説明

燃料電池のガス拡散層の製造方法、製造装置および燃料電池

【課題】ガス拡散層に含まれる炭素繊維の突出による膜電極接合体の損傷を防止する。
【解決手段】燃料電池の製造方法は、炭素繊維から成る層と撥水層とが積層して成るガス拡散層の撥水層側に複数の連通孔を有する絶縁部材を配置し、さらにガス拡散層と絶縁部材を一対の電極で挟み、一対の電極のそれぞれの背面に一対の面圧板を配置して挟み込み、一対の面圧板によりガス拡散層を加圧する(S100)。加圧状態のまま、一対の電極に電圧が印加されると(S104)、絶縁部材の連通孔を介して撥水層側の電極に接触している炭素繊維の突き出し部分に電流が流れ、ジュール熱により燃焼し除去される。電極間に電流が流れなくなったことを検知すると(S106)、一対の電極への電圧印加を停止させ(S108)、加圧状態から減圧して常圧状態に戻す(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のガス拡散層の製造方法、製造装置および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、図8に示すように、固体高分子膜からなる電解質膜72を燃料極70と空気極74との2枚の電極で挟んだ膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、さらに2枚のセパレータ80に挟持してなるセルを最小単位とし、通常、このセルを複数積み重ねて燃料電池スタック(FCスタック)とし、高圧電圧を得るようにしている。
【0003】
固体高分子型燃料電池の発電の仕組みは、一般に、燃料極(アノード側電極)70に燃料ガス、例えば水素含有ガスが、一方、空気極(カソード側電極)74には酸化剤ガス、例えば主に酸素(O2)を含有するガスあるいは空気が供給される。水素含有ガスは、燃料ガス流路を通って燃料極70に供給され、電極の触媒の作用により電子と水素イオン(H+)に分解される。電子は外部回路を通って、燃料極70から空気極74に移動し、電流を作り出す。一方、水素イオン(H+)は電解質膜72を通過して空気極74に達し、酸素および外部回路を通ってきた電子と結合し、反応水(H2O)になる。水素(H2)と酸素(O2)および電子の結合反応と同時に発生する熱は、冷却水によって回収される。また、空気極74のあるカソード側に生成した水(以下「生成水」という)は、カソード側から排出される。
【0004】
上述した燃料電池の燃料極及び空気極は、それぞれ触媒層からなり、この触媒層にはそれぞれ水素含有ガス、酸化剤ガスを拡散するためのガス拡散層が積層されている。ところで、上述の反応により生成した生成水の排出がカソード側で滞った場合、空気極に閉塞現象(「フラッディング現象」ともいう)が生じる場合がある。そこで、ガス拡散層は、通常、炭素繊維からなる層と撥水層とからなり、撥水層により、生成水の排水が促進されて、フラッディング現象が防止される。
【0005】
しかしながら、ガス拡散層における炭素繊維の少なくとも一部が突出している場合、ガス拡散層を膜電極接合体に積層した場合に、炭素繊維の突出部により、膜電極接合体が損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、特許文献1には、炭素繊維用耐炎化糸を主成分とする織布または不織布を熱圧ロールに通過させて、表面を平滑かつ厚みを薄くした後、800〜3000℃の最終熱処理を行い、表面が平滑で厚みも薄い燃料電池用ガス拡散層材料が提案されている。また、特許文献2には、炭素繊維からなる経糸と緯糸による織布からなる燃料電池用のガス拡散層を高分子電解質膜の上に配置する前に、予め、ガス拡散層の表面を加熱することにより、炭素繊維の非平滑表面を平滑化させることが提案されている。
【0007】
一方、特許文献3には、繊維を含んでなるガス拡散層基材をローラに載せて反らせ、ガス拡散層基材から突出している繊維突起を起き上がらせ、この繊維突起を除去する方法が提案されている。特許文献4には、導電性材料と撥水剤を有する2種類の撥水ペーストを用いて、二層構造の撥水性ガス拡散層を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−111341号公報
【特許文献2】国際公開第2003/081700号パンフレット
【特許文献3】特開2008−198526号公報
【特許文献4】特開2009−181891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、予め熱処理によりガス拡散層を平滑化する場合には工程数が増え、作業が煩雑になる。また、ガス拡散層基材を反らせて繊維突起を除去したとしても、また、導電性材料と撥水剤とを含む二層構造のガス拡散層を形成したとしても、膜電極接合体の両面をそれぞれガス拡散層で挟み、さらに一対のセパレータで挟んで形成された燃料電池のセルをスタック状に積層した場合、ガス拡散層の厚みが元の厚みよりも薄くなるため、ガス拡散層の内部に隠れていた繊維の一部が突出してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ガス拡散層に含まれる炭素繊維の突出による膜電極接合体又は電解質膜の損傷が防止される燃料電池のガス拡散層の製造方法、製造装置および燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池のガス拡散層の製造方法、製造装置および燃料電池は以下の特徴を有する。
【0012】
