説明

燃料電池の保護構造

【課題】衝突時の慣性力によってセル同士がずれるのを防止する機能を有する燃料電池の保護構造を提供する。
【解決手段】一対のエンドプレート3c,3dを有し、かつ前記一対のエンドプレート3c,3d間に挟持された複数の単位セルを有する燃料電池スタック1eと、一対のエンドプレート3c,3d間に掛け渡される荷重受け部材4fと、燃料電池スタック1eの複数の単位セル層と荷重受け部材4fとの間に、一対のエンドプレート3c,3d間に設けられるスタックパネル6と、を備え、複数の単位セル層とスタックパネル6とが当接するように配置するとともに、スタックパネル6と荷重受け部材4fとの間に所定間隔の隙間が形成されるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃荷重等の外部入力荷重に対して、燃料電池セル層を保護するための燃料電池の保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、アノードである水素極での水素の酸化反応及びカソードである酸素極での酸素の還元反応を利用した電池である。燃料電池を車両等に応用する場合、出力電圧を高くするために、複数の燃料電池の単位セルを直列接続させるように積層させた燃料電池スタックの形で用いられる。
【0003】
図15は、固体電解質型の燃料電池スタック内の燃料電池セル層の一例の構成を簡易的に示す断面図である。燃料電池スタックの燃料電池セル層は、図15に示すようにアノード51(水素極)、固体電解質層53及びカソード52(酸素極)からなる単位燃料電池セル54を、セパレータ55を介して複数個、直列接続となるように積層して、形成される。なお、セパレータ55内には、水素ガス流路56及びエア流路57が形成されている。これらの流路により、アノード51に水素ガス、またカソード52にエアが供給されている。
【0004】
燃料電池スタックは、従来からある内燃エンジンに比べ効率が高く、有害物質を排出しないので車両駆動用電源として開発応用が進んでいる。燃料電池スタックを車両駆動用電源として用いる場合、衝突等により強い衝撃荷重が燃料電池スタックに加わった場合の燃料電池スタックの耐衝撃性を考慮して、燃料電池スタックの保護構造が検討されている。
【0005】
燃料電池スタックの保護構造に関する従来技術は以下のとおりである。
【0006】
前記した燃料電池スタックは、内部抵抗となる積層された状態での単位セル間の接触抵抗を下げるため、またセパレータ中のガスシールをするために、積層された燃料電池セル層に予め、圧縮力を加えている。当該圧縮力は、積層された燃料電池セル層を挟持する一対のエンドプレートにより保持されている。この場合、エンドプレートは通常、金属等の剛性の高い材料で作られているので、セルの積層方向に衝撃荷重が加わっても、容易に変形しない。したがって、内部の燃料電池セル層は保護される。
【0007】
また、特許文献1のように、車両の正面衝突により、燃料電池スタックの積層方向に引っ張り荷重が加わり、燃料電池スタックを構成するセル同士に隙間が生じたりしないように、スタックの車両前方方向にストッパーとして機能する支持部材を取り付けることもできる。
【0008】
特許文献2に記載されている、燃料電池スタックの保護構造の場合、金属製のスタックパネルにより、燃料電池セルのスタック部分が箱状のケースに収容される。同ケースによる保持により、燃料電池のスタック部分を一定の圧縮荷重を与えた状態で保持している。この場合も、燃料電池スタックの両端には前記したエンドプレートが存在するため、燃料電池セルの積層方向の衝撃には、燃料電池セル層は十分に保護される。
【0009】
しかし、燃料電池スタックに側面から衝撃荷重が加わった場合、スタックパネルは薄板の金属板製なので、変形し易く、内部に収容されている燃料電池セルのスタック部分がダメージを受ける場合がある。もちろんスタックパネルを厚くすれば、その剛性が高くなるので、側面からの衝撃に対しても耐衝撃性を高めることができる。しかし、燃料電池スタ
ックの重量が増大し、燃費が低下するので、車両用としては望ましくない。
【0010】
また、特許文献3は、燃料電池スタックを車両の揺れや振動から保護するため、燃料電池スタックの周囲に補強枠を設ける構造についてのものである。同様な構造を用いれば、側面からの衝撃荷重に対して、燃料電池セル層を保護することが可能である。しかし、当該構造はコンパクトでないため、利用できるスペースが通常限られる車両へ応用するのは困難である。
【0011】
車両の側面衝突等により、十分な保護構造を備えていない燃料電池スタックが側面から衝撃荷重を受けた場合、積層された燃料電池セル層に積層ずれが生じ、水素ガスや空気等を各セルに分配・供給する分配器から水素ガス等が漏れ、燃料電池セルの発電機能が停止するおそれがある。しかしながら、従来技術では以上のように、車両搭載等用の燃料電池スタックの側面を、衝撃等の荷重入力に対して、簡便に保護する構造はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−30771号公報
【特許文献2】特開2005−44688号公報
【特許文献3】特開平5−82157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記したように、従来、燃料電池スタックに側面から衝撃荷重が加わった場合、内部の燃料電池セル層を保護する簡便な構造がなかった。たとえば、高剛性の厚い金属製の板等により構成されるケースに入れれば、燃料電池スタックの燃料電池セル層を保護できるが、全体として重量増になり、燃料電池スタックを車両に搭載する場合に、燃費低下等の問題がある。そこで、本発明は、内部の燃料電池セル層を外方からの荷重から保護する機能を有する簡便な燃料電池の保護構造を提供することを課題とする。
