説明

燃料電池および燃料電池スタック

【課題】 金属多孔体と金属多孔体と隣接する部材との間の接触抵抗を低下させることができる燃料電池および燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】 燃料電池(100)は、膜−電極接合体(10)に沿って設けられたガス拡散層(11,14)と、ガス流路および集電体として機能し表面に金属がコートされた金属多孔体(12,15)と、ガス拡散層と金属多孔体との間に設けられ金属多孔体よりも柔軟性が高くガス拡散層よりも緻密度が高く厚み方向に貫通する貫通孔を備え導電性を有するシート部材(21,23)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池および燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素及び酸素を燃料として電気エネルギーを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れかつ高いエネルギー効率を実現できることから、今後のエネルギー供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
この燃料電池において、反応ガスが流動するためのガス流路として、金属多孔体が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。この金属多孔体を用いれば、ガス流路として機能する溝が形成されたセパレータを用いなくてもよいため、燃料電池を小型化することができる。ただし、燃料電池の発電環境下においては金属多孔体が腐食するおそれがあることから、金属多孔体の導電性低下を抑制するために金属多孔体の表面に貴金属をコートすることがある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−146265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属多孔体は多孔体であることから、金属多孔体と金属多孔体に隣接する部材とが点接触する傾向にある。この場合、接触抵抗が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、金属多孔体と金属多孔体と隣接する部材との間の接触抵抗を低下させることができる燃料電池および燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池は、膜−電極接合体に沿って設けられたガス拡散層と、ガス流路および集電体として機能し表面に金属がコートされた金属多孔体と、ガス拡散層と金属多孔体との間に設けられ金属多孔体よりも柔軟性が高く厚み方向に貫通する貫通孔を備えつつガス拡散層よりも緻密度が高く導電性を有するシート部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る燃料電池においては、金属多孔体よりも高い柔軟性を有するシート部材がガス拡散層と金属多孔体との間に配置されていることから、シート部材と金属多孔体とが面接触するとともに、シート部材とガス拡散層とが面接触する。また、シート部材は、ガス拡散層よりも高い緻密度を有している。それにより、ガス拡散層と金属多孔体との間における接触抵抗が低下する。
【0009】
金属多孔体にコートされた金属は、貴金属であってもよい。この場合、金属多孔体の導電率低下が抑制される。金属多孔体にコートされた金属は、金属多孔体表面に、粒子状または島状にコートされていてもよい。この場合、貴金属量を低下させることができる。それにより、コストを低下させることができる。また、金属多孔体を構成する金属は、チタンであってもよい。
【0010】
シート部材の開口率は、反応ガスの上流側に比較して下流側において高くなっていてもよい。この場合、膜−電極接合体への面内方向における反応ガスの供給量のばらつきを抑制することができる。それにより、発電ばらつきを抑制することができる。
【0011】
シート部材においては、反応ガスの上流側に比較して下流側において貫通孔数が多くてもよい。シート部材においては、反応ガスの上流側に比較して下流側において貫通孔の孔径が大きくてもよい。
【0012】
本発明に係る他の燃料電池は、膜−電極接合体と、ガス流路および集電体として機能し表面に金属がコートされた金属多孔体と、金属多孔体の膜−電極接合体と反対側に設けられ表面に金属がコートされたセパレータと、金属多孔体とセパレータとの間に設けられ金属多孔体よりも柔軟性が高く金属多孔体よりも緻密度が高く導電性を有するシート部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る他の燃料電池においては、金属多孔体よりも高い柔軟性を有するシート部材が金属多孔体とセパレータとの間に配置されていることから、シート部材と金属多孔体とが面接触するとともに、シート部材とセパレータとが面接触する。また、シート部材は、金属多孔体よりも高い緻密度を有している。それにより、金属多孔体とセパレータとの間における接触抵抗が低下する。
【0014】
セパレータにコートされた金属は、貴金属であってもよい。この場合、セパレータの導電率低下が抑制される。セパレータにコートされた金属は、セパレータ表面に、粒子状または島状にコートされていてもよい。この場合、貴金属量を低減させることができる。それにより、コストを低減させることができる。
