説明

燃料電池の製造方法、燃料電池、およびその製造装置

【課題】簡単な構成で、変形して成形された多孔質体に影響されることなく、ガスケットを容易に且つ適切に一体に成形する。
【解決手段】燃料電池の製造装置は、多孔質体23,24を含む燃料電池構成部品2とセパレータ3とがインサートされてガスケット4を成形する金型70,71を含むガスケット成形装置7と、金型70,71にインサートされる前に多孔質体23,24をセパレータ3と全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置5とを備えており、固着装置5は、セパレータ3の平坦な表面に対して多孔質体23,24を全面にわたって密着させる密着手段と、セパレータ3と全面にわたって密着された多孔質体23,24とをスポット溶接するスポット溶接手段51とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の製造方法、燃料電池、およびその製造装置に関し、さらに詳しくは、マニホールド孔が形成されたセパレータと多孔質体を含む燃料電池構成部品とを積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することによりセルを構成し、該セルを複数積層することにより前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法と、複数のセルを積層してなり、各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池、およびその製造装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、複数のセルを積層することにより構成されている。燃料電池として組み立てたときには、積層されたセルの積層方向端部にそれぞれエンドプレートが配設され、所定の荷重を付与した状態で両エンドプレートがテンション部材によって締結されており(この状態を締結時という)、セパレータの間に燃料電池構成部品が挟持されている。図4に参照されるように、各セル1の燃料電池部品としては、電解質膜の両面に電極層をそれぞれ設けてなるMEA(Membrane Electrode Assembly:膜−電極アセンブリ)21と、MEA21の両面にそれぞれ配置されたガス拡散層22,22と、ガス拡散層22,22へガスをそれぞれ流通させる多孔質体23,24とを含んでいる。MEA21とその両側に配置されたガス拡散層22とにより構成される部品は、一般にMEGA20と呼ばれる。
【0003】
燃料電池は、各セルに反応ガス(水素、空気等)や冷却媒体をそれぞれ分配・供給するためのマニホールドMを有している。セパレータ3の燃料電池構成部品2が積重される領域の周囲には、マニホールド孔3hが形成されている。そして、燃料電池のなかには、各セルが燃料電池構成部品の一方の面にセパレータを積層することにより構成されており、複数のセルを積層することにより、燃料電池構成部品がそのセルのセパレータと隣接する他のセルのセパレータとの間で挟持されるよう構成されたものがある。セパレータ3は、所定形状の溝または孔が形成された中間プレート33をカソードプレートとアノードプレートのいずれかを構成する第1プレート31と第2プレート32の間に挟んでなる3層構造とすることにより、その内部に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34が形成されている。セパレータ3内の各流路34は、所定のマニホールド孔3hに開口しており、所定のガスまたは冷却媒体が所定のマニホールド孔3hから供給され、他の対応する所定のマニホールド孔3hへと排出される。マニホールド孔3hのセパレータ3における燃料電池構成部品2が積重される領域側の部分(以下、セパレータ内側部分という、)の内周壁には、所定の流路34の導入口または排出口が開口している。
【0004】
そして、各セル1には、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔3hの周囲を取り囲み、且つ、燃料電池構成部品2の周囲をシールするようにガスケット4が一体に成形されている。ガスケット4は、図4に示すように、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲に立ち上がるように成形される基部40と、基部40の表面から燃料電池構成部品2の表面よりも図4における上方に突出してセル1が積層されたときに隣接する他のセル1のセパレータ3に当接されるように一体に成形されたリップ部41とを有しており、マニホールドMを構成している。
【0005】
ガスケットを成形する際には、一般に、ガスケット成形用の金型内にセパレータと多孔質体と、MEGAと、多孔質体とを位置合わせしながら順次積層してインサートし、型閉じしてキャビティを形成し、このキャビティ内にガスケットの材料を射出充填している。
【0006】
また、上述したような燃料電池においては、特許文献1に開示されているように、ガス流路形成部材(多孔質体)とセパレータとを一体に接合する構成が知られている。特許文献1にあっては、隣接する部材間の接触抵抗を低減して燃料電池の性能を向上させるために多孔質体とセパレータとを一体に接合するもので、この接合時にガス流路形成部材である金属多孔質体と金属セパレータとを積層して加圧・加熱する熱処理によって金属多孔質体が形状変形するのを防止することを目的としている。そして、特許文献1では、多孔質体とセパレータとを一体に接合するために、熱可塑性の接着層により接着することが開示されている。さらに、特許文献1にあっては、セパレータの外側プレートに貫通孔を形成し、中間プレートと外側プレートとの間に熱可塑性の接着層を介装するとともに外側プレートの外側の面に多孔質体を配置して積層体を構成し、積層体に対して熱を加えることにより接着層を溶かして、その後の固化によって積層体の各部材間を接着することが開示されている。そして、特許文献1には、接着層がセパレータの外側プレートの貫通孔に流入して、貫通孔から突出して多孔質体の表面に至り、これが固化することにより多孔質体とセパレータとを一体に接合することが開示されている。なお、特許文献1に開示されたセルは、ガスケットが、多孔質体およびセパレータと別に、MEGAの外周縁のみに成形されており、多孔質体とMEGAとセパレータとを積層した状態に一体化されたものではない。