【0014】
また、燃料電池セル層の各セルには燃料(水素)が流れる流路が形成されているので、燃料電池スタックに側面から衝撃荷重が加わった場合、慣性力(燃料電池スタックの内部からの荷重)により、燃料電池セル層の各セルが水平方向(面方向)にずれて、流路がずれるという問題もある。そこで、本発明は、衝突時の慣性力によってセル同士がずれるのを防止する機能を有する燃料電池の保護構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1にかかる発明では、一対のエンドプレートを有し、かつ前記一対のエンドプレート間に挟持された複数の単位セルを有する燃料電池スタックと、前記一対のエンドプレート間に掛け渡される荷重受け部材と、前記燃料電池スタックの複数の単位セル層と前記荷重受け部材との間に、前記一対のエンドプレート間に設けられるスタックパネルと、を備え、前記複数の単位セル層と前記スタックパネルとが当接するように配置するとともに、前記スタックパネルと前記荷重受け部材との間に所定間隔の隙間が形成されるように配置したことを特徴とする。なお、所定間隔の隙間とは、燃料電池スタックの側面への外部からの衝撃荷重による荷重受け部材の曲げ変形によって燃料電池セル層(複数の単位セル層)に直接に衝撃が加わるのを防止でき、かつ、慣性力によるセルずれを防止できる間隔である。
【0016】
請求項2にかかる発明では、請求項1にかかる燃料電池の保護構造において、前記複数の単位セル層の周囲を被覆する絶縁性を有する弾性部材を備え、前記弾性部材には、前記荷重受け部材と対向する位置に剛性部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項3にかかる発明では、請求項1または請求項2にかかる燃料電池の保護構造において、前記荷重受け部材は、前記燃料電池スタックの重心と同じ高さ位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる燃料電池の保護構造によれば、荷重受け部材とスタックパネルとの間に所定間隔の隙間が形成されているので、燃料電池スタックの側面に外部から衝撃荷重が加わった場合には、その荷重は、荷重受け部材からエンドプレートに分散されるので、荷重受け部材からスタックパネルを介して燃料電池セル層(複数の単位セル層)に直接に衝撃が加わることが防止される。その結果、燃料電池スタックの燃料電池セル層の保護がより確実になる。さらに、燃料電池スタックの側面に衝撃荷重が加わった場合には、燃料電池セル層が外部に移動しようとする慣性力が働くが、燃料電池セル層とスタックパネルとが密着して形成されるとともに、スタックパネルと荷重受け部材との間にセルずれを生じさせない程度の隙間が形成されているので、スタックパネルおよび荷重受け部材によって慣性力による燃料電池セル層のセルずれが防止される。その結果、燃料電池スタックの内部から燃料が漏れるのを確実に防止できる。
【0019】
請求項2にかかる燃料電池の保護構造によれば、燃料電池スタックの側面に衝撃荷重が加わった場合、燃料電池セル層が外部に移動しようとする慣性力が働くが、このとき剛性部材がスタックパネルを介して荷重受け部材に当接して、前記慣性力を荷重受け部材で受けることができるので、複数の単位セル層がセルずれを起こすのをより効果的に防止できる。
【0020】
請求項3にかかる燃料電池の保護構造によれば、最も慣性力が大きく働く高さ位置に荷重受け部材を配置することにより、セルずれを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】燃料電池スタック及び荷重受け部材からなる燃料電池の保護構造の斜視図である。
【図2】図1の燃料電池の保護構造のA−A断面図である。
【図3】図1の燃料電池の保護構造を車両のセンターコンソール内に設置した場合の、当該センターコンソール内での当該燃料電池の保護構造の正面図である。
【図4】スタックパネルでケーシングした燃料電池スタックに荷重受け部材を結合した燃料電池の保護構造の斜視図である。
【図5】図4の燃料電池の保護構造のB−B断面図である。
【図6】図4の燃料電池の保護構造において荷重受け部材の形状を変更した燃料電池の保護構造の斜視図である。
【図7】図4の燃料電池の保護構造において荷重受け部材の形状を変更した燃料電池の保護構造の斜視図である。
【図8】荷重受け部材とエンドプレート間に緩衝部材を挿入し、かつ外方からの荷重に対して移動可能に車両センターコンソール21内に支持され、かつスタックパネルでケーシングされた燃料電池スタックを含む、燃料電池の保護構造の当該センターコンソール内の正面図である。エンドプレート等のヒンジ結合は便宜上省略してある。
【図9】図8の燃料電池の保護構造のC−C断面図である。エンドプレート等のヒンジ結合は便宜上省略してある。
【図10】第1実施形態の燃料電池の保護構造の斜視図である。
【図11】図10の燃料電池の保護構造のD−D断面図である。
【図12】図10の燃料電池の保護構造のE矢視図である。
【図13】第2実施形態の燃料電池の保護構造を荷重受け部材側から見たときの平面図である。
【図14】図13の燃料電池の保護構造のF−F断面図である。
【図15】固体高分子型の燃料電池スタックの燃料電池セル層の一例の構成を簡易的示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1参考形態>