(1)炭素繊維から成る層と撥水層とが積層して成るガス拡散層に対しガス拡散層の厚み方向に予め定められた圧力を加える工程と、予め定められた圧力で押圧された際に撥水層から突出した炭素繊維を除去する工程と、を有する燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0013】
予め定められた圧力として、例えば、燃料電池のセルの積層時相当の圧力を、ガス拡散層の厚み方向に加え、この押圧状態で、撥水層から突出した炭素繊維を除去することにより、ガス拡散層を用いた燃料電池のセルを積層した際に、ガス拡散層由来の炭素繊維の突出による膜電極接合体、電解質膜の損傷が防止される。
【0014】
(2)上記(1)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、突出した炭素繊維を除去する工程は、突出した炭素繊維に通電することにより燃焼させて除去する工程である燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0015】
炭素繊維が電気伝導性を有することを利用し、突出した炭素繊維に電流を流してジュール熱により燃焼させ除去することができる。
【0016】
(3)上記(1)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、突出した炭素繊維を除去する工程は、炭素繊維からなる層と接する面に対して反対側の撥水層の面に絶縁部材を配置し、さらにガス拡散層と絶縁部材とを挟むように一対の電極を配置して、前記撥水層から突出しさらに絶縁部材を貫通して一方の電極に接触した炭素繊維に通電することにより突出した炭素繊維を燃焼させて除去する工程である燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0017】
ガス拡散層と電極との間に絶縁部材を配置することで、突出した炭素繊維のみを電極に接触させて燃焼させ除去することができる。
【0018】
(4)上記(3)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、さらに、突出した炭素繊維に通電する前に、押圧下で、前記絶縁部材に対して相対的にガス拡散層の平面方向にガス拡散層をスライドさせるスライド工程を有する燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0019】
絶縁部材に対し相対的にガス拡散層をスライドさせることにより、撥水層から突出するものの寝ていた炭素繊維が起き上がり、その炭素繊維の先端が電極に接触する。その結果、スライドさせない場合に比べ、撥水層から突出した炭素繊維の除去率が高くなる。また、突出した炭素繊維を撥水層からより突出させるべく過剰な加圧を要しないため、ガス拡散層の構造、特に炭素繊維からなる層の構造が維持される。
【0020】
(5)上記(1)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、前記予め定められた圧力を加える工程は、ガス拡散層の炭素繊維からなる層側からのみ、瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加える工程であり、突出した炭素繊維を除去する工程は、炭素繊維からなる層と接する面に対して反対側の撥水層の面に絶縁部材を配置し、さらにガス拡散層と絶縁部材とを挟むように一対の電極を配置して、前記撥水層から突出しさらに絶縁部材を貫通して一方の電極に接触した炭素繊維に通電することにより突出した炭素繊維を燃焼させて除去する工程である燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0021】
瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加えることにより、例えば、マイクロポーラス層(以下「MPL層」ともいう)からなる撥水層の場合、MPL層に瞬間的に荷重が付加され、突出した炭素繊維が燃焼除去されるので、MPL層の細孔が維持される。
【0022】
(6)上記(1)または(5)記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、前記予め定められた圧力は、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力である燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0023】
燃料電池の複数のセルをスタック状に積層し、複数のセルの積層方向に面圧がかかっても、ガス拡散層由来の炭素繊維による膜電極接合体の損傷が防止される。
【0024】
(7)上記(2)から(6)のいずれか1つに記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、撥水層から突出した炭素繊維を燃焼除去した際に撥水層に形成される凹部に、撥水層を構成する材料と同種の材料を埋める燃料電池のガス拡散層の製造方法である。
【0025】
撥水層から突出した炭素繊維を除去した後の撥水層の凹部を、撥水層を構成する材料と同種の材料を埋めることにより、ガス拡散層の電気伝導性、ガス拡散性、撥水性が回復する。
【0026】
(8)上記(1)または(2)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法により製造されたガス拡散層を、電解質膜の一方面に燃料極を他方の面に空気極をそれぞれ配した膜電極接合体に積層してなる発電体と、セパレータとが交互に積層して形成された燃料電池である。
