説明

燃料電池システム、および燃料電池システムの制御方法

【課題】燃料電池の発電開始時期を適切に変更することができる燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法を提供する。
【解決手段】燃料電池システム100は、発電開始指示を受けて発電を開始する燃料電池10と、燃料電池10の発電電力によって充電される二次電池21と、二次電池21の充電残量がしきい値以下になった場合に燃料電池に発電開始を指示する指示部60と、燃料電池10および二次電池21を搭載する車両200の走行条件を検出する走行条件検出部40と、走行条件検出部40の検出結果に応じてしきい値を更新する更新部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、および燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
二次電池に充電された電力を動力に用いる車両において、燃料電池を充電用電源として用いる技術が開発されている。特許文献1では、燃料電池の下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力とすることによって、低負荷時に燃料電池から二次電池へ必要以上の充電を行わないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、システム平均消費電力が過去の所定時間の平均値を基に求められるため、実際の車両負荷との誤差が生じるおそれがある。この場合、燃料電池の発電開始時期が適切でない場合が生じうる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、燃料電池の発電開始時期を適切に変更することができる燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池システムは、発電開始指示を受けて発電を開始する燃料電池と、前記燃料電池の発電電力によって充電される二次電池と、前記二次電池の充電残量がしきい値以下になった場合に、前記燃料電池に前記発電開始を指示する指示部と、前記燃料電池および前記二次電池を搭載する車両の走行条件を検出する走行条件検出部と、前記走行条件検出部の検出結果に応じて、前記しきい値を更新する更新部と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池システムにおいては、燃料電池の発電開始時期を適切に変更することができる。
【0008】
前記走行条件検出部は、前記車両の電力負荷を検出してもよい。前記更新部は、前記電力負荷が所定値以上である場合に、前記しきい値を引き上げてもよい。前記更新部は、前記電力負荷が大きいほど、前記しきい値を引き上げてもよい。前記走行条件検出部は、前記充電残量の減少速度に応じて、前記電力負荷を判断してもよい。
【0009】
前記走行条件検出部は、前記車両の走行条件として、前記車両の外気温を検出してもよい。前記更新部は、前記外気温が所定値以下である場合に、前記しきい値を引き上げてもよい。前記更新部は、前記外気温が低いほど、前記しきい値を引き上げてもよい。
【0010】
前記車両が高速走行するか否かを推測する推測手段を備え、前記走行条件検出部は、前記車両の走行条件として、前記推測手段の推測結果を検出してもよい。前記更新部は、前記車両が高速走行すると推測された場合に、前記しきい値を引き上げてもよい。
【0011】
前記燃料電池の発電電力を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記燃料電池が発電する際に、前記二次電池の充電残量が第1所定値以下である場合には、前記燃料電池の発電電力を前記車両の電力負荷以上とし、前記二次電池の充電残量が前記第1所定値以上の第2所定値以上である場合には、前記燃料電池の発電電力を前記車両の電力負荷以下としてもよい。外部電源から前記二次電池に電力を受け入れるためのコネクタを備えていてもよい。前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であってもよい。
【0012】
本発明に係る燃料電池システムの制御方法は、発電開始指示を受けて発電を開始する燃料電池と、前記燃料電池の発電電力によって充電される二次電池と、を備える燃料電池システムにおいて、前記二次電池の充電残量がしきい値以下になった場合に、前記燃料電池に前記発電開始を指示する指示ステップと、前記燃料電池および前記二次電池を搭載する車両の走行条件を検出する走行条件検出ステップと、前記走行条件検出ステップの検出結果に応じて、前記しきい値を更新する更新ステップと、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池システムの制御方法においては、燃料電池の発電開始時期を適切に変更することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法によれば、燃料電池の発電開始時期を適切に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図であり、(b)は燃料電池システムが搭載される車両を示す図である。
