説明

燃料電池モジュール

【課題】 効率よく起動できしかも安定的に連続運転可能であってコンパクトなシステムを与え得る燃料電池モジュールを提供すること。
【解決手段】 断熱容器の内部空間に燃料電池スタックを収容し、該燃料電池スタックに気化器及び改質器を通過させて生成した改質ガスを導いて運転される燃料電池システムである。収容容器内に気化器及び改質器の少なくとも一部分を収容して閉空間を形成させた改質モジュールを燃料電池スタックの燃料電池セルの連通する断熱容器の内部空間に収容した上で、収容容器内の閉空間内において起動用燃料を燃焼させて生じる起動用燃焼ガスで気化器及び改質器を外部加熱し、これを断熱容器の外部に排気経路を介して排気可能であって、排気経路は少なくとも燃料電池スタックへ供給される運転用燃料の移動経路と分離されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を改質器に通じて改質ガスとした上で燃料電池に導くようになされた燃料電池モジュールに関し、特に、液体燃料を気化させた後に改質器に通じて改質ガスとした上で燃料電池に導くようになされた燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の対向する電極の間に固体酸化物からなる電解質を挟み込んだ固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと称する。)は、水素と空気(酸素)とをそれぞれ各電極側に供給しながら500〜1000℃の高温で連続運転される。かかる電池と各種熱システムとを組み合わせることで高いエネルギー効率が達成できる。ところで、SOFCシステムの連続運転中にあっては、各種燃料を水素を含む改質ガスに改質してSOFCへ向けて水素等を供給する改質器の熱源にもSOFCの熱が利用可能である。一方、SOFCの起動時にあっては、燃料の改質のために改質器の熱源を別途確保することが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料予熱器を有するSOFCシステムの燃料電池モジュールにおいて、SOFCの起動時にあっては、改質器への燃料ガスの導入の代わりに燃料予熱器にて加熱されたパージガスを改質器に供給してこれを内部加熱できるモジュールが開示されている。ここでパージガスは、改質触媒の酸化を防ぐために弱還元性のガスであって、例えば、窒素に3%以下で水素を混合したガスであると述べている。
【0004】
加熱ガスを改質器に通じることで改質触媒を接触加熱できる。一方で、かかる加熱器の内部加熱では、改質触媒の酸化や被毒といった問題も指摘され、改質器を外部から加熱する外部加熱方式の燃料電池モジュールも多く提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2では、改質触媒が充填された触媒層を有する筒体内にバーナを設置し、このバーナからの燃焼ガスにより触媒層を昇温して、加熱された触媒層に燃料と水蒸気とを導いて改質ガスを生成する燃料電池用の改質器が開示されている。詳細には、バーナからの燃焼ガス通路内に触媒層を内部に収容する容器とともに水供給管を配置し、燃焼ガスの熱によって容器を介して触媒層を加熱するとともに水供給管内を流れる水を水蒸気に加熱する。水供給管は燃焼ガス通路から引き出された後に脱硫装置の下流で燃料供給管に接続され、脱硫器で脱硫されて燃料供給管を流れてくる天然ガス、都市ガス、ナフサ等の燃料ガスと、水供給管内を流れてくる水蒸気とを合流させた上で加熱された触媒層に導くとしている。触媒層では、燃料ガスと水蒸気とが水蒸気改質反応により水素及び一酸化炭素を含む改質ガスに改質されるのである。
【0006】
また、SOFCの起動時にあっては、SOFCの連続運転時に改質器で改質される燃料ガスを改質器の外部加熱の熱源として使用することも行われている。例えば、特許文献3では、燃料電池の起動時にあって改質器が未だ十分に加熱されておらず、天然ガスやメタノールなどの燃料を改質器に与えても未改質のガスを含む改質ガスが生成されてしまう場合に、かかる改質ガスを燃料電池に導くことなく、改質器を加熱するためのバーナの熱源に使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−295534号公報