【0007】
ところで、燃料電池構成部品の多孔質体は、たとえばチタンなどの金属により構成されており、所謂エキスパンドメタルのように機械加工によって形成され、あるいは焼結により成形されたものが用いられており、図2に鎖線で示したように、その成形に伴って反りSが発生するなど変形していることがある。この多孔質体の反りSなどの変形は、たとえば最大で5mm程度となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−34270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、熱可塑性接着層を加熱して融解させてから固化するまでに時間がかかり、セルの製造サイクルタイムを短縮することができないという問題や、一般に熱可塑性接着層を融解するための加熱設備が大型であることから大きな設置スペースを必要とし設備コストがかかるなどの問題があった。
【0010】
また、上記特許文献1にあっては、多孔質体とセパレータとの接合時の熱処理(従来の技術)によって金属多孔質体が形状変形することは防止することはできたが、多孔質体の成形に伴って発生する反りなどの変形に対しては対応することができなかった。そのため、ガスケットを成形するために、反りなどの変形が生じた多孔質体を含む燃料電池構成部品とセパレータを積層して金型内にインサートし型閉じすると、かかる変形した多孔質体が金型に局所的に接触し押圧されることにより位置ズレが生じたり、多孔質体と積層されたMEGAのガス拡散層に対して応力が部分的に集中して、ガス拡散層に割れが生じるなどの問題があった。
【0011】
さらに、従来の技術にあっては、ガスケット成形用の金型内にセパレータと多孔質体と、MEGAと、多孔質体とを位置合わせしながら順次積層するが、この積層時の位置合わせのための基準がなく、かかる積層を自動化を図ることが困難であった。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、変形して成形された多孔質体に影響されることなく、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットを容易に且つ適切に一体に成形してセルを構成する燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、変形して成形された多孔質体に影響されることなく、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットを容易に且つ適切に一体に成形することができる構造のセルを有する燃料電池と、そのようなセルを製造することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の燃料電池の製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、マニホールド孔が形成されたセパレータと多孔質体を含む燃料電池構成部品とを積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することによりセルを構成し、該セルを複数積層することにより前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法であって、前記セパレータに対して、該セパレータに隣接して積層される多孔質体を全面にわたって密着させてスポット溶接し、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することを特徴とするものである。
また、請求項2の燃料電池に係る発明は、上記目的を達成するため、複数のセルを積層してなり、各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池であって、前記セパレータに対して、該セパレータに隣接して積層される多孔質体が全面にわたって密着されてスポット溶接されていることを特徴とするものである。
さらに、請求項3の燃料電池の製造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、複数のセルを積層してなり、各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池の製造装置であって、前記多孔質体を含む燃料電池構成部品とセパレータとがインサートされてガスケットを成形する金型を含むガスケット成形装置と、前記金型にインサートされる前に前記多孔質体をセパレータと全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置とを備えており、該固着装置は、前記セパレータの表面に対して前記多孔質体を全面にわたって密着させる密着手段と、セパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接するスポット溶接手段とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、表面が平坦なセパレータとこのセパレータに隣接して積層される多孔質体とを互いにスポット溶接するという簡単な構成により、多孔質体が変形して成形されている場合であっても、平坦な表面のセパレータに密着するように固着されることとなるため、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形が平坦に矯正される。そして、セパレータと多孔質体とは、汎用のスポット溶接装置を使用することにより、短時間で確実且つ容易に固着される。そのため、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートして型閉じしても、多孔質体が局所的に金型に接触することがないため、位置ズレやガス拡散層が割れるなどの問題を回避することができる。そのため、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み、燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットを容易に且つ適切に一体に成形してセルを構成することが可能な燃料電池の製造方法を提供することができる。
