説明

燃料電池システム

【課題】十分なカチオン交換容量を有する浄水器を有する燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】浄水器18は、入口側接続部24及び出口側接続部25を具備した容器21の内に、イオン交換樹脂23が、フィルタ22に保持され構成され、燃料電池システムから回収した凝縮水からカチオンとアニオンを除去し、浄化水を生成する。イオン交換樹脂23は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂からなり、当該アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量より、当該カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるように前記アニオン交換樹脂と前記カチオン交換樹脂とが混合され容器21に充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂を用いた浄水器を具備する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池システムは、燃料電池から排出される排空気に含まれる水蒸気と、水素生成器で原料ガスを燃焼して得られる燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮することによって得た凝縮水を、一旦凝縮水タンクに貯水し、当該凝縮水タンクから、ポンプなどの送水手段を用いて、凝縮水を浄水器に送り、凝縮水に含まれるカチオン及びアニオンを除去した後、燃料電池の冷却水や、燃料電池の発電に利用する水素を生成するための水として利用する構成をとる。
【0003】
ここで、浄水器は、カチオンを除去するためのカチオン交換樹脂と、アニオンを除去するためのアニオン交換樹脂を混合したイオン交換樹脂から構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、浄水器として、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合したイオン交換樹脂を用いて構成される第1のカートリッジに、アニオン交換樹脂のみを用いて構成される第2のカートリッジを附属して配置しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図5は、特許文献1に開示された従来の燃料電池システムの概略を示した構成図である。図5に示すように、燃料電池53は、水素生成器51の燃焼部52において原料ガスを燃焼して得られる水素を主成分とする燃料ガスと、外部から供給される空気を利用して発電する。
【0005】
燃料電池53から排出される排空気は、排空気凝縮器510に供給され、そこで、排空気に含まれる水蒸気が凝縮され、凝縮水として凝縮水タンク54に回収される。また、水素生成器51で原料ガスの改質反応の際に発生する燃焼排ガスは、燃焼排ガス凝縮器511に供給され、そこで、燃焼排ガスに含まれる水蒸気が凝縮され、凝縮水として凝縮水タンク54に回収される。凝縮水タンク54に貯えられた凝縮水は、ポンプ56によって、浄水器57に送られ、凝縮水に含まれるカチオン及びアニオンが除去された後、浄化水として、浄化水タンク55に貯えられる。
【0006】
浄化水タンク55に貯水した浄化水は、改質水ポンプ59によって水素生成器51に送られ、原料ガスの改質反応に利用される。また、浄化水タンク55に貯えた浄化水は、冷却水循環ポンプ58によって、燃料電池53を循環する。
【0007】
ここで、燃料電池53の絶縁や、配管部材や水タンクの腐食を防止するため、電気伝導率の低い浄化水が必要になる。かかる浄化水を確保するために、浄水器57にはイオン交換樹脂を使用している。イオン交換樹脂は、凝縮水に含まれるカチオンとアニオンを除去するため、カチオンを交換するカチオン交換樹脂と、アニオンを交換するアニオン交換樹脂とが利用され、カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量と、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量が同一になるように構成されている(カチオン交換容量とアニオン交換容量の比率が1:1)。
【0008】
図6は、前記特許文献2に開示された従来の燃料電池システムの概略を示した構成図である。なお、図6において、図5と同一の構成は同じ符号を用い、説明は省略する。
【0009】
図6に示すように、浄水器61は、第1のカートリッジ62と第2のカートリッジ63で構成される。ここで、第1のカートリッジ62は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が、当該カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量と、当該アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量が同一になるように混合されたイオン交換樹脂を用いて構成される(カチオン交換容量とアニオン交換容量の比率が1:1)。また、第2のカートリッジ63は、アニオン交換樹脂のみを用いて構成され、第1のカートリッジ62の上流側に配置される。したがって、浄水器61は、浄水器全体として、カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量に対し、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量が大きくなるようにして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−231990号公報