【図2】発電制御を表すフローチャートの一例を示す図である。
【図3】しきい値更新制御を表すフローチャートの一例を示す図である。
【図4】発電開始SOCを取得する際に用いるマップの一例である。
【図5】温度差d_tmpと発電開始SOCの補正幅との関係の一例を示す図である。
【図6】充電残量soc_rと発電電力制御値p_fcとの関係の一例を示す図である。
【図7】燃料電池の発電制御の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
(実施形態)
図1(a)は、実施形態に係る燃料電池システム100の全体構成を示すブロック図である。図1(a)に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池装置10、二次電池装置20、電動機30、走行条件検出部40、イグニションスイッチ50、および制御部60を備える。図1(b)に示すように、燃料電池システム100は、車両200に搭載される。車両200は、電動機30を動力とする電気自動車、電動機および内燃機関の両方を動力とするハイブリッド自動車などである。
【0017】
燃料電池装置10は、燃料電池11、発電制御部12などを備える。燃料電池11は、水素と酸素とを利用して発電する発電機である。燃料電池11は、特に限定されるものではないが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、固体高分子形燃料電池(PEFC)などである。発電制御部12は、燃料電池11の発電開始および発電停止を制御するとともに、燃料電池11の発電量を制御する機器である。発電制御部12は、燃料電池11に水素および酸素を供給する供給装置などを含む。
【0018】
二次電池装置20は、二次電池21、充電残量検出部22、コネクタ23などを備える。二次電池21は、燃料電池11の発電電力を充電する電池である。二次電池21は、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などである。充電残量検出部22は、二次電池21の充電残量を検出する。充電残量検出部22は、例えば、二次電池21の充電容量を100%とした場合の、充電残量のパーセンテージを検出する。二次電池21は、外部電源の電力を充電する構成を有していてもよい。例えば、二次電池装置20は、コネクタ23を介して、外部電源から電力を受け入れてもよい。外部電源は、電気スタンドに設置された電源、家庭用電源などである。
【0019】
電動機30は、二次電池21に充電された電力および/または燃料電池11の発電電力を動力に変換する装置である。車両200は、電動機30の動力を利用して走行する。なお、燃料電池11の発電電力は、二次電池21および電動機30以外にも、例えば補機などにも供給されてもよい。
【0020】
走行条件検出部40は、車両200の走行条件を検出する検出部である。走行条件検出部40は、電力負荷検出部41、外気温検出部42、高速走行検出部43などを含む。電力負荷検出部41は、車両200で消費される電力(電力負荷)を検出する。
【0021】
ここで、走行条件としての電力負荷は、車両200の走行負荷のことである。走行負荷は、転がり抵抗+風損抵抗+加速抵抗+補機消費電力で表すことができる。転がり抵抗とは、車輪と路面との間の摩擦抵抗、車両回転部分の摩擦抵抗(ベアリング損失)、およびブレーキ引き摺りに伴う抵抗の総和である。風損抵抗とは、いわゆる空力抵抗であり、車両200の走行速度の二乗に比例する。車両200の加速時には、運動力学の式に基づく加速抵抗が生じ、車両乗員重量を含む静的な車両重量に加え、車両を構成する回転系の慣性重量を加味したいわゆる慣性重量を考慮する必要がある。さらに、車両200の補機が消費する電力が必要となる。具体的には、冷却系ポンプ、ファン、パワーステアリング、照明類などである。
【0022】
車両200の走行負荷は、車両200の走行速度はもちろん、路面構成材料の種類、路面状態、路面勾配、天候などの様々な走行環境の変化に応じて変化する。したがって、走行抵抗を二次電池21の充電残量にのみ基づいて求めても、走行抵抗(電力負荷)を正確に求めることは困難である。
【0023】
そこで、本実施形態においては、例えば、電力負荷検出部41は、充電残量検出部22の変動速度に応じて、電力負荷を検出する。外気温検出部42は、車両200の外気温を検出する温度センサである。高速走行検出部43は、車両200が高速走行するか否かを検出する手段である。例えば、高速走行検出部43は、車両200の走行速度を検出する速度計、ETC装置に記録される情報などに基づいて、車両200が高速走行するか否かを推測する。速度計、ETC装置などを用いることによって、車両200が高速道路などにおいて高速走行を所定期間継続することを推測することができる。
