説明

燃料電池のセルの製造方法、燃料電池のセルの製造装置、および燃料電池

【課題】簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを、確実に不要部を発生させることなく成形する。
【解決手段】マニホールド孔3hが未だ形成されていないセパレータ3と燃料電池構成部品2とを積層して金型1にインサートし型締して、燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部15によって付与するとともに、キャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填することにより、ガスケット6を燃料電池構成部品2の周囲およびセパレータ3の一方の面と一体に成形し、その後、成形されたガスケット6とセパレータ3を打ち抜いて、マニホールド5を構成するガスケット6の内周面6aとセパレータ3のマニホールド孔3hとを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセルの製造方法、燃料電池のセルの製造装置、および燃料電池に関し、特に、複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池と、このような燃料電池において、燃料電池構成部品とセパレータとを積層して金型内にインサートしてガスケットを燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形するセルの製造方法と、マニホールドを構成し得るようにガスケットが燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されてなるセルを製造するための装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、複数のセルを積層することにより構成されている。積層されたセルは、その積層方向端部にそれぞれエンドプレートが配設され、燃料電池構成部品に所定の荷重を付与した状態で両エンドプレートがテンション部材によって締結されている(この状態を締結時という)。各セルの燃料電池構成部品としては、図11などに参照されるように、電解質膜の両面に電極層を設けてなるMEA(Membrane Electrode Assembly:膜−電極アセンブリ)21aと、MEA21aの両側に配置されたガス拡散層21bと、ガス拡散層21bへガスをそれぞれ流通させる多孔体22とを含んでおり、これらの燃料電池構成部品はセパレータ3により挟持されている。MEA21aとその両側に配置されたガス拡散層21bとにより構成される部材は、一般にMEGA21と呼ばれる。MEGA21のガス拡散層21bは、通気性を有する材料であり、一般に例えばカーボン繊維からなるカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等の多孔質シートやメッシュ状シートなどより構成されており、厚さ方向に荷重を付与することにより圧縮されるようその厚さが弾性変化する材質が採用されている。そして、燃料電池のなかには、たとえば特許文献1に開示されているように、各セルが燃料電池構成部品の一方の面にセパレータを積重して構成されており、複数のセルを積層することにより、燃料電池構成部品がそのセルのセパレータと隣接する他のセルのセパレータとの間で挟持されるよう構成されたものがある。
【0003】
各セルは、反応ガス(水素、空気等)や冷却媒体をそれぞれ分配・供給するためのマニホールドを有している。図10に示すように、セパレータ3の燃料電池構成部品2が積重される領域の周囲には、マニホールド孔3hが形成されている。図11に示すように、セパレータ3は、所定形状の溝または孔が形成された中間プレート33をカソードプレートとアノードプレートのいずれかを構成する第1プレート31と第2プレート32の間に挟んでなる三層構造とすることにより、その内部に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34が形成されている。セパレータ3内の各流路34は、所定のマニホールド孔3hに開口しており、所定のガスまたは冷却媒体が所定のマニホールド孔3hから供給され、他の対応する所定のマニホールド孔3hへと排出される。
【0004】
各セル104には、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲を取り囲み、且つ、燃料電池構成部品2の周囲をシールするようにガスケット106が一体に成形されている。ガスケット106は、図11に示すように、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲に立ち上がるように成形される基部161と、基部161の表面から燃料電池構成部品2の表面よりも図11における上方に突出するように一体に成形されたリップ部162とを有している。複数のセル104を積層し所定の荷重を付与した状態で締結されて、ガスケット106のリップ部162が隣接する他のセル104のセパレータ3に当接され潰されることにより、各セパレータ3のマニホールド孔3hがシールされた状態でガスケット106の内周面106aにより連通されて、マニホールド105を構成する。
【0005】
上記特許文献1において開示されたガスケットを成形するための金型は、その図12(b)に示されているように、下型にはセパレータをインサートしたときにそのマニホールド孔に嵌り込む突状部が形成されており、また、上型には下型の突状部と対応する突状部が形成されると共に、ガスケットの成形材料の投入口が形成されている。そして、下型と上型の突状部内には、型閉じすることによってガスケットの材料を投入口からキャビティ内に導入するための通路が形成されるようになっている。この通路をキャビティに開口させるために、特許文献1では、突状部がセパレータのマニホールド孔を突き抜けるよう形成されている。このように構成された金型によって成形されるガスケットは、特許文献1の図5に示されているように、セパレータのマニホールド孔と同じ径でマニホールドが形成されることとなる。
【0006】
また、ガスケットを成形するための従来の一般的な金型101は、図11に示すように、上型111と、下型112とからなり、上型111のガスケット106の内周壁を成形する突出部117が、金型101にインサートされたセパレータ3の上面におけるマニホールド孔3hの周囲全体に当接して、キャビティ113内に射出充填されるガスケット106の材料がマニホールド孔3h内に流れ込むのを防ぐようにシールする構造となっていた。さらに、従来の金型101においては、ガスケット106を成形するためのキャビティ面116が上型111に形成されており、このキャビティ面116がセパレータ3の外縁3cよりも小さく成形されていた。
【0007】
そして、このように構成された金型を101用いてガスケットを成形するに際しては、セパレータ3にマニホールド孔3hを予め成形しておき、このセパレータ3とMEGA21と多孔体22を金型101にインサートして型閉じし、上型111の突出部117の先端面をセパレータ3の上面におけるマニホールド孔3hの周囲全体に当接して、キャビティ113内に射出充填されるガスケット106の材料がマニホールド孔3h内に流れ込むのを防ぐようにシールするとともに、積重されたMEGA21と多孔体22を上型111によって所定の力で加圧して、特にガス拡散層21bが弾性的に圧縮された状態としていた。
【0008】
そして、このような構造の金型101によって成形されたガスケット106は、その内周面106aの大きさがマニホールド孔3hの大きさよりも大きく、すなわち、内周面106aがその全周にわたってマニホールド孔3hから退避するよう離れて成形されおり、したがって、セパレータ3の表面が露出していた。また、キャビティ面116がセパレータ3の外縁3cよりも小さく形成されていたことによって、ガスケット106の外周側面がセパレータ3の外縁3cを露出させるように成形されていた。
【0009】
ところで、燃料電池においては、設定された発電性能を得るために、反応ガスや冷却媒体が確実に所定の流量で各セルに分配・供給される必要がある。そのため、各セル104のセパレータ3のマニホールド孔3hに開口する流路34の導入口または排出口をガスケットが塞ぐことがないように成形することは勿論のこと、反応ガスまたは冷却媒体の流通を妨げて圧力損失が高くならないようにガスケットを成形する必要がある。
【0010】
また、燃料電池においては、複数のセル104を積層してエンドプレートの間で所定の荷重を付与され締結されたときに確実にシールされたマニホールド105を形成するためには、ガスケット106のリップ部162が隣接する他のセル104のセパレータ3に対して押し当てられて潰される量(この潰される量を締め代という)がセル104によって異なることなく一定の締め代(たとえば、図13または図15に参照されるように、締め代が多孔体22と基部161との連続する表面の高さまでの長さ)Xとなるようにガスケット106を成形する必要がある。そして、このように複数のセル104が積層され締結されて燃料電池として組み立てられたときに、リップ部162の締め代が所定の値Xとなるようにするためには、ガスケット106のリップ部162が、多孔体22とMEGA21の厚さ、特に、MEGA21のガス拡散層21bの厚さに影響されることなく適切な長さで基部161から突出するように成形されており、また、ガスケット106の成形時に多孔体22とMEGA21を加圧する力が、複数のセル106を積層して燃料電池として組み立てたときのエンドプレート間で締結されることにより加えられられる荷重と略同じ力となるように設定することが必要である。
【0011】
そのため、図11に示したように、ガスケット成形用金型101に荷重付与部115を形成し、燃料電池構成部品2とセパレータ3を積層してガスケット106を成形する際には、燃料電池構成部品2に対して荷重付与部115が締結時と同じ荷重を付与して厚さを圧縮した状態で、ガスケット106の材料をキャビティ113内に射出充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−123883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータは、その厚さに関して成形公差を有しており、したがって各セルによってその厚さが異なる。このような厚さが異なる構成部品とセパレータを特許文献1の図12(b)に示されたような金型にインサートしてガスケットを成形しようとすると、燃料電池構成部品等が厚い場合には型閉じが不足してバリが生じ、また燃料電池構成部品等が薄い場合にはキャビティ面と燃料電池構成部品またはセパレータの表面との間に隙間が生じてキャビティのシールが不足してガスケットの材料が入り込み不要部が成形される可能性がある。