【0027】
上述した製造方法により炭素繊維の突出部が処理されていないガス拡散層に比べ、炭素繊維の突出部による膜電極接合体の損傷の可能性が低減される。
【0028】
(9)炭素繊維から成る層と撥水層とが積層して成るガス拡散層に対しガス拡散層の厚み方向に圧力を加える加圧手段と、ガス拡散層に予め定められた圧力が加えられている状態で撥水層から突出した炭素繊維を除去する除去手段と、を備えた燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0029】
予め定められた圧力として、例えば、燃料電池のセルの積層時相当の圧力を、ガス拡散層の厚み方向に加え、この押圧状態で、撥水層から突出した炭素繊維を除去することにより、ガス拡散層を用いた燃料電池のセルを積層した際に、ガス拡散層由来の炭素繊維の突出による膜電極接合体、電解質膜の損傷が防止される。
【0030】
(10)上記(9)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、前記除去手段が、炭素繊維から成る層と接する面に対して反対側の撥水層の面に配置される絶縁部材と、ガス拡散層と絶縁部材とを挟むように設けられた一対の電極と、一対の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、を有する燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0031】
撥水層を貫通して撥水層から突出した炭素繊維が、絶縁部材を貫通し一方の電極に接触し、一対の電極に電圧を印加することで、電気伝導性を有する突出した炭素繊維に電流を流し、ジュール熱により燃焼させて除去することができる。
【0032】
(11)上記(10)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、前記絶縁部材は、連通孔を有する燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0033】
撥水層を貫通して撥水層から突出した炭素繊維が、絶縁部材の連通孔を介して一方の電極に接触し、一対の電極に電圧を印加することで、電気伝導性を有する突出した炭素繊維に電流を流し、ジュール熱により燃焼させて除去することができる。例えば、絶縁部材に連通孔が設けられていない場合に比べ、撥水層を貫通して突出した炭素繊維が、絶縁部材から連通孔を介して突出し易くなり、その結果、ジュール熱により燃焼され除去され易くなる。
【0034】
(12)上記(10)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、さらに、押圧下で、前記絶縁部材に対して相対的にガス拡散層の平面方向にガス拡散層をスライドさせるガス拡散層スライド手段を有する燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0035】
絶縁部材に対し相対的にガス拡散層をスライドさせることにより、撥水層から突出するものの寝ていた炭素繊維が起き上がり、その炭素繊維の先端が電極に接触する。その結果、スライドさせない場合に比べ、撥水層から突出した炭素繊維の除去率が高くなる。また、突出した炭素繊維を撥水層からより突出させるべく過剰な加圧を要しないため、ガス拡散層の構造、特に炭素繊維からなる層の構造が維持される。
【0036】
(13)上記(9)に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、前記加圧手段は、ガス拡散層の炭素繊維からなる層側からのみ、瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加える加圧手段であり、前記除去手段が、炭素繊維から成る層と接する面に対して反対側の撥水層の面に配置される絶縁部材と、ガス拡散層と絶縁部材とを挟むように設けられた一対の電極と、一対の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、を有する燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0037】
瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加えることにより、例えば、マイクロポーラス層(以下「MPL層」ともいう)からなる撥水層の場合、MPL層に瞬間的に荷重が付加され、突出した炭素繊維が燃焼除去されるので、MPL層の細孔が維持される。
【0038】
(14)上記(9)または(13)記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、前記予め定められた圧力は、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力である燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0039】
燃料電池の複数のセルをスタック状に積層し、複数のセルの積層方向に面圧がかかっても、ガス拡散層由来の炭素繊維による膜電極接合体の損傷が防止される。
【0040】
(15)上記(9)から(14)のいずれか1つに記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、さらに、撥水層から突出した炭素繊維を燃焼除去した際に撥水層に形成される凹部に、撥水層を構成する材料と同種の材料を塗布する塗布手段を有する燃料電池のガス拡散層の製造装置である。
