説明

燃料水素供給装置

【課題】供給規模が小さい燃料水素基地を数多く設置できる技術を提供する。
【解決手段】燃料水素の供給圧を所定圧に調整する圧力調整器19を備えた水素供給源と、上記水素供給源に複数の水素吸蔵合金ボンベ13を一括して繋ぐことができる接続部とからなり、上記水素供給源と上記水素吸蔵合金ボンベ13との接続をクイック接続機構としたものであり、上記クイック接続機構は、水素吸蔵合金ボンベ13側に設けた水素受・給プラグと、水素供給源側に設けたソケットとからなり、上記水素受・給プラグは上記ソケット内に嵌り合いソケットの内周またはプラグの外周に嵌められたシールリングに接して気密に接続され、ソケットと水素受・給プラグとの間に両者の着脱機構を設けてなる。また、好ましくは接続部には塵埃・油分の侵入を防止するシャッタを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料水素供給装置であって、燃料水素の供給圧力を所望の圧力に調整して燃料水素を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料水素の供給基地に関する先行技術として次の特許文献がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−069327号公報(要約および選択図面)
【0004】
【特許文献2】特開2005−265071号公報(要約および選択図面)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術に係る燃料水素供給基地は、車載充填水素タンクの仕様に合わせて安定して燃料水素を供給するために、燃料水素供給ラインにレギュレータを配置し、燃料水素の供給状態を監視し、この監視データを制御装置に取り込んで安定的に燃料水素を車載タンクに供給するようにしたものである。
【0006】
上記先行技術では、一般的な車両への燃料水素の供給を主とするものであるから燃料水素の供給基地へ向かうのは容易であるが、電動車椅子のように、燃料の充填が小規模で、燃料水素基地に向かうことが困難な用途に対する考慮は払われていない問題がある。
【0007】
上記の問題に鑑みこの発明は、電動車椅子のように燃料水素の供給規模(充填規模)が小さく、遠くの燃料水素基地に向かうことが困難な場合のために簡単で安全に多数の燃料水素基地を設置できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明は、燃料電池の燃料である水素の供給圧力を所定圧力に調整する圧力調整器19を備えた水素供給源と、上記水素供給源に複数の水素吸蔵合金ボンベ13を一括して繋ぐことができる接続部とからなり、上記水素供給源と上記水素吸蔵合金ボンベ13との接続をクイック接続機構としたものであり、上記クイック接続機構は、水素吸蔵合金ボンベ13側に設けた水素受・給プラグ30と、水素供給源側に設けたソケット29とからなり、上記水素受・給プラグ30は上記ソケット29内に嵌り合いソケット29の内周またはプラグの外周に嵌められたシールリング33に接して気密に接続され、ソケット29と水素受・給プラグ30との間に両者の着脱機構を設けてなる。
上記燃料水素供給装置10の水素吸蔵合金ボンベ13を収容する架台27には、水素吸蔵合金ボンベ13を斜め下向きに誘導する収容部が開口し、この開口から水素受・給プラグ30部分を斜め下向きにして水素吸蔵合金ボンベ13を落とし込むことによりをクイック接続するようにした。また、好ましくは、上記燃料水素供給マウント25またはソケット29に異物侵入防止シャッタ25s,29sを設けてなる。
【0009】
水素吸蔵合金ボンベ13の表面温度を計測する温度センサTrと、外気温を計測する温度センサ100と、上記ソケット29の直前の供給水素圧力を計測する圧力センサ52との出力を演算装置に入力し、この入力と予め演算装置に書き込んだデータとを比較して水素充填状態を判断し、水素供給を遮断および/または警報を発するようにし、上記水素充填状態の判断を、架台27に収容した水素吸蔵合金ボンベ13を一括して行うか、グループごとに行うか、一本宛個別に行うかのいずれかを採用してなる。
【発明の効果】
【0010】
