説明

燃料電池システム

【課題】この発明は、燃料電池スタックに取り付けられる配管部品がより簡素化された燃料電池システムを提供することを目的とする。
【解決手段】内部に複数のマニホールドを備え、一つの面に複数のマニホールドのそれぞれの出入口を備える燃料電池スタック10に対して、樹脂製の一部品からなる配管部品を取り付ける。配管部品20は、燃料電池スタック10の一つの面と接触する部位を備え、当該部位の複数のマニホールドの出入口に対応する位置からその内部を貫通して延びる複数の流体通路(水素入口通路24、水素出口通路28、空気入口通路32、空気出口通路36、冷却液出口通路42、冷却液入口通路46)を備えている。配管部品20が燃料電池スタック10の一つの面に取り付けられた状態で、複数の流体通路がそれぞれ対応するマニホールドに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2005−116226号公報に開示されているように、燃料電池スタックに取り付けられ、当該燃料電池スタック内部のマニホールドと連通する配管を備える燃料電池システムが知られている。燃料電池システムが発電を行うには、燃料電池スタック内の各セルへ反応ガスを供給する必要がある。また、良好な発電状態を保つ観点から、燃料電池スタック内で冷却液を流通させて各セルを適切な温度に保つことが好ましい。
【0003】
このような目的を達成するために、従来の燃料電池スタックの内部には各燃料電池セルに連通するマニホールドが備えられており、当該マニホールドを介して反応ガスや冷却液を流通させている。そして、このマニホールドへのガス等の流通を仲介するために、各マニホールドに連通する配管が設けられている。
【0004】
このような配管は、その構成によっては、燃料電池スタックへの組み付けが煩雑となる場合がある。そこで、上記従来の燃料電池システムでは配管を集合化し、組み付け性の向上、部材点数の削減など、より好適な配管部品の提供を試みている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−116226号公報
【特許文献2】特開2005−228542号公報
【特許文献3】特開2001−76751号公報
【特許文献4】特開2006−221915号公報
【特許文献5】特開2005−332674号公報
【特許文献6】特開2002−367637号公報
【特許文献7】特開2002−362164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のシステムでは、燃料電池スタックに取り付けられる配管が、複数の構成部品として存在している。このため、組み付け工数が多くなる等の課題があり、好適な配管部品を提供する観点からは未だ改善の余地がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、燃料電池スタックに取り付けられる配管部品がより簡素化された燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池システムであって、
内部に複数のマニホールドを備え、一つの面に該複数のマニホールドのそれぞれの出入口を備える燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに取り付けられる配管部品であって、前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位を備え、該部位の前記複数のマニホールドの出入口に対応する位置から延びる複数の流体通路を備え、前記燃料電池スタックの前記一つの面に取り付けられた状態で前記複数の流体通路がそれぞれ対応する前記マニホールドに接続する樹脂製の一部品からなる配管部品と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記配管部品が備える前記複数の流体通路は、該配管部品の前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位における前記複数のマニホールドの出入口に対応する位置から、該配管部品の内部を貫通して延びていることを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記マニホールドは、前記燃料電池セルに供給するガスが流通するガス供給マニホールドと、前記燃料電池セルから排出されるガスが流通するガス排出マニホールドの両方を含むことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記複数の流体通路のうち、前記冷却液流通マニホールドに接続する流体通路と、前記ガス排出マニホールドに接続する流体通路とが隣接して配置されることを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、第3または第4の発明において、
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記ガス供給マニホールドは前記燃料電池セルに供給される水素が流通する水素供給マニホールドを含み、
前記複数の流体通路のうち、前記水素供給マニホールドに接続する流体通路と前記冷却液流通マニホールドに接続する流体通路とが隣接して配置されることを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第1乃至5の発明のいずれかにおいて、
前記複数の流体通路は、前記マニホールドと接続しない側の端部が前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行な方向に延びるように形成されている流体通路を含むことを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、第1乃至6の発明のいずれかにおいて、
前記複数の流体通路は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる部分を有する流体通路を含むことを特徴とする。
【0015】
また、第8の発明は、第1乃至7の発明のいずれかにおいて、
前記複数の流体通路は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる第1流体通路と、該第1流体通路よりも該一つの面から離れた位置で、該第1流体通路と重なるように延びる第2流体通路とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、第9の発明は、第8の発明において、
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記第1流体通路と前記第2流体通路のどちらか一方が前記冷却液流通マニホールドと接続し、他方がガス供給マニホールドまたはガス排出マニホールドに接続していることを特徴とする。
【0017】
また、第10の発明は、第1乃至9の発明のいずれかにおいて、
前記複数の流体通路は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる第1流体通路と、該第1流体通路よりも該一つの面から離れた位置で該第1流体通路と立体的に交差する第3流体通路とを含むことを特徴とする。
【0018】
また、第11の発明は、第10の発明において、
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記第1流体通路と前記第3流体通路のどちらか一方が前記冷却液流通マニホールドと接続し、他方がガス供給マニホールドまたはガス排出マニホールドに接続していることを特徴とする。
【0019】
また、第12の発明は、第1乃至11の発明のいずれかにおいて、
前記複数のマニホールドは水素が流通する水素供給マニホールドを含み、
前記複数の流体通路は、前記水素供給マニホールドに接続される流体通路と、前記水素入口通路よりも前記燃料電池スタックの前記一つの面からの距離が相対的に大きい流体通路とを含むことを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
また、第13の発明は、第1乃至12の発明のいずれかにおいて、
前記流体通路の流体の流れる方向に垂直な断面が略矩形状にされていることを特徴とする。
【0021】
また、第14の発明は、第1乃至13の発明のいずれかにおいて、
前記流体通路の流体の流れる方向に垂直な断面の形状及び大きさが、前記マニホールドと接続する側から緩やかに変化することを特徴とする。
【0022】
また、第15の発明は、第1乃至14の発明のいずれかにおいて、
前記複数の流体通路のうち少なくとも2つの流体通路は、前記マニホールドに接続しない側の端部が、前記配管部品の略同一箇所に配置されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【0023】
また、第16の発明は、第1乃至15の発明のいずれかにおいて、
