説明

燃料電池モジュール

【課題】製造コストの削減を実現することができる燃料電池モジュールを提供する。
【解決手段】蓋体受け部52A,52Bには、厚さ方向D1に延びるスタッドボルト81を立設し、スタッドボルト81とナット83との螺合によって、蓋体60A,60Bを蓋体受け部52A,52Bに固定する。これにより、従来のように、蓋体受け部52Aに形成した貫通孔184内に袋ナット181のような切削部品を配置して全周溶接する必要をなくし、切削部品を用いない分、材料費を低減すると共に、溶接検査や気密検査を不要とする。その結果として、製造コストの削減を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池モジュールとして、特許文献1に示す燃料電池用筐体に、改質器とセルスタックとを収納して構成したものが知られている。この燃料電池用筐体は、改質器とセルスタックとを収納する収納室と、収納室の外側に形成された排ガス流路と、排ガス流路の外側に形成された酸化剤流路と、上方の酸化剤流路から収納室へ向かって下方へ延びる酸化剤供給部材を備えている。排ガス流路は、収納室の側方においてセルスタック上端部の燃焼部から発生する排ガスを下方へ通過させる部分と、収納室の下方において排ガスを集めて系外へ排出する部分と、を有している。また、酸化剤供給部材は、水平方向においてセルの積層方向と直交する方向に並べられたセルスタックの間の隙間に入り込むように配置され、当該隙間から各セルスタックに対して酸化剤を供給するように、先端部に貫通孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−044990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の燃料電池モジュールの筐体では、溶接等によって複数の壁部を組み立てて本体部を構成した後、本体部に形成されている開口部を蓋体で覆って固定している。この蓋体は、全体的に平板状をなしている単純平板に、ボルト締めのための貫通孔を形成することによって構成されている。本体部の開口部周りには、蓋体を受ける蓋体受け部を形成し、当該蓋体受け部の内面側には、蓋体の貫通孔に対応する位置にナットが溶接されている。そして、ボルト及びナットの締結によって蓋体を当該蓋体受け部に固定している。また、当該蓋体受け部と蓋体との間には、本体部と蓋体との間の気密性を保つためのシール部材を配置している。
【0005】
図6〜図8は、従来の燃料電池モジュールの構造を示す図である。図7及び図8に示すように、燃料電池モジュール100において、螺合部180は、蓋体受け部52Aに形成された袋ナット181と、蓋体160Aの周縁部161に形成された貫通孔182と、貫通孔182を介して袋ナット181に螺合されるボルト183と、を備えている。袋ナット181は、蓋体受け部52Aに形成された貫通孔184内に一端が配置されると共に、袋ナット181の他端は蓋体受け部52Aの内面側に突出している。
【0006】
シール部材170は、蓋体受け部52A,52B,52Cの略全面を覆うような幅広の矩形枠状に形成されている。シール部材170は、袋ナット181及び貫通孔182に対応する位置に円形状の複数の貫通孔170aを有している。ボルト183は、貫通孔182に挿入されると共に袋ナット181と螺合することにより、蓋体160Aを本体部50側へ押圧する。なお、筐体106において、蓋体160A,160B,160Cの外縁には、当該蓋体の厚さ方向へ延びる折り返し部164が形成される(図6も参照)。折り返し部164は、内側(本体部50側)へ向かって90°折り返されている。
【0007】
ここで、燃料電池モジュール100の筐体106には高い気密性が求められるため、貫通孔184と袋ナット181の一端との間でリークが発生することを防止する必要がある。図7に示すように、リークを防止するため、袋ナット181の一端の縁部には全周にわたって蓋体受け部52Aとの間で溶接部187が形成されている。この場合、溶接箇所を1つ1つ検査したり、気密検査を行ったりする必要があった。また、切削部品である袋ナット181は、加工を要するため材料費が高くなってしまう。このように、従来の燃料電池モジュールでは、材料費、溶接加工費、及び検査費が増大する傾向にあった。