請求項2の発明によれば、セパレータとこのセパレータに隣接して積層される多孔質体とが互いにスポット溶接されているという簡単な構成により、多孔質体が変形して成形されている場合であっても、平坦な表面のセパレータに密着するように固着されているため、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形が平坦に矯正されている。そして、セパレータと多孔質体とは、汎用のスポット溶接装置を使用することにより、短時間で確実且つ容易に固着されている。そのため、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートして型閉じしても、多孔質体が局所的に金型に接触することがないため、位置ズレやガス拡散層が割れるなどの問題が回避され、したがって、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットが容易に且つ適切に一体に成形された構造のセルによって構成された燃料電池を提供することができる。
請求項3の発明によれば、多孔質体を含む燃料電池構成部品とセパレータとがインサートされてガスケットを成形する金型を含むガスケット成形装置と、金型にインサートされる前に多孔質体をセパレータと全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置とを備えており、この固着装置は、セパレータの表面に対して多孔質体を全面にわたって密着させる密着手段と、セパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接するスポット溶接手段とを備えていることにより、多孔質体が変形して成形されている場合であっても、密着手段によって平坦な表面のセパレータの表面に対して多孔質体を全面にわたって密着させるために、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形が平坦に矯正され、そして、スポット溶接手段によってセパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接することにより、セパレータと多孔質体とを密着するように固着するために、多孔質体の平坦に矯正された状態が維持される。そのため、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートして型閉じしても、多孔質体が局所的に金型に接触することがないため、位置ズレやガス拡散層が割れるなどの問題が回避され、したがって、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットが容易に且つ適切に一体に成形されたセルを製造することが可能な燃料電池の製造装置を提供することができる。
【0015】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に相当し、(7)項が請求項3に相当する。
【0016】
(1) マニホールド孔が形成されたセパレータと多孔質体を含む燃料電池構成部品とを積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することによりセルを構成し、該セルを複数積層することにより前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法であって、
前記セパレータに対して、該セパレータに隣接して積層される多孔質体を全面にわたって密着させてスポット溶接し、
その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【0017】
(1)項の発明では、表面が平坦なセパレータとこのセパレータに隣接して積層される多孔質体とを互いに全面にわたって密着させてスポット溶接する。多孔質体が変形して成形されている場合であっても、平坦な表面のセパレータに全面にわたって密着した状態で固着されることとなるため、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形が平坦に矯正される。そして、セパレータと多孔質体とは、汎用のスポット溶接装置を使用することにより、短時間で確実且つ容易に固着することができる。また、セパレータに固着された多孔質体に対して他の燃料電池構成部品を積層することができるため、燃料電池構成部品を容易に位置合わせして積層することができる。そのため、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートして型閉じしても、多孔質体が局所的に金型に接触することがないため、位置ズレやガス拡散層が割れるなどの問題を回避することができる。したがって、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットを容易に且つ適切に一体に成形して燃料電池のセルを構成することができる。
【0018】
(2) 前記セパレータの一方の面に多孔質体をスポット溶接することを特徴とする(1)項に記載の燃料電池の製造方法。
【0019】