【0014】
さらにまた、セパレータに成形されたマニホールド孔の位置や大きさに関しても成形公差を有しており、特許文献1の図12(b)に示されたような下型の突状部にセパレータのマニホールド孔を嵌め込むようにして構成部品と共にインサートした場合、セパレータのマニホールド孔の内周面と下型の突出部の外周面との間に隙間が生じ、この隙間にガスケットの材料が入り込み、不要部が成形される可能性がある。
【0015】
このような不要部がマニホールドに成形されると、セパレータ内を流れる反応ガスまたは冷却媒体の流通を妨げて圧力損失が高くなったり、セパレータ内の流路の導入口または排出口を塞いだりして、発電性能に影響を及ぼすなどの問題が発生することとなる。そのため、特許文献1に開示されたような従来の技術にあっては、成形された不要部を取り除く必要があり、そのための工程が増えるなどの問題があった。
【0016】
また、図11に示したように従来の一般的なガスケット成形用金型101は、上型111の多孔体22を加圧する荷重付与部115の面からガスケット106のリップ部162を成形する部分の先端までの長さLA’、および、上型111の多孔体22を加圧する荷重付与部115の面から突出部117の先端面までの長さLB’が一定の寸法(定寸)となっている。そして、一般に、ガスケットの成形時には、複数のセルを積層して燃料電池として組み立てたときのエンドプレート間で締結されることにより加えられられる荷重と略同じ力で、多孔体22とMEGA21を加圧するよう設定されている。これに対して、多孔体22とMEGA21の厚さは上述したように公差の範囲でばらつきが生じている。
【0017】
そのため、多孔体22またはMEGA21が設計値よりも厚い場合には、たとえその厚さが公差の範囲であっても、型閉じが不足してバリが生じるなどの問題や、図12に示すように上型111の突出部117がセパレータ3の表面に当接せず、突出部117の先端面とセパレータ3の表面との間に隙間が生じてシールされなくなり、かかる隙間からガスケット106の材料がセパレータ3の予め形成されたマニホールド孔3hに流れ込んで不要部が形成され、マニホールド孔3hとセパレータ3の流路34との間を流れる反応ガスまたは冷却媒体の流通を妨げて圧力損失が高くなったり、マニホールド孔3hの流路34の導入口または排出口を塞いだりして、発電性能に影響を及ぼすなどの問題が発生することとなる。そして、このような問題を発生させないためには、ガスケット106の成形後に不要部を除去する工程が必要となり、工程数が増えて時間や手間がかかるという問題があった。また、このような問題を発生させないように、ガスケット成形用金型101にインサートされた燃料電池構成部品2に締結時の荷重よりも大きな荷重を付与することにより上型111の突出部117がセパレータ3の表面に当するよう型締すると、MEA21aの電解質膜がダメージを受けて電極層が短絡したり、クロスリークする可能性が発生するという問題がある。
【0018】
そして、このような問題が発生しなくとも、締結時の荷重よりも大きな荷重を付与してガスケット106を成形した場合、燃料電池として組み立てるべく複数のセル104を積層してエンドプレートの間で所定の荷重を付与した締結時には、図13に示すように、ガスケット106の成形時の荷重よりも締結時の荷重が小さい(少ない)ために、ガスケット106のリップ部162の締め代X1が設定された一定の締め代Xよりも小さくなり、ガスケット106のシール性が弱く、マニホールド105を流通する反応ガスや冷却媒体がリークする可能性があるという問題がある。
【0019】
また、これとは逆に、多孔体22とMEGA21が設計値よりも薄い場合には、型締時に荷重付与部115による燃料電池構成部品2への荷重が感知されず突出部117がセパレータ3の表面におけるマニホールド孔3hの周囲に衝突して、セパレータ3の流路34の導入口または排出口を潰したり変形させる可能性があるという問題があった。またこのように、突出部117がセパレータ3のマニホールド孔3hの周囲に衝突して変形させない場合でも、図14に示すように、MEGA21と多孔体22をセパレータ3と積層して金型101にインサートし型閉じして上型111の突出部117をセパレータ3の表面に当接させても、MEGA21と多孔体22が上型111の荷重付与部115によって所定の力で加圧されなかったり、MEGA21と多孔体22が上型111の荷重付与部115に接することができずに隙間が生じ、かかる隙間にガスケット106の材料が流れ込んで多孔体22の機能が損なわれることとなり、セル104として使用することができないものとなるなどの問題が発生する。
【0020】
さらに、多孔体22とMEGA21が設計値よりも薄い場合には、図15に示すように、ガスケット106を成形すべく型閉じしたときに、多孔体22とMEGA21の特にガス拡散層21bが所定の厚さまで圧縮されない状態でガスケット106のリップ部162が成形されるため、複数のセル104を積層してエンドプレートの間で所定の荷重を付与されたときに、多孔体22とMEGA21がガスケット106の成形時の厚さよりも薄くなることから、ガスケット106のリップ部162の締め代X2が設定された締め代Xよりも大きくなり、ガスケット106にかかる荷重が過大となって、ガスケット106のリップ部162が破損するなどしてマニホールド105のシールを確実に確保することがでず、マニホールド105内を流通する反応ガスや冷却媒体がリークする可能性があるという問題が発生する。
【0021】
さらにまた、ガスケット106の内周面106aがマニホールド孔3hよりも大きく全周にわたって退避するように成形された従来の技術におけるセル104では、セパレータ3にマニホールド孔3hが形成されているために、そのマニホールド孔3hの周囲、特にセパレータ3のマニホールド孔3hのセパレータ外側3b側が変形し易い傾向があり、図16に示すように積層時にずれが生じた場合に、隣接するセル104のセパレータ3にガスケット106のリップ部162が当接され、図17に示すように荷重が掛けられることによって生じるモーメントなどにより、特にセパレータ3のマニホールド孔3hからセパレータ外側部分3bが変形することがある。
【0022】
一方、上記従来のガスケット成形用金型101にあっては、上型111の突出部117がセパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に当接してガスケット106の材料をシールする構造となっており、ガスケット106の内周壁がマニホールド孔3hの開口から外側に退避するよう離れて成形されてセパレータ3の表面が露出していた。
【0023】
そのため、セパレータ3が変形すると、図17に示すように互いに隣接するセル104のセパレータ3の露出したマニホールド孔3hのセパレータ外側部分3bとの間や、セパレータ3の外縁3cが互いに接触して短絡するという問題が発生することとなる。
【0024】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができ、しかも、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなくガスケットを確実に成形することが可能な燃料電池のセルの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができ、しかも、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなく、また、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようなガスケットを確実に成形することが可能な燃料電池のセルの製造装置を提供することを目的とする。
さらに、本発明は上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さにバラツキがあっても、締結時と同じ荷重が燃料電池構成部品に付与されて、均一な締め代のガスケットが成形されており、且つ、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなく、しかも、各セルが積層され締結されたときに積層ずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないように成形されたガスケットを有する構造のセルを含む燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1の燃料電池のセルの製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池において、燃料電池構成部品とセパレータとを積層して金型内にインサートしてガスケットを燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形するセルの製造方法であって、前記金型に、燃料電池構成部品とセパレータとを積層してインサートし型締することにより燃料電池構成部品に対して所定の荷重を付与する荷重付与部と、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成するためのキャビティ面とを予め形成しておき、マニホールド孔が形成されていないセパレータと燃料電池構成部品とを積層して金型にインサートし型締して、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与するとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成して、該キャビティ内にガスケットの材料を射出充填し、成形されたガスケットとセパレータを打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成することを特徴とするものである。