前記配管部品に、前記マニホールド内のガスの圧力を制御する圧力制御機器が一体化されていることを特徴とする。
【0024】
また、第17の発明は、第1乃至16の発明のいずれかにおいて、
前記配管部品に、前記マニホールドを流通する流体の流量を制御する流量制御機器が一体化されていることを特徴とする。
【0025】
また、第18の発明は、第1乃至17の発明のいずれかにおいて、
前記配管部品に、前記マニホールド内のガスの圧力を検知する圧力センサが一体化されていることを特徴とする。
【0026】
また、第19の発明は、第1乃至18の発明のいずれかにおいて、
前記配管部品は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位が略平坦な面に形成されてなることを特徴とする。
【0027】
また、第20の発明は、第1乃至19の発明のいずれかにおいて、
前記配管部品は、
前記燃料電池スタックの前記一つの面に取り付けられる略平板状の平板部であって、該一つの面と接触する面の前記マニホールドに対応した位置に貫通孔を備える平板部と、
一端が前記貫通孔と連通して該貫通孔とともに前記流体通路を形成する管をその内部に有する管路部であって、前記平板部に一体化されて該平板部とともに一部品を構成する管路部と、
を備えることを特徴とする。
【0028】
また、第21の発明は、第1乃至20の発明のいずれかにおいて、
前記配管部品が、水素透過性が抑制された樹脂材料により形成されていることを特徴とする。
【0029】
また、第22の発明は、上記の目的を達成するため、配管部品であって、
樹脂製であり、燃料電池スタック内部に備えられる複数のマニホールドにそれぞれ連通する複数の流体通路が一部品に設けられてなる。
【0030】
また、第23の発明は、第22の発明において、
前記燃料電池スタックの前記マニホールドが露出する一つの面と接触する略平板状の平板部であって、該燃料電池スタックのマニホールドに対応した位置に貫通孔を備える平板部と、
一端が前記貫通孔と連通して該貫通孔とともに前記流体通路を形成する管をその内部に有する管路部であって、前記平板部に一体化されて該平板部とともに一部品を構成する管路部と、
を備えることを特徴とする。
【0031】
また、第24の発明は、第22または第23の発明において、
水素透過性が抑制された樹脂材料により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
第1の発明によれば、燃料電池スタックに取り付けられる配管部品が樹脂材料により一部品として構成されているので、部品点数を削減でき、極めて容易に組み付けを行うことができる。
【0033】
第2の発明によれば、複数の流体通路が配管部品の内部を貫通して延びているので、複雑な配管の構成を一部品で実現することができる。
【0034】
第3の発明によれば、ガス供給マニホールドとガス排出マニホールドという異なる種類のマニホールドを有する燃料電池スタックにおいても、部品点数を削減でき、配管部品の組み付けを極めて容易に行うことができる。
【0035】
第4の発明によれば、燃料電池システムの冷却系を流れる冷却液と、ガス排出マニホールドを流れるオフガスとの間で熱交換を行うことができる。
【0036】
第5の発明によれば、燃料電池システムの冷却系を流れる冷却液を用いて、燃料電池セルに供給される水素を暖めることができる。
【0037】
第6の発明によれば、流体通路の端部が燃料電池スタックの端面と略平行に延びているので、燃料電池スタック周辺の構造の寸法が燃料電池セルの積層方向に過大になるのを防ぐことができる。
【0038】
第7の発明によれば、流体通路の一部が燃料電池スタックの端面の略平行に延びているので、燃料電池スタック周辺の構造の寸法が燃料電池セルの積層方向に過大になるのを防ぐことができる。
【0039】
第8の発明によれば、一部品の配管部品の中に複数の流体通路を三次元的に形成しているので、複雑な配管の構成を一部品で実現することができる。
【0040】
第9の発明によれば、三次元的に重なる流体通路間で冷却液とオフガスが隣接して流れているため、複雑な配管の構成を一部品で実現しつつ、冷却液とオフガスとの間で熱交換を行うことができる。
【0041】
第10の発明によれば、一部品の配管部品の中で複数の流体通路が立体的に交差するため、複雑な配管の構成を一部品で実現することができる。
【0042】
第11の発明によれば、三次元的に重なる流体通路間で冷却液とオフガスが隣接して流れているため、複雑な配管の構成を一部品で実現しつつ、冷却液とオフガスとの間で熱交換を行うことができる。
【0043】
第12の発明によれば、複数の流体通路のうち、より内側(燃料電池スタック端面側)に位置する流体通路に水素を流通させることができる。その結果、水素が流通する流体通路を、外部から受ける衝撃などから守ることができる。
【0044】
第13の発明によれば、複数の流体通路をより接近させて形成することができ、配管部品の寸法をより小さなものとすることができる。
【0045】
第14の発明によれば、流体通路の断面の形状および大きさが緩やかに変化することで、流体を円滑に流通させることができる。
【0046】
第15の発明によれば、配管部品の一部に流体通路の端部を集合させることにより、当該流体通路に更に取り付けられる他の配管などの部品の組み付け性を向上させることができる。
【0047】
第16の発明によれば、配管部品と圧力制御機器が一体化されることで、燃料電池スタックへのそれらの機器の取り付けを極めて容易に行うことができる。
【0048】
第17の発明によれば、配管部品とポンプが一体化されることで、燃料電池スタックへのそれらの機器の取り付けを極めて容易に行うことができる。
【0049】
第18の発明によれば、配管部品と圧力センサが一体化されることで、燃料電池スタックへのそれらの部品の取り付けを極めて容易に行うことができる。
【0050】
第19の発明によれば、配管部品と燃料電池スタックの間の密着性を確保することが容易となる。
【0051】
第20の発明によれば、配管部品を軽量化することができる。
【0052】
第21の発明によれば、流体通路内における水素の封止を、確実かつ容易に実現することができる。
【0053】
第22の発明によれば、複数の配管を集合化して、樹脂材料により一部品として構成しているので、部品点数を削減でき、取り扱いを容易にすることができる。
【0054】
第23の発明によれば、配管部品をより軽量化することができる。
【0055】
第24の発明によれば、流体通路内における水素の封止を、確実かつ容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
(システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態1の燃料電池システムを説明するための図である。実施の形態1のシステムは燃料電池スタック10を有しており、図1は燃料電池スタック10を含む一部の領域を拡大して示す図である。燃料電池スタック10は、複数の燃料電池セルをその内部に有している。
【0057】
各燃料電池セルには、アノード、カソードに連通するガス流通孔が、その厚み方向を貫通するように設けられている。また、セル面内を這うように形成される冷却液流路と連通する冷却液流通孔が、同様に、セルの厚み方向を貫通するように設けられている。複数の燃料電池セルが積層されて燃料電池スタック10を構成する際には、各セルの流通孔が積層方向に連通し、当該燃料電池セルの積層方向に延びる種々のマニホールド(アノードガス供給マニホールド、アノードガス排出マニホールド、カソードガス供給マニホールド、カソードガス排出マニホールド、冷却液流通マニホールド)が形成される。
【0058】
燃料電池スタック10の端面には、スタックエンドプレート12が装着されている。スタックエンドプレート12は、燃料電池スタック10端面の上述したマニホールドに対応した位置に貫通孔を有している。このような構成によれば、上述した複数のマニホールドのそれぞれの端部が、燃料電池スタック10の端面(図1の紙面斜め下方側を向く面)に露出することとなる。
【0059】
なお、上述の燃料電池スタック10のような、燃料電池セル積層方向に種々のマニホールドを備える燃料電池スタックは、例えば特開2005−116226号公報に開示されているように、すでに公知である。従って、その構造の更なる詳細な説明は省略すると共に、図面上でもマニホールドを省略することとする。
【0060】
スタックエンドプレート12には、配管部品20が取り付けられている。配管部品20は、樹脂材料により一体的に形成された一部品からなる配管部品である。配管部品20は、後述するように、複数の管路部を備えている。管路部は、その内部が中空状や溝状などに形成された管状の部位である。当該中空状などの空間は、ガスや冷却液が流通する流体通路として機能するようになっている。
【0061】
