説明

燃料改質装置及び燃料改質方法

【課題】燃料改質処理に必要なエネルギーを低減することができる燃料改質装置及び燃料改質方法を提供する。
【解決手段】燃料改質装置11は、バイオマス燃料を高温高圧化された水蒸気によって蒸煮処理する水熱処理装置13と、水熱処理装置13で発生する燃料と水蒸気との混合物の開放減圧処理を行い、その後、バイオマス燃料を乾燥させる減圧乾燥装置15と、を備えている。減圧乾燥装置15は、開放減圧処理で発生する水蒸気を加圧する水蒸気圧縮機15bと、水蒸気圧縮機15bで加圧された水蒸気と乾燥させるバイオマス燃料との間で熱交換を行わせる熱交換部15cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の改質を行う燃料改質装置及び燃料改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に記載のように、廃棄物を燃料として用いるボイラ発電において、燃料の改質を行う技術が知られている。この文献の燃料改質方法では、発電工程で発生する高圧水蒸気を用いて燃料を蒸煮処理して廃棄物燃料中の腐食成分(Na、K、Cl等)を分離除去し、その後爆砕処理することで、廃棄物燃料の改質を行う。このように、廃棄物を燃料とする場合、廃棄物燃料中の腐食成分がボイラの各部を傷めることが問題になるため、予め、燃料中の腐食成分を取り除くための燃料の改質が必要である。
【特許文献1】特開2006−239623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、発電の前処理である燃料改質処理において多くのエネルギーが投入されることとなれば、ボイラ発電のトータルの発電効率の低下を招いてしまう。従って、ボイラ発電全体の発電効率向上のためにも、燃料改質処理にあっては、必要とされるエネルギーを極力低減することが望まれる。
【0004】
そこで、本発明は、燃料改質処理に必要なエネルギーを低減することができる燃料改質装置及び燃料改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の燃料改質装置は、燃料を改質する燃料改質装置であって、燃料を改質する燃料改質装置であって、燃料を、加圧及び加熱された水蒸気によって蒸煮処理する蒸煮処理手段と、蒸煮処理手段で処理された燃料を収容し減圧処理する減圧処理手段と、減圧処理手段による処理後の燃料を乾燥させる燃料乾燥手段と、を備え、燃料乾燥手段は、減圧処理手段で発生する水蒸気を加圧する水蒸気加圧部と、水蒸気加圧部で加圧された水蒸気と乾燥させる燃料との間で熱交換を行わせる熱交換部と、を有することを特徴とする。
【0006】
この燃料改質装置では、蒸煮処理手段により燃料の蒸煮処理が行われる。このとき、燃料中の不要成分が水蒸気及び凝縮水に同伴して分離除去されることで、燃料が改質される。その後、減圧処理手段により燃料と水蒸気との混合物の圧力が低下される。このとき、燃料中に浸透していた水蒸気の膨張により燃料が破砕される。更にその後、燃料乾燥手段によって燃料の乾燥が行われ、乾燥した燃料が得られる。燃料乾燥手段においては、減圧処理手段で発生した水蒸気が加圧され、この加圧水蒸気と乾燥させるべき燃料との間の熱交換がおこなわれる。すなわち、ここでは、加圧されることで水蒸気の凝縮温度が上昇するので、高い温度においてこの水蒸気を凝縮させ凝縮潜熱を利用することが可能になり、水蒸気の凝縮の際の凝縮潜熱が燃料側に付与される。すなわち、この熱交換により燃料が加熱されるので、燃料の乾燥が促進される。
【0007】
また、燃料乾燥手段では、加圧・熱交換に用いる水蒸気として、減圧処理手段で発生する水蒸気を利用している。この減圧処理手段で発生する水蒸気は、前段の蒸煮処理を経てある程度の顕熱及び潜熱を保有しており、上記加圧・熱交換用の水蒸気として直ぐに利用可能であるので、燃料乾燥手段における熱交換を素早く開始することができる。また、この減圧処理手段で発生する水蒸気の顕熱及び潜熱のエネルギーを廃棄することなく、燃料乾燥のための加熱のエネルギーとして有効利用することができるので、燃料改質装置全体としての消費エネルギーを低減することができる。