以下、図1乃至図3を参照して、第1参考形態の燃料電池の保護構造について説明する。図1は、燃料電池スタック及び荷重受け部材からなる燃料電池の保護構造の斜視図である。図2は、図1の燃料電池の保護構造のA−A断面図である。図3は、図1の燃料電池の保護構造を車両のセンターコンソール内に設置した場合の、当該センターコンソール内での当該燃料電池の保護構造の正面図である。図1乃至図3では、第1参考形態の実施に直接影響しない水素ガス、空気及び冷却媒の供給及び循環に関わる構造、燃料電池セル層に圧縮力を与えている構造並びに電源出力取り出し部等の燃料電池スタックの構成部分は省略して記載してある(以下図4乃至図9において同様な省略がなされている)。
【0023】
第1参考形態の燃料電池の保護構造の構成は、以下のとおりである。図1の燃料電池の保護構造は、複数の単位セルが積層された燃料電池セル層2及び前記燃料電池セル層2を挟持している一対のエンドプレート3a、3bを有する燃料電池スタック1と、前記一対のエンドプレート3a、3b間に掛け渡されている荷重受け部材4a、4aにより、構成されている。
【0024】
第1参考形態において、荷重受け部材4aは梁形状の部材であり、燃料電池セル層2との間に隙間ができるように、エンドプレート3a、3bと接する部分を除く部分の肉厚が薄くなっている。荷重受け部材4aは、金属あるいはFRP(繊維強化樹脂)等の比較的剛性(弾性率)の高い材料で作製されている。
【0025】
荷重受け部材4a、4aは図1及び図2のエンドプレート3a、3bに対して、以下に述べる半固定構造で結合されている。荷重受け部材4aの一端には、通常の通し孔9が形成されており、取り付けボルト5が当該通し孔9を通っている。前記荷重受け部材4aの一端は一方のエンドプレート3bの側面に、前記取り付けボルト5が螺着されることにより固定されている。
【0026】
一方、荷重受け部材4aの他端は、他方のエンドプレート3aの側面に完全に固定されてはいない。また当該荷重受け部材4aの他端には荷重受け部材長孔8が形成されている。この荷重受け部材長孔8は、燃料電池スタック1の積層方向に拡がっている形状になっている。図2からわかるように、荷重受け部材4aの荷重受け部材長孔8を取り付けボルト5が通っている。当該取り付けボルト5は、エンドプレート3aにねじ止めされて固定されるが、当該荷重受け部材4aに対する締め付けトルクが適宜調整されているため、当該取り付けボルト5は荷重受け部材長孔8中で、燃料電池スタック1の積層方向に動くことができるようになっている。
【0027】
したがって、エンドプレート3aは、荷重受け部材4a、4aに対して可動状態になっている。このような、半固定構造を採用することにより、荷重受け部材4a、4aと燃料電池セル層2の線熱膨張率の差により、積層された燃料電池セル層2を押さえる圧縮力に局部的に差が生じないようにしている。
【0028】
もちろん、一方のエンドプレート3aを荷重受け部材4a、4aの各々の一端に対して可動とするとともに、他方のエンドプレート3bを荷重受け部材4a、4aの各々の他端に対して、前記同様に可動とすることも可能である。この場合、荷重受け部材4a、4aと燃料電池セル層2の線熱膨張率の差により、積層された燃料電池セル層2を押さえる圧縮力に局部的に差が生じないようにする効果を、より確実に得られる。
【0029】
次に、第1参考形態の燃料電池の保護構造を車両に設置した場合の作用及び効果について説明する。図3では、燃料電池スタック1は車両のセンターコンソール21内に設置されている。燃料電池スタック1のエンドプレート3a、3b上には、スタック固定ボルト16でスタック取り付けマウント11が固定されている。当該スタック取り付けマウント11を介して、燃料電池スタック1はスタック保持フレーム15上にスタックマウント取り付けボルト14により、固定されている。スタック保持フレーム15は、車両において車体フレームあるいは床パネル等に固定される。
【0030】
図3の場合、当該車両が側面からの衝突事故等により、センターコンソール21が図3の左方より衝撃荷重Wを受ける。前記衝撃荷重Wにより、センターコンソール21が変形した場合には、荷重受け部材4aが衝撃荷重を受けることになる。当該衝撃荷重を受ける荷重受け部材4aをエンドプレート3a、3bが支持する。その結果、エンドプレート3a、3bは、荷重受け部材4aが受ける衝撃荷重の全部あるいは少なくとも一部を受けることになる。ここで、エンドプレート3a、3bは通常ステンレス鋼等で製造されたものであり、材料自体の剛性が高いこと及び形状に起因して、側面からの荷重に対しての曲げ剛性(弾性定数×断面二次モーメント)は、極めて大きい。そのため、側面からの衝撃加重に対しエンドプレート3a、3bの前記衝撃荷重Wの方向の変形は、荷重受け部材4aの変形に比べ無視できる。
【0031】
したがって、図3の燃料電池スタック1が左方側面から衝撃荷重を受けた場合、荷重受け部材4aの弾性あるいは塑性による曲げ変形が十分小さければ、燃料電池セル層2(図1及び図2参照)にダメージが及ぶことはなく、燃料電池セル層2は保護される。ここで、荷重受け部材4aの曲げ変形が十分小さいとは、図1及び図2の例の燃料電池スタック1の場合、荷重受け部材4aと燃料電池セル層2の隙間(図2参照)よりも、当該曲げ変形が小さいことである。
【0032】
また、図3のように、第1参考形態の燃料電池の保護構造が側面から衝撃荷重Wを受けた場合、荷重受け部材4aが、前記したような半固定構造でエンドプレート3a、3bと結合されているため、次のような効果がある。
【0033】
図3の第1参考形態の燃料電池の保護構造に衝撃荷重Wが加わると、燃料電池スタック1の左側面の荷重受け部材4aが、衝撃荷重Wの方向にたわむ。その際、もしも、図1乃至図3において、荷重受け部材4aが両端を固定されているとしたら、衝撃荷重を受ける荷重受け部材4aと固定されている部分である、エンドプレート3a、3bそれぞれの左側面部は(図2及び図3参照)、ともに燃料電池スタック1の内側に変形する。一方、衝撃荷重を受ける側の反対側に位置するエンドプレート3a、3bそれぞれの右側面部は、ともに燃料電池スタック1の外側に変形する。したがって、エンドプレート3a、3bのそれぞれの衝撃荷重を受ける側の側面とその反対側の側面が、内部の燃料電池セル層2の積層方向において互いに逆向きに変形する。その結果、内部の燃料電池セル層2は衝撃荷重を受ける側では積層方向の圧縮の力を受けるが、衝撃荷重を受ける側の反対側では積層方向の引っ張りの力を受けることになり、当該燃料電池セル層2の直列接続が断絶されるおそれがある。