【0024】
イグニションスイッチ50は、車両200のイグニションオンおよびイグニションオフを切り替えるスイッチである。イグニションオンの場合には、車両200の走行が可能となる。イグニションオフの場合には、車両200の走行が禁止される。制御部60は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)などを備える。制御部60は、充電残量検出部22、走行条件検出部40、およびイグニションスイッチ50から与えられる情報に基づいて、各部を制御する。
【0025】
(発電制御)
まず、燃料電池装置10の発電制御について説明する。図2は、発電制御を表すフローチャートの一例を示す図である。図2のフローチャートは、イグニションオンの際に、定期的(例えば、1秒ごと)に実行される。図2に示すように、制御部60は、イグニションスイッチ50がオフであるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において「No」と判定された場合、制御部60は、燃料電池11が発電中であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0026】
ステップS2において「Yes」と判定された場合、制御部60は、充電残量検出部22が検出した現在の充電残量soc_rが二次電池21の使用上限soc_uprを上回っているか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3において「No」と判定された場合、制御部60は、充電残量soc_rに応じて、燃料電池11の発電電力制御値p_fcを求め、発電制御部12に送信する。発電制御部12は、燃料電池11の発電電力が発電電力制御値p_fcになるように、燃料電池11の発電電力を制御する(ステップS4)。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0027】
ステップS2において「No」と判定された場合、現在の充電残量soc_rが二次電池21の発電開始SOC以下であるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS2において「Yes」と判定された場合、ステップS4が実行される。ステップS1で「Yes」と判定された場合、ステップS3で「Yes」と判定された場合、またはステップS5で「No」と判定された場合、制御部60は、燃料電池11の発電電力制御値p_fcをゼロに設定する(ステップS6)。それにより、発電制御部12は、燃料電池11の発電を停止する。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0028】
上記発電制御においては、二次電池21の充電残量が発電開始SOC以下になった場合に、燃料電池11による発電が開始される。この発電開始SOCを上下させることによって、燃料電池11の発電開始時期を適切に変更することができる。例えば、発電開始SOCを引き上げると、発電開始時期を早めることができる。続いて、発電開始SOCを変更するためのしきい値更新制御について説明する。
【0029】
(しきい値更新制御)
図3は、しきい値更新制御を表すフローチャートの一例を示す図である。図3を参照して、電力負荷検出部41は、二次電池21の充電残量が減少する際に、充電残量検出部22の検出結果から充電残量減少速度d_batを算出する(ステップS11)。充電残量減少速度d_batの単位は、例えば、kWh/60秒である。次に、制御部60は、充電残量減少速度d_batから、発電開始SOCを取得する(ステップS12)。
【0030】
図4は、ステップS12において発電開始SOCを取得する際に用いるマップの一例である。図4において、横軸は充電残量減少速度d_batを示し、縦軸は発電開始SOCを示す。図4に示すように、発電開始SOCは、充電残量減少速度d_batが大きくなるにつれて、大きい値に設定されている。したがって、充電残量減少速度d_batが大きいほど、発電開始時期が早まる。この場合、二次電池21の充電残量不足が抑制される。
【0031】
なお、発電開始SOCは、二次電池21の使用下限と使用上限との間で設定される。それにより、二次電池21の充電残量が使用下限未満になることが抑制されるとともに、使用上限を上回ることが抑制される。なお、使用下限は、一例として、二次電池21の充電容量の10%程度である。使用上限は、一例として、二次電池21の充電容量の90%程度である。
【0032】