【特許文献2】特開2000−281311号公報
【特許文献3】特開2008−218355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池モジュールでは、安定的に連続運転できるよう改質器に用いられる触媒や燃料電池(スタック)を劣化させることなく、しかも効率よく起動できることが求められる。特に、液体燃料を気化させた後に改質器に通じて改質ガスとした上で燃料電池に導くようになされた燃料電池モジュールでは、液体を気化させる装置などが必要となり、効率のよい起動をコンパクトなシステムの中で達成することがより要求される。
【0009】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、液体燃料を気化させた後に改質器に通じて改質ガスとした上で燃料電池に導くようになされた燃料電池モジュールにおいて、効率よく起動でき、しかも安定的に連続運転可能であって、コンパクトなシステムを与え得る燃料電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による燃料電池モジュールは、断熱容器の内部空間に燃料電池スタックを収容し、該燃料電池スタックに気化器及び改質器を通過させて生成した改質ガスを導いて運転される燃料電池モジュールであって、収容容器内に前記気化器及び前記改質器の少なくとも一部分を収容して閉空間を形成させた改質モジュールを前記燃料電池スタックの燃料電池セルの連通する前記断熱容器の前記内部空間に収容した上で、前記収容容器内の前記閉空間内において起動用燃料を燃焼させて生じる起動用燃焼ガスで前記気化器及び改質器を外部加熱し、これを前記断熱容器の外部に排気経路を介して排気可能であって、前記排気経路は少なくとも前記断熱容器の外部から前記気化器内部、前記改質器内部、前記燃料電池セル、前記内部空間を経て前記断熱容器の外部へと接続される運転用燃料経路と分離されていることを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、起動時においては、閉空間内の起動用燃焼ガスによって気化器及び改質器を加熱できるので、効率よく気化器及び改質器を昇温し得る。また、連続運転時においては断熱容器内にて燃料電池スタックの熱および改質ガスの燃焼熱を利用し得るので、安定して改質モジュールを加熱できる。また起動用燃料を燃焼させた起動用燃焼ガスを改質器の触媒や燃料電池スタックに触れさせることなく排気できるので、起動用燃料の脱硫を不要とし、脱硫器を設ける必要がない。よって、効率よく起動でき、安定的に連続運転可能であって、コンパクトなシステムを与え得る燃料電池モジュールを提供できる。
【0012】
上記した発明において、前記改質器は前記気化器の下部に直列接続するよう配置されて組をなすことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、気化器及び改質器の組において上流から下流へ、すなわち下方へ向けた運転用燃料経路に対して、起動用燃焼ガスの流動を逆方向に向けることが容易であり、気化器及び改質器の組の昇温を効率よく行い得る。さらに、直列接続により改質モジュールをコンパクトにし得る。
【0013】
上記した発明において、前記収容容器内の前記閉空間には、前記気化器及び前記改質器の前記組を複数並置したことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、起動用燃焼ガスと気化器及び改質器の組の接触表面積を増すことができるので、燃料電池モジュールをより効率よく起動できる。
【0014】
上記した発明において、前記収容容器内の前記閉空間には、上下に区切られた複数の小室を含み、前記小室のそれぞれにおいて前記起動用燃焼ガスにより前記気化器及び前記改質器の前記組を外部加熱することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、気化器及び改質器の組を上下方向に分割して個別に加熱することができる。つまり、上部の気化器と下部の改質器とをそれぞれに適した温度に昇温し得て、燃料電池モジュールを効率よく起動できる。
【0015】