【0041】
撥水層から突出した炭素繊維を除去した後の撥水層の凹部を、撥水層を構成する材料と同種の材料を塗布して埋めることにより、ガス拡散層の電気伝導性、ガス拡散性、撥水性が回復する。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、ガス拡散層を用いた燃料電池のセルを積層した際に、ガス拡散層由来の炭素繊維の突出による膜電極接合体、電解質膜の損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造方法の一例を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】撥水層から突出した炭素繊維の突出部をスライドさせることにより起き上がらせるメカニズムを説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】突出した炭素繊維を燃焼除去後に形成される撥水層の凹部を埋める方法の一例を説明する図である。
【図7】炭素繊維の突き出しによる損傷の状況の一例を説明する図である。
【図8】燃料電池のセルの構成および発電時のメカニズムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0045】
本実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造方法および製造装置について説明する前に、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に生じる、炭素繊維の突き出しによる膜電極接合体の損傷の状況について、図7を用いて説明する。
【0046】
図7に示すように、一般に、燃料電池のセルは、電極としてそれぞれ機能する一対の触媒層で電解質膜を挟んで形成された膜電極接合体(MEA)50の両面に、それぞれ炭素繊維24から成る層と撥水層22とが積層して成るガス拡散層52,54が設けられ、さらに膜電極接合体50とガス拡散層52,54を挟むようにセパレータ62,64が配置されて形成される。ここで、炭素繊維24から成る層は、炭素繊維24の集合体からなり、この炭素繊維24の集合体が撥水層22に接合されて、ガス拡散層52,54が形成されている。
【0047】
通常、燃料電池のセルの状態では、炭素繊維24から成る層から炭素繊維24が撥水層22に向かって突き出したとしても、炭素繊維24の突き出し部分は撥水層22内に留まる。しかし、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した場合には、ガス拡散層52,54の厚み方向に圧力が加わり、ガス拡散層52,54の厚みは薄くなるため、炭素繊維の突き出し部分60は撥水層22から突出し、膜電極接合体50に損傷を与える可能性がある。ここで、膜電極接合体50が損傷すると、燃料電池の燃費が悪化するおそれがある。
【0048】
そこで、本発明における燃料電池のガス拡散層の製造方法および製造装置は、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した場合、この積層時の面圧がかかっても、ガス拡散層由来の炭素繊維による膜電極接合体の損傷を防止するものである。
【0049】
図1には、本実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造装置の一例が示されている。図1に示すように、本実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造装置は、炭素繊維24から成る層と撥水層22とが積層して成るガス拡散層20に対しガス拡散層20の厚み方向に圧力を加える加圧手段と、ガス拡散層20に予め定められた圧力が加えられている状態で撥水層22から突出した炭素繊維24を除去する除去手段と、を備える。
【0050】
ここで、「予め定められた圧力」は、本実施の形態では、「燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力」をいい、「面圧」とは、膜電極接合体やガス拡散層などの厚み方向にかかる圧力をいう。また、本実施の形態における「燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力」は、各燃料電池のセルのスタック圧に応じて適宜設定されるが、例えば、約0.1MPa〜2MPaである。
【0051】
本実施の形態における除去手段は、ジュール熱または酸素プラズマからなる燃焼除去手段、刃物を用いた切断除去手段、及び撥水層から突出した炭素繊維の先端部の折り曲げ除去手段からなる群から選択される1種の除去手段が用いられるが、ここでは、ジュール熱を用いた燃焼除去手段を例に取り、以下に説明する。
【0052】
除去手段は、図1に示すように、炭素繊維24から成る層と接する面と反対側の撥水層22の面に配置される複数の連通孔19を有する絶縁部材18と、ガス拡散層20と絶縁部材18とを挟むように設けられた一対の電極16a,16bと、一対の電極16a,16bに電圧を印加する電圧印加手段である電源30とを備える。
【0053】
加圧手段は、図1に示すように、ガス拡散層20の厚み方向に圧力をかける、すなわちガス拡散層20に面圧をかけるように、一対の電極16a,16bのそれぞれの背面に設けられた面圧板14a,14bと、面圧板14a,14bに対して図1に示す白抜き矢印方向に面圧を印加可能な加圧装置12とを有する。
【0054】