また、請求項4の燃料電池のセルの製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池において、マニホールドを構成し得るようにガスケットが燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されてなるセルを製造するための装置であって、マニホールド孔が形成されていないセパレータと積層されインサートされた燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成する前記キャビティ面とを備えた金型と、成形されたガスケットとセパレータを打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成する抜き型とを有することを特徴とする。
さらに、請求項7の燃料電池に係る発明は、上記目的を達成するため、複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドが構成された燃料電池であって、各セルの、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔は、積層された燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されたガスケットをセパレータと共に打ち抜くことにより形成されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の燃料電池のセルの製造方法に係る発明によれば、燃料電池構成部品とマニホールド孔が形成されていないセパレータとを積層して金型内にインサートし型締して、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与するとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成して、このキャビティ内にガスケットの材料を射出充填し、燃料電池構成部品およびセパレータと一体にガスケットを成形するが、このとき、金型内にインサートされたセパレータにはまだマニホールド孔が形成されていないために、キャビティは、金型のキャビティ面とセパレータの表面とによって形成されていることから、従来の技術のように既に形成されたマニホールド孔にガスケットの材料が流れ込むことがなく、したがって、不要部が形成されることがない。また、従来の技術のように金型の突出部をセパレータのマニホールド孔の周囲に当接させてシールする必要がないことから、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって確実に付与することができ、したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品の厚さのバラツキに影響されることなく、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができる。さらに、この時点では、成形されたガスケットにはマニホールドを構成するための内周面がまだ形成されていないが、その後、成形されたガスケットとセパレータを打ち抜くことにより、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを同じ大きさで同時に一工程で形成することができるため、セパレータのマニホールド孔の周囲が露出することがなく、したがって、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようにガスケットを成形することができる。
また、請求項4の燃料電池のセルの製造装置に係る発明によれば、金型内に燃料電池構成部品とマニホールド孔が形成されていないセパレータとを積層してインサートし型締すると、荷重付与部によって燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重が付与されるとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティが形成されるため、このキャビティ内にガスケットの材料を射出充填することにより、燃料電池構成部品およびセパレータと一体にガスケットが成形されるが、このとき、セパレータにはまだマニホールド孔が形成されていないために、セパレータの表面が金型のキャビティ面と協働してキャビティを形成することから、従来の技術のように既に形成されたマニホールド孔にガスケットの材料が流れ込むことがなく、したがって、不要部の形成を確実に防止することができる。また、従来の技術のようにセパレータのマニホールド孔の周囲に当接させてシールするための突出部を金型に必要としないことから、荷重付与部によって燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を確実に付与することができ、したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品の厚さのバラツキに影響されることなく、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができる。さらに、マニホールドを構成するための内周面が形成されることなく成形されたガスケットとマニホールド孔が形成されていないセパレータとを抜き型によって一工程で同時に打ち抜くために、セパレータのマニホールド孔の周囲が露出することがなく、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを同じ大きさで形成することができ、したがって、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようにガスケットを成形することができる。
さらに、請求項7の燃料電池に係る発明によれば、積層された燃料電池構成部品およびマニホールド孔がまだ形成されていないセパレータと一体に成形されたガスケットをセパレータと共に打ち抜くことにより、各セルの、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔が形成されたものであるため、セパレータのマニホールド孔内に不要部が成形されることなく、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重が確実に付与された状態でガスケットが成形されており、したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品の厚さのバラツキに影響されることなく、均一な締め代のガスケットが成形される構造のセルを構成することができる。さらに、マニホールドを構成するための内周面が形成されることなく成形されたガスケットとマニホールド孔が形成されていないセパレータとを打ち抜くことにより、セパレータのマニホールド孔の周囲が露出することがなく、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とが同じ大きさで形成されており、したがって、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようにガスケットが成形されるセルの構造とすることができる。
【0027】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に相当し、(5)項が請求項3に相当し、(6)項が請求項4に相当し、(7)項が請求項5に相当し、(9)項が請求項6に相当し、(10)項が請求項7に相当する。
【0028】
(1) 複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池において、燃料電池構成部品とセパレータとを積層して金型内にインサートしてガスケットを燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形するセルの製造方法であって、
前記金型に、燃料電池構成部品とセパレータとを積層してインサートし型締することにより燃料電池構成部品に対して所定の荷重を付与する荷重付与部と、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成するためのキャビティ面とを予め形成しておき、
マニホールド孔が形成されていないセパレータと燃料電池構成部品とを積層して金型にインサートし型締して、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与するとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成して、該キャビティ内にガスケットの材料を射出充填し、
成形されたガスケットとセパレータを打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成することを特徴とする燃料電池のセルの製造方法。
【0029】
(1)項の発明では、燃料電池構成部品とマニホールド孔が形成されていないセパレータとを積層して金型内にインサートし型締することにより、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与するとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成する。そして、このキャビティ内にガスケットの材料を射出充填し、燃料電池構成部品およびセパレータと一体にガスケットを成形する。このとき、セパレータにはまだマニホールド孔が形成されていないために、キャビティは、金型のキャビティ面とセパレータの表面とによって形成されている。そのため、従来の技術のように既に形成されたマニホールド孔にガスケットの材料が流れ込むことがなく、したがって、不要部が形成されることがない。また、従来の技術のように金型の突出部をセパレータのマニホールド孔に当接させてシールする必要がないことから、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって確実に付与することができる。したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品の厚さのバラツキに影響されることなく、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができる。さらに、この時点では、成形されたガスケットにはマニホールドを構成するための内周面がまだ形成されていない。しかしながら、その後、成形されたガスケットとセパレータを打ち抜くことにより、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを同じ大きさで形成するため、セパレータのマニホールド孔の周囲が露出することがなく、したがって、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようにガスケットを成形することができる。