上記の如く構成するこの発明によれば、燃料水素の供給圧力を周辺技術に相応して安全な圧力に調整することにより、燃料水素供給基地を随所に設置可能となる。また、基地と水素吸蔵合金ボンベとの接続がクイック接続できるようになり、さらに、複数本の水素吸蔵合金ボンベに供給できるので利用者に掛ける負担を大幅に軽減し、異物侵入防止シャッタを付設することにより暴発の防止効果が得られる。また、水素吸蔵合金ボンベへの水素の充填を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る燃料水素供給装置10のキャビネット11の背面を一部剥いで水素ボンベ12と、水素ボンベ12から供給される源圧(一次圧)を所定の供給圧に圧力調整する配管系を示す。図2は同キャビネット11の側面の一部を剥ぎ、供給圧に調整した燃料水素を水素吸蔵合金ボンベ13に供給している状態を示す図、図3は図2における燃料水素供給マウント25に付設された異物侵入防止シャッタ25s部分の拡大図、図4は同じく水素吸蔵合金ボンベ13に燃料水素を供給している状態の正面図、図5は同キャビネット11の背面図である。
【0012】
図1に示すようにこの実施例では、キャビネット11の背面に観音開きの扉14が設けられてあり、この扉14を開いて二本の水素ボンベ12を収容できるようになっており、各ボンベ12から管路15が延び、それぞれ水素ガスの管路15を開閉するバルブ16が設けられ、その下流で合流し一次圧を示す圧力計17を設けている。
【0013】
合流した管路18の途中で二次側圧力が、例えば13MPaになるように設定したレギュレータ19が取付けられ、このレギュレータ19には一次・二次圧を示す圧力計21,22が付設され、二次圧側の管路23はバルブ24を介して燃料水素供給マウント25(図2参照)に繋がっている。なお、キャビネット11の正面には一次管路15と二次管路23から導出管が延びて一次圧力と二次圧力を示す圧力計17,26が設けられている。
【0014】
図2,図3,図4に示すようにキャビネット11の正面下部には水素吸蔵合金ボンベ13の架台27(4列×3段=12個)が設けられ、架台27の下部に燃料水素供給マウント25がそれぞれ配置されている。
【0015】
図3は燃料水素供給マウント25に塵埃あるいは油分などが侵入しないように異物侵入防止シャッタが付設されている。ヒンジによって支持されたシャッタ25sは、水素吸蔵合金ボンベ13の水素受・給プラグ30をトーションスプリングSの付勢に抗して差し込むと開き、抜き取ると閉じる。この図でシャッタ25sは片開きになっているが観音開きとすることもできる。
【0016】
上記架台27は、燃料水素を吸蔵した吸蔵合金が、水素吸蔵量−吸蔵圧力が大きくなるに従って温度上昇することを考慮して、パンチングネット28などの素材を採用して放熱するようにしている。なお、図5はキャビネット11の背面図である。
【0017】
図6(a)は、燃料水素供給マウント25と水素吸蔵合金ボンベ13と(図2参照)をクイック接続する一形態を示し、燃料水素供給マウント25側にソケット29が形成されており、このソケット内に水素吸蔵合金ボンベ側の水素受・給プラグ30が嵌り合い、ソケット29の底部内周に環状凹溝31と凹球面32が形成され、上記環状凹溝31にシールリング33が嵌められ、上方はテーパー段部34になって内径が大きくなり、その上部に、雌形割りテーパー片36が嵌る窪所35が形成されている。なお、ソケット29の底部内周に設けた環状凹溝とシールリングを無しにして、後述する水素受・給プラグの先端外周に環状凹溝を設け、これにシールリングを嵌めるようにしても良い。
【0018】
上記窪所35には下面がテーパーになった雌形割りテーパー片36が嵌り、この雌形割りテーパー片36には円孔37が設けられ、この円孔37には偏心カム38が嵌り、この偏心カム38の回転により雌形割りテーパー片36が水素受・給プラグ30に向かって進退する。
【0019】
一方、水素受・給プラグ30の先端はソケット29の底部(小径部)に嵌り、その先端で球面39を形成し、大径部40の肩部41にはテーパーが形成され、このテーパーの上面に当接した雌形割りテーパー片36の進退により水素受・給プラグ30の先端がソケット29側に押しつけられるようになっている。
