燃料集合体
【課題】可燃性毒物の含有量を低減することができて燃料経済性を向上できる燃料集合体を提供する。
【解決手段】燃料集合体1は、チャンネルボックス1内に複数の燃料棒2を10行10列に配置し、ガドリニアを有する複数の燃料棒G、および複数の部分長燃料棒Pを有する。燃料集合体1は、下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%、上部領域の横断面の平均濃縮度が約4.7wt%である。最外層の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに約5.6wt%である。燃料集合体1における横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、上部領域で1.19、下部領域で1.22となり、(1)式を満足する。
【数1】
【解決手段】燃料集合体1は、チャンネルボックス1内に複数の燃料棒2を10行10列に配置し、ガドリニアを有する複数の燃料棒G、および複数の部分長燃料棒Pを有する。燃料集合体1は、下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%、上部領域の横断面の平均濃縮度が約4.7wt%である。最外層の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに約5.6wt%である。燃料集合体1における横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、上部領域で1.19、下部領域で1.22となり、(1)式を満足する。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体に係り、特に、沸騰水型原子炉に用いるのに好適な燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉の炉心には、複数の燃料集合体が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質(例えば、酸化ウラン)を含む複数の燃料ペレットを封入した複数の燃料棒、燃料棒の上端部を支持する上部タイプレート、燃料棒の下端部を支持する下部タイプレート、燃料棒間の間隔を保持する複数の燃料スペーサおよび四角筒であるチャンネルボックスを有する。チャンネルボックスは、上端部が上部タイプレートに取り付けられて下部タイプレートに向って伸びており、複数の燃料スペーサによって束ねられた複数の燃料棒を取り囲んでいる。
【0003】
原子炉出力を制御するために、複数の制御棒が炉心内に挿入されている。また、燃料集合体内の一部の燃料棒は、燃料ペレット内に可燃性毒物(例えば、ガドリニア)を含んでいる。制御棒および可燃性毒物は、核燃料物質の核分裂によって余分に発生した中性子を吸収する。可燃性毒物は、中性子の吸収により中性子を吸収しにくい物質に変わっていく。このため、炉心内に装荷された新燃料集合体(燃焼度が0GWd/tの燃料集合体)に含まれた可燃性毒物は、新燃料集合体が炉心に装荷されてから原子炉の或る運転期間が経過すると消滅する。可燃性毒物が消滅した燃料集合体は、核燃料物質が燃焼するにつれて反応度が単調に減少していく。炉心内に滞在した運転サイクル数が異なる複数の燃料集合体が炉心に装荷されているので、炉心全体として原子炉の運転期間を通して臨界状態が維持される。
【0004】
燃料集合体内の濃縮度分布は、特開平5−142370号公報に記載されているように、出力ピーキングを平坦化する観点から、燃料集合体横断面における燃料棒配列の最外層に配置された各燃料棒、特に、コーナー部に配置された燃料棒の濃縮度を低くし、最外層よりも内側に配置された各燃料棒の濃縮度を高めている。ガドリニアを含む燃料棒は、最外層を除いた位置に配置される。
【0005】
燃料集合体の燃料経済性を向上させる観点から、外周ピーク型の燃料集合体が提案されている。外周ピーク型の燃料集合体は、燃料集合体横断面における燃料棒配列の最外層の平均濃縮度が最外層よりも内側の領域の平均濃縮度よりも高くなっている。炉心内で燃料集合体間に形成される水ギャップに隣接する最外層の平均濃縮度を高くすることによって、燃料集合体の無限増倍率を大きくして燃焼度を増大させることができ、燃料経済性を向上させることができる(特開平5−27068号公報参照)。燃料集合体横断面における出力分布の外周ピークは、熱中性子束の大きい最外層に配置された各燃料棒のウラン235の含有量を増やすことに相当し、中性子利用効率を向上させる。さらに、燃料棒配列を8行8列から9行9列にすることによって、燃料棒の平均の線出力密度が低下するので、上記外周ピークを利用することができる。
【0006】
特開平10−170674号公報に記載されている燃料集合体は、軸方向の出力ピーキングが小さくなる上端部および下端部に可燃性毒物を含まない領域を形成し、この可燃性毒物を含まない上端部の領域において最外層に配置した燃料棒の平均濃縮度を最外層以外の領域に配置した燃料棒の平均濃縮度よりも大きくすることにより、外周ピークを利用している。
【0007】
特開昭58−26292号公報に記載されている燃料集合体は、最外層に配置された全燃料棒の平均濃縮度を燃料集合体横断面の平均濃縮度よりも大きくすることにより、燃料経済性を向上させている。その横断面内での最外層のピーキングの増大分については、ボイド率の増大により出力が低下する燃料集合体の上部において濃縮度を増大することにより、軸方向ピーキングを低下させることで燃料集合体全体のピーキングを平坦化して対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−142370号公報
【特許文献2】特開平5−27068号公報
【特許文献3】特開平10−170674号公報
【特許文献4】特開昭58−26292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
燃料経済性の向上のためには、燃料集合体の横断面における平均濃縮度を増加しないで、燃料集合体の反応度を向上させる必要がある。燃料集合体の横断面の平均濃縮度を増加させないで燃料集合体の反応度を向上させるには、外周ピーク型の濃縮度分布が考えられる、外周ピーク型の燃料集合体は、燃焼度0GWd/tの新燃料集合体の状態で炉心に装荷された1サイクル目の運転サイクルにおいて出力ピーキングが最大となり、ガドリニアが消滅した以降では、核燃料物質が燃焼するにつれて出力ピーキングが小さくなる。一般に、ガドリニアが消滅する前(燃料集合体に対する1サイクル目の運転サイクル)ではガドリニアにより燃料集合体の反応度が抑えられるため、ガドリニアが消滅する前において、燃料集合体の横断面における燃料棒配列の最外層の出力ピーキング(外周ピーキング)が大きくなり燃料集合体の反応度が増大することは望まれない。燃料集合体内のガドリニアが消滅した後、特に、炉心運転末期で反応度が増大する必要がある。炉心運転末期とは、燃料集合体から見ると、燃料集合体の炉心滞在1サイクル目の末期である。これを実現するために発明者らは種々の検討を行った。この結果、発明者らは或る濃縮度を超えた燃料棒を燃料集合体の燃料棒配列の最外層に配置することにより、ガドリニアが消滅する前の期間での燃料集合体の反応度増大量に対して可燃性毒物の消滅後におけるその反応度の増大量を拡大できることを新たに見出した。
【0010】
特開平5−142370号公報、特開平5−27068号公報および特開平10−170674号公報は、燃料集合体の燃焼初期において反応度を抑制することにより、可燃性毒物の消滅後において反応度を増大することを言及していない。
【0011】
特開昭58−26292号公報に記載された燃料集合体は、最外層の燃料棒の出力ピーキングを増大させることによって可燃性毒物が消滅した後の反応度を増大させている。この可燃性毒物が消滅した後の反応度の増大は、燃料集合体の軸方向の濃縮度分布を変えて、燃料集合体の下部領域の出力ピークを低減することにより実現している。
【0012】
本発明の目的は、可燃性毒物の含有量を低減することができて燃料経済性を向上できる燃料集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、核分裂性物質を含み可燃性毒物を含まない複数の第1燃料棒、および核分裂性物質及び可燃性毒物を含む複数の第2燃料棒を有し、燃料集合体の横断面の第1平均濃縮度をx(wt%)、および燃料棒配列の最外層の第2平均濃縮度をe(wt%)としたとき、第1平均濃縮度x(wt%)に対する第2平均濃縮度e(wt%)の比e/xが(1)式を満足していることにある。
【0014】
【数1】
【0015】
比e/xが(1)式を満足しているので、燃料棒に含まれる核分裂性物質の中性子遮へい効果により燃焼度0GWd/tの燃料集合体に含まれる可燃性毒物の含有量を低減することができ、さらに、可燃性毒物が消滅する前における燃料集合体の反応度を抑制でき、可燃性毒物が消滅した後における燃料集合体の反応度を増大させることができる。可燃性毒物が消滅した後における燃料集合体の反応度を増大は、燃料経済性を向上させる。
【0016】
好ましくは、比e/xが(2)式を満足していることが望ましい。
【0017】
【数2】
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃焼度0GWd/tの燃料集合体に含まれる可燃性毒物の量を低減することができ、さらに、燃料経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例1の燃料集合体の横断面図である。
【図2】図1に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図3】図1に示す燃料集合体の縦断面図である。
【図4】ガドリニアを含む燃料集合体およびガドリニアを含まない燃料集合体における燃焼度に対する無限増倍率の変化の一例を示す説明図である。
【図5】従来の燃料集合体に対する本発明の燃料集合体の効果の一例を燃焼度と無限増倍率の差分の関係で示した説明図である。
【図6】燃料集合体の横断面の平均濃縮度をパラメータとし、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比による反応度増量の変化を示す特性図である。
【図7】燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する、本発明の効果が生じる燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比の下限値を示した特性図である。
【図8】燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比に対して、取り出し燃焼度に対する反応度増大効果のピーク位置の燃焼度の比の関係を示す特性図である。
【図9】燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比に対する、反応度増大効果のピーク位置が取り出し燃焼度の半分以上となる燃料集合体の横断面の平均濃縮度の下限値を示す特性図である。
【図10】(1)式を満たすときに得られる効果と、(2)式を満たすときに得られる効果の違いを示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例2の燃料集合体の横断面図である。
【図12】図11に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図13】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例3の燃料集合体の横断面図である。
【図14】図13に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図15】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例4の燃料集合体の横断面図である。
【図16】図15に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図17】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例5の燃料集合体の横断面図である。
【図18】図17に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図19】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例6の燃料集合体の横断面図である。
【図20】図19に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明者らは、燃料集合体の燃料経済性の向上策、すなわち、燃料集合体の可燃性毒物の含有量を減少させて燃料集合体の、可燃性毒物の消滅前における反応度を抑え、燃料集合体の取り出し燃焼度を増大させる(燃料経済性を向上させる)対策について種々の検討を行った。発明者らは、これらの検討の結果、燃料集合体の横断面積の平均濃縮度に対する、燃料集合体の燃料棒配列の最外層の平均濃縮度の比を或る値以上にしたとき、燃料集合体内に可燃性毒物が存在する期間(燃焼初期)における燃料集合体の反応度を抑制し、可燃性毒物が消滅した後の期間において燃料集合体の反応度を増大させることができることを新たに見出した。燃料集合体内に可燃性毒物が存在する期間は、見方を変えると、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅する前の期間である。発明者らが新たに見出した燃料集合体は、燃焼度0GWd/tの燃料集合体における可燃性毒物の含有量を低減することができ、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅する前の期間(以下、第1期間という)で、この燃料集合体の反応度を抑えることができ、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅した後の期間(以下、第2期間という)で、この燃料集合体の反応度を増加させることができる。この反応度の増加は、燃料集合体の取り出し燃焼度を増加させる。上記の検討結果を具体的に説明する。
【0021】
燃焼度が0GWd/tの状態で可燃性毒物であるガドリニアを含まない燃料集合体および0GWd/tの状態でガドリニアを含む燃料集合体のそれぞれにおいて、燃焼度に対する無限増倍率の変化を図4に示す。一般的に、燃焼度0GWd/tの燃料集合体(新燃料集合体)は、余剰反応度を抑えるために可燃性毒物であるガドリニアを含んでいる。ガドリニアは燃焼と共に減少するため、炉心に装荷された新燃料集合体の反応度はガドリニアの燃焼と共に増大する。運転サイクル終了毎に炉心に装荷された一部の燃料集合体(寿命になった使用済燃料集合体)が燃料交換によって新燃料集合体と交換されるため、或る運転サイクルでは、炉内滞在期間が異なる(炉心内に滞在した運転サイクル数が異なる)複数の燃料集合体が炉心内に存在する。このために、その運転サイクルを通しての炉心の余剰反応度の変化は小さくなり、原子炉の反応度制御が容易になる。ただし、新燃料集合体内のガドリニアは、この新燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルの運転が終了した時点でもわずかに残るため、新燃料集合体においてガドリニアの含有量が多くなると、この燃料集合体に対する二つ目の運転サイクルにおいても、この燃料集合体の反応度がわずかに低下する。それゆえに、新燃料集合体におけるガドリニア含有量はできるだけ少なくしなければならない。
【0022】
燃焼度を増加させて核燃料物質(例えば、ウラン)の利用効率を向上させるためには、第1期間における燃料集合体の反応度を抑えながら、第2期間において燃料集合体の反応度を向上させると良い。第1期間において燃料集合体の反応度を抑えて、第2期間において燃料集合体の反応度を増加させるということは、外周ピーク型の燃料集合体が最外層の平均濃縮度が燃料集合体の横断面の平均の濃縮度よりも低い従来型の燃料集合体に対する反応度増大量についての燃焼変化(外周ピーク型燃料集合体の従来型燃料集合体に対する利得(反応度増大量)が核燃料物質の燃焼とともに変化すること)を考慮したときに、第1期間内ではなく、第2期間が開始された時点からある程度燃焼度が増加した時点で燃焼変化のピークが形成されるということを意味している。発明者らは、従来の外周ピーク型燃料集合体と異なり、燃焼度0GWd/tでガドリニアを含んでいる外周ピーク型燃料集合体で、第2期間においてその燃焼変化のピークが形成されるという新たな知見を見出したのである。この燃焼変化のピークが形成されることによって、第1期間内ではなく、第2期間内で、外ピーク型燃料集合体において反応度増大量が最大になる効果が得られ、燃料経済性が向上することになる。炉心の反応度向上において有意となるのは反応度増大量が0.1%Δk以上である。このため、そのピークは、炉心に装荷された外ピーク型燃料集合体が0GWd/tであるときに比べて、0.1%Δk以上でなければならない。具体例は後述する。
【0023】