【0008】
本発明は、製造コストの削減を実現することができる燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池モジュールは、水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器と、改質ガス及び酸化剤を用いて発電を行うセルスタックと、改質器及びセルスタックを収納する筐体と、を備える燃料電池モジュールであって、筐体は、改質器及びセルスタックを収納すると共に、開口部を有する本体部と、本体部の開口部を覆う蓋体と、を備え、本体部は、開口部の周囲に形成されて蓋体の周縁部に対向する蓋体受け部と、蓋体受け部に立設されて蓋体の厚さ方向に延びる第1のネジ部材と、を有し、蓋体の周縁部には、第1のネジ部材が挿入される貫通孔が形成され、蓋体は、第1のネジ部材と第2のネジ部材との螺合によって蓋体受け部に固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る燃料電池モジュールによれば、蓋体受け部には、蓋体の厚さ方向に延びる第1のネジ部材が立設され、この第1のネジ部材と第2のネジ部材との螺合によって、蓋体が蓋体受け部に固定される。そのため、従来のように、蓋体受け部に貫通孔を形成し、その貫通孔内に袋ナットのような切削部品を配置して全周溶接する必要がない。よって、切削部品を用いない分、材料費を低減できると共に、溶接検査や気密検査が不要になる。その結果として、製造コストの削減を実現することができる。
【0011】
ここで、蓋体と蓋体受け部との間であって、開口部と貫通孔との間の領域には、シール部材が配置されると、本体部と蓋体との間の気密性が高められる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造コストの削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池モジュールの概略構成図である。
【図2】図1のII―II線断面図である。
【図3】図1の燃料電池モジュールの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】従来の燃料電池モジュールの斜視図である。
【図7】従来の燃料電池モジュールの断面図であって、図4に対応する図である。
【図8】従来の燃料電池モジュールの断面図であって、図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、燃料電池モジュール1は、水素含有燃料を用いて改質ガスRGを発生させる改質器2と、改質ガスRG及び酸化剤OXを用いて発電を行うセルスタック3と、水を気化させることによって改質器2へ供給される水蒸気を生成する水気化部4と、改質器2、セルスタック3、及び水気化部4を収納する筐体6と、を備える。図1及び図2では図示されていないが、燃料電池モジュール1の下方には、ポンプ等の補機や制御機器等を収納する筐体が設けられる。
【0016】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0017】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0018】
改質器2は、供給される水素含有燃料を用いて改質ガスRGを発生させる。改質器2は、改質触媒を用いた改質反応により、水素含有燃料を改質して改質ガスRGを発生させる。改質器2での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。改質器2は、後述する燃焼熱によって加熱され得るようにセルスタック3の上側に配置されている。すなわち、セルスタック3の燃料極側に導入された改質ガスRGのオフガス(未反応改質ガス)は、空気極等の酸化剤極側に導入された空気等の酸化剤のうちの未反応酸素(未反応酸化剤ガス)と共に燃焼させられ、改質器2は、この燃焼熱によって加熱される。改質器2は、改質ガスRGをセルスタック3の燃料極へ供給する。
【0019】