上記した発明において、前記気化器及び前記改質器の前記組は円柱状又は角柱状の連続した側面を持つ外缶を有することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、気化器及び改質器の組を円柱状とすることで内部の温度分布を均一にしやすく、改質の効率を向上し得る。一方で、この組を角柱状とすることで配置効率を向上し得て、改質モジュールをよりコンパクトにし得る。
【0016】
上記した発明において、前記改質器は前記収容容器の少なくとも一部をなし、前記内部空間に露出していることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、連続運転時において燃料電池スタックの発生する熱及び改質ガスの燃焼熱により改質器を加熱できて燃料電池モジュールを効率よく運転できる。
【0017】
上記した発明において、前記内部空間に露出した前記改質器の一部は前記燃料電池スタックの燃料極出口近傍に位置することを特徴としてもよい。更に、上記した発明において、前記改質器は前記収容容器の少なくとも一部をなし前記内部空間に露出するフランジ部を有することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、連続運転時において燃料電池スタックの発生する熱及び発電に使用されなかった改質ガスの燃焼熱をより効率よく改質器に与え得て、燃料電池モジュールをより効率よく運転できる。
【0018】
上記した発明において、前記改質部は、前記フランジ部に沿って周回する流路を内部に区画されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、フランジ部が外部加熱されることで、効率よく改質部を加熱できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による燃料電池モジュールの要部の断面図である。
【図2】本発明による燃料電池モジュールの要部の斜視図である。
【図3】本発明による燃料電池モジュールの要部の断面図である。
【図4】本発明による燃料電池モジュールの運転工程図である。
【図5】本発明による他の燃料電池モジュールの要部の斜視図である。
【図6】本発明による他の燃料電池モジュールの要部の斜視図である。
【図7】本発明による他の燃料電池モジュールの要部の斜視図である。
【図8】本発明による他の燃料電池モジュールの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による1つの実施例である燃料電池モジュールについて、図1乃至図3を参照しつつ詳細を説明する。
【0021】
図1に示すように、燃料電池モジュール1では、断熱容器2の内部空間4に改質モジュール10及び燃料電池スタック20が収容されている。底部近傍の燃料電池スタック20の直上には改質モジュール10が配置され、運転時の燃料電池スタック20の発生する熱を改質モジュール10に効率よく与えるようになされている。ここで改質モジュール10は、気化部11及び改質部12の組からなる改質アセンブリ13の少なくとも一部分を内部隔壁3で覆って閉空間5を形成させたモジュール体である。詳細は後述する。
【0022】
図2を併せて参照すると、改質アセンブリ13は、導入管25を介して内部に導入される液体原燃料及び水を気化させる気化部11、及び、気化部11で気化されて流れてくる原燃料ガスを改質して少なくとも水素を含む改質ガスに改質する改質部12を上下方向に直列に接続してなる。改質アセンブリ13の外観は、上面視略円形の本体部外缶13aの端部に、これよりも外径の大きなフランジ部外缶13bを接続したフランジ付き管の形状を有している。フランジ部外缶13bの内部には、改質部12の一部としての改質触媒が収容されている。これについては、改めて後述する。
【0023】
図1に戻って、内部隔壁3は改質アセンブリ13の本体部外缶13aを覆うようにして与えられ、その下部はフランジ部外缶13bによって閉塞されている。すなわち、フランジ部外缶13bの下面Aは内部隔壁3の下方に向けて露出するとともに、内部隔壁3の内周面、フランジ部外缶13bの上面B及び本体部外缶13aの外周面によって閉空間5が画定される。
【0024】