【0008】
また、減圧処理手段は、熱交換部を備えることとしてもよい。
【0009】
また、本発明の燃料改質方法は、燃料を改質する燃料改質方法であって、燃料を、加圧及び加熱された水蒸気によって蒸煮処理する蒸煮処理工程と、蒸煮処理工程で処理された燃料を収容し減圧処理する減圧処理工程と、減圧処理工程による処理後の燃料を乾燥させる燃料乾燥工程と、を備え、燃料乾燥工程では、減圧処理工程で発生する水蒸気を加圧する水蒸気加圧ステップと、水蒸気加圧ステップで加圧された水蒸気と乾燥させる燃料との間で熱交換を行わせる熱交換ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
この燃料改質方法では、蒸煮処理工程により燃料の蒸煮処理が行われる。このとき、燃料中の不要成分が水蒸気及び凝縮水に同伴して分離除去されることで、燃料が改質される。その後、減圧処理工程により燃料と水蒸気との混合物の圧力が低下される。このとき、燃料中に浸透していた水蒸気の膨張により燃料が破砕される。更にその後、燃料乾燥工程によって燃料の乾燥が行われ、乾燥した燃料が得られる。燃料乾燥工程においては、減圧処理工程で発生した水蒸気が加圧され、この加圧水蒸気と乾燥させるべき燃料との間の熱交換がおこなわれる。すなわち、ここでは、加圧されることで水蒸気の凝縮温度が上昇するので、高い温度においてこの水蒸気を凝縮させ凝縮潜熱を利用することが可能になり、水蒸気の凝縮の際の凝縮潜熱が燃料側に付与される。すなわち、この熱交換により燃料が加熱されるので、燃料の乾燥が促進される。
【0011】
また、燃料乾燥工程では、加圧・熱交換に用いる水蒸気として、減圧処理工程で発生する水蒸気を利用している。この減圧処理工程で発生する水蒸気は、前段の蒸煮処理を経てある程度の顕熱及び潜熱を保有しており、上記加圧・熱交換用の水蒸気として直ぐに利用可能であるので、燃料乾燥工程における熱交換を素早く開始することができる。また、この減圧処理工程で発生する水蒸気の顕熱及び潜熱のエネルギーを廃棄することなく、燃料乾燥のための加熱のエネルギーとして有効利用することができるので、燃料改質方法全体としての消費エネルギーを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料改質装置及び燃料改質方法によれば、燃料改質処理に必要なエネルギーを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る燃料改質装置及び燃料改質方法の一実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示す発電プラント1は、燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ3と、ボイラ3で発生する蒸気を利用して発電を行う蒸気タービン7とを備えている。このボイラ3の燃料としては、固体のバイオマス燃料が利用される。バイオマス燃料には、Na、K、Clといった腐食成分が含まれる場合があり、これらの腐食成分が高濃度で含まれる場合には、ボイラ3の蒸発器や過熱器等の腐食の原因となってしまう。そこで、この発電プラント1は、ボイラ3の前段において燃料の改質を行うべく、本発明の一実施形態である燃料改質装置11を備えている。
【0015】
燃料改質装置11は、水熱処理装置13と減圧乾燥装置15とを備えている。水熱処理装置13には、バイオマス燃料がラインL1を通じて導入され、蒸気タービン7で抽気された高温高圧水蒸気がラインL5を通じて導入される。そして、水熱処理装置13では、バイオマス燃料と高温高圧水蒸気とが混合されて燃料の蒸煮処理が行われる(蒸煮処理工程)。このとき、水蒸気がバイオマス燃料中に浸透して腐食成分(Na、K、Cl等)を溶かし出し、腐食成分は凝縮水に同伴されて分離される。この凝縮水は、ラインL6を通じて系外に排出される。このようにして、バイオマス燃料中の腐食成分が除去され、改質されたバイオマス燃料が得られる。一方、所定時間の蒸煮処理の後、バイオマス燃料と水蒸気との混合物は、ラインL2を通じて減圧乾燥装置15に導入される。