【特許文献2】特開平8−17457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、発明者は、燃料電池システムに利用する原料ガスの種類を変えながら試験を行い、燃料電池システムに利用する原料ガスの種類によっては、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量が変化することを見出した。特に、窒素を含む原料ガスを利用した燃料電池システムにおいては、凝縮水の中にカチオンであるアンモニウムイオンが多量に存在すること、浄化水タンクに貯えた浄化水の電気伝導率が上昇する原因は、カチオンであるアンモニウムイオンであること、浄水器においては、カチオンを交換するカチオン交換樹脂のカチオン交換容量が選択的に失われることを見出した。
【0012】
例えば、従来技術に従って構成された燃料電池システムに搭載した従来構成の浄水器(カチオン交換容量とアニオン交換容量の比率が1:1で構成されたイオン交換樹脂を有する浄水器)において、破過した後の浄水器からイオン交換樹脂を回収し、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂に吸着されたカチオンまたはアニオンの種類とそれらの吸着量、及びカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の残存交換容量について分析したところ、[表1]の結果が得られた。
【0013】
【表1】

【0014】
ここで、破過とは、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の少なくとも一方の交換樹脂がその交換容量を喪失し、凝縮水に含まれるカチオンまたはアニオンの交換ができなくなった状態をいう。
【0015】
[表1]より、浄水器が破過した時においても、アニオン交換樹脂は交換容量を十分に保有していること、カチオン交換樹脂に吸着したカチオンは、アンモニウムイオンが主たるものであることがわかる。また、[表1]の結果から考えると、この場合の浄水器のカチオンの負荷はアニオンの負荷に比べ大きいことが分かる。すなわち、浄水器が破過した時、カチオン交換樹脂は交換の必要があっても、アニオン交換樹脂の交換容量は十分に保有されているところ、交換の必要はない。
【0016】
ところが、前記従来の構成では、浄水器全体を交換してしまうので、交換容量を十分に保有しているアニオン交換樹脂も交換することになり、不経済である。また、アニオン交換樹脂が交換容量を十分に保有したまま交換されていることは、アニオン交換樹脂は本来必要となる量を上回る量が搭載されていることになり、浄水器はその余分なアニオン交換樹脂の搭載量分だけ大きくなり、燃料電池システムの低容積化を図る上で重要な課題になっていた。
【0017】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、特に、窒素を含有した原料ガスを利用する燃料電池システムにおいて、浄水器のカチオン交換容量を増大できる手段を提供し、十分な交換容量を残存するアニオン交換樹脂が交換されることを防止し、かつ、アニオン交換樹脂が必要量に対して余分な量が搭載されるのを防止して低容積の浄水器を具備する燃料電池システムを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、浄水器を、凝縮水に含まれるアニオンを交換するアニオン交換樹脂と、凝縮水に含まれるカチオンを交換するカチオン交換樹脂とを有して構成し、前記アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容
量より、前記カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるように構成した浄水器としたものである。
【0019】
これによって、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量に比べ、カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるので、十分なカチオン交換容量を有し、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、アンモニウムイオンを十分に除去でき、安定な運転を維持することができる。
【0020】
また、本発明の燃料電池システムは、凝縮水を水素生成器に供給し、水素生成器の原料ガスの改質反応に用いるものである。
【0021】
これによって、水素生成器にアンモニウムイオン等のカチオンが混入することがなく、水素生成器の正常な運転を維持することでき、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、安定な運転を維持することができる。
【0022】
また、本発明の燃料電池システムは、凝縮水を燃料電池に供給し、燃料電池が発電を行った際に発生する熱を吸収する熱媒体として用いるものである。
【0023】
これによって、燃料電池に供給される熱媒体に、アンモニウムイオン等のカチオンが漏洩することがなく、熱媒体の電気伝導率を低く維持できるので、燃料電池が漏電することなく、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、安定かつ安全な運転を維持することができる。
【0024】
また、本発明の燃料電池システムは、浄水器を、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合して構成されている第1イオン交換器と、アニオン交換樹脂を有しておらずカチオン交換樹脂のみ有している第2イオン交換器とを有して構成される浄水器としたものである。
【0025】