気化部11は、燃料電池モジュール1の上部の貫通孔に挿通された導入管25の1つである原燃料導入管25aを介して灯油の如き液体の原燃料をその内部に導入される。かかる原燃料を気化させて原燃料ガスとして改質部12へと送出する。気化部11としては、例えば、内部に多数の細管が引き回され、本体部外缶13bを外部加熱することで細管が加熱されてその内部の液体を気化させる気化器を使用できる。この場合、更に、燃料電池モジュール1の上部の貫通孔には、原燃料導入管25aとともに導入管25の1つである水導入管25bが挿入され、原燃料ガスの流れる細管とは別系統の気化部11の細管へと接続されている。かかる水導入管25bに接続される細管は、水を気化させて水蒸気としてこれを改質部12へと送出する。なお、気化部11は本体部外缶13bを介して間接的に細管を加熱する構造に限定されず、閉空間5と細管表面が連通し閉空間5内の加熱ガスにより直接的に細管を加熱する構造であっても良い。
【0025】
改質部12は、気化部11の下部に直列に配置して、気化部11から導かれる原燃料ガス及び水蒸気を混合して混合ガスとし、これを改質触媒上に導いて水蒸気改質反応を生じさせ、少なくとも水素を含む改質ガスを生成する。改質ガスは、フランジ部外缶13bの下流に接続された接続管15によって燃料電池スタック20内の燃料電池セル21の燃料極へと送出される。改質触媒は、例えば、アルミナなどの金属酸化物からなる多孔質担体に白金微粒子などの活性金属を担持させたものが用いられる。
【0026】
改質部12は、気化部11と同様、少なくとも本体部外缶13a及び/又はフランジ部外缶13bを外部加熱することでその内部の改質触媒及びその近傍を間接的に加熱できる。特に、燃料電池スタック20の直上にフランジ部外缶13bを配置し、燃料電池スタック20の頂面とほぼ等しい面積とすることが好ましい。後述するように、フランジ部外缶13bは、運転時において燃料電池スタック20から排出される余剰の改質ガスの燃焼熱により外部加熱されて、効率よく改質触媒及びその周囲を加熱できるのである。
【0027】
特に、図3に示すように、フランジ部外缶13bの内部は、ガスの移動経路が中心部から外周に向かうように区切られ、外周に沿って略1周した後に接続管15に接続される。かかる移動経路内に改質触媒が収容されることで、フランジ部外缶13bが外部加熱されることで、効率よく改質触媒及びその周囲を加熱できるのである。
【0028】
改質部12の改質ガスの生成において、部分酸化改質反応を一部に組み合わせることも出来得る。かかる場合、別途、図示しない改質部12への酸素などの必要なガスを導く配管を与える。
【0029】
改質モジュール10の閉空間5の下部には、バーナ14が設けられ、燃料電池モジュール1の外部から起動用燃料を導入する起動用燃料導入管31と接続されている。バーナ14における燃焼ガスは、閉空間5内を加熱し改質アセンブリ13を外部加熱し得る。更に、閉空間5の上部近傍には、閉空間5内のガスを断熱容器2の外部へと排気する排出管32が設けられている。かかるガスの移動経路は後述する燃料電池スタック20へ供給される運転用燃料の移動経路とは完全に分離されている。起動用燃料は、例えば、プロパンガスなどの液化石油ガスや、その他公知の気体燃料、あるいは灯油などの液体燃料を適宜使用し得る。
【0030】
燃料電池スタック20は、例えば、平板型の燃料電池セル21を積層させた積層構造体である。燃料電池セル21は、これに限定されるものではないが、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの固体酸化物からなる電解質を、Ni−YSZ等のサーメットからなる多孔質体の燃料極(アノード)及びランタンマンガナイト(LaMnO)等からなる多孔質体の酸素極(カソード)で挟み込んだセルなどを用い得る。
【0031】
燃料電池スタック20の燃料電池セル21のそれぞれには改質部12から接続管15を介して少なくとも水素を含む改質ガスが導かれ、一方、導入経路22を介して酸素極に導かれた空気などの酸化剤ガスを由来とする酸素イオンと、燃料極上で反応し、発電運転がなされるのである。
【0032】