再度、図3を参照して、ステップS2の実行後、制御部60は、高速走行検出部43の検出結果に基づいて、車両200が高速走行するか否かを判定する(ステップS13)。例えば、車両200の走行速度が所定値(一例として78km/h)となった場合に、車両200が高速走行すると推測することができる。または、車両200が高速道路の入口料金所を経由した場合に、車両200が高速走行すると推測することができる。なお、車両200が高速走行すると推測された後においては、上記の所定値は、低い値に変更されてもよい。このようにヒステリシスを設定することによって、高速走行検出部43の検出結果が頻繁に変更されることが抑制される。
【0033】
ステップS13において「Yes」と判定された場合、制御部60は、発電開始SOCを引き上げる(ステップS14)。それにより、車両200が高速すると推測される場合に、燃料電池11の発電開始時期を早めることができる。例えば、制御部60は、発電開始SOCを、二次電池21の充電容量の10%程度引き上げる。ステップS14における変更後の発電開始SOCは、特に限定されるものではないが、上限値が設定されていてもよい。例えば、発電開始SOCの上限値は、0.75(75%)に設定されていてもよい。この場合、発電開始SOCを、二次電池21の使用上限(90%)未満とすることができる。
【0034】
ステップS14の実行後、またはステップS13において「No」と判定された場合、制御部60は、外気温検出部42が検出する外気温から比較値を差し引くことによって得られる温度差d_tmpを検出する(ステップS15)。比較値は、特に限定されるものではないが、例えば10℃程度である。次に、制御部60は、ステップS15で得られた温度差d_tmpに応じて、発電開始SOCを変更する(ステップS16)。
【0035】
図5は、温度差d_tmpと発電開始SOCの補正幅との関係の一例を示す図である。図5に示すように、発電開始SOCの補正幅は、温度差d_tmpがマイナスに大きくなるにつれて大きく設定されている。ここで、燃料電池11を起動する際には、暖機などの処理が必要となる。外気温が低いほど、暖機に要する時間が長くなるため、外気温が低いほど燃料電池11の発電開始時期(起動開始時期)が早まることによって、二次電池21の充電残量不足が抑制される。
【0036】
また、図5に示すように、発電開始SOCの補正幅は、温度差d_tmpがプラスに大きくなるにつれて大きく設定されていてもよい。外気温が高くなるにつれて、冷房装置の電力消費量が増加する可能性があるからである。そこで、外気温が高いほど燃料電池11の発電開始時期が早まることによって、二次電池21の充電残量不足が抑制される。
【0037】
なお、ステップS16における変更後の発電開始SOCは、特に限定されるものではないが、上限値が設定されていてもよい。例えば、発電開始SOCの上限値は、0.75(75%)に設定されていてもよい。この場合、発電開始SOCを、二次電池21の使用上限(90%)未満とすることができる。ステップS16の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0038】
上記しきい値更新制御によれば、車両200の電力負荷が大きい場合に、発電開始時期を早めることができる。また、車両200が高速走行すると推測される際に、発電開始時期を早めることができる。さらに、外気温が低い場合に、発電開始時期(起動開始時期)を早めることができる。以上のことから、本実施形態においては、車両200の走行条件に応じて、燃料電池11の発電開始時期を適切に変更することができる。
【0039】
上記しきい値更新制御では、二次電池21の充電残量の減少速度が高いほど、発電開始SOCが大きく引き上げられているが、それに限られない。例えば、充電残量の減少速度が所定値以上である場合に、発電開始SOCをあらかじめ定まっている固定値に引き上げてもよい。上記しきい値更新制御では、外気温が低いほど、発電開始SOCが大きく引き上げられているが、それに限られない。例えば、外気温が所定値以下である場合に、発電開始SOCをあらかじめ定まっている固定値に引き上げてもよい。
【0040】
また、上記しきい値更新制御では、電力負荷検出部41、外気温検出部42、および高速走行検出部43の検出結果に応じて発電開始SOCが更新されているが、それに限られない。例えば、上記検出結果のうちいずれか1以上に応じて発電開始SOCを更新してもよい。
【0041】
(発電電力制御値)
燃料電池11が発電する際、二次電池21の充電残量に応じて燃料電池11の発電電力を制御してもよい。図6は、充電残量検出部22によって検出される現在の充電残量soc_rと発電電力制御値p_fcとの関係の一例を示す図である。図6において、横軸が現在の充電残量soc_rを示し、縦軸が発電電力制御値p_fcを示す。
【0042】
