説明

燃料電池システム

【課題】冷却器を迂回するバイパス通路を備える燃料電池システムであって、バイパス通路における圧損が小さい場合であっても空気の流路を切り換えることができる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システム1は、エア供給管23のうち冷却器22の上流側と下流側とを連通するバイパス管31と、エア供給管23に設けられ、冷却器22を流れるエア量を調整するバイパス弁32と、バイパス管31に開閉可能に設けられ、このバイパス管31の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブ33と、エア供給管23の冷却器22よりも下流側の内圧を、チェックバルブ33の背圧として導入する背圧導入管34と、背圧導入管34と外部とを連通する大気開放管35と、この大気開放管35に設けられて、大気開放管35を開閉するリリーフ弁351と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。詳しくは、エアを冷却する冷却器をバイパスする機能を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の新たな動力源として燃料電池システムが注目されている。燃料電池システムは、例えば、反応ガスを化学反応させて発電する燃料電池と、反応ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給装置と、この反応ガス供給装置を制御する制御装置と、を備える。
【0003】
燃料電池は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。ここで、各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成され、膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。
【0004】
この燃料電池のアノード電極に反応ガスとしての水素ガスを供給し、カソード電極に反応ガスとしての酸素を含む空気を供給すると、電気化学反応により発電する。この発電時に生成されるのは、基本的に無害な水だけであるため、環境への影響や利用効率の観点から、燃料電池が注目されている。
【0005】
ここで、カソード電極に供給される空気は、従来より、大気中の空気から取り込んだものが用いられる。具体的には、燃料電池システムに圧縮機を設け、この圧縮機で大気中の空気を圧送することにより、発電に必要な量の空気をカソード電極に供給する。しかしながら、圧縮されてその温度が上昇した空気を燃料電池に供給し続けると、上述の電解質膜が劣化してしまうため、空気が流れる通路上には、圧縮された空気を冷却する冷却器が設けられる。
【0006】
ところで、燃料電池システムを低温始動する場合には、安定した発電が可能となるまで、燃料電池を暖気する必要がある。そこで、特許文献1には、冷却器を迂回して空気を供給するバイパス機構を備える燃料電池システムが示されている。このバイパス機構は、主流路に設けられた冷却器を迂回するバイパス通路と、冷却器の出口側に設けられたバイパスバルブと、を含んで構成される。また、このバイパス機構では、バイパス通路の内圧と背圧との差分で開閉するチェックバルブをバイパス通路が設けられるとともに、主流路のうち冷却器の下流側の圧力をチェックバルブの背圧として導入する信号圧通路が設けられる。
【0007】
このバイパス機構によれば、バイパス弁を開いた状態で空気を供給することにより、供給された空気は冷却器を通って燃料電池に供給される。この際、信号圧通路内の圧力はバイパス通路の上流側の圧力と略等しくなるので、チェックバルブは閉じたままの状態となり、圧縮された空気は主流路のみを流通することとなる。
また、バイパス弁を閉じた状態で空気を供給すると、バイパス通路における圧損により信号圧通路内の圧力がバイパス通路の上流側の圧力よりも低くなるので、チェックバルブは開いた状態となり、圧縮された空気はバイパス通路のみを流通することとなる。
【0008】
ここで、例えば、燃料電池システムを低温始動する際には、バイパス弁を閉じた状態で空気を供給することで、圧縮された空気を、バイパス通路を流通させて燃料電池に供給することにより、燃料電池の暖気を促進することができる。
【特許文献1】特開2004−139866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、燃料電池の始動直後など、圧縮機から供給される空気の流量が少ない場合には、バイパス通路における圧損が小さくなるため、バイパス通路内の圧力と信号圧通路内の圧力との間で差分が生じにくくなり、チェックバルブが開かなくなってしまう場合がある。
【0010】
このような場合、空気の流量を多くすることで、バイパス通路内の圧力と信号圧通路内の圧力との差分を大きくすることにより、チェックバルブを開くことができるものの、必要以上の空気を供給するために圧縮機の消費電力が多くなってしまうおそれがある。このため、このような燃料電池システムを自動車に搭載した場合、自動車の燃費が低減するおそれがある。
