説明

燃料電池スタックおよびその面圧調整方法

【課題】高い作業性と良好な品質とを有する燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック1は、燃料電池単セル10の積層体20を積層方向から付勢する複数の付勢手段8、9と、付勢手段の付勢力を調整する複数の調整手段2、5と、を有し、複数の調整手段が、互いに連動して付勢力を同時に調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックおよびその面圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用燃料電池や定置式燃料電池は、実用的な電圧を得るため、発電の基本単位をなす燃料電池単セル(以下、単に単セルと称す)が複数積層するとともに電気的に接続した構成の燃料電池スタックを備える。
【0003】
積層体を構成する複数の単セルの各々は、両面に電極を有する扁平形状の膜電極接合体を、板状のセパレータが挟んだ構成を有し、単セル同士は、セパレータで接して電気的に接続している。
【0004】
燃料電池スタックにおいては、積層体に積層方向から荷重を付与する保持手段が、積層体を圧縮状態で保持している。例えば特許文献1では、保持手段は、単セルの積層体を挟む一対のエンドプレートと、エンドプレートに当接する複数の皿ばねと、皿ばねを押圧するプレッシャプレートとを有し、プレッシャプレートにより皿ばねを圧縮して、積層体に荷重を付与している。
【0005】
接触抵抗低減のため、特に、単セル内部の電極における接触抵抗低減のため、皿ばねの圧縮反力を受けて電極が位置する単セル中央部を押圧するエンドプレートにおいて、面圧は均一であることが好ましい。
【特許文献1】特開2007−5169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、燃料電池スタックの小型化のため、皿ばねを圧縮するプレッシャプレートやエンドプレートが肉薄であると、これらはたわみ易く、作業者が1つの皿ばねを圧縮すると、他の皿ばねの圧縮量が変化し易いため、面圧が均一になり難い。このため、作業者は、微調整を繰り返して面圧を均一にする必要があり、面圧調整作業の更なる簡便化が求められていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高い作業性と良好な品質とを有する燃料電池スタック、および、作業性と製品品質との向上を図ることができる燃料電池スタックの面圧調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の燃料電池スタックは、燃料電池単セルの積層体を積層方向から付勢する複数の付勢手段と、付勢手段の付勢力を調整する複数の調整手段と、を有し、複数の調整手段が、互いに連動して付勢力を同時に調整することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の面圧調整方法は、積層方向に対して傾きを有する傾斜面で互いに摺接する第1部材および第2部材を、付勢手段を押圧した状態で傾斜面で相対的に移動させ、複数の付勢手段の付勢力を同時に調整して、面圧を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の燃料電池スタックでは、作業者は複数の付勢力を同時に調整できるため、個別に付勢力を調整する場合のように、エンドプレート等のたわみによる面圧変化を補正しながら面圧を均一にする必要がなく、簡単な作業で面圧を均一にできる。
【0011】
したがって、本発明の燃料電池スタックは、高い作業性および良好な品質を有する。
【0012】
上記構成を有する本発明の面圧調整方法は、複数の付勢手段の付勢力を同時に調整するため、個別に付勢力を調整する場合のように、エンドプレート等のたわみによる面圧変化を補正しながら面圧を均一にする必要がなく、簡単な作業で面圧を均一にできる。
【0013】
したがって、本発明の面圧調整方法は、作業性および製品品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、各実施形態において、共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の燃料電池スタックの概略図、図2は燃料電池単セルの概略図、図3は図1の燃料電池スタックの部分拡大図、図4は図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の燃料電池スタック1は、発電の基本単位をなす扁平な燃料電池単セル10(以下、単に単セル10と称す)が複数積層してなる積層体20、および積層体20に荷重を付与するための皿ばね8、9を有する。本実施形態の燃料電池スタック1は、5つの皿ばね8、9を有し、また、各皿ばね8、9の荷重を調整する調整手段2、5を有する。
【0017】