さらに、一般的に、燃焼度0GWd/tの燃料集合体のガドリニア含有量は、燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルで燃え尽きるように設計され、この運転サイクルの末期ではガドリニアは燃料集合体内にほとんど存在しない。つまり、ガドリニアが消滅した後の反応度増大のためには、外ピーク型燃料集合体がこの燃料集合体に対する二つ目の運転サイクルの運転開始後に反応度が増大していると良い。運転サイクルにおける燃焼度(サイクル燃焼度という)は、原子炉出力、一つの運転サイクルの運転期間、および燃焼度0GWd/tの燃料集合体の燃料装荷量に基づいて決定される。原子炉出力および燃料装荷量を一定としたときに、サイクル燃焼度が大きくなるのは運転サイクルの運転期間を長くしたときである。このとき、炉心に装荷された燃料集合体の取替回数(バッチ数)が小さくなる。前述のように、炉心に滞在した運転サイクル数が異なる燃料集合体が炉心内に存在するので、このバッチ数の最小は2である。バッチ数が2のときは燃焼度0GWd/tの燃料集合体の体数とこの燃料集合体以外の、前の運転サイクルで原子炉の運転を経験した燃料集合体の体数との比は1:1となり、サイクル燃焼度は燃料集合体の取り出し燃焼度の半分になる。このサイクル燃焼度は、1つの運転サイクルにおける中期の平均燃焼度と同等である。これにより、少なくとも取り出し燃焼度の半分の燃焼度の時点で、第1期間内よりも反応度の増大があることが望ましい。
【0024】
そこで発明者らは、第1期間において燃料集合体の反応度を低下させるために下記の対策を新たに考えついた。この対策によって第2期間における燃料集合体の反応度を増大させ、ウランの利用効率を向上させることができた。なお、ウラン235の最大濃縮度は、原子力プラントで用いる濃縮度の範囲という観点から10wt%未満である。
【0025】
発明者らが新たに見出した対策は、或る濃縮度以上でかつ燃料集合体の横断面の平均濃縮度以上の濃縮度を有する燃料棒を、燃料集合体の横断面での燃料棒配列の最外層に配置することである。炉心内で燃料集合体間に形成される水ギャップに面している、その燃料棒配列の最外層での中性子スペクトルは、最外層よりも内側の領域に比べて柔らかいので、最外層では、中性子の平均自由行程が短く、上記の中性子スペクトルで縮約した、燃料ペレットの表面部での核分裂断面積が大きくなる。このため、燃料棒内に存在する各燃料ペレットの表面において、核燃料物質に含まれた核分裂性物質(例えば、U−235)が燃焼する特徴がある。燃料ペレットの表面部の核分裂性物質量が増大すると、燃料ペレット内部に減速された中性子が到達しにくくなる。燃料ペレットの濃縮度の増大は、燃料ペレットの単位体積あたりの核分裂性物質量の増大をもたらし、燃料ペレット表面部に存在する核分裂性物質による中性子遮へい効果により、減速された中性子が燃料ペレット内部にさらに到達しにくくなる。燃料集合体横断面の燃料棒配列の最外層に配置される燃料棒の濃縮度を、公知の外周ピーク型燃料集合体の最外層に配置される燃料棒のそれよりも高めることにより、第1期間では、最外層に配置される燃料棒において、核分裂性物質による中性子遮へい効果により、燃料ペレットの表面部で核分裂が行われ、燃料ペレットの中心部での核分裂が抑制される。最外層に配置された燃料棒の燃料ペレット表面部の核分裂性物質が燃焼してその表面部の核分裂性物質の量が少なくなる燃料集合体内の可燃性毒物が消滅した後では、減速した中性子が、より燃料ペレットの中心側に到達しやすくなり、燃料ペレットの中心部での核分裂が活発化される。したがって、最外層に配置される燃料棒の濃縮度を増大させて核燃料物質の中性子遮へい効果を利用することによって、燃料集合体の可燃性毒物の含有量を低減しても、第1期間において燃料集合体の反応度を抑え、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅した以降において燃料集合体の反応度を増加させることができる。
【0026】
発明者らは、外周ピーク型ではない従来の燃料集合体、および従来の外周ピーク型燃料集合体の最外層の平均濃縮度をさらに増大させた本発明の外周ピーク型燃料集合体に対して具体的な平均濃縮度を与え、本発明の外周ピーク型燃料集合体の無限増倍率と従来の燃料集合体の無限増倍率の差分の、燃焼度による変化を検討した。従来の燃料集合体の一例において、この燃料集合体の平均濃縮度が4.5wt%であり、最外層の平均濃縮度が4.0wt%、および最外層よりも内側の領域の平均濃縮度が4.82wt%である。本発明の外周ピーク型燃料集合体の一例において、この燃料集合体の平均濃縮度が従来の外周ピーク型燃料集合体と同じ4.5wt%であり、最外層の平均濃縮度が5.27wt%、および最外層よりも内側の領域の平均濃縮度が4.0wt%である。従来の燃料集合体では、横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が0.9であり、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.17である。ちなみに、特開昭58―26292号公報に記載された外周ピーク型の燃料集合体では、上部の横断面の平均濃縮度が3.08wt%であり、この上部の横断面では前述の比が1.13となる。本発明の外周ピーク型燃料集合体では、横断面の平均濃縮度が3wt%である場合には、その比が1.4よりも大きくなる。検討の対象にした従来の燃料集合体および本発明の外周ピーク型燃料集合体は、共に、ガドリニアを含んでいない。
【0027】
発明者らは、これらの燃料集合体を炉心に装荷して各燃料集合体内の核分裂性物質を燃焼させたときにおける、上記した無限増倍率の差分の、燃焼度に対する変化を求めた。この結果を図5に示す。この結果は、チャンネルボックス内の平均ボイド率が炉心平均ボイド率である40%としたときのものである。図5において、縦軸は、本発明の外周ピーク型燃料集合体の無限増倍率から従来の燃料集合体(外周ピーク型ではない)の無限増倍率を差し引いて得られる無限増倍率の差分を示している。横軸は各燃料集合体の燃焼度である。最外層に配置される燃料棒の濃縮度を高くすることによって、燃料集合体の横断面の平均濃縮度を変えることなく燃料集合体の反応度を向上させることができる。本発明の外周ピーク型燃料集合体では、実線で示すように、炉心に装荷された0GWd/tの時点の反応度増大量に対して、燃焼されて無限増倍率の差分がピークになる位置での反応度増大量が0.1%Δk以上になっている。さらに、平均濃縮度4.5wt%の燃料集合体の取り出し燃焼度の約半分である25GWd/tにおいても、無限増倍率の差分が向上している。
【0028】
図5において、点線は従来の外周ピーク型燃料集合体の特性である。本発明の外周ピーク型燃料集合体の横断面の平均濃縮度が従来の外周ピーク型燃料集合体の横断面の平均濃縮度よりも高く、本発明の外周ピーク型燃料集合体の最外層の平均濃縮度が従来の外周ピーク燃料集合体の最外層の平均濃縮度よりも高くなっている。このため、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、従来の外周ピーク型燃料集合体よりも、燃料棒内の燃料ペレットの表面部における核分裂性物質による中性子遮へい効果が大きくなる。従って、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、燃焼度0GWd/tから燃焼度50GWd/tまでの期間において無限増倍率の差分が従来の外周ピーク型燃料集合体よりも大きくなり、しかも、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、無限増倍率の差分がピークになる位置での反応度増大量が0.1%Δk以上になっている。これに対し、従来の外周ピーク型燃料集合体では、そのような無限増倍率の差分のピークが形成されない。
【0029】
さらに、発明者らは、可燃性毒物の濃度を減少して、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)で反応度を抑えて、第2期間(可燃性毒物が消滅した後)で反応度を増大できる濃縮度の範囲について検討した。前述のように、外周ピーク型でない従来の燃料集合体の一般的な濃縮度分布では、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層に配置された複数の燃料棒の平均濃縮度の比が約0.9であるので、この濃縮度分布を基準として、燃料集合体の横断面の平均濃縮度を3wt%、4,5wt%および6.5wt%の3種類に変え、それぞれの燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対して最外層の平均濃縮度を変えたときの無限増倍率の増大量の変化について検討がなされた。この無限増倍率の増大量を反応度増大量とし、それらの燃料集合体が新燃料集合体(0GWd/t)として炉心に装荷されて一つ目の運転サイクルでの原子炉の運転が開始された時点から最大となる反応度とその運転開始時点での新燃料集合体の反応度の差である反応度増大量を、3種類の燃料集合体の横断面の平均濃縮度ごとに、図6に示した。横軸は、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比を表している。反応度増大量が0.1%Δk未満であれば、反応度増大量のピークが、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体に対する第1期間、すなわち、可燃性毒物であるガドリニアが消滅する前の期間に形成される。反応度増大量が0.1%Δk以上であれば、反応度増大量のピークが、第2期間、すなわち、炉心に装荷された燃料集合体に含まれたガドリニアが消滅した後に現れる。
【0030】
炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が3.0wt%である場合には、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.43未満であれば、反応度増大量のピークがその燃料集合体に対する第1期間に出現する。この場合には、横断面の平均濃縮度が3.0wt%の燃料集合体に含まれたガドリニアが消滅した後である第2期間では、最大となる反応度増大量が燃料集合体の第1期間に比べて有意でなくなる。燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が3.0wt%の場合においても、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.43以上になると、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少して、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)において反応度を抑えることができ、可燃性毒物が消滅した後である第2期間において反応度を増大することができる。燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が4.5wt%である場合には、そのが1.13以上になると、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少して、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)において反応度を抑えることができ、可燃性毒物が消滅した後である第2期間において反応度を増大することができる。燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が6.5wt%の場合では、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.04以上となると、それらの効果を得ることができる。
【0031】
そこで、発明者らは、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する上記の効果(可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で反応度を抑えられ、第2期間で反応度を増大できる)が現れる最外層の平均濃縮度の比の下限値について検討を行った。この結果、燃料集合体の横断面の平均濃縮度をx(wt%)、およびその燃料集合体の最外層の平均濃縮度をe(wt%)としたとき、図7に示す燃料集合体の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比(e/x)と平均濃縮度x(wt%)の関係が得られた。図7に示す特性は、(3)式で表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
(3)式で求められる比e/xが、上記の効果(可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で反応度を抑えられ、第2期間で反応度を増大できる)が現れる、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比の下限値を表している。(3)式は、横軸の平均濃縮度x(wt%)が高濃縮度(7wt%以上)になると、縦軸の比e/xが1以下になることを示している。最外層の平均濃縮度が燃料集合体の横断面の平均濃縮度よりも小さいこの状態でも、上記した可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で反応度を抑えられ、第2期間で反応度を増大できるという効果が生じる。これは、燃料集合体の横断面の平均濃縮度が7wt%以上と高くなり、最外層に配置された燃料棒および最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒を問わず、それぞれの燃料棒内の燃料ペレット表面部に存在する核分裂性物質による中性子遮へい効果により、減速された中性子が燃料ペレットの中心部に到達しにくくなるからである。特に、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒の濃縮度が最外層に配置された燃料棒の濃縮度よりも高く、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒の周囲に存在する水の量は最外層に配置された燃料棒の周囲に存在する水の量に比べて少ないので、燃料ペレット表面部の核分裂性物質による中性子遮へい効果と相俟って、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒では燃料ペレットの中心部に中性子がさらに到達しにくくなり、燃料ペレットの中心部における核分裂性物質の利用効率が低下する。これに対し、最外層に配置された燃料棒では、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒よりも濃縮度が低い分、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒よりも燃料ペレットの表面部での中性子遮へい効果が小さくなり、且つ水ギャップから入射される熱中性子が多いため、最外層の反応度が最外層よりも内側の領域でのそれよりも高くなる。このため、平均濃縮度x(wt%)が7wt%以上で比e/xが1以下である燃料集合体は、実質的に本発明の外周ピーク型燃料集合体として機能するため、可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で燃料集合体の反応度を抑えることができ、第2期間で燃料集合体の反応度を増大することができる。結果的に、平均濃縮度x(wt%)が7wt%以上になり、比e/xが1以下になる場合であっても、燃料集合体の可燃性毒物の含有量を低減することができ、且つ燃料経済性が向上する。
【0034】
最外層に配置された燃料棒内の燃料ペレット表面部での核分裂性物質の中性子遮へい効果を利用することにより、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)において反応度を抑えることができ、第2期間において反応度を増大することができるという効果を得るためには、比e/xが前述の(1)式の関係を満足する必要がある。ここで、前述の(1)式を、再度、記載する。
【0035】
【数4】
【0036】
次に、発明者らは、炉心に装荷された、燃焼度が0GWd/tの本発明の外周ピーク型燃料集合体の反応度に比べて0.1%Δk以上の反応度の増大が得られるピークが、この燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルの後の運転サイクル(例えば、二つ目の運転サイクル)において得られる範囲を検討した。燃料集合体の横断面の平均濃縮度3wt%、4.5wt%および6.5wt%のそれぞれにおいて、一般的な取り出し燃焼度に対する図5に示された反応度のピークが生じる燃焼度の比を、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比との関係で、図8に示した。炉心に装荷された燃料集合体が2バッチで交換される場合には、炉心に装荷された新燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルがこの燃料集合体の取り出し燃焼度の半分(0.5)になったときに終了する。このため、取り出し燃焼度の半分(0.5)を超える燃焼度の範囲で反応度増大量のピークが形成されることが望ましい。燃料集合体の横断面の平均濃縮度が高くなるほど、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度が低くなっても、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間において反応度を抑えることができ、第2期間において反応度を増大させることができる。また、或る横断面平均濃縮度において、(1)式の実線上の最外層平均濃縮度と、図8において取出燃焼度に対するピーク位置の燃焼度の比が0.5となるときの最外層平均濃縮度を比較すると、後者の最外層平均濃縮度が高くなる。