【0011】
本発明は、冷却器を迂回するバイパス通路を備える燃料電池システムであって、バイパス通路における圧損が小さい場合であっても空気の流路を切り換えることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池システムは、反応ガスにより発電を行う燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)と、反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路(例えば、後述のエア供給管23)と、反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機(例えば、後述の圧縮機21)と、前記主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスの状態を変化させる状態変化装置(例えば、後述の冷却器22)と、前記主流路のうち前記状態変化装置の上流側と下流側とを連通するバイパス流路(例えば、後述のバイパス管31)と、前記主流路に設けられ、前記状態変化装置を流れる反応ガス量を調整するバイパス調整弁(例えば、後述のバイパス弁32)と、前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブ(例えば、後述のチェックバルブ33)と、前記主流路の前記状態変化装置よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路(例えば、後述の背圧導入管34)と、前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路(例えば、後述の大気開放管35)と、当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁(例えば、後述のリリーフ弁351)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、チェックバルブには、反応ガス供給機から供給されたガスの圧力が作動圧として導入され、さらに、主流路の状態変化装置よりも下流側の圧力が第1の連結流路を通って背圧として導入される。
ここで、第2の連結流路およびリリーフ弁を設けたので、リリーフ弁を閉じた状態では、チェックバルブに対して、主流路の状態変化装置よりも下流側の圧力が背圧として導入される。この状態から、リリーフ弁を開くことにより、第1の連結流路を大気に開放して、チェックバルブに大気圧を背圧として導入できる。つまり、リリーフ弁を開くことにより、チェックバルブに導入される背圧を補助して、作動圧と背圧との差分を大きくできる。その結果、わずかな作動圧でチェックバルブを開くことができる。
【0014】
このように、リリーフ弁を開くことでチェックバルブに導入される背圧を補助できるので、チェックバルブを小型化できる。
また、わずかな作動圧でもチェックバルブを開くことができるため、反応ガスの供給量が少なくても、反応ガスをバイパスさせることができるうえに、チェックバルブにおける圧損を小さくして、反応ガス供給機の消費電力を低減できる。
【0015】
この場合、前記第1の連結流路にはオリフィス(例えば、後述のオリフィス341)が設けられることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、第1の連結流路にオリフィスを設けることにより、チェックバルブに背圧として導入される圧力を低減でき、チェックバルブを開いた状態で保持しやすくできる。また、リリーフ弁を開いた場合に、主流路から第1の連結流路および第2の連結流路を介して大気に排出される反応ガスの量を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池システムによれば、リリーフ弁を開くことにより、チェックバルブに導入される背圧を補助して、作動圧と背圧との差分を大きくできる。その結果、わずかな作動圧でチェックバルブを開くことができる。また、リリーフ弁を開くことでチェックバルブに導入される背圧を補助できるので、チェックバルブを小型化できる。また、わずかな作動圧でもチェックバルブを開くことができるため、反応ガスの供給量が少なくても、反応ガスをバイパスさせることができるうえに、チェックバルブにおける圧損を小さくして、反応ガス供給機の消費電力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成を示すブロック図である。
燃料電池システム1は、燃料電池10と、この燃料電池10に反応ガスとしての水素ガスおよびエア(空気)を供給する供給装置20と、これら燃料電池10および供給装置20を制御する制御装置40とを有する。
【0020】
燃料電池10は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。このような燃料電池10は、アノード電極(陽極)側に水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側に酸素を含むエアが供給されると、これらの電気化学反応により発電する。