(2)項の発明では、(1)項に記載の発明において、セパレータの一方の面に対して、このセパレータに隣接して積層される多孔質体を全面にわたって密着させスポット溶接することにより、そのセルにおいて、セパレータに隣接して積層される多孔質体が変形している場合であっても、多孔質体が平坦な表面のセパレータに確実に密着するように固着され、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形を平坦に矯正することができる。なお、この場合においては、既に他方の面にこれと隣接して積層される多孔質体が全面にわたって密着してスポット溶接されたセパレータの一方の面に対して、これに隣接して積層される多孔質体を全面にわたって密着させスポット溶接することも含まれる。
【0020】
(3) 前記セパレータの両面に多孔質体を同時にスポット溶接することを特徴とする(1)項に記載の燃料電池の製造方法。
【0021】
(3)項の発明では、(1)項に記載の発明において、一のセルにおけるセパレータの両面に、これに隣接して積層される多孔質体、および、このセパレータに隣接して積層される他のセルの多孔質体を、それぞれ同時に全面にわたって密着させるようにしてスポット溶接することにより、より少ない工程数で効率よく各多孔質体の変形を矯正して固着することができる。
【0022】
(4) 複数のセルを積層してなり、
各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池であって、
前記セパレータに対して、該セパレータに隣接して積層される多孔質体が全面にわたって密着されてスポット溶接されていることを特徴とする燃料電池。
【0023】
(4)項の発明では、セパレータとこのセパレータに隣接して積層される多孔質体とが互いにスポット溶接されているという簡単な構成により、多孔質体が変形して成形されている場合であっても、平坦な表面のセパレータに密着するように固着されているため、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形が平坦に矯正されている。そして、セパレータと多孔質体とは、汎用のスポット溶接装置を使用することにより、短時間で確実且つ容易に固着されている。そのため、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートして型閉じしても、多孔質体が局所的に金型に接触することがないため、位置ズレやガス拡散層が割れるなどの問題が回避され、したがって、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットが容易に且つ適切に一体に成形された構造のセルによって構成された燃料電池とすることができる。
【0024】
(5) 前記セパレータの一方の面に多孔質体がスポット溶接されていることを特徴とする(4)項に記載の燃料電池。
【0025】
(5)の発明では、(4)項に記載の発明において、セパレータの一方の面に対して、このセパレータに隣接して積層される多孔質体が全面にわたって密着した状態でスポット溶接されていることにより、そのセルにおいて、セパレータに隣接して積層される多孔質体が変形している場合であっても、多孔質体の変形を平坦に矯正して積層することができる。この場合においては、セパレータの両面に対してそれぞれ個別に多孔質体が全面にわたって密着させスポット溶接されたものも含まれる。
【0026】
(6) 前記セパレータの両面に多孔質体がスポット溶接されていることを特徴とする(4)項に記載の燃料電池。
【0027】
(6)の発明では(4)項に記載の発明において、一のセルにおけるセパレータの両面に、これに隣接して積層される多孔質体、および、このセパレータに隣接して積層される他のセルの多孔質体が、それぞれ同時に全面にわたって密着させるようにしてスポット溶接されていることにより、より少ない工程数で効率よく各多孔質体の変形を矯正して固着することができる構造とすることができる。
【0028】
(7) 複数のセルを積層してなり、
各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池の製造装置であって、
前記多孔質体を含む燃料電池構成部品とセパレータとがインサートされてガスケットを成形する金型を含むガスケット成形装置と、前記金型にインサートされる前に前記多孔質体をセパレータと全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置とを備えており、該固着装置は、
前記セパレータの表面に対して前記多孔質体を全面にわたって密着させる密着手段と、
セパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接するスポット溶接手段とを備えていることを特徴とする燃料電池の製造装置。
【0029】
(7)項の発明では、多孔質体を含む燃料電池構成部品とセパレータとがインサートされてガスケットを成形する金型を含むガスケット成形装置と、金型にインサートされる前に多孔質体をセパレータと全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置とを備えており、この固着装置は、セパレータの表面に対して多孔質体を全面にわたって密着させる密着手段と、セパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接するスポット溶接手段とを備えていることにより、多孔質体が変形して成形されている場合であっても、密着手段によって平坦な表面のセパレータの表面に対して多孔質体を全面にわたって密着させるために、このセパレータの表面に倣うようにして多孔質体の変形が平坦に矯正され、そして、スポット溶接手段によってセパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接することにより、セパレータと多孔質体とを密着するように固着するために、多孔質体の平坦に矯正された状態が維持される。そのため、その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートして型閉じしても、多孔質体が局所的に金型に接触することがないため、位置ズレやガス拡散層が割れるなどの問題が回避され、したがって、セパレータの一方の面におけるマニホールド孔の周囲を取り囲み燃料電池構成部品の周囲をシールするように、ガスケットが容易に且つ適切に一体に成形されたセルを製造することができる。
