説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の発電が不要に制限されるのを抑制し、より効率的な発電を行なうことを課題とする。
【解決手段】セル電圧が所定負電圧よりも小さくなったときは燃料電池本体の発電を制限する発電制限手段を備えた燃料電池システムにおいて、セルのカソード触媒電極層の破壊を検知する検知手段(S101〜S104)と、カソード触媒電極層の破壊が検知されたときに、セル電圧の初期値から現在のセル電圧を減算することでセル電圧低下量を算出し、該セル電圧低下量に基づいて前記所定負電圧を補正する(S106、S107)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、複数のセルが積層されることで構成された固体高分子型燃料電池が知られている。このような燃料電池において、各セルは、電解質膜に一対の触媒電極層(カソード触媒電極層とアノード触媒電極層)が接合されることで形成されたMEA(Membrane Electrode Assembly)を有している。そして、各セルにおいて、酸素を含む酸化剤ガ
スがカソード触媒電極層に供給され、水素を含む燃料ガスがアノード触媒電極層に供給されることで、発電が行なわれる。
【0003】
このような燃料電池においては、発電に伴って生成された生成水の凍結等によって触媒電極層への反応ガスの供給(又は触媒電極層内での反応ガスの拡散)が阻害される場合がある。この場合、触媒電極層において異常反応が生じる。例えば、アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量が不足すると、水素がないにも関わらずアノード触媒電極層から電子を取り出すことになる。その結果、水の酸化反応(2H2O→O2+4H++4e-)の他、カーボンの酸化反応(C+2H2O→CO2+4H++4e-)や白金の溶出反応(Pt→Pt2++2e-)、さらには電解質成分の酸化反応等が生じる。このようなアノード触媒電
極層における異常反応はMEAの過剰な劣化や損傷を招く原因となる。
【0004】
そのため、アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が生じた場合、それを早期に検知することが重要である。ここで、燃料ガスの供給量不足となったアノード触媒電極層では、上記のような異常反応に起因して電位が上昇する。その結果、アノード電位がカソード電位よりも高くなる現象(逆電位現象)が生じ、セル電圧が負電圧となる場合がある。このとき、アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量が少ないほどアノード電位が高くなり、セルの負電圧はより小さくなる(即ち、負電圧の絶対値がより大きくなる)。そこで、セル電圧を測定し、該セル電圧が負電圧となり、その値が所定の閾値(以下、水素欠許容負電圧と称する)よりも小さくなったときに、アノード電位が過剰に高くなっている、即ちアノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲を超えていると判断する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲を超えたと判断された場合には燃料電池の発電を制限することで、MEAの劣化や損傷を抑制することが出来る。
【0005】
また、燃料電池システムに関しては、アノード触媒表面積を測定し、燃料電池の特性を回復させる制御を実行するか否かをその表面積に基づいて判断する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−277044号公報
【特許文献2】特開2007−207671号公報
【特許文献3】特開2005−150020号公報
【特許文献4】特開2008−21448号公報
【特許文献5】特開2007−52988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池においては、生成水の凍結等によってカソード触媒電極層への酸化剤ガスの供給が阻害される場合もある。そして、この状態で発電が継続されると、カソード触媒電極層の破壊が生じる場合がある。カソード触媒電極層の破壊が生じるとカソード電位が低下することになる。また、カソード触媒電極層の発電に有効な部分の表面積(以下、有効表面積と称する)が腐食等の劣化に伴い減少した場合も同様にカソード電位が低下する。
【0008】
カソード電位が低下すると、その状態でアノード触媒電極層への燃料ガスの供給量が不足した場合、逆電位現象が生じ易くなり、また、逆電位現象が生じたときのセルの負電圧がカソード触媒電極層が正常なときに比べてより小さくなる。そのため、実際のアノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内であっても、セルの負電圧が水素欠許容負電圧よりも小さくなる場合がある。この場合、アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電池の発電が制限される虞がある。