また、実施の形態1のシステムは、図示しないが、燃料電池スタック10に水素を供給するために、水素タンクや水素調圧弁を含むアノードガス供給系を備えている。また、同じく図示しないが、燃料電池スタック10に空気を供給するために、エアコンプレッサや空気調圧弁を含むカソードガス供給系を備えている。また、発電に伴って燃料電池スタック10から排出されるガス(アノードオフガス、カソードオフガス)を排気するために、アノードガス排気系とカソードガス排気系をそれぞれ有している。
【0062】
また、実施の形態1のシステムは、冷却液を流通させるポンプなどを含む冷却系も備えている。なお、上述した水素タンク、エアコンプレッサなど燃料電池システムを構成する機器に関しては、従来の燃料電池システムの構成部品として用いられているものと同様であり、新規でなく、本発明の主要部分でないため、その説明を省略する。
【0063】
配管部品20は、図1に示すように、水素入口管路部22を有している。水素入口管路部22には、当該管路部の内部を貫通して延びる水素入口通路24が形成されている。水素入口通路24は、スタックエンドプレート12の貫通孔を介して、燃料電池スタック10のアノードガス供給マニホールドに連通している。また、水素入口通路24の反対側の(スタックエンドプレート12と接触しない側の)端部は、上述のアノードガス供給系(図示せず)に接続している。
【0064】
配管部品20は、水素出口管路部26を有している。水素出口管路部26の内部には、水素入口管路部22と同様に、水素出口通路28が形成されている。水素出口通路28も、水素入口通路24と同様に、燃料電池スタック10のアノードガス排出マニホールドに連通している。また、水素出口通路28の反対側(スタックエンドプレート12と接触しない側)の端部は、上述のアノードガス排出系(図示せず)に接続されている。
【0065】
配管部品20は、空気入口通路32が内部に形成された空気入口管路部30と、空気出口通路36が内部に形成された空気出口管路部34とを有している。空気入口通路32と空気出口通路36は、スタックエンドプレート12の貫通孔を介して、それぞれ、燃料電池スタック10内部のカソードガス供給マニホールド、カソードガス排出マニホールドに接続されている。空気入口通路32と空気出口通路36についても、スタックエンドプレート12と接触しない側の端部が、上述のカソードガス供給系、カソードガス排出系(どちらも図示せず)にそれぞれ接続されている。
【0066】
また、図1に示すように、空気入口管路部30および空気出口管路部34は、その太さが徐々に変化する構造となっている。内部の空気入口通路32および空気出口通路36もこれに応じて、空気が流れる方向と垂直な断面の形状がマニホールド側から徐々に小さくなる構成となっている。
【0067】
また、配管部品20は、冷却液出口通路42が内部に形成された冷却液出口管路部40と、冷却液入口通路46が内部に形成された冷却液入口管路部44とを有している。これらの通路は、燃料電池スタック10内部の冷却液流通マニホールドに連通している。そして、スタックエンドプレート12と接触しない側の端部が、上述した冷却系(図示せず)と接続されている。
【0068】
実施の形態1における燃料電池システムが発電を行う際には、アノードガス供給系から、水素入口通路24、アノードガス供給マニホールドを順次通って、燃料電池スタック10のアノードへと水素が供給される。また、カソードガス供給系から、空気入口通路32、カソードガス供給マニホールドを通って、燃料電池スタック10のカソードへと空気が供給される。燃料電池スタック10は、水素と空気の供給を受けて電気化学的反応を生じ、発電を行う。
【0069】
発電に伴い、各燃料電池セルのアノードとカソードからは、アノードオフガス、カソードオフガスがそれぞれ排出される。アノードオフガスは、アノードガス排出マニホールドと水素出口通路28を順次通って、アノードガス排出系へと排出される。また、カソードオフガスは、カソードガス排出マニホールドと空気出口通路36を順次通って、カソードガス排出系へと排出される。
【0070】
また、発電の際には、冷却液入口通路46を介して、燃料電池スタック10へと冷却液が供給される。この冷却液は、燃料電池スタック10内の各燃料電池セルが備える冷却液流路を流れて、燃料電池セルを冷却する。その後、この冷却液は、冷却に寄与した結果、温度が上昇した状態で、冷却液出口通路42を通って燃料電池スタック10から流出する。
【0071】
(配管部品20の構成)
以下、配管部品20の具体的な構成について、詳細に説明する。図2は、実施の形態1のシステムにおける配管部品20の正面図である。図2中の破線は、各管路部の内部に設けられている流体通路を示している。なお、各流体通路はそれぞれ独立に形成されており、複数の流体通路が交差または重なる位置では、各流体通路は実際には立体的な位置関係となっている。しかしながら、図2では、便宜上、それらの流体通路を同一面上に示している。
【0072】
上述したように、配管部品20は、樹脂材料により一体的に形成された、一部品からなる配管部品である。配管部品20の構造は、より具体的には、平板部21と、当該平板部21と一体的に形成される複数の管路部とに区分することができる。平板部21は、配管部品20がスタックエンドプレート12に装着される際、当該スタックエンドプレート12に接触する板状の部位である。平板部21は、スタックエンドプレート12と略同一の大きさおよび外形を有している。
【0073】
図2に示すように、配管部品20は、各管路部が隣接して配置されるとともに、当該各管路部が平板部21上を延びる過程で立体的に交差または重なり合うように構成されている。具体的には、先ず、水素入口管路部22は、平板部21の紙面左上側位置から紙面下方へと延び、その途中で、冷却液出口管路部40と接触している。そして、更に紙面下方へと延びたあと、L字上に屈曲して紙面左方へと向かって延びている。
【0074】
また、水素出口管路部26は、平板部21の紙面右下側から紙面左方へと延びる過程で、先ず空気入口管路30と紙面裏面側で交差するように接触し、その後空気出口管路部34と接触する構成となっている。また、空気出口管路部34は、紙面上側から紙面下方に延びる過程で、紙面表面側位置で冷却液出口管路部40、空気入口管路部30と、順次、立体的に交差している。また、冷却液入口管路部44と冷却液出口管路部40とは、平板部21の紙面右側位置で重なっている。
【0075】
また、実施の形態1の配管部品20では、水素入口管路部22、空気出口管路部34、水素出口管路部26とが接触しつつ、図2の紙面左側に向かって略同一方向に延びるように構成されている。そして、空気入口管路部30、冷却液出口管路部40および冷却液入口管路部44は、反対に、紙面右側に向かって略同一方向に延びるように構成されている。これらの配管は、それぞれ、平板部21の平面方向(すなわち、実施の形態1では、燃料電池スタック10の平面方向と同じ)と略平行に延びている。
【0076】
図3(a)(b)は、配管部品20の側面図である。図3(a)は図2を紙面左側から見た図、図3(b)は図2を紙面右側から見た図である。図3(c)は、配管部品20のみを示した図である。このように、配管部品20は一部品として燃料電池スタック10への取り付け、或いは必要に応じた取り外しが可能な構成となっている。従って、配管部品20の組み付けや取り扱いは、極めて容易である。
【0077】
図4(a)(b)(c)は、それぞれ、図2におけるX−X線、Y−Y線、Z−Z線に沿う、配管部品20の断面図である。上記の説明では、配管部品20を平板部21と複数の管路部に区分して説明しているものの、図4に示すように、それらは一体的に形成されて不可分的に一部品を構成している。また、図4(a)〜(c)に示す断面図には、水素出口通路28、空気入口通路30、空気出口通路36、冷却液出口通路42がそれぞれ表されている。これらの図に示すように、それぞれの通路は独立して流路を構成しており、それぞれの通路には独立してガスまたは冷却液が流通する。
【0078】
図5は、配管部品20の背面図であり、図1においてスタックエンドプレート12と接触する面に相当している。平板部21の表面に各流体通路の一部が開口として現れており、配管部品20をスタックエンドプレート12に取り付ける際には、これらの開口の周囲にビードを焼き付けた上で、シーリングを行いながら装着する。なお、図4でも示したように、平板部21のスタックエンドプレート12と接触する面は平坦面となっている。よって、シーリングを容易かつ確実に行う(密着性が高くする)ことができる。
【0079】
また、図示しないが、本実施形態における燃料電池スタック10の各マニホールドの形状は、図5に示した各流体通路の形状と同一である。すなわち、平板部21がスタックエンドプレート12に装着された際に、平板部21に備えられる貫通孔と同様の形状のマニホールドが、燃料電池スタック10内にそのまま延びる構成となっている。例えば、水素入口通路24と連通するアノードガス供給マニホールドは、水素入口通路24と同一形状、同一寸法の円形の断面形状を有している。また、空気入口通路32、空気出口通路36と連通するカソードガス供給マニホールド、カソードガス排出マニホールドについては、その断面が、図5にあるような細長いスリット状の形状になっている。なお、このスリット形状は、流入する空気の配流性の均一化を図るため、長手方向で大小関係を持っていてもよい。