セルスタック3は、SOFC(Solid Oxide Fuel Cells)と称される複数のセルの積層体を有している。各セルは、固体酸化物である電解質が燃料極と酸化剤極との間に配置されることで構成されている。電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等からなり、高温下で酸化物イオンを伝導する。燃料極は、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと改質ガスRG中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。酸化剤極は、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、酸化剤OX中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。本実施形態では、セルスタック3は、台座7の上面において、各セルの積層方向と直交する方向に向かい合うように二列に配置される。ただし、セルスタック3は一列に配置されてもよい。
【0020】
台座7と改質器2とは、パイプ8で接続されている。改質器2から供給された改質ガスRGは、台座7を介してセルスタック3の各セルに供給される。セルスタック3で反応しなかった改質ガスRG及び酸化剤OXは、セルスタック3の上部の燃焼部9で燃焼する。燃焼部9でのオフガスの燃焼により、改質器2が加熱されると共に排ガスEGが発生する。
【0021】
水気化部4は、供給される水を加熱し気化させることによって、改質器2に供給される水蒸気を生成する。水気化部4で生成された水蒸気は、例えば、第1の底壁部18を貫通して水気化部4と改質器2とを接続する配管(不図示)を用いて、改質器2へ供給される。水気化部4における水の加熱は、例えば、改質器2の熱、燃焼部9の熱、あるいは排ガスEGの熱を回収する等、燃料電池モジュール1内で発生した熱を用いてもよい。本実施形態では、水気化部4は、底部の排ガス流路に配置され、排ガスEGの熱を回収する構成となっている。
【0022】
筐体6は、改質器2、セルスタック3、及び水気化部4を収納するための内部空間を有する、直方体状の金属製の箱体である。筐体6は、セルスタック3を収納する収納室11と、収納室11よりも外側に形成され、セルスタック3からのオフガスの燃焼による排ガスEGを通過させる排ガス流路12、酸化剤OXを通過させる酸化剤流路13と、収納室11や排ガス流路12や酸化剤流路13を形成する各壁部と、を備える。なお、以下の説明においては、セルスタック3の各セルの積層方向に沿った方向を筐体6の「長さ方向D1」とし、水平方向において各セルの積層方向と直交する方向を筐体6の「幅方向D2」とし、鉛直方向を筐体6の「上下方向D3」として以下の説明を行う。本実施形態では、収納室11、排ガス流路12、酸化剤流路13、及びこれらを形成する各壁部は、長さ方向D1から見て左右対称な構造となっている。
【0023】
収納室11は、幅方向D2に互いに対向する第1の側壁部16,17、及び第1の側壁部16,17の各下端部に連結される第1の底壁部18の内側に形成される。収納室11では、台座7が第1の底壁部18に配置される。なお、第1の底壁部18と台座7との間に断熱材が配置されていてもよい。燃焼部9で発生した排ガスEGを通過させるため、収納室11の上端部は開口している。
【0024】
排ガス流路12は、幅方向D2において第1の側壁部16,17の外側にそれぞれ配置される第2の側壁部21,22と、第1の側壁部16,17の上端部よりも上側に配置される第1の上壁部23と、第1の底壁部18よりも下側に配置される第2の底壁部24と、によって形成される。
【0025】
第1の上壁部23は第2の側壁部21,22の上端部に連結され、第2の底壁部24は第2の側壁部21,22の下端部に連結される。第2の側壁部21,22は、第1の側壁部16,17から離間して対向するように配置される。第1の上壁部23は、収納室11の上端部から離間して対向するように配置される。第2の底壁部24は、第1の底壁部18から離間して対向するように配置される。
【0026】