【0034】
しかし、第1参考形態では、荷重受け部材4aがエンドプレート3aと固定されていないので、荷重受け部材4aが荷重を受けた場合に、エンドプレート3a、3bが、前記したような燃料電池セル層2の積層方向の変形をするおそれは少ない。もちろん、荷重受け部材4aの両端を可動状態でエンドプレート3a、3bと結合する場合は、エンドプレート3a、3bが、前記したように、燃料電池セル層2の積層方向の変形をするおそれはいっそう少ない。
【0035】
図3において、燃料電池スタック1をセンターコンソール21内に配置した場合の効果について説明したが、第1参考形態の燃料電池の保護構造は、車両の他の部分に、たとえば、床下やボンネット内等に燃料電池スタック1を配置する場合にも効果的である。車両の場合、どの部分も衝突事故等により、車両の前後方あるいは側方からの衝撃を受ける可能性があるからである。
【0036】
第1参考形態において、側面に配置する荷重受け部材4aの形状は、図1乃至図3に示す形状に限られるものではなく、燃料電池スタック1の設置される場所におけるスペースが許す範囲で、幅、厚さ及び断面形状の変更が可能である。
【0037】
<第2参考形態>
以下図4乃至図7を参照して、第2参考形態の燃料電池の保護構造について説明する。図4は、スタックパネルでケーシングした燃料電池スタックに荷重受け部材を結合した燃料電池の保護構造の斜視図である。図5は図4の燃料電池の保護構造のB−B断面図である。図6及び図7は、図4の燃料電池の保護構造において荷重受け部材の形状を変更した燃料電池の保護構造の斜視図である。
【0038】
まず、図4及び図5に示す燃料電池の保護構造の構成について説明する。燃料電池スタック1aは、エンドプレート3c、3dで挟持した燃料電池セル層2の4つの側面にスタックパネル6a、6a及び6b、6bを配置して、ケーシングしてある。さらに、スタックパネル6bの側面に荷重受け部材4bが結合されている。
【0039】
前記したケーシングの概要は次のとおりである。エンドプレート3c、3dのそれぞれには、前記したスタックパネル6a、6bがそれぞれヒンジ構造により結合されている。当該結合は、エンドプレート3c、3dのそれぞれとスタックパネル6a、6bのそれぞれの各結合は、エンドプレート3cあるいは3dのタブ部30aとスタックパネル6aあるいは6bのタブ部30bが交互に組み合わされているヒンジ部に、連結ピン31aあるいは31bを通すことにより形成されている。
【0040】
また、スタックパネル6aと6bは、当該6a及び6bが接するコーナ部において、Lアングル7により、結合されかつ固定されている。以上のようなスタックパネル6a及び6bによるケーシングにより、燃料電池スタック1aにおいては、内部の燃料電池セル層2に均一な圧縮力を加えることが可能になっているとともに、内部燃料電池セル層2が容易にずれない構造になっている。しかし、スタックパネル6a及び6b自体は、薄板パネル製であり、車両衝突等による衝撃に対して、内部の燃料電池セル層2を保護できるものではない。
【0041】
図4及び図5の燃料電池スタック1aに取り付けられた荷重受け部材4bについて説明する。荷重受け部材4bは、第1参考形態の荷重受け部材4a同様、梁形状の部材である。ただし、この場合、スタックパネル6bと燃料電池セル層2の間に隙間があるので、荷重受け部材4bの肉厚は一様なものになっている。
【0042】
また、荷重受け部材4b及びスタックパネル6bが、エンドプレート3c、3dと接する部分の構造は、図1及び図2の荷重受け部材4aと同様である。そのため、荷重受け部
材4b及びスタックパネル6bはエンドプレート3dとは取り付けボルト5により固定される、一方、前記した半固定構造で、エンドプレート3cと結合されている。すなわち、図4及び図5からわかるように、荷重受け部材4bのエンドプレート3cと接する部分には、荷重受け部材長孔8が形成されている。また、荷重受け部材4bの当該荷重受け部材長孔8の部分に接するスタックパネル6bの部分には、荷重受け部材長孔8と同形状の長孔が形成されている(図5参照)。前記荷重受け部材長孔8及びスタックパネル6bを貫通する取り付けボルト5の締め付けトルクが調整されることにより、エンドプレート3cが荷重受け部材4bに対して可動状態で結合されている。本実施形態では採用していないが、エンドプレート3cとともにエンドプレート3dも荷重受け部材4bに対して可動状態で結合させることが可能である。
【0043】
次に第2参考形態の燃料電池の保護構造を車両に搭載した場合の作用及び効果について説明する。図4及び図5に示す第2参考形態の燃料電池の保護構造が、第1参考形態の図3のように設置され、車両の衝突等により燃料電池スタック1aに側面から衝撃荷重が加えられた場合、当該衝撃荷重は、荷重受け部材4b及びスタックパネル6bが受ける。また、当該衝撃荷重を受けた荷重受け部材4b及びスタックパネル6bをエンドプレート3c、3dが支持することになる。その結果、エンドプレート3c、3dは、荷重受け部材4b及びスタックパネル6bが受ける衝撃荷重の全部あるいは少なくとも一部を受ける。
【0044】
この場合、前記した第1参考形態の場合同様、エンドプレート3c、3dの衝撃荷重の方向の変形は、他の荷重受け部材4b及びスタックパネル6bの曲げ変形に比べて無視できる。そのため、荷重受け部材4b及びスタックパネル6bの弾性あるいは塑性曲げ変形が十分小さければ、内部の燃料電池セル層2は保護される。この場合、当該曲げ変形が十分小さいとは、図5におけるスタックパネル6bと燃料電池セル層2の隙間よりも小さいことである。