【0021】
燃料電池10は、この燃料電池10の出力を制限する電流制限器(VCU)12を介して、モータ13や高圧バッテリ(図示せず)に接続されている。燃料電池10で発電された電力は、モータ13および高圧バッテリに供給される。電流制限器12は、制御装置40から出力される電流制限値に基づいて、この電流制限値の範囲内で燃料電池10から取り出される電流を制限しながら、燃料電池10の電力をモータ13や高圧バッテリに供給する。
【0022】
供給装置20は、燃料電池10のカソード電極側にエアを供給する反応ガス供給機としての圧縮機21と、アノード電極側に水素ガスを供給するエゼクタ28と、を含んで構成される。
【0023】
エゼクタ28は、燃料電池10のアノード電極側をその経路に含む水素循環路25上に設けられ、図示しない水素タンクから供給された水素ガスを、この水素循環路25上で循環させる。また、この水素循環路25には、この水素循環路25内のガスを外部に排出する水素排出路26が分岐して形成されている。この水素排出路26の先端側には、パージ弁261が設けられている。
【0024】
圧縮機21は、主流路としてのエア供給管23を介して、燃料電池10のカソード電極側に接続されている。この圧縮機21は、大気に開放されたエア導入管27から導入されたエアを圧縮し、この圧縮したエアを、エア供給管23を介して燃料電池10に供給する。この圧縮機21は、制御装置40からの指令信号に応じて動作し、設定された圧縮比でエアを圧縮してエア供給管23にエアを供給する。
【0025】
燃料電池10のカソード電極側には、エア供給管23から導入されたエアを排出するエア排出管24が接続され、このエア排出管24の先端側には、背圧弁241が設けられる。
【0026】
また、エア供給管23には、圧縮機21から燃料電池10へ向かって順に、このエア供給管23を流れるエアの状態を変化させる状態変化装置としての冷却器22、および、このエア供給管23を流れるエアを加湿する加湿器29が設けられている。
【0027】
冷却器22は、熱交換器であり、圧縮機21から供給されるエアを熱交換により冷却する。圧縮機21で圧縮されたエアは、圧縮前の状態に比べて高温になるため、この高温のエアをそのまま加湿器29や燃料電池10などのデバイスに導入すると、これらデバイスが破損するおそれがある。特に、これらデバイスのうち、加湿器29に設けられた後述の中空糸膜は、その耐熱温度すなわち使用許可温度が最も低くなっている。そこで、エア供給管23に冷却器22を設けることにより、高温に圧縮されたエアを冷却して、加湿器29や燃料電池10を保護する。
【0028】
加湿器29は、いわゆる中空糸膜を用いた加湿装置である。具体的にはこの加湿器29は、水透過性の中空糸膜の束と、この中空糸膜束を収納するハウジングとを備える。加湿器29導入されたエアは、ハウジング内部で中空糸膜束と水分交換して加湿される。燃料電池10には、この加湿器29により加湿されたエアが供給される。燃料電池10における化学反応は上述のようにMEA膜で行われるが、このMEA膜の湿度がある程度確保できないと、イオンの交換が行われないため、この加湿器29でエアを加湿することにより、MEAの湿度をある程度確保する。
【0029】
ところで、この燃料電池システム1を始動する際、燃料電池10が低温の状態にある場合は、この燃料電池10を発電に適した温度まで暖機する必要がある。このため、燃料電池システム1を低温始動する際には、この暖機を促進するために、圧縮機21で圧縮されたエアを冷却器22で冷却せずに、そのまま加湿器29および燃料電池10に導入することが好ましい場合がある。そこで、エア供給管23には、冷却器22をバイパスするバイパス機構30が設けられる。
【0030】
図2は、バイパス機構30の構成を示すブロック図であり、冷却器22を介してエアを供給する状態を示す図である。図3は、バイパス機構30の構成を示すブロック図であり、冷却器22をバイパスしてエアを供給する状態を示す図である。
【0031】
バイパス機構30は、バイパス流路としてのバイパス管31と、バイパス調整弁としてのバイパス弁32と、チェックバルブ33と、第1の連結流路としての背圧導入管34と、第2の連結流路としての大気開放管35と、を備える。
【0032】
バイパス管31は、エア供給管23に接続され、冷却器22の上流側と下流側とを連通する。また、このバイパス管31の流路は、エア供給管23の流路よりも狭くなっている。
バイパス弁32は、エア供給管23のうち、冷却器22の下流側で、かつ、バイパス管31とエア供給管23との合流地点よりも上流側に設けられ、冷却器22を流れるエア量を調整する。
【0033】
チェックバルブ33は、バイパス管31に設けられ、このバイパス管31を開閉する。背圧導入管34は、バイパス管31のうちチェックバルブ33よりも下流側と、チェックバルブ33の後述の第2円筒部335側と、を接続する。これにより、背圧導入管34は、エア供給管23の冷却器22よりも下流側の内圧をチェックバルブ33に背圧として導入する。また、背圧導入管34には、背圧導入管34の流路を絞るオリフィス341が設けられている。このようなオリフィス341を設けることにより、チェックバルブ33に背圧として作用する圧力を低減させることができる。