【0030】
(2) 前記金型に、後に形成するガスケットの内周面と対応する断面形状と、前記燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与したときにセパレータに接することがない長さとを有しており、ガスケットの内周面を部分的に成形する突出部をさらに予め形成しておき、
該突出部によってセパレータに達することがない所定の深さの部分的な内周面を有するガスケットを成形することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセルの製造方法。
【0031】
(2)項の発明では、(1)項に記載の発明において、突出部によってガスケットには、セパレータに達することがない所定の深さを有する内周面が部分的に形成される。そのため、セパレータと共に打ち抜くガスケットの厚さが少なくて済み、したがって、成形されたガスケットとセパレータを容易に少ない力で打ち抜くことができる。
【0032】
(3) ガスケットの成形時に、前記ガスケットのセパレータとともに打ち抜かれる部分に、ハーフカット部を形成することを特徴とする(1)または(2)項に記載の燃料電池のセルの製造方法。
【0033】
(3)項の発明では、(1)または(2)項に記載の発明において、ガスケットの成形時に、ガスケットのセパレータとともに打ち抜かれる部分に、ハーフカット部を形成することにより、成形されたガスケットとセパレータを容易に少ない力で打ち抜くことができる。
【0034】
(4) セパレータの、成形されたガスケットとともに打ち抜かれる部分に、ハーフカット部を予め形成しておくことを特徴とする(1)または(2)項に記載の燃料電池のセルの製造方法。
【0035】
(4)項の発明では、(1)または(2)項に記載の発明において、セパレータの、成形されたガスケットとともに打ち抜かれる部分に、ハーフカット部を予め形成しておくことにより、成形されたガスケットとセパレータを容易に少ない力で打ち抜くことができる。
【0036】
(5) 前記金型に、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け可能な可動型を予め設けておき、
燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け所定の荷重を付与する際に、可動型の中央部を加圧し、その後、可動型の、燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の燃料電池のセルの製造方法。
【0037】
(5)項の発明では、(1)〜(4)のいずれか一項項に記載の発明において、金型に、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付けることが可能な可動型を予め設けておいて、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け所定の荷重を付与する際に、可動型の中央部を加圧し、この中央部の加圧から遅延させて、可動型の、燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧することにより、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して均一な力で押し付け所定の荷重を付与することができる。
【0038】
(6) 複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池において、マニホールドを構成し得るようにガスケットが燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されてなるセルを製造するための装置であって、
マニホールド孔が形成されていないセパレータと積層されインサートされた燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成する前記キャビティ面とを備えた金型と、
成形されたガスケットとセパレータを打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成する抜き型とを有することを特徴とする燃料電池のセルの製造装置。
【0039】
(6)項の発明では、金型内に燃料電池構成部品とマニホールド孔が形成されていないセパレータとを積層してインサートし型締して、荷重付与部によって燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を付与するとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成する。そして、このキャビティ内にガスケットの材料を射出充填することにより、燃料電池構成部品およびセパレータと一体にガスケットを成形する。このとき、セパレータにはまだマニホールド孔が形成されていないために、セパレータの表面が金型のキャビティ面と協働してキャビティを形成している。そのため、従来の技術のように既に形成されたマニホールド孔にガスケットの材料が流れ込むことがなく、したがって、不要部の形成を確実に防止することができる。また、従来の技術のようにセパレータのマニホールド孔に当接させてシールするための突出部を金型に必要としないことから、荷重付与部によって燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を確実に付与することができ、したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品の厚さのバラツキに影響されることなく、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができる。その後、マニホールドを構成するための内周面が形成されることなく成形されたガスケットとマニホールド孔が形成されていないセパレータとを抜き型によって打ち抜く。そのため、セパレータのマニホールド孔の周囲が露出することがなく、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを同じ大きさで形成することができ、したがって、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようにガスケットを成形することができる。
【0040】
(7) 前記金型のキャビティ面に、後に形成するガスケットの内周面と対応する断面形状と、前記燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与したときにセパレータに接することがない長さとを有しており、ガスケットの内周面を部分的に成形する突出部が形成されていることを特徴とする(6)項に記載の燃料電池のセルの製造装置。
【0041】
(7)項の発明では、(6)項に記載の発明において、後に形成するガスケットの内周面と対応する断面形状と、前記燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与したときにセパレータに接することがない長さとを有しており、ガスケットの内周面を部分的に成形する突出部を、金型のキャビティ面に形成することにより、成形されたガスケットには、突出部によってセパレータに達することがない所定の深さを有する内周面が部分的に形成される。そのため、抜き型によってセパレータと共に打ち抜くガスケットの厚さが少なくて済み、したがって、成形されたガスケットとセパレータを容易に少ない力で打ち抜くことができるため、抜き型の負荷を減少させることができる。
【0042】
(8) 前記突出部は、その先端にガスケットを打ち抜く形状に応じてハーフカット部を成形するハーフカット部成形部を備えていることを特徴とする(7)項に記載の燃料電池のセルの製造装置。
【0043】
(8)項の発明では、(7)項に記載の発明において、突出部の先端にハーフカット部成形部を備えていることにより、ガスケットには、打ち抜く形状に応じたハーフカット部が形成される。そのため、抜き型によって、成形されたガスケットとセパレータを容易に少ない力で打ち抜くことができ、したがって、抜き型の負荷を減少させることができる。
【0044】
(9) 前記金型が、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け可能に設けられた可動型と、
燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け所定の荷重を付与する際に、可動型の中央部を加圧する中央部加圧手段、および、該中央部加圧手段による加圧から遅延して可動型における燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧する周縁部加圧手段とを備えていることを特徴とする(6)〜(8)のいずれか一項に記載の燃料電池のセルの製造装置。
【0045】
(9)項の発明では、(6)〜(8)のいずれか一項に記載の発明において、荷重付与部によって燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を付与するに際して、金型に設けられた可動型の中央部を中央部加圧手段によって加圧し、この加圧からわずかに遅れて、周縁部加圧手段によって可動型の、燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧することにより、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して均一な力で押し付け所定の荷重を付与することができる。
【0046】
(10) 複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドが構成された燃料電池であって、
各セルの、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔は、積層された燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されたガスケットをセパレータと共に打ち抜くことにより形成されたものであることを特徴とする燃料電池。