【0030】
(8) 前記密着手段が、前記セパレータの表面に対して前記多孔質体を加圧するものであることを特徴とする(7)項に記載の燃料電池の製造装置。
【0031】
(8)項の発明では、(7)項に記載の発明において、密着手段が、セパレータの表面に対して多孔質体を加圧するものであることにより、多孔質体が変形している場合であっても、セパレータの平坦な表面に多孔質体が加圧されて全面にわたって密着するよう確実に矯正され、スポット溶接手段によって固着されるために、多孔質体の平坦に矯正された状態を維持することができる。
【0032】
(9) 前記密着手段が、前記多孔質体を吸着する平坦面を有することを特徴とする(7)項に記載の燃料電池の製造装置。
【0033】
(9)項の発明では、(7)項の発明において、密着手段が、多孔質体を吸着する平坦面を有することにより、多孔質体が変形している場合であっても、この多孔質体を密着手段の平坦面に吸着させることによって多孔質体の変形が確実に矯正されるため、セパレータの平坦な表面に密着させて積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によりセパレータとこれに隣接して積層される多孔質体とを互いにスポット溶接する状態を説明するために示した断面図である。
【図2】本発明によりセパレータと反りが生じた多孔質体とをスポット溶接して矯正した状態を説明するために示した正面図である。
【図3】図2に示したセパレータと多孔質体との上にMEGAが積層されてインサートされた状態のガスケット成形用の金型を説明するために示した断面図である。
【図4】ガスケットが成形された複数のセルを積層する様子を説明するために示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
最初に、本発明の燃料電池の製造装置の実施の一形態を、主に図1および図3に基づいて詳細に説明する。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の燃料電池の製造装置は、概略、複数のセル1を積層してなり、各セル1が、多孔質体22,23を含む燃料電池構成部品2と、セパレータ3と、締結時に隣接するセル1のセパレータ3のマニホールド孔3hを互いに連通するマニホールドMを構成するために成形されたガスケット4とを備えている燃料電池を製造するためのものであって、多孔質体23,24を含む燃料電池構成部品2とセパレータ3とがインサートされてガスケット4を成形する金型70,71を含むガスケット成形装置7と、金型70,71にインサートされる前に多孔質体23,24をセパレータ3と全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置5とを備えており、この固着装置5は、セパレータ3の平坦な表面に対して多孔質体23,24を全面にわたって密着させる密着手段(後述する)と、セパレータ3と全面にわたって密着された多孔質体23,24とをスポット溶接するスポット溶接手段51とを備えている。
【0036】
この実施の形態で製造される燃料電池のセル1は、図4に参照されるように、セパレータ3の一方の側に主な燃料電池構成部材2が積層され、燃料電池構成部材2の周囲とセパレータ3の燃料電池構成部材2が積層される面にガスケット4が一体に成形される。燃料電池構成部材2を構成する部品としては、MEA21の両側にガス拡散層22,22が積層されてなるMEGA20と、燃料電池として組み立てられたときにMEGA20の両側にそれぞれ積層されるセパレータ側多孔質体24およびそのセル1におけるセパレータ3と反対側に積層される反セパレータ側多孔質体23とを含んでいる。セパレータ側多孔質体24および反セパレータ側多孔質体23は、たとえばチタンなどの導電性を有する金属により構成されており、所謂エキスパンドメタルのように機械加工によって形成され、あるいは焼結により成形されたものが用いられている。
【0037】
この実施の形態におけるセパレータ3は、これに積層される燃料電池構成部材2のセパレータ側多孔質体24と接する第1プレート31と、積層される他のセル1の燃料電池構成部材2の反セパレータ側多孔質体23と接する第2プレート32と、第1プレート31と第2プレート32との間に積層される中間プレート33とからなるもので、セパレータ3の外周縁には、水素や空気等の反応ガス、あるいは冷却媒体を供給または排出させるためのマニホールド孔3hが形成されており、セパレータ3の内部には、所定のマニホールド孔3hと連通して、水素や空気等の反応ガス、あるいは冷却媒体を循環供給するための流路34が形成された、所謂三層構造となっている。第1プレート31、第2プレート32、および中間プレート33は、導電性を有する金属により構成されている。セパレータ3の表面を構成する第1プレート31と第2プレート32の表面は平坦で滑らかに成形されている。
【0038】
ガスケット4は、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲を取り囲むように成形され、燃料電池構成部材2の外周端面と、セパレータ3の燃料電池構成部材2が積層された側の表面における外周縁とを覆うように形成される基部40と、基部40の一方の面に燃料電池構成部材2よりも突出するように形成されて、積層時に隣接する他のセル1のセパレータ3に当接されるリップ部41とを有する形状に成形される。
【0039】