燃料電池スタック20のスタック出口24は、内部空間4に連通し燃料電池セル21において発電運転後に余剰となった改質ガスを含むオフガスが内部空間4に排出される。すなわち、スタック出口24は燃料極に連通する出口である。また、スタック出口24の近傍には、酸素極側に導かれて発電に使用されず余剰となった空気などの酸化剤ガスが導かれる。かかる余剰となった改質ガス及び酸化剤ガスをスタック出口24近傍にて燃焼させ得て、内部空間4を加熱するとともに、直上のフランジ部外缶13bを加熱する。内部空間4内のガスは、導出管26によって燃料電池モジュール1の外部へと導かれる。
【0033】
以上において、原燃料導入管25aから導入される原燃料として、水素及び一酸化炭素から合成され、灯油留分に蒸留されたパラフィン系液体燃料(合成燃料)を使用することが出来る。詳細には、メタンを主成分とする天然ガス等に酸素を加えて化学反応させ、一酸化炭素及び水素を生成させる。この一酸化炭素と水素とをフィッシャートロプシュ合成によりパラフィン系鎖状炭化水素に合成する。さらに、かかるパラフィンのC鎖の長さを分解等により調整し、蒸留して灯油留分を取り出すとパラフィン系液体燃料を得ることができるのである。一酸化炭素と水素を生成し、フィッシャートロプシュ合成により最終生成物がパラフィン系燃料となるのであれば、天然ガスに限定されるわけではなく、例えば、バイオマスや石炭なども使用し得る。かかる原燃料では、硫黄分をほとんど含まないため、脱硫器をシステムに与える必要がなく、システムをコンパクトに出来る。
【0034】
次に、燃料電池モジュール1の運転について、図1を参照しつつ、図4に沿って説明する。
【0035】
まず、起動用燃料として気体燃料を起動用燃料導入管31から導入し、バーナ14を着火し燃焼させる(S1)。しばらくすると、閉空間5の内部温度がまず上昇し改質アセンブリ13も本体部外缶13a及びフランジ部外缶13bを外部加熱されてその内部温度が上昇する。このとき改質アセンブリ13の一部として気化部11も加熱され、後述する液体の原燃料や水を速やかに気化できる温度にまで到達する。
【0036】
改質アセンブリ13が所定の温度となったところで、原燃料導入管25aから液体の原燃料を改質アセンブリ13に導入するとともに、水導入管25bから水を改質アセンブリ13に導入する(S2)。既に加熱されている気化部11に導入された原燃料及び水は速やかに気化する。気化した水蒸気及び原燃料ガスは、混合された上で改質部12へ導入される。混合された水蒸気及び原燃料ガスは、やはり加熱された改質触媒上に導かれて、水蒸気改質反応が速やかに進み、水素を含む改質ガスを生じる。
【0037】
水素を含む改質ガスは接続管15を通って、燃料電池セル21の燃料極側へと導かれる。この改質ガスはそのままスタック出口24から内部空間4に排出される。一方、導入経路22から酸素極側に空気を導入する(S3)。かかる空気は図示しない経路によってスタック出口24近傍に導かれ、改質ガスと接触してこれを燃焼させる。その燃焼ガスが内部空間4内を加熱するとともに、近傍の改質モジュール10を直下から加熱する。これによりフランジ部外缶13b及び本体部外缶13aを介して改質アセンブリ13の全体が加熱されるとともに、改質部12内の改質触媒、特に、フランジ部外缶13bの内部の改質触媒が加熱される。
【0038】
改質部12が暖機されるとともに、燃料電池モジュール1内も加熱された改質ガスにより暖機されたところで、導入経路22を介して酸素極側に導かれた酸化剤ガス由来の酸素イオンが電解質を通過して、燃料極上で改質ガスと反応する。すなわち、発電反応が進行し発電運転がなされる(S4)。その一方で、原燃料導入管25aからの液体の原燃料の導入量の調整、起動用燃料導入管31からの起動用燃料の導入量の調整、及び、導入経路22からの空気の導入量の調整により、燃料電池モジュール1内の熱バランスを形成させ、最終的には、バーナ14での燃焼をさせずとも熱バランスを形成させ得る。
【0039】
上記したように、燃料電池スタック20では、接続管15を通って燃料極側に導かれた水素を含む改質ガスと、酸素極側から電解質を通過してきた酸素イオンとの反応により、水を生成しつつ、起動用燃料導入管31からの起動用燃料の導入量をゼロとしてバーナ14を止めても、熱バランスを形成した発電反応が安定的に進行する(S5)。つまり、燃料電池スタック20での発電反応によって生じる熱及びスタック出口24における発電に使用されなかった改質ガスの燃焼熱は、改質モジュール10を加熱し、熱バランスを形成するのである。ここで、内部隔壁3によって形成される収容容器から露出したフランジ部外缶13bは、燃料電池スタック20の直上、すなわち、スタック出口24の近傍に配置され、その内部の改質触媒は非常に効率よく加熱されるのである。