さらに、本実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造装置は、図1に示すように、枠10の中に、上記加圧装置12、面圧板14a,14b、電極16a,16b、絶縁部材18、ガス拡散層20が層状に順次設置され、電源30が電極16a,16bに電気的に接続され、制御装置40が加圧装置12に電気的に接続され、電源30と制御装置40とが電気的に接続されて形成されている。
【0055】
また、本実施の形態における炭素繊維24から成る層は、炭素繊維の集合体として、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロスなどの炭素質多孔質体が用いられ、炭素繊維として、例えば、アクリル繊維や、加熱溶融して紡糸したピッチを高温で炭化させたPAN(Polyacrylonitrile)系炭素繊維が用いられる。また、撥水層22は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系ポリマーとカーボンブラックにより形成され、炭素繊維24の集合体に撥水層22が接合されて、ガス拡散層20が形成されている。
【0056】
次に、図1,2を用いて、本実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造方法の一例について説明する。
【0057】
まず、ガス拡散層20の撥水層22側に絶縁部材18を配置し、さらにガス拡散層20と絶縁部材18を一対の電極16a,16bで挟み、さらに一対の電極16a,16bのそれぞれの背面に面圧板14a,14bを配置して挟み込み、制御装置40からの出力に基づき、加圧装置12によって、面圧板14a,14bをそれぞれ図1に示す白抜き矢印方向に加圧する(S100)。加圧により、撥水層22に隠れていた炭素繊維24の突き出し部分が撥水層22から突出し、突出した炭素繊維24の突き出し部分が絶縁部材18の連通孔19を介して電極16bに接触することになる(図1の破線で囲んだ部分X1,X2,X3に相当)。
【0058】
次いで、加圧装置12により印加された「面圧」が「閾値」になったことを制御装置40が検知すると(S102)、制御装置40は、加圧装置12にこの面圧状態を維持させたまま、電源30から一対の電極16a,16bに電圧を印加させる。ここで、「閾値」として、「燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力」を設定しておく。
【0059】
次に、一対の電極16a,16bに電圧が印加されると(S104)、炭素繊維は電気伝導性を有することから、絶縁部材18の連通孔19を介して電極16bに接触している炭素繊維の突き出し部分に電流が流れ、ジュール熱により突出した炭素繊維は燃焼し除去される。電極16bに接触していた炭素繊維の突き出し部分が燃焼し、電極16a,16bの間に電流が流れなくなったことを制御装置40が検知すると(S106)、制御装置40は、電源30から一対の電極16a,16bへの電圧印加を停止させ(S108)、さらに加圧装置12による加圧状態から減圧して常圧に戻し(S110)、処理済みのガス拡散層を取り出す。
【0060】
ここで、絶縁部材18は、スタック状に積層された際の膜電極接合体の厚みと同等またはそれ以下の厚みを有する。これにより、燃料電池のセルをスタック状に積層した際に、ガス拡散層20から突出した炭素繊維24による膜電極接合体の貫通などの損傷が防止される。
【0061】
絶縁部材18に設けられる連通孔19の直径は、ガス拡散層20の炭素繊維から成る層の炭素繊維の径や長さに応じて適宜選択されるが、好ましくは、炭素繊維の直径の数倍程度である。これにより、より確実にスタック積層時に突出する炭素繊維の突き出しを除去することができる。
【0062】
以上、図1に示すように、連通孔19を有する絶縁部材18を例にとって説明したが、これに限るものではなく、絶縁部材18は、絶縁性の部材であって、多孔質、繊維状部材など、容易に炭素繊維が貫通する部材であれば、図1に示す連通孔19は必須ではない。また、炭素繊維の突き出しをジュール熱により燃焼させることから、絶縁性で容易に炭素繊維が貫通しかつ耐熱性の部材が好ましく、例えば、シリコーン樹脂と石綿、ガラス繊維から成る絶縁部材が好ましい。
【0063】
また、電源30より印加される電圧は、電極16bに接触している炭素繊維24の突き出しを燃焼可能な電流が流れる程度の電圧であればよく、絶縁部材18の耐熱温度を考慮して、適宜電圧が選択される。
【0064】
また、図1では、ガス拡散層20の両面から面圧を加えるために、面圧板14a,14bそれぞれ白抜き矢印方向に移動させているが、これに限るものではなく、少なくとも一方の面圧板を用いて面圧を加えてもよい。
【0065】
図3には、本実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置の一例が示されている。なお、上述した実施の形態のガス拡散層の製造装置と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。図3に示すように、実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置は、荷重を付加可能なロール状の電極16c,16dを有し、ロール状の電極16c,16dは電源30と電気的に接続され、電源30により電圧が印加される。また、帯状のガス拡散層20は、ローラ32,34を回動させることにより間欠的に一対のロール状の電極16c,16d間に搬送される。また、絶縁部材18は、ガス拡散層20の撥水層側に重なるように、ローラ36,38を回動させることにより間欠的に、一対のロール状の電極16c,16d間に搬送される。