【0080】
図6は、配管部品20を更に詳細に説明するための図であり、また、配管部品20に他の配管を取り付けた際の状態を示す図である。図6では、各管路部のスタックエンドプレート12と接触しない側の端部(すなわち、マニホールドと直接接続されない側の端部)に、配管60、62、64、66、68をそれぞれ取り付けた状態を示している。実施の形態1における配管部品20は、複数の流体通路が纏まって同一箇所(図6紙面左下側、右下側のそれぞれ)に位置し、かつ、それらの纏まった流体通路の端部が同一方向(図6紙面左方または右方)に向かって延びている。従って、配管60〜68についても、同様に、同一箇所に纏まって、かつ同一方向に向いて延びるように取り付けられることになる。
【0081】
図7は、図6に示した一点鎖線のそれぞれに沿って配管部品20を切断した際の切断面を示す図である。図7(a)では、配管部品20のA−A線に沿う位置、すなわち、水素入口管路部22と冷却液出口管路部40とが交差している部位の切断面を示している。図に示すように、当該位置では、水素入口通路24と冷却液出口通路42が隣接している。
【0082】
これと同様に、B−B線〜E−E線に沿う断面図のそれぞれにおいても、複数の管路部が接触したり、立体的に交差、重なったりしている部位で、流体通路が隣接していることがわかる。また、図7(a)と図7(b)を比較すると分かるように、空気出口通路36は、水素入口通路24に比して、平板部21からの距離が相対的に大きくされている。
【0083】
上述のように、本実施形態における配管部品20は、樹脂材料により一部品として成型されている。実施の形態1では、配管部品20を形成する樹脂材料として、ガス透過性が抑制された材料、特に、水素透過性が低い材料という観点から、ポリプロピレン樹脂を用いることとする。
【0084】
図8(a)(b)は、実施の形態1のシステムにおけるスタックケースの一例の斜視図である。スタックケース90は、その内部に、上述した燃料電池スタック10、配管部品20を有している(それぞれ破線で示す)。また、図8に示すように、スタックケース90の一つの面側には配管92、94、98が、他方の面側には配管96、100、102が、纏めて配置されている。上述したように、配管部品20の各管路部のスタックエンドプレート12に接触しない側の端部は、燃料電池スタック10の端面と平行に延びている。その結果、スタックケース90外側への配管の引き出し方向も同様に、燃料電池スタック10の端面と平行に延びるようになっている。
【0085】
[実施の形態1の効果]
燃料電池スタックには、発電を行うに当たり、水素、空気、冷却液といった複数種類の流体を供給する必要がある。従って、燃料電池スタックには、それぞれの流体の供給用に、内部のマニホールドへのガス等の流通を仲介するための配管が取り付けられる。
【0086】
組み付け性などの観点からは、これらの配管は簡素であることが望ましく、組み付け性の向上、部材点数の削減など総合的な観点から、更なる改善が求められている。そこで、実施の形態1では、上述したように、内部に複数の流体通路が形成され、樹脂材料により一体的に形成された一部品からなる配管部品20を用いて、システムを構成している。
【0087】
従来のように部品点数が多い場合には、組み付け工数が増加し、また、部品一つ一つの製造交差や取り付け公差が相乗的に影響して、組み付け性の悪化を招きやすい。この点、実施の形態1のシステムでは、燃料電池スタック10に、一部品の配管部品20を取り付けるのみの極めて簡易な構成で、燃料電池スタック10内部のマニホールドの全て(実施の形態1では、アノードおよびカソードにおけるガス供給マニホールドおよびガス排出マニホールド、冷却液流通マニホールドの全て)を、のこらず、配管部品20の各流体通路に接続することができる。従って、部品点数を削減でき、極めて容易に組み付けを行うことができる。
【0088】
また、配管部品の数が多い場合には、それに応じて、部品ごとにシール性(各流路の密閉性)が確保されているか否かの確認を行う必要がある。このような場合には、シール性の確認に要する工数も当然に多くなり、製造効率やメインテナンスの容易性といった観点からも好ましくない。この点、実施の形態1によれば、一部品の配管部品20を取り付けるのみの極めて簡易な構成となっているので、シール性の確保を一括して行うことができ、極めて効率よくシステムを構成することができる。
【0089】
また、実施の形態1の配管部品20は、樹脂材料により形成されている。複数の流体通路を有する一部品の配管部品を製造する上では、その製造容易性も求められる。一方、燃料電池は、発電時における外部への絶縁性の確保も要求されており、燃料電池スタックの周辺部品についても絶縁性の確保が求められる。この点、本実施形態の配管部品20においては、樹脂材料が、一般的な製造容易性の効果を発揮するのみならず、燃料電池スタックに取り付ける配管部品として求められる絶縁性も実現するという、極めて有効な材料として機能している。
【0090】
更に、実施の形態1によれば、配管部品20の材料を、水素透過性が抑えられた樹脂材料として、ポリプロピレン樹脂としている。このようにすることで、配管部品20を一体的に形成しつつ、水素入口通路24および水素出口通路28を確実に封止(水素洩れを確実に防止)することができる。そして、実施の形態1の手法によれば、他の手法、例えば、水素が流れる流体通路の内面にコーティングを施して水素透過を抑制するような手法に比して、より確実かつ容易に、水素の封止を実現することができる。
【0091】
また、配管部品20内の各流体通路(水素入口通路24、水素出口通路28、空気入口通路32および空気出口通路36を有している)は、燃料電池スタック10のガス供給マニホールド、ガス排出マニホールド(アノード、カソード両方を含む)にそれぞれ連通する。このような構成によれば、ガス供給マニホールドとガス排出マニホールドという異なる種類のマニホールドを有する燃料電池スタックにおいても、部品点数を削減でき、配管部品の組み付けを極めて容易に行うことができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、上述したように、その内部を冷却液が流れる冷却液出口管路部40と、水素出口管路部26および空気出口管路部34とが接触している。これにより、図7の断面図でも述べたように、冷却液出口通路42と、水素出口通路28および空気出口通路36が樹脂材料を介して隣接することになる。このような構成によれば、冷却系を流通する冷却液と、ガス排出マニホールドを流れるオフガスとが、樹脂材料を介して隣接して流れることになる。その結果、それらのガス間で熱交換を行うことができ、例えば燃料電池システムのガス排出系の凍結防止などの効果を得ることができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、上述したように、冷却液が流れる冷却液出口管路部40と、水素入口管路部24とが接触している。これにより、図7でも示したように、水素入口通路24と冷却液出口通路42が隣接する構成になっている。水素タンクに高圧状態で貯蔵される水素は、大気状態が低温の状況下では、低圧側への放出時に更に温度が低下する。このような低温な水素が直接燃料電池スタック内へと流れ込むと、温度差に起因して、シール機能がダメージを受けるおそれがある。この点、本実施形態によれば、冷却液を用いて、燃料電池セルに供給される上記の低温の水素を暖めることができる。その結果、上述のような弊害を防止し、良好な温度状態で燃料電池を発電させることができる。
【0094】
加えて、本実施形態では、配管部品20が樹脂材料で形成されている。このため、上述した各種の流体の熱交換をより効果的に実現し、ガス排出系の凍結防止や燃料電池に供給する水素の加熱をより効果的に実現できるという、相乗的な効果を得ることができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、流体通路の端部が、燃料電池スタック10の端面(スタックエンドプレート12の表面)と略平行に延びる構成となっている。燃料電池スタック10内のマニホールドは、積層された複数の燃料電池セルを貫通しているため、燃料電池スタック10の端面と垂直な方向に延びている。これに合わせて、配管の向きを当該端面に垂直な方向にすると、燃料電池スタック周辺の構造が一方向に偏って大きな寸法を有することになる。
【0096】
燃料電池システムがある程度の出力を確保する必要がある状況下、例えば、車両搭載時などは、燃料電池セルの積層枚数も数百枚単位となる場合が多い。このため、燃料電池スタックの形状は、セルの積層方向に大きくなる傾向にある。一方、燃料電池システムを限られたスペースに設置する状況下では、燃料電池スタック周辺構造の寸法も可能な限り小型化することが必要不可欠である。