【0037】
燃料集合体の取り出し燃焼度の半分(0.5)を超える燃焼度の範囲で核分裂性物質による中性子遮へい効果により反応度増大量のピークが形成される場合における比e/xの下限値は、図9に示す破線のようになる。この破線で示された燃料集合体の横断面の平均濃縮度x(wt%)と比e/xの関係は、(4)式で表される。
【0038】
【数5】
【0039】
燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比e/xが(4)式で求められる値以上、すなわち、前述の(2)式を満足すれば、上記した本発明の効果はさらに増大することになる。前述の(2)式を、再度、記載する。
【0040】
【数6】
【0041】
ここで、(1)式を満足する場合と(2)式を満足する場合において得られるそれぞれの効果の違いを、図10を用いて説明する。図10に示された実線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲を除く)」は、図9に示された実線と破線の間の範囲である。炉心に装荷される新燃料集合体は、余剰反応度を抑えるために可燃性毒物を含んでいる。新燃料集合体が可燃性毒物(例えば、ガドリニア)を含むので、燃焼度と前述の無限増倍率の差分の関係は、実線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲を除く)」が一点鎖線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲を除く)+Gd追加」のようになり、破線で示す「(2)式の範囲」が点線で示す「(2)式の範囲+Gd追加」のようになる。これらの特性は、(1)式及び(2)式で得られるピークの高さが同じである状態で1つの運転サイクルの期間を20GWd/t(20GWd/tでガドリニアが消滅)としてガドリニアを含んだ燃料集合体に対するものである。(1)式の場合ではガドリニアの追加によってピークの値が減少するが、(2)式の場合はガドリニアの追加によってもピークの値はそれほど減少しない。
【0042】
以上の説明をさらに具体的に説明する。「(1)式の範囲((2)式の範囲は除く)」の実線と「(2)式の範囲」の破線のそれぞれのピークの高さは同じである。つまり、従来燃料集合体に対しての利得効果はこの段階では同じに見える。しかし、実際に、本発明の外周ピーク型燃料集合体にはGdが追加されるので、図10に点線で示された「(2)式の範囲+Gd追加」のように、燃焼度に対して無限増倍率の差分が変化する。このとき、ピークの高さを比べると破線で示す「(2)式の範囲」のほうが高くなる。つまり、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、「(2)の式の範囲」を適用したときに燃焼度増大効果が大きくなる。図10図においては、「(1)式の範囲((2)式の範囲は除く)+Gd追加」および「(2)式の範囲+Gd追加」では、燃焼度が0GWd/tの時点でのガドリニアによる抑制は、従来型の燃料集合体と同等になっている。燃焼度0GWd/tの時点に着目すると、破線で示す「(2)式の範囲」の無限増倍率の差分が、実線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲は除く)」のそれよりも小さいので、「(2)式の範囲」ではガドリニアの添加量が少なくなっている。このため、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Aに含まれるガドリニア量(可燃性毒物量)を減少することができ、可燃性毒物の消滅前において反応度がさらに抑制され、可燃性毒物の消滅後では反応度がより増大することができる。
【0043】
さらに、発明者らは、最外層に出力ピークが偏ることによって起こる熱的余裕の低下の改善策について検討した。熱的余裕の低下は、チャンネルボックス内を流れる気液二相流に接触する燃料棒の表面において、その表面を覆っている液膜が薄くなることによって起きる。特に、出力が大きな燃料棒ではその液膜が薄くなる。燃料棒表面における液膜は、燃料棒の上部で形成されやすい。このため、燃料棒において、熱的余裕が最も厳しくなる位置は気液二層流の流れ方向で下流側となる。そこで、燃料棒の上部における出力ピークの偏りを改善して熱的余裕を向上するためには、最外層に配置された燃料棒において燃料集合体上部で濃縮度を低下させるか、または最外層に配置された燃料棒を部分長燃料棒として燃料集合体、上部では発熱しない(燃料棒が存在しない)状態にすることが望ましい。
【0044】
以上の検討結果を反映した本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0045】
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例1の燃料集合体を、図1、図2および図3を用いて詳細に説明する。
【0046】
本実施例の燃料集合体1は、図3に示すように、複数の燃料棒2、2本の水ロッド5、下部タイプレート6、上部タイプレート7、複数の燃料スペーサ8およびチャンネルボックス9を備えている。燃料棒2は、複数の燃料ペレット(図示せず)を密封された被覆管(図示せず)内に充填している。下部タイプレート6は各燃料棒2の下端部を支持し、上部タイプレート5は各燃料棒2の上端部を保持する。これらの燃料棒2は、図1に示すように、燃料集合体1の横断面において10行10列に配置されている。その横断面の中央部には、燃料棒2が4本配置できる領域を占有する横断面積を有する2本の水ロッド5が配置されている。これらの水ロッド5の下端部は下部タイプレート6に支持され、それらの上端部は上部タイプレート7に保持される。複数の燃料スペーサ8は、燃料集合体1の軸方向において所定の間隔に配置され、燃料棒2の相互間、および燃料棒2と水ロッド5の間に、冷却水が流れる流路を形成するように、燃料棒2および水ロッド5を保持している。横断面が正方形状をしている角筒であるチャンネルボックス9は、上部タイプレート7に取り付けられ、下方に向かって伸びている。燃料スペーサ8によって束ねられた各燃料棒2は、チャンネルボックス9内に配置されている。なお、チャンネルボックス9の外幅は約15cm、燃料棒2の外径は約1.0cm、および水ロッド5の外径は約2.5cmである。水ロッド5は、少なくとも2本の燃料棒2が配置可能な領域を占有する横断面積を有する太径水ロッドである。本実施例における燃料棒2に核分裂性ウランを含む燃料ペレットが装填された領域の軸方向の長さ、つまり燃料有効長は3.7mである。
【0047】
燃料集合体1は、沸騰水型原子炉の炉心に装荷されたとき、一つのコーナーが炉心に挿入された横断面が十字形をしている制御棒CRと向かい合うように配置される。チャンネルボックス9は、チャンネルファスナ(図示せず)によって上部タイプレート7に取り付けられる。チャンネルファスナは、燃料集合体1が炉心に装荷されたとき、制御棒CRが燃料集合体1の相互間に挿入できるように、燃料集合体1の相互間に必要な幅の間隙を保持する機能を有する。このため、チャンネルファスナは、制御棒CRと向かい合うコーナーに位置するように、上部タイプレート7に取り付けられている。燃料集合体1の制御棒CRに向かい合うコーナー部は、換言すれば、チャンネルファスナが取り付けられたコーナー部である。
【0048】
各燃料棒2内に充填される各燃料ペレットは、核燃料物質である二酸化ウランを用いて製造され、核分裂性物質であるウラン−235を含んでいる。燃料集合体1内の複数の燃料棒2は、ウランを含み可燃性毒物であるガドリニアを含まない複数の燃料棒(以下、ウラン燃料棒という)3、およびウランおよびガドリニアを含む複数の燃料棒(以下、可燃性毒物含有燃料棒という)4を含んでいる。可燃性毒物含有燃料棒4は、燃料ペレットがガドリニアを含んでいる。可燃性毒物含有燃料棒4以外は、ウラン燃料棒3である。92本の燃料棒2のうち、79本がウラン燃料棒3であり、残りの13本が可燃性毒物含有燃料棒4である。燃料集合体1は、図1に示すように、燃料棒2として、燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPを含んでいる。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびPがウラン燃料棒3であり、燃料棒Gが可燃性毒物含有燃料棒4である。なお、燃料棒Pは部分長燃料棒である。可燃性毒物含有燃料棒4は、最外層に配置されていなく、外側から二層目、三層目および四層目にそれぞれ配置されている。
【0049】
燃料集合体1は、燃料有効長の上端部および下端部にブランケット領域を有し、上端部と下端部の両ブランケット領域の間に濃縮ウラン領域を有している。両ブランケット領域は、濃縮ウランではなく天然ウランが充填されている。ブランケット領域にはガドリニアが含まれていなく、濃縮ウラン領域にはガドリニアが含まれている。
【0050】
燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびPがウラン燃料棒3の濃縮度分布を、図21を用いて詳細に説明する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPは、燃料有効長の下端部に天然ウランが充填された天然ウラン領域NUを有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGは、燃料有効長の上端部に天然ウランが充填された天然ウラン領域NUを有する。燃料棒Gは、濃縮ウラン領域に可燃性毒物であるガドリニアを含んでいる。燃料棒U1,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は3.95wt%である。燃料棒U2,U3,U4およびU5のそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は、5.3wt%、4.6wt%、3,4wt%および6.9wt%である。
【0051】
燃料集合体1は、濃縮ウラン領域の横断面において部分長燃料棒Pが存在する濃縮ウラン領域の下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%であり、部分長燃料棒Pが存在しない濃縮ウラン領域の上部領域の横断面の平均濃縮度が約4.7wt%である。濃縮ウラン領域の下部領域は、燃料有校長の下端から1L/24の位置と燃料有校長の下端から14L/24の位置の間に存在する。Lは燃料有校長の軸方向の長さである。濃縮ウラン領域の上部領域は、燃料有校長の下端から14L/24の位置と燃料有校長の下端から23L/24の位置の間に存在する。燃料集合体1の燃料棒配列の最外層に配置された燃料棒の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに約5.6wt%である。燃料集合体1における濃縮ウラン領域の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、燃料集合体1の上部領域で1.19、燃料集合体1の下部領域で1.22となる。燃料集合体1は外周ピーク型燃料集合体である。
【0052】
燃料集合体1における濃縮ウラン領域の下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1における濃縮ウラン領域の下部領域の比e/xは1.12である。このため、燃料集合体1における濃縮ウラン領域の下部領域の比e/xである1.22は、(3)式で求められた比e/x(1.12)よりも大きく、(1)式を満たしている。燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の横断面の平均濃縮度4.7wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の比e/xは1.11である。このため、燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の比e/xである1.19は、(3)式で求められた比e/x(1.11)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0053】
本実施例によれば、(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1に含まれるガドリニア量を減少することができ、第1期間(燃料集合体1内のガドリニアが消滅する前)における燃料集合体1の反応度を抑制することができ、さらに、第2期間(燃料集合体1内のガドリニアが消滅した後)における燃料集合体1の反応度を増大させることができる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1の反応度に対して、(1)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.14%Δk増大することができる。これにより、本実施例の燃料集合体1は、取り出し燃焼度を約2%増大させることができ、ウランの利用効率を2%向上することができる。
【実施例2】
【0054】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例2の燃料集合体を、図11及び図12を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Aは、実施例1の燃料集合体1において燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度を変えた構成を有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が、図12に示すように、6.3wt%、5.7wt%、4.5wt%、3.2wt%、9.0wt%、6.3wt%および6.3wt%になっている。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの燃料集合体1Aの横断面における配置は、燃料集合体1の横断面における配置と同じである。燃料集合体1Aの他の構成は燃料集合体1と同じである。
【0055】
本実施例では、濃縮ウラン領域の横断面において部分長燃料棒Pが存在する下部領域の横断面の平均濃縮度、および部分長燃料棒Pが存在しない上部領域の横断面の平均濃縮度が、共に、約6.4wt%である。燃料集合体1Aの燃料棒配列の最外層に配置された燃料棒の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに6.6wt%である。燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、燃料集合体1Aの上部領域および下部領域でそれぞれ約1.031となる。燃料集合体1Aは外周ピーク型燃料集合体である。
【0056】
燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の横断面の平均濃縮度6.4wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xは1.030である。このため、燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xである1.031は、(3)式で求められた比e/x(1.030)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0057】
本実施例は、燃料集合体1Aの横断面の平均濃縮度を増大させて高燃焼度化するとともに、ウランの利用効率を図った構成を有する。本実施例も、(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Aに含まれるガドリニア量を減少することができ、第1期間における燃料集合体1Aの反応度を抑制することができ、さらに、第2期間における燃料集合体1Aの反応度を増大させることができる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1Aの反応度に対して、(1)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.1%Δk増大することができる。これにより、本実施例の燃料集合体1Aは、取り出し燃焼度を約1%増大させることができ、ウランの利用効率を1%向上することができる。さらに、本実施例では、実施例1よりも燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が小さくなるので、最外層における出力ピークを実施例1よりも低減できる。
【実施例3】
【0058】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例3の燃料集合体を、図13及び図14を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Bは実施例1の燃料集合体1において燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度を変えた構成を有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が、図12に示すように、5.5wt%、7.8wt%、6.8wt%、5.4wt%、9.5wt%、5.5wt%および5.5wt%になっている。燃料集合体1Bの他の構成は燃料集合体1と同じである。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの燃料集合体1Aの横断面における配置は、燃料集合体1の横断面における配置と同じである。