複数の単セル10は、積層するとともに互いに電気的に接続しており、これら複数の単セル10で発生する電流を外部に取り出すため、燃料電池スタック1は、導電性の集電板21を有している。集電板21は、単セル10の積層方向(以下、単に積層方向と称す)から積層体20を挟むとともに、積層体20に電気的に接続している。
【0018】
本実施形態では、5つの皿ばね8、9が積層体20に荷重を付与するが、単セル10にかかる面圧が均一となるように、燃料電池スタック1は、皿ばね8、9の圧縮反力を受ける、エンドプレート23、24を有する。エンドプレート23、24は、単セル10と略同等の面積を有する長方形形状の平板で、電気的絶縁性を有する絶縁板22を介して、積層体20および集電板21を積層方向から挟んでいる。
【0019】
皿ばね8、9の圧縮反力を調整する5つの調整手段2、5は、一対のエンドプレート23、24のうちの、一方のエンドプレート24の平面に、当接している。この調整手段2、5を介して、皿ばね8、9は、積層体20に荷重を付与している。
【0020】
5つの調整手段2、5は、エンドプレート24の長辺に沿って、エンドプレート24の周縁部から周縁部まで等間隔に並び、これらを互いに連動させるためのねじ軸26により繋がっている。
【0021】
ねじ軸26は、ねじ作用により各調整手段2、5に接続しており、また、エンドプレート24の平面に対して直角に突出した軸取付部25に、正逆回転可能に取り付いている。なお、本実施形態では、軸取付部25と反対方向に位置するねじ軸26の操作側からみて、時計回りを正方向R1とし、反時計回りを逆方向R2とする。
【0022】
皿ばね8、9は、一端で調整手段2、5に当接するとともに、他端で、エンドプレート24に相対するプレッシャプレート17に当接している。プレッシャプレート17、および燃料電池スタック1の端に位置するエンドプレート23は、積層方向に伸びる長尺状の板材であるテンションプレート28で互いに繋がって、皿ばね8、9を圧縮状態に保持している。
【0023】
プレッシャプレート17およびエンドプレート23は、調整手段2、5の並んだ方向と平行な側面に、複数のねじ穴を有しており、このねじ穴に嵌まったボルト27が、テンションプレート28を、プレッシャプレート17およびエンドプレート23に締結している。
【0024】
以下、燃料電池スタック1の個々の部材について説明する。
【0025】
図2に示すように、発電の基本単位をなす単セル10は、イオン伝導性の電解質膜11の両面に電極12が接合した構成の膜電極接合体16を、反応ガス流路18および冷媒流路19を有するセパレータ17が挟んだ構成を有する。
【0026】
電解質膜11の両面の電極12は、電解質膜11に接し電気化学反応を進行させる触媒層13、および触媒層13に反応ガスを均一に拡散させるガス拡散層14からなる2層構造を有する。
【0027】
触媒層13は、触媒粒子、および触媒粒子を担持する導電性担体を含んでいる。触媒粒子としては、水素の酸化反応および/または酸素の還元反応に対して触媒作用を有するものであれば、従来公知のものを特に制限することなく用いることができる。例えば、触媒粒子は、白金等の金属や、白金を主成分とする合金などである。また、触媒粒子を担持する導電性担体は、例えばカーボン粒子である。
【0028】
触媒層13に反応ガスを均一に拡散させるガス拡散層14も、従来公知のものを特に制限することなく用いることができる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。より具体的には、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボン不織布などが好ましく挙げられる。
【0029】
このようなガス拡散層14に対して、反応ガス流路18および冷媒流路19を有するセパレータ17は反応ガス流路18を有する面で接しており、反応ガスである、酸素を含んだ酸化剤ガスまたは水素を含んだ燃料ガスが、ガス拡散層14内を拡散する。セパレータ17は、板厚の薄い金属板である。
【0030】
単セル10内を移動する反応ガスの漏出を防止するため、単セル10は、電解質膜11の両面に、電極12を囲むシール部材15を有する。シール部材15の材質は、例えばOリングのようなゴムであり、絶縁性および弾性を有する。
【0031】
燃料電池スタック1においては、セパレータ17が、皿ばね8、9からの荷重を受けて、シール部材15およびガス拡散層14を所望の厚さに圧縮している。このように、セパレータ17が、シール部材15を圧縮することにより、シール部材15は、セパレータ17に密着して高いシール性を発揮する。また、セパレータ17が、荷重を受けてガス拡散層14を所望の厚さに圧縮することにより、ガス拡散層14は、所望のガス拡散性能を示す。
【0032】
次に、単セル10ひいては積層体20に荷重を付与する皿ばね8、9の圧縮量を調整する調整手段2、5について説明する。
【0033】
図3に示すように、各調整手段2、5は、単セル10の面方向に移動可能な第1テーパブロック3、6、および、第1テーパブロック3、6の移動にともない積層方向に移動して皿ばね8、9の圧縮量を調整する第2テーパブロック4、7を有する。
