説明

燃料電池システムおよび燃料電池用配管

【課題】 排出水の浄化を行うことができる燃料電池システムおよび燃料電池用配管を提供する。
【解決手段】 燃料電池システム(100)は、反応ガスを用いて発電を行う燃料電池(30)と、燃料電池から反応ガスを排出するための反応ガス排出配管(21)とを備え、反応ガス排出配管は、内側に光触媒(211)を備えるとともに、光触媒に光を供給するための光供給手段(212)を備える。発電に伴って生成された生成水に含まれる有機物は、酸化されて二酸化炭素および水となる。また、生成水中の貴金属は、還元されて反応ガス排出配管の内面に固定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムおよび燃料電池用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
この燃料電池を構成するシステムにおいては、発電継続のためには不純物の混入を抑制することが好ましい。例えば、特許文献1には、空気中の不純物を除去する技術が開示されている。また、特許文献2には、冷媒流路内の不純物を抑制する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−373696号公報
【特許文献2】特開2004−165121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各特許文献の技術では、燃料電池からの排出される排出水中の浄化を行うことができない。
【0006】
本発明は、排出水の浄化を行うことができる燃料電池システムおよび燃料電池用配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池システムは、反応ガスを用いて発電を行う燃料電池と、燃料電池から反応ガスを排出するための反応ガス排出配管とを備え、反応ガス排出配管は、内側に光触媒を備えるとともに、光触媒に光を供給するための光供給手段を備えることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池システムにおいては、光触媒は、光が照射されると触媒として機能する。この場合、発電に伴って生成された生成水に含まれる有機物は、酸化されて二酸化炭素および水となる。また、生成水中の貴金属は、還元されて反応ガス排出配管の内面に固定化される。以上のことから、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池から排出される水を浄化することができる。
【0008】
光供給手段は、光触媒に光を照射する光源であってもよい。また、光供給手段は、燃料電池システムの外部の光を光触媒に供給する手段であってもよい。この場合、光源を設ける必要がない。したがって、本発明に係る燃料電池システムが簡素化される。また、燃料電池は、固体高分子型燃料電池であってもよい。
【0009】
本発明に係る燃料電池用配管は、反応ガスを用いて発電を行う燃料電池から反応ガスを排出するための配管であって、内側に光触媒を備えるとともに、光触媒に光を供給するための光供給手段を備えることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池用配管においては、光触媒は、光が照射されると触媒として機能する。この場合、燃料電池の発電に伴って生成された生成水に含まれる有機物は、酸化されて二酸化炭素および水となる。また、生成水中の貴金属は、還元されて反応ガス排出配管の内面に固定化される。以上のことから、燃料電池から排出される水を浄化できるとともに、貴金属を回収することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料電池から排出される水を浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1実施例に係る燃料電池システム100について説明するための図である。図1(a)は、燃料電池システム100の全体構成を示した模式図である。図1(b)は、図1(a)の燃料電池30に含まれる単セル31の模式的断面図である。以下、図1を参照しつつ、燃料電池システム100の詳細について説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、燃料電池システム100は、反応ガス供給配管部10、反応ガス排出配管部20および燃料電池30を備える。反応ガス供給配管部10は、酸化剤ガス供給配管11および燃料ガス供給配管12を備える。反応ガス排出配管部20は、酸化剤ガス排出配管21および燃料ガス排出配管22を備える。燃料電池30は、固体高分子型の燃料電池であり、少なくとも1つの単セル31を備える。
【0014】
酸化剤ガス供給配管11は、燃料電池30に酸化剤ガスを供給するための配管である。酸化剤ガス供給配管11は、燃料電池30の酸化剤ガス流路を介して酸化剤ガス排出配管21に連通する。本実施例においては、酸化剤ガスとしてエアを用いる。燃料ガス供給配管12は、燃料電池30に燃料ガスを供給するための配管である。燃料ガス供給配管12は、燃料電池30の燃料ガス流路を介して燃料ガス排出配管22に連通する。本実施例においては、燃料ガスとして水素ガスを用いる。以下、燃料ガスおよび酸化剤ガスを総称して反応ガスと称することがある。
【0015】
酸化剤ガス排出配管21は、燃料電池30において発電に供された後の酸化剤ガスを外部に排出するための配管である。燃料ガス排出配管22は、燃料電池30において発電に供された後の燃料ガスを外部に排出するための配管である。酸化剤ガス排出配管21は、光触媒211および光源212を備える。光触媒211は、酸化剤ガス排出配管21の内面にコートされている。光触媒211は、照射される光を利用することによって触媒として機能する材料からなる。光触媒211は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、ニオブ酸リチウム、チタン酸ストロンチウム等の酸化物半導体等からなる。光源212は、例えば、発光ダイオード、ハロゲンランプ、水銀ランプ等からなる。光源212は、光触媒211に光を照射するための装置であり、酸化剤ガス排出配管21の断面中央部に配置されている。
【0016】