【0059】
本実施例では、濃縮ウラン領域の横断面において部分長燃料棒Pが存在する下部領域の横断面の平均濃縮度、および部分長燃料棒Pが存在しない上部領域の横断面の平均濃縮度が、共に、約6.5wt%である。燃料集合体1Bの燃料棒配列の最外層に配置された燃料棒の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに8.1wt%である。燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、燃料集合体1Bの上部領域および下部領域でそれぞれ約1.240となる。燃料集合体1Bは外周ピーク型燃料集合体である。
【0060】
燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の横断面の平均濃縮度6.5wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xは1.025である。このため、燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xである1.240は、(3)式で求められた比e/x(1.025)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0061】
さらに、燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の横断面の平均濃縮度6.5wt%を(4)式に代入して求められた燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xは1.239である。このため、燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xである1.240は、(4)式で求められた比e/x(1.239)よりも大きく、本実施例は(2)式も満たしている。本実施例は、(1)式および(2)式の両者を満たしている領域を有する。
【0062】
本実施例は、(1)式および(2)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Aに含まれるガドリニア量をさらに減少することができ、第1期間における燃料集合体1Aの反応度をさらに抑制することができ、さらに、第2期間における燃料集合体1Aの反応度をより増大させることができる。本実施例では、ガドリニアの減少量が実施例1よりも大きくなり、第1期間における反応度を実施例1よりも抑制することができ、第2期間における反応度を実施例1よりも増大できる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1Bの反応度に対して、(1)式および(2)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.3%Δk増大させることができる。このため、本実施例の燃料集合体1Bは、取り出し燃焼度を約3%増大させることができ、ウランの利用効率を3%向上することができる。この結果、本実施例は、燃料経済性を3%向上させることができ、燃料経済性を実施例1よりも向上させることができる。反応度増大量のピークが燃料集合体1Bの取り出し燃焼度の半分以上の燃焼度領域において形成されるので、ガドリニアが消滅した後の炉心運転末期で効果(燃料経済性の向上)が得られる。
【実施例4】
【0063】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例4の燃料集合体を、図15及び図16を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Cは、実施例1の燃料集合体1において軸方向の長さが異なる2種類の部分超燃料棒を用いている構成を有する。燃料集合体1Cの他の構成は、燃料集合体1Aと同じである。
【0064】
燃料集合体1Cは、燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,G,P1およびP2を有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,G,P1およびP2のそれぞれの濃縮度分布を図16に示す。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は、燃料集合体1における燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度と同じである。部分長燃料棒P1の濃縮ウラン領域の濃縮度が6.9wt%であり、部分長燃料棒P2の濃縮ウラン領域の濃縮度が3.95wt%である。8本の部分長燃料棒P1が最外層に配置されている。6本の部分長燃料棒P2が水ロッド5に隣接して配置される。
【0065】
燃料集合体1,1Aおよび1Bに用いられる部分長燃料棒Pの上端が、燃料有校長の下端から16L/24の位置に位置している。これに対して、本実施例で用いられる部分長燃料棒P1の上端が燃料有校長の下端から16L/24の位置に位置しており、部分長燃料棒P2の上端が燃料有校長の下端から18L/24の位置に位置している。このため、燃料集合体1Cは、部分長燃料棒P1およびP2のそれぞれの上端の位置により、濃縮ウラン領域が軸方向に3つの領域に分けられる。燃料有校長の下端から1L/24の位置と燃料有校長の下端から8L/24の位置の間が下部領域であり、燃料有校長の下端から8L/24の位置と燃料有校長の下端から16L/24の位置の間が中央領域であり、燃料有校長の下端から16L/24の位置と燃料有校長の下端から23L/24の位置の間が上部領域である。
【0066】
燃料集合体1Cにおける下部領域の横断面の平均濃縮度は4.6wt%であり、その下部領域の最外層の平均濃縮度が5.6wt%である。中央領域は6本の部分長燃料棒P2が存在しない領域である。燃料集合体1Cにおける中央領域の横断面の平均濃縮度は4.7wt%であり、その中央領域の最外層の平均濃縮度が5.6wt%である。上部領域は、6本の部分長燃料棒P2および8本の部分長燃料棒P1が存在しない領域である。燃料集合体1Cにおける上部領域の横断面の平均濃縮度は4.4wt%であり、その上部領域の最外層の平均濃縮度が4.1wt%である。下部領域および中央領域では最外層の平均濃縮度が各領域の横断面の平均濃縮度よりも大きくなっているが、上部領域では最外層の平均濃縮度が上部領域の横断面の平均濃縮度よりも小さくなっている。
【0067】
本実施例において、濃縮ウラン領域の下部領域における比e/xである1.224は、下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められた比e/xである1.122よりも大きくなっている。このため、濃縮ウラン領域の下部領域は(1)式を満たしている。濃縮ウラン領域の中央領域における比e/xである1.211は、中央領域の横断面の平均濃縮度4.7wt%を(3)式に代入して求められた比e/xである1.114よりも大きくなっている。このため、濃縮ウラン領域の下部領域は(1)式を満たしている。濃縮ウラン領域の上部領域における比e/xである0.928は、上部領域の横断面の平均濃縮度4.4wt%を(3)式に代入して求められた比e/xである1.140よりも小さくなる。このため、濃縮ウラン領域の上部領域は(1)式を満たしていない。
【0068】
本実施例は、下部領域および中央領域で(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1に含まれるガドリニア量を減少することができ、ガドリニアが消滅する前における燃料集合体1の反応度を抑制することができ、さらに、ガドリニアが消滅した後における燃料集合体1の反応度を増大させることができる。さらに、本実施例は、最外層に部分長燃料棒P1を配置しているので、最外層の上部領域では部分長燃料棒が存在していない。このため、燃料集合体1Cの上部領域における熱的余裕が向上するため、燃料集合体1Cの限界出力が向上する。
【実施例5】
【0069】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例5の燃料集合体を、図17及び図18を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Dは実施例3の燃料集合体1Cにおいて可燃性毒物含有燃料棒4の配置を変え、燃料棒U1,U5,G,P1およびP2のそれぞれの濃縮度を変えた構成を有する。燃料集合体1Dの他の構成は燃料集合体1Cと同じである。
【0070】
燃料棒U1,GおよびP2のそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が4.0wt%であり、燃料棒U5およびP1のそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が6.5wt%である。可燃性毒物含有燃料棒4(燃料棒G)が、最外層、外側から二層目および四層目にそれぞれ配置される。可燃性毒物含有燃料棒4は、最外層ではコーナー部に配置される。外側から三層目には、可燃性毒物含有燃料棒4が配置されていない。
【0071】
本実施例では、下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%であり、中央領域の横断面の平均濃縮度が4.7wt%であり、上部領域の横断面の平均濃縮度が4.4wt%wt%である。最外層の平均濃縮度は、下部領域で5.6wt%であり、中央領域で5.6wt%であり、上部領域で4.0wt%である。このため、比e/xは、下部領域で1.21、中央領域で1.20、および上部領域で0.91になる。
【0072】
燃料集合体1Dにおける下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められたその下部領域の比e/xは1.122である。このため、下部領域の比e/xである1.21は、(3)式で求められた比e/x(1.122)よりも大きく、下部領域は(1)式を満たしている。中央領域の横断面の平均濃縮度4.7wt%を(3)式に代入して求められたその中央領域の比e/xは1.063である。このため、下部領域の比e/xである1.20は、(3)式で求められた比e/x(1.063)よりも大きく、中央領域も(1)式を満たしている。上部領域の横断面の平均濃縮度4.4(wt%を(3)式に代入して求められたその上部領域の比e/xは1.063である。このため、下部領域の比e/xである0.91は、(3)式で求められた比e/x(1.063)よりも小さく、上部領域は(1)式を満たしていない。
【0073】
本実施例は、下部領域および中央領域で(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Dに含まれるガドリニア量を減少することができ、第1期間における燃料集合体1Dの反応度を抑制することができ、さらに、第2期間における燃料集合体1Dの反応度を増大させることができる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1Dの反応度に対して、(1)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.1%Δk増大することができる。これにより、本実施例の燃料集合体1Dは、取り出し燃焼度を約1.5%増大させることができ、ウランの利用効率を1.5%向上することができる。
【0074】
さらに、本実施例は、最外層に可燃性毒物含有燃料棒4(燃料棒G)を配置するので、燃料集合体1D内のガドリニアが消滅する前において最外層のピーキングを抑えることができ、ガドリニアが消滅する前において線出力密度を低減することができる。
【実施例6】
【0075】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例6の燃料集合体を、図19および図20を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Eは実施例1の燃料集合体1において燃料棒の配列を11行11列とし、横断面が四角形の1本の大型水ロッド5を用いた構成を有する。大型水ロッド5は燃料集合体1Eの横断面の中央部に配置される。可燃性毒物含有燃料棒4(燃料棒G)は、外側から2層目に配置され、最外層を含む2層目以外の領域には配置されていない。燃料集合体1Eの他の構成は燃料集合体1と同じである。
【0076】
燃料集合体1Eに用いられる燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は、燃料集合体1に用いられる燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPと同じである。燃料集合体1Eは、濃縮ウラン領域において、部分長燃料棒Pが存在する下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%であり、部分長燃料棒Pが存在しない上部領域の横断面の平均濃縮度が約4.8wt%である。最外層の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに約5.8wt%である。燃料集合体1Eにおける比e/xは、燃料集合体1の上部領域で1.21、燃料集合体1の下部領域で1.25となる。燃料集合体1は外周ピーク型燃料集合体である。
【0077】
燃料集合体1Eにおける下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Eにおける下部領域の比e/xは1.12である。このため、燃料集合体1における下部領域の比e/xである1.25は、(3)式で求められた比e/x(1.12)よりも大きく、(1)式を満たしている。燃料集合体1Eにおける上部領域の横断面の平均濃縮度4.8wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Eにおける上部領域の比e/xは1.11である。このため、燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の比e/xである1.21は、(3)式で求められた比e/x(1.11)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0078】
本実施例によれば、(1)式を満たしているので、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、燃料棒の本数が増えるので、実施例1よりも線出力密度が低下して熱的余裕が向上する。
【実施例7】
【0079】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例7の燃料集合体を説明する。本実施例の燃料集合体は、実施例1の燃料集合体1において燃料有効長を変えた構成を有する。本実施例の燃料集合体の他の構成は燃料集合体1と同じである。本実施例の燃料集合体では、燃料有効長が、実施例1の燃料集合体1の3.7mから10%増大させて4.1mになっている。具体的には、燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGのそれぞれの燃料有効長が、4.1mである。本実施例で用いられる部分長燃料棒Pの燃料有効長も、実施例1で用いられる部分長燃料棒Pの燃料有効長よりも10%長くなる。本実施例の燃料集合体の燃料装荷量、および炉心体積が10%増大する。
【0080】
本実施例は、実施例1と同様に(1)式を満足するので、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、燃料有効長が長くなって沸騰長が伸びるので、限界出力が5%増大し、燃料集合体の出力密度が10%低減することで燃料経済性が10%増大する。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,1B,1C,1D,1E…燃料集合体、2,3,4…燃料棒、5…水ロッド、6…下部タイプレート、7…上部タイプレート、8…燃料スペーサ、9…チャンネルボックス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体に係り、特に、沸騰水型原子炉に用いるのに好適な燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉の炉心には、複数の燃料集合体が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質(例えば、酸化ウラン)を含む複数の燃料ペレットを封入した複数の燃料棒、燃料棒の上端部を支持する上部タイプレート、燃料棒の下端部を支持する下部タイプレート、燃料棒間の間隔を保持する複数の燃料スペーサおよび四角筒であるチャンネルボックスを有する。チャンネルボックスは、上端部が上部タイプレートに取り付けられて下部タイプレートに向って伸びており、複数の燃料スペーサによって束ねられた複数の燃料棒を取り囲んでいる。
【0003】