【0034】
第1テーパブロック3、6は、ねじ作用によりねじ軸26に接続しており、ねじ軸26の回転に応じて、単セル10の面方向にエンドプレート24の長辺に沿って移動する。なお、第1テーパブロック3、6は、ボールねじのようにボールを介してねじ軸26に接続しているため、円滑に移動できる。第1テーパブロック3、6は、平らな底面と、この底面に対して傾きを持った傾斜面31、61を有しており、底面でエンドプレート24に当接している。
【0035】
一方、第2テーパブロック4、7は、皿ばね8、9を押圧する平らな押圧面と、押圧面に対して傾きを持った傾斜面41、71を有しており、この傾斜面41、71で、第1テーパブロック3、6の傾斜面31、61に摺動可能に当接している。第2テーパブロック4、7における、皿ばね8、9を押圧する平らな押圧面は、エンドプレート24の平面に対して平行である。
【0036】
また、第2テーパブロック4、7は、押圧面および傾斜面41、71に対して直角な側面を有しており、この側面に、押圧面に対して直角に伸びる断面矩形形状の案内溝42、72を備えている。積層方向に伸びるテンションプレート28は、案内溝42、72を通っており、第2テーパブロック4、7は、テンションプレート28に沿って移動する。
【0037】
第1テーパブロック3、6と第2テーパブロック4、7とが接する傾斜面31、41、61、71の、積層方向に対する角度α1、α2は、調整手段2、5の配置位置によって異なる。なお、角度α1、α2は、鋭角である。
【0038】
5つの調整手段2、5では、両端に位置する調整手段2の傾斜面31、41の角度α1が、他の調整手段5の傾斜面61、71の角度α2よりも小さい(α1<α2)。また、両端に位置する調整手段2の積層方向の厚さは、他の調整手段5の積層方向の厚さに比べて厚い。
【0039】
すなわち、エンドプレート24の周縁部に位置する調整手段2においては、他の調整手段5に比べ、積層方向に対する傾斜面31、41の角度α1が小さく、また、積層方向の厚さが厚い。
【0040】
次に、以上説明した燃料電池スタック1の面圧調整方法について説明する。
【0041】
本実施形態の燃料電池スタック1の面圧調整方法は、第1テーパブロック3、6および第2テーパブロック4、7を傾斜面31、41、61、71で相対的に摺動させ、複数の皿ばね8、9の圧縮反力を同時に調整して面圧を調整する。
【0042】
以下、具体的に述べる。
【0043】
面圧を上げたい場合、作業者は、ねじ軸26を正方向R1に回転させて、各調整手段2、5の第1テーパブロック3、6を、その傾斜面31、61で第2テーパブロック4、7を押圧するように、同時に同じ距離移動させる。
【0044】
このとき、各調整手段2、5の第2テーパブロック4、7が、第1テーパブロック3、6からの力を受けて積層方向に同時に摺動し、圧縮状態の皿ばね8、9を更に圧縮するため、皿ばね8、9の圧縮反力が増加し、面圧が増加する。
【0045】
前述のように、5つの調整手段2、5では、両端に位置する調整手段2における、傾斜面31、41の角度α1は、他の調整手段5の傾斜面61、71の角度α2よりも小さい(α1<α2)。
【0046】
このため、ねじ軸26を正方向R1に回転させたときの、両端の調整手段2における第2テーパブロック4の積層方向への移動距離は、その他の調整手段5における第2テーパブロック7の移動距離よりも大きい。
【0047】
よって、両端の調整手段2が圧縮する皿ばね8の圧縮量は、他の調整手段5が圧縮する皿ばね9の圧縮量よりも大きく、エンドプレート24の周縁部には、中央部に比べて大きな荷重がかかる。
【0048】
一方、面圧を下げたい場合、作業者は、ねじ軸26を逆方向R2に回転させ、各調整手段2、5の第1テーパブロック3、6を、第2テーパブロック4、7から離隔するように、同時に同じ距離移動させる。
【0049】
このとき、第1テーパブロック3、6に摺接する第2テーパブロック4、7は、テンションプレート28に沿ってエンドプレート24に向かって同時に移動し、皿ばね8、9の圧縮量を減少させるため、皿ばね8、9の圧縮反力が減少し、面圧が減少する。
【0050】
図4に示すように、調整手段5は、第1テーパブロック6の傾斜面61に、リニアガイド63を有しており、面圧調整の際、第1テーパブロック6および第2テーパブロック7は、リニアガイド63に沿って相対的に摺動する。図示しないが、調整手段2も、同様にリニアガイドを傾斜面31に有する。
【0051】
なお、リニアガイド63は、レールとレール側面で循環するボール(不図示)からなる案内方式であり、調整手段5の第2テーパブロック7は、リニアガイド63に嵌合する溝73を傾斜面41、71に備えている。
【0052】
第1実施形態の効果を説明する。
【0053】
第1実施形態では、作業者は調整手段2、5により複数の皿ばね8、9の荷重を同時に調整できるため、個別に荷重を調整していく必要がなく、面圧調整が容易である。