【0045】
また、荷重受け部材4bは、前記したように、エンドプレート3c、3dに対して、前記した半固定構造で結合されている。したがって、荷重受け部材4bが荷重を受けた場合、前記した第1参考形態と同様な効果がある。
【0046】
第2参考形態においても、荷重受け部材の幅、厚さ及び形状を設置場所等の条件により変更することが可能である。たとえば、第2参考形態の荷重受け部材の形状を、図6の荷重受け部材4cあるいは図7の荷重受け部材4dのように変更することが可能である。図6の荷重受け部材4cの場合、Lアングルと荷重受け部材が一体化されており、これにより燃料電池スタック1bの比較的弱い燃料電池セル層のコーナ部を効果的に保護できる。図7の荷重受け部材4dの場合、断面がコ字形になっている。そのため、荷重受け部材の重量増を抑えながら、断面二次モーメントを大きくしている、すなわち荷重受け部材の曲げ剛性(弾性定数×断面二次モーメント)を大きくしている。したがって、図7の荷重受け部材4dは、比較的軽量の部材でありながら、効果的に燃料電池スタック1cの内部の燃料電池セル層を保護できるものである。
【0047】
<第3参考形態>
以下、図8及び図9を参照して、第3参考形態の燃料電池の保護構造について説明する。図8は、荷重受け部材とエンドプレート間に緩衝部材を挿入し、かつ外方からの荷重に対して移動可能に車両のセンターコンソール21内に支持され、かつスタックパネルでケーシングされた燃料電池スタックを含む燃料電池の保護構造の当該センターコンソール内の正面図である。図9は、図8の燃料電池の保護構造のC−C断面図である。エンドプレート等のヒンジ結合は便宜上省略して記載してある。
【0048】
まず、第3参考形態の燃料電池の保護構造の構成について説明する。図8及び図9の第3参考形態の燃料電池の保護構造は、図4及び図5に示す第2参考形態の燃料電池スタック1aと同一のスタックパネル6a、6bでケーシングされた燃料電池スタック1dを用いたものである。当該保護構造において、燃料電池スタック1dには荷重受け部材4eと緩衝部材17a、17bが、取り付けボルト5により取り付けられ、車両のセンターコンソール21内に設置されている。ただし、この場合、側面からの荷重入力に対して、燃料電池スタック1dが移動可能な状態に取り付けられている。
【0049】
図8及び図9の荷重受け部材4eは、図4及び図5の荷重受け部材4bと同一形状のものである。図8及び図9からわかるように、緩衝部材17a、17bは、中心部に当該緩衝部材17a、17bが接する荷重受け部材4bの端部と同一形状の孔(荷重受け部材長孔8あるいは通し孔9の形状)が形成されたものである。また、緩衝部材17a、17bは、ゴムあるいはスポンジ等の弾性材料製である。当該緩衝部材17a、17bは、衝撃吸収及び荷重受け部材4eの振動吸収の機能を有する。第2参考形態と同様に、図8及び図9において、エンドプレート3dは、荷重受け部材4e、緩衝部材17b及びスタックパネル6bと取り付けボルト5により固定されている。一方、エンドプレート3cは、荷重受け部材長孔8、を通る取り付けボルト5の締め付けトルクが調整され、第2参考形態と同様に荷重受け部材4eに対して可動状態で結合されている。当該結合は、第1及び第2参考形態と同様な効果がある。第3参考形態では採用していないが、エンドプレート3cとともにエンドプレート3dも荷重受け部材4eに対して可動状態で結合させることが可能である。
【0050】
図8及び図9で示す燃料電池スタック1bのエンドプレート3c、3d上には、スタック固定ボルト16でスタック取り付けマウント12が固定されている。当該スタック取り付けマウント12を介して、燃料電池スタック1はスタック保持フレーム15上にスタックマウント取り付けボルト14により取り付けられている。ここで、スタック取り付けマウント12のスタック保持フレーム15に接する部分には、スタックマウント取り付けボルト14が通る燃料電池スタック1dの図8及び図9の左右方向に拡がった長孔13が設けられている。スタックマウント取り付けボルト14は、燃料電池スタック1dが側方から所定以上の荷重を受けた場合、移動可能であるように、締め付けトルクが適宜調整されて、スタック保持フレーム15にねじ止めされている。スタック保持フレーム15は車両の車体フレームあるいは床パネル等に固定される。
【0051】
次に、第3参考形態の燃料電池の保護構造の作用及び効果について説明する。まず、緩衝部材17a、17bの効果について説明する。図8及び図9に示す燃料電池スタック1dは、センターコンソール21内に設置されているが、当該センターコンソール21に左方から衝撃荷重Wが加わり、センターコンソール21が変形した場合、荷重受け部材4e並びに当該荷重受け部材4eに連結されている緩衝部材17a、17b、エンドプレート3c、3d及びスタックパネル6bの構造に衝撃荷重がかかる。この場合も、エンドプレート3c、3dは十分曲げ剛性が大きいので、その前記衝撃荷重Wの方向の変形は他部材の変形に比べて無視できる。したがって、荷重受け部材4eとスタックパネル6bの弾性あるいは塑性変形が内部の燃料電池セル層2の保護に関して問題となる。一方、図8及び図9に示す第3参考形態においては、緩衝部材17a、17bが存在する。当該緩衝部材17a、17bが荷重受け部材4eにかかる衝撃荷重のエネルギを一部吸収する。その結果、荷重受け部材4eにかかる最大衝撃荷重が緩和される。したがって、荷重受け部材4eの弾性あるいは塑性変形が抑制され、スタックパネル6bの変形も防止される。以上のように、緩衝部材17a、17bの効果により第2参考形態に比べて、より大きな衝撃荷重に対しても内部の燃料電池セル層2の保護が可能である。