【0016】
この蒸煮処理においては、腐食成分であるバイオマス燃料中のNa、K、Clが効率よく凝縮水に同伴し、かつ、バイオマス燃料の固形分・発熱量の歩留まりをよくするように、高温高圧水蒸気の温度・圧力が適宜設定される。なお、この水熱処理装置13で用いられる高温高圧水蒸気は、圧力1MPaG,温度180℃程度の飽和蒸気である。また、水熱処理装置13による燃料の処理は、バッチ式が想定されるが、適当なシール機構を設けて連続的な処理を行ってもよい。また、水熱処理装置13に導入する高温高圧水蒸気は、ボイラ3から送気してもよい。
【0017】
水熱処理装置13の後段に設けられた減圧乾燥装置15は、バイオマス燃料を導入する処理室15aを備えている。また、減圧乾燥装置15は、ラインL7を通じて処理室15a内の水蒸気を吸引し、加圧してラインL8に送出する水蒸気圧縮機(水蒸気加圧部)15bを備えている。更に、減圧乾燥装置15は、処理室15a内に設けられた熱交換部15cを備えている。熱交換部15cは、処理室15a内の燃料と接するように配置された熱媒体流路を有しており、ラインL8から導入された加圧水蒸気を当該熱媒体流路に通過させる。
【0018】
この減圧乾燥装置15では、以下のように、処理室15aに導入されたバイオマス燃料の減圧処理及び乾燥処理が行われる。まず、ラインL2を通じて導入されたバイオマス燃料と水蒸気との混合物が、処理室15aに導入され、開放減圧される(減圧処理工程)。この開放減圧処理により、バイオマス燃料中に浸透していた水蒸気が膨張し、バイオマス燃料は爆砕され細分化される。このとき、バイオマス燃料中に存在する腐食成分は、発生する水蒸気及び凝縮水に同伴し分離される。なお、この凝縮水を効率的に取り出すために、バイオマス燃料の脱水を機械的に行う機構を設け、開放減圧処理の前又は後に、バイオマス燃料の機械的な脱水処理を行ってもよい。
【0019】
その後、細分化されたバイオマス燃料は、処理室15a内で乾燥処理され(燃料乾燥工程)、その後、改質燃料としてラインL3を通じてボイラ3に導入される。なお、減圧乾燥装置15においては、処理室15aに熱源(例えば、熱風源)を設けて燃料を加熱することで乾燥を促進したり、処理室15a内を減圧するポンプを設けて処理室15a内を負圧にすることで燃料の乾燥を促進したりしてもよい。
【0020】
一方、上記の開放減圧処理により発生した処理室15a内の水蒸気は、ラインL7を通じて水蒸気圧縮機15bに導入され、加圧されて(水蒸気加圧ステップ)ラインL8に送出される。そして、熱交換部15cが、ラインL8からの加圧水蒸気を熱媒体流路に通過させることで、熱媒体流路を形成する管壁を挟んで加圧水蒸気と処理室15a内のバイオマス燃料とが接触し、両者の間での熱交換が行われる(熱交換ステップ)。
【0021】
この熱交換によって、加圧水蒸気は熱交換部15cを通過中に凝縮し、バイオマス燃料に対して凝縮潜熱を付与し凝縮水となる。すなわち、ここでは、水蒸気が水蒸気圧縮機15bで加圧されることで凝縮温度が上昇するので、バイオマス燃料よりも高い温度において加圧水蒸気を凝縮させて凝縮潜熱を利用することが可能になり、加圧水蒸気の凝縮潜熱が燃料側に付与される。そして、熱交換部15cで生成した凝縮水は、ラインL9を通じて系外に排出される。なお、この凝縮水には、水蒸気に同伴していた腐食成分が含まれている。一方、処理室15a内のバイオマス燃料は、上記の凝縮潜熱の付与により加熱されるので、バイオマス燃料の乾燥が促進される。
【0022】
その後、バイオマス燃料の乾燥の過程において、バイオマス燃料中に含まれていた水分が蒸発し、処理室15a内に水蒸気が発生する。このように発生した水蒸気も、ラインL7を通じて水蒸気圧縮機15bに導入され、加圧されてラインL8に送出され、熱交換部15cにおいて乾燥の促進に継続的に寄与する。このように、開放減圧処理と燃料乾燥処理とを、同じ処理室15a内で行っているので、熱交換部15cによる燃料乾燥の促進が継続的に行われる。すなわち、一つの減圧乾燥装置15内で開放減圧処理と燃料乾燥処理とを行うことにより、開放減圧処理で生じた水蒸気による燃料乾燥の促進と、燃料乾燥処理で生じた水蒸気による燃料乾燥の促進とを、共通の処理室15a、水蒸気圧縮機15b、及び熱交換部15cを用いて継続的に行うことができる。