原子炉出力を制御するために、複数の制御棒が炉心内に挿入されている。また、燃料集合体内の一部の燃料棒は、燃料ペレット内に可燃性毒物(例えば、ガドリニア)を含んでいる。制御棒および可燃性毒物は、核燃料物質の核分裂によって余分に発生した中性子を吸収する。可燃性毒物は、中性子の吸収により中性子を吸収しにくい物質に変わっていく。このため、炉心内に装荷された新燃料集合体(燃焼度が0GWd/tの燃料集合体)に含まれた可燃性毒物は、新燃料集合体が炉心に装荷されてから原子炉の或る運転期間が経過すると消滅する。可燃性毒物が消滅した燃料集合体は、核燃料物質が燃焼するにつれて反応度が単調に減少していく。炉心内に滞在した運転サイクル数が異なる複数の燃料集合体が炉心に装荷されているので、炉心全体として原子炉の運転期間を通して臨界状態が維持される。
【0004】
燃料集合体内の濃縮度分布は、特開平5−142370号公報に記載されているように、出力ピーキングを平坦化する観点から、燃料集合体横断面における燃料棒配列の最外層に配置された各燃料棒、特に、コーナー部に配置された燃料棒の濃縮度を低くし、最外層よりも内側に配置された各燃料棒の濃縮度を高めている。ガドリニアを含む燃料棒は、最外層を除いた位置に配置される。
【0005】
燃料集合体の燃料経済性を向上させる観点から、外周ピーク型の燃料集合体が提案されている。外周ピーク型の燃料集合体は、燃料集合体横断面における燃料棒配列の最外層の平均濃縮度が最外層よりも内側の領域の平均濃縮度よりも高くなっている。炉心内で燃料集合体間に形成される水ギャップに隣接する最外層の平均濃縮度を高くすることによって、燃料集合体の無限増倍率を大きくして燃焼度を増大させることができ、燃料経済性を向上させることができる(特開平5−27068号公報参照)。燃料集合体横断面における出力分布の外周ピークは、熱中性子束の大きい最外層に配置された各燃料棒のウラン235の含有量を増やすことに相当し、中性子利用効率を向上させる。さらに、燃料棒配列を8行8列から9行9列にすることによって、燃料棒の平均の線出力密度が低下するので、上記外周ピークを利用することができる。
【0006】
特開平10−170674号公報に記載されている燃料集合体は、軸方向の出力ピーキングが小さくなる上端部および下端部に可燃性毒物を含まない領域を形成し、この可燃性毒物を含まない上端部の領域において最外層に配置した燃料棒の平均濃縮度を最外層以外の領域に配置した燃料棒の平均濃縮度よりも大きくすることにより、外周ピークを利用している。
【0007】
特開昭58−26292号公報に記載されている燃料集合体は、最外層に配置された全燃料棒の平均濃縮度を燃料集合体横断面の平均濃縮度よりも大きくすることにより、燃料経済性を向上させている。その横断面内での最外層のピーキングの増大分については、ボイド率の増大により出力が低下する燃料集合体の上部において濃縮度を増大することにより、軸方向ピーキングを低下させることで燃料集合体全体のピーキングを平坦化して対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−142370号公報
【特許文献2】特開平5−27068号公報
【特許文献3】特開平10−170674号公報
【特許文献4】特開昭58−26292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
燃料経済性の向上のためには、燃料集合体の横断面における平均濃縮度を増加しないで、燃料集合体の反応度を向上させる必要がある。燃料集合体の横断面の平均濃縮度を増加させないで燃料集合体の反応度を向上させるには、外周ピーク型の濃縮度分布が考えられる、外周ピーク型の燃料集合体は、燃焼度0GWd/tの新燃料集合体の状態で炉心に装荷された1サイクル目の運転サイクルにおいて出力ピーキングが最大となり、ガドリニアが消滅した以降では、核燃料物質が燃焼するにつれて出力ピーキングが小さくなる。一般に、ガドリニアが消滅する前(燃料集合体に対する1サイクル目の運転サイクル)ではガドリニアにより燃料集合体の反応度が抑えられるため、ガドリニアが消滅する前において、燃料集合体の横断面における燃料棒配列の最外層の出力ピーキング(外周ピーキング)が大きくなり燃料集合体の反応度が増大することは望まれない。燃料集合体内のガドリニアが消滅した後、特に、炉心運転末期で反応度が増大する必要がある。炉心運転末期とは、燃料集合体から見ると、燃料集合体の炉心滞在1サイクル目の末期である。これを実現するために発明者らは種々の検討を行った。この結果、発明者らは或る濃縮度を超えた燃料棒を燃料集合体の燃料棒配列の最外層に配置することにより、ガドリニアが消滅する前の期間での燃料集合体の反応度増大量に対して可燃性毒物の消滅後におけるその反応度の増大量を拡大できることを新たに見出した。
【0010】
特開平5−142370号公報、特開平5−27068号公報および特開平10−170674号公報は、燃料集合体の燃焼初期において反応度を抑制することにより、可燃性毒物の消滅後において反応度を増大することを言及していない。
【0011】
特開昭58−26292号公報に記載された燃料集合体は、最外層の燃料棒の出力ピーキングを増大させることによって可燃性毒物が消滅した後の反応度を増大させている。この可燃性毒物が消滅した後の反応度の増大は、燃料集合体の軸方向の濃縮度分布を変えて、燃料集合体の下部領域の出力ピークを低減することにより実現している。
【0012】
本発明の目的は、可燃性毒物の含有量を低減することができて燃料経済性を向上できる燃料集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、核分裂性物質を含み可燃性毒物を含まない複数の第1燃料棒、および核分裂性物質及び可燃性毒物を含む複数の第2燃料棒を有し、燃料集合体の横断面の第1平均濃縮度をx(wt%)、および燃料棒配列の最外層の第2平均濃縮度をe(wt%)としたとき、第1平均濃縮度x(wt%)に対する第2平均濃縮度e(wt%)の比e/xが(1)式を満足していることにある。
【0014】
【数1】
【0015】
比e/xが(1)式を満足しているので、燃料棒に含まれる核分裂性物質の中性子遮へい効果により燃焼度0GWd/tの燃料集合体に含まれる可燃性毒物の含有量を低減することができ、さらに、可燃性毒物が消滅する前における燃料集合体の反応度を抑制でき、可燃性毒物が消滅した後における燃料集合体の反応度を増大させることができる。可燃性毒物が消滅した後における燃料集合体の反応度を増大は、燃料経済性を向上させる。
【0016】
好ましくは、比e/xが(2)式を満足していることが望ましい。
【0017】
【数2】
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃焼度0GWd/tの燃料集合体に含まれる可燃性毒物の量を低減することができ、さらに、燃料経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例1の燃料集合体の横断面図である。
【図2】図1に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図3】図1に示す燃料集合体の縦断面図である。
【図4】ガドリニアを含む燃料集合体およびガドリニアを含まない燃料集合体における燃焼度に対する無限増倍率の変化の一例を示す説明図である。
【図5】従来の燃料集合体に対する本発明の燃料集合体の効果の一例を燃焼度と無限増倍率の差分の関係で示した説明図である。
【図6】燃料集合体の横断面の平均濃縮度をパラメータとし、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比による反応度増量の変化を示す特性図である。
【図7】燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する、本発明の効果が生じる燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比の下限値を示した特性図である。
【図8】燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比に対して、取り出し燃焼度に対する反応度増大効果のピーク位置の燃焼度の比の関係を示す特性図である。
【図9】燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比に対する、反応度増大効果のピーク位置が取り出し燃焼度の半分以上となる燃料集合体の横断面の平均濃縮度の下限値を示す特性図である。
【図10】(1)式を満たすときに得られる効果と、(2)式を満たすときに得られる効果の違いを示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例2の燃料集合体の横断面図である。
【図12】図11に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図13】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例3の燃料集合体の横断面図である。
【図14】図13に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図15】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例4の燃料集合体の横断面図である。
【図16】図15に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図17】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例5の燃料集合体の横断面図である。
【図18】図17に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【図19】本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用する実施例6の燃料集合体の横断面図である。
【図20】図19に示す燃料集合体内に配置された各燃料棒における濃縮度およびガドリニア濃度の分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明者らは、燃料集合体の燃料経済性の向上策、すなわち、燃料集合体の可燃性毒物の含有量を減少させて燃料集合体の、可燃性毒物の消滅前における反応度を抑え、燃料集合体の取り出し燃焼度を増大させる(燃料経済性を向上させる)対策について種々の検討を行った。発明者らは、これらの検討の結果、燃料集合体の横断面積の平均濃縮度に対する、燃料集合体の燃料棒配列の最外層の平均濃縮度の比を或る値以上にしたとき、燃料集合体内に可燃性毒物が存在する期間(燃焼初期)における燃料集合体の反応度を抑制し、可燃性毒物が消滅した後の期間において燃料集合体の反応度を増大させることができることを新たに見出した。燃料集合体内に可燃性毒物が存在する期間は、見方を変えると、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅する前の期間である。発明者らが新たに見出した燃料集合体は、燃焼度0GWd/tの燃料集合体における可燃性毒物の含有量を低減することができ、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅する前の期間(以下、第1期間という)で、この燃料集合体の反応度を抑えることができ、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅した後の期間(以下、第2期間という)で、この燃料集合体の反応度を増加させることができる。この反応度の増加は、燃料集合体の取り出し燃焼度を増加させる。上記の検討結果を具体的に説明する。
【0021】
燃焼度が0GWd/tの状態で可燃性毒物であるガドリニアを含まない燃料集合体および0GWd/tの状態でガドリニアを含む燃料集合体のそれぞれにおいて、燃焼度に対する無限増倍率の変化を図4に示す。一般的に、燃焼度0GWd/tの燃料集合体(新燃料集合体)は、余剰反応度を抑えるために可燃性毒物であるガドリニアを含んでいる。ガドリニアは燃焼と共に減少するため、炉心に装荷された新燃料集合体の反応度はガドリニアの燃焼と共に増大する。運転サイクル終了毎に炉心に装荷された一部の燃料集合体(寿命になった使用済燃料集合体)が燃料交換によって新燃料集合体と交換されるため、或る運転サイクルでは、炉内滞在期間が異なる(炉心内に滞在した運転サイクル数が異なる)複数の燃料集合体が炉心内に存在する。このために、その運転サイクルを通しての炉心の余剰反応度の変化は小さくなり、原子炉の反応度制御が容易になる。ただし、新燃料集合体内のガドリニアは、この新燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルの運転が終了した時点でもわずかに残るため、新燃料集合体においてガドリニアの含有量が多くなると、この燃料集合体に対する二つ目の運転サイクルにおいても、この燃料集合体の反応度がわずかに低下する。それゆえに、新燃料集合体におけるガドリニア含有量はできるだけ少なくしなければならない。
【0022】
燃焼度を増加させて核燃料物質(例えば、ウラン)の利用効率を向上させるためには、第1期間における燃料集合体の反応度を抑えながら、第2期間において燃料集合体の反応度を向上させると良い。第1期間において燃料集合体の反応度を抑えて、第2期間において燃料集合体の反応度を増加させるということは、外周ピーク型の燃料集合体が最外層の平均濃縮度が燃料集合体の横断面の平均の濃縮度よりも低い従来型の燃料集合体に対する反応度増大量についての燃焼変化(外周ピーク型燃料集合体の従来型燃料集合体に対する利得(反応度増大量)が核燃料物質の燃焼とともに変化すること)を考慮したときに、第1期間内ではなく、第2期間が開始された時点からある程度燃焼度が増加した時点で燃焼変化のピークが形成されるということを意味している。発明者らは、従来の外周ピーク型燃料集合体と異なり、燃焼度0GWd/tでガドリニアを含んでいる外周ピーク型燃料集合体で、第2期間においてその燃焼変化のピークが形成されるという新たな知見を見出したのである。この燃焼変化のピークが形成されることによって、第1期間内ではなく、第2期間内で、外ピーク型燃料集合体において反応度増大量が最大になる効果が得られ、燃料経済性が向上することになる。炉心の反応度向上において有意となるのは反応度増大量が0.1%Δk以上である。このため、そのピークは、炉心に装荷された外ピーク型燃料集合体が0GWd/tであるときに比べて、0.1%Δk以上でなければならない。具体例は後述する。
【0023】
さらに、一般的に、燃焼度0GWd/tの燃料集合体のガドリニア含有量は、燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルで燃え尽きるように設計され、この運転サイクルの末期ではガドリニアは燃料集合体内にほとんど存在しない。つまり、ガドリニアが消滅した後の反応度増大のためには、外ピーク型燃料集合体がこの燃料集合体に対する二つ目の運転サイクルの運転開始後に反応度が増大していると良い。運転サイクルにおける燃焼度(サイクル燃焼度という)は、原子炉出力、一つの運転サイクルの運転期間、および燃焼度0GWd/tの燃料集合体の燃料装荷量に基づいて決定される。原子炉出力および燃料装荷量を一定としたときに、サイクル燃焼度が大きくなるのは運転サイクルの運転期間を長くしたときである。このとき、炉心に装荷された燃料集合体の取替回数(バッチ数)が小さくなる。前述のように、炉心に滞在した運転サイクル数が異なる燃料集合体が炉心内に存在するので、このバッチ数の最小は2である。バッチ数が2のときは燃焼度0GWd/tの燃料集合体の体数とこの燃料集合体以外の、前の運転サイクルで原子炉の運転を経験した燃料集合体の体数との比は1:1となり、サイクル燃焼度は燃料集合体の取り出し燃焼度の半分になる。このサイクル燃焼度は、1つの運転サイクルにおける中期の平均燃焼度と同等である。これにより、少なくとも取り出し燃焼度の半分の燃焼度の時点で、第1期間内よりも反応度の増大があることが望ましい。
【0024】
そこで発明者らは、第1期間において燃料集合体の反応度を低下させるために下記の対策を新たに考えついた。この対策によって第2期間における燃料集合体の反応度を増大させ、ウランの利用効率を向上させることができた。なお、ウラン235の最大濃縮度は、原子力プラントで用いる濃縮度の範囲という観点から10wt%未満である。
【0025】
発明者らが新たに見出した対策は、或る濃縮度以上でかつ燃料集合体の横断面の平均濃縮度以上の濃縮度を有する燃料棒を、燃料集合体の横断面での燃料棒配列の最外層に配置することである。炉心内で燃料集合体間に形成される水ギャップに面している、その燃料棒配列の最外層での中性子スペクトルは、最外層よりも内側の領域に比べて柔らかいので、最外層では、中性子の平均自由行程が短く、上記の中性子スペクトルで縮約した、燃料ペレットの表面部での核分裂断面積が大きくなる。このため、燃料棒内に存在する各燃料ペレットの表面において、核燃料物質に含まれた核分裂性物質(例えば、U−235)が燃焼する特徴がある。燃料ペレットの表面部の核分裂性物質量が増大すると、燃料ペレット内部に減速された中性子が到達しにくくなる。燃料ペレットの濃縮度の増大は、燃料ペレットの単位体積あたりの核分裂性物質量の増大をもたらし、燃料ペレット表面部に存在する核分裂性物質による中性子遮へい効果により、減速された中性子が燃料ペレット内部にさらに到達しにくくなる。燃料集合体横断面の燃料棒配列の最外層に配置される燃料棒の濃縮度を、公知の外周ピーク型燃料集合体の最外層に配置される燃料棒のそれよりも高めることにより、第1期間では、最外層に配置される燃料棒において、核分裂性物質による中性子遮へい効果により、燃料ペレットの表面部で核分裂が行われ、燃料ペレットの中心部での核分裂が抑制される。最外層に配置された燃料棒の燃料ペレット表面部の核分裂性物質が燃焼してその表面部の核分裂性物質の量が少なくなる燃料集合体内の可燃性毒物が消滅した後では、減速した中性子が、より燃料ペレットの中心側に到達しやすくなり、燃料ペレットの中心部での核分裂が活発化される。したがって、最外層に配置される燃料棒の濃縮度を増大させて核燃料物質の中性子遮へい効果を利用することによって、燃料集合体の可燃性毒物の含有量を低減しても、第1期間において燃料集合体の反応度を抑え、燃料集合体内の可燃性毒物が消滅した以降において燃料集合体の反応度を増加させることができる。