【0040】
以上述べてきたように、上記した実施例では、改質部12や燃料電池スタック20において、硫黄酸化物(SO)を含む起動用燃焼ガスに曝されて触媒及び燃料極が被毒されてしまうことがないため、安定した改質性能及び発電性能を得ることが出来る。また、起動用燃焼ガスを脱硫する脱硫器が不要であって、硫黄分をほとんど含まない合成燃料を使用することでかかる燃料の脱硫も不要であるから、システム全体として脱硫器が不要であって、システムをコンパクトにすることが出来る。
【0041】
また、上記した実施例では、内部隔壁3は燃料電池モジュール1の内部空間4の一部を狭い閉空間5に仕切った上で、起動用燃焼ガスの流路と燃料電池スタック20とを空間的に分離している。起動用燃焼ガスの燃焼が燃料電池スタック20の運転へ影響を与えず、起動用燃焼ガスにより狭い空間である閉空間5を効率よく加熱し、もって改質アセンブリ13を効率よく加熱出来るのである。
【0042】
更に、上記した実施例では、起動時において、改質モジュール10では、閉空間5の下部で起動用燃料を燃焼させ下から上へと内部を暖機し、上から下へ向けて上昇する温度勾配を与える。かかる温度勾配により急激な加熱による燃料の熱分解を抑制するとともに、気化部11から改質部12へ向けて運転用燃料を流して効率的な加熱が出来る。また、連続運転時において、燃料電池モジュール1内での熱バランスを形成出来るが、熱バランスが崩れたときは、再度、起動用燃焼ガスの燃焼による加熱を与え得て、熱バランスを制御し得る。
【0043】
更に、連続運転中の燃料電池モジュール1の熱バランスの制御において、起動用燃料導入管31から導入される起動用燃料を燃焼させることで、スタック出口24近傍の発電に使用されない改質ガスの燃焼を減じ得る。エネルギーを与えて改質した改質ガスを燃焼させるよりも、起動用燃料の燃焼を優先させることで燃料電池モジュール1のエネルギー効率を高め得る。
【0044】
なお、本実施例に付随して、廃熱を利用するための装置を接続させることができる。例えば、導出管26から導出される燃焼ガスや、排出管32から排出される起動用燃焼ガスを熱交換器に導き、気化部11に導かれる原燃料や水などの予加熱、あるいは市水を加熱する湯水システムの熱源に利用できる。
【0045】
また、導出管26及び排出管32を接続して断熱容器2からのガスの排出系統を1つにしてもよい。かかる場合において、起動用燃料の燃焼ガスを内部空間4に流入させないよう導出管26側に逆止弁を与えることが好ましい。
【0046】
上記した実施例において、図5に示すように、改質モジュール10aは、並置させた複数の改質アセンブリ13を含んでいてもよい。内部隔壁3は改質アセンブリ13の本体部外缶13aを覆うようにして与えられ、その下部はフランジ部外缶13bとその間の図示しない部材で閉塞されている。このときも、フランジ部外缶13bの下面は内部隔壁3の下方に向けて露出するとともに、内部隔壁3の内周面、フランジ部外缶13bの上面及び本体部外缶13aの外周面によって閉空間5が画定される。
【0047】
また、上記した実施例において、図6に示すように、改質アセンブリ13’の外観は、上面視略方形の角柱状の本体部外缶13a’の端部に、これよりも大きな角形のフランジ部外缶13b’を接続したフランジ付き管の形状を有していてもよい。この場合も、フランジ部外缶13b’の内部には、改質部12の一部としての改質触媒が収容されている。かかる実施例によれば、起動用燃焼ガスによる外部加熱の効率を低減することなく、改質モジュール内における改質アセンブリ13’の収容効率を高めることが出来るのである。例えば、図7に示すように、図5同様、改質モジュール10b内に並置させた複数の改質アセンブリ13’を含むとき、内部隔壁3の下部をフランジ部外缶13b’だけで閉塞し得るのである。
【0048】