排ガス流路12は、収納室11の上側の開口部と第1の上壁部23との間に形成される排ガス流路12A,12Bと、第2の側壁部21,22と第1の側壁部16,17との間に形成される排ガス流路12C,12Dと、第2の底壁部24と第1の底壁部18との間に形成される排ガス流路12E,12Fと、を有する。排ガス流路12A,12Bは、燃焼部9からの排ガスEGを排ガス流路12C,12Dへ導く。排ガス流路12C,12Dは、排ガスEGを下方へ通過させ、当該排ガスEGの熱を外側の酸化剤流路13C,13Dを流れる酸化剤OXに供給する。排ガス流路12E,12Fは、排ガスEGを排気管32へ向かって水平方向に通過させ、当該排ガスEGの熱を水気化部4に供給する。
【0027】
酸化剤流路13は、幅方向D2において第2の側壁部21,22の外側にそれぞれ配置される第3の側壁部26,27と、第1の上壁部23よりも上側に配置される第2の上壁部28と、第2の底壁部24よりも下側に配置される第3の底壁部29と、によって形成される。
【0028】
第2の上壁部28は第3の側壁部26,27の上端部に連結され、第3の底壁部29は第3の側壁部26,27の下端部に連結される。第3の側壁部26,27は、第2の側壁部21,22から離間して対向するように配置される。第2の上壁部28は、第1の上壁部23から離間して対向するように配置される。第3の底壁部29は、第2の底壁部24から離間して対向するように配置される。
【0029】
第1の上壁部23には中央部に長さ方向D1へ延びるスリット39が形成されており、当該スリット39には、酸化剤供給部材36が挿入される。酸化剤供給部材36は、セルスタック3に酸化剤OXを供給する。酸化剤供給部材36は、一対のセルスタック3の間の隙間に入り込むように延びており、内部に酸化剤流路13Kを有すると共に、先端部に貫通孔37,38を有している。
【0030】
酸化剤流路13は、第2の上壁部28と第1の上壁部23との間に形成される酸化剤流路13A,13Bと、第3の側壁部26,27と第2の側壁部21,22との間に形成される酸化剤流路13C,13Dと、第3の底壁部29と第2の底壁部24との間に形成される酸化剤流路13G,13Hと、を有する。酸化剤流路13G,13Hは、給気管31からの酸化剤OXを水平方向に広がるように通過させ、酸化剤流路13C,13Dへ導く。酸化剤流路13C,13Dは、酸化剤OXを上方へ通過させ、当該酸化剤OXを内側の排ガス流路12C,12Dを流れる排ガスEGの熱によって加熱する。酸化剤流路13A,13Bは、酸化剤OXを幅方向D2における外側から内側へ向かって通過させ、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kへ流して貫通孔37,38へ導く。
【0031】
第3の底壁部29には、図示されない酸化剤供給部から酸化剤流路13に酸化剤を流入させるための給気管31が設けられている。また、第2の底壁部24には、排ガス流路12からの排ガスを排気する排気管32が設けられている。
【0032】
側壁部16,17,21,22,26,27、上壁部23,28、及び底壁部18,24,29は、長さ方向D1における筐体6の端部6a,6b付近にまで延びている。筐体6の長さ方向D1の両端部には、それぞれ端壁部33,34が設けられている。第3の側壁部26,27、第2の上壁部28、第3の底壁部29、及び端壁部33,34は、燃料電池モジュール1の外殻を構成し、互いの接続部におけるシール性が確保されており、筐体6内の気密性が確保されている。
【0033】
次に、改質ガスRG、酸化剤OX、及び排ガスEGの流れについて説明する。
【0034】
外部から供給される水素含有燃料及び水気化部4からの水蒸気を用いて改質器2で発生した改質ガスRGは、パイプ8を通過して台座7に流れ込み、台座7からセルスタック3の各セルに供給される。改質ガスRGは、セルスタック3を下方から上方へ向かって流れ、一部はオフガスとして燃焼部9での燃焼に用いられる。酸化剤OXは、外部から給気管31を介して供給され、酸化剤流路13G,13Hにて水平方向に広がり、内側を流れる排ガスEGで加熱されながら酸化剤流路13C,13Dを上方へ向かって通過する。酸化剤OXは、酸化剤流路13A,13Bを通過し、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kを流れて、貫通孔37,38を通過してセルスタック3へ供給され、一部は燃焼部9での燃焼に用いられる。燃焼部9で発生した排ガスEGは、排ガス流路12A,12Bで排ガス流路12C,12Dに導かれ、外側を流れる酸化剤OXに熱を供給しながら排ガス流路12C,12Dを下方へ向かって通過する。排ガスEGは、底部まで達すると排ガス流路12E,12Fへ流れ込み、水気化部4に熱を供給しながら排ガス流路12E,12Fを通過する。排ガス流路12E,12Fを通過した排ガスEGは、排気管32から排気される。