【0052】
次に、スタック取り付けマウント12の長孔13の効果について説明する。第3参考形態においては、前記したように、長孔13を通るスタックマウント取り付けボルト14の締め付けトルクが調整されていることにより、所定以上の荷重が燃料電池スタック1dの側面に加わった場合、スタック取り付けマウント12が当該荷重入力方向に移動するとともに燃料電池スタック1dが移動する。その結果、荷重受け部材4eにかかる最大衝撃荷重が緩和される。したがって、荷重受け部材4eの変形が抑制され、スタックパネル6bの変形が防止される。以上のように、所定以上の荷重入力に対し、燃料電池スタック1dが移動可能としたことで、第2参考形態に比べて、より大きな衝撃荷重に対しても内部の燃料電池セル層2の保護が可能である。
【0053】
第3参考形態の燃料電池の保護構造では、前記した、緩衝部材17a、17bと燃料電池スタック1dの可動支持構造を備えることにより、第2参考形態に比べて、より効果的に燃料電池セル層2を保護するものである。図8及び図9のように、衝撃荷重Wが加わった場合、前記した緩衝部材17a、17bの効果により、荷重受け部材4eは緩和された衝撃荷重を受ける。当該衝撃荷重が所定以上の場合、前記した長孔の効果により、それ以上の荷重が荷重受け部材4eにかからなくなり、荷重受け部材4eの変形が抑制され、内部の燃料電池セル層2が保護される。
【0054】
緩衝部材17a、17bと燃料電池スタック1dの可動支持構造の一方のみを備える燃料電池の保護構造の場合でも、前記したように、第2参考形態に比べて効果的に内部の燃料電池セル層2を保護することができる。
【0055】
また、第3参考形態では、スタックパネル6a、6bによりケーシングした燃料電池スタックについての例について説明したが、図1乃至図3に示す第1参考形態の燃料電池の保護構造にも、第3参考形態と同様な緩衝部材17a、17b及び燃料電池スタック1の可動構造を付加することもできる。その場合、図1、図2及び図3に示す燃料電池の保護構造に比べて、より大きな外方からの側面荷重に対して、内部の燃料電池セル層2を保護できるようになる。
【0056】
第1、第2及び第3参考形態の燃料電池の保護構造において、側面に配置する荷重受け部材(4a乃至4e)は各側面に1本に限定されるものではない。たとえば、図1乃至図3において、第1、第2及び第3参考形態に2本の荷重受け部材4aを結合させれば、内部の燃料電池セル層2の保護はより確実なものとなる。さらに、燃料電池スタック(1並びに1a乃至1d)の配置場所あるいは固定方法によっては、燃料電池スタックの上側面あるいは下側面に荷重受け部材を結合させることも可能であるし、内部の燃料電池セル層を保護する上で効果的になる。また、燃料電池スタックの設置される場所において、特定の側面側に十分に剛性の高い外部保護構造が存在する場合がある。そのような場合には、燃料電池スタックの当該側面には必ずしも荷重受け部材を設ける必要はない。
【0057】
<第1実施形態>
以下、図10ないし図12を参照して、第1実施形態の燃料電池の保護構造について説明する。図10は第1実施形態の燃料電池の保護構造の斜視図、図11は図10の燃料電池の保護構造のD−D断面図、図12は図10の燃料電池の保護構造のE矢視図である。なお、図12は、Lアングル7およびタブ30a、30bの図示を省略している。
【0058】
まず、第1実施形態の燃料電池の保護構造の構成について説明する。図10に示すように、燃料電池スタック1eは、エンドプレート3c、3d(3c図示せず)で挟持した燃料電池セル層(複数の単位セル層)2の4つの側面にスタックパネル6a及び6b(2面のみ図示)を配置して、ケーシングしてある。さらに、スタックパネル6bの側面に荷重受け部材4fが結合されている。
【0059】
エンドプレート3c、3dのそれぞれには、前記したスタックパネル6a、6bがそれぞれヒンジ構造により結合されている。当該結合は、エンドプレート3c、3dのそれぞれとスタックパネル6a、6bのそれぞれの各結合は、エンドプレート3cあるいは3dのタブ部30aとスタックパネル6aあるいは6bのタブ部30bが交互に組み合わされているヒンジ部に、連結ピン31aあるいは31bを通すことにより形成されている。また、スタックパネル6aと6bは、当該スタックパネル6a及び6bが接するコーナ部において、Lアングル7により、結合されかつ固定されている。なお、スタックパネル6a及び6b自体は、薄板パネル製であり、車両衝突等による衝撃に対して、内部の燃料電池セル層2を保護できるものではない。
【0060】
図11に示すように、スタックパネル6bは、その内壁6b1が燃料電池セル層2の外面に対して面接触するように構成されている。つまり、スタックパネル6bが燃料電池セル層2の外面に密着するように形成されている。
【0061】
荷重受け部材4fは、スタックパネル6bと対向する側に凹状の切欠部4f1が形成され、スタックパネル6bと荷重受け部材4fとの間に隙間Sが形成されるように構成されている。また、この隙間Sは、燃料電池セル層2に対応する位置のみに、例えば積層方向に所定の間隔でスタックパネル6bに沿って形成されている。なお、隙間Sの間隔s1は、車両の衝突等により燃料電池スタック1eに側面から衝撃荷重が加えられた場合に、荷重受け部材4fが弾性あるいは塑性曲げ変形したときに燃料電池セル層2を保護することができ、かつ、燃料電池セル層2が受ける慣性力によるセルずれを防止することができる間隔に設定される。この間隔s1は、例えば、5〜10mm程度に設定される。
【0062】