更に、上記した実施例において、図8に示すように、図5や図6の改質アセンブリ13や13’を内部隔壁3の中に複数並置させるとともに、閉空間5を上下に上部閉空間5a及び下部閉空間5bに仕切り板3’によって仕切ってもよい。上部閉空間5a及び下部閉空間5bには、それぞれ起動用燃料導入管31a及び31bと、排出管32a及び32bとが接続され、内部には図示しないバーナを備える。これにより、上部閉空間5aと下部閉空間5bとの各々において起動用燃焼ガスによって改質アセンブリ13をブロック加熱できる。燃焼後の起動用燃焼ガスは排出管32a及び32bから燃料電池モジュール1’の外部に排出することが出来る。かかる実施例によれば、改質アセンブリ13の上下方向の昇温制御ができて、改質アセンブリ13の昇温効率を高め得て、もって改質モジュール10cの熱効率を高め得る。
【0049】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく変更例を説明したが、本発明は必ずしもこれら実施例及び変更例に限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0050】
1、1’ 燃料電池モジュール
2 断熱容器
3 内部隔壁
11 気化部
12 改質部
13、13’ 改質アセンブリ
10、10a〜10c 改質モジュール
20 燃料電池スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱容器の内部空間に燃料電池スタックを収容し、該燃料電池スタックに気化器及び改質器を通過させて生成した改質ガスを導いて運転される燃料電池モジュールであって、
収容容器内に前記気化器及び前記改質器の少なくとも一部分を収容して閉空間を形成させた改質モジュールを前記燃料電池スタックの燃料電池セルの連通する前記断熱容器の前記内部空間に収容した上で、前記収容容器内の前記閉空間内において起動用燃料を燃焼させて生じる起動用燃焼ガスで前記気化器及び改質器を外部加熱し、これを前記断熱容器の外部に排気経路を介して排気可能であって、
前記排気経路は少なくとも前記燃料電池スタックへ供給される運転用燃料の移動経路と分離されていることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記改質器は前記気化器の下部に直列接続するよう配置されて組をなすことを特徴とする請求項1記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記収容容器内の前記閉空間には、前記気化器及び前記改質器の前記組を複数並置したことを特徴とする請求項2記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記収容容器内の前記閉空間には、上下に区切られた複数の小室を含み、前記小室のそれぞれにおいて前記起動用燃焼ガスにより前記気化器及び前記改質器の前記組を外部加熱することを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記気化器及び前記改質器の前記組は円柱状又は角柱状の連続した側面を持つ外缶を有することを特徴とする請求項2乃至4のうちの1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
前記改質器は前記収容容器の少なくとも一部をなし、前記内部空間に露出していることを特徴とする請求項2乃至5のうちの1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記内部空間に露出した前記改質器の一部は前記燃料電池スタックの燃料極出口近傍に位置することを特徴とする請求項6記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
前記改質器は前記収容容器の少なくとも一部をなし前記内部空間に露出するフランジ部を有することを特徴とする請求項7記載の燃料電池モジュール。
【請求項9】
前記改質部は、前記フランジ部に沿って周回する流路を内部に区画されていることを特徴とする請求項8記載の燃料電池モジュール。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−109989(P2013−109989A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254573(P2011−254573)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】