【0009】
また、カソード触媒電極層の破壊やその有効表面積の減少が生じた場合であっても、アノード電位を検出すれば、その検出値に基づいてアノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内を超えているか否かを正確に判定することが可能である。しかしながら、セルの負電圧を検出することに比べてアノード電位のみを検出することは困難である。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、燃料電池の発電が不要に制限されるのを抑制し、より効率的な発電を行なうことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カソード触媒電極層の破壊又は有効表面積の減少に伴うカソード電位の低下を考慮して、発電制限の閾値となる水素欠許容負電圧(所定負電圧)の値を補正するものである。
【0012】
より詳しくは、第一の発明に係る燃料電池システムは、
電解質膜にカソード触媒電極層とアノード触媒電極層とが接合されることで形成されたMEAを有するセルが複数積層されることで形成された燃料電池本体と、
セル電圧を測定する電圧測定手段と、
セル電圧が所定負電圧よりも小さくなったときは前記燃料電池本体の発電を制限する発電制限手段と、を備えた燃料電池システムにおいて、
セルのカソード触媒電極層の破壊を検知する検知手段と、
カソード触媒電極層の破壊が検知されたときに、前記セル電圧測定手段によって測定される現在のセル電圧をセル電圧の初期値から減算することでセル電圧低下量を算出し、該セル電圧低下量に基づいて前記所定負電圧を補正する補正手段と、
をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、カソード触媒電極層の破壊とは、カソード触媒電極層が電解質膜から剥離した状態となることをいう。また、セル電圧の初期値とは、セルが初期状態にあるとき、即ちカソード触媒電極層に劣化や破壊が生じていない状態でのセル電圧のことである。
【0014】
本発明によれば、カソード触媒電極層の破壊が生じることでカソード電位が低下すると、その低下量分、水素欠許容負電圧がより小さい値に補正されることになる(水素欠許容負電圧の絶対値がより大きい値となる)。従って、アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電池の発電が制限されることを抑制することが出来る。
【0015】
本発明においては、前記電圧測定手段が、MEAの含水量が比較的多い部分におけるセル電圧を測定するものであり、MEAの含水量が比較的多い部分におけるセル電流を測定する電流測定手段と、MEAの含水量が比較的多い部分におけるセルの内部抵抗を測定する抵抗測定手段と、をさらに備えてもよい。そして、前記検知手段は、MEAの含水量が比較的多い部分におけるセルのカソード触媒電極層の破壊を検知するものであり、前記電流測定手段によって測定されたセル電流の変化速度を算出する電流変化速度算出手段と、前記抵抗測定手段によって測定された内部抵抗の変化速度を算出する抵抗変化速度算出手段と、を有してもよい。この場合、前記検知手段は、前記電流変化速度算出手段によって算出される電流変化速度が負から正に変化し、且つ、前記抵抗変化速度算出手段によって算出される抵抗変化速度が正のときに、カソード触媒電極層の破壊が生じていると判定する。
【0016】
また、MEAの含水量が比較的多い部分では、生成水の凍結によるカソード電極層への酸化剤ガスの供給阻害が生じ易い。そのため、カソード触媒電極層の破壊はMEAの含水量が比較的多い部分で生じ易い。そこで、上記においては、MEAの含水量が比較的多い部分におけるカソード触媒電極層の破壊を検知する。
【0017】
また、セルのカソード触媒電極層の破壊が生じた場合のみならず、電解質膜の乾燥、MEAの含水量の過多による反応阻害及びカソード触媒電極層の破壊に至る以前の酸化剤ガスの供給阻害等によってもセル電流が変化する。従って、セル電流の挙動のみに基づいてカソード触媒電極層の破壊を高い精度で検知することは困難である。
【0018】
上記においては、電流変化加速度及び抵抗変化速度の挙動に基づいてカソード触媒電極層の破壊を検知する。よって、カソード触媒電極層の破壊をより高い精度で検知することが出来る。
【0019】
第二の発明に係る燃料電池システムは、
電解質膜にカソード触媒電極層とアノード触媒電極層とが接合されることで形成されたMEAを有するセルが複数積層されることで形成された燃料電池本体と、
セル電圧を測定する電圧測定手段と、
セル電圧が所定負電圧よりも小さくなったときは前記燃料電池本体の発電を制限する発電制限手段と、を備えた燃料電池システムにおいて、
セルのカソード触媒電極層の発電に有効な部分の表面積である有効表面積を取得する有効表面積取得手段と、
カソード触媒電極層の有効表面積が減少したときに、その減少量に基づいてセル電圧の初期値からの低下量であるセル電圧低下量を算出し、該セル電圧低下量に基づいて前記所定負電圧を補正する補正手段と、
をさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
ここで、セル電圧の初期値とは、セルが初期状態にあるとき、即ちカソード触媒電極層に劣化や破壊が生じておらず、カソード触媒電極層の有効表面積が初期状態にあるときのセル電圧のことである。本発明によれば、カソード触媒電極層の有効表面積が減少することでカソード電位が低下すると、その低下量分、水素欠許容負電圧がより低い値に補正されることになる。従って、アノード触媒電極層への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電池の発電が制限されることを抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃料電池の発電が不要に制限されることを抑制することが出来るため、より効率的な発電を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一実施例に係る燃料電池システムの概略構成を示す図である。
【図2】第一実施例に係る燃料電池本体のセルの概略構成を示す図である。
【図3】発電時におけるセルのカソード電位、アノード電位及びセル電圧の状態の一例を示す図である。(a)は、通常の状態を示しており、(b)は、アノード触媒電極層への水素ガスの供給量が不足したときの状態を示しており、(c)は、カソード触媒電極層の破壊が生じているときにアノード触媒電極層への水素ガスの供給量が不足したときの状態を示している。
【図4】(a)は、第一実施例に係る、湿潤部位におけるセル電圧とセルの内部抵抗との推移を示す図である。(b)は、第一実施例に係る、同一セルにおける湿潤部位と乾燥部位とにおけるセル電流の推移を示す図である。
【図5】第一実施例に係る水素欠許容負電圧補正フローを示すフローチャートである。
【図6】第一実施例に係るセルのIV特性を示す図である。
【図7】第二実施例に係る水素欠許容負電圧補正フローを示すフローチャートである。
【図8】第二実施例に係るカソード触媒電極層の有効表面積とセル電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
<第一実施例>
本発明の第一実施例について図1〜6に基づいて説明する。
【0025】
(システム概略構成)
図1は、本実施例に係る燃料電池システムの概略構成を示す図である。図2は、本実施例に係る燃料電池本体のセルの概略構成を示す図である。尚、図1において、実線の矢印は、空気、水素ガスの流れを表している。
【0026】
燃料電池本体1は、複数のセル30が積層されることで構成された固体高分子型燃料電池である。図2に示すように、各セル30は、MEA31が一対のセパレータ35a、35bによって挟み込まれることで構成されている。MEA31は、電解質膜32にカソード触媒電極層33とアノード触媒電極層34とが接合されることで形成されている。
【0027】
電解質膜32は、プロトンを伝導可能な高分子材料(例えば、フッ素系樹脂)の膜体である。触媒電極層33、34は、カーボンブラックからなる担体に白金又は白金と他の金属を含む合金触媒が担持されることで形成されている。触媒電極層33、34において、白金又は白金と他の金属を含む合金触媒は電解質膜32との接触面近傍に担持されている。
【0028】
カソード触媒電極層33側のセパレータ35aには空気通路36が形成されている。該空気通路36を流れる空気が酸化剤ガスとしてカソード触媒電極層33に供給される。また、アノード触媒電極層34側のセパレータ35bには水素ガス通路37が形成されている。該水素ガス通路37を流れる水素ガス(又は水素混合ガス)が燃料ガスとしてアノード触媒電極層34に供給される。
【0029】
アノード触媒電極層34においては、供給された水素ガスが電子とプロトンとに分解さ
れる。プロトンは電解質膜32中をカソード触媒電極層33の方向に移動する。一方、電子は外部回路(図示せず)を通じてカソード触媒電極層33に伝導する。カソード触媒電極層33においては、供給された空気中の酸素が電解質膜32を移動したプロトン及び外部回路を通じて伝導した電子と結合され、水が生成される。これらの反応によって、カソード触媒電極層33とアノード触媒電極層34との間に起電力が生じる。
【0030】
セパレータ35aに形成された空気通路36は燃料電池本体1における空気入口及び空気出口に接続されている。また、セパレータ35bに形成された水素ガス通路37は燃料電池本体1における水素ガス入口及び水素ガス出口に接続されている。
【0031】
燃料電池本体1における空気入口及び空気出口には、空気管2、3の一端がそれぞれ接続されている。空気管2にはエアコンプレッサ13が設けられている。エアコンプレッサ13によって空気が圧送されることで空気管2から燃料電池本体1に空気が供給される。また、燃料電池本体1において発電に供されなかった空気(以下、カソードオフガスと称する)が空気管3に排出される。空気管3には圧力調整弁11が設けられている。該圧力調整弁11によって燃料電池本体1内部における空気(カソードオフガス含む)の圧力が調整される。