図1に示すように、本発明の固着装置5は、上治具52と下治具53とを備えており、上治具52は、下治具53に対して開閉するよう任意の位置に移動し、さらには、セパレータ3に積層された多孔質体23,24の変形を矯正するよう加圧することが可能なように、ロボットのアーム54により支持されている。上治具52を支持しているロボットのアーム54は、平滑なセパレータ3の表面に対して多孔質体23,24を加圧する(図1の矢印Pを参照)ことにより密着させる密着手段を構成する。上治具52と下治具53の対向面には、多孔質体23,24の大きさにそれぞれ応じて凹部52a、53aが形成されており、凹部52a、53a内には通気性を有する部材56,57がそれぞれ配設されている。通気性部材56,57の互いの対向面は、上治具52と下治具53の周囲の対向面と連続する平坦面が形成されている。上治具52と下治具53には、真空ポンプなどの減圧手段が接続されると共に凹部52a、53a内にそれぞれ開口する通路55が形成されている。通気性部材56,57の対向する表面は、密着手段の多孔質体23,24を吸着する平坦面をそれぞれ構成している。下治具53の上面には、セパレータ3の略対角線上に位置する角部近傍に形成された位置決め孔3aを挿通するためのピン58が立設されている。なお、密着手段は、上治具52と下治具53に設けられた通気性部材56,57と、凹部52a、53aに開口する通路55と接続された減圧手段とにより構成された真空吸着機構に限定されることはなく、たとえば静電吸着機構など、他の手段を採用することもできる。
【0040】
さらに、上治具52と下治具53の、多孔質体23,24の角部近傍と対応する位置には、その対向面から反対側面まで貫通するパイプ59が設けられている。パイプ59の内径は、スポット溶接手段51の電極60、61が接触することなく挿通しうる大きさを有している。スポット溶接手段51は、セパレータ3と多孔質体23,24を挟み込み加圧することができるよう進退可能(図1の矢印Mを参照)に設けられた電極60,61と、電極60,61に接続されて所定の電流を印加する溶接電源とを備えている。なお、スポット溶接手段51の電極60,61は、各パイプ59に対してそれぞれ進退可能に設けることもできるが、一対の電極60,61を順次移動させて各パイプ59に挿通させるよう構成することもできる。
【0041】
図3に示すように、ガスケット成形装置7は、多孔質体23,24を含む燃料電池構成部品2とセパレータ3とがインサートされて所定形状のガスケット4を成形するためのキャビティを形成する金型70,71と、金型70,71を相対的に移動させて開閉させると共に所定の圧力で型締する型開閉機構と、金型70,71内に形成されるキャビティにガスケット4の材料を射出充填する射出装置73とを備えている。
【0042】
この実施の形態においては、下型71に多孔質体24とセパレータ3が嵌められるよう収容される収容部71aが型彫されており、上型70に多孔質体23とMEGA20を収容する収容部70aと、その周囲にガスケット4を成形するためのキャビティ面70bとが型彫されている。また、下型71の角部近傍にはタイバー74が立設されており、上型70の対応する位置にはタイバー74を摺動可能に挿通する挿通部75が設けられている。さらに、上型70には射出装置73が設けられ、射出装置73のノズルからキャビティ面70bに開口する材料供給路76が形成されている。
【0043】
次に、本発明の燃料電池の製造方法の実施の形態を、上述したように構成された燃料電池の製造装置を用いる場合により、その作動と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、セパレータ3の両面に、多孔質体23,24を同時にそれぞれスポット溶接する場合を示す。
本発明の燃料電池の製造方法は、概略、マニホールド孔3hが形成されたセパレータ3と多孔質体23,24を含む燃料電池構成部品2とを積層して金型70,71内にインサートし、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲にガスケット4を成形することによりセル1を構成し、このセル1を複数積層することにより燃料電池構成部品2をセパレータ3,3間で挟持すると共に隣接するセル1のセパレータ3のマニホールド孔3hをガスケット4により互いに連通してマニホールドMを構成するものであって、セパレータ3に対して、このセパレータ3に隣接して積層される多孔質体23,24を全面にわたって密着させてスポット溶接し、その後、他の燃料電池構成部品2を積層して金型70,71内にインサートし、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲にガスケット4を成形するものである。
【0044】
燃料電池の各セル1を製造するに際しては、図1に示した上治具52を下治具53上から退避した位置、または、下治具53から充分に離間した位置に移動させる。下治具53の周囲には多孔質体23、セパレータ3、および多孔質体24をそれぞれ供給する位置が設定されている。ロボットのアーム54は、最初に、積層されたときに隣接する他のセルの多孔質体24が供給される位置に上治具52を移動させる。このとき、図1の矢印Vのように、真空ポンプなどの減圧手段が駆動されており、上治具52の凹部52a内が減圧されているため、積層されたときに隣接する他のセル1の多孔質体24が吸着されることとなる。このとき、多孔質体24に反り(図2の鎖線を参照)などの変形が生じている場合であっても、上治具52の通気性部材56の平坦な表面に吸着されることによって、その変形が矯正されることとなる。そして、ロボットのアーム54を駆動して多孔質体24を吸着している上治具52を下治具53上の所定の位置に移動させ、吸着を解除して多孔質体24を下治具53上に載置する。このとき、図1の矢印Pで示したように、ロボットのアーム54の駆動によって上治具52を下治具53に向かって押し付けるように加圧すると、多孔質体24は上治具52と下治具53の通気性部材56,57の平坦な表面の間で挟まれるようにして加圧され、確実に反りなどの変形を矯正することができる。さらに、図1に矢印Vで示すように、真空ポンプなどの減圧手段の駆動によって、下治具53の凹部53a内が減圧されており、この下治具53上に載置された多孔質体24は、通気性部材57の平坦な表面に吸着され、さらに確実に変形を矯正されることとなる。
【0045】
多孔質体24の吸着を解除すると、ロボットのアーム54は、次に、下治具53上から一のセル1のセパレータ3の供給位置まで上治具52を移動させる。このとき、下治具53上には多孔質体23が位置決め配置されている。