【0097】
特に車両搭載時などには、極めて限られたスペースに多数の部品を設置する必要がある。このような場合、燃料電池スタック周辺の寸法がセル積層方向に偏って大きくなると、設置スペースが限られ、レイアウトの自由度も損なわれてしまう。この点、本実施形態によれば、配管部品の寸法が燃料電池セルの積層方向に過大になるのを防ぐことができ、配管を配管部品20として一部品に構成したことによる効果と合わせて、省スペース化の効果を相乗的に得ることができる。
【0098】
更に、本実施形態によれば、図3(a)などに示すように、水素入口通路24、水素出口通路28、空気出口通路36の端部が、燃料電池スタック10の端面と略平行にかつ略同一方向(図2の紙面左方)に延びている。また、図3(b)などに示すように、空気入口通路32、冷却液出口通路42および冷却液入口通路46の端部が、燃料電池スタック10の端面と略平行にかつ略同一方向(図2の紙面右方)に延びている。流体通路の端部の向きが何ら統一されず、ばらばらの方向になると、各流体通路に更に継ぎ足される他の配管部品がばらばらの方向に延びることになる。その結果、スペースの利用効率が悪くなり、燃料電池スタック10周辺構造が不要に大型化されてしまう。この点、本実施形態によれば、流体通路の端部の向きがばらばらになり燃料電池システムの設置スペースが大きくなってしまうのを防ぐことができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、各流体通路が燃料電池スタック10の端面と略平行になるように延びている。このような構成によれば、配管部品の寸法が燃料電池セルの積層方向に過大になるのを防ぐことができ、既述したような弊害を効果的に回避することができる。
【0100】
そして、本実施形態によれば、各流体通路が燃料電池スタック10の端面に略平行に延びるとともに、当該各流体通路の端部が燃料電池スタックの端面と略平行に延びている。従って、上述した二つの効果を相乗的に得ることができ、燃料電池スタック周辺の構造が燃料電池セルの積層方向に過大になるのを、更に効果的に防ぐことができる。
【0101】
また、本実施形態では、一部品の配管部品20中に、複数の流体通路を三次元的に形成(平板部21上で、立体的に交差、重なるように形成)している。燃料電池が発電を行う際には、水素を含む反応ガス(アノードガス)、空気(カソードガス)、冷却液といった、複数種類の異なる流体を供給する必要がある。これに起因して、各々の流体を燃料電池セルへと供給するためのガス供給孔などが、セル面内に四散して配置される場合がある(例えば、特開2005−116226号公報)。このような場合、それらの燃料電池セルを積層した結果形成されるマニホールドの位置も、当然に燃料電池スタック端面の面内に四散して配置されることになる。
【0102】
このような構成に対して、複数の配管を適宜組み付けてそれらの配管を三次元的に配置するような場合、組み付けが一層煩雑になると共に、部品一つ一つの製造交差や取り付け公差が相乗的に影響して、取りつけ位置がずれたり干渉したりする恐れがあるなど、組み付け性の悪化を招きやすい。この点、本実施形態では一部品に複数の流体通路を形成し、これを燃料電池スタックに取り付けるのみとしているので、複数の配管を複雑なレイアウトに組み付ける必要がなく、配管部品の構成を極めて簡素にすることができる。
【0103】
具体的には、例えば、本実施形態の配管部品20によれば、冷却液出口通路42と冷却液入口通路46とが、燃料電池スタック10の端面に垂直な方向に重なるように位置している。これにより、複数の流体通路を、干渉を確実に避けつつ、一部品中に設けることができる。よって、マニホールドの位置関係に係らず、複数の流体通路を有する一部品の配管部品20を得ることができる。
【0104】
また、種類の異なる流体のそれぞれを効率よく燃料電池セルに供給する観点からは、マニホールドの形状も種々の形状が取られ得る。具体的には、本実施形態の燃料電池スタック10の場合には、図5に示すような種々の形状のマニホールドとなっている。このように、マニホールドが様々な形状となって複雑化すると、同一平面状に干渉を避けつつ複数の流体通路を配置することが困難になる。この点、本実施形態では、各流体通路を三次元的に配置しているので、複雑なマニホールド形状に対応しうる流体通路を、一部品に形成することができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、一部品の配管部品20中に、複数の流体通路を立体的に交差させて形成している。このような構成によれば、上述したように、複雑なマニホールド形状に対応しうる流体通路を一部品に形成することができる。
【0106】
また、本実施形態によれば、冷却液が流れる流体通路と、アノードオフガスまたはカソードオフガスが流れる流体通路とが、三次元的に重なり、隣接して流れている。これにより、複雑な配管の構成を一部品で実現し、冷却液とオフガスと熱交換を行うことができるという相乗的な効果を得ることができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、空気出口通路36が、水素入口通路24よりも、平板部21からの距離が大きくなっている。このような構成によれば、複数の流体通路のうち、水素が流通する流体通路を、相対的に内側(平板部21側)に配置することができる。その結果、他の流体通路(管路部)によって水素入口通路24を保護し、外部から受ける衝撃などから水素が流れる流体通路を守ることができる。
【0108】
また、本実施形態によれば、空気入口通路32および空気出口通路36の空気の流通方向に垂直な断面、あるいは、冷却液出口通路42や冷却液入口通路46の冷却液流通方向に垂直な断面が、略矩形形状となっている。このような構成とすることで、二つの流路をより近接して形成させることができ、配管部品の寸法をより小さなものとすることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、空気入口通路32および空気出口通路36の空気流通方向の断面形状が、マニホールドに接続する側から、緩やかに変化する構成となっている。流体の流通方向の断面形状が急激に変化すると、圧力損失が大きくなるなど、円滑な流れを阻害する恐れがあり好ましくない。この点、本実施形態によれば、ガスおよび冷却液の流れを円滑に保つことができる。
【0110】
また、本実施形態によれば、配管部品20の一方の箇所に、水素入口通路24、水素出口通路28および空気出口通路36の端部が集合する構成となっている。また、配管部品20の他方の箇所に、空気入口通路32、冷却液出口通路42および冷却液入口通路46の端部が集合する構成となっている。このように、流体通路の端部をばらばらに配置せず、特定の箇所に集合させることにより、配管部品20に更に取り付けられる、他の配管などの部品の組み付け性を向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、配管部品20が、平板部21に複数の管路部が一体的に設けられた構成となっている。このような構成によれば、平板部21とスタックエンドプレート12との間のシール性を確保することが容易となる。また、本実施形態によれば、内部に貫通流路が設けられた管状の管路部(例えば、水素入口通路24を内部に有する水素入口管路部22)が、平板部21に一体化されることで、配管部品20が構成されている。このような構成によれば、余分な材料を用いることなく、配管部品20の軽量化、小型化を行うことができる。
【0112】
尚、上述した実施の形態1では、燃料電池スタック10が前記第1の発明における「燃料電池スタック」に、配管部品20が前記第1の発明における「配管部品」に、それぞれ相当している。また、配管部品20の裏面(図5)が、前記第1の発明における、「前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位」に、配管部品20が備える水素入口通路22などの複数の流体通路が、前記第1の発明における「複数の流体通路」にそれぞれ相当している。
【0113】
尚、上述した実施の形態1では、冷却液出口通路42および冷却液入口通路46が、前記第4の発明以降の発明における「前記冷却液流通マニホールドに接続する流体通路」に、水素出口通路28および空気出口通路36が、前記第4の発明以降の発明における「前記ガス排出マニホールドに接続する流体通路」に、それぞれ相当している。
【0114】
尚、上述した実施の形態1では、水素入口通路24が、前記第5の発明における「前記水素供給マニホールドに接続する流体通路」に相当している。また、配管部品20が備える全ての流体通路が、前記第6の発明における「前記マニホールドと接続しない側の端部が前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行な方向に延びるように形成されている流体通路」に相当している。