【0032】
また、空気管2におけるエアコンプレッサ13より下流側と空気管3における圧力調整弁11より下流側とを跨ぐように加湿モジュール12が設けられている。加湿モジュール12においては空気とカソードオフガスとが混合され、カソードオフガスに含まれる水分によって空気が加湿される。これによって、加湿モジュール12から加湿された空気が空気管2に排出され、それが燃料電池本体1に供給される。このような構成により、各セル30の電解質膜32がそれぞれ湿潤に保たれる。尚、加湿モジュール12は、別途設けられた水タンク等から汲み上げた水を気化し空気と混合することで、燃料電池本体1に供給される空気を加湿するものでもよい。
【0033】
燃料電池本体1における水素ガス入口及び水素ガス出口には、水素ガス管4、5の一端がそれぞれ接続されている。水素ガス管4の他端は水素ガス供給装置6に接続されている。水素ガス供給装置6から水素ガス管4を通して燃料電池本体1に水素ガスが供給される。水素ガス管4には流量調整弁7が設けられている。燃料電池本体1に供給される水素ガスの流量が該流量調整弁7によって調整される。
【0034】
また、燃料電池本体1において発電に供されなかった水素ガス(以下、アノードオフガスと称する)が水素ガス管5に排出される。水素ガス管5の他端は、水素ガス管4における流量調整弁7よりも下流側に接続されている。
【0035】
水素ガス管5には、アノードオフガスの流れに沿って上流側から順に、圧力調整弁8、気液分離器9及び水素ガス循環ポンプ10が設けられている。圧力調整弁8によって燃料電池本体1内部における水素ガス(アノードオフガス含む)の圧力が制御される。気液分離器9によってアノードオフガスから液層成分が除去される。水素ガス循環ポンプ10によってアノードオフガスが水素ガス管4の方向に圧送される。これにより、液層成分が除去されたアノードオフガスが燃料電池本体1に再供給される。また、水素ガス循環ポンプ10によっても、燃料電池本体1に供給される水素ガスの流量が制御される。
【0036】
上記のように本実施例ではアノードオフガスが燃料電池本体1に再供給される循環経路が形成されるが、水素ガス管5が水素ガス管4に接続されず循環経路が形成されない構成であっても、本発明の適用は可能である。また、燃料電池本体1に供給される水素ガスを加湿する加湿モジュールを水素ガス管4に設けてもよい。
【0037】
また、燃料電池本体1における空気出口近傍部分には、電圧測定器21、電流測定器22、抵抗測定器23及び温度センサ24が設けられている。
【0038】
尚、各セル30では、電解質膜32中におけるプラトンの移動に伴って、水分がアノード触媒電極層34からカソード触媒電極層33の方向に移動する。また、燃料電池本体1内において、空気(カソードオフガス含む)は空気出口に向かって流れ、該空気の流れと共に水分も空気出口に向かって流れる。この結果、燃料電池本体1における空気出口近傍部分はその他の部分に比較してMEA31における含水量が多くなっている。つまり、本実施例に係る電圧測定器21、電流測定器22、抵抗測定器23及び温度センサ24は、MEA31における含水量が比較的多い部分の、セル電圧、セル電流、セル30の内部抵抗及びセル30の温度をそれぞれ測定する。
【0039】
本実施例に係る燃料電池システムは、ECU(Electric Control Unit)20を備えて
いる。ECU20には、電圧測定器21、電流測定器22、抵抗測定器23及び温度センサ24等が電気的に接続されている。これらの測定器及びセンサの出力信号がECU20に入力される。
【0040】
また、ECU20には、水素ガス供給装置6、流量調整弁7、圧力調整弁8、11、水素ガス循環ポンプ10、エアコンプレッサ13及び加湿モジュール12が電気的に接続されている。これらがECU20によって制御される。
【0041】
(発電制限)
図3は、発電時におけるセル30のカソード電位、アノード電位及びセル電圧の状態の一例を示す図である。図3の(a)は、通常の状態を示しており、図3の(b)は、アノード触媒電極層への水素ガスの供給量が不足したときの状態を示しており、図3の(c)は、カソード触媒電極層の破壊が生じているときにアノード触媒電極層への水素ガスの供給量が不足したときの状態を示している。
【0042】
図3の(a)に示すように、燃料電池本体1においては、通常、アノード電位(例えば0V)よりもカソード電位(例えば0.6V)の方が高くなっている。しかし、生成水の凍結等によってアノード触媒電極層34への水素ガスの供給が阻害され、その供給量が不足すると、アノード触媒電極層34において異常反応が生じる。これにより、図3の(b)に示すように、アノード電位が上昇する(例えば1.8Vとなる)。その結果、逆電位現象が生じ、セル電圧が負電圧(例えば−1.2V)となる場合がある。このとき、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量が少ないほど、アノード電位は高くなり、セル電圧は小さくなる(セル電圧の絶対値が大きくなる)。
【0043】