図6に示すように、充電残量soc_rが発電開始SOCを下回っている場合、発電電力制御値p_fcは、上限値maxに設定される。この場合、二次電池21が効率よく充電されるため、二次電池21における充電不足が抑制される。発電電力制御値p_fcは、充電残量soc_rが使用上限soc_uprに達するまで上限値maxに設定されてもよい。しかしながら、燃料電池11が最大出力を維持すると燃費が悪化するため、発電電力制御値p_fcは、充電残量soc_rに応じて変更されてもよい。
【0043】
例えば、充電残量soc_rが第1所定値を超えた場合、発電電力制御値p_fcは、上限値maxよりも小さい値に変更されてもよい。この場合、二次電池21の充電残量が十分でない場合も生じうる。そこで、発電電力制御値p_fcは、車両200の電力負荷以上の値(例えば、電力負荷×1.5)に変更される。この場合、二次電池21からの消費電力を上回る充電電力が二次電池21に給電される。それにより、二次電池21の充電残量が低下しない範囲で、燃料電池11の発電電力が抑制される。したがって、燃料電池11が低効率で運転することが抑制される。
【0044】
次に、充電残量soc_rが、第2所定値(≧第1所定値)を超えた場合、発電電力制御値p_fcは、車両200の電力負荷以下の値(例えば、電力負荷×0.8)に変更される。この場合、二次電池21からの消費電力を下回る充電電力が二次電池21に給電されるが、二次電池21の充電残量が不足しない範囲で燃料電池11が発電を継続する。また、充電残量soc_rが第2所定値を下回れば、発電電力制御値p_fcは、車両200の電力負荷以上の値に変更される。
【0045】
このように燃料電池11の発電電力を制御することによって、燃料電池11の運転継続時間を長くすることができる。それにより、燃料電池11の起動処理に要するエネルギー、燃料電池11の運転停止に要するエネルギーなどを抑制することができる。その結果、車両200の全体のエネルギー効率が改善される。また、二次電池21の充電残量が使用上限soc_uprまで達しないように制御することによって、外部電源などを用いた充電を効率よく活用することができる。それにより、車両200のCO排出量などを削減することができる。
【0046】
なお、充電残量soc_rが増減する場合において、上記の第1所定値および第2所定値にヒステリシスを設定してもよい。例えば、充電残量soc_rが上昇する際には、第1所定値および第2所定値は比較的高めの値に設定されていてもよい。例えば、第1所定値は0.70(70%)であり、第2所定値は0.80(80%)に設定される。一方で、充電残量soc_rが低下する際には、第1所定値および第2所定値は比較的低めの値に設定されていてもよい。例えば、第1所定値は0.65(65%)であり、第2所定値は0.78(78%)に設定される。このように各値にヒステリシスを設定することによって、燃料電池11の発電電力制御値の余計な制御が抑制される。なお、第1所定値のヒステリシス幅は、第2所定値のヒステリシス幅よりも大きく設定されていてもよい。この場合、二次電池21の充電残量不足が抑制される。
【0047】
図7は、燃料電池11の発電制御の例を示す図である。図7において、横軸は経過時間を示し、縦軸は、二次電池21の現在の充電残量soc_r、車両200の電力負荷、燃料電池11の発電電力、および燃料電池11が消費する燃料消費量を示す。
【0048】
図7に示すように、車両200が電力負荷に応じて二次電池の電力を消費すると、二次電池21の充電残量soc_rが徐々に低下する。充電残量soc_rが発電開始SOC以下になると、燃料電池11が発電を開始する。この際、燃料電池11を暖機する必要があるため、発電電力が得られるまでにある程度の燃料が消費される。充電残量soc_rが発電開始SOC以下になっているため、燃料電池11は、上限値maxで発電する。それにより、二次電池21の充電残量soc_rが急速に上昇する。また、二次電池21が急速に充電されるため、二次電池21の充電不足が抑制される。
【0049】
充電残量soc_rが図6の第1所定値を超えた場合、発電電力制御値p_fcは、上限値maxよりも小さい値に変更される。それにより、二次電池21の充電残量が低下しない範囲で、燃料電池11の発電電力が抑制される。したがって、燃料電池11の低効率運転が抑制される。次に、充電残量soc_rが、図6の第2所定値を超えた場合、発電電力制御値p_fcは、車両200の電力負荷以下の値に変更される。それにより、二次電池21の充電残量が不足しない範囲で、二次電池21の充電残量が低下する。充電残量soc_rが第2所定値を下回れば、発電電力制御値p_fcは、車両200の電力負荷以上の値に変更される。以上の繰り返しにより、燃料電池11は、比較的高い効率の範囲で運転を継続する。また、燃料電池11の起動処理に要するエネルギー、燃料電池11の運転停止に要するエネルギーを抑制することができる。
【0050】