【0020】
図6(b)は、上記ソケット29の上面に異物侵入防止シャッタを設けた機構的説明図でソケット29の上方に支点軸Pを設け、この支点軸Pから延びたアームの先端にローラーRを設け、支点軸から斜め下に延びるアームの下端はシャッタ29sのブラケットBに接続(作用点W)される。なお、作用点Wのアームの孔はシャッタを水平に移動させるために長孔にしてある。
【0021】
このように構成するシャッタ29sはプラグ30が差し込まれるとローラーRが押えられ支点軸を中心にアームが矢印の方向に回りシャッタが開き、プラグを抜き去ると自動的の閉じることとなる。ここで、支点軸Pにはトーションスプリングを設けてもよく、作用側のアームを絶えず振り上げ状態にして自動的に閉じるようにすることもできる。
【0022】
図7(a)は、別のソケット29と水素受・給プラグ30(図6(a)参照)とのクイック接続形態で、水素受・給プラグ30の外周に環状凹溝42aを形成し、ソケット29の内面にプランジャー43が嵌まる複数個の穴44を設け、この穴44に押しバネ45を介してボールプランジャー46を装入したものである。
【0023】
また、図7(b)は、さらに別のソケット29と水素受・給プラグ30(図6(a)参照)とのクイック接続形態で、水素受・給プラグ30の外周に環状V形凹溝42bを形成し、ソケット29の内面にプランジャー43が嵌まる複数個の穴44を設け、この穴44に押しバネ45を介して屈折リンクプランジャー47を装入したものである。
【0024】
上記二つの形態では、押しバネの付勢に抗して水素受・給プラグを押し込むと、環状半円凹溝にボールプランジャーが嵌まるか、環状V形凹溝に屈折リンクプランジャーが嵌って水素受・給プラグを押し込んだ状態が維持され、外すときは押しバネの付勢に抗して水素受・給プラグを引き抜くことができる。
【0025】
また、別のクイック接続機構として水素受・給プラグとソケットとの間にバヨネットマウントを構成することもできる。
【0026】
図8は、燃料水素を充填した水素吸蔵合金ボンベ13を電動車椅子50の架台51に装填している状態を示す。この場合においても、上記実施の形態のソケット29と水素受・給プラグ30とのクイック接続を適用することができる。
【0027】
図9は、水素吸蔵合金ボンベ13への満充填制御あるいは、燃料水素充填時の水素吸蔵合金ボンベ13の温度上昇抑制のための回路図を示し、架台27には水素吸蔵合金ボンベ13の表面温度を検出する温度センサTrが付設され、二次管路23の各段の分岐部にはソレノイドバルブSvが付設され、各分岐管には圧力センサ52が付設されている。
【0028】
上記温度センサTrの出力と圧力センサ52の出力は制御・演算装置に入力され、予め演算装置に書き込まれたデータと比較演算されて水素吸蔵合金ボンベ13が満充填されたことを判断しソレノイドバルブSvを閉じるとともに、必要ならば警報器53により満充填を報知するようにできる。また、燃料水素を充填するとき水素吸蔵合金ボンベ13の温度が上昇すると充填効率が低下し、かつ安全性が阻害されるので設定された温度以上になると制御装置から指令が出されてファンモータが作動するようになっている。なお、上記制御・演算装置の電源は、商用電源、太陽光発電・燃料電池など適宜採用することができる。
【0029】
また簡易で安価な満充填制御手段として、上記圧力センサ52の代わりに外気温センサ100を設置し(図9参照)、水素吸蔵合金ボンベ側の温度センサTrと外気温センサ100の両出力とを制御・演算装置に入力し、両者の差がゼロになると満充填と判断し水素供給を停止するものを採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したようにこの発明によれば、燃料水素の供給圧力を周辺技術に相応して安全な圧力に調整することにより、燃料水素供給基地を随所に設置可能となり、燃料水素供給側と水素吸蔵合金ボンベとの接続、あるいは水素吸蔵合金ボンベと燃料水素の消費側との接続がクイックリーに行うことができ、暴発の防止効果も得られ、燃料水素の水素吸蔵合金ボンベへの充填が効率よく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る装置の一部を剥いだ背面図