これによって、浄水器全体として、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量に比べ、カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるので、十分なカチオン交換容量を有し、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、アンモニウムイオンを十分に除去でき、安定な運転を維持することが可能になる。
【0026】
また、本発明の燃料電池システムは、第2イオン交換器を、第1イオン交換器より上流に配置したものである。
【0027】
これによって、第1イオン交換器を通過した浄化水を中性に維持できるので、第1イオン交換器の上流側に配置される、配管部材や水タンク等の劣化を抑えることができる。
【0028】
また、本発明の燃料電池システムは、浄水器を、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量とカチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量との比率が、凝縮水に含まれるアニオン量とカチオン量との比率に基づいて定めた浄水器としたものである。
【0029】
これによって、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量の比率に見合う、適正な量のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用いて浄水器を構成できるため、浄水器において、余分となるアニオン交換樹脂を搭載する必要がなく、必要量以上のアニオン交換樹脂が無駄になるのを防止でき、かつ、浄水器の容積を小さくすることができる。
【0030】
また、本発明の燃料電池システムは、凝縮水に含まれるアニオン量とカチオン量との比率が、燃料電池が所定時間発電を行った後の凝縮水に含まれるアニオン量とカチオン量に
基づいて定めた浄水器としたものである。
【0031】
これによって、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量が安定するため、より適正な量のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用いて浄水器を構成できるため、浄水器の容積をより最適化することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の燃料電池システムは、十分なカチオン交換容量を有するので、窒素を含有する原料ガスを利用する燃料電池システムにおいても、アンモニウムイオン等のカチオンを十分に除去でき、また、適切な容積および交換容量を有するカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを有する浄水器を実現できるので、アニオン交換樹脂の無駄を防止し、低容積の浄水器を具備する燃料電池システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムを示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの浄水器を示す構成図
【図3】本発明の実施の形態2における燃料電池システムを示す構成図
【図4】本発明の実施の形態2における燃料電池システムの浄水器を示す構成図
【図5】従来の燃料電池システムを示す構成図
【図6】従来の燃料電池システムを示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0034】
第1の発明は、原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する水素生成器と、前記燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池から排出された燃料排ガスに含まれる水蒸気と、前記水素生成器に供給される原料ガス、燃料ガス、および燃料排ガスの少なくとも一つを燃焼して得られる燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して得られる凝縮水を貯える凝縮水タンクと、前記凝縮水タンクの凝縮水を浄化する浄水器とを備え、前記浄水器は、前記凝縮水中のアニオンを交換するアニオン交換樹脂と、前記凝縮水中のカチオンを交換するカチオン交換樹脂とを有しており、前記アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量より前記カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるように前記アニオン交換樹脂と前記カチオン交換樹脂とを有している、燃料電池システムである。
【0035】
この構成により、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量に比べ、カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるので、十分なカチオン交換容量を有し、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、アンモニウムイオンを十分に除去でき、安定な運転を維持する燃料電池システムを実現することができる。
【0036】
第2の発明は、特に、第1の発明の凝縮水を水素生成器に供給し、水素生成器の原料ガスの改質反応に用いる燃料電池システムである。
【0037】
この構成によって、浄水器が、アンモニウムイオン等のカチオンを十分に除去できるので、水素生成器にアンモニウムイオン等のカチオンが混入することがなく、水素生成器の正常な運転を維持することでき、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、安定な運転を維持する燃料電池システムを実現できる。