【0023】
ここで、減圧乾燥装置15との比較のため、図2に示す燃料乾燥装置65を考える。この減圧乾燥装置65では、湿った燃料のみを常圧下で処理室65a内に導入する。そして、燃料乾燥の過程で発生する水蒸気を水蒸気圧縮機65bで加圧し、熱交換部65cにおいて熱交換(燃料の加熱)に用いることで、燃料の乾燥を促進する。しかしながら、この燃料乾燥装置65の場合、乾燥の開始時においては、処理室65a内には水蒸気がほとんど存在しないので、開始直後は、まず、処理室65a内の燃料を、ヒータ等で加熱することで燃料に含まれる水分を蒸発させ、水蒸気圧縮機65bに供給するための水蒸気を発生させなければならない。従って、熱交換部65cにおける熱交換は、乾燥処理の開始直後に機能するものではない。また、開始直後に燃料加熱が必要であることから、燃料の加熱手段が必須となる。
【0024】
これに対し、減圧乾燥装置15においては、最初に、熱交換部15cに用いる水蒸気として、開放減圧処理で発生する水蒸気が利用される。この開放減圧処理で発生する水蒸気は、前段の蒸煮処理を経てある程度の顕熱及び潜熱を保有しており、加圧によって熱交換部15c用の水蒸気として直ぐに利用可能であるので、熱交換部15cによる熱交換を素早く開始することができる。従って、減圧乾燥装置15では、熱交換部15cの性能によっては、燃料の加熱手段を省略することも可能になる。
【0025】
また、この燃料改質装置1では、開放減圧処理で発生する水蒸気の顕熱及び潜熱のエネルギーを廃棄することなく、燃料乾燥のための加熱のエネルギーとして有効利用することができるので、燃料改質装置1全体としての消費エネルギーを低減することができる。その結果、発電プラント1のトータルの発電効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料改質装置を用いた発電プラントを示す図である。
【図2】比較のため他の燃料乾燥装置を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
11…燃料改質装置、13…水熱処理装置(蒸煮処理手段)、15…減圧乾燥装置(減圧処理手段、燃料乾燥手段)、15b…水蒸気圧縮機(水蒸気加圧部)、15c…熱交換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を改質する燃料改質装置であって、
前記燃料を、加圧及び加熱された水蒸気によって蒸煮処理する蒸煮処理手段と、
前記蒸煮処理手段で処理された前記燃料を収容し減圧処理する減圧処理手段と、
前記減圧処理手段による処理後の前記燃料を乾燥させる燃料乾燥手段と、を備え、
前記燃料乾燥手段は、
前記減圧処理手段で発生する前記水蒸気を加圧する水蒸気加圧部と、
前記水蒸気加圧部で加圧された前記水蒸気と乾燥させる前記燃料との間で熱交換を行わせる熱交換部と、を有することを特徴とする燃料改質装置。
【請求項2】
前記減圧処理手段は、前記熱交換部を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料改質装置。
【請求項3】
燃料を改質する燃料改質方法であって、
前記燃料を、加圧及び加熱された水蒸気によって蒸煮処理する蒸煮処理工程と、
前記蒸煮処理工程で処理された前記燃料を収容し減圧処理する減圧処理工程と、
前記減圧処理工程による処理後の前記燃料を乾燥させる燃料乾燥工程と、を備え、
前記燃料乾燥工程では、
前記減圧処理工程で発生する前記水蒸気を加圧する水蒸気加圧ステップと、
前記水蒸気加圧ステップで加圧された前記水蒸気と乾燥させる前記燃料との間で熱交換を行わせる熱交換ステップとを有することを特徴とする燃料改質方法。

【図1】
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【図2】
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