そして、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲を超えた状態で発電を継続すると、アノード触媒電極層34における異常反応に起因してMEA31の過剰な劣化や損傷を招く虞がある。そこで、本実施例においては、電圧測定器21によって測定されるセル電圧が負電圧となり、その値が水素欠許容負電圧よりも小さくなった場合、アノード電位が過剰に高くなっている、即ちアノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲を超えていると判定する。そして、このような判定がなされた場合、燃料電池本体1に供給される空気量及び水素ガス量をECU20によって制御することで燃料電池本体1の発電を制限する。これにより、MEA31の過剰な劣化や損傷を抑制することが出来る。
【0044】
尚、上記のように、本実施例では、燃料電池本体1において電圧測定器21が設けられている部分は、MEA31の含水量が比較的多い部分であるため、生成水の凍結によるアノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が生じ易い。
【0045】
(カソード触媒電極層の破壊)
一方、カソード触媒電極層33においても、生成水の凍結等によって空気の供給が阻害され、その供給量が不足する場合がある。この状態で発電を継続すると、カソード触媒電極層33において異常反応が生じる。その結果、カソード触媒電極層33の破壊が生じる、即ちカソード触媒電極層33が電解質膜32から剥離することになる。尚、このようなカソード触媒電極層33の破壊は、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足と同様、生成水の凍結が生じ易いMEA31の含水量が比較的多い部分で生じ易い。
【0046】
カソード触媒電極層33の破壊が生じると、図3の(c)に示すように、カソード電位が低下する(例えば0.4Vとなる)。そのため、カソード触媒電極層33の破壊が生じている状態でアノード触媒電極層34への水素ガスの供給量が不足すると、カソード電位の低下とアノード電位の上昇とが同時に生じることになる。その結果、逆電位現象が生じたときのセル30の負電圧がカソード触媒電極層33が正常なときに比べてより小さくなる(例えば、アノード電位が1.6Vであってもセルの負電圧が−1.2Vとなる)。そのため、実際のアノード触媒電極層34への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内であっても、セル30の負電圧が水素欠許容負電圧よりも小さくなる場合がある。この場合、アノード触媒電極層34への燃料ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電池本体1の発電が制限されることになる。
【0047】
そこで、本実施例では、カソード触媒電極層33の破壊が生じているか否かを判別する。そして、カソード触媒電極層33の破壊が検知された場合は、その破壊に伴うカソード電位の低下分、水素欠許容負電圧をより小さい値に補正する(水素欠許容負電圧の絶対値をより大きい値とする)。これにより、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電池本体1の発電が制限されることを抑制することが出来る。
【0048】
(カソード触媒電極層の破壊検知方法)
ここで、本実施例に係るカソード触媒電極の破壊検知方法について図4に基づいて説明する。尚、以下においては、MEAの含水量が比較的多い部分を湿潤部位と称し、MEAの含水量が比較的少ない部分を乾燥部位と称する。
【0049】
図4の(a)は、湿潤部位におけるセル電圧とセルの内部抵抗との推移を示す図である。図4の(a)において、L1はセルの内部抵抗を表しており、L2は電圧測定器によって測定されるセルの測定電圧を表しており、L3はセルの内部抵抗による電圧降下分を補正したセルの電圧であるIR補正電圧を表している。図4の(b)は、同一セルにおける湿潤部位と乾燥部位とにおけるセル電流の推移を示す図である。図4の(b)において、L4は湿潤部位におけるセル電流を表しており、L5は乾燥部位におけるセル電流を表している。また、図4において、時間tdは、湿潤部位において、生成水の凍結によりカソード触媒電極層への空気の供給が阻害され、カソード触媒電極層の破壊が生じたタイミングを示している。
【0050】
湿潤部位において、カソード触媒電極層33への空気の供給量が減少すると、カソード触媒電極層33において電子と結合(O2還元反応)する酸素の量が減少する。そのため
、L4に示すように、時間tdの直前においては、湿潤部位における電流が減少する。このとき、湿潤部位においてO2還元反応に使用される電子の量が減少する分、乾燥部位に
おいてO2還元反応に使用される電子の量が増加する。そのため、L5に示すように、時
間tdの直前においては、湿潤部位における電流が増加する。
【0051】
そして、湿潤部位において、カソード触媒電極層33の破壊が生じると、酸素が供給さ
れないにも関わらず電子を受け取る必要性が生じる。その結果、O2還元反応に代えて、