【0054】
また、作業者は複数の皿ばね8、9の荷重を同時に調整できるため、個別に荷重を調整する場合のように、エンドプレート24等のたわみによる面圧変化を補正しながら面圧を均一にする必要がなく、簡単な作業で面圧を均一にできる。
【0055】
したがって、第1実施形態の燃料電池スタック1は、高い作業性および良好な品質を有する。また、第1実施形態の燃料電池スタック1の面圧調整方法は、作業性および製品品質の向上を図ることができる。
【0056】
経年により単セル10が塑性変形し、単セル10ひいては積層体20の積層方向の厚さが製造時に比べて薄くなり、面圧が減少したとき、作業者は、皿ばね8、9の圧縮量を増加させて適切な面圧を付与する必要がある。
【0057】
例えば、燃料電池スタック1が、積層方向に伸びるボルトを締付けて皿ばね8、9を圧縮する構成である場合、上記経時変化を考慮して、塑性変形による厚さの減少分だけ、予めボルトを長く設定したり、ボルトの移動スペースを確保したりする必要がある。このため、燃料電池スタック1の、積層方向の長さが長くなる。
【0058】
本実施形態の調整手段2、5では、第1テーパブロック3、6および第2テーパブロック4、7が、皿ばね8、9を押圧した状態で、傾斜面で相対的に摺動する。このため、燃料電池スタック1は、調整手段2、5自身の位置を変えることなく、調整手段2、5の厚さを変えて皿ばね8、9の圧縮量を調整できる。したがって、本実施形態の燃料電池スタック1では、積層方向における長さが、積層方向に伸びるボルトにより皿ばね8、9の圧縮量を調整する場合に比べて短く、燃料電池スタック1の容積が小さい。
【0059】
第1実施形態では、5つの調整手段2、5のうち、エンドプレート24の周縁部に位置する調整手段2は、他の調整手段5に比べ、積層方向の厚さが厚い。このため、エンドプレート24の周縁部に位置する皿ばね8の圧縮量は、他の皿ばね9の圧縮量に比べて大きく、エンドプレート24の周縁部に大きな面圧がかかる。よって、単セル10のセパレータ17が、単セル10の周縁部に位置するシール部材15を所望の厚さに圧縮して反応ガスの漏出を防止でき、燃料電池スタック1は、所望の電池性能を発揮できる。
【0060】
また、エンドプレート24中央に位置する3つの調整手段5が圧縮する皿ばね9においては、圧縮量が等しいため、均一な面圧が単セル10の電極12にかかり、ガス拡散層14が所望の厚さとなる。よって、反応ガスが円滑にガス拡散層14中を拡散し、燃料電池スタック1は、所望の電池性能を発揮できる。
【0061】
以上のことより、第1実施形態では、燃料電池スタック1の各構成部品に適切な面圧がかかっており、燃料電池スタック1が、所望の電池性能を発揮できる。
【0062】
また、5つの調整手段2、5のうち、エンドプレート24の周縁部に位置する調整手段2では、他の調整手段5に比べ、積層方向に対する傾斜面の角度α1が小さい。このため、作業者が、ねじ軸26を正方向R1に回して、各調整手段2、5の第1テーパブロック3、6を同方向に同距離だけ移動させたとき、両端部の調整手段2は、他の調整手段5よりも皿ばね8を大きく圧縮する。よって、単セル10中央の電極12に比べて塑性変形による厚さの減少量が大きい、単セル10のシール部材15に、電極12にかかる面圧よりも大きな面圧がかかり、気密性が保持される。
【0063】
したがって、第1実施形態では、面圧調整の際に構成部品に応じて適切な面圧を作業者が付与でき、所望の電池性能が維持される。
【0064】
第1実施形態では、調整手段2、5が、第1テーパブロック3、6と第2テーパブロック4、7とが接する傾斜面31、41、61、71にリニアガイド63を有する。このため、作業者は、効率良く、また円滑に、第1テーパブロック3、6および第2テーパブロック4、7を摺動でき、荷重調整における作業性が良い。
【0065】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の燃料電池スタックの概略図である。
【0066】
図5に示すように、第2実施形態では第1実施形態と異なり、燃料電池スタック1Aが6つの調整手段2L、2R、5L、5Rを有する。6つの調整手段2L、2R、5L、5Rは、エンドプレート24Aの中心を通り積層方向に伸びる仮想線CLに対して、線対称に並ぶ。また、6つの調整手段2L、2R、5L、5Rの各傾斜面31L、31R、61L、61Rも、仮想線CLに対して線対称である。
【0067】
調整手段2L、2R、5L、5Rを連動させるねじ軸26Aは、互いに異なるねじ山を有する第1ねじ部26Lおよび第2ねじ部26Rを有する。軸取付部25A側の第1ねじ部26Lが、左ねじであり、もう一方の第2ねじ部26Rが、右ねじである。第1ねじ部26Lに対して、3つの調整手段2L、5Lが接続しており、第2ねじ部26Rに対して、3つの調整手段2R、5Rが接続している。
【0068】