【0035】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る燃料電池モジュール1は、端壁部33,34及び第2の上壁部28に対応する面に開口部51A,51B,51Cがそれぞれ形成された本体部50と、本体部50の開口部51Aを覆う蓋体60Aと、本体部50の開口部51Bを覆う蓋体60Bと、本体部50の開口部51Cを覆う蓋体60Cと、を備えている。本体部50は、上述で説明した各壁部のうち、側壁部16,17,21,22,26,27、第1の上壁部23、及び底壁部18,24,29を構成している。また、蓋体60Aは端壁部33を構成し、蓋体60Bは端壁部34を構成し、蓋体60Cは第2の上壁部28を構成している。なお、蓋体60A及び蓋体60Bの「厚さ方向」は、長さ方向D1に等しく、蓋体60Cの「厚さ方向」は、上下方向D3に等しい。
【0036】
本体部50は、端壁部33に対応する面、すなわち筐体6の端部6a側の面に、蓋体60Aを取り付けるための蓋体受け部52Aを有する。蓋体受け部52Aは、蓋体60Aの周縁部61(図4参照)と対向する矩形枠状のフランジ部である。蓋体受け部52Aは、長さ方向(蓋体60Aの厚さ方向)D1からみて、筐体6の内側へ向かって延びるように形成される。蓋体受け部52Aの中央位置に矩形状の開口部51Aが形成されている。これによって、蓋体受け部52Aは、長さ方向(蓋体60Aの厚さ方向)D1から見て、開口部51Aを全周にわたって取り囲む構成となる。本体部50は、端壁部34に対応する面、すなわち筐体6の端部6b側の面に、蓋体60Bを取り付けるための蓋体受け部52Bを有する。蓋体受け部52Bは、蓋体60Bの周縁部と対向する矩形枠状のフランジ部である。蓋体受け部52Bは、長さ方向(蓋体60Bの厚さ方向)D1からみて、筐体6の内側へ向かって延びるように形成される。蓋体受け部52Bの中央位置に矩形状の開口部51Bが形成されている。これによって、蓋体受け部52Bは、長さ方向(蓋体60Bの厚さ方向)D1から見て、開口部51Bを全周にわたって取り囲む構成となる。本体部50は、第2の上壁部28に対応する面、すなわち筐体6の上端部側の面に、蓋体60Cを取り付けるための蓋体受け部52Cを有する。蓋体受け部52Cは、蓋体60Cの周縁部と対向する矩形枠状のフランジ部である。蓋体受け部52Cは、上下方向(蓋体60Cの厚さ方向)D3からみて、筐体6の内側へ向かって延びるように形成される。蓋体受け部52Cの中央位置に矩形状の開口部51Cが形成されている。これによって、蓋体受け部52Cは、上下方向(蓋体60Cの厚さ方向)D3から見て、開口部51Cを全周にわたって取り囲む構成となる。
【0037】
蓋体受け部52Aは、第3の側壁部26,27、第3の底壁部29、及び蓋体受け部52Cと隙間無く、すなわち気密性が確保された状態で接続されている。蓋体受け部52Bは、第3の側壁部26,27、第3の底壁部29、及び蓋体受け部52Cと隙間無く、すなわち気密性が確保された状態で接続されている。蓋体受け部52Cは、第3の側壁部26,27、及び蓋体受け部52A,52Bと隙間無く、すなわち気密性が確保された状態で接続されている。各蓋体受け部52A,52B,52Cは、溶接によって固定されていてもよく、あるいは金属板の折り曲げによって形成されていてもよい。
【0038】
ここで、図4及び図5を参照して、本体部50の開口部を蓋体で封止する構造について、より詳細に説明する。なお、図4では、蓋体60Aが開口部51Aを封止する構造が示されているが、蓋体60Bが開口部51Bを封止する構造、蓋体60Cが開口部51Cを封止する構造も同様である。
