって、
前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くした後での、前記水素含有ガス分岐部位から前記リサイクルガス流路を介した前記水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する前記水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いによって、前記リサイクルガス流路のガス通流状態を判定する通流状態判定手段とを備える燃料改質装置。
【請求項2】
前記原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の可燃性ガス分岐部位から分岐される可燃性ガス流路を備え、
前記原燃料ガス流路の途中の前記水素含有ガス合流部位及び前記可燃性ガス分岐部よりも上流側に第1弁を備え、前記原燃料ガス流路の途中の前記可燃性ガス分岐部位よりも下流側且つ前記脱硫器よりも上流側に第2弁を備え、前記可燃性ガス流路の途中に第3弁を備え、前記リサイクルガス流路の途中に第4弁を備え、及び、前記水素含有ガス流路の途中の前記水素含有ガス分岐部位よりも下流側に流路開閉手段を備え、
前記通流状態判定手段は、前記第1弁と前記第2弁と前記流路開閉手段とを閉止し且つ前記第3弁と前記第4弁とを開放して、前記水素含有ガス合流部位から前記第3弁を通ってガスを排出させることで、前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くした後での、前記水素含有ガス分岐部位から前記水素含有ガス合流部位へのガスの通流により発生する前記水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いによって、前記リサイクルガス流路のガス通流状態を判定する請求項1に記載の燃料改質装置。
【請求項3】
供給される原燃料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する脱硫処理を行う脱硫器と、前記脱硫器で脱硫処理された原燃料ガスに対して改質処理を行って水素を含む水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された水素含有ガスが通流する水素含有ガス流路の途中の、前記改質器よりも下流側の水素含有ガス分岐部位から分岐し、且つ、原燃料ガスが通流する原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の水素含有ガス合流部位に合流されて、前記改質器での改質処理によって生成された水素含有ガスの一部を前記脱硫器に供給するためのリサイクルガス流路とを備える燃料改質装置の診断方法であって、
前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くする圧力差形成工程と、
前記圧力差形成工程により生じ得る前記水素含有ガス分岐部位から前記水素含有ガス合流部位へのガスの通流による前記水素含有ガス分岐部位の圧力の低下度合いによって、前記リサイクルガス流路のガス通流状態を判定する通流状態判定工程とを有する燃料改質装置の診断方法。
【請求項4】
前記燃料改質装置が、前記原燃料ガス流路の途中の、前記脱硫器よりも上流側の可燃性ガス分岐部位から分岐される可燃性ガス流路を備え、前記原燃料ガス流路の途中の前記水素含有ガス合流部位及び前記可燃性ガス分岐部よりも上流側に第1弁を備え、前記原燃料ガス流路の途中の前記可燃性ガス分岐部位よりも下流側且つ前記脱硫器よりも上流側に第2弁を備え、前記可燃性ガス流路の途中に第3弁を備え、前記リサイクルガス流路の途中に第4弁を備え、及び、前記水素含有ガス流路の途中の前記水素含有ガス分岐部位よりも下流側に流路開閉手段を備え、
前記圧力差形成工程に先立って、前記第1弁と前記第2弁とを開放し且つ前記第3弁と前記第4弁と前記流路開閉手段とを閉止した状態で原燃料ガスを前記原燃料ガス流路に供給する圧力上昇工程を実施し、
前記圧力上昇工程に引き続く前記圧力差形成工程において、前記第1弁と前記第2弁と前記第4弁と前記流路開閉手段とを閉止し且つ前記第3弁を開放して、或いは、前記第1弁と前記第2弁と前記流路開閉手段とを閉止し且つ前記第3弁と前記第4弁とを開放して、前記水素含有ガス合流部位から前記第3弁を通ってガスを排出させることで、前記水素含有ガス合流部位の圧力を前記水素含有ガス分岐部位の圧力よりも低くさせる請求項3に記載の燃料改質装置の診断方法。
【請求項5】
前記燃料改質装置の運転停止中に前記各工程を実施する請求項3又は4に記載の燃料改質装置の診断方法。

【図1】
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【図2】
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