【0026】
発明者らは、外周ピーク型ではない従来の燃料集合体、および従来の外周ピーク型燃料集合体の最外層の平均濃縮度をさらに増大させた本発明の外周ピーク型燃料集合体に対して具体的な平均濃縮度を与え、本発明の外周ピーク型燃料集合体の無限増倍率と従来の燃料集合体の無限増倍率の差分の、燃焼度による変化を検討した。従来の燃料集合体の一例において、この燃料集合体の平均濃縮度が4.5wt%であり、最外層の平均濃縮度が4.0wt%、および最外層よりも内側の領域の平均濃縮度が4.82wt%である。本発明の外周ピーク型燃料集合体の一例において、この燃料集合体の平均濃縮度が従来の外周ピーク型燃料集合体と同じ4.5wt%であり、最外層の平均濃縮度が5.27wt%、および最外層よりも内側の領域の平均濃縮度が4.0wt%である。従来の燃料集合体では、横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が0.9であり、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.17である。ちなみに、特開昭58―26292号公報に記載された外周ピーク型の燃料集合体では、上部の横断面の平均濃縮度が3.08wt%であり、この上部の横断面では前述の比が1.13となる。本発明の外周ピーク型燃料集合体では、横断面の平均濃縮度が3wt%である場合には、その比が1.4よりも大きくなる。検討の対象にした従来の燃料集合体および本発明の外周ピーク型燃料集合体は、共に、ガドリニアを含んでいない。
【0027】
発明者らは、これらの燃料集合体を炉心に装荷して各燃料集合体内の核分裂性物質を燃焼させたときにおける、上記した無限増倍率の差分の、燃焼度に対する変化を求めた。この結果を図5に示す。この結果は、チャンネルボックス内の平均ボイド率が炉心平均ボイド率である40%としたときのものである。図5において、縦軸は、本発明の外周ピーク型燃料集合体の無限増倍率から従来の燃料集合体(外周ピーク型ではない)の無限増倍率を差し引いて得られる無限増倍率の差分を示している。横軸は各燃料集合体の燃焼度である。最外層に配置される燃料棒の濃縮度を高くすることによって、燃料集合体の横断面の平均濃縮度を変えることなく燃料集合体の反応度を向上させることができる。本発明の外周ピーク型燃料集合体では、実線で示すように、炉心に装荷された0GWd/tの時点の反応度増大量に対して、燃焼されて無限増倍率の差分がピークになる位置での反応度増大量が0.1%Δk以上になっている。さらに、平均濃縮度4.5wt%の燃料集合体の取り出し燃焼度の約半分である25GWd/tにおいても、無限増倍率の差分が向上している。
【0028】
図5において、点線は従来の外周ピーク型燃料集合体の特性である。本発明の外周ピーク型燃料集合体の横断面の平均濃縮度が従来の外周ピーク型燃料集合体の横断面の平均濃縮度よりも高く、本発明の外周ピーク型燃料集合体の最外層の平均濃縮度が従来の外周ピーク燃料集合体の最外層の平均濃縮度よりも高くなっている。このため、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、従来の外周ピーク型燃料集合体よりも、燃料棒内の燃料ペレットの表面部における核分裂性物質による中性子遮へい効果が大きくなる。従って、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、燃焼度0GWd/tから燃焼度50GWd/tまでの期間において無限増倍率の差分が従来の外周ピーク型燃料集合体よりも大きくなり、しかも、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、無限増倍率の差分がピークになる位置での反応度増大量が0.1%Δk以上になっている。これに対し、従来の外周ピーク型燃料集合体では、そのような無限増倍率の差分のピークが形成されない。
【0029】
さらに、発明者らは、可燃性毒物の濃度を減少して、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)で反応度を抑えて、第2期間(可燃性毒物が消滅した後)で反応度を増大できる濃縮度の範囲について検討した。前述のように、外周ピーク型でない従来の燃料集合体の一般的な濃縮度分布では、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層に配置された複数の燃料棒の平均濃縮度の比が約0.9であるので、この濃縮度分布を基準として、燃料集合体の横断面の平均濃縮度を3wt%、4,5wt%および6.5wt%の3種類に変え、それぞれの燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対して最外層の平均濃縮度を変えたときの無限増倍率の増大量の変化について検討がなされた。この無限増倍率の増大量を反応度増大量とし、それらの燃料集合体が新燃料集合体(0GWd/t)として炉心に装荷されて一つ目の運転サイクルでの原子炉の運転が開始された時点から最大となる反応度とその運転開始時点での新燃料集合体の反応度の差である反応度増大量を、3種類の燃料集合体の横断面の平均濃縮度ごとに、図6に示した。横軸は、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比を表している。反応度増大量が0.1%Δk未満であれば、反応度増大量のピークが、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体に対する第1期間、すなわち、可燃性毒物であるガドリニアが消滅する前の期間に形成される。反応度増大量が0.1%Δk以上であれば、反応度増大量のピークが、第2期間、すなわち、炉心に装荷された燃料集合体に含まれたガドリニアが消滅した後に現れる。
【0030】
炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が3.0wt%である場合には、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.43未満であれば、反応度増大量のピークがその燃料集合体に対する第1期間に出現する。この場合には、横断面の平均濃縮度が3.0wt%の燃料集合体に含まれたガドリニアが消滅した後である第2期間では、最大となる反応度増大量が燃料集合体の第1期間に比べて有意でなくなる。燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が3.0wt%の場合においても、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.43以上になると、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少して、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)において反応度を抑えることができ、可燃性毒物が消滅した後である第2期間において反応度を増大することができる。燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が4.5wt%である場合には、そのが1.13以上になると、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少して、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)において反応度を抑えることができ、可燃性毒物が消滅した後である第2期間において反応度を増大することができる。燃焼度0GWd/tの燃料集合体の横断面の平均濃縮度が6.5wt%の場合では、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が1.04以上となると、それらの効果を得ることができる。
【0031】
そこで、発明者らは、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する上記の効果(可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で反応度を抑えられ、第2期間で反応度を増大できる)が現れる最外層の平均濃縮度の比の下限値について検討を行った。この結果、燃料集合体の横断面の平均濃縮度をx(wt%)、およびその燃料集合体の最外層の平均濃縮度をe(wt%)としたとき、図7に示す燃料集合体の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比(e/x)と平均濃縮度x(wt%)の関係が得られた。図7に示す特性は、(3)式で表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
(3)式で求められる比e/xが、上記の効果(可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で反応度を抑えられ、第2期間で反応度を増大できる)が現れる、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比の下限値を表している。(3)式は、横軸の平均濃縮度x(wt%)が高濃縮度(7wt%以上)になると、縦軸の比e/xが1以下になることを示している。最外層の平均濃縮度が燃料集合体の横断面の平均濃縮度よりも小さいこの状態でも、上記した可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で反応度を抑えられ、第2期間で反応度を増大できるという効果が生じる。これは、燃料集合体の横断面の平均濃縮度が7wt%以上と高くなり、最外層に配置された燃料棒および最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒を問わず、それぞれの燃料棒内の燃料ペレット表面部に存在する核分裂性物質による中性子遮へい効果により、減速された中性子が燃料ペレットの中心部に到達しにくくなるからである。特に、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒の濃縮度が最外層に配置された燃料棒の濃縮度よりも高く、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒の周囲に存在する水の量は最外層に配置された燃料棒の周囲に存在する水の量に比べて少ないので、燃料ペレット表面部の核分裂性物質による中性子遮へい効果と相俟って、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒では燃料ペレットの中心部に中性子がさらに到達しにくくなり、燃料ペレットの中心部における核分裂性物質の利用効率が低下する。これに対し、最外層に配置された燃料棒では、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒よりも濃縮度が低い分、最外層よりも内側の領域に配置された燃料棒よりも燃料ペレットの表面部での中性子遮へい効果が小さくなり、且つ水ギャップから入射される熱中性子が多いため、最外層の反応度が最外層よりも内側の領域でのそれよりも高くなる。このため、平均濃縮度x(wt%)が7wt%以上で比e/xが1以下である燃料集合体は、実質的に本発明の外周ピーク型燃料集合体として機能するため、可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間で燃料集合体の反応度を抑えることができ、第2期間で燃料集合体の反応度を増大することができる。結果的に、平均濃縮度x(wt%)が7wt%以上になり、比e/xが1以下になる場合であっても、燃料集合体の可燃性毒物の含有量を低減することができ、且つ燃料経済性が向上する。
【0034】
最外層に配置された燃料棒内の燃料ペレット表面部での核分裂性物質の中性子遮へい効果を利用することにより、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間(可燃性毒物が消滅する前)において反応度を抑えることができ、第2期間において反応度を増大することができるという効果を得るためには、比e/xが前述の(1)式の関係を満足する必要がある。ここで、前述の(1)式を、再度、記載する。
【0035】
【数4】
【0036】
次に、発明者らは、炉心に装荷された、燃焼度が0GWd/tの本発明の外周ピーク型燃料集合体の反応度に比べて0.1%Δk以上の反応度の増大が得られるピークが、この燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルの後の運転サイクル(例えば、二つ目の運転サイクル)において得られる範囲を検討した。燃料集合体の横断面の平均濃縮度3wt%、4.5wt%および6.5wt%のそれぞれにおいて、一般的な取り出し燃焼度に対する図5に示された反応度のピークが生じる燃焼度の比を、燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比との関係で、図8に示した。炉心に装荷された燃料集合体が2バッチで交換される場合には、炉心に装荷された新燃料集合体に対する一つ目の運転サイクルがこの燃料集合体の取り出し燃焼度の半分(0.5)になったときに終了する。このため、取り出し燃焼度の半分(0.5)を超える燃焼度の範囲で反応度増大量のピークが形成されることが望ましい。燃料集合体の横断面の平均濃縮度が高くなるほど、その横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度が低くなっても、燃料集合体の可燃性毒物の濃度を減少でき、第1期間において反応度を抑えることができ、第2期間において反応度を増大させることができる。また、或る横断面平均濃縮度において、(1)式の実線上の最外層平均濃縮度と、図8において取出燃焼度に対するピーク位置の燃焼度の比が0.5となるときの最外層平均濃縮度を比較すると、後者の最外層平均濃縮度が高くなる。
【0037】
燃料集合体の取り出し燃焼度の半分(0.5)を超える燃焼度の範囲で核分裂性物質による中性子遮へい効果により反応度増大量のピークが形成される場合における比e/xの下限値は、図9に示す破線のようになる。この破線で示された燃料集合体の横断面の平均濃縮度x(wt%)と比e/xの関係は、(4)式で表される。
【0038】
【数5】
【0039】
燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比e/xが(4)式で求められる値以上、すなわち、前述の(2)式を満足すれば、上記した本発明の効果はさらに増大することになる。前述の(2)式を、再度、記載する。
【0040】
【数6】
【0041】
ここで、(1)式を満足する場合と(2)式を満足する場合において得られるそれぞれの効果の違いを、図10を用いて説明する。図10に示された実線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲を除く)」は、図9に示された実線と破線の間の範囲である。炉心に装荷される新燃料集合体は、余剰反応度を抑えるために可燃性毒物を含んでいる。新燃料集合体が可燃性毒物(例えば、ガドリニア)を含むので、燃焼度と前述の無限増倍率の差分の関係は、実線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲を除く)」が一点鎖線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲を除く)+Gd追加」のようになり、破線で示す「(2)式の範囲」が点線で示す「(2)式の範囲+Gd追加」のようになる。これらの特性は、(1)式及び(2)式で得られるピークの高さが同じである状態で1つの運転サイクルの期間を20GWd/t(20GWd/tでガドリニアが消滅)としてガドリニアを含んだ燃料集合体に対するものである。(1)式の場合ではガドリニアの追加によってピークの値が減少するが、(2)式の場合はガドリニアの追加によってもピークの値はそれほど減少しない。
【0042】