【0115】
尚、上述した実施の形態1では、配管部品20が備える全ての流体通路が、前記第7の発明における「前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる部分を有する流体通路」に相当している。また、上述した実施の形態1では、例えば、冷却液出口通路42が前記第8の発明における「第1流体通路」に、冷却液入口通路46が前記第8の発明における「第2流体通路」に、それぞれ相当している。
【0116】
尚、上述した実施の形態1では、例えば、冷却液出口通路42が前記第10の発明における「第1流体通路」に、空気出口通路34が前記第10の発明における「第3流体通路」に、それぞれ相当するとともに、第11の発明おける第1流体通路、第2流体通路にもそれぞれ相当している。
【0117】
尚、上述した実施の形態1では、水素入口通路24が、前記第12の発明における「前記水素供給マニホールドに接続される流体通路」に、空気出口通路36が、前記第12の発明における「前記水素入口通路よりも前記燃料電池スタックの前記一つの面からの距離が相対的に大きい流体通路」に、それぞれ相当している。
【0118】
尚、上述した実施の形態1では、水素入口通路24、水素出口通路28および空気出口通路36が前記第15の発明における「前記マニホールドに接続しない側の端部が、前記配管部品の略同一箇所に配置されている流体通路」に相当している。また、空気入口通路32、冷却液出口通路42および冷却液入口通路46も、前述の水素入口通路24等とは異なる位置でありながらまとまって略同一箇所に配置されており、前記第15の発明における「前記マニホールドに接続しない側の端部が、前記配管部品の略同一箇所に配置されている流体通路」に相当している。
【0119】
また、上述した実施の形態1では、平板部21が、前記第20の発明における「平板部」に、配管部品20が備える水素入口管路部22などの複数の管路部が、それぞれ、前記第20の発明における「管路部」に、それぞれ相当している。また、配管部品20が、第21の発明の「配管部品」に相当している。
【0120】
なお、本実施形態における配管部品20は、「マニホールドと接続しない側の端部が燃料電池スタック10の一つの面と略平行な方向に延びるように形成されている流体通路のうち、すくなくとも2つの流体通路は、略同一方向に延びている」という特徴も有している。その結果、流体通路の端部の向きがばらばらになり燃料電池システムの設置スペースが大きくなってしまうのを防ぐことができる。
【0121】
上述した実施の形態1では、水素入口通路24、水素出口通路28および空気出口通路36が、上記の特徴の「略同一方向に延びている流体通路」に相当している。また、空気入口通路32、冷却液出口通路42および冷却液入口通路46も、前述の水素入口通路24等とは異なる方向でありながらまとまって同一方向に延びており、上記の特徴の「略同一方向に延びている流体通路」に相当している。
【0122】
また、本実施形態の配管部品20は、「燃料電池スタック10の一つの面と略平行に延びる部分を有する流体通路は、マニホールドと接続しない側の端部が燃料電池スタック10の一つの面と略平行な方向に延びるように形成されている」という特徴も有している。このような構成によれば、配管部品の寸法が燃料電池セルの積層方向に過大になるのを効果的に防ぐことができる。
【0123】
[実施の形態1の配管部品の製造方法]
図9、10は、本実施形態における配管部品20の製造方法の一例を説明するための図である。上述したように、配管部品20は、複数の流体通路を内部に有する、樹脂製の一部品からなる配管部品である。このように、樹脂製の一部品に複数の流体通路(即ち、溝や貫通孔、中空部)を形成する手法は、従来の公知の製造技術、あるいはそれらを適宜組み合わせることで実現可能な技術である。以下の説明では、特に、本実施形態の配管部品を形成する際に好適な手法の一例として、中空状の樹脂成型品を製造する工程の一部分について説明する。
【0124】
図9は、本実施形態の配管部品20製造に応用される、中空樹脂成型品の製造工程を説明するための図である。図9(a)は、当該中空樹脂成型品の製造工程のうち、樹脂射出の工程を示す図である。図に示すように、本工程では、金型152と金型154とが用いられる。金型154は、スライド用油圧シリング150に連結されている。樹脂射出の工程では、金型152と金型154とが図9(a)のように組合された状態で樹脂材料が供給され、樹脂成型品160が形成される。
【0125】
続いて、図9(b)に示すように、型開き、ランナーの取出し及びダイスライドが行われる。具体的には、この工程では、先ず、金型152と金型154とが離間され、ランナーが取り出される。これにより、樹脂成型品160が樹脂成型品162、166に分割される。その後、金型154がスライド用油圧シリンダ150側へと引かれ、ダイスライドが行われる。次に、図9(c)に示すように、金型152と金型154が嵌合され、樹脂成型品162、166が組合された状態で射出接合が行われる。その結果、図9(c)の樹脂成型品170が形成される。その後、図9(d)に示すように再度型開きがなされ、中空の樹脂成型品170が取り出される。以上の工程により中空状の樹脂成型品を作製することができ、この手法を応用することで、本実施形態の配管部品20を形成することができる。
【0126】
また、図10は、上述した配管部品20の製造工程の一例のうち、中空構造が隣接している部位の製造方法の一例を説明するための図である。具体的には、図10は、例えば図7(b)に示すような、空気入口出口通路36と冷却液出口通路42とが隣接している部位を製造する手法の一例を示す図である。図10の手法では、先ず、上述した図9の手法を用いて樹脂成型品180、182を接合して一部品とし、中空部184を形成する(図10(a)(b))。その後、図10(c)に示すように、部分的に樹脂材料190を付加して、中空部192を形成する。このような手法により、中空構造が隣接している部位を形成することが可能である。
【0127】
なお、配管部品20を形成するにあたっては、上記の製造方法になんら限られない。例えば、別々の樹脂成型金型で2以上の部品を形成した後それらを更に一体化させるなど、種々の製法を用いて、配管部品20を製造すればよい。
【0128】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例「配管部品への各種機器の一体化」)
実施の形態1では、複数の管路部を備える配管部品20を用いて、燃料電池システムを構成した。これに対し、第1変形例では、当該配管部品20に、燃料電池スタック10へ供給するガスや冷却液の流量を調整する機器や、燃料電池スタック10内におけるガスの圧力を検知する圧力センサを更に一体化したものを用いて、燃料電池システムを構成することとする。
【0129】
図11は、実施の形態1の第1変形例に係る配管部品220を説明するための図である。図11は、配管部品220の正面図であり、実施の形態1における図2に相当する図である。図11に示すように、配管部品220は、水素入口管路部222、水素出口管路部226、空気入口管路部230、空気出口管路部234、冷却液入口管路部240、冷却液出口管路部244を有している。これらの管路部は、実施の形態1における配管部品20の管路部と同様に、その内部に流体通路をそれぞれ有し、平板部221上に一体的に形成されて一部品を構成している。
【0130】
第1変形例の配管部品220は、水素入口管路部222の端部に水素調圧弁を、水素出口管路部226の端部に水素排出弁を、空気出口管路部234に空気調圧弁250を、それぞれ有している。図12は、空気調圧弁250の一例としての、長尺のバタフライ弁である。また、図13は、図11のA−A線に沿う断面図を示している。
【0131】
第1変形例では、このように種々の圧力制御機器が一体化された配管部品220を、実施の形態1と同様に、燃料電池スタック10に組み付けることとする。その結果、第1変形例によれば、各圧力制御機器を配管部品220とともに一部品化しておくことにより、燃料電池スタックへのそれらの部品の取り付けを極めて容易に行うことができるとともに、部品点数の削減や、組み付け性の向上を達成することができる。
【0132】
なお、上述した第1変形例では、燃料電池スタック10のマニホールド内の圧力を制御する圧力制御機器を、配管部品220に一体化した。しかしながら、これら圧力制御機器以外にも、配管部品220に、マニホールドを流通する流体の流量を制御する流量制御機器として、水素循環ポンプなどのポンプや種々の弁を一体化したり、マニホールド内のガスの圧力を検知する圧力センサを一体化したりしてもよい。
【0133】
図14に、図11の第1変形例に圧力センサ及び水素循環ポンプを更に一体化した場合の一例を示す。図14の配管部品220は、水素入口管路部222と水素出口管路部226とを接続する水素循環管路部223を有している。水素循環ポンプを駆動することにより、水素循環管路部223内の水素循環用の流体通路を介して水素を循環させることができる。