【0038】
第3の発明は、特に、第1の発明の凝縮水を燃料電池に供給し、燃料電池が発電を行った際に発生する熱を吸収する熱媒体として用いる、燃料電池システムである。
【0039】
この構成によって、燃料電池に供給される熱媒体に、アンモニウムイオン等のカチオン
が漏洩することがなく、熱媒体の電気伝導率を低く維持できるので、燃料電池が漏電することなく、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、安定かつ安全な運転を維持する燃料電池システムを実現することができる。
【0040】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明の浄水器をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合して構成されている第1イオン交換器と、アニオン交換樹脂を有しておらずカチオン交換樹脂のみを有している第2イオン交換器とを有している浄水器とした燃料電池システムである。
【0041】
この構成によって、浄水器全体として、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量に比べ、カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるので、十分なカチオン交換容量を有し、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、アンモニウムイオンを十分に除去でき、安定な運転を維持する燃料電池システムを実現することができる。
【0042】
第5の発明は、特に、第4の発明の第2イオン交換器を第1イオン交換器より上流に配置した燃料電池システムである。
【0043】
この構成によって、第1イオン交換器を通過した浄化水を中性に維持できるので、第1イオン交換器の上流側に配置される、配管部材や水タンク等の劣化を抑えることができる。これは、以下の作用による。つまり、凝縮水が第2イオン交換器を通過する際、凝縮水に含まれるカチオンがプロトンと交換されるため、第2イオン交換器を通過した浄化水は酸性を帯びているが、第1イオン交換器を通過する際に、凝縮水に含まれるアニオンが交換されることで発生する水酸化物イオンで中和されるので、第1イオン交換器を通過した浄化水は中性に維持することができる。
【0044】
第6の発明は、特に、第1〜第5の発明の浄水器を、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量とカチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量との比率が、凝縮水に含まれるアニオン量とカチオン量に基づいて定めた浄水器とした燃料電池システムである。
【0045】
この構成によって、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量の比率に見合う、適正な量のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用いて浄水器を構成できるため、浄水器において、余分となるアニオン交換樹脂を搭載する必要がなく、必要量以上のアニオン交換樹脂が無駄になるのを防止でき、かつ、浄水器の容積を小さくすることができる。
【0046】
第7の発明は、特に、第6の発明の凝縮水中のアニオン量とカチオン量との比率を、燃料電池が所定時間発電を行った後の凝縮水に含まれるアニオン量とカチオン量に基づいて定めた燃料電池システムである。
【0047】
この構成によって、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量が安定するため、より適正な量のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用いて浄水器を構成でき、浄水器の容積をより最適化することができる。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0049】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの構成を示すものである。
【0050】
図1において、燃料電池システム10は、凝縮水を貯水する凝縮水タンク15と、凝縮水タンク15から供給される凝縮水に含まれるカチオンとアニオンを除去して浄化水とする浄水器18と、凝縮水タンク15から凝縮水を浄水器18に供給する第1の水ポンプ17と、浄水器18から供給される浄化水を貯える浄化水タンク19と、を備えている。
【0051】
さらに、燃料電池システム10は、浄化水タンク19から浄化水を送水する第2の水ポンプ110及び第3の水ポンプ111と、第3の水ポンプ111から浄化水の供給を受けて、原料ガスとして窒素を3%含む都市ガスを改質し水素を主成分とする燃料ガスを生成する水素生成器11と、空気を燃料電池13に供給する空気供給装置14と、水素生成器11から供給される燃料ガスと空気供給装置14から供給される空気により発電を行う燃料電池13と、を備えている。
【0052】
また、燃料電池システム10は、燃料電池13から排出される排空気中に含まれる水蒸気を凝縮し排空気凝縮水を得る排空気凝縮器112と、排空気凝縮器112で凝縮した排空気凝縮水を凝縮水タンク15に導く排空気凝縮水流路115と、燃料電池13から排出される燃料排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮し燃料排ガス凝縮水を得る燃料排ガス凝縮器113と、燃料排ガス凝縮器113で凝縮した燃料排ガス凝縮水を凝縮水タンク15に導く燃料排ガス凝縮水流路120と、燃料排ガス凝縮器113で水蒸気が除去された燃料排ガスを通流する燃料排ガス流路117と、を備えている。