作業者が、ねじ軸26Aを正方向R1に回転させたとき、第1ねじ部26Lに接続した3つの調整手段2L、5Lにおける各第1テーパブロック3L、6Lは、軸取付部25Aが保持するねじ軸26Aの一端に向かって同じ距離だけ移動する。このとき、それぞれの第1テーパブロック3L、6Lは、各第1テーパブロック3L、6Lに摺接する第2テーパブロック4L、7Lを皿ばね8A、9Aに向かって押し上げる。
【0069】
一方、第2ねじ部26Rに接続した3つの調整手段2R、5Rの各第1テーパブロック3R、6Rは、第1ねじ部26Lに接続した第1テーパブロック3L、6Lと仮想線CLに対して線対称に移動する。このとき、各第1テーパブロック3R、6Rは、第2テーパブロック4R、7Rを皿ばね8A、9Aに向かって押し上げる。
【0070】
第2実施形態では、6つの調整手段2L、2R、5L、5Rの各傾斜面31L、31R、61L、61Rが、仮想線CLに対して線対称であるため、積層方向に対して直角方向の力が仮想線CLに対して線対称となり、釣り合う。また、面圧調整の際も、第1ねじ部26Lに接続した第1テーパブロック3L、6Lおよび第2ねじ部26Rに接続した第1テーパブロック3R、6Rが、線対称に移動するため、積層方向に対して直角方向の力が対称となる。
【0071】
したがって第2実施形態は、第1実施形態の効果に加え、燃料電池スタック1Aの歪みが少なく、また、面圧調整の際、燃料電池スタック1Aの歪みの発生を抑制できるという効果を奏する。
【0072】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば、皿ばねや調整手段の個数は、上記実施形態に限定されるものではなく、単セルの大きさ等に応じて種々設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態の燃料電池スタックの概略図である。
【図2】燃料電池単セルの概略図である。
【図3】図1の燃料電池スタックの部分拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】第2実施形態の燃料電池スタックの概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料電池スタック、
2、5 調整手段、
3、6 第1テーパブロック(第1部材)、
4、7 第2テーパブロック(第2部材)、
8、9 皿ばね(付勢手段)、
10 燃料電池単セル、
20 積層体、
21 集電板、
22 絶縁板、
23、24 エンドプレート、
25 軸取付部、
26 ねじ軸、
27 ボルト、
28 テンションプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電の基本単位をなす燃料電池単セルが、複数積層してなる積層体と、
前記燃料電池単セルの積層方向から前記積層体を付勢する複数の付勢手段と、
前記複数の付勢手段の付勢力を、互いに連動して同時に調整する複数の調整手段と、を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記付勢手段を押圧した状態で、前記積層方向に対して傾きを有する傾斜面で相対的に摺動して前記付勢力を調整する、第1部材および第2部材を、前記調整手段が有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記積層方向に対する前記傾斜面の角度が、前記調整手段の配置位置に応じて設定されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記複数の傾斜面が、前記積層方向に伸びる仮想線に対して線対称に配置され、前記複数の第1部材および前記第2部材が、前記仮想線に対して線対称に摺動可能であることを特徴とする請求項2または3に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記調整手段が、前記傾斜面にリニアガイドを有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
発電の基本単位をなす燃料電池単セルが複数積層してなる積層体、前記燃料電池単セルの積層方向から前記積層体を付勢し、前記積層体に面圧を付与する複数の付勢手段、ならびに、前記積層方向に対して傾きを有する傾斜面で互いに摺接する第1部材および第2部材を有する燃料電池スタックにおける、面圧調整方法であって、
前記第1部材および第2部材により前記複数の付勢手段を押圧した状態で、前記第1部材および第2部材を前記傾斜面で相対的に摺動させ、前記複数の付勢手段の付勢力を同時に調整して、前記面圧を調整することを特徴とする面圧調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−152070(P2009−152070A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329020(P2007−329020)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】