なお、荷重受け部材4f及びスタックパネル6bが、エンドプレート3c、3dと接する部分の構造は、図1及び図2の荷重受け部材4aと同様である。そのため、荷重受け部材4fの一端とスタックパネル6bとは、エンドプレート3dと取り付けボルト5により固定される一方、荷重受け部材4fの他端とスタックパネル6bとは、前記した半固定構造で、エンドプレート3cと結合されている。また、図12に示すように、荷重受け部材4fは、燃料電池スタック1eの高さ方向の重心Gと一致する高さに設けられている。
【0063】
次に第1実施形態の燃料電池の保護構造を車両に搭載した場合の作用及び効果について説明する。図10乃至図12に示す第1実施形態の燃料電池の保護構造が、第1参考形態の図3のように設置され、車両の衝突等により燃料電池スタック1eに側面から衝撃荷重が加えられた場合、当該衝撃荷重は、荷重受け部材4f及びスタックパネル6bが受ける。また、当該衝撃荷重を受けた荷重受け部材4f及びスタックパネル6bをエンドプレート3c、3dが支持することになる。その結果、エンドプレート3c、3dは、荷重受け部材4f及びスタックパネル6bが受ける衝撃荷重の全部あるいは少なくとも一部を受ける。
【0064】
この場合、エンドプレート3c、3dの衝撃荷重の方向の変形は、他の荷重受け部材4f及びスタックパネル6bの曲げ変形に比べて無視できる。そのため、荷重受け部材4f及びスタックパネル6bの弾性あるいは塑性曲げ変形が十分小さければ、内部の燃料電池セル層2は保護される。ただし、荷重受け部材4fの曲げ変形が十分に小さいといっても、燃料電池セル層2とスタックパネル6bとのクリアランスを0(ゼロ)に設定し、かつ、荷重受け部材4fとスタックパネル6bとのクリアランスも0(ゼロ)にすると、燃料電池スタック1eに側面から衝撃荷重が加えられたときに、衝撃荷重がスタックパネル6bを介して燃料電池セル層2に直接に与えられることになる。そこで、第1実施形態では、荷重受け部材4fとスタックパネル6bとの間に所定間隔s1の隙間Sを形成したので、荷重受け部材4fが受ける衝撃荷重がエンドプレート3c、3dに分散されて、衝撃荷重が燃料電池セル層2に密着したスタックパネル6bに対して直接に与えられることがない。
【0065】
また、車両の衝突等により燃料電池スタック1eに側面から衝撃荷重が加えられた場合、燃料電池セル層2が当該衝撃荷重を受けることによって、燃料電池セル層2に慣性力が働いて燃料電池セル層2の各セルが外側へ移動しようとする力が作用する。しかし、第1実施形態では、燃料電池セル層2とスタックパネル6bとのクリアランスがゼロに設定され、かつ、スタックパネル6bと荷重受け部材4fとのクリアランス(隙間S)がセルずれを生じさせないような間隔s1で形成されているので、たとえ燃料電池セル層2が慣性力を受けて外側に移動するような力が働いたとしても、燃料電池セル層2の慣性力を、スタックパネル6bを介して荷重受け部材4fで受けることができ、燃料電池セル層2のセル同士のずれを防止できるようになる。このようにセル同士のずれを防止できることにより、燃料電池セル層2からの燃料(水素)漏れを確実に防止できる。
【0066】
また、第1実施形態では、燃料電池スタック1eの重心Gの高さ位置に、荷重受け部材4fを配置したので、荷重受け部材4fが、最も大きな慣性力を受ける位置で荷重を受けることができ、燃料電池セル層2のセル同士のずれを効果的に防止することができる。
【0067】
<第2実施形態>
以下、図13及び図14を参照して、第2実施形態の燃料電池の保護構造について説明する。図13は第2実施形態の燃料電池の保護構造を荷重受け部材側から見たときの平面図、図14は図13の燃料電池の保護構造のF−F断面図である。
【0068】
まず、第2実施形態の燃料電池の保護構造の構成について説明する。図13に示す燃料電池スタック1fは、エンドプレート3c、3d(3cは図示せず)で挟持した燃料電池セル層(複数の単位セル層)2の4つの側面にスタックパネル6a及び6bを配置して、ケーシングしてある。さらに、スタックパネル6bの側面に荷重受け部材4g,4g,4gが高さ方向に互いに間隔を開けて配設されている。なお、スタックパネル6a、6bのヒンジ構造については第1実施形態と同様である。また、図示省略しているが、スタックパネル6a及び6bが接するコーナ部は、第1実施形態と同様に、Lアングル7により結合されかつ固定されているものとする。また、スタックパネル6a及び6b自体は、薄板パネル製であり、車両衝突等による衝撃に対して、内部の燃料電池セル層2を保護できるものではない。
【0069】
また、荷重受け部材4gは、スタックパネル6bと対向する側に凹状の切欠部4g1が形成され、スタックパネル6bと荷重受け部材4gとの間に隙間Sが形成されるように構成されている。また、この隙間Sの間隔s1は、第1実施形態と同様にして設定される(図14参照)。
【0070】
また、燃料電池セル層2の各セルは、図14に示すように、セパレータPを備え、このセパレータPの周囲が、ゴムなどで形成された絶縁性を有する弾性部材18によって被覆されている。この弾性部材18は、隣接するセパレータPとの短絡や、セパレータPとスタックパネル6a,6bとの短絡を防止する機能を有している。また、弾性部材18には、荷重受け部材4gと対向する位置に、剛性部材19が埋め込まれている。この剛性部材19は、剛性を有する樹脂など、容易に変形しない程度の硬度を有する材料で形成されている。また、弾性部材18の周囲には、この弾性部材18および剛性部材19の外面に当接するようにスタックパネル6a,6bが設けられている。
【0071】
次に第2実施形態の燃料電池の保護構造を車両に搭載した場合の作用及び効果について説明する。図13及び図14に示す第2実施形態の燃料電池の保護構造が、車両の衝突等により燃料電池スタック1fに側面から衝撃荷重が加えられた場合、当該衝撃荷重は、各荷重受け部材4g及びスタックパネル6bが受ける。また、当該衝撃荷重を受けた荷重受け部材4g及びスタックパネル6bをエンドプレート3c、3dが支持することになる。その結果、エンドプレート3c、3dは、荷重受け部材4g及びスタックパネル6bが受ける衝撃荷重の全部あるいは少なくとも一部を受ける。