【0053】
さらに、燃料電池システム10は、水素生成器11から送られる燃料ガス中に含まれる水蒸気を凝縮し除去する燃料ガス凝縮器16と、水素生成器11から供給される燃料ガスを燃料ガス凝縮器16に導くバイパス経路116と、水素生成器11の中に配置され、原料ガスと、バイパス経路116と燃料ガス凝縮器16を介して流れる燃料ガスと、燃料排ガス流路117を通流する燃料排ガスを燃焼する燃焼部12と、燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮し燃焼排ガス凝縮水を得る燃焼排ガス凝縮器114と、燃焼排ガス凝縮器114で凝縮した燃焼排ガス凝縮水を凝縮水タンク15に導く燃料排ガス凝縮水流路120とを備えている。また、凝縮水タンク15は、凝縮水タンク15に貯水した余剰の凝縮水を排水する排水口119を有する。
【0054】
以下に、燃料電池システム10を構成する構成要素の材料やその作用について具体的に説明する。
【0055】
水素生成器11は、例えばステンレスなどで構成された容器に、アルミナ担体にルテニウムを担持した触媒が充填されている。そして、原料ガスとして窒素3%および炭化水素ガスを含む都市ガスと、浄化水タンク19から第3の水ポンプ111を介して供給される浄化水とを約650℃で化学反応させて、水素と二酸化炭素を生成する。このとき、浄化水は上記化学反応を進行させる役割を担っている。また、水素生成器11に設けられている燃焼部12は、原料ガスとして窒素3%を含む原料ガスを燃焼させる。
【0056】
燃料電池13は、フッ化炭素の主鎖にスルホン基の側鎖を付着させた高分子系の水素イオン伝導性電解質膜(図示せず)の両側に、カーボンブラックに触媒の白金粒子を担持して構成した燃料極と空気極(図示せず)とを備えた電池を複数積層した集合体から構成される。そして、水素生成器11から、燃料極へ供給される燃料ガス中の水素と、空気供給装置14から空気極へ供給される空気中の酸素との電気化学反応により、発電する。
【0057】
また、凝縮水タンク15は、例えばステンレスや樹脂などで構成され、その内に凝縮水が貯水される。
【0058】
続いて、浄水器18の構造について、図面を参酌し、詳細に説明する。
【0059】
図2は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの浄水器の構成を示すものである。
【0060】
図2において、浄水器18は、入口側接続部24及び出口側接続部25を具備したポリプロピレンを材質とする容器21の内に、イオン交換樹脂23がフィルタ22に保持され構成される。ここで、イオン交換樹脂23は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂から成り、当該カチオン交換樹脂で交換できるカチオン交換容量は、後述する凝縮水中のカチオン量とアニオン量の比率に基づき定められ、具体的には、当該アニオン交換樹脂で交換できるアニオン交換容量に対して2.3倍になるようにして、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合されている。
【0061】
次に、本実施の形態の燃料電池システム10の運転動作について説明する。
【0062】
まず、運転開始時、ガス供給管(図示せず)から、原料ガスとして窒素3%を含む都市ガスと、送風機(図示せず)からの空気が、燃焼部12に供給されて燃焼が始まり、燃料ガスが得られる。燃料ガスは、バイパス経路116を通して燃料ガス凝縮器16に送られる。燃料ガス凝縮器16に送られた燃料ガスは、燃料ガス凝縮器16において、その中に含まれる水蒸気が凝縮され除去された後、燃焼部12に送られる。また、同時に、燃焼部12は、水素生成器11の内部に充填した触媒を約650℃に加熱する。そして、水素生成器11の触媒が約650℃まで加熱されると、水素生成器11は、以下の第2の段階の運転動作を行う。
【0063】
まず、水素生成器11は、浄化水タンク19から第3の水ポンプ111により供給される浄化水と、ガス供給管(記載せず)からの供給される窒素3%を含む都市ガスとの、例えば改質反応により、水素を主成分とする燃料ガスを生成する。次に、燃料電池13は、水素生成器11から供給される燃料ガス中の水素と、空気供給装置14から供給される空気中の酸素との電気化学反応により発電を行う。
【0064】
続いて、本実施の形態の燃料電池システム10における凝縮水と浄化水の流れについて説明する。
【0065】
まず、図1に示すように、燃料電池13からの排空気流路に配置した排空気凝縮器112により、燃料電池13から排出される排空気に含まれる水蒸気を凝縮して排空気凝縮水が得られる。そして、得られた排空気凝縮水は、排空気凝縮水流路115を介して、凝縮水タンク15に送られ、凝縮水タンク15の貯水部に貯えられる。
【0066】
また、燃料電池13からの燃料排ガス流路に配置した燃料排ガス凝縮器113により、燃料電池13から排出される燃料排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して燃料排ガス凝縮水が得られる。そして、得られた燃料排ガス凝縮水は、燃料排ガス凝縮水流路120を介して、凝縮水タンク15に送られ、凝縮水タンク15の貯水部に貯えられる。
【0067】
さらに、水素生成器11からの燃焼排ガス流路に配置した燃焼排ガス凝縮器114により、水素生成器11で原料ガスとしての窒素3%を含む都市ガスと、バイパス経路116を介して流れる燃料ガスと、燃料排ガス凝縮器113で水蒸気が除去された燃料排ガスとを燃焼して得られる燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して燃焼排ガス凝縮水が得られる。そして、得られた燃焼排ガス凝縮水は、燃焼排ガス凝縮水流路118を介して、凝縮水タンク15に送られ、凝縮水タンク15の貯水部に貯えられる。そして、余剰となった凝縮水は、凝縮水タンク15に配置した排水口119から排水される。