【0047】
(10)項の発明では、積層された燃料電池構成部品およびマニホールド孔がまだ形成されていないセパレータと一体に成形されたガスケットをセパレータと共に打ち抜くことにより、各セルの、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔が形成されたものであるため、セパレータのマニホールド孔内に不要部が成形されることなく、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重が確実に付与された状態でガスケットが成形されており、したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品の厚さのバラツキに影響されることなく、均一な締め代のガスケットが成形される構造のセルを構成することができる。さらに、マニホールドを構成するための内周面が形成されることなく成形されたガスケットとマニホールド孔が形成されていないセパレータとを打ち抜くことにより、セパレータのマニホールド孔の周囲が露出することがなく、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とが同じ大きさで形成されており、したがって、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようにガスケットが成形されるセルの構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるガスケット成形用金型の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態におけるガスケット成形用金型の要部を示す断面図である。
【図3】図2で成形されたガスケットを抜き型によりセパレータと共に打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成する状態を示した断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態におけるガスケット成形用金型の要部を示す断面図である。
【図5】図4で成形されたガスケットを抜き型によりセパレータと共に打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成する状態を示した断面図である。
【図6】本発明の第四の実施の形態に至る経過の技術を説明するために示した断面図である。
【図7】図6に示した金型を改良した、本発明の第四の実施の形態に至る経過の技術を説明するために示した断面図である。
【図8】本発明の第四の実施の形態を説明するために、中央部加圧手段によって可動型の中央部を加圧する状態を示した断面図である。
【図9】図8の状態から周縁部加圧手段によって可動型における燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧する状態を示した断面図である。
【図10】セルの構成の一形態を説明するために示した平面図である。
【図11】従来の一般的なガスケットを成形するための金型を説明するために示した要部の断面図である。
【図12】図11に示した金型において、インサートされた燃料電池構成部品とセパレータの厚さが厚いために、突出部の先端面がセパレータの表面のマニホールド孔の周囲に当接しない状態を説明するために示した要部の断面図である。
【図13】燃料電池構成部品が設定された厚さよりも厚いために、ガスケットの成形時の荷重が締結時の荷重よりも大きくなり、締結時にガスケットのリップ部の締め代が設定された一定の締め代よりも小さくなることを説明するために示した要部の断面図である。
【図14】図11に示した金型において、インサートされた燃料電池構成部品とセパレータの厚さが薄いために、突出部をセパレータの表面に当接させても、MEGAと多孔体が上型に接することができずに隙間が生じ、MEGAと多孔体が上型によって所定の力で加圧されない状態を説明するために示した要部の断面図である。
【図15】燃料電池構成部品が設定された厚さよりも薄いために、ガスケットの成形時の荷重が締結時の荷重よりも小さくなり、締結時にガスケットのリップ部の締め代が設定された一定の締め代よりも大きくなってガスケットにかかる荷重が過大となることを説明するために示した要部の断面図である。
【図16】従来の燃料電池のセルをずれた状態で積層した場合を示した要部の断面図である。
【図17】図16に示した状態で締結することにより、セパレータのマニホールド孔から外側が変形し、短絡する様子を示した要部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
最初に、本発明の燃料電池のセルの製造装置の第1の実施の形態を、主に図1に基づいて詳細に説明する。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の燃料電池のセルの製造装置は、概略、複数のセル4を積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセル4の燃料電池構成部品2をセパレータ3によって挟持するとともに、各セパレータ3のマニホールド孔3hをガスケット6の内周面6aにより互い連通してマニホールド5を構成する燃料電池において、マニホールド5を構成し得るようにガスケット6が燃料電池構成部品2およびセパレータ3と一体に成形されてなるセル4を製造するためのものであって、マニホールド孔3hが形成されていないセパレータ3と積層されインサートされた燃料電池構成部品2に対して荷重を付与する荷重付与部15と、成形するガスケット6に応じた所定形状のキャビティ13を形成する前記キャビティ面16とを備えたガスケット成形用の金型1と、成形されたガスケット6とセパレータ3を打ち抜いて、マニホールド5を構成するガスケット6の内周面6aとセパレータ3のマニホールド孔3hとを形成する抜き型7とを有している。
【0050】
最初に、本発明により製造されるセルの最終的な構成について説明する。この実施の形態においては、燃料電池構成部品2としてMEGA21の両面に多孔体22が積層されており、この燃料電池構成部品2の一方の面にセパレータ3を積重してガスケット6を一体に成形することによりセル4が構成されている。MEGA21は、MEA21aの両面にガス拡散層21bがそれぞれ配置されてなるもので、MEA21aの外縁はガス拡散層21bおよび多孔体22の外縁から突出するように大きく形成されており、ガスケット6が一体となるよう成形される。MEGA21のガス拡散層21bは、通気性を有する材料であり、一般に例えばカーボン繊維からなるカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等の多孔質シートやメッシュ状シートなどが採用され、厚さ方向に荷重を付与することにより圧縮されるようその厚さが変化する材質が採用されている。多孔体22の外側縁は、たとえばガスケット6の材料と同じ材料などが含浸されるなどして、ガスケット6の材料に対する目止めが施されている。そして、複数のセル4を積層することにより、このセル4のセパレータ3とこのセル4に隣接する他のセル4のセパレータ3との間で燃料電池構成部品2が挟持されるようになっている。図10に参照されるように、燃料電池構成部品2は、セパレータ3の略中央に配置される。セパレータ3は、カソードプレートとアノードプレートのいずれか一方を構成する第1プレート31といずれか他方を構成する第2プレート32との間に中間プレート33を挟んでなる三層構造で構成されており、セパレータ3の、燃料電池構成部品2が配置される周囲の領域には、マニホールド孔3hが最終的に形成される。セパレータ3の内部には、各セル4に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34を有している。すなわち、第1プレート31と第2プレート32の周縁には、マニホールド孔3hを構成する孔が最終的に形成される。中間プレート33には、各セル4に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34をセパレータ3の内部に形成するための溝または孔が設けられている。そして、中間プレート33の溝または孔の端部は、第1プレート31と第2プレート32のマニホールド孔3hを構成する各孔と対応して設けられており、したがって、各セル4に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34は、所定のマニホールド孔3hの内周面のセパレータ内側部分に開口している。
【0051】
ガスケット6は、燃料電池構成部品2の周囲の端面およびセパレータ3の表面に形成される基部61と、基部61から連続して突出するリップ部62とからなるもので、リップ部62の先端の高さは燃料電池構成部品2の表面よりも突出するよう設定され、また、基部61の表面の高さは燃料電池構成部品21の表面から下方に位置するよう設定されており、各セル4を積層してその積層方向に所定の荷重を付与したときに、隣接する他のセル4のセパレータ3と接して押圧されるリップ部62を基部61が吸収するように構成されている。
【0052】
このようなセルを製造するための金型1は、図1に示すように、第1の金型11と第2の金型12とを含んでおり、第1の金型11に設けられて燃料電池構成部品2に対して荷重を付与する荷重付与部15と、型締したときにマニホールド孔3hが未だ形成されていない状態でインサートされたセパレータ3の表面と協働して成形するガスケット6の形状に応じたキャビティ13を形成するキャビティ面16とを備えている。そして、この実施の形態では、第2の金型12内に燃料電池構成部品2を荷重付与部15に対して押し付け可能な可動型14がさらに設けられている。そして、図1に示した実施の形態においては、第1の金型11が上型により構成されており、第2の金型12が下型により構成されている。上型11と下型12は相対的に近接・遠退することにより、開閉されると共に、型閉じしたときに所定の力で型締めされるように支持されている。また、この実施の形態では、ガスケット6の材料をキャビティ13内に導入するためのゲート18が上型11に形成されている。
【0053】
上型11の略中央には、MEGA21の両面に多孔体22を積層してなる燃料電池構成部品2の配置と対応して、荷重付与部15が形成されている。荷重付与部15の周囲には、成形するガスケット6の形状に応じてキャビティ面16が荷重付与部15と連続して形成されている。