【0066】
次に、本実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置の動作について以下に説明する。ローラ32,34を回動させることにより、矢印48の方向にガス拡散層20を搬送し、また、ローラ36,38を回動させることにより、矢印42の方向に絶縁部材18を搬送し、ガス拡散層20の撥水層側に絶縁部材18が積層するようにして、一対のロール状の電極16c,16dの間に搬送する。ついで、ローラ32,34,36,38による搬送を止め、一対のロール状の電極16c,16d間の距離を縮める方向に、ロール状の電極16c,16dの両方または少なくとも一方を移動させ、予め定められた圧力で、積層されたガス拡散層20と絶縁部材18とを押圧する。そして、押圧下で、ローラ36,38を逆回動させて矢印44方向に絶縁部材18を逆送させる。これにより、図4に示すように、絶縁部材18に対して相対的にガス拡散層20がスライドし、撥水層22から僅かに突出しているものの、絶縁部材18を突き抜けない炭素繊維24の突出部や撥水層22から突出するものの寝ていた炭素繊維24を起き上がらせることができる。その結果、起き上がった炭素繊維24の突出部がロール状の電極16cに接触し、一対のロール状の電極16c,16d間に電源30によって電圧が印加され、電気伝導性を有する炭素繊維24に電気が流れ、ジュール熱により突出した炭素繊維24が燃焼し除去される。その後、一対のロール状の電極16c,16d間の距離を開けるように、ロール状の電極16c,16dの両方または一方を移動させ、ローラ32,34,36,38を用いて、ガス拡散層20と絶縁部材18とをそれぞれ矢印48,42方向に搬送する。ついで、上記同様に一対のロール状の電極16c,16d間の距離を縮める方向に、ロール状の電極16c,16dの両方または一方を移動させ、ガス拡散層20の新たな面と絶縁部材18とを押圧し、上記同様に、撥水層から突出した炭素繊維24の除去を行う。
【0067】
ここで、一対のロール状の電極16c,16d間の距離の制御は、例えば、図3に示すように、電極16dのみ(すなわち、ガス拡散層の炭素繊維からなる層の側からのみ)白抜き矢印46のように移動させてもよい。また、絶縁部材18は、ローラ36,38に渡しかけたベルト状の絶縁部材であっても、または、ローラ36,38に端部がそれぞれ固定された絶縁部材であっても良い。なお、ローラ36,38に端部がそれぞれ固定された絶縁部材の場合、絶縁部材は、炭素繊維24の突出部を起き上がらせるために、矢印44の方向に移動し、一方、突出した炭素繊維除去後には矢印42の方向に移動する。また、絶縁部材18を矢印44に移動させるとともに、ガス拡散層20を矢印48方向に移動させてもよい。すなわち、本実施の形態におけるガス拡散層スライド手段は、少なくとも絶縁部材18を逆送させるローラ36,38からなり、場合によっては、ローラ36,38に加え、ガス拡散層20を搬送させるローラ32,34を含む。
【0068】
また、ロール状の電極16c,16dにより、ガス拡散層20と絶縁部材18とを押圧すると同時に、絶縁部材18に対し相対的にガス拡散層20をスライドさせることがより好ましい。また、押圧と同時に、電源30を用いてロール状の電極16c,16dに電圧を印加することがより好ましい。
【0069】
上述のように、絶縁部材18に対し相対的にガス拡散層20をスライドさせることにより、撥水層から突出するものの寝ていた炭素繊維が起き上がり、その炭素繊維の先端が電極に接触する。その結果、スライドさせない場合に比べ、撥水層から突出した炭素繊維の除去率が高くなる。これにより、燃料電池をスタック状に組む上げた際に、炭素繊維の突出部に起因する電解質膜の損傷がより低減される。また、突出した炭素繊維を撥水層からより突出させるべく過剰な加圧を要しないため、ガス拡散層の構造、特に炭素繊維からなる層の構造が維持される。
【0070】
上記実施の形態において、相対的にスライドさせるガス拡散層20の滑らせる距離は、炭素繊維長より長いことが好ましく、例えば、数mm/秒である。また、突出した炭素繊維の突出方向を考慮し、2方向以上に相対的にガス拡散層20をスライドさせることがより好ましい。さらに、ロール状の電極16c,16dの少なくとも一方をガス拡散層20の平面方向に沿って押圧下で平行にスライドさせることにより、さらに僅かに突出した炭素繊維や突出するものの寝ていた炭素繊維が起き上がり、炭素繊維の先端が電極と接触して燃焼除去される。また、絶縁部材18の弾性率を、炭素繊維24の弾性率より低くすることにより、炭素繊維24が絶縁部材18から突出し易くなり、突出した炭素繊維の燃焼除去効率が向上する。
【0071】
図5には、本実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置の一例が示されている。なお、上述した実施の形態のガス拡散層の製造装置と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。図5に示すように、実施の形態における他の燃料電池のガス拡散層の製造装置は、炭素繊維24から成る層と接する面と反対側の撥水層22の面に配置される複数の連通孔19を有する絶縁部材18と、ガス拡散層20に接する電極16aと、絶縁部材18に接する金属フィルム17と、電極16aと金属フィルム17との間に電圧を印加する電圧印加手段である電源30とを備える。