【0068】
ここで、上記した燃料電池システムの運転動作に従って、燃料電池を12時間継続して発電した後、凝縮水タンク15に貯水された凝縮水のカチオンとアニオンの種類及びそれらの濃度を評価し、[表2]の結果を得た。
【0069】
【表2】

【0070】
[表2]から、カチオン濃度総量(以下、カチオン量Ccという)は、アニオン濃度総量(以下、アニオン量Caという)に対し、2.3倍(カチオン量Ccとアニオン量Caの比率が2.3:1)であることがわかった。
【0071】
次に、凝縮水タンク15に貯水された凝縮水は、第1の水ポンプ17により浄水器18に送られ、凝縮水に含まれるカチオンおよびアニオンが除去された後、浄化水として浄化水タンク19に貯えられる。浄化水タンク19に貯えられた浄化水は、第3の水ポンプ111により水素生成器11に供給され、原料ガスとしての窒素3%を含む都市ガスの改質に利用され、また、第2の水ポンプ110により、燃料電池13を循環し、燃料電池13を一定の温度に維持する。
【0072】
以上のように、本実施の形態においては、燃料電池システムの浄水器のイオン交換樹脂に、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用い、当該カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量を、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量より大きくすることで、十分なカチオン交換容量を有し、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、安定な運転を維持することができる。また、浄水器に使用するイオン交換樹脂について、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量の比率に見合う、適正な量のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を充填して、浄水器を構成できるため、浄水器に余分となるアニオン交換樹脂を搭載する必要がなく、アニオン交換樹脂の無駄を防止でき、かつ、浄水器を低容積化が実現できる。
【0073】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における燃料電池システムを示す構成図である。なお、図3において、図1と同一の構成は同じ符号を用い、説明を省略する。
【0074】
図3において、本実施の形態の燃料電池システム30は、浄水器33を、第1イオン交換器31と、第1イオン交換器31の下流側に配置される、第2イオン交換器32で構成
した点で、実施の形態1の燃料電池システムとは異なる。他の構成要素やその動作は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
以下に、本実施の形態の燃料電池システム30の発明のポイントである、浄水器33の構成について、図面を参酌し説明する。
【0076】
図4は、本発明の第2の実施の形態における燃料電池システムの浄水器の構成を示すものである。
【0077】
図4において、浄水器33は、第1イオン交換器31と、第1イオン交換器31の上流側に配置される第2イオン交換器32を連結して構成される。この構成によって、第1イオン交換器31を通過した浄化水を中性に維持できるので、第1イオン交換器31の上流側に配置される、配管部材や水タンク等の劣化を抑えることができる。これは、以下の作用による。つまり、凝縮水が第2イオン交換器32を通過する際、凝縮水に含まれるカチオンがプロトンと交換されるため、第2イオン交換器32を通過した浄化水は酸性を帯びているが、第1イオン交換器31を通過する際に、凝縮水に含まれるアニオンが交換されることで発生する水酸化物イオンで中和されるので、第1イオン交換器を通過した浄化水は中性に維持することができる。ここで、第2イオン交換器32を通過した浄化水は酸性を帯びているため、第2イオン交換器32と第1イオン交換器31との連結部を構成する部材の耐酸性劣化を防止するため、当該部材には、ポリプロピレン等の耐酸性樹脂で構成することが好ましい。
【0078】
第1イオン交換器31は、入口側接続部44及び出口側接続部45を具備したポリプロピレンを材質とする容器41の内に、イオン交換樹脂43がフィルタ42に保持されて構成される。ここで、イオン交換樹脂43は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂から成り、当該カチオン交換樹脂で交換できるカチオン交換容量と、当該アニオン交換樹脂で交換できるアニオン交換容量が同一になるようにして混合され充填されている(カチオン交換容量とアニオン交換容量の比率が1:1)。
【0079】
また、第2イオン交換器32は、入口側接続部49及び出口側接続部410を具備したポリプロピレンを材質とする容器46の内に、カチオン交換樹脂48がフィルタ47に保持されて構成される。ここで、第1イオン交換器31に充填されているカチオン交換樹脂と第2イオン交換器32に充填されているカチオン交換樹脂が全体として交換できるカチオン交換容量は、前述した凝縮水中のカチオン量とアニオン量の比率に基づき定められ、具体的には、第1イオン交換器31に充填されているアニオン交換樹脂により交換できるアニオン交換容量に対して2.3倍になるようにして、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合されている。
【0080】