【0039】
蓋体受け部52Aには、複数のスタッドボルト81が立設されている。スタッドボルト81は、筐体6の外方に向けて長さ方向(蓋体60Aの厚さ方向)D1に延びるように配置される。これらのスタッドボルト81には、雄ネジが形成されている。スタッドボルト81は、その基端部84に予め設けられた突起を蓋体受け部52Aの表面に圧接して溶接を行う、いわゆるプロジェクション溶接によって蓋体受け部52Aに固定されている。スタッドボルト81を溶接する際、蓋体受け部52Aを貫通する孔は形成されない。このプロジェクション溶接では、蓋体受け部52Aの表面に位置決めのための凹部を予め設けることもできる。
【0040】
蓋体受け部52Aに対向する蓋体60Aの周縁部61には、スタッドボルト81が挿入される複数の貫通孔82が形成されている。これらの貫通孔82は、スタッドボルト81に対向する位置に形成される。各貫通孔82の直径は、各スタッドボルト81の外径よりも大きくなっている。貫通孔82を通って蓋体60Aから延出したスタッドボルト81には、ナット83が螺合されている。
【0041】
また、蓋体60Aの周縁部61と蓋体受け部52Aとの間には、本体部50と蓋体60Aとの間の気密性を確保するためのシール部材70が配置されている。シール部材70は、蓋体受け部52Aの略全面を覆うような幅広の矩形枠状に形成されている。シール部材70の一辺あたりの幅は、貫通孔82の直径よりも大きくなっている。すなわち、シール部材70は、開口部51Aと貫通孔82との間の領域に配置されている。シール部材70は、スタッドボルト81及び貫通孔82に対応する位置に円形状の複数の貫通孔70aを有している。なお、シール部材は、開口部51Aの周囲で複数の貫通孔82によって囲まれるように配置された、貫通孔を有さない矩形枠状であってもよい。
【0042】
スタッドボルト81とナット83との螺合により、蓋体60Aは本体部50側へ押圧される。上記のスタッドボルト81、貫通孔82、及びナット83によって、蓋体60Aを蓋体受け部52Aに固定するための螺合部80が構成されている。
【0043】
筐体6の内部には、第1の側壁部16,17の内面側に沿うようにして、断熱材88が配置されている。断熱材88は、改質器2及びセルスタック3と第1の側壁部16,17との間に配置されると共に、蓋体受け部52A及び蓋体受け部52B(図3参照)の内面側にまで延在している。この断熱材88によって、蓋体受け部52A,52Bの内面側の上下方向D3における断熱性は、略均一になっている。
【0044】
本実施形態に係る燃料電池モジュール1によれば、蓋体受け部52A,52Bには、蓋体60A,60Bの厚さ方向に延びるスタッドボルト81が立設され、このスタッドボルト81とナット83との螺合によって、蓋体60A,60Bが蓋体受け部52A,52Bに固定される。そのため、図7に示す従来の燃料電池モジュールのように、蓋体受け部52Aに貫通孔184を形成し、その貫通孔184内に袋ナット181のような切削部品を配置して全周溶接をする必要がない。よって、切削部品を用いない分、材料費が低減されると共に、溶接検査や気密検査が不要になる。その結果として、製造コストの削減が実現される。さらには、気密性を要する内部空間における溶接箇所が減るため、気密性が確実に高められると共に、不良品率が低減されている。
【0045】
また、蓋体60A,60Bと蓋体受け部52A,52Bとの間であって、開口部51A,52Aと貫通孔82との間の領域にはシール部材70が配置されているため、本体部50と蓋体60A,60Bとの間の気密性が高められる。
【0046】
また、蓋体60Cが設けられる部分における封止構造も蓋体60A,60Bにおける封止構造と同様のため、本体部50と蓋体60Cとの間の気密性が高められると共に、溶接検査や気密検査が不要になっている。
【0047】
また、蓋体60A,60B,60Cが設けられる部分の内面側において蓋体60A,60B,60Cを固定するための部材が突出することがないため、筐体6の内部空間を広くできる。言い換えれば、所定の容積を有する内部空間を形成する場合に、小型化を図ることができる。
【0048】