以上の説明をさらに具体的に説明する。「(1)式の範囲((2)式の範囲は除く)」の実線と「(2)式の範囲」の破線のそれぞれのピークの高さは同じである。つまり、従来燃料集合体に対しての利得効果はこの段階では同じに見える。しかし、実際に、本発明の外周ピーク型燃料集合体にはGdが追加されるので、図10に点線で示された「(2)式の範囲+Gd追加」のように、燃焼度に対して無限増倍率の差分が変化する。このとき、ピークの高さを比べると破線で示す「(2)式の範囲」のほうが高くなる。つまり、本発明の外周ピーク型燃料集合体では、「(2)の式の範囲」を適用したときに燃焼度増大効果が大きくなる。図10図においては、「(1)式の範囲((2)式の範囲は除く)+Gd追加」および「(2)式の範囲+Gd追加」では、燃焼度が0GWd/tの時点でのガドリニアによる抑制は、従来型の燃料集合体と同等になっている。燃焼度0GWd/tの時点に着目すると、破線で示す「(2)式の範囲」の無限増倍率の差分が、実線で示す「(1)式の範囲((2)式の範囲は除く)」のそれよりも小さいので、「(2)式の範囲」ではガドリニアの添加量が少なくなっている。このため、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Aに含まれるガドリニア量(可燃性毒物量)を減少することができ、可燃性毒物の消滅前において反応度がさらに抑制され、可燃性毒物の消滅後では反応度がより増大することができる。
【0043】
さらに、発明者らは、最外層に出力ピークが偏ることによって起こる熱的余裕の低下の改善策について検討した。熱的余裕の低下は、チャンネルボックス内を流れる気液二相流に接触する燃料棒の表面において、その表面を覆っている液膜が薄くなることによって起きる。特に、出力が大きな燃料棒ではその液膜が薄くなる。燃料棒表面における液膜は、燃料棒の上部で形成されやすい。このため、燃料棒において、熱的余裕が最も厳しくなる位置は気液二層流の流れ方向で下流側となる。そこで、燃料棒の上部における出力ピークの偏りを改善して熱的余裕を向上するためには、最外層に配置された燃料棒において燃料集合体上部で濃縮度を低下させるか、または最外層に配置された燃料棒を部分長燃料棒として燃料集合体、上部では発熱しない(燃料棒が存在しない)状態にすることが望ましい。
【0044】
以上の検討結果を反映した本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0045】
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例1の燃料集合体を、図1、図2および図3を用いて詳細に説明する。
【0046】
本実施例の燃料集合体1は、図3に示すように、複数の燃料棒2、2本の水ロッド5、下部タイプレート6、上部タイプレート7、複数の燃料スペーサ8およびチャンネルボックス9を備えている。燃料棒2は、複数の燃料ペレット(図示せず)を密封された被覆管(図示せず)内に充填している。下部タイプレート6は各燃料棒2の下端部を支持し、上部タイプレート5は各燃料棒2の上端部を保持する。これらの燃料棒2は、図1に示すように、燃料集合体1の横断面において10行10列に配置されている。その横断面の中央部には、燃料棒2が4本配置できる領域を占有する横断面積を有する2本の水ロッド5が配置されている。これらの水ロッド5の下端部は下部タイプレート6に支持され、それらの上端部は上部タイプレート7に保持される。複数の燃料スペーサ8は、燃料集合体1の軸方向において所定の間隔に配置され、燃料棒2の相互間、および燃料棒2と水ロッド5の間に、冷却水が流れる流路を形成するように、燃料棒2および水ロッド5を保持している。横断面が正方形状をしている角筒であるチャンネルボックス9は、上部タイプレート7に取り付けられ、下方に向かって伸びている。燃料スペーサ8によって束ねられた各燃料棒2は、チャンネルボックス9内に配置されている。なお、チャンネルボックス9の外幅は約15cm、燃料棒2の外径は約1.0cm、および水ロッド5の外径は約2.5cmである。水ロッド5は、少なくとも2本の燃料棒2が配置可能な領域を占有する横断面積を有する太径水ロッドである。本実施例における燃料棒2に核分裂性ウランを含む燃料ペレットが装填された領域の軸方向の長さ、つまり燃料有効長は3.7mである。
【0047】
燃料集合体1は、沸騰水型原子炉の炉心に装荷されたとき、一つのコーナーが炉心に挿入された横断面が十字形をしている制御棒CRと向かい合うように配置される。チャンネルボックス9は、チャンネルファスナ(図示せず)によって上部タイプレート7に取り付けられる。チャンネルファスナは、燃料集合体1が炉心に装荷されたとき、制御棒CRが燃料集合体1の相互間に挿入できるように、燃料集合体1の相互間に必要な幅の間隙を保持する機能を有する。このため、チャンネルファスナは、制御棒CRと向かい合うコーナーに位置するように、上部タイプレート7に取り付けられている。燃料集合体1の制御棒CRに向かい合うコーナー部は、換言すれば、チャンネルファスナが取り付けられたコーナー部である。
【0048】
各燃料棒2内に充填される各燃料ペレットは、核燃料物質である二酸化ウランを用いて製造され、核分裂性物質であるウラン−235を含んでいる。燃料集合体1内の複数の燃料棒2は、ウランを含み可燃性毒物であるガドリニアを含まない複数の燃料棒(以下、ウラン燃料棒という)3、およびウランおよびガドリニアを含む複数の燃料棒(以下、可燃性毒物含有燃料棒という)4を含んでいる。可燃性毒物含有燃料棒4は、燃料ペレットがガドリニアを含んでいる。可燃性毒物含有燃料棒4以外は、ウラン燃料棒3である。92本の燃料棒2のうち、79本がウラン燃料棒3であり、残りの13本が可燃性毒物含有燃料棒4である。燃料集合体1は、図1に示すように、燃料棒2として、燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPを含んでいる。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびPがウラン燃料棒3であり、燃料棒Gが可燃性毒物含有燃料棒4である。なお、燃料棒Pは部分長燃料棒である。可燃性毒物含有燃料棒4は、最外層に配置されていなく、外側から二層目、三層目および四層目にそれぞれ配置されている。
【0049】
燃料集合体1は、燃料有効長の上端部および下端部にブランケット領域を有し、上端部と下端部の両ブランケット領域の間に濃縮ウラン領域を有している。両ブランケット領域は、濃縮ウランではなく天然ウランが充填されている。ブランケット領域にはガドリニアが含まれていなく、濃縮ウラン領域にはガドリニアが含まれている。
【0050】
燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびPがウラン燃料棒3の濃縮度分布を、図21を用いて詳細に説明する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPは、燃料有効長の下端部に天然ウランが充填された天然ウラン領域NUを有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGは、燃料有効長の上端部に天然ウランが充填された天然ウラン領域NUを有する。燃料棒Gは、濃縮ウラン領域に可燃性毒物であるガドリニアを含んでいる。燃料棒U1,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は3.95wt%である。燃料棒U2,U3,U4およびU5のそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は、5.3wt%、4.6wt%、3,4wt%および6.9wt%である。
【0051】
燃料集合体1は、濃縮ウラン領域の横断面において部分長燃料棒Pが存在する濃縮ウラン領域の下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%であり、部分長燃料棒Pが存在しない濃縮ウラン領域の上部領域の横断面の平均濃縮度が約4.7wt%である。濃縮ウラン領域の下部領域は、燃料有校長の下端から1L/24の位置と燃料有校長の下端から14L/24の位置の間に存在する。Lは燃料有校長の軸方向の長さである。濃縮ウラン領域の上部領域は、燃料有校長の下端から14L/24の位置と燃料有校長の下端から23L/24の位置の間に存在する。燃料集合体1の燃料棒配列の最外層に配置された燃料棒の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに約5.6wt%である。燃料集合体1における濃縮ウラン領域の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、燃料集合体1の上部領域で1.19、燃料集合体1の下部領域で1.22となる。燃料集合体1は外周ピーク型燃料集合体である。
【0052】
燃料集合体1における濃縮ウラン領域の下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1における濃縮ウラン領域の下部領域の比e/xは1.12である。このため、燃料集合体1における濃縮ウラン領域の下部領域の比e/xである1.22は、(3)式で求められた比e/x(1.12)よりも大きく、(1)式を満たしている。燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の横断面の平均濃縮度4.7wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の比e/xは1.11である。このため、燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の比e/xである1.19は、(3)式で求められた比e/x(1.11)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0053】
本実施例によれば、(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1に含まれるガドリニア量を減少することができ、第1期間(燃料集合体1内のガドリニアが消滅する前)における燃料集合体1の反応度を抑制することができ、さらに、第2期間(燃料集合体1内のガドリニアが消滅した後)における燃料集合体1の反応度を増大させることができる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1の反応度に対して、(1)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.14%Δk増大することができる。これにより、本実施例の燃料集合体1は、取り出し燃焼度を約2%増大させることができ、ウランの利用効率を2%向上することができる。
【実施例2】
【0054】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例2の燃料集合体を、図11及び図12を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Aは、実施例1の燃料集合体1において燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度を変えた構成を有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が、図12に示すように、6.3wt%、5.7wt%、4.5wt%、3.2wt%、9.0wt%、6.3wt%および6.3wt%になっている。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの燃料集合体1Aの横断面における配置は、燃料集合体1の横断面における配置と同じである。燃料集合体1Aの他の構成は燃料集合体1と同じである。
【0055】
本実施例では、濃縮ウラン領域の横断面において部分長燃料棒Pが存在する下部領域の横断面の平均濃縮度、および部分長燃料棒Pが存在しない上部領域の横断面の平均濃縮度が、共に、約6.4wt%である。燃料集合体1Aの燃料棒配列の最外層に配置された燃料棒の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに6.6wt%である。燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、燃料集合体1Aの上部領域および下部領域でそれぞれ約1.031となる。燃料集合体1Aは外周ピーク型燃料集合体である。
【0056】
燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の横断面の平均濃縮度6.4wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xは1.030である。このため、燃料集合体1Aにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xである1.031は、(3)式で求められた比e/x(1.030)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0057】
本実施例は、燃料集合体1Aの横断面の平均濃縮度を増大させて高燃焼度化するとともに、ウランの利用効率を図った構成を有する。本実施例も、(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Aに含まれるガドリニア量を減少することができ、第1期間における燃料集合体1Aの反応度を抑制することができ、さらに、第2期間における燃料集合体1Aの反応度を増大させることができる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1Aの反応度に対して、(1)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.1%Δk増大することができる。これにより、本実施例の燃料集合体1Aは、取り出し燃焼度を約1%増大させることができ、ウランの利用効率を1%向上することができる。さらに、本実施例では、実施例1よりも燃料集合体の横断面の平均濃縮度に対する最外層の平均濃縮度の比が小さくなるので、最外層における出力ピークを実施例1よりも低減できる。
【実施例3】
【0058】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例3の燃料集合体を、図13及び図14を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Bは実施例1の燃料集合体1において燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度を変えた構成を有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が、図12に示すように、5.5wt%、7.8wt%、6.8wt%、5.4wt%、9.5wt%、5.5wt%および5.5wt%になっている。燃料集合体1Bの他の構成は燃料集合体1と同じである。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの燃料集合体1Aの横断面における配置は、燃料集合体1の横断面における配置と同じである。
【0059】
本実施例では、濃縮ウラン領域の横断面において部分長燃料棒Pが存在する下部領域の横断面の平均濃縮度、および部分長燃料棒Pが存在しない上部領域の横断面の平均濃縮度が、共に、約6.5wt%である。燃料集合体1Bの燃料棒配列の最外層に配置された燃料棒の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに8.1wt%である。燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の横断面の平均濃縮度x(wt%)に対する最外層の平均濃縮度e(wt%)の比e/xは、燃料集合体1Bの上部領域および下部領域でそれぞれ約1.240となる。燃料集合体1Bは外周ピーク型燃料集合体である。
【0060】
燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の横断面の平均濃縮度6.5wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xは1.025である。このため、燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xである1.240は、(3)式で求められた比e/x(1.025)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0061】
さらに、燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の横断面の平均濃縮度6.5wt%を(4)式に代入して求められた燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xは1.239である。このため、燃料集合体1Bにおける濃縮ウラン領域の上部領域および下部領域の比e/xである1.240は、(4)式で求められた比e/x(1.239)よりも大きく、本実施例は(2)式も満たしている。本実施例は、(1)式および(2)式の両者を満たしている領域を有する。
【0062】
本実施例は、(1)式および(2)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Aに含まれるガドリニア量をさらに減少することができ、第1期間における燃料集合体1Aの反応度をさらに抑制することができ、さらに、第2期間における燃料集合体1Aの反応度をより増大させることができる。本実施例では、ガドリニアの減少量が実施例1よりも大きくなり、第1期間における反応度を実施例1よりも抑制することができ、第2期間における反応度を実施例1よりも増大できる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1Bの反応度に対して、(1)式および(2)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.3%Δk増大させることができる。このため、本実施例の燃料集合体1Bは、取り出し燃焼度を約3%増大させることができ、ウランの利用効率を3%向上することができる。この結果、本実施例は、燃料経済性を3%向上させることができ、燃料経済性を実施例1よりも向上させることができる。反応度増大量のピークが燃料集合体1Bの取り出し燃焼度の半分以上の燃焼度領域において形成されるので、ガドリニアが消滅した後の炉心運転末期で効果(燃料経済性の向上)が得られる。