電解質膜32を通ってアノード触媒電極層34からカソード触媒電極層33に移動したプロトンが電子と再結合する反応(H+還元反応)が生じる。このH+還元反応が生じることによって、L4に示すように、時間tdの直後においては、湿潤部位における電流が増加する。このとき、湿潤部位において電子がH+還元反応に使用される分、乾燥部位におい
てO2還元反応に使用される電子の量が減少する。そのため、L5に示すように、時間t
dの直後においては、乾燥部位における電流が減少する。
【0052】
さらに、湿潤部位における反応がO2還元反応からH+還元反応に変わると、プロトンの移動と共に電解質膜32から水分がカソード触媒電極層33に移動するが、カソード触媒電極層33において新たな生成水が生成されなくなる。そのため、L1に示すように、湿潤部位におけるセル30の内部抵抗が増加する。
【0053】
つまり、湿潤部位においてカソード触媒電極層33の破壊が生じた時には、当該部位におけるセル電流の変化速度が負から正に変化し、且つ、当該部位におけるセル30の内部抵抗の変化速度が正となる。そこで、本実施例においては、このようなセル電流及びセル30の内部抵抗の変化を検出することで、カソード触媒電極層33の破壊を検知する。
【0054】
これにより、電解質膜32の乾燥、MEA31の含水量の過多による反応阻害及びカソード触媒電極層33の破壊に至る以前の空気の供給阻害等とは区別してカソード触媒電極層33の破壊を検知することが出来る。
【0055】
(水素欠許容負電圧補正フロー)
燃料電池本体1においては、氷点下で発電を開始したときに、生成水の凍結に起因する湿潤部位におけるカソード触媒電極層33の破壊が生じ易い。そこで、本実施例においては、氷点下で燃料電池本体1の発電が開始されたときに、以下に説明する水素欠許容負電圧補正フローを実行する。
【0056】
図5は、本実施例に係る水素欠許容負電圧補正フローを示すフローチャートである。本フローは、ECU20に予め記憶されており、氷点下で燃料電池本体1の発電が開始されたときに、ECU20によって所定の間隔で繰り返し実行される。
【0057】
本フローでは、先ずステップS101において、電流測定器22の測定値に基づいて湿潤部位におけるセル電流の変化速度ΔI/Δtが算出される。
【0058】
次に、ステップS102において、抵抗測定器23の測定値に基づいて湿潤部位におけるセル30の内部抵抗の変化速度ΔR/Δtが算出される。
【0059】
次に、ステップS103において、セル電流の変化速度ΔI/Δtが負から正に変化し、且つ、セル30の内部抵抗の変化速度ΔR/Δtが正であるか否かを判別される。ステップS103において肯定判定された場合、ステップS104において、湿潤部位でのカソード触媒電極層33の破壊が生じたと判定される。この場合、次にステップS105の処理が実行される。一方、ステップS103において否定判定された場合、ステップS108において、湿潤部位でのカソード触媒電極層33の破壊は生じていないと判定される。この場合、本フローの実行は一旦終了される。
【0060】
ステップS105においては、電圧測定器21によって測定される、現在の湿潤部位におけるセル電圧Vcが読み込まれる。
【0061】
次に、ステップS106において、ステップS105において読み込まれたセル電圧V
cをセル電圧の初期値Vciから減算することで、カソード触媒電極層33の破壊が生じることでカソード電位が低下することに起因するセル電圧低下量ΔVc0が算出される。ここで、セル電圧の初期値Vciは、セル30が初期状態にあるとき、即ちカソード触媒電極層33に劣化や破壊が生じていない状態でのセル電圧である。本実施例においては、セル電圧の初期値Vciが、セル電流及びセル30の温度に対応させてECU20に予め記憶されている。
【0062】
図6は、本実施例に係るセルのIV特性を示す図である。図6において、横軸はセル電流を表しており、縦軸はセル電圧を表している。また、図6において、Liがセルが初期状態にあるときを表しており、Ldがカソード触媒電極層の破壊が生じたときを表している。尚、図6は、ステップS105において読み込まれたセル電圧が測定された時の温度T0におけるセルのIV特性を示している。また、図6において、I0はステップS105において読み込まれたセル電圧が測定された時のセル電流を表している。つまり、ステップS106においては、図6に示すような、セル30の温度がT0でありセル電流がI0である時のセル電圧低下量ΔVc0が算出される。
【0063】
次に、ステップS107において、ステップS106において算出されたセル電圧低下量ΔVc0に基づいて水素欠許容負電圧ΔVclimitが補正される。即ち、水素欠許容負電圧ΔVclimitが、その基準値よりセル電圧低下量ΔVc0分小さい値に補正される(水素欠許容負電圧ΔVclimitの絶対値がセル電圧低下量ΔVc0分大きくなる)。そして、補正後の水素欠許容負電圧ΔVclimitがECU20に記憶される。
【0064】