【0046】
次いで、セパレータ3が供給される位置に上治具52を移動させ、減圧手段の駆動によって上治具52の凹部52a内を減圧することによってセパレータ3を上治具52に吸着させて下治具53上に移動させ、下治具53のピン58にセパレータ3の位置決め孔3aを挿通させてから吸着を解除し、既に下治具53上に載置されている多孔質体54上にセパレータ3を載置する。このとき、図1の矢印Pで示したように、ロボットのアーム54の駆動によって上治具52を下治具53に向かって押し付けるようにすると、多孔質体24はセパレータ3を介して上治具52と下治具53の通気性部材56,57の平坦な表面の間で挟まれるようにして加圧され、下治具53の通気性部材57の平坦な表面と、セパレータ3の平坦な表面とに倣わせるようにして確実に反りなどの変形を確実に矯正することができる。
【0047】
続いて、ロボットのアーム54の駆動によって、そのセル1における多孔質体23が供給される位置に上治具52を移動させ、多孔質体23を上治具52に吸着させ、これによって多孔質体23の変形を矯正しつつ下治具53上にピン58によって位置決め載置されたセパレータ3上に移動させ、さらに下方に向かって加圧することにより、セパレータ3の平坦な表面に多孔質体23を押し付けるようにすることにより多孔質体23の変形を確実に矯正してその全面にわたってセパレータ3に密着させる。
【0048】
その後、スポット溶接手段51の両電極60,61をパイプ59の中に挿通して多孔質体23,24とセパレータ3を挟みこむように加圧し、電流を印加してスポット溶接することにより、多孔質体23,24とセパレータ3の間にはナゲットNが形成され、図2に示すように、多孔質体23,24がそれぞれ全面にわたってセパレータ3に密着した状態で一体に固着され、この状態が維持される。
【0049】
なお、この実施の形態では、セパレータ3に対して、そのセル1においてセパレータ3と隣接して積層される多孔質体23と、このセパレータ3と隣接して積層される他のセル1の多孔質体24とを同時にスポット溶接するため、効率よく燃料電池を製造することができる。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、一のセル1においてセパレータ3の一方の面のみに対して隣接して積層される多孔質体23をスポット溶接してもよく、また、一のセル1においてセパレータ3の一方の面のみに対して隣接して積層される多孔質体23をスポット溶接する工程と、このセパレータ3と隣接して積層される他のセル1の多孔質体24をスポット溶接する工程とを個別に行ってもよい。
【0050】
また、本発明では、下治具53上に最初に位置決めされた多孔質体24を基準としてその上にセパレータ3と多孔質体23を正確な位置に積層することができる。そして、多孔質体23,24とセパレータ3の供給位置上や下治具53上にカメラを設置して、多孔質体23,24とセパレータ3の位置を検知し、下治具53上に載置された多孔質体24およびこれに積層されたセパレータ3の位置に対して、セパレータ3およびこれに積層される多孔質体23、あるいはさらにMEGA20を吸着して上治具52を移動させ積層するために、上治具52を支持しているロボットのアーム54の駆動に各位置情報をフィードバックして制御するよう構成して、燃料電池の各構成部品2およびセパレータ3の積層を自動化させることができる。
【0051】
変形を矯正された多孔質体23,24がセパレータ3の両面にそれぞれ全面にわたって密着しスポット溶接によって固着されると、上治具52と下治具53を離間させて一体となった多孔質体23,24とセパレータ3を上治具52と下治具53の間から取り出し、上型70と下型71を離間させて型開きさせた状態として、図3に示すように、下型71の収容部71aに多孔質体24とセパレータ3を嵌め込むように収容してセパレータ3にスポット溶接された多孔質体23に対してMEGA20を積層し、上型70と下型71を衝合させて型閉じし所定の力で型締した状態を維持する(型締)。上型70と下型71にインサートされたセパレータ3の一方の面と多孔質体23およびMEGA20の周囲と上型70のキャビティ面70bとによって、成形するガスケット4の形状に応じたキャビティが形成される。本発明では、金型70,71内にセパレータ3と燃料電池構成部品2をインサートして型締するに先立って、多孔質体23,24の反りなどの変形を予め矯正してセパレータ3と全面にわたって密着させた状態でスポット溶接して維持するので、従来の技術のように多孔質体23,24が型閉じ時に金型70,71に局所的に接触し押圧されることにより位置ズレが生じたり、多孔質体23と積層されたMEGA20のガス拡散層22に対して応力が部分的に集中して、ガス拡散層22に割れが生じることなどを確実に防止することができる。
【0052】
続いて、射出装置73により材料供給路76を介して所定量のガスケット4の材料を所定の圧力、所定の速度でキャビティ内に射出充填する。その後、ガスケット4の材料が固化または硬化したら、上型70と下型71を離間させて型開きし、図4に示すように、一のセル1におけるセパレータ3、多孔質体23、MEGA20、およびガスケット4と、この一のセル1に隣接する他のセル1の多孔質体24とが一体となったものを複数製造し、積層して荷重を付与しエンドプレート間で締結することにより、燃料電池を製造する。
【0053】
この実施の形態では、複数のセル1を積層することにより、一のセル1におけるMEGA20のガス拡散層22に他のセル1のセパレータ3とスポット溶接された多孔質体24が積層される。そして、一のセル1のガスケット4がこれに隣接して積層される他のセル1のセパレータ3に当接され所定の荷重が付与された状態で締結されることにより、各セル1に反応ガス(水素、空気等)や冷却媒体をそれぞれ分配・供給するためのマニホールドMが形成されることとなる。
【0054】