【0015】
金属多孔体にコートされた金属は、貴金属であってもよい。この場合、金属多孔体の導電率低下が抑制される。金属多孔体にコートされた金属は、金属多孔体表面に、粒子状または島状にコートされていてもよい。この場合、貴金属量を低減させることができる。それにより、コストを低減させることができる。
【0016】
金属多孔体を構成する金属は、チタンであってもよい。セパレータを構成する金属は、チタンであってもよい。シート部材は、黒鉛粒子焼結体、導電性樹脂、Ag焼結体シートまたは金属/樹脂複合材からなるものであってもよい。
【0017】
本発明に係る燃料電池スタックは、請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池が複数積層され、反応ガスの下流側における一の燃料電池のシート部材の開口率は、反応ガスの上流側における他の燃料電池に比較して高くなっていることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池スタックにおいては、各燃料電池間における反応ガスの供給量のばらつきを抑制することができる。それにより、燃料電池間における発電ばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属多孔体とガス拡散層との間の接触抵抗または金属多孔体とセパレータとの間の接触抵抗を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第1実施例に係る燃料電池100の模式的断面図である。図1に示すように、燃料電池100は、膜−電極接合体10の一面にガス拡散層11、金属多孔体12およびセパレータ13が順に積層され、膜−電極接合体10の他面にガス拡散層14、金属多孔体15およびセパレータ16が順に積層された構造を有する。
【0021】
膜−電極接合体10は、電解質膜の一面にアノード触媒層が設けられ、電解質膜の他面にカソード触媒層が設けられた構造を有する。電解質膜は、プロトン伝導性電解質からなり、例えばパーフルオロスルホン酸等の固体高分子電解質からなる。アノード触媒層は、水素のプロトン化を促進する触媒を担持する導電性材料からなり、例えば白金担持カーボンからなる。カソード触媒層は、酸素とプロトンとの反応を促進する触媒を担持する導電性材料からなり、例えば白金担持カーボンからなる。
【0022】
ガス拡散層11,14は、導電性およびガス透過性を有する材料からなり、例えばカーボンペーパ、カーボンクロス等のカーボン材料からなる。金属多孔体12,15は、ガス拡散層11,14よりも硬い導電性材料からなり、チタン等からなる発泡金属、金属メッシュ等の金属多孔体または金属三次元構造体からなる。本実施例においては、金属多孔体12,15は、発泡チタンからなる。金属多孔体12,15の耐食性向上のため、金属多孔体12,15の表面に金等の貴金属がコートされている。セパレータ13,16は、導電性材料からなり、例えばチタン等からなる。セパレータ13,16の耐食性向上のため、セパレータ13,16の表面に金等の貴金属がコートされている。
【0023】
図2(a)は、ガス拡散層11、金属多孔体12およびセパレータ13の拡大図である。図2(b)は、ガス拡散層14、金属多孔体15およびセパレータ16の拡大図である。図2(c)は、後述するシート部材21,23の平面図である。図2(d)は、後述するシート部材22,24の平面図である。
【0024】
図2(a)に示すように、ガス拡散層11と金属多孔体12との間にシート部材21が配置され、金属多孔体12とセパレータ13との間にシート部材22が配置されている。図2(b)に示すように、ガス拡散層14と金属多孔体15との間にシート部材23が配置され、金属多孔体15とセパレータ16との間にシート部材24が配置されている。
【0025】
図2(a)および図2(c)に示すように、シート部材21には、厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。それにより、金属多孔体12からガス拡散層11に反応ガスが透過することができる。また、発電に伴って生じた水蒸気がガス拡散層11から金属多孔体12に透過することができる。さらに、シート部材21によって、ガス拡散層11における保水が調整される。シート部材21は、金属多孔体12よりも柔軟性が高く、ガス拡散層11よりも緻密度が高く(気孔率が低く)、導電性を有する材料からなる。
【0026】
図2(a)および図2(d)に示すように、シート部材22には、貫通孔は形成されていない。シート部材22は、金属多孔体12よりも柔軟性が高く、金属多孔体12よりも緻密度が高く(気孔率が低く)、導電性を有する材料からなる。なお、シート部材22は金属多孔体12よりも高い緻密度を有していればよいので、シート部材22に貫通孔が設けられていてもよい。
【0027】
図2(b)および図2(c)に示すように、シート部材23には、厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。また、シート部材23は、金属多孔体15よりも柔軟性が高く、ガス拡散層14よりも緻密度が高く(気孔率が低く)、導電性を有する材料からなる。
【0028】