上記フローが実行されることで、カソード触媒電極層33の破壊が生じた場合は、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲を超えたか否かが補正後の水素欠許容負電圧ΔVclimitに基づいて判断されることになる。
【0065】
尚、本実施例において、カソード触媒電極層33の破壊が検知されたときには、そのことをECU20等に記録してもよい。これにより、車検時等において、この記録に基づいて燃料電池本体1を交換することが可能となる。
【0066】
(カソード触媒電極層の破壊検知の変形例)
本実施例においては、カソード触媒電極層33の破壊を検知するために、電圧測定器21によって測定されるセル30の測定電圧とIR補正電圧との差(以下、単に電圧差と称する)を用いてもよい。図4の(a)に示すように、カソード触媒電極層33の破壊が生じると、電圧差(即ちL3とL2との差)が大きくなる。そこで、上記のように湿潤部位におけるセル電流の変化速度及びセル30の内部抵抗の変化速度を算出すると共に、湿潤部位における電圧差の絶対値の変化速度を算出する。そして、セル電流の変化速度が負から正に変化し、セル30の内部抵抗の変化速度が正であり、且つ、電圧差の絶対値の変化速度が正であるときに、カソード触媒電極層33の破壊が生じたと判定してもよい。これによれば、カソード触媒電極層33の破壊の検知精度をより向上させることが出来る。
【0067】
(アノード触媒電極層への水素ガスの供給量不足判定の変形例)
本実施例においては、燃料電池本体1において、湿潤部位におけるアノード電位を測定するアノード電位測定器を設けてもよい。この場合、カソード触媒電極層33の破壊が検知された場合、アノード電位測定器によって測定されるアノード電位が閾値を超えているか否かに基づいてアノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲を超えているか否かを判別する。そして、その判定結果に基づいて燃料電池本体1の発電を制限するか否かを決定する。これによっても、カソード触媒電極層33の破壊が生じた際に、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電
池本体1の発電が制限されることを抑制することが出来る。
【0068】
尚、本実施例においては、電圧測定器21が本発明に係る電圧測定手段に相当し、電流測定器22が本発明に係る電流測定手段に相当し、抵抗測定器23が抵抗測定手段に相当する。また、燃料電池本体1の発電を制限するECU20が本発明に係る発電制限手段に相当する。また、図5に示すフローにおける、ステップ101を実行するECU20が本発明に係る電流変化速度算出手段に相当し、ステップ102を実行するECU20が本発明に係る抵抗変化速度算出手段に相当し、ステップS101〜S104を実行するECU20が本発明に係る検知手段に相当し、ステップS106及びS107を実行するECU20が本発明に係る補正手段に相当する。
【0069】
<第二実施例>
本発明の第二実施例について図7及び8に基づいて説明する。尚、ここでは、第一実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
カソード触媒電極層33の有効表面積は腐食等の劣化に伴い減少する。そして、カソード触媒電極層33の有効表面積が減少すると、第一実施例におけるカソード触媒電極層33の破壊が生じた場合と同様、カソード電位が低下する。そのため、アノード触媒電極層34への燃料ガスの供給量不足により逆電位現象が生じたときのセル30の負電圧はカソード触媒電極層33の有効表面積に応じて変化する。
【0071】
そこで、本実施例においては、カソード触媒電極層33の有効表面積を推定する。そして、カソード触媒電極層33の有効表面積が減少した場合、その減少に伴うカソード電位の低下分、水素欠許容負電圧をより小さい値に補正する(水素欠許容負電圧の絶対値をより大きい値とする)。これにより、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲内であるにも関わらず燃料電池本体1の発電が制限されることを抑制することが出来る。
【0072】
(水素欠許容負電圧補正フロー)
図7は、本実施例に係る水素欠許容負電圧補正フローを示すフローチャートである。本フローは、ECU20に予め記憶されており、ECU20によって所定の間隔で繰り返し実行される。
【0073】
本フローでは、先ずステップS201において、電圧測定器21によってセル電圧が測定されるセル30のカソード触媒電極層33の現在の有効表面積Sca0が燃料電池本体1の運転負荷の履歴(即ち、カソード電位の履歴)に基づいて推定される。燃料電池本体1の運転負荷の変動とカソード触媒電極層33の有効表面積の変化との関係は予め実験等に基づいて求められており、ECU20に記憶されている。尚、該ステップ201においては、カソード触媒電極層33の現在の有効表面積Sca0が他の方法によって取得されてもよい。
【0074】
次に、ステップS202において、カソード触媒電極層33の有効表面積の減少によってカソード電位が低下することに起因するセル電圧低下量ΔVc0が、ステップS201において推定されたカソード触媒電極層33の有効表面積Sca0に基づいて算出される。