【0034】
チェックバルブ33は、バイパス管31の内圧Pを作動圧として開閉する。より具体的には、チェックバルブ33は、バイパス管31の内圧Pと、背圧導入管34で導入された背圧Pとの差分が所定値未満では閉じており、所定値以上になると開く。具体的には、チェックバルブ33は、円筒状のバルブ本体331と、このバルブ本体331の内部に進退可能に設けられたピストン332と、このピストンを付勢するばね機構333と、を備える。
【0035】
バルブ本体331は、円筒状の第1円筒部334と、この第1円筒部334に接続された第2円筒部335と、を有する。この第1円筒部334と第2円筒部335との間には、ダイヤフラム336が設けられている。
ピストン332は、第2円筒部の内部に設けられ、第2円筒部の内部を仕切るダイヤフラム336と、このダイヤフラム336に設けられたロッド337と、を備える。
ばね機構333は、バルブ本体331を閉じる方向へピストン332を付勢する。
【0036】
エア供給管23は、バルブ本体331の第1円筒部334側の開口に接続され、背圧導入管34は、バルブ本体331の第2円筒部335側の開口に接続され、バイパス管31は、第1円筒部334のダイヤフラム336近傍に接続される。これにより、第1円筒部334の内部は、バイパス管31の内圧Pとなり、第2円筒部335の内部は、背圧導入管34で導入された背圧Pとなっている。
【0037】
このチェックバルブ33の動作は、以下のようになる。
すなわち、このチェックバルブ33では、PとPの差分が所定値未満の場合、ばね機構333により、バルブ本体331を閉じる方向へピストン332が付勢されることで、ダイヤフラム336により第1円筒部334が閉塞される。これにより、バイパス管31は閉じた状態となる。
一方、PとPの差分が所定値以上になると、この差圧により、ばね機構333の付勢力に抵抗して、ピストン332が後退し、バルブ本体331を開く。これにより、バイパス管31は開いた状態となる。
【0038】
大気開放管35は、背圧導入管34と大気圧に開放された外部とを連通する。リリーフ弁351は、大気開放管35に設けられ、この大気開放管35を開閉する。すなわち、このリリーフ弁351を開き、背圧導入管34を外部と連通することで、チェックバルブ33の背圧Pを大気圧近傍に下げて、PとPの差分を大きくし、チェックバルブ33の動作を補助することができる。
【0039】
次に、以上のように構成されたバイパス機構30の動作について説明する。
図2に示すように、圧縮機21で圧縮されたエアを、冷却器22に流通させる場合には、バイパス弁32を開くとともにリリーフ弁351を閉じる。
すると、圧縮機21で圧縮されたエアは、エア供給管23を流通する。この状態では、バイパス管31の内圧Pと背圧導入管34で導入された背圧Pは、略等しくなり、チェックバルブ33は閉じた状態で保持される。したがって、バイパス管31は閉じた状態となり、エアは冷却器22のみを流通することになる。
燃料電池システム1を通常運転する際には、上述のようにバイパス弁32を開きかつリリーフ弁351を閉じた状態にして、冷却器22を経由してエアを供給することにより、加湿器29および燃料電池10を耐熱温度以下の状態にして運転を継続させることができる。
【0040】
図3に示すように、圧縮機21で圧縮されたエアを、バイパス管31に流通させる場合には、バイパス弁32を閉じるとともにリリーフ弁351を開く。
すると、背圧導入管34で導入された背圧Pは、大気圧に近い圧力となる。これに対し、内圧Pは、圧縮機21で圧縮されたエアの圧力であるため、大気圧よりも高くなっている。よって、これらPおよびPに大きな差分が生じ、チェックバルブ33は、開いた状態で保持されることとなる。したがって、バイパス管31は開いた状態で保持され、エアはバイパス管31を流通する。
燃料電池システム1を低温始動する際には、上述のようにバイパス弁32を閉じかつリリーフ弁351を開いた状態にして、冷却器22を迂回してエアを供給することにより、燃料電池10の暖機を促進できる。
【0041】
ところで、燃料電池システム1を始動させた直後、燃料電池10の暖機を行っている間などは、エアの流量が特に少なくなっているため、バイパス管31における圧損が小さくPとPとの差分も小さくなり、チェックバルブ33が開きにくくなる場合がある。そこで、上述のように、バイパス弁32を閉じるとともに、リリーフ弁351を開き、このPとPとの差分を大きくすることで、チェックバルブ33を確実に動作させることができる。また、エアの流量が多い場合であっても、リリーフ弁351を開き、PとPとの差分を大きくすることで、チェックバルブ33における圧損を低減できる。これにより圧縮機21の消費電力を低減できる。
【0042】
図1に戻って、制御装置40には、この制御装置40から出力される制御信号に基づいて駆動するデバイスとして、上述のVCU12、圧縮機21、背圧弁241、パージ弁261、バイパス弁32などが接続されている。