【図2】同側面図
【図3】同シャッタ部を拡大した(a)正面図、(b)側面図
【図4】同正面図
【図5】同背面図
【図6】(a)クイック接続の機構図(その1)、(b)同シャッタ機構図
【図7】(a)同その2、(b)同その3
【図8】本発明を電動車椅子に適用した例の説明図
【図9】本発明に係る装置満充填制御回路図
【符号の説明】
【0032】
10 燃料水素供給装置
11 キャビネット
12 水素ボンベ
13 水素吸蔵合金ボンベ
14 扉
15 管路
16 バルブ
17 圧力計(一次)
18 合流後の管路
19 レギュレータ(圧力調整器)
21 圧力計(一次)
22 圧力計(二次)
23 管路(二次)
24 バルブ
25 燃料水素供給マウント
25s,29s シャッタ
26 圧力計(二次)
27 架台
28 パンチングネット
29 ソケット
30 水素受・給プラグ
31 環状凹溝
32 凹球面
33 シールリング
34 テーパー段部
35 窪所
36 雌形割りテーパー片
37 円孔
38 偏心カム
39 球面
40 大径部
41 肩部
42a 環状凹溝
42b 環状V形凹溝
43 プランジャー
44 穴
45 押しバネ
46 ボールプランジャー
47 屈折リンクプランジャー
50 電動車椅子
51 架台
52 圧力センサ
53 警報器
100 外気温センサ
B ブラケット
Fm ファンモータ
P 支点軸
R ローラー
S トーションスプリング
Sv ソレノイドバルブ
Tr 温度センサ
W 作用点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の燃料である水素の供給圧力を所定圧力に調整する圧力調整器(19)を備えた水素供給源と、上記水素供給源に複数の水素吸蔵合金ボンベ(13)を一括して繋ぐことができる接続部とからなり、上記水素供給源と上記水素吸蔵合金ボンベ(13)との接続をクイック接続機構としてなる燃料水素供給装置。
【請求項2】
上記クイック接続機構は、水素吸蔵合金ボンベ(13)側に設けた水素受・給プラグ(30)と、水素供給源側に設けたソケット(29)とからなり、上記水素受・給プラグ(30)は上記ソケット(29)内に嵌り合い、ソケット(29)の内周またはプラグの外周に嵌められたシールリング(33)に接して気密に接続され、ソケット(29)と水素受・給プラグ(30)との間に両者の着脱機構を設けてなる請求項1に記載の燃料水素供給装置。
【請求項3】
上記燃料水素供給装置10の水素吸蔵合金ボンベ(13)を収容する架台(27)には、水素吸蔵合金ボンベ(13)を斜め下向きに誘導する収容部が開口し、この開口から水素受・給プラグ(30)部分を斜め下向きにして水素吸蔵合金ボンベ(13)を落とし込むことによりをクイック接続するようにした請求項1または2に記載の燃料水素供給装置。
【請求項4】
上記燃料水素供給マウント(25)またはソケット(29)に異物侵入防止シャッタ(25s,29s)を設けてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料水素供給装置。
【請求項5】
水素吸蔵合金ボンベ(13)の表面温度を計測する温度センサ(Tr)と、上記ソケット(29)の直前の供給水素圧力を計測する圧力センサ(52)との出力を演算装置に入力し、この入力と予め演算装置に書き込んだデータとを比較して水素充填状態を判断し、水素供給を遮断および/または警報を発するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料水素供給装置。
【請求項6】
上記水素充填状態の判断を、架台(27)に収容した水素吸蔵合金ボンベ(13)を一括して行うか、グループごとに行うか、一本宛個別に行うかのいずれかを採用してなる請求項5に記載の燃料水素供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−187174(P2007−187174A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3338(P2006−3338)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】