次に、本発明の燃料電池を、上述したように構成された燃料電池の製造装置を用いて、上述したように構成された方法にしたがって製造されたものである場合により、主に図2および図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の燃料電池は、概略、複数のセル1を積層してなり、各セル1が、多孔質体23,24を含む燃料電池構成部品2と、セパレータ3と、締結時に隣接するセル1のセパレータ3のマニホールド孔3hを互いに連通するマニホールドMを構成するために成形されたガスケット4とを備えているものであって、セパレータ3に対して、このセパレータ3に隣接して積層される多孔質体23,24が全面にわたって密着されてスポット溶接されている。
【0055】
図2に示したように、この実施の形態においては、セパレータ3に対して、そのセル1においてセパレータ3と隣接して積層される多孔質体23と、このセパレータ3と隣接して積層される他のセル1の多孔質体24とがスポット溶接されている。多孔質体23,24は、その成形の過程で反りなどの変形が生じていることがある(図2の鎖線を参照)。このような変形は、ガスケット4を成形すべく金型70,71にインサートしたときに、金型70,71に局所的に押圧されて位置ズレが生じたり、多孔質体23,24と積層されるガス拡散層22に応力が部分的に集中してガス拡散層22に割れが生じるなどのおそれがある。
【0056】
しかしながら、本発明では、多孔質体23,24を上治具52と下治具53に真空吸着または静電吸着することにより、上治具52と下治具53の対向する平坦面に倣わせるようにしてその変形を矯正し、また、ロボットのアーム54によって多孔質体23,24を上治具52と下治具53の間で加圧することにより上治具52と下治具53の互いに対向する平坦面と平坦なセパレータ3の表面に倣わせるようにしてその変形を矯正して、セパレータ3の表面に対して多孔質体23,24をその全面にわたって密着させ、スポット溶接によって固着することにより密着した状態が維持されている。そのため、上述した従来の技術のような問題が生じるのを確実に防止することができる。したがって、図4に示したように、このように製造された複数のセル1を積層して組み立てることにより、品質が保証された燃料電池を得ることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、一のセル1においてセパレータ3と隣接して積層される多孔質体23と、このセパレータ3と隣接して積層される他のセル1の多孔質体24とが、それぞれセパレータ3の各面に対してスポット溶接されているため、効率よく燃料電池を製造することが可能な構造となっている。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、一のセル1においてセパレータ3の一方の面のみに対して隣接して積層される多孔質体23がスポット溶接されたもの、また、一のセル1においてセパレータ3の一方の面のみに対して隣接して積層される多孔質体23がスポット溶接され、これとは別に、このセパレータ3と隣接して積層される他のセル1の多孔質体24がスポット溶接されたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、燃料電池のセルを製造するための装置に利用することができる。また、本発明は、ガスケットが成形された燃料電池のセルに利用することができる。さらに、本発明は、ガスケットを成形する燃料電池のセルの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:セル、 2:燃料電池構成部材、 3:セパレータ、 3h:マニホールド孔、 4:ガスケット、 5:固着装置、 7:ガスケット成形装置、 M:マニホールド、 23,24:多孔質体、 51:スポット溶接手段、 56,57:平坦な表面を有する通気性部材、 60,61:電極、 70,71:金型、 73:射出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニホールド孔が形成されたセパレータと多孔質体を含む燃料電池構成部品とを積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することによりセルを構成し、該セルを複数積層することにより前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法であって、
前記セパレータに対して、該セパレータに隣接して積層される多孔質体を全面にわたって密着させてスポット溶接し、
その後、他の燃料電池構成部品を積層して金型内にインサートし、前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項2】
複数のセルを積層してなり、
各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池であって、
前記セパレータに対して、該セパレータに隣接して積層される多孔質体が全面にわたって密着されてスポット溶接されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
複数のセルを積層してなり、
各セルが、多孔質体を含む燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池の製造装置であって、
前記多孔質体を含む燃料電池構成部品とセパレータとがインサートされてガスケットを成形する金型を含むガスケット成形装置と、前記金型にインサートされる前に前記多孔質体をセパレータと全面にわたって密着するよう積層して一体に固着する固着装置とを備えており、該固着装置は、
前記セパレータの表面に対して前記多孔質体を全面にわたって密着させる密着手段と、
セパレータと全面にわたって密着された多孔質体とをスポット溶接するスポット溶接手段とを備えていることを特徴とする燃料電池の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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