図1(b)に示すように、単セル31は、電解質膜32の一方の面に触媒層33、ガス拡散層34およびセパレータ35が積層され、電解質膜32の他方の面に触媒層36、ガス拡散層37およびセパレータ38が積層された構造を有する。電解質膜32は、プロトン伝導性を有する固体高分子型電解質からなる。触媒層33は、酸素とプロトンとの反応を促進する触媒を含む導電体層である。触媒層36は、水素のプロトン化を促進する触媒を含む導電体層である。例えば、触媒層33,36は、白金担持カーボンからなる。ガス拡散層34は、酸化剤透過性を有する材料からなる導電体層である。ガス拡散層37は、燃料ガス透過性を有する材料からなる導電体層である。ガス拡散層34,37は、例えば、カーボンペーパからなる。セパレータ35には酸化剤ガス流路が設けられ、セパレータ38には燃料ガス流路が設けられている。
【0017】
燃料ガス供給配管12を流動する燃料ガスは、セパレータ38の燃料ガス流路に供給される。燃料ガスは、ガス拡散層37を介して触媒層36に供給される。燃料ガスに含まれる水素は、触媒層36の触媒を介してプロトンと電子とに解離する。プロトンは、電解質膜32を伝導して触媒層33に到達する。一方、酸化剤ガス供給配管11を流動する酸化剤ガスは、セパレータ35の酸化剤ガス流路に供給される。酸化剤ガスは、ガス拡散層34を介して触媒層33に供給される。触媒層33においては、触媒を介してプロトンと酸素とが反応する。それにより、水が生成されるとともに発電が行われる。
【0018】
ここで、電解質膜32の劣化に起因して、発電生成水に炭化水素等の有機物が溶出することがある。また、発電時の電位変動等に起因して、触媒層33,36から白金等の貴金属が溶出することがある。燃料電池30においてはカソード側で水が生成されることから、酸化剤ガス排出配管21に発電生成水が流入することが考えられる。
【0019】
この場合、光源212から照射される光によって光触媒が触媒として機能する。それにより、生成水中の炭化水素等の有機物は酸化されて二酸化炭素および水となり、白金等の貴金属は還元されて酸化剤ガス排出配管21の内面に固定化される。以上のことから、燃料電池30から排出される水を浄化できるとともに、貴金属を回収することができる。なお、酸化剤ガス排出配管21の内面に固定化された貴金属は、酸等に溶かして回収することができる。
【0020】
なお、光源212は、光触媒211の触媒機能を高める波長を有していることが好ましい。例えば、光触媒211が酸化チタンからなる場合、光源212は400nm以下の波長を持つ紫外光を照射する光源であることが好ましい。また、光触媒211がチタン酸ストロンチウムからなる場合、光源212は380nm以下の波長を持つ紫外光を照射する光源であることが好ましい。このように、光触媒211として用いる触媒に応じて、光源212を選択してもよい。
【0021】
図2は、酸化剤ガス排出配管21の他の例を示す図である。図2(a)に示すように、光源212および光触媒211の両方とも酸化剤ガス排出配管21の内面に沿って設けられていてもよい。この場合、光触媒211を光源212と対向する位置に配置することによって、光触媒211の触媒機能を向上させることができる。また、図2(b)に示すように、光触媒211は、酸化剤ガス排出配管21の断面に設けられた活性炭等の多孔質材料に担持されていてもよい。また、図2(c)に示すように、酸化剤ガス排出配管21の一部がガラス等の光透過部材213によって構成されていてもよい。この場合、太陽光等の外部光は、光透過部材213を透過して光触媒211に照射される。それにより、光源212に必要な電力が不要になる。
【0022】
以上のように、酸化剤ガス排出配管21に光触媒とこの光触媒に光を供給するための光供給手段とが設けられていれば、本発明の効果が得られる。なお、生成水は酸化剤ガス排出配管21の内面に沿って流動することから、光触媒211は酸化剤ガス排出配管21の内面に設けられていることが好ましい。
【0023】
また、本実施例においては光触媒と光供給手段が酸化剤排出配管21に設けられているが、燃料ガス排出配管22に設けられていてもよい。すなわち、反応ガスの少なくともいずれかの排出配管に光触媒と光供給手段が設けられていれば、本発明の効果が得られる。また、固体高分子型燃料電池以外の燃料電池(例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池)を用いても、排出された生成水を浄化することができるとともに貴金属の回収を行うことができる。
【0024】
なお、本実施例においては、酸化剤ガス排出配管31が反応ガス排出配管および燃料電池配管に相当し、光源212および光透過部材213が光供給手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例に係る燃料電池システムについて説明するための図である。
【図2】酸化剤ガス排出配管の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
20 反応ガス排出配管部
21 酸化剤ガス排出配管
30 燃料電池
31 セル
100 燃料電池
211 光触媒
212 光源
213 光透過部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池から前記反応ガスを排出するための反応ガス排出配管とを備え、
前記反応ガス排出配管は、内側に光触媒を備えるとともに、前記光触媒に光を供給するための光供給手段を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記光供給手段は、前記光触媒に光を照射する光源であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記光供給手段は、前記燃料電池システムの外部の光を前記光触媒に供給する手段であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池は、固体高分子型燃料電池であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
反応ガスを用いて発電を行う燃料電池から前記反応ガスを排出するための燃料電池用配管であって、
内側に光触媒を備えるとともに、前記光触媒に光を供給するための光供給手段を備えることを特徴とする燃料電池用配管。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−171686(P2008−171686A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3866(P2007−3866)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】