【0043】
制御装置40には、図示しないイグニッションスイッチが接続される。このイグニッションスイッチは、燃料電池車の運転席に設けられており、運転者の操作に従って、オン/オフ信号を制御装置40に送信する。制御装置40は、イグニッションスイッチのオン/オフに従って、燃料電池10の発電を行う。
【0044】
ここで、イグニッションスイッチがオンにされたことに基づいて、制御装置40により、燃料電池10で発電する手順は、以下のようになる。
すなわち、図示しない水素タンクから、エゼクタ28を介して、燃料電池10のアノード側に水素ガスを供給する。また、圧縮機21を駆動させることにより、エア供給管23を介して、燃料電池10のカソード側にエアを供給する。
燃料電池10に供給された水素ガスおよびエアは、発電に供された後、燃料電池10からアノード側の生成水等の残留水とともに、水素排出路26およびエア排出管24に流入する。これら水素ガスおよびエアは、図示しない排ガス処理装置で処理されて、外部に排出される。
【0045】
本実施形態の燃料電池システム1によれば、以下の作用効果がある。
(1)チェックバルブ33には、圧縮機21から供給されたエアの圧力が作動圧として導入され、さらに、エア供給管23の冷却器22よりも下流側の圧力が背圧導入管34を通って背圧として導入される。
ここで、大気開放管35およびリリーフ弁351を設けたので、リリーフ弁351を閉じた状態では、チェックバルブ33に対して、エア供給管23の冷却器22よりも下流側の圧力が背圧として導入される。この状態から、リリーフ弁351を開くことにより、背圧導入管34を大気に開放して、チェックバルブ33に大気圧を背圧として導入できる。つまり、リリーフ弁351を開くことにより、チェックバルブ33に導入される背圧を補助して、作動圧と背圧との差分を大きくできる。その結果、わずかな作動圧でチェックバルブ33を開くことができる。
【0046】
このように、リリーフ弁351を開くことでチェックバルブ33に導入される背圧を補助できるので、チェックバルブ33を小型化できる。
また、わずかな作動圧でもチェックバルブ33を開くことができるため、エアの供給量が少なくても、エアをバイパスさせることができうえに、チェックバルブ33における圧損を小さくして、圧縮機21の消費電力を低減できる。
【0047】
(2)背圧導入管34にオリフィス341を設けることにより、チェックバルブ33に背圧として導入される圧力を低減でき、チェックバルブ33を開いた状態で保持しやすくできる。また、リリーフ弁351を開いた場合に、エア供給管23から背圧導入管34および大気開放管35を介して大気に排出されるエアの量を低減することができる。
【0048】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施形態に係るバイパス機構の構成を示すブロック図である。
【図3】前記実施形態に係るバイパス機構の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
20 供給装置
21 圧縮機(反応ガス供給機)
22 冷却器(状態変化装置)
23 エア供給管(主流路)
29 加湿器
30 バイパス機構
31 バイパス管(バイパス流路)
32 バイパス弁(バイパス調整弁)
33 チェックバルブ
34 背圧導入管(第1の連結流路)
341 オリフィス
35 大気開放管(第2の連結流路)
351 リリーフ弁(リリーフ弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスにより発電を行う燃料電池と、
反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路と、
反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機と、
前記主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスの状態を変化させる状態変化装置と、
前記主流路のうち前記状態変化装置の上流側と下流側とを連通するバイパス流路と、
前記主流路に設けられ、前記状態変化装置を流れる反応ガス量を調整するバイパス調整弁と、
前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブと、
前記主流路の前記状態変化装置よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路と、
前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路と、
当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1の連結流路にはオリフィスが設けられることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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