【0054】
下型12の上型11と対向する面の略中央には、インサートするセパレータ3の大きさおよび形状に応じて凹部12aが形成されており、この凹部12a内に可動型14が昇降移動可能に設けられている。そのため、ガスケット6はセパレータ3の外縁3cを覆うように成形されることとなる。上型11と下型12の周囲の衝合面には、シール部材19を保持するための溝が形成されている。なお、可動型14を昇降駆動するために機構については、後述することとする。
【0055】
抜き型7は、図3に参照されるように、成形するガスケット6の内周面6aに応じた先端面を有するポンチ71とダイス72とを含んでいる。図1の鎖線に参照されるように、ポンチ71とダイス72に対して、ガスケット6とこれに一体に成形されたセパレータ3とのマニホールド5を形成する位置に位置合わせして打ち抜くことにより、成形されたガスケット6に内周面6aを形成することができると共に、この内周面6aと連続するマニホールド孔3hをセパレータ3に形成することができる。
【0056】
次に、本発明の燃料電池のセルの製造方法の第1の実施の形態を、上述したように構成された第1の実施の形態における装置を使用する場合により、この装置の作動と共に詳細に説明する。
本発明の燃料電池のセルの製造方法は、概略、複数のセル4を積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセル4の燃料電池構成部品2をセパレータ3によって挟持するとともに、セパレータ3のマニホールド孔3hをガスケット6の内周面6aにより互い連通してマニホールド5を構成する燃料電池において、燃料電池構成部品2とセパレータ3とを積層して金型1内にインサートしてガスケット6を燃料電池構成部品2およびセパレータ3と一体に成形するセル4の製造方法であって、金型1に、燃料電池構成部品2とセパレータ3とを積層してインサートし型締することにより燃料電池構成部品2に対して所定の荷重を付与する荷重付与部15と、成形するガスケット6に応じた所定形状のキャビティ13を形成するためのキャビティ面16とを予め形成しておき、マニホールド孔3hが未だ形成されていないセパレータ3と燃料電池構成部品2とを積層して金型1にインサートし型締して、燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部15によって付与するとともに、成形するガスケット6に応じた所定形状のキャビティ13を形成して、このキャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填することにより、ガスケット6を燃料電池構成部品2の周囲およびセパレータ3の一方の面と一体に成形し、その後、成形されたガスケット6とセパレータ3を打ち抜いて、マニホールド5を構成するガスケット6の内周面6aとセパレータ3のマニホールド孔3hとを形成するものである。
【0057】
予め、金型1に荷重付与部15とキャビティ面16とを形成しておくことは上述した通りである。また、金型1内にインサートされるセパレータ3は、図1に示した実施の形態の場合、燃料電池構成部品2の多孔体22と接する側の第1プレート31にはマニホールド孔3hが未だ形成されておらず平滑な表面を有しているが、第2プレート32にはマニホールド孔3hが既に形成されている。
【0058】
セル4を製造するに際して、最初に、上型11と下型12を相対的に離間させて型開きし、また、下型12内の可動型14を下降させておく。そして、第1プレート31を上にしてセパレータ3を可動型14上に載置すると共に、第1プレート31上に燃料電池構成部品2を積層して、上型11と下型12を相対的に近接させて型閉じし金型1内にインサートする。そして、可動型14を上昇させることにより、上型11の荷重付与部15に燃料電池構成部材2を押し付けて、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与する。これにより、セパレータ3の未だマニホールド孔3hが形成されていない第1プレート31の平滑な表面とキャビティ面16とが協働してキャビティ13を形成することとなる。そして、このキャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填し、この材料が固化または硬化すると、マニホールド5を構成するための内周面6aを未だ有していないガスケット6が成形されることとなる。
【0059】
このとき、燃料電池構成部品2の厚さにはバラツキが生じており、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与したときの厚さも燃料電池構成部品2によって異なる。しかしながら、本発明では、第1の金型である上型11に、従来の技術における突出部117(図11などを参照)のようなセパレータ3の表面と接する部分がないために、厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重をガスケット6の成形時に付与しても、各セル4のガスケット6のリップ部62が設定された締め代となるように一定の長さで基部61から突出するように成形することができる。また、このときには、セパレータ3の第1プレート31にマニホールド孔3hが未だ形成されていないために、従来の技術のようにセパレータ3のマニホールド孔3h内にガスケット6の不要部が成形されることがない。
【0060】
その後、抜き型7のポンチ71とダイス72に対して、ガスケット6が一体に成形されたセパレータ3のマニホールド5を形成する位置に位置合わせして、図1の鎖線に参照されるように打ち抜くことにより、成形されたガスケット6に内周面6aを確実に形成することができると共に、この内周面6aと連続するマニホールド孔3hをセパレータ3の第1プレートに形成することができる。
【0061】
次に、本発明のセルの製造装置の、第2の実施の形態を図2および図3に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
本発明の燃料電池のセル4の製造装置は、概略、上述した第1の実施の形態に加えて、後に形成するガスケット6の内周面6aと対応する断面形状と、燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重をガスケット6の成形時に荷重付与部15によって付与したときにセパレータ3に接することがない長さとを有しており、ガスケット6の内周面6aを部分的に成形する突出部17が第1の型11のキャビティ面16に形成されている。
【0062】
図2に示すように、荷重付与部15から突出部17の先端までの長さLBは、燃料電池構成部品2の厚さがそのバラツキのなかで最も薄い場合であっても、締結時の荷重を付与したときにセパレータの表面に達することがないように設定されている。また、荷重付与部15からリップ部62を成形する部分の先端までの長さLAは、一定に設定されている。
【0063】
図3に示すように、抜き型7は、先端面の外周縁に切刃を有するポンチ71と、このポンチ71の先端が嵌入される抜き穴を有するダイス72とを備えてなるもので、ダイス72上に位置決め載置された打ち抜き加工対象であるワーク(本発明ではセパレータ3とガスケット6)をポンチ71とダイス72により所定の力で打ち抜き加工して、ポンチ71がダイス72の抜き穴に相対的に嵌入されるように支持されている。
【0064】
次に、本発明の燃料電池のセル4の製造方法の第2の実施の形態を、上述したように構成された第2の実施の形態における装置を使用する場合により、この装置の作動と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
本発明の燃料電池のセル4の製造方法は、概略、上述した第1の実施の形態に加えて、さらに、後に形成するガスケット6の内周面6aと対応する断面形状と、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部15によって付与したときにセパレータ3に接することがない長さとを有しており、ガスケット6の内周面6aを部分的に成形する突出部17を金型1のキャビティ面16に、予め形成しておき、この突出部17によってガスケット6の成形時にセパレータ3に達することがない所定の深さの内周面6aを部分的に成形し、その後、ガスケット6とセパレータ3を打ち抜いて、マニホールド5を構成するガスケット6の残りの内周面6aとセパレータ3のマニホールド孔3hとを形成するものである。
【0065】
予め、上型11のキャビティ面16にガスケット6の内周面6aを部分的に成形するための突出部17を形成しておくことは上述した通りである。セル4を製造するに際して、最初に、上型11と下型12を相対的に離間させて型開きし、また、下型12内の可動型14を下降させておく。そして、第1プレート31を上にしてセパレータ3を可動型14上に載置すると共に、第1プレート31上に燃料電池構成部品2を積層して、上型11と下型12を相対的に近接させて型閉じし金型1内にインサートする。そして、可動型14を上昇させることにより、上型11の荷重付与部15に燃料電池構成部材2を押し付けて、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与する。これにより、セパレータ3の未だマニホールド孔3hが形成されていない平滑な表面を有する第1プレート31とキャビティ面16とが協働してキャビティ13を形成することとなる。そして、このキャビティ13内には、上型11のキャビティ面16に形成された突出部17がセパレータ3に接することがないように突出している。
【0066】
この状態でキャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填し、この材料が固化または硬化すると、部分的にマニホールド5を構成するための内周面6aが成形されたガスケット6が成形されることとなる。
【0067】
このとき、燃料電池構成部品2の厚さにはバラツキが生じており、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与したときの厚さも燃料電池構成部品2によって異なる。しかしながら、本発明では、第1の金型である上型11に、セパレータ3の表面と接する部分がないために、厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重をガスケット6の成形時に付与しても、各セル4のガスケット6のリップ部62が設定された締め代となるように一定の長さで基部61から突出するように成形することができる。また、このときには、セパレータ3の第1プレート31にマニホールド孔3hが形成されていないために、従来の技術のようにセパレータ3のマニホールド孔3h内にガスケット6の不要部が成形されることがない。