【0134】
なお、上述した第1変形例の図11では、水素調圧弁、空気調圧弁などが、前記第17の発明の「圧力制御機器」に相当している。また、図11の水素排出弁や、図14の水素循環ポンプが、前記第18の発明の「流量制御機器」に相当している。また、図14の圧力センサが、前記第19の発明の「圧力センサ」に相当している。
【0135】
(第2変形例「流体通路、管路部の他の形態」)
実施の形態1では、図5を用いて説明したように、燃料電池スタック10内のマニホールドが、円形、矩形、スリット状などの種々の形状を有している。しかしながら、本発明の燃料電池スタックにおけるマニホールドの形状や位置は、これになんら限定されるものではない。燃料電池スタック内に複数のマニホールドを有し、当該マニホールドが燃料電池スタックの端面まで延びている構成であれば、本発明の思想を適用することができる。
【0136】
図15は、実施の形態1の第2変形例に係る配管部品320を説明するための図である。図15の破線は、平板部321に形成される貫通孔をそれぞれ示しており、各館通孔の形状および大きさは、図15の紙面裏面側に取り付けられる第2変形例に係る燃料電池スタックのマニホールドの形状に対応している。そして、第2変形例では、それらの貫通孔位置に対応するように、水素入口管路部322、水素出口管路部326、空気入口管路部330、空気出口管路部334、冷却液入口管路部340、冷却液出口管路部344が設けられている。
【0137】
このように、燃料電池スタックのマニホールドの位置、形状に対応させて、各管路部の形状を定めることとすればよい。また、図15に示した以外の種々のマニホールド形状を有する燃料電池スタックに対しても、適宜流体通路の配置、形状を対応させて、配管部品を形成すればよい。
【0138】
また、実施の形態1では、冷却液出口通路42と、水素入口通路24、水素出口通路28および空気出口通路34とを、三次元的に交差させて隣接して配置することにより、熱交換を促進した。一方、上述したように、流体通路の配置は実施の形態1に何ら限定されるものではなく、種々の配置をとることができる。例えば、他の変形例として、燃料電池スタック10の端面と略平行に延びるように冷却液出口通路42を形成し、当該端面に垂直な方向に冷却液出口通路42から離れた位置で当該冷却液出口通路42と重なるように、水素入口通路24などを形成することができる。
【0139】
このようにすることで、前記第10の発明における「第1流体通路」と「第2流体通路」に相当する構造を実現できる。
【0140】
(第3変形例「配管部品の他の形態の例」)
実施の形態1では、平板部21に複数の管路部を一体的に設けることにより、複数の流体通路を有する一部品の配管部品20を構成している。しかしながら、本発明の燃料電池システムが備える配管部品は、これに限られるものではない。複数の流体通路を有する樹脂製の一部品からなる配管部品であれば、必ずしも実施の形態1で示したような平板部21と複数の管路部を備えるような構成でなくともよい。具体的には、例えば、図16に示すように、直方体形状の樹脂製の部材の中に、流体通路422、424、426などの複数の流体通路が形成されている配管部品420としてもよい。
【0141】
なお、配管部品20および配管部品420は、「燃料電池スタック内部に備えられる複数のマニホールドにそれぞれ連通する複数の流体通路が一部品に設けられてなり、該燃料電池スタックの該複数のマニホールドのそれぞれの出入口が備えられる一つの面に接触する部位を備え、前記複数の流体通路は該部位の前記複数のマニホールドの出入口に対応する位置からその内部を貫通して延びていることを特徴とする樹脂製の配管部品」とも言うことができる。
【0142】
(第4変形例「配管部品を形成する材料」)
配管部品20を形成する樹脂材料は、実施の形態1で述べた材料に限られない。上述したように、配管部品20は、水素透過性が抑制された樹脂材料を用いて一体的に形成されるという態様が好ましい。従って、材料を選択する際には、製造時の成型性が良好である点、燃料電池システムを構成する配管として十分な絶縁性を備えている点、水素透過性が抑えられている点を考慮し、総合的に判断して好適な材料を選択することとすればよい。例えば、ポリプロピレン樹脂以外にも、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂などを用いてもよい。
【0143】
一方、本発明にかかる配管部品を形成するに当たり、水素透過性が抑えられた材料で一体的に成型されることが常に求められるというわけではない。例えば、水素が流通する流体通路(実施の形態1では、水素入口通路24および水素出口通路28)の内部にコーティングを施したり、水素入口管路部22および水素出口管路部26を局所的に水素透過性を抑えた樹脂材料で形成して、他の管路部とともに一体化して配管部品20を形成したりするなど、種々の変形を行うことができる。このような、水素透過性が低いコーティング材料(樹脂を含む種々の水素難透過性の材料)に関しては、既に公知となっている種々の材料を用いることができる。
【0144】
尚、上述した種々の材料が、少なくとも、前記第22の発明における「水素透過性が抑制された樹脂材料」に含まれている。
【0145】
(その他変形例)
なお、上述した実施の形態1では、流体間(より具体的には、冷却液とアノードオフガス、カソードオフガスとの間)で熱交換を行う目的で、配管部品20内で各流体通路を隣接させている。しかしながら、このような構成は必要に応じてなされればよく、必ずしも流体通路が熱交換の目的で隣接して配置されなくともよい。即ち、流体通路が離間して配置されてもよい。また、実施の形態1では、冷却液出口通路42を、他の流体通路と隣接することで、熱交換を促進した。しかしながら、熱交換は、必ずしも燃料電池スタックへと流れ込む冷却液との間でなされなくともよい。すなわち、冷却液出口通路42のかわりに冷却液入口通路46を他の流体通路と隣接させて、燃料電池スタックを冷却した結果より高温となった状態の冷却液を用いて、アノードオフガスやカソードオフガスなどを加熱してもよい。
【0146】
なお、上述した実施の形態1では、配管部品20に設けられた流体通路を、その端部の向きが燃料電池スタック10の端面に平行な方向となるように構成した。また、各流体通路が、燃料電池スタック10の端面に平行に延びるように構成した。しかしながら、このような構成は必要に応じてなされればよく、全ての流体通路がこのような構成を常に求められるわけではない。例えば、必要に応じ、流体通路の向きを、燃料電池スタック10の端面と垂直とすることもできる。
【0147】
なお、上述した実施の形態1では、配管部品20の各流体通路が、配管部品20内で三次元的に配置(立体的に交差、重なるように配置)されている。しかしながら、このような構成は必要に応じてなされればよく、本発明の燃料電池システムの配管部品において、流体通路を三次元的に配置することが常に求められるものではない。即ち、具体的には、複数の流体通路を、平板部21上の同一平面内に二次元的に配置するような構成としてもよい。
【0148】
また、上述した実施の形態1における、水素入口通路24の平板部21からの距離や、各流体通路の断面形状が矩形とされている点、流体通路の端部が配管部品20の特定の箇所に纏められている点なども、適宜組み合わせて用いられればよく、必ずしも必須のものではない。また、実施の形態1では、空気入口通路32と空気出口通路36の流路断面が、マニホールド側から緩やかに小さくなる構成とされた。しかしながら、この構成は必ずしも必須のものではなく、流路断面の形状、大きさは必要に応じて変化させればよい。また、他の流体通路についても、必要に応じ、流路断面の変化を緩やかなものとしてもよい。
【0149】
なお、上述した実施の形態1では、ガス供給マニホールドとガス排出マニホールドの両方を備える燃料電池スタックに対して、配管部品20を取り付けた。しかしながら、本発明はこれに限られるのもではなく、例えば、燃料電池に対して反応ガスを供給して発電に消費させるもののオフガスの排出を行わない、所謂アノードデッドエンド方式と呼称される方式の燃料電池システムに対しても、本発明の思想を用いることができる。この場合も、実施の形態1と同様に、燃料電池スタックの端部に露出するマニホールドの位置、形状に対応させて、複数の流体通路を備える樹脂製の一部品からなる配管部品を構成し、当該配管部品を用いて燃料電池システムを構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態1の製造方法の一例を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態1の製造方法の一例を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図14】本発明の実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0151】