なお、上記実施形態は、固体高分子形、固体酸化物形、炭酸溶融塩形等の他のいずれのタイプの燃料電池にも適用可能である。ただし、固体酸化物形のように発電温度が高い場合には、発電開始までに時間を要することがある。したがって、固体酸化物形の燃料電池を用いる場合には、上記実施形態は特に有効である。
【符号の説明】
【0051】
10 燃料電池装置
11 燃料電池
12 発電制御部
20 二次電池装置
21 二次電池
22 充電残量検出部
23 コネクタ
30 電動機
40 走行条件検出部
41 電力負荷検出部
42 外気温検出部
43 高速走行検出部
50 イグニションスイッチ
60 制御部
100 燃料電池システム
200 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電開始指示を受けて発電を開始する燃料電池と、
前記燃料電池の発電電力によって充電される二次電池と、
前記二次電池の充電残量がしきい値以下になった場合に、前記燃料電池に前記発電開始を指示する指示部と、
前記燃料電池および前記二次電池を搭載する車両の走行条件を検出する走行条件検出部と、
前記走行条件検出部の検出結果に応じて、前記しきい値を更新する更新部と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記走行条件検出部は、前記車両の電力負荷を検出することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記更新部は、前記電力負荷が所定値以上である場合に、前記しきい値を引き上げることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記更新部は、前記電力負荷が大きいほど、前記しきい値を引き上げることを特徴とする請求項2または3記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記走行条件検出部は、前記充電残量の減少速度に応じて、前記電力負荷を判断することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記走行条件検出部は、前記車両の走行条件として、前記車両の外気温を検出することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記更新部は、前記外気温が所定値以下である場合に、前記しきい値を引き上げることを特徴とする請求項6記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記更新部は、前記外気温が低いほど、前記しきい値を引き上げることを特徴とする請求項6または7記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記車両が高速走行するか否かを推測する推測手段を備え、
前記走行条件検出部は、前記車両の走行条件として、前記推測手段の推測結果を検出することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記更新部は、前記車両が高速走行すると推測された場合に、前記しきい値を引き上げることを特徴とする請求項9記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記燃料電池の発電電力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記燃料電池が発電する際に、前記二次電池の充電残量が第1所定値以下である場合には、前記燃料電池の発電電力を前記車両の電力負荷以上とし、前記二次電池の充電残量が前記第1所定値以上の第2所定値以上である場合には、前記燃料電池の発電電力を前記車両の電力負荷以下とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
外部電源から前記二次電池に電力を受け入れるためのコネクタを備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
発電開始指示を受けて発電を開始する燃料電池と、前記燃料電池の発電電力によって充電される二次電池と、を備える燃料電池システムにおいて、
前記二次電池の充電残量がしきい値以下になった場合に、前記燃料電池に前記発電開始を指示する指示ステップと、
前記燃料電池および前記二次電池を搭載する車両の走行条件を検出する走行条件検出ステップと、
前記走行条件検出ステップの検出結果に応じて、前記しきい値を更新する更新ステップと、を含むことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253948(P2012−253948A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125636(P2011−125636)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】