以上のように、本実施の形態においては、燃料電池システムの浄水器を、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を用いた第1イオン交換器と、第1イオン交換器の下流側に配置され、カチオン交換樹脂のみを充填した第2イオン交換器で構成し、浄水器全体として、当該カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量を、アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量より大きくすることで、十分なカチオン交換容量を有し、窒素を含有する原料ガスを用いた燃料電池システムにおいても、安定な運転を維持することができる。また、浄水器に使用するイオン交換樹脂について、凝縮水に含まれるカチオン量とアニオン量の比率に見合う、適正な量のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を充填して、浄水器を構成できるため、浄水器に余分となるアニオン交換樹脂を搭載する必要がなく、アニオン交換樹脂の無駄を防止でき、かつ、浄水器を低容積化が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明に係る燃料電池システムは、アンモニウムイオン等のカチオンの負荷に対して、十分なカチオン交換容量を有し、アニオン交換樹脂の無駄を防止し、低容積の浄水器が実現できるので、定置式や移動式あるいは可搬式の、固体高分子形および固体酸化物形の燃料電池システム等の産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0082】
10、30 燃料電池システム
11、51 水素生成器
12、52 燃焼部
13、53 燃料電池
14 空気供給装置
15、54 凝縮水タンク
16 燃料ガス凝縮器
17 第1の水ポンプ
18、33、57、61 浄水器
19、55 浄化水タンク
110 第2の水ポンプ
111 第3の水ポンプ
112、510 排空気凝縮器
113 燃料排ガス凝縮器
114、511 燃焼排ガス凝縮器
115 排空気凝縮水流路
116 バイパス経路
117 燃料排ガス流路
118 燃焼排ガス凝縮水流路
119 排水口
120 燃料排ガス凝縮水流路
121 燃料排ガス流路
21、41、46 容器
22、42、47 フィルタ
23、43 イオン交換樹脂
24、44、49 入口側接続部
25、45、410 出口側接続部
31 第1イオン交換器
32 第2イオン交換器
48 カチオン交換樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを改質して水素を含む燃料ガスを生成する水素生成器と、
前記燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池から排出された燃料排ガスに含まれる水蒸気と、
前記水素生成器に供給される原料ガス、燃料ガス、および燃料排ガスの少なくとも一つを燃焼して得られる燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して得られる凝縮水を貯える凝縮水タンクと、
前記凝縮水タンクの凝縮水を浄化する浄水器と、
を備え、
前記浄水器は、
前記凝縮水中のアニオンを交換するアニオン交換樹脂と、前記凝縮水中のカチオンを交換するカチオン交換樹脂と、を有しており、
前記アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量より前記カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量が大きくなるように前記アニオン交換樹脂と前記カチオン交換樹脂とを有している、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記凝縮水は、前記水素生成器に供給されて、前記水素生成器の前記原料ガスの改質反応に用いられる、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記凝縮水は、前記燃料電池に供給されて、前記燃料電池が発電を行った際に発生する熱を吸収する熱媒体として用いられる、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記浄水器は、前記アニオン交換樹脂と前記カチオン交換樹脂とを混合して構成されている第1イオン交換器と、前記アニオン交換樹脂を有しておらず前記カチオン交換樹脂を有している第2イオン交換器と、を有している、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2イオン交換器は、前記第1イオン交換器より上流に配置されている、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記浄水器は、前記アニオン交換樹脂が交換できるアニオン交換容量と前記カチオン交換樹脂が交換できるカチオン交換容量との比率が、前記凝縮水中のアニオン量とカチオン量との比率に基づいて定められる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記凝縮水中のアニオン量とカチオン量との比率は、前記燃料電池が所定時間発電を行った後の前記凝縮水中に含まれるアニオン量とカチオン量に基づいて定められる、
請求項6に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58379(P2013−58379A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195820(P2011−195820)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】