【実施例4】
【0063】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例4の燃料集合体を、図15及び図16を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Cは、実施例1の燃料集合体1において軸方向の長さが異なる2種類の部分超燃料棒を用いている構成を有する。燃料集合体1Cの他の構成は、燃料集合体1Aと同じである。
【0064】
燃料集合体1Cは、燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,G,P1およびP2を有する。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,G,P1およびP2のそれぞれの濃縮度分布を図16に示す。燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は、燃料集合体1における燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度と同じである。部分長燃料棒P1の濃縮ウラン領域の濃縮度が6.9wt%であり、部分長燃料棒P2の濃縮ウラン領域の濃縮度が3.95wt%である。8本の部分長燃料棒P1が最外層に配置されている。6本の部分長燃料棒P2が水ロッド5に隣接して配置される。
【0065】
燃料集合体1,1Aおよび1Bに用いられる部分長燃料棒Pの上端が、燃料有校長の下端から16L/24の位置に位置している。これに対して、本実施例で用いられる部分長燃料棒P1の上端が燃料有校長の下端から16L/24の位置に位置しており、部分長燃料棒P2の上端が燃料有校長の下端から18L/24の位置に位置している。このため、燃料集合体1Cは、部分長燃料棒P1およびP2のそれぞれの上端の位置により、濃縮ウラン領域が軸方向に3つの領域に分けられる。燃料有校長の下端から1L/24の位置と燃料有校長の下端から8L/24の位置の間が下部領域であり、燃料有校長の下端から8L/24の位置と燃料有校長の下端から16L/24の位置の間が中央領域であり、燃料有校長の下端から16L/24の位置と燃料有校長の下端から23L/24の位置の間が上部領域である。
【0066】
燃料集合体1Cにおける下部領域の横断面の平均濃縮度は4.6wt%であり、その下部領域の最外層の平均濃縮度が5.6wt%である。中央領域は6本の部分長燃料棒P2が存在しない領域である。燃料集合体1Cにおける中央領域の横断面の平均濃縮度は4.7wt%であり、その中央領域の最外層の平均濃縮度が5.6wt%である。上部領域は、6本の部分長燃料棒P2および8本の部分長燃料棒P1が存在しない領域である。燃料集合体1Cにおける上部領域の横断面の平均濃縮度は4.4wt%であり、その上部領域の最外層の平均濃縮度が4.1wt%である。下部領域および中央領域では最外層の平均濃縮度が各領域の横断面の平均濃縮度よりも大きくなっているが、上部領域では最外層の平均濃縮度が上部領域の横断面の平均濃縮度よりも小さくなっている。
【0067】
本実施例において、濃縮ウラン領域の下部領域における比e/xである1.224は、下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められた比e/xである1.122よりも大きくなっている。このため、濃縮ウラン領域の下部領域は(1)式を満たしている。濃縮ウラン領域の中央領域における比e/xである1.211は、中央領域の横断面の平均濃縮度4.7wt%を(3)式に代入して求められた比e/xである1.114よりも大きくなっている。このため、濃縮ウラン領域の下部領域は(1)式を満たしている。濃縮ウラン領域の上部領域における比e/xである0.928は、上部領域の横断面の平均濃縮度4.4wt%を(3)式に代入して求められた比e/xである1.140よりも小さくなる。このため、濃縮ウラン領域の上部領域は(1)式を満たしていない。
【0068】
本実施例は、下部領域および中央領域で(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1に含まれるガドリニア量を減少することができ、ガドリニアが消滅する前における燃料集合体1の反応度を抑制することができ、さらに、ガドリニアが消滅した後における燃料集合体1の反応度を増大させることができる。さらに、本実施例は、最外層に部分長燃料棒P1を配置しているので、最外層の上部領域では部分長燃料棒が存在していない。このため、燃料集合体1Cの上部領域における熱的余裕が向上するため、燃料集合体1Cの限界出力が向上する。
【実施例5】
【0069】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例5の燃料集合体を、図17及び図18を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Dは実施例3の燃料集合体1Cにおいて可燃性毒物含有燃料棒4の配置を変え、燃料棒U1,U5,G,P1およびP2のそれぞれの濃縮度を変えた構成を有する。燃料集合体1Dの他の構成は燃料集合体1Cと同じである。
【0070】
燃料棒U1,GおよびP2のそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が4.0wt%であり、燃料棒U5およびP1のそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度が6.5wt%である。可燃性毒物含有燃料棒4(燃料棒G)が、最外層、外側から二層目および四層目にそれぞれ配置される。可燃性毒物含有燃料棒4は、最外層ではコーナー部に配置される。外側から三層目には、可燃性毒物含有燃料棒4が配置されていない。
【0071】
本実施例では、下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%であり、中央領域の横断面の平均濃縮度が4.7wt%であり、上部領域の横断面の平均濃縮度が4.4wt%wt%である。最外層の平均濃縮度は、下部領域で5.6wt%であり、中央領域で5.6wt%であり、上部領域で4.0wt%である。このため、比e/xは、下部領域で1.21、中央領域で1.20、および上部領域で0.91になる。
【0072】
燃料集合体1Dにおける下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められたその下部領域の比e/xは1.122である。このため、下部領域の比e/xである1.21は、(3)式で求められた比e/x(1.122)よりも大きく、下部領域は(1)式を満たしている。中央領域の横断面の平均濃縮度4.7wt%を(3)式に代入して求められたその中央領域の比e/xは1.063である。このため、下部領域の比e/xである1.20は、(3)式で求められた比e/x(1.063)よりも大きく、中央領域も(1)式を満たしている。上部領域の横断面の平均濃縮度4.4(wt%を(3)式に代入して求められたその上部領域の比e/xは1.063である。このため、下部領域の比e/xである0.91は、(3)式で求められた比e/x(1.063)よりも小さく、上部領域は(1)式を満たしていない。
【0073】
本実施例は、下部領域および中央領域で(1)式を満たしているので、燃焼度0GWd/tにおける燃料集合体1Dに含まれるガドリニア量を減少することができ、第1期間における燃料集合体1Dの反応度を抑制することができ、さらに、第2期間における燃料集合体1Dの反応度を増大させることができる。本実施例では、炉心に装荷された燃焼度0GWd/tの燃料集合体1Dの反応度に対して、(1)式を満たすことによって形成される、ガドリニア消滅後のピーク時の反応度を0.1%Δk増大することができる。これにより、本実施例の燃料集合体1Dは、取り出し燃焼度を約1.5%増大させることができ、ウランの利用効率を1.5%向上することができる。
【0074】
さらに、本実施例は、最外層に可燃性毒物含有燃料棒4(燃料棒G)を配置するので、燃料集合体1D内のガドリニアが消滅する前において最外層のピーキングを抑えることができ、ガドリニアが消滅する前において線出力密度を低減することができる。
【実施例6】
【0075】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例6の燃料集合体を、図19および図20を用いて説明する。本実施例の燃料集合体1Eは実施例1の燃料集合体1において燃料棒の配列を11行11列とし、横断面が四角形の1本の大型水ロッド5を用いた構成を有する。大型水ロッド5は燃料集合体1Eの横断面の中央部に配置される。可燃性毒物含有燃料棒4(燃料棒G)は、外側から2層目に配置され、最外層を含む2層目以外の領域には配置されていない。燃料集合体1Eの他の構成は燃料集合体1と同じである。
【0076】
燃料集合体1Eに用いられる燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPのそれぞれの濃縮ウラン領域の濃縮度は、燃料集合体1に用いられる燃料棒U1,U2,U3,U4,U5,GおよびPと同じである。燃料集合体1Eは、濃縮ウラン領域において、部分長燃料棒Pが存在する下部領域の横断面の平均濃縮度が約4.6wt%であり、部分長燃料棒Pが存在しない上部領域の横断面の平均濃縮度が約4.8wt%である。最外層の平均濃縮度は上部領域および下部領域ともに約5.8wt%である。燃料集合体1Eにおける比e/xは、燃料集合体1の上部領域で1.21、燃料集合体1の下部領域で1.25となる。燃料集合体1は外周ピーク型燃料集合体である。
【0077】
燃料集合体1Eにおける下部領域の横断面の平均濃縮度4.6wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Eにおける下部領域の比e/xは1.12である。このため、燃料集合体1における下部領域の比e/xである1.25は、(3)式で求められた比e/x(1.12)よりも大きく、(1)式を満たしている。燃料集合体1Eにおける上部領域の横断面の平均濃縮度4.8wt%を(3)式に代入して求められた燃料集合体1Eにおける上部領域の比e/xは1.11である。このため、燃料集合体1における濃縮ウラン領域の上部領域の比e/xである1.21は、(3)式で求められた比e/x(1.11)よりも大きく、本実施例は(1)式を満たしている。
【0078】
本実施例によれば、(1)式を満たしているので、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、燃料棒の本数が増えるので、実施例1よりも線出力密度が低下して熱的余裕が向上する。
【実施例7】
【0079】
本発明の他の実施例である沸騰水型原子炉に適用する実施例7の燃料集合体を説明する。本実施例の燃料集合体は、実施例1の燃料集合体1において燃料有効長を変えた構成を有する。本実施例の燃料集合体の他の構成は燃料集合体1と同じである。本実施例の燃料集合体では、燃料有効長が、実施例1の燃料集合体1の3.7mから10%増大させて4.1mになっている。具体的には、燃料棒U1,U2,U3,U4,U5およびGのそれぞれの燃料有効長が、4.1mである。本実施例で用いられる部分長燃料棒Pの燃料有効長も、実施例1で用いられる部分長燃料棒Pの燃料有効長よりも10%長くなる。本実施例の燃料集合体の燃料装荷量、および炉心体積が10%増大する。
【0080】
本実施例は、実施例1と同様に(1)式を満足するので、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、燃料有効長が長くなって沸騰長が伸びるので、限界出力が5%増大し、燃料集合体の出力密度が10%低減することで燃料経済性が10%増大する。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,1B,1C,1D,1E…燃料集合体、2,3,4…燃料棒、5…水ロッド、6…下部タイプレート、7…上部タイプレート、8…燃料スペーサ、9…チャンネルボックス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂性物質を含み可燃性毒物を含まない複数の第1燃料棒、前記核分裂性物質及び前記可燃性毒物を含む複数の第2燃料棒、前記第1及び第2燃料棒のそれぞれの下端部を支持する下部タイプレートおよび前記第1及び第2燃料棒のそれぞれの上端部を支持する上部タイプレートを備えた燃料集合体であって、
前記燃料集合体の横断面の第1平均濃縮度をx(wt%)、および燃料棒配列の最外層の第2平均濃縮度をe(wt%)としたとき、前記第1平均濃縮度x(wt%)に対する前記第2平均濃縮度e(wt%)の比e/xが(1)式を満足していることを特徴とする燃料集合体。
【数1】
【請求項2】
前記比e/xが(2)式を満足している請求項1に記載の燃料集合体。
【数2】
【請求項3】
前記比e/xが(1)式を満足する第1領域および前記比e/xが(1)式を満足しない第2領域を有し、前記燃料集合体の燃料有効長内で、前記第2領域が、前記第1領域よりも前記上部タイプレート側に配置されている請求項1または2に記載の燃料集合体。
【請求項4】
前記第1燃料棒である複数の部分長燃料棒を前記最外層に配置している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項5】
前記第1燃料棒である複数の部分長燃料棒を前記最外層に配置し、前記部分長燃料棒の上端が前記第1領域内に存在する請求項3に記載の燃料集合体。
【請求項6】
前記第2領域では、前記第2平均濃縮度e(wt%)が前記第1平均濃縮度x(wt%)よりも低くなっている請求項3に記載の燃料集合体。
【請求項7】
前記第2燃料棒を前記最外層に配置した請求項1ないし6のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項8】
前記最外層に配置された前記第2燃料棒は、前記最外層のコーナー部に配置される請求項7に記載の燃料集合体。
【請求項9】
前記第1及び第2燃料棒を含む燃料棒配列が11行11列になっている請求項1または請求項2記載の燃料集合体。
【請求項10】
前記燃料集合体の燃料有効長が3.8m〜5mの範囲にある請求項1または請求項2記載の燃料集合体。
【請求項1】
核分裂性物質を含み可燃性毒物を含まない複数の第1燃料棒、前記核分裂性物質及び前記可燃性毒物を含む複数の第2燃料棒、前記第1及び第2燃料棒のそれぞれの下端部を支持する下部タイプレートおよび前記第1及び第2燃料棒のそれぞれの上端部を支持する上部タイプレートを備えた燃料集合体であって、
前記燃料集合体の横断面の第1平均濃縮度をx(wt%)、および燃料棒配列の最外層の第2平均濃縮度をe(wt%)としたとき、前記第1平均濃縮度x(wt%)に対する前記第2平均濃縮度e(wt%)の比e/xが(1)式を満足していることを特徴とする燃料集合体。
【数1】
【請求項2】
前記比e/xが(2)式を満足している請求項1に記載の燃料集合体。
【数2】
【請求項3】
前記比e/xが(1)式を満足する第1領域および前記比e/xが(1)式を満足しない第2領域を有し、前記燃料集合体の燃料有効長内で、前記第2領域が、前記第1領域よりも前記上部タイプレート側に配置されている請求項1または2に記載の燃料集合体。
【請求項4】
前記第1燃料棒である複数の部分長燃料棒を前記最外層に配置している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項5】
前記第1燃料棒である複数の部分長燃料棒を前記最外層に配置し、前記部分長燃料棒の上端が前記第1領域内に存在する請求項3に記載の燃料集合体。
【請求項6】
前記第2領域では、前記第2平均濃縮度e(wt%)が前記第1平均濃縮度x(wt%)よりも低くなっている請求項3に記載の燃料集合体。
【請求項7】
前記第2燃料棒を前記最外層に配置した請求項1ないし6のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項8】
前記最外層に配置された前記第2燃料棒は、前記最外層のコーナー部に配置される請求項7に記載の燃料集合体。
【請求項9】
前記第1及び第2燃料棒を含む燃料棒配列が11行11列になっている請求項1または請求項2記載の燃料集合体。
【請求項10】
前記燃料集合体の燃料有効長が3.8m〜5mの範囲にある請求項1または請求項2記載の燃料集合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−63189(P2012−63189A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206332(P2010−206332)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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