【0068】
その後、抜き型7のポンチ71とダイス72に対して、ガスケット6が一体に成形されたセパレータ3のマニホールド5を形成する位置に位置合わせして、図3に示したように、打ち抜くことにより、成形されたガスケット6にセパレータ3に達する内周面6aを確実に形成することができると共に、この内周面6aと連続するマニホールド孔3hをセパレータ3の第1プレート31に形成することができる。そして、この実施の形態では、ガスケット6の成形時にその内周面6aを部分的に成形するため、ガスケット6を打ち抜く厚さが少なくて済み、したがって、打ち抜き時の抜き型7の負荷を減少させて寿命を長くすることができる。
【0069】
次に、本発明のセルの製造装置の、第3の実施の形態を図4および図5に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1および第2の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
本発明の燃料電池のセル4の製造装置は、概略、上述した第1および第2の実施の形態に加えて、突出部17の先端に、ガスケット6を打ち抜く形状に応じてハーフカット部6bを成形するためのハーフカット部成形部17aを備えている。
【0070】
図4に示すように、突出部17の先端面には、その外周縁に沿ってハーフカット部成形部を構成する突条17aが形成されている。突条17aの先端は鋭角に形成されている。突条17aは、金型1内にインサートされた燃料電池構成部品2に締結時の荷重を付与したときに、その先端がセパレータ3の表面に達することがないように設定されている。そのため、突出部17によって成形されたガスケット6の部分的な内周面6aの底には、切り込みのようなハーフカット部6bが成形されることとなる。
【0071】
次に、本発明の燃料電池のセルの製造方法の第3の実施の形態を、上述したように構成された第3の実施の形態における装置を使用する場合により、この装置の作動と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1および第2の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
本発明の燃料電池のセルの製造方法は、概略、上述した第1および第2の実施の形態に加えて、突出部17にハーフカット部成形部17aを予め形成しておき、このハーフカット部成形部17aによって、ガスケット6の成形時に、ガスケット6のセパレータ3とともに打ち抜かれる部分に、ハーフカット部6bを形成するものであり、またさらに、セパレータ3の、成形されたガスケット6とともに打ち抜かれる部分に、ハーフカット部3gを予め形成しておくものである。
【0072】
予め、突出部17の先端面にハーフカット部成形部17aを形成しておくことは上述した通りである。また、セパレータ3の第1プレート31のマニホールド孔3hを形成する位置における下面には、所定の深さでハーフカット部となる切り込み線3aが形成されている。
【0073】
セル4を製造するに際して、最初に、上型11と下型12を相対的に離間させて型開きし、また、下型12内の可動型14を下降させておく。そして、セパレータ3の第1プレート31を上にしてこれを可動型14上に載置すると共に、第1プレート31上に燃料電池構成部品2を積層して、上型11と下型12を相対的に近接させて型閉じし金型1内にインサートする。そして、可動型14を上昇させることにより、上型11の荷重付与部15に燃料電池構成部材2を押し付けて、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与する。これにより、セパレータ3の未だマニホールド孔3hが形成されていない平滑な表面を有する第1プレート31とキャビティ面16とが協働してキャビティ13を形成することとなる。そして、このキャビティ13内には、上型11のキャビティ面16に形成された突出部17が突出しており、さらに突出部17の先端面にはハーフカット部成形部17aがセパレータ3に接することがないように突出している。
【0074】
この状態でキャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填し、この材料が固化または硬化すると、部分的にマニホールド5を構成するための内周面6aが成形されたガスケット6が成形されることとなる。そして、ガスケット6の、マニホールド5を構成するために部分的に成形された内周面6aの底には、切り込みのようなハーフカット部6bが成形されることとなる。
【0075】
このとき、燃料電池構成部品2の厚さにはバラツキが生じており、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与したときの厚さも燃料電池構成部品2によって異なる。しかしながら、本発明では、第1の金型である上型11に、セパレータ3の表面と接する部分がないために、厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重をガスケット6の成形時に付与しても、各セル4のガスケット6のリップ部62が設定された締め代Xとなるように一定の長さで基部61から突出するように成形することができる。また、このときには、セパレータ3の第1プレート31にマニホールド孔3hが形成されていないために、従来の技術のようにセパレータ3の予め形成されたマニホールド孔3h内にガスケット6の不要部が成形されることがない。
【0076】
その後、抜き型7のポンチ71とダイス72に対して、ガスケット6が一体に成形されたセパレータ3のマニホールド5を形成する位置に位置合わせして、図5に示したように打ち抜く。この実施の形態では、予めガスケット6に内周面6aが部分的に成形されており、しかも、その部分的な内周面6aの底にはハーフカット部6bが成形されており、また、セパレータ3の第1プレート31にもハーフカット部3gが形成されているため、上移した第2の実施の形態よりもさらに、ガスケット6とセパレータ3の第1プレート31を打ち抜く厚さが少なくて済み、したがって、打ち抜き時の負荷を減少させることができる。
【0077】
次に、本発明のセルの製造装置の、第4の実施の形態を図6〜図9に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1〜第3の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
本発明の燃料電池のセルの製造装置は、概略、上述した第1〜第3の実施の形態において、金型1が、第2の金型である下型12内に燃料電池構成部品2を荷重付与部15に対して押し付け可能に設けられた可動型14と、燃料電池構成部品2を荷重付与部15に対して押し付け所定の荷重を付与する際に、可動型14の中央部を加圧する中央部加圧手段14a、および、この中央部加圧手段14aによる加圧から遅延して可動型における燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧する周縁部加圧手段14bとを備えている。
【0078】
最初に、本発明に至る経過を図6および図7に基づいて説明する。燃料電池構成部品2を荷重付与部15に対して押し付けて締結時と同じ荷重を付与するために、可動型14には油圧シリンダや、サーボモータとボールねじ機構などからなる加圧手段が設けられる。そして、加圧手段には、その駆動負荷をモニタリングすることなどにより、燃料電池構成部品2に対して締結時と同じ荷重を付与するよう制御する制御手段が設けられている。
【0079】
ここで、図6に示すように、可動型14の略中央部のみに加圧手段14a’の作動杆を接続すると仮定する。この場合には、加圧手段14a’により燃料電池構成部品2の略中央が主に加圧されることとなり、燃料電池構成部品2全体を、締結時と同じ荷重を均一に付与することができない。すなわち、燃料電池構成部品2の略中央に対する加圧手段14a’の駆動負荷が締結時と同じ荷重を付与したものと制御手段が判断しても、燃料電池構成部品2の端縁近傍では、締結時の荷重よりも少ない荷重しか付与されないこととなる。その結果、従来の技術において燃料電池構成部品2の厚みが設定された厚みよりも薄い場合(図15を参照)で説明したのと同様に、締結時におけるガスケット6のリップ部62の締め代が大きくなり、ガスケット6の特にリップ部62にかかる荷重が過大となって、ガスケット6のリップ部62が破損するなどしてマニホールド5のシールを確実に確保することがでず、マニホールド5内を流通する反応ガスや冷却媒体がリークする可能性があるという問題が発生する。
【0080】
この問題を解決するためには、図7に示すように、可動型14における燃料電池構成部品2の中央部と周縁と対応する位置を加圧するよう加圧手段14a’、14b’の作動杆を連結した構成とし、可動型14における燃料電池構成部品2の中央部と周縁と対応する位置を同時に加圧するよう構成するものが考えられる。しかしながら、このような構成では、たとえば燃料電池構成部品2の一端縁側の厚さが極端に厚いかあるいは薄い場合に、可動型14が傾くなどしてバランスを崩し燃料電池構成部品2に偏って荷重を付与した状態でガスケット6を成形することとなり、締結時の荷重よりも高い荷重が付与された部分や、低い荷重が付与された部分が生じることとなる。締結時の荷重よりも低い荷重が付与された部分は、図6に基づいて説明した場合の燃料電池構成部品2の端縁近傍(すなわち図15に示した従来の技術)と同様に、ガスケット6のリップ部62の締結時における締め代が大きくなるという問題がある。一方、締結時の荷重よりも高い荷重が付与された部分は、従来の技術において燃料電池構成部品2の厚みが設定された厚みよりも厚い場合(図13を参照)で説明したのと同様に、締結時におけるガスケット6のリップ部62の締め代が小さくなり、ガスケット6のシール性が弱く、マニホールド5を流通する反応ガスや冷却媒体がリークする可能性があるという問題がある。
【0081】