【0072】
本実施の形態における加圧手段は、ガス拡散層20の炭素繊維24からなる層の側からのみ、瞬間的に、予め定められた圧力以上の圧力を面圧板14aを介してガス拡散層20に加える加圧装置11であり、加圧装置11として、例えばサーボパルサが用いられる。ここで、「予め定められた圧力」は、「燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力」をいう。また、「瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加える」とは、ガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加えた直後に、その圧力を解除することをいい、さらに、具体的には、ガス拡散層に、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力以上の過多面圧を加えた直後に面圧を解除することをいう。これにより、マイクロポーラス層(以下「MPL層」ともいう)からなる撥水層22の場合、MPL層に瞬間的に荷重が付加され、突出した炭素繊維が燃焼除去されるので、MPL層の細孔が維持される。
【0073】
金属フィルム17は、導電性の層であれば如何なるものであってもよいが、金(Au)、銅(Cu)などの金属箔であっても良く、例えば、絶縁部材18のMPL層と接する面と反対面に接合してもよい。
【0074】
ガス拡散層20に予め定められた速度以上で瞬間的に面圧を加えるために、加圧手段には、以下に示す式に基づいて求められる「加速度」が付与される。
[数1]
ガス拡散層質量(単位面積当たりの質量)×加速度>必要面圧(単位面積当たりの荷重)、すなわち、
加速度>必要面圧(単位面積当たりの荷重)/ガス拡散層質量(単位面積当たりの質量)
【0075】
図6には、上述した実施の形態の装置及び方法により、突出した炭素繊維を燃焼除去後に形成される撥水層の凹部を埋める方法が例示されている。
【0076】
図6に示すように、撥水層22から突出した炭素繊維24が燃焼除去されると、撥水層22に凹部が形成され、凹部には、炭素繊維24の燃焼後にスス状カーボンが残る。ここで、撥水層22に形成された凹部では、電気伝導性が低く、燃料電池の稼働時の生成水の排水性が他の部分に比べ低く、また、ガス拡散性も低下する。また、凹部に生成水が溜まる場合もある。そこで、本実施の形態では、凹部に、撥水層22を構成する材料と同種の材料を埋めて埋立部28を形成する。凹部に、撥水層22を構成する樹脂(例えば、PTFE樹脂)を塗布し、その後、超音波を印加して、凹部の樹脂と凹部に残留したスス状カーボン26を混合して、得られた混合物27を焼成し、撥水層22を構成する材料と同種の材料で凹部を埋める。この場合、凹部に残留したスス状カーボン26を取り除く工程が不要となり、樹脂のみを塗布するだけで、撥水層22とほぼ同じ組成物で凹部が埋められる。なお、超音波の条件は、例えば、20kHzで約30分程度混合される。さらに、焼成後の埋立部28が凸状になる場合には、燃料電池の膜触媒に部分的に圧力がかかるため、埋立部28にプレスを繰り返し、撥水層の表面を平坦にする。なお、プレスの条件は、ガス拡散層20を破壊しない条件で設定され、例えば、100℃で1分間に1MPaのプレスを10回繰り返すことにより平坦にすることができる。
【0077】
図6に示す方法によって、ガス拡散層の電気伝導性、ガス拡散性、排水性が回復する。
【0078】
また、本実施の形態における燃料電池のガス拡散層の製造装置は、凹部を埋める装置構成として、撥水層から突出した炭素繊維を燃焼除去した際に撥水層に形成される凹部に、撥水層を構成する材料と同種の材料を塗布する塗布手段と、必要に応じて、塗布された材料を焼成する焼成手段とを有する。
【0079】
本実施の形態における燃料電池は、上述したガス拡散層の製造方法により製造されたガス拡散層を、電解質膜の一方面に燃料極を他方の面に空気極をそれぞれ配した膜電極接合体に積層して成る発電体と、セパレータとが交互に積層して形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の燃料電池の製造方法および燃料電池は、燃料電池を用いる用途であれば、如何なる用途にも有効であるが、特に車両用の燃料電池に供することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 枠、12 加圧装置、14a,14b 面圧板、16a,16b,16c,16d 電極、17 金属フィルム、18 絶縁部材、19 連通孔、20,52,54 ガス拡散層、22 撥水層、24 炭素繊維、26 スス状カーボン、27 混合物、28 埋立部、30 電源、32,34,36,38 ローラ、40 制御装置、50 膜電極接合体、60 突き出し部分、62,64 セパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維から成る層と撥水層とが積層してなるガス拡散層に対しガス拡散層の厚み方向に予め定められた圧力を加える工程と、
予め定められた圧力で押圧された際に撥水層から突出した炭素繊維を除去する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、
突出した炭素繊維を除去する工程は、突出した炭素繊維に通電することにより燃焼させて除去する工程であることを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、