図2(b)および図2(d)に示すように、シート部材24には、貫通孔は形成されていない。シート部材24は、金属多孔体15よりも柔軟性が高く、金属多孔体15よりも緻密度が高く(気孔率が低く)、導電性を有する部材からなる。なお、シート部材24は金属多孔体15よりも高い緻密度を有していればよいので、シート部材24に貫通孔が設けられていてもよい。シート部材21〜24は、例えば、黒鉛粒子焼結体、導電性樹脂、Ag焼結体シート、金属/樹脂複合材等からなる。発電環境下においては各シート部材は酸化性雰囲気または還元性雰囲気に触れまたは酸等の溶液に触れることがあることから、シート部材21〜24は、高い化学的安定性を有していることが好ましい。
【0029】
なお、シート部材21,22は、図3に示す方法によって設けることができる。図3(a)に示すように、まず、金属多孔体12の一面にシート部材21を配置、金属多孔体12の他面にシート部材22を配置する。次に、図3(b)に示すように、これらの部材をセパレータ13に接合する。なお、隣接する燃料電池の金属多孔体15およびシート部材23,24と共に、セパレータ13に接合してもよい。シート部材23,24も、シート部材21,22と同様の方法により設けることができる。
【0030】
続いて、図1および図2を参照しつつ、燃料電池100の動作について説明する。まず、水素を含有する燃料ガスが金属多孔体12に供給される。その後、燃料ガスは、金属多孔体12を流動しつつ、ガス拡散層11に供給される。燃料ガス中の水素は、ガス拡散層11を拡散し、アノード触媒層においてプロトンと電子とに解離する。プロトンは電解質膜を伝導し、カソード触媒層に到達する。電子は、ガス拡散層11、シート部材21、金属多孔体12、シート部材22およびセパレータ13を介して外部回路に取り出される。
【0031】
一方、酸素を含有する酸化剤ガスが金属多孔体15に供給される。その後、酸化剤ガスは、金属多孔体15を流動しつつ、ガス拡散層14に供給される。酸化剤ガスは、ガス拡散層14を拡散してカソード触媒層に到達する。また、電子が、セパレータ16、シート部材24、金属多孔体15、シート部材23およびガス拡散層14を介してカソード触媒層に供給される。カソード触媒層においては、酸化剤ガス中の酸素とプロトンと電子とから水が生成されるとともに電力が発生する。
【0032】
ガス拡散層11および金属多孔体12は、多孔体であるため表面に凹凸を有する。また、金属多孔体12は、ガス拡散層11よりも硬い材料から構成されるため変形しにくい。したがって、ガス拡散層11と金属多孔体12とは、点接触する傾向にある。これに対して、本実施例においては、金属多孔体12よりも高い柔軟性を有するシート部材21がガス拡散層11と金属多孔体12との間に配置されていることから、シート部材21と金属多孔体12とが面接触するとともに、シート部材21とガス拡散層11とが面接触する。また、シート部材21は、ガス拡散層11よりも高い緻密度を有している。
【0033】
この場合、シート部材21と金属多孔体12との間の接触面積およびシート部材21とガス拡散層11との間の接触面積は、シート部材21が設けられていない場合におけるガス拡散層11と金属多孔体12との接触面積に比較して大きくなる。それにより、ガス拡散層11から金属多孔体12にかけての接触抵抗が低下する。同様に、シート部材23を設けることによって、ガス拡散層14から金属多孔体15にかけての接触抵抗が低下する。
【0034】
ここで、コスト低減を目的に、貴金属コート量を低減することがある。例えば、金属多孔体に対する貴金属のめっき量を数nm〜数十nm程度とすると、貴金属は粒子状または島状に形成される。この場合、金属多孔体の露出部が不動態化すると、金属多孔体とガス拡散層との接触抵抗が増大する。この場合においても、シート部材21を設けることによって、ガス拡散層11から金属多孔体12にかけての接触抵抗を低下させることができる。シート部材21と貴金属との接触面積が確保されるからである。したがって、シート部材21を設けることによって、貴金属量を低下させることができる。同様に、シート部材23を設けることによって、金属多孔体15における貴金属量を低下させることができる。
【0035】
また、シート部材22が設けられていない場合には、金属多孔体12とセパレータ13とは、点接触する傾向にある。特に、セパレータ13の導電性確保のために表面にエッチング処理を施す場合にはセパレータ13表面に凹凸が形成されることから、点接触の傾向が大きくなる。これに対して、本実施例においては、金属多孔体12よりも高い柔軟性を有するシート部材22が金属多孔体12とセパレータ13との間に配置されていることから、シート部材22と金属多孔体12とが面接触するとともに、シート部材22とセパレータ13とが面接触する。また、シート部材22は、金属多孔体12よりも高い緻密度を有している。
【0036】
この場合、シート部材22と金属多孔体12との間の接触面積およびシート部材22とセパレータ13との間の接触面積は、シート部材22が設けられていない場合における金属多孔体12とセパレータ13との接触面積に比較して大きくなる。それにより、金属多孔体12からセパレータ13にかけての接触抵抗が低下する。同様に、シート部材24を設けることによって、金属多孔体15からセパレータ16にかけての接触抵抗が低下する。貴金属がセパレータ13,16の表面全体を覆わずに粒子状または島状に形成されていても、金属多孔体12からセパレータ13にかけての接触抵抗が低下するとともに、金属多孔体15からセパレータ16にかけての接触抵抗が低下する。したがって、貴金属量を低下させることができる。