また、図6〜図8に示す従来の燃料電池モジュール100では、第1の側壁部16,17の内面側に沿うようにして、断熱材188が配置される。前述した袋ナット181は、蓋体受け部52Aの内面側に突出するため、断熱材188は、袋ナット181との干渉を避けるよう、袋ナット181が設けられた位置において切り欠かれる。よって、袋ナット181が設けられた部分と、袋ナット181が設けられない部分(隣接する袋ナット181,181同士間の部分)とでは、断熱材188の厚みが異なっている。そのため、蓋体160A,160Bが設けられる部分において均一な断熱性が得られないといった問題があった。
【0049】
燃料電池モジュール1によれば、蓋体受け部52A,52Bには、厚さ方向D1に延びるスタッドボルト81が立設され、スタッドボルト81とナット83との螺合によって、蓋体60A,60Bが蓋体受け部52A,52Bに固定される。蓋体60A,60Bが設けられる部分の内面側においては、蓋体60A,60Bを固定するための部材が突出することがなく、蓋体60A,60Bの内面側に配置される断熱材88の厚みは均一になっている。したがって、蓋体60A,60Bが設けられる部分において断熱性が均一になっている。特に、改質器2やセルスタック3は非常に高温条件下で稼動するため、燃料電池モジュール1の筐体6には高い気密性および断熱性が求められる。燃料電池モジュール1では、均一でしかも高い気密性および断熱性が実現される。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、蓋体受け部52A,52B,52Cが筐体6の内側へ向かって延びるように形成される場合について説明したが、蓋体受け部52A,52Bは、筐体6の外側へ向かって延びるように形成されてもよい。この場合、螺合部80は長さ方向D1から見て筐体6の外側に配置されることとなる。
【0051】
また、上記実施形態では、スタッドボルト81がプロジェクション溶接によって蓋体受け部52Aに固定される場合について説明したが、スタッドボルト81は、他の溶接方法によって固定されてもよい。また、上記実施形態では、ネジ部材としてスタッドボルト81とナット83とを用いる場合について説明したが、内部に雌ネジが形成された円筒状の雌ネジ部材を第1のネジ部材として用い、その雌ネジ部材を蓋体受け部52Aに立設し、その雌ネジ部材に螺合するボルトを第2のネジ部材として用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…燃料電池モジュール、2…改質器、3…セルスタック、4…水気化部、6…筐体、11…収納室、12…排ガス流路、13…酸化剤流路、50…本体部、51A,51B,51C…開口部、52A,52B,52C…蓋体受け部、60A,60B,60C…蓋体、61…周縁部、70…シール部材、80…螺合部、81…スタッドボルト(第1のネジ部材)、82…貫通孔、83…ナット(第2のネジ部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器と、
前記改質ガス及び酸化剤を用いて発電を行うセルスタックと、
前記改質器及び前記セルスタックを収納する筐体と、を備える燃料電池モジュールであって、
前記筐体は、
前記改質器及び前記セルスタックを収納すると共に、開口部を有する本体部と、
前記本体部の前記開口部を覆う蓋体と、を備え、
前記本体部は、前記開口部の周囲に形成されて前記蓋体の周縁部に対向する蓋体受け部と、前記蓋体受け部に立設されて前記蓋体の前記厚さ方向に延びる第1のネジ部材と、を有し、
前記蓋体の前記周縁部には、前記第1のネジ部材が挿入される貫通孔が形成され、前記蓋体は、前記第1のネジ部材と第2のネジ部材との螺合によって前記蓋体受け部に固定されることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記蓋体と前記蓋体受け部との間であって、前記開口部と前記貫通孔との間の領域には、シール部材が配置されることを特徴とする請求項1記載の燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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