そこで、本発明では、図8に示すように、可動型14の中央部に作動杆が連結された中央部加圧手段14aと、可動型14における燃料電池構成部品2の周縁と対応する位置に作動杆が当接可能に配置された周縁部加圧手段14b(図10を参照)と、最初に中央部加圧手段14aにより可動型14の中央部を加圧し、所定時間経過後に、周縁部加圧手段14bの作動杆を可動型14における燃料電池構成部品2の周縁と対応する位置に当接させて加圧させるよう制御する制御手段とを備えた構成とした。なお、中央部加圧手段14aと周縁部加圧手段14bを油圧シリンダにより構成した場合には、そのシリンダ室にそれぞれ接続されたバルブの開閉を制御手段が制御するものとし、また、中央部加圧手段14aと周縁部加圧手段14bをサーボモータとボールねじ機構などによりそれぞれ構成した場合には、各サーボモータに接続されたスイッチの開閉を制御手段が制御するものとすることができる。
【0082】
次に、本発明の燃料電池のセルの製造方法の第4の実施の形態を、上述したように構成された第4の実施の形態における装置を使用する場合により、この装置の作動と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1〜第3の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
本発明の燃料電池のセルの製造方法は、概略、上述した第1〜第3の実施の形態において、金型1に、燃料電池構成部品2を荷重付与部15に対して押し付け可能な可動型14を予め設けておき、燃料電池構成部品2を荷重付与部15に対して押し付け締結時と略同じ荷重を付与する際に、可動型14の中央部を加圧し、その後、可動型14の、燃料電池構成部品2の周縁と対応する位置を加圧する。
【0083】
セル4を製造するに際して、最初に、上型11と下型12を相対的に離間させて型開きし、また、下型12内の可動型14を下降させておく。そして、セパレータ3の第1プレート31を上にしてこれを可動型14上に載置すると共に、第1プレート31上に燃料電池構成部品2を積層して、上型11と下型12を相対的に近接させて型閉じし金型1内にインサートする。そして、中央部加圧手段14aの駆動により可動型14を上昇させて、上型11の荷重付与部15に燃料電池構成部材2を押し付け、たとえば0.1〜1.0秒後に周縁部加圧手段14bによって可動型14における燃料電池構成部品2の周縁と対応する位置を加圧する。そして、制御手段は、中央部加圧手段14aと周縁部加圧手段14bの負荷などを検知して、これらの負荷が設定値を越えた時点で締結時の荷重と同じ荷重を付与することができたと判断し、これらの駆動を停止させる。これにより、燃料電池構成部品2は、その中央部が最初に加圧され、続いて、その周縁部が加圧される。これにより、燃料電池構成部品2は、たとえ部分的に厚さが異なる場合であっても、均一に荷重が付与されることとなり、したがって、ガスケット6のリップ部62を適切な設定された締め代となるように一定の長さで基部61から突出させて成形することができる。また、全体的に厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重をガスケット6の成形時に付与しても、各セル4のガスケット6のリップ部62が設定された締め代となるように一定の長さで基部61から突出するように成形することができることは、上述した他の実施の形態と同様である。
【0084】
ガスケット6の成形が完了すると、図1の鎖線、図3、あるいは図5に示したように、ガスケット6とセパレータ3の第1プレート31を抜き型7によって打ち抜いて、ガスケット6の内周面6aと、セパレータ3の第1プレート31のマニホールド孔3hを形成する。
【0085】
本発明では、いずれの実施の形態の場合にも、ガスケット6の内周面6aの形成と、セパレータ3のマニホールド孔3hの形成とを、一度の抜き加工で同時に行うことができるため、工程数を減少させることができ、したがって、セル4の製造サイクルタイムや製造コストを削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、燃料電池のセルのガスケットを成形してマニホールドを構成するための方法に利用することができる。また、本発明は、燃料電池のセルのマニホールドを構成するガスケットを成形してその内周面とセパレータのマニホールド孔を形成するための装置に利用することができる。さらに、本発明は、ガスケットが成形された複数のセルを積層して所定の荷重を付与してエンドプレートを締結し、マニホールドが構成されてなる燃料電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:燃料電池用ガスケット成形用金型、 2:燃料電池構成部品、 3:セパレータ、 3h:マニホールド孔、 3g:ハーフカット部、 4:セル、 5:マニホールド、 6:ガスケット、 6a:内周面、 6b:ハーフカット部、 11:上型(第1の型)、 12:下型(第2の型)、 13:キャビティ、 14:可動型、 14a:中央部加圧手段、 14b:周縁部加圧手段、 15:荷重付与部、 16:キャビティ面、 17:突出部、 17a:突状(ハーフカット成形部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池において、燃料電池構成部品とセパレータとを積層して金型内にインサートしてガスケットを燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形するセルの製造方法であって、
前記金型に、燃料電池構成部品とセパレータとを積層してインサートし型締することにより燃料電池構成部品に対して所定の荷重を付与する荷重付与部と、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成するためのキャビティ面とを予め形成しておき、
マニホールド孔が形成されていないセパレータと燃料電池構成部品とを積層して金型にインサートし型締して、燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与するとともに、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成して、該キャビティ内にガスケットの材料を射出充填し、
成形されたガスケットとセパレータを打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成することを特徴とする燃料電池のセルの製造方法。
【請求項2】
前記金型に、後に形成するガスケットの内周面と対応する断面形状と、前記燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与したときにセパレータに接することがない長さとを有しており、ガスケットの内周面を部分的に成形する突出部をさらに予め形成しておき、
該突出部によってセパレータに達することがない所定の深さの部分的な内周面を有するガスケットを成形することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセルの製造方法。
【請求項3】
前記金型に、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け可能な可動型を予め設けておき、
燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け所定の荷重を付与する際に、可動型の中央部を加圧し、その後、可動型の、燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池のセルの製造方法。
【請求項4】
複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドを構成する燃料電池において、マニホールドを構成し得るようにガスケットが燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されてなるセルを製造するための装置であって、
マニホールド孔が形成されていないセパレータと積層されインサートされた燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、成形するガスケットに応じた所定形状のキャビティを形成する前記キャビティ面とを備えた金型と、
成形されたガスケットとセパレータを打ち抜いて、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔とを形成する抜き型とを有することを特徴とする燃料電池のセルの製造装置。
【請求項5】
前記金型のキャビティ面に、後に形成するガスケットの内周面と対応する断面形状と、前記燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与したときにセパレータに接することがない長さとを有しており、ガスケットの内周面を部分的に成形する突出部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池のセルの製造装置。
【請求項6】
前記金型が、燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け可能に設けられた可動型と、
燃料電池構成部品を荷重付与部に対して押し付け所定の荷重を付与する際に、可動型の中央部を加圧する中央部加圧手段、および、該中央部加圧手段による加圧から遅延して可動型における燃料電池構成部品の周縁と対応する位置を加圧する周縁部加圧手段とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池のセルの製造装置。
【請求項7】
複数のセルを積層して所定の荷重を付与した状態で締結することにより、互いに隣接するセルの燃料電池構成部品をセパレータによって挟持するとともに、各セパレータのマニホールド孔をガスケットの内周面により互い連通してマニホールドが構成された燃料電池であって、
各セルの、マニホールドを構成するガスケットの内周面とセパレータのマニホールド孔は、積層された燃料電池構成部品およびセパレータと一体に成形されたガスケットをセパレータと共に打ち抜くことにより形成されたものであることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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