【0037】
以上のことから、燃料電池100全体の接触抵抗が低下する。それにより、燃料電池100において高い発電能力が得られる。
【実施例2】
【0038】
続いて、本発明の第2実施例に係る燃料電池100aについて説明する。燃料電池100aにおいては、金属多孔体12,15の代わりに金属多孔体12a,15aが用いられている。金属多孔体12a,15aとして、発泡金属の代わりにパンチングメタルが用いられている。ここでいうパンチングメタルとは、金型等を用いて凹凸および貫通孔を設けた金属板であって、反応ガスが流動可能な3次元網目構造を有する。
【0039】
図4(a)は、ガス拡散層11、金属多孔体12aおよびセパレータ13の拡大図である。図4(b)は、ガス拡散層14、金属多孔体15aおよびセパレータ16の拡大図である。
【0040】
本実施例においても、ガス拡散層11と金属多孔体12aとが点接触し、ガス拡散層14と金属多孔体15aとが点接触する傾向にある。また、セパレータ13と金属多孔体12aとが点接触し、セパレータ16と金属多孔体15aとが点接触する傾向にある。そこで、シート部材21を設けることによって、ガス拡散層11から金属多孔体12aにかけての接触抵抗を低下させることができ、シート部材23を設けることによって、ガス拡散層14から金属多孔体15aにかけての接触抵抗を低下させることができる。また、シート部材22を設けることによって、金属多孔体12aからセパレータ13にかけての接触抵抗を低下させることができ、シート部材24を設けることによって、金属多孔体15aからセパレータ16にかけての接触抵抗を低下させることができる。さらに、シート部材によって、パンチングメタルのガス拡散層への食い込みを抑制することができる。その結果、ガス拡散層11,14の目詰まりが抑制される。
【実施例3】
【0041】
続いて、本発明の第3実施例に係る燃料電池100bについて説明する。燃料電池100bにおいては、シート部材21の代わりにシート部材21aが設けられ、シート部材23の代わりにシート部材23aが設けられている。シート部材21a,23aがシート部材21,23と異なる点は、面内における開口率である。
【0042】
図5(a)は、シート部材21a,23aの模式的な平面図である。図5(a)に示すように、シート部材21a,23aにおいては、反応ガスの上流側における貫通孔の径が小さく、反応ガスの下流側における貫通孔の径が大きくなっている。この場合、シート部材21a,23aの開口率は、反応ガスの上流側において低く、反応ガスの下流側において高くなる。
【0043】
ここで、反応ガスに含まれる水素量および酸素量は、発電に供されるとともに低下する。したがって、反応ガス中の水素量および酸素量は、上流側において多く、下流側において少なくなる。本実施例においては、シート部材21a,23aの開口率が反応ガスの上流側において低く反応ガスの下流側において高くなることから、ガス拡散層11の面内方向において水素供給量のばらつきを抑制することができ、ガス拡散層14の面内方向において酸素供給量のばらつきを抑制することができる。それにより、面内方向における発電ばらつきを抑制することができる。
【0044】
図5(b)は、シート部材21a,23aの他の例を示す図である。図5(b)に示すように、シート部材21a,23aにおいては、反応ガスの上流側における貫通孔数が少なく、反応ガスの下流側における貫通孔数が多くなっている。それにより、シート部材21a,23aの開口率は、反応ガスの上流側において低く、反応ガスの下流側において高くなる。この場合においても、ガス拡散層11の面内方向において水素供給量のばらつきを抑制することができ、ガス拡散層14の面内方向において酸素供給量のばらつきを抑制することができる。
【0045】
以上のように、貫通孔の数、貫通孔の径にかかわらず、シート部材21a,23aの開口率を反応ガスの上流側において低く反応ガスの下流側において高く設定することによって、ガス拡散層11の面内方向において水素供給量のばらつきを抑制することができ、ガス拡散層14の面内方向において酸素供給量のばらつきを抑制することができる。
【実施例4】
【0046】
続いて、本発明の第4実施例に係る燃料電池スタック200について説明する。図6(a)は、燃料電池スタック200の概観図である。図6(a)に示すように、燃料電池スタック200は、複数の燃料電池100が積層された構造を有する。また、積層方向のいずれか一方端に、反応ガスの供給口が設けられている。反応ガスは、燃料電池スタック200内に設けられたマニホールド(図示せず)を通って、各燃料電池100に供給される。
【0047】
このスタック構造においては、反応ガスの上流側の燃料電池100においては水素供給量および酸素供給量が多くなり、反応ガスの下流側の燃料電池100においては水素供給量および酸素供給量が少なくなる。
【0048】
そこで、本実施例においては、図6(b)および図6(c)に示すように、反応ガスの上流側の燃料電池100においては比較的開口率の低いシート部材21,23を用い、反応ガスの下流側の燃料電池100においては図2(b)よりも開口率の高いシート部材21,23を用いる。この場合、各燃料電池100間における水素供給量および酸素供給量のばらつきを抑制することができる。それにより、燃料電池スタック200の積層方向における発電ばらつきを抑制することができる。
【0049】