10 燃料電池スタック
12 スタックエンドプレート
20 配管部品
21 平板部
22 水素入口管路部
24 水素入口通路
26 水素出口管路部
28 水素出口通路
30 空気入口管路部
32 空気入口通路
34 空気出口管路部
36 空気出口通路
40 冷却液出口管路部
42 冷却液出口通路
44 冷却液入口管路部
46 冷却液入口通路
60 配管
90 スタックケース
92 配管
96 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数のマニホールドを備え、一つの面に該複数のマニホールドのそれぞれの出入口を備える燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに取り付けられる配管部品であって、前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位を備え、該部位の前記複数のマニホールドの出入口に対応する位置から延びる複数の流体通路を備え、前記燃料電池スタックの前記一つの面に取り付けられた状態で前記複数の流体通路がそれぞれ対応する前記マニホールドに接続する樹脂製の一部品からなる配管部品と、
を有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記配管部品が備える前記複数の流体通路は、該配管部品の前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位における前記複数のマニホールドの出入口に対応する位置から、該配管部品の内部を貫通して延びていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記マニホールドは、前記燃料電池セルに供給するガスが流通するガス供給マニホールドと、前記燃料電池セルから排出されるガスが流通するガス排出マニホールドの両方を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記複数の流体通路のうち、前記冷却液流通マニホールドに接続する流体通路と、前記ガス排出マニホールドに接続する流体通路とが隣接して配置されることを特徴とする請求項3記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記ガス供給マニホールドは前記燃料電池セルに供給される水素が流通する水素供給マニホールドを含み、
前記複数の流体通路のうち、前記水素供給マニホールドに接続する流体通路と前記冷却液流通マニホールドに接続する流体通路とが隣接して配置されることを特徴とする請求項3または4のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記複数の流体通路は、前記マニホールドと接続しない側の端部が前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行な方向に延びるように形成されている流体通路を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記複数の流体通路は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる部分を有する流体通路を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記複数の流体通路は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる第1流体通路と、該第1流体通路よりも該一つの面から離れた位置で、該第1流体通路と重なるように延びる第2流体通路とを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記第1流体通路と前記第2流体通路のどちらか一方が前記冷却液流通マニホールドと接続し、他方がガス供給マニホールドまたはガス排出マニホールドに接続していることを特徴とする請求項8記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記複数の流体通路は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と略平行に延びる第1流体通路と、該第1流体通路よりも該一つの面から離れた位置で該第1流体通路と立体的に交差する第3流体通路とを含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記複数のマニホールドは、前記複数の燃料電池セルを冷却する冷却液が流通する冷却液流通マニホールドを含み、
前記第1流体通路と前記第3流体通路のどちらか一方が前記冷却液流通マニホールドと接続し、他方がガス供給マニホールドまたはガス排出マニホールドに接続していることを特徴とする請求項10記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記複数のマニホールドは水素が流通する水素供給マニホールドを含み、
前記複数の流体通路は、前記水素供給マニホールドに接続される流体通路と、前記水素入口通路よりも前記燃料電池スタックの前記一つの面からの距離が相対的に大きい流体通路とを含むことを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記流体通路の流体の流れる方向に垂直な断面が略矩形状にされていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記流体通路の流体の流れる方向に垂直な断面の形状及び大きさが、前記マニホールドと接続する側から緩やかに変化することを特徴とする1乃至13のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項15】
前記複数の流体通路のうち少なくとも2つの流体通路は、前記マニホールドに接続しない側の端部が、前記配管部品の略同一箇所に配置されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項16】
前記配管部品に、前記マニホールド内のガスの圧力を制御する圧力制御機器が一体化されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項17】
前記配管部品に、前記マニホールドを流通する流体の流量を制御する流量制御機器が一体化されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項18】
前記配管部品に、前記マニホールド内のガスの圧力を検知する圧力センサが一体化されていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項19】
前記配管部品は、前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する部位が略平坦な面に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項20】
前記配管部品は、
前記燃料電池スタックの前記一つの面に取り付けられる略平板状の平板部であって、該一つの面と接触する面の前記マニホールドに対応した位置に貫通孔を備える平板部と、
一端が前記貫通孔と連通して該貫通孔とともに前記流体通路を形成する管をその内部に有する管路部であって、前記平板部に一体化されて該平板部とともに一部品を構成する管路部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項21】
前記配管部品が、水素透過性が抑制された樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項記載の燃料電池システム。
【請求項22】
燃料電池スタック内部に備えられる複数のマニホールドにそれぞれ連通する複数の流体通路が一部品に設けられてなる、樹脂製の配管部品。
【請求項23】
前記燃料電池スタックの前記一つの面と接触する略平板状の平板部であって、該燃料電池スタックのマニホールドに対応した位置に貫通孔を備える平板部と、
一端が前記貫通孔と連通して該貫通孔とともに前記流体通路を形成する管をその内部に有する管路部であって、前記平板部に一体化されて該平板部とともに一部品を構成する管路部と、
を備えることを特徴とする請求項22記載の配管部品。
【請求項24】
水素透過性が抑制された樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項22または23のいずれか1項記載の配管部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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