【0075】
本実施例においては、図8に示すようなカソード触媒電極層33の有効表面積とセル電圧との関係が実験等に基づいて予め求められており、ECU20に記憶されている。図8において、横軸はカソード触媒電極層33の有効表面積を表しており、縦軸はセル電圧を表している。ステップS202においては、図8に示すようなセル電圧低下量ΔVc0が
算出される。
【0076】
次に、ステップS203において、ステップS202において算出されたセル電圧低下量ΔVc0に基づいて水素欠許容負電圧ΔVclimitが補正される。即ち、水素欠許容負電圧ΔVclimitが、その基準値よりセル電圧低下量ΔVc0分小さい値に補正される(水素欠許容負電圧ΔVclimitの絶対値がセル電圧低下量ΔVc0分大きくなる)。そして、補正後の水素欠許容負電圧ΔVclimitがECU20に記憶される。
【0077】
上記フローが実行されることで、カソード触媒電極層33の有効表面積が減少した場合は、アノード触媒電極層34への水素ガスの供給量不足が許容範囲を超えたか否かが補正後の水素欠許容負電圧ΔVclimitに基づいて判断されることになる。
【0078】
尚、本実施例においては、図7に示すフローにおける、ステップ201を実行するECU20が本発明に係る有効表面積取得手段に相当し、ステップS202及び203を実行するECU20が本発明に係る補正手段に相当する。
【0079】
上記各実施例は可能な限り組み合わせることが出来る。例えば、第一実施例に係るカソード触媒電極層の破壊検知方法によってカソード触媒電極層の破壊が検知されたときに、カソード触媒電極層の有効表面積を推定し、その後、第二実施例に係る水素欠許容負電圧補正方法によって水素欠許容負電圧を補正してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1・・・燃料電池本体
2、3・・・空気管
4、5・・・水素ガス管
20・・ECU
21・・電圧測定器
22・・電流測定器
23・・抵抗測定器
24・・温度センサ
30・・セル
31・・MEA
32・・電解質膜
33・・カソード触媒電極層
34・・アノード触媒電極層
35a、35b・・セパレータ
36・・空気通路
37・・水素ガス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜にカソード触媒電極層とアノード触媒電極層とが接合されることで形成されたMEAを有するセルが複数積層されることで形成された燃料電池本体と、
セル電圧を測定する電圧測定手段と、
セル電圧が所定負電圧よりも小さくなったときは前記燃料電池本体の発電を制限する発電制限手段と、を備えた燃料電池システムにおいて、
セルのカソード触媒電極層の破壊を検知する検知手段と、
カソード触媒電極層の破壊が検知されたときに、前記セル電圧測定手段によって測定される現在のセル電圧をセル電圧の初期値から減算することでセル電圧低下量を算出し、該セル電圧低下量に基づいて前記所定負電圧を補正する補正手段と、
をさらに備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記電圧測定手段が、MEAの含水量が比較的多い部分におけるセル電圧を測定するものであり、
MEAの含水量が比較的多い部分におけるセル電流を測定する電流測定手段と、
MEAの含水量が比較的多い部分におけるセルの内部抵抗を測定する抵抗測定手段と、をさらに備え、
前記検知手段が、MEAの含水量が比較的多い部分におけるセルのカソード触媒電極層の破壊を検知するものであって、
前記電流測定手段によって測定されたセル電流の変化速度を算出する電流変化速度算出手段と、
前記抵抗測定手段によって測定された内部抵抗の変化速度を算出する抵抗変化速度算出手段と、を有し、
前記電流変化速度算出手段によって算出される電流変化速度が負から正に変化し、且つ、前記抵抗変化速度算出手段によって算出される抵抗変化速度が正のときに、カソード触媒電極層の破壊が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
電解質膜にカソード触媒電極層とアノード触媒電極層とが接合されることで形成されたMEAを有するセルが複数積層されることで形成された燃料電池本体と、
セル電圧を測定する電圧測定手段と、
セル電圧が所定負電圧よりも小さくなったときは前記燃料電池本体の発電を制限する発電制限手段と、を備えた燃料電池システムにおいて、
セルのカソード触媒電極層の発電に有効な部分の表面積である有効表面積を取得する有効表面積取得手段と、
カソード触媒電極層の有効表面積が減少したときに、その減少量に基づいてセル電圧の初期値からの低下量であるセル電圧低下量を算出し、該セル電圧低下量に基づいて前記所定負電圧を補正する補正手段と、
をさらに備えたことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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