なお、燃料電池100の代わりに燃料電池100aを積層させる場合、図6(d)および図6(e)に示すように、反応ガス上流側の燃料電池100aにおいては開口率が全体的に低いシート部材21a,23aを用い、反応ガス下流側の燃料電池100aにおいては図6(d)よりも全体的に開口率が高いシート部材21a,23aを用いる。それにより、燃料電池スタック200の積層方向における発電ばらつきをより抑制することができる。
【0050】
なお、上記各実施例においては、アノード側およびカソード側の両方にシート部材が設けられているが、いずれか一方に設けられた場合においても本発明の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施例に係る燃料電池の模式的断面図である。
【図2】シート部材について説明するための図である。
【図3】シート部材の配置方法について説明するための図である。
【図4】金属多孔体の他の例について説明するための図である。
【図5】第3実施例に係るシート部材について説明するための図である。
【図6】燃料電池スタックについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
10 膜−電極接合体
11,14 ガス拡散層
12,15 金属多孔体
13,16 セパレータ
100 燃料電池
200 燃料電池スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜−電極接合体に沿って設けられたガス拡散層と、
ガス流路および集電体として機能し、表面に金属がコートされた金属多孔体と、
前記ガス拡散層と前記金属多孔体との間に設けられ、前記金属多孔体よりも柔軟性が高く、厚み方向に貫通する貫通孔を備えつつ前記ガス拡散層よりも緻密度が高く、導電性を有するシート部材と、を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記金属多孔体にコートされた金属は、貴金属であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記金属多孔体にコートされた金属は、前記金属多孔体表面に、粒子状または島状にコートされていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記金属多孔体を構成する金属は、チタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
前記シート部材の開口率は、反応ガスの上流側に比較して下流側において高くなっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項6】
前記シート部材においては、反応ガスの上流側に比較して下流側において貫通孔数が多いことを特徴とする請求項5記載の燃料電池。
【請求項7】
前記シート部材においては、反応ガスの上流側に比較して下流側において貫通孔の孔径が大きいことを特徴とする請求項5または6記載の燃料電池。
【請求項8】
膜−電極接合体と、
ガス流路および集電体として機能し、表面に金属がコートされた金属多孔体と、
前記金属多孔体の前記膜−電極接合体と反対側に設けられ、表面に金属がコートされたセパレータと、
前記金属多孔体と前記セパレータとの間に設けられ、前記金属多孔体よりも柔軟性が高く、前記金属多孔体よりも緻密度が高く、導電性を有するシート部材と、を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
前記セパレータにコートされた金属は、貴金属であることを特徴とする請求項8記載の燃料電池。
【請求項10】
前記セパレータにコートされた金属は、前記セパレータ表面に、粒子状または島状にコートされていることを特徴とする請求項8または9記載の燃料電池。
【請求項11】
前記金属多孔体にコートされた金属は、貴金属であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項12】
前記金属多孔体にコートされた金属は、前記金属多孔体表面に、粒子状または島状にコートされていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項13】
前記金属多孔体を構成する金属は、チタンであることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項14】
前記セパレータを構成する金属は、チタンであることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項15】
前記シート部材は、黒鉛粒子焼結体、導電性樹脂、Ag焼結体シートまたは金属/樹脂複合材からなることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池が複数積層され、
反応ガスの下流側における一の燃料電池の前記シート部材の開口率は、前記反応ガスの上流側における他の燃料電池に比較して高くなっていることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−277503(P2009−277503A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127586(P2008−127586)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】