突出した炭素繊維を除去する工程は、炭素繊維からなる層と接する面に対して反対側の撥水層の面に絶縁部材を配置し、さらにガス拡散層と絶縁部材とを挟むように一対の電極を配置して、前記撥水層から突出しさらに絶縁部材を貫通して一方の電極に接触した炭素繊維に通電することにより突出した炭素繊維を燃焼させて除去する工程であることを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、
さらに、突出した炭素繊維に通電する前に、押圧下で、前記絶縁部材に対して相対的にガス拡散層の平面方向にガス拡散層をスライドさせるスライド工程を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、
前記予め定められた圧力を加える工程は、ガス拡散層の炭素繊維からなる層側からのみ、瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加える工程であり、
突出した炭素繊維を除去する工程は、炭素繊維からなる層と接する面に対して反対側の撥水層の面に絶縁部材を配置し、さらにガス拡散層と絶縁部材とを挟むように一対の電極を配置して、前記撥水層から突出しさらに絶縁部材を貫通して一方の電極に接触した炭素繊維に通電することにより突出した炭素繊維を燃焼させて除去する工程であることを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項5記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、
前記予め定められた圧力は、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力であることを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法において、
撥水層から突出した炭素繊維を燃焼除去した際に撥水層に形成される凹部に、撥水層を構成する材料と同種の材料を埋めることを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池のガス拡散層の製造方法により製造されたガス拡散層を、電解質膜の一方面に燃料極を他方の面に空気極をそれぞれ配した膜電極接合体に積層して成る発電体と、セパレータとが交互に積層して形成されたことを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
炭素繊維から成る層と撥水層とが積層して成るガス拡散層に対しガス拡散層の厚み方向に圧力を加える加圧手段と、
ガス拡散層に予め定められた圧力が加えられている状態で撥水層から突出した炭素繊維を除去する除去手段と、
を備えたことを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、
前記除去手段が、炭素繊維から成る層と接する面に対して反対側の撥水層の面に配置される絶縁部材と、
ガス拡散層と絶縁部材とを挟むように設けられた一対の電極と、
一対の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、
前記絶縁部材は、連通孔を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。
【請求項12】
請求項10に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、
さらに、押圧下で、前記絶縁部材に対して相対的に拡散層の平面方向にガス拡散層をスライドさせるガス拡散層スライド手段を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。
【請求項13】
請求項9に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、
前記加圧手段は、ガス拡散層の炭素繊維からなる層側からのみ、瞬間的にガス拡散層に予め定められた圧力以上の圧力を加える加圧手段であり、
前記除去手段が、炭素繊維から成る層と接する面に対して反対側の撥水層の面に配置される絶縁部材と、
ガス拡散層と絶縁部材とを挟むように設けられた一対の電極と、
一対の電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。
【請求項14】
請求項9または請求項13記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、
前記予め定められた圧力は、燃料電池の複数のセルをスタック状に積層した際に加わる面圧相当の圧力であることを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。
【請求項15】
請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の燃料電池のガス拡散層の製造装置において、
さらに、撥水層から突出した炭素繊維を燃焼除去した際に撥水層に形成される凹部に、撥水層を構成する材料と同種の材料を塗布する塗布手段を有することを特徴とする燃料電池のガス拡散層の製造装置。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−33458(P2012−33458A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264861(P2010−264861)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】