【0072】
この場合、エンドプレート3c、3dの衝撃荷重の方向の変形は、他の荷重受け部材4g及びスタックパネル6bの曲げ変形に比べて無視できる。そのため、荷重受け部材4g及びスタックパネル6bの弾性あるいは塑性曲げ変形が十分小さければ、内部の燃料電池セル層2は保護される。ただし、荷重受け部材4gの曲げ変形が十分に小さいといっても、燃料電池セル層2とスタックパネル6bとのクリアランスを0(ゼロ)に設定し、かつ、荷重受け部材4gとスタックパネル6bとのクリアランスも0(ゼロ)に設定すると、燃料電池スタック1fに側面から衝撃荷重が加えられたときに、衝撃荷重がスタックパネル6bを介して燃料電池セル層2に直接に与えられることになる。そこで、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、荷重受け部材4gとスタックパネル6bとの間に所定間隔s1の隙間Sを形成したので、荷重受け部材4gが受ける衝撃荷重がエンドプレート3c、3dに分散されて、衝撃荷重がスタックパネル6b及び燃料電池セル層2に対して直接に与えられることがない。また、剛性部材19がセパレータPの周囲の弾性部材18内にセパレータPと所定寸法の間隔s2(図14参照)を開けて埋め込まれているので、もし仮に荷重受け部材4gが曲げ変形して、その曲げ変形による衝撃荷重がスタックパネル6bに直接に働いたとしても、剛性部材19がセパレータPに衝突することなく、衝撃荷重が弾性部材18によって吸収される。これによって、燃料電池セル層2のセル同士のずれをより効果的に防止できるようになる。
【0073】
また、車両の衝突等により燃料電池スタック1fに側面から衝撃荷重が加えられた場合、燃料電池セル層2が当該衝撃荷重を受けることによって、燃料電池セル層2に慣性力が働いて燃料電池セル層2の各セルが外側へ移動しようとする力が作用する。しかし、第2実施形態では、燃料電池セル層2とスタックパネル6bとのクリアランスがゼロに設定され、かつ、スタックパネル6bと荷重受け部材4gとのクリアランス(隙間S)がセルずれを生じさせないような間隔s1で形成されているので、たとえ燃料電池セル層2が慣性力を受けて外側に移動するような力が働いたとしても、剛性部材19がスタックパネル6bを介して荷重受け部材4gに当たる。よって、燃料電池セル層2の慣性力を受けることができるので、燃料電池セル層2のセル同士のずれを防止できるようになる。したがって、セル同士のずれを防止できることにより、燃料電池セル層2からの燃料(水素)漏れを確実に防止できる。
【0074】
また、第2実施形態では、荷重受け部材4gが高さ方向(上下方向)に複数(本実施形態では3本)設けられているので、燃料電池セル層2の変形を高さ方向(上下方向)において均一にすることができ、例えば、燃料電池セル層2の上下が中央よりも変形し易くなるのを防止できる。よって、燃料電池セル層2のセル同士のずれをより効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0075】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f 燃料電池スタック
2 燃料電池セル層
3a、3b、3c、3d エンドプレート
4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g 荷重受け部材
6a、6b スタックパネル
7 Lアングル
8 荷重受け部材長孔
11、12 スタック取り付けマウント
13 長孔
15 スタック保持フレーム
17a、17b 緩衝部材
18 弾性部材
19 剛性部材
21 センターコンソール
30a、30b タブ部
31a、31b 連結ピン
G 重心
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のエンドプレートを有し、かつ前記一対のエンドプレート間に挟持された複数の単位セルを有する燃料電池スタックと、
前記一対のエンドプレート間に掛け渡される荷重受け部材と、
前記燃料電池スタックの複数の単位セル層と前記荷重受け部材との間に、前記一対のエンドプレート間に設けられるスタックパネルと、を備え、
前記複数の単位セル層と前記スタックパネルとが当接するように配置するとともに、前記スタックパネルと前記荷重受け部材との間に所定間隔の隙間が形成されるように配置したことを特徴とする燃料電池の保護構造。
【請求項2】
前記複数の単位セル層の周囲を被覆する絶縁性を有する弾性部材を備え、前記弾性部材には、前記荷重受け部材と対向する位置に剛性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の保護構造。
【請求項3】
前記荷重受け部材は、前記燃料電池スタックの重心と同じ高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池の保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−41845(P2013−41845A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231549(P2012−231549)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2007−41716